説明

オンライン土壌中金属逐次抽出装置

【課題】 複数の抽出剤を用いたオンライン土壌中金属逐次抽出分析における抽出剤同士の混合、抽出剤溶液の送液安定性、抽出された金属の検出における抽出装置由来の金属コンタミネーションによる干渉、及び抽出反応の促進とその再現性に関する問題を解決する。
【解決手段】 複数の抽出剤溶液または気体を貯蔵できるチューブ(R1、R2)、流路切り替えバルブ(V1、V2、V3)及びポンプ(PP2、HP2)を備え、当該バルブの切り替え動作によって各抽出剤溶液の前後に気体を挟むことで、当該抽出剤同士が接触せずに土壌試料(9)を充填したカラム(10)に順次流入し、各抽出剤の流入完了後、直ちにその気体が流入され、土壌試料中に残存する抽出剤を押し出し、抽出剤同士の混合を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オンライン土壌中金属逐次抽出装置に関し、特に、土壌評価法の一つである土壌中金属の溶出試験において、化学的性質が異なる複数の抽出剤を用いて土壌試料から金属の抽出を行い、金属分析装置によってその抽出量を測定し、各抽出剤による結果から土壌中金属の形態分析を行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土壌中の金属は環境汚染に繋がる重金属も多く含まれており、その挙動解明及び地圏環境におけるリスク管理に用いられる土壌中金属の分析法の確立が望まれている。そのひとつとして、抽出剤を用いた土壌からの金属溶出試験があり、例えば、約pH6の塩酸水溶液を抽出剤として用いたバッチ式単抽出法が環境省の土壌汚染対策法において制定されている。また近年、土壌中金属の移動性及び生物可給性は金属の結合形態に大きく依存することが明らかになり、より正確な土壌評価を行うため、抽出力の異なる複数の抽出剤を用いて多段階の抽出を行うバッチ式逐次抽出法が行われている。
【0003】
これは各段階で特定の結合形態の金属だけを選択的に抽出し、その抽出量によって土壌を評価するものであり、代表的な逐次抽出法として、EUのBCR(Community Bureau of Reference)が制定したBCRバッチ式逐次抽出法がある。(非特許文献1参照)この方法は3種類の抽出剤を用いて各結合形態の金属を選択的に溶出する。
【0004】
例えば、第一段階では、イオン交換態として土壌に結合している金属を抽出するために0.11moldm−3 酢酸水溶液を抽出剤として用いて土壌試料と遠沈管内に入れて16時間浸とうする。その後、残存土壌をろ過して、引き続き第二、第三段階の抽出を還元剤のヒドロキシルアミン水溶液及び酸化剤の過酸化水素水溶液を抽出剤として用いて、第一段階と同様な操作手順で行っている。次に各段階で得られたろ液を分析試料として希釈調製し、原子吸光、ICP発光、ICP質量分析装置などの金属分析装置により分析を行い抽出された金属量を決定している。このようなBCR法の抽出及び金属分析をすべて行うには1週間程度の極めて長時間を必要とし、また操作も極めて煩雑である。
【0005】
そこで、これらの操作を簡素化かつ時間短縮するため、土壌を充填したカラム管に抽出剤を流し込み、カラムから溶出される溶液を直ちに金属分析装置に導入し測定するオンライン抽出分析法及び装置が開発されてきた。非特許文献2に示される手法は、切り替えバルブに接続された一定容量のチューブ管にあらかじめ抽出剤を注射器などで充填し、そのバルブを切り替えて当該チューブ管に空気を送るポンプに接続し、空気によって充填された抽出剤を土壌カラムに流入し、溶出された溶液をICP質量分析装置で連続的に測定するものである。
【0006】
また、非特許文献3に示される手法は、抽出剤をポンプで土壌カラムに連続的に流し込み、溶出される溶液の一部をバルブの切り替えによって間欠的に取り出し、直ちにキャリアー溶液によってICP質量分析または原子吸光分析装置に導入し測定するものである。これらのオンライン抽出分析法は土壌と抽出剤の接触する時間が、バッチ式抽出分析法と比較して極めて短いため、抽出率が低い場合はヒートブロックによる加熱を行い抽出率を向上させている。(非特許文献4参照)また、別な加熱法としては、バッチ式単抽出法において、テフロン容器に抽出剤溶液及び土壌試料を入れてマイクロ波を照射する方法が提案されている。(特許文献1参照)
【0007】
【特許文献1】特開2002−214199号公報
【非特許文献1】Indicativevalues for extractable contents (mass fractions) of Cd、 Cr、 Cu、 Ni、 Pb and Znin a sewage sludge amended soil (CRM 483) following the modified BCR-seqeuntialextraction (threee-step) procedure、 EUR Report R19503 EN (2000).
【非特許文献2】D. Beauchemin、 K. Kyser、 D. Chipley、 Anal. Chem.、 2004、 74、 3924-3928.
【非特許文献3】M. Jimoh、 W.Frenzel、 V. Muller、 H. Stephanowitz、 E. Hoffmann、 Anal. Chem.、 2004、 76、 1197-1203.
