説明

オーガ昇降装置の油圧回路

【課題】フリー降下状態での油圧モータの破損を回避し、オーガ回転駆動装置の自由落下も防止できるオーガフリー降下機構を有するオーガ昇降装置の油圧回路を提供する。
【解決手段】リーダに上下動可能に設けたオーガ回転駆動装置を、油圧ポンプ23からコントロール弁25及びロードホールディング弁26を介して供給される作動油によって作動する油圧モータ18により昇降させるオーガ昇降装置の油圧回路において、前記油圧モータと前記ロードホールディング弁との間に、リリーフ圧を切換可能としたクロスリリーフ弁27を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーガ昇降装置の油圧回路に関し、詳しくは、杭打機のリーダに上下動可能に設けたオーガ昇降装置をリーダに沿って昇降させるための油圧モータを駆動する油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
先端に螺旋状の羽根を有する鋼管杭やオーガスクリューを施工する際に、鋼管杭又はオーガスクリューを含むオーガ回転駆動装置の重量と、鋼管杭又はオーガスクリューの推進力とにより決まるオーガ回転駆動装置の降下速度を、オーガ昇降用の油圧モータに供給される油量によらず、前記重量及び推進力でオーガを降下させるオーガフリー降下機構が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【特許文献1】特開2001−98879号公報
【特許文献2】特許第3119343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1記載のオーガフリー降下機構では、鋼管杭やオーガスクリューに過大な押し込み力が掛かって本体前部が浮いた状態でオーガフリー降下機構を作動させると、油圧モータが上昇側に強制的に回転させられる状態になるが、オーガフリー降下機構を構成する流量制御弁あるいはリリーフ弁の作用で油圧モータの吸込流量が不足し、油圧モータの上昇側回路に負圧が発生して油圧モータが破損するおそれがあった。
【0004】
一方、特許文献2記載のオーガフリー降下機構では、オーガフリー降下機構を作動させるとオーガ回転駆動装置が完全に自由落下状態になるため、オーガ回転駆動装置を上昇させた状態でオーガフリー降下機構を作動させると、オーガ回転駆動装置が落下する危険があり、また、油圧モータの下降側回路に負圧が発生したり、油圧モータが急激に回転して焼き付いたりして油圧モータが破損するおそれもあった。
【0005】
そこで本発明は、フリー降下状態での油圧モータの破損を回避し、オーガ回転駆動装置の自由落下も防止できるオーガフリー降下機構を有するオーガ昇降装置の油圧回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のオーガ昇降装置の油圧回路は、リーダに上下動可能に設けたオーガ回転駆動装置を、油圧ポンプからコントロール弁及びロードホールディング弁を介して供給される作動油によって作動する油圧モータにより昇降させるオーガ昇降装置の油圧回路において、前記油圧モータと前記ロードホールディング弁との間に、リリーフ圧を切換可能としたクロスリリーフ弁を設けたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明のオーガ昇降装置の油圧回路は、前記クロスリリーフ弁のリリーフ圧が、前記油圧ポンプの吐出圧より高い高圧設定値と、前記油圧ポンプの吐出圧より低い低圧設定値とに切換可能に形成されていることを特徴とし、また、前記リリーフ圧の低圧設定値への切り換えが、低圧設定スイッチが投入され、かつ、前記コントロール弁が下降位置に操作されたときに行われることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のオーガ昇降装置の油圧回路によれば、オーガ回転駆動装置をフリー降下させる際のクロスリリーフ弁の設定圧を最適なリリーフ圧に設定することにより、オーガフリー降下機構を作動させたときにクロスリリーフ弁を開いた状態にすることができ、推進力によって下降側に強制的に回転する油圧モータの上昇側回路から下降側回路に作動油を循環供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明のオーガ昇降装置の油圧回路の第1形態例を示す要部の回路図、図2はオーガ回転駆動装置を備えた杭打機の一例を示す側面図である。
【0010】
まず、図2に示すように、先端に螺旋状の羽根11aを有する鋼管杭11を埋設施工する杭打機12は、下部走行体13に旋回可能に設けた上部旋回体14の前部に立設したリーダ15をバックステー16により支持し、リーダ15に上下動可能に設けたオーガ回転駆動装置17を、リーダ15に設けたオーガ昇降装置18の油圧モータ19によりチェーン18aを介して昇降させるように形成されている。鋼管杭11の埋設施工は、オーガ回転駆動装置17を油圧により作動させて鋼管杭11を回転させるとともに、オーガ昇降装置18の油圧モータ19を油圧により作動させてオーガ回転駆動装置17を下降させることにより行われる。
【0011】
図1に示すように、前記油圧モータ19を作動させる油