【非特許文献4】S. M. Morales-Munoz、 J.L. Luque-Garcia、 M.D. Luque de Castro、 Spectrochimica Acta B、 2003、 58、 159-165.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献2で示された手法では、抽出剤溶液を予め加圧されていない空気を用いているが、当該溶液とその圧力未調整の空気では圧縮率が大きく異なるため、一定流速の安定した送液が困難である。実際、得られた抽出プロファイルは想定外の変化を示しており、抽出挙動について正確な情報が得られていない。
【0009】
また、複数の異なる種類の抽出剤を用いる逐次抽出法を連続して行う場合、新しい抽出剤を切り替える際に、土壌カラム内に残存した前の溶出液の排出が完全でない状態で送液すると、土壌カラム内で抽出剤の混合が起こり、各段階の抽出の開始点及び終了点が不明瞭となる場合がある。また、BCR逐次抽出条件のように還元剤を用いた抽出の後に酸化剤を用いた抽出を行うことがあるが、上記の送液の場合、カラム内で抽出剤同士の接触が生じ、抽出剤間で酸化還元反応が起こり正確な抽出プロファイルが得られない。
【0010】
非特許文献3に示された手法では、抽出剤切り替え部を備えていないため、手動で抽出剤を交換する必要があるが、空気を挟んで導入する場合は、非特許文献2の説明で示した送液安定性の問題が生じ、一方、空気を挟まない場合は、抽出剤同士の混合の問題が生じる。実際、非特許文献3で行われた逐次抽出は濃度のみが異なる硝酸水溶液だけで行われており、BCR法のような還元剤の次に酸化剤といった劇的に化学的特性が異なる種類の抽出剤を用いた実施例は示されていない。
【0011】
また、抽出反応が進行するのに従い、土壌の結晶構造の崩壊のため微粒化し、その微粒子が土壌カラム出口に詰まり、結果として土壌カラムの圧力が上昇する。したがって、抽出剤を送液するポンプも高圧送液対応のものが必要であるが、その接液部はステンレス、セラミック、ルビー、サファイアなど金属含有の材質で構成されているため、BCR法抽出剤条件のように、上記の材質と化学反応が起こりやすい抽出剤と接触した場合、接液部から金属溶出が起こり、抽出分析結果に正確性を欠くことになる。
【0012】
非特許文献4で示されたオンライン抽出の加速を目的としたヒートブロック加熱は土壌カラムの外部から加熱する方式のため、熱伝導率が高いカラム材質、例えばステンレスなど金属製のものを用いる必要がある。しかしステンレス製カラムからクロムなどの金属のコンタミネーションがおこり、正確な抽出分析結果が得られないことが報告されている。
【0013】
また、バッチ法では特許文献1のように、テフロン容器に抽出剤溶液及び土壌試料を入れてマイクロ波を照射し、抽出剤及び土壌試料に対して直接加熱し、抽出を促進する操作が抽出試験として提案されている。しかし本法は水抽出等の一種類の抽出剤による単抽出を想定しており、さらに抽出された溶液はろ過後に容器に採取し、煩雑なバッチ方式で分析試料前処理を行った後にICP質量分析装置で測定している。しかし、マイクロ波照射装置内でマイクロ波の定在波が存在する場合、当該装置内のマイクロ波分布が不均一になるが、本法は土壌試料位置を固定していないため、同一照射条件でもカラムへの照射量が増減し、測定毎に抽出温度が異なる可能性がある。さらに、本法はその温度を測定および制御する温度制御部を備えておらず、抽出実験の再現性が保証されていない。
【0014】
以上のように、オンライン土壌中金属逐次抽出分析法及び装置は、バッチ式と比較して、操作及び時間を大幅に短縮できる可能性があるが、これまで開発された手法及び装置では、土壌中金属の形態を詳細に把握できるBCRバッチ式逐次抽出法などで用いられる化学的性質が異なる複数の抽出剤を用いた逐次抽出分析法が、抽出剤同士の混合、送液の不確実性、及び金属検出における抽出装置由来の干渉によって、高精度かつ正確な土壌中金属逐次抽出分析が実現されていない。
【0015】
また、抽出反応の促進のため土壌充填カラムの外部から行う加熱は、使用するカラムの材質を金属製に限定されるためコンタミネーションの問題が生じるため、バッチ法においてテフロン製抽出容器を用いてマイクロ波照射による加熱方法が提案されているが、連続した逐次抽出法及びその抽出装置と金属分析装置と接続したオンライン逐次抽出装置においてはマイクロ波加熱法は提案されておらず、また、温度制御が行われていないため抽出反応の再現性が保持されず、迅速かつ高精度な逐次抽出分析も実現されていない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記の問題点を解決するために、複数の抽出剤溶液を選択的に切り替えて土壌試料を充填したカラム管に連続的に流し込む土壌中金属逐次抽出装置であって、前記複数の抽出剤溶液及び気体を選択的に切り替えて導入できる選択用バルブ、該選択された抽出剤溶液及び気体を輸送する輸送用ポンプ、並びに該選択された抽出剤溶液及び気体を貯蔵する貯蔵用チューブを備えており、前記選択用バルブの切り替え動作によって各抽出剤溶液の前後に気体を挟み、前記輸送用ポンプによって、その貯蔵された各抽出剤溶液を互いに接触させずに当該土壌カラムに順次流入させ、各抽出剤の流入完了後、直ちに前記挟み込んだ気体を流入して、当該土壌カラム中に残存する抽出剤を押し出し、該抽出剤とその前後の抽出剤との混合がない状態で、土壌中金属の逐次抽出を連続して行う構成であることを特徴とする土壌中金属逐次抽出装置を提供する。
【0017】
土壌中金属逐次抽出装置において、土壌試料を充填したカラム管に導入される気体の圧力を制御する圧力制御用ポンプ、圧力制御用バルブ、及びその圧力制御された気体を貯蔵する圧力制御用チューブを備え、前記圧力制御用バルブ及び圧力制御用ポンプの動作によって気体を圧縮し、前記選択用バルブの切り替え動作によって各抽出剤溶液の前後に前記圧縮された気体を挟み、前記輸送用ポンプによって当該抽出剤同士を接触させずに当該土壌カラムに順次流入させ、各抽出剤流入完了後、直ちにその挟み込んだ圧縮された気体を流入して、その土壌カラム中に残存する抽出剤を押し出し、当該抽出剤とその前後の他の抽出剤との混合がない状態で、土壌中金属の逐次抽出を連続して行う構成であることを特徴とする土壌中金属逐次抽出装置を提供する。
【0018】
前記ポンプは、該ポンプ接液部からの金属溶出を生じさせない抽出剤溶液以外の液体が流され、前記抽出剤溶液を流す際には、該ポンプ接液部と抽出剤溶液との接触がない状態で、該抽出剤溶液を当該土壌カラムに気体を介して流入させる構成としてもよい。
【0019】
前記カラムは、金属分析装置に接続されており、前記カラムから溶出液が金属分析装置に連続して導入される構成としてもよい。
【0020】
前記カラム管にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部、及び前記カラム管の抽出温度を一定にする温度制御部を備えている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0021】
当該バルブの切り替え動作によって、各抽出剤の前後に気体を挟むことで、当該抽出剤同士が接触せず土壌充填カラムに順次流入し、各抽出剤の流入完了後、直ちにその気体が流入されることで土壌試料中に残存する抽出剤を押し出すことが可能であり、当該抽出剤前後の他の抽出剤と混合しないため、他の抽出剤の影響を全く受けずに逐次抽出操作を正確に連続して行うことができる。
【0022】
また、上記の土壌カラム流入部において、導入される気体の圧力を制御するポンプ、チューブ、及び流路切り替えバルブを追加して備え、当該バルブ及びポンプの動作によって気体を圧縮し、抽出剤溶液と気体の圧縮率の差による抽出剤溶液の流速変化を最小にして、土壌中金属の連続逐次抽出操作を抽出剤溶液の送液が安定した条件下で行うことが可能となる。
【0023】
さらに、土壌カラムに抽出剤溶液を流入するポンプには純水などのポンプ接液部からの金属溶出がない抽出剤溶液以外の液体を流し、上記の圧縮された気体を介して土壌カラムに抽出剤溶液を流入することで、抽出剤試薬と当該ポンプ接液部との接触が無くなり、ポンプ接液部からの金属流出が軽減され、抽出された金属の検出における装置由来のコンタミネーションを抑制することができる。
【0024】
さらにまた、上記の逐次抽出装置に土壌カラムにマイクロ波を照射するマイクロ波照射部、そのマイクロ波を再現性良く照射する位置に当該カラムを固定するカラム固定部、及び抽出温度を一定に保持する温度制御部を追加して、より短時間の抽出が可能で、かつ温度変化を抑制することで、抽出結果について再現性が保持できる。
【0025】
また、マイクロ波は抽出剤溶液及び土壌試料を直接加熱させるため、土壌カラムにはテフロン及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製などの非金属カラムを用いることができるため、上記の純水を用いた送液ポンプ接液部抽出剤非接触送液機構と合わせて、金属のコンタミネーションが極めて少ないマイクロ波支援オンライン逐次抽出装置が構築できる。
【0026】
以上要するに、本発明のオンライン逐次抽出装置は、抽出剤同士の接触がなく、安定した抽出剤溶液の送液が可能であり、抽出金属の検出における抽出装置由来のコンタミネーションを抑制し、マイクロ波照射による抽出反応の促進、マイクロ波照射量の再現性を保持し、かつその温度制御を行うことによって、従来のオンライン逐次抽出装置では困難であったBCR抽出条件のような化学的性質が大きく異なる抽出剤を用いた逐次抽出を迅速に、精度良く、そして正確に行うことが可能となり、土壌中金属の結合様式などの精密な形態分析をオンラインで簡便に行うことができる。
【0027】
このような特性から、本発明の装置は多検体試料分析にも適用可能であるため、これまで困難であった土壌汚染域などで多数点測定に基づく金属の詳細分布調査も可能であり、汚染源の特定及び形態分析結果から推定される汚染の原因解明及び拡散予測に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係るオンライン土壌中金属逐次抽出装置を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて図面を参照して、以下、詳細に説明する。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明に係るマイクロ波支援オンライン土壌中金属逐次抽出装置の実施例の全体構成を説明する図である。以下、3種類の抽出剤溶液A、B、Cを用いた三段階逐次抽出法の条件で、当該装置の構成を操作手順とともに説明する。カラム管(10)(PEEK製カラム管を利用。)は、土壌試料(9)を充填し土壌カラムを形成するものであり、その両端にPEEK製ろ過用フリット(12)(PEEK製ろ過フリットを利用。)を装着し、外部への土壌試料の漏洩を防ぐように構成されている。
【0030】
このカラム管(10)の出入り口に各々抽出剤溶液を導入及び排出するためのチューブ(11)を接続し、マイクロ波照射装置(13)内に設置する。また、当該カラムはマイクロ波を再現性良く照射される位置にテフロン製の台(14)を用いて固定する。カラム管(10)の出口近傍の排出用チューブ外面に接触させて温度センサー(15)を設置する。マイクロ波照射装置(13)には、PFAテフロン(商品名)チューブを用いたガス冷却用導入管(16)及び排出管(17)が備えてあり、ガス導入管にはガス流量調整バルブ(18)が備えてある。
【0031】
温度センサー(15)とガス流量調整バルブ(18)は、ガス流量制御装置(19)に電気的に接続されており、マイクロ波照射によって発熱し設定された温度を超えると、冷却ガス源(20)から冷却ガスがマイクロ波照射装置(13)内に流入して土壌カラムを冷却し、抽出反応の温度を一定に保つことができる。ここでは、冷却ガスとして窒素ガスを用いているが、土壌カラムを冷却できるガスであれば窒素ガスに限らない。
【0032】
各抽出剤溶液A、B、Cを各々入れたポリプロピレン製容器(1)〜(3)と空気の入ったポリプロピレン容器(4)が、チューブによって、6ポジションスイッチング式の選択用バルブ(V1)に接続される。バルブ(V1)は抽出剤溶液A、B、Cを切り替えることができる。バルブ(V1)によって選択された第一段抽出用の抽出剤Aは、気体や液体を導入するペリスタリック式ポンプ(PP2)により、2ポジション/6ポートスイッチングバルブ(V2)を通してPFAテフロン製の貯蔵用チューブ(R1)に導入されるように構成されている。
【0033】
バルブ(V2)は、チューブと接続できるポートを6つ備えており、図2のように、隣り合ったポートを接続することが可能で、バルブ(V2)の切り替えによって二つのポジションXとYをとることができる。ポジションXは、ペリスタリック式ポンプ(PP2)とリザーバーチューブ(R1)を接続して抽出剤充填に用いられ、ポジションYは、その充填された抽出剤を高圧送液できる輸送用ポンプ(HP1またはHP2)によって土壌カラムに流入するために用いられる。輸送用ポンプ(HP1またはHP2)に高圧送液が可能なポンプを用いる理由は、抽出反応の進行に従って上昇する土壌カラムの圧力負荷及び後述する空気圧縮に対応するためである。
【0034】
貯蔵用チューブ(R1)の出口は、バルブ(V2)と同じ規格の2ポジション/6ポートスイッチングバルブ(V3)が接続されている。バルブ(V3)は、ポジションXのとき、貯蔵用チューブ(R1)への抽出剤溶液の充填が完了し余分な抽出剤を排出する場合に用いられ、ポジションYのときは貯蔵用チューブ(R1)に充填された抽出剤を土壌カラムへ流入するときに用いられる。さらにバルブ(V2)、(V3)の接続ポートの中で、貯蔵用チューブ(R1)と別な流路を通るポートに、第二段階の抽出剤Bを充填するための貯蔵用チューブ(R1)と同一規格の貯蔵用チューブ(R2)の出入り口を接続する。
【0035】
ポリプロピレン容器(5)は空気が入っている。このポリプロピレン容器(5)内の空気は、チューブ及びポジションXの状態にある2ポジション/6ポートスイッチング式の圧力制御用バルブ(V4)を通して、ペリスタリック式ポンプ(PP1)によって一定量吸い上げられ、PFAテフロン製の圧力制御用チューブ(6)に導入される。なお、余分な空気はバルブ(V4)の出口から排出されるように構成されている。
【0036】
圧力制御用バルブ(V4)には、チューブによって、2ポジションスイッチング式の流路切り替えバルブ(V5)が接続されている。バルブ(V5)をポジションXに切り替えて止栓した状態で、輸送用ポンプ(HP1)を該空気の圧力制御に用いて、ポリ容器(7)に入った純水の送液を開始すると、PFAテフロン製の圧力制御用チューブ(6)に充填した空気が圧縮される。この圧力制御用チューブ(6)において、圧縮空気が作られる。
【0037】
ポリ容器(8)には、ポリ容器(7)同様に純水が入っており、輸送用ポンプ(HP2)を介して流路切り替え用バルブ(V5)に接続されている。バルブ(V5)をポジションXに切り替え、高圧ポンプ(HP2)によって純水(8)の送液を行うことができる。
【0038】
ICP発光分析またはICP質量分析装置(24)は、抽出された溶液をオンラインで導入して分析を行う装置である。なお、金属検出における抽出剤の干渉を軽減するため、液体スプリッター(21)により流量を下げて、ペリスタリック式ポンプ(PP3)によって供給される希釈溶液(22)を送液し、コイルチューブ(23)内で混合し希釈調製を行い、上記の分析装置に連続的に導入する。
【0039】
(作用)
以上の構成から成る本発明のオンライン土壌中金属逐次抽出装置の実施例の作用を以下に説明する。図3は、オンライン土壌中金属逐次抽出装置の抽出操作手順をシーケンス1〜10に分けて順次、説明する図であり、各シーケンスにおける各機器の操作状態も合わせて説明する図である。この図3に従って、以下に抽出操作手順説明する。
【0040】
[第一段抽出]
シーケンス1:
抽出剤Aを貯蔵用チューブ(R1)に充填するために、バルブ(V2)、(V3)をポジションXに切り替えて導入用ポンプ(PP2)によって貯蔵用チューブ(R1)に充填し、余分な抽出剤Aはバルブ(V3)を通して排出する。充填完了後、バルブ(V2)及びバルブ(V3)をポジションYに切り替えて、抽出剤Aを土壌カラムに流入するが、第二段抽出のときに使用する抽出剤Bとの接触を回避するため、以下に述べる操作を行い、充填した抽出剤Aの後に圧縮した空気を挟んで送液する。
【0041】
シーケンス2:
ここでは、空気を用いているが、抽出反応に影響を与えない気体であれば空気以外の気体でもかまわない。この圧縮空気を作るために、空気(5)の入ったポリプロピレン容器からチューブ及びポジションXの状態にある圧力制御用バルブ(V4)を通して、ペリスタリック式ポンプ(PP1)によって空気を一定量吸い上げて、圧力制御用チューブ(6)に導入する。余分な空気はバルブ(V4)の出口から排出される。
【0042】
次に圧力制御用バルブ(V4)をポジションYに切り替えると流路が変更され空気を流すペリスタリック式ポンプ(PP1)から純水を高圧送液できる輸送用ポンプ(HP1)に流路が切り替わる。圧力制御用バルブ(V4)の出口はチューブによって流路切り替え用バルブ(V5)に接続している。バルブ(V5)をポジションXに切り替えて止栓した状態で、輸送用ポンプ(HP1)によってポリ容器に入った純水(7)の送液を開始すると、チューブ(6)に充填した空気が圧縮される。
【0043】
シーケンス3:
圧力は、土壌試料(9)を充填したカラム管(10)にかかる圧力と同等に設定し、圧縮完了後、バルブ(V2)、(V3)、(V5)を同時にポジションYに切り替えて、貯蔵用チューブ(R1)に充填された抽出剤溶液Aを輸送用ポンプ(HP1)によって純水を送液すると、圧縮空気を介して抽出剤Aはカラム管(10)に流入し抽出が開始される。上記の送液機構のため、輸送用ポンプ(HP1)の接液部には抽出剤溶液ではなく純水のみしか接触しないため、接液部からの金属溶出が著しく軽減され、装置自身による抽出結果への影響が極めて少なくなる。
【0044】
なお、ここでは純水を使用したが、接液部からの金属溶出がなく安定した送液ができる液体であれば種類は問わない。また、マイクロ波照射を行うときは、バルブ(V2)、(V3)、(V5)の切り替え時に開始する。
【0045】
[第二段抽出]
シーケンス3:
この第一段抽出が行われている間に、第二段抽出に使用する抽出剤Bを貯蔵用チューブ(R2)に導入できる。この場合は、選択用バルブ(V1)を切り替えて、抽出剤Bの入ったポリ容器(2)と接続させ、ペリスタリック式ポンプ(PP2)により貯蔵用チューブ(R2)に導入する。余分な抽出剤溶液はバルブ(V3)を通して排出される。上記の第一段抽出と同様に、この第二段抽出においても、次の第三段抽出のときに使用する抽出剤溶液Cと接触を回避するため、充填した抽出剤Bの後に圧縮した空気を挟んで送液する。
【0046】
シーケンス4:
圧縮空気を生成する過程は第一段抽出と同様であるが、高圧送液ができる輸送用ポンプ(HP2)を追加使用して以下の操作を行う。最初に流路切り替え用バルブ(V5)をポジションXに切り替え、輸送用ポンプ(HP1)と同流速に設定したもう一台の輸送用ポンプ(HP2)によってポリ容器(8)の純水の送液を行い、第一段抽出操作を継続する。次にバルブ(V4)をポジションXにペリスタリック式ポンプ(PP1)によって空気を圧力制御用チューブ(6)に導入する。
【0047】
シーケンス5:
その導入完了後、圧力制御用バルブ(V4)をポジションYに切り替えて、ポンプ(HP1)によって純水を送液する。ここで、バルブ(V5)のポートはポジションXのままで止栓されているため、チューブ(6)に充填した空気が圧縮される。
【0048】
シーケンス6:
貯蔵用チューブ(R1)に充填された抽出剤溶液Aが土壌カラムを通過した後、第一段抽出で圧縮した空気が流入し、抽出剤溶液Aをカラム管(10)から排出して第一段抽出が完了した時点で、バルブ(V2)、(V3)をポジションX、バルブ(V5)をポジションYに切り替えて、輸送用ポンプ(HP1)によって純水(7)を送液し、圧縮した空気を介して貯蔵用チューブ(R2)に充填した抽出剤溶液Bをカラム管(10)へ流入させて第二段抽出を開始する。
【0049】
[第三段抽出]
シーケンス6〜10:
第三段抽出は上記の第二段抽出の場合と同様であるが、抽出剤Aのカラム管(10)への流入が終了した貯蔵用チューブ(R1)に導入する。使用する抽出剤溶液Cを貯蔵用チューブ(R1)には送液に使用した純水が残存しているため、選択用バルブ(V1)を切り替えて空のポリ容器(4)を選択し、ペリスタリック式ポンプ(PP2)で貯蔵用チューブ(R1)内の純水を空気によって排出し、バルブ(V1)を抽出剤溶液Cに切り替え貯蔵用チューブ(R1)への導入を開始する。このように本発明の装置は、抽出準備と抽出操作を同時に進行することが可能であり、操作時間の短縮が可能である。
【0050】
以上、本発明のオンライン土壌中金属逐次抽出装置の操作手順を説明したが、各抽出段階で抽出された溶液は、ICP発光分析またはICP質量分析装置(24)にオンラインで導入される。金属検出における抽出剤の干渉を軽減するため、液体スプリッター(21)により流量を下げて、ペリスタリック式ポンプ(PP3)によって供給される希釈溶液(22)を送液し、テフロン(登録商標)製のコイルチューブ(23)内で混合し希釈調製を行い、上記の金属分析装置に導入する。
【0051】
また、抽出液の希釈率はスプリッター比率及びポンプ(PP3)の流速の調整によって変化させることができる。金属の抽出量を決定するには抽出前に検量線溶液(20)をポンプ(PP3)によって分析装置に導入し、抽出時に得られた信号強度と比較して抽出濃度に変換することが可能である。
【0052】
使用するチューブ、バルブ及びスプリッター接液部はテフロン(登録商標)又はPEEK製であり、導入用ポンプ(PP1, PP2)およびポンプ(PP3)のチューブはタイゴン(登録商標)製であり、金属のコンタミネーションを極力抑えている。
【0053】
また、輸送用ポンプ(HP1, HP2)は接液部分にステンレス、セラミックス、サファイア及びルビーなど金属含有の材質で作られた部品を使用しており、BCR逐次抽出法で用いられる高濃度酸、酸化剤及び還元剤などを用いた場合、金属が溶出しベースラインの上昇など測定に悪影響を与えるが、本装置では、高圧ポンプに流れている液体は常に純水であり、当該ポンプ由来の金属のコンタミネーションを押さえることが可能である。
【0054】
さらに土壌試料を充填しているカラム管(10)もPEEK製であることも含めた以上の効果から、本発明のオンライン土壌中金属逐次抽出装置は、装置由来のコンタミネーションを低減し、正確な抽出プロファイルを得ることができる。
【0055】
今回は三段階のオンライン土壌中金属逐次抽出装置の例を示したが、選択用バルブ(V1)の切り替えポートを増減するだけで、上に述べてきたバルブ及びポンプの切り替え操作で、各段階の抽出剤を2本の貯蔵用チューブ(R1、R2)に交互に充填し、順次カラム管(10)に導入できるため、逐次抽出の段数を単抽出から任意の段数の逐次抽出条件まで増加させることが可能であり、広範囲の抽出条件に適用できる。
【0056】
以上、本発明のオンライン土壌中金属逐次抽出装置の実施例1の特徴を整理すると、次のとおりである。
(1)複数の抽出剤溶液または気体を貯蔵できるチューブ(R1、R2)、流路切り替えバルブ(V1、 V2、 V3)及びポンプ(PP2、 HP2)を備え、当該バルブの切り替え動作によって各抽出剤溶液の前後に気体を挟むことで、当該抽出剤同士が接触せずに土壌試料(9)を充填したカラム管(10)に順次流入し、各抽出剤の流入完了後、直ちにその気体が流入され、土壌試料中に残存する抽出剤を押し出すことで抽出剤同士の混合を防止することができる。
【0057】
(2)上記の土壌カラム流入部において導入される気体の圧力を制御するポンプ(HP1)、チューブ(6)、及び流路切り替えバルブ(V4、V5)を備え、当該バルブ及びポンプの動作によって気体を圧縮し、抽出剤溶液と気体の圧縮率の差による抽出剤溶液の流速変化を最小にして、その気体を介して抽出剤を送液することで、抽出剤溶液の送液安定性を得ることができる。
【0058】
(3)高圧送液ポンプ(HP1、HP2)によって純水(7、8)または当該ポンプ接液部からの金属溶出がない抽出剤溶液以外の液体を送液し、上記の圧縮された気体を介して土壌カラムに抽出剤溶液を流入することで抽出された金属の検出における装置由来の金属コンタミネーションによる干渉を防止することができる。
【0059】
(4)マイクロ波照射部(12)、土壌カラム固定部(13)と冷却ガスを用いた温度制御部(17)を加えることで、抽出剤溶液を急速加熱し、かつその温度変化を最小にすることで促進された抽出反応の再現性を保持することができる。
【0060】
(実験例)
本発明に係るオンライン土壌中金属逐次抽出装置の実験例を土壌中金属の逐次抽出を例に挙げて、以下に説明する。BCRバッチ式逐次抽出法(非特許論文1参照)で用いられる上述の第一段階、第二段階の抽出剤条件と同様な条件下で行った。土壌試料0.2gを内径4.6x長さ10mmのPEEK製カラム管に充填した。また、抽出剤溶液には、第一段階に0.11moldm−3酢酸水溶液、第二段階に0.5moldm−3 塩酸ヒドロキシルアミンに0.05moldm−3 硝酸を加えた水溶液を各々用いた。
【0061】
抽出剤溶液の流速は1.0mlmin−1に設定した。抽出剤の貯蔵用チューブ(R1)及び(R2)は、内径4mm、外径1/4インチのPFAテフロンチューブを用いた。空気圧縮のための圧縮制御用チューブは内径2mm、外径1/8インチのPFAテフロンチューブを用いた。また、各抽出剤溶液の前後に挟み込む空気は土壌カラムの圧力に合わせて上記の圧力制御機構によって、0.4MPaに到達するまで圧縮した。この抽出条件下で、土壌カラム出口から溶出される抽出液を収集して、実際の流速を測定した。抽出第一段階終了時から抽出第二段階終了までの結果を図4に示す。空気圧縮を行わない場合、設定流速に到達するまでに抽出開始から約4分間必要であったが、空気圧縮を行った場合は1分30秒に短縮された。この到達時間は第一段抽出剤の後に挿入した空気の体積が排出される時間にほぼ等しいことから、空気圧縮を行うことで、抽出第二段階の開始時点から、安定した流速で抽出操作が行えることがわかった。
【0062】
次に、本発明に係るオンライン土壌中金属逐次抽出装置を用いた土壌中金属の逐次抽出分析の実施例を示す。抽出は上記と同じ条件下で行った。金属分析装置にはICP発光分析装置を用い、16元素(Na、K、Mg、Ca、Al、Si、Ti、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn、Mn、Cd、As、Pb)の各波長における発光強度を10秒間隔で断続的に測定した。また、金属検出における抽出剤の干渉を軽減するため、PEEK製の液体スプリッター(19)により流量を1/10量に下げて、ペリスタリック式ポンプ(PP3)によって供給される希釈溶液として1moldm−3の希硝酸水溶液を上記の9/10量に設定して送液し、内径1mm、外径1/16インチのテフロン(登録商標)製であるコイルチューブ(21)内で混合し希釈調製を行い、上記の分析装置に連続的に導入した。図5(a)、(b)に亜鉛及びアルミニウムの抽出分析プロファイルを示す。横軸に時間、縦軸にICP発光分析装置によって得られる各金属の発光波長の信号強度を示している。
【0063】
従来のBCRバッチ法では、二段階抽出及び分析を行うのに必要な操作時間は約35時間程度であったが、図5(a)、(b)に示すようにオンライン土壌中金属逐次抽出装置による抽出分析法では操作時間を約30分まで著しく短縮することができた。
【0064】
また、BCRバッチ法と比較して、本発明のオンライン土壌中金属逐次抽出装置を用いた抽出分析法は、より高精度な抽出分析結果を得ることが可能であった。表1に本発明のオンライン土壌中金属逐次抽出装置を用いた手法とBCRバッチ法で得られた金属抽出量の室内再現精度の結果を示す。抽出剤にBCR逐次抽出第二段階の0.5moldm−3 塩酸ヒドロキシルアミンに0.05moldm−3 硝酸を加えた水溶液を用いた第二段条件で、両法とも土壌試料重量:抽出剤体積=1:40の条件で行った。
【0065】
【表1】

【実施例2】
【0066】
本発明に係るオンライン土壌中金属逐次抽出装置の実施例2を説明する。この実施例2はマイクロ波支援を特徴とするものであり、マイクロ波以外の抽出条件は実施例1と同じである。本装置において、マイクロ波照射装置内に設置した土壌カラム位置を固定したところ、固定しない場合と比較して、抽出温度および抽出結果の再現性が著しく改善された。各々の結果を図6、7に示す。各図の(a)は土壌カラム非固定、(b)は土壌カラム固定の場合である。また、図6(b)の温度プロファイルから示されるように、土壌カラム固定条件下において、各抽出段階においてマイクロ波照射による温度上昇を1分程度の短い時間で完了することが可能であり、その後も温度制御装置により一定の温度に保つことができた。このようにカラム固定部および温度制御部を有する本発明の抽出装置を用いると、マイクロ波照射条件下でも分析精度は無照射条件と同等であり、安定した抽出分析が可能となった。
【0067】
また、このマイクロ波照射により抽出反応が促進され、各金属の抽出量が増加した。本発明のマイクロ波支援オンライン土壌中金属逐次抽出装置を用いて得られたマイクロ波照射による金属抽出量の変化を表2に示す。ここでは、BCRバッチ法の抽出量を100%として表している。抽出条件は表1と同じである。この表2によると、例えば、抽出第二段階において、10Wのマイクロ波を照射すると抽出量は増加し、BCRバッチ法で得られた抽出量と良く一致した。以上のことから、本装置を用いた手法では、BCRバッチ法と比較して、極めて短い操作時間でもほぼ同等の正確な抽出分析結果を得られることがわかった。
【0068】
【表2】

【実施例3】
【0069】
本発明に係るオンライン土壌中金属逐次抽出装置の実施例3を説明する。この実施例3は、実施例1において、ICP発光分析装置をICP質量分析装置に変更して本発明の装置を用いたオンライン土壌中金属抽出分析を実施例1の実験例及び実施例2の条件で行った。ICP発光分析装置及びICP質量分析装置を金属分析装置として用いた本発明のオンライン土壌中金属逐次抽出装置によって得られた金属抽出量を表3に示す。ここで、抽出剤として0.11moldm−3酢酸水溶液を用い、土壌試料重量:抽出剤体積=1:5の条件で行った。
【0070】
この表3によると、カドミウム、銅、ニッケルなど各金属について、ICP発光分析装置とICP質量分析装置の結果はよく一致し、本装置が分析原理に依存せずに正確な抽出結果を与えることがわかった。
【0071】
【表3】

【0072】
以上の実施例1〜3に示されように、本発明のオンライン土壌中金属抽出装置は迅速・簡便・高精度・正確な土壌中金属逐次抽出分析を可能にする。
【産業上の利用の可能性】
【0073】
本発明のオンライン土壌中金属抽出装置を用いることで、土壌調査、土壌汚染状況の把握及びその対策技術の策定、工業機械操業事業所、工場跡地、鉱山及び市街地などの地圏環境における環境リスク管理、及び土地売買に関する土壌評価のための有用な金属抽出分析法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明のオンライン土壌中金属逐次抽出装置の実施例1を説明する図である。
【図2】図1の切り替えバルブ(V2)〜(V5)のポジションを説明する図である。
【図3】実施例1において、三段階抽出を行ったときの操作手順、バルブポジション、ポンプ動作、マイクロ波照射の操作シーケンスを説明する図である。なお、バルブV1の#1−4は接続ポート番号である。
【図4】本発明のオンライン土壌中金属逐次抽出装置において、逐次抽出第一段階終了時から抽出第二段階終了時までの抽出液流速に与える空気圧縮操作の効果を示すグラフである。
【図5】本発明のオンライン土壌中金属逐次抽出装置において、BCR逐次抽出第一および第二段用抽出剤を用いたときに得られた亜鉛およびアルミニウムの抽出プロファイルである。
【図6】本発明のマイクロ波支援オンライン土壌中金属逐次抽出装置において、BCR逐次抽出第一および第二段抽出剤を使用したときの抽出温度の再現性に与える土壌カラムの位置固定化の影響を示すグラフである。マイクロ波出力は10Wである。
【図7】本発明のマイクロ波支援オンライン土壌中金属逐次抽出装置において、BCR逐次抽出第一および第二段抽出剤を使用したときのアルミニウムの抽出プロファイルの再現性に与える土壌カラムの位置固定化の影響を示すグラフである。マイクロ波出力は図6と同じ条件である。
【符号の説明】
【0075】
1 抽出剤溶液A
2 抽出剤溶液B
3 抽出剤溶液C
4、5 空気
6 圧力制御用チューブ
7、8 純水
9 土壌試料
10 土壌充填カラム管
11 溶出剤溶液導入及び排出チューブ
12 ろ過用フリット
13 マイクロ波照射装置
14 土壌カラム固定台
15 温度センサー
16 冷却ガス導入管
17 冷却ガス排出管
18 冷却ガス流量調整用バルブ
19 ガス流量制御装置
20 冷却ガス源
21 液体スプリッター
22 希釈溶液または検量線溶液
23 コイルチューブ
24 ICP発光分析装置またはICP質量分析装置
HP1、HP2 輸送用ポンプ
PP1〜PP2 ペリスタリック式ポンプ
PP3 希釈液および検量液用ポンプ
R1、R2 貯蔵用チューブ
V1 選択用バルブ
V2、V3 貯蔵用チューブ(R1、R2)流路切り替えバルブ
V4 圧力制御用バルブ
V5 流路切り替え用バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の抽出剤溶液を選択的に切り替えて土壌試料を充填したカラム管に連続的に流し込む土壌中金属逐次抽出装置であって、前記複数の抽出剤溶液及び気体を選択的に切り替えて導入できる選択用バルブ、該選択された抽出剤溶液及び気体を輸送する輸送用ポンプ、並びに該選択された抽出剤溶液及び気体を貯蔵する貯蔵用チューブを備えており、前記選択用バルブの切り替え動作によって各抽出剤溶液の前後に気体を挟み、前記輸送用ポンプによってその貯蔵された各抽出剤溶液を互いに接触させずに当該土壌カラムに順次流入させ、各抽出剤の流入完了後、直ちに前記挟み込んだ気体を流入して、当該土壌カラム中に残存する抽出剤を押し出し、該抽出剤とその前後の抽出剤との混合がない状態で、土壌中金属の逐次抽出を連続して行う構成であることを特徴とする土壌中金属逐次抽出装置。
【請求項2】
土壌試料を充填したカラム管に導入される気体の圧力を制御する圧力制御用ポンプ、圧力制御用バルブ、及びその圧力制御された気体を貯蔵する圧力制御用チューブを備え、前記圧力制御用バルブ及び圧力制御用ポンプの動作によって気体を圧縮し前記選択用バルブの切り替え動作によって各抽出剤溶液の前後に前記圧縮された気体を挟み、前記輸送用ポンプによって当該抽出剤同士を接触させずに当該土壌カラムに順次流入させ、各抽出剤流入完了後、直ちにその挟み込んだ圧縮された気体を流入して、その土壌カラム中に残存する抽出剤を押し出し、当該抽出剤とその前後の他の抽出剤との混合がない状態で、土壌中金属の逐次抽出を連続して行う構成であることを特徴とする請求項1に記載の土壌中金属逐次抽出装置。
【請求項3】
前記輸送用ポンプは、該輸送用ポンプ接液部からの金属溶出を生じさせない抽出剤溶液以外の液体が流され、前記抽出剤溶液を流す際には、該輸送用ポンプ接液部と抽出剤溶液との接触がない状態で、該抽出剤溶液を当該土壌カラムに気体を介して流入させる構成であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の土壌中金属逐次抽出装置。
【請求項4】
前記カラムは金属分析装置に接続されており、前記カラムから溶出液が金属分析装置に連続して導入される構成であることを特徴とする、請求項1、2又は3に記載の土壌中金属逐次抽出装置。
【請求項5】
前記カラム管にマイクロ波を照射するマイクロ波照射部、マイクロ波を再現性良く照射する位置に当該カラムを固定するカラム固定部、及び前記カラム管の抽出温度を一定にする温度制御部を備えていることを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の土壌中金属抽出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−184012(P2006−184012A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374568(P2004−374568)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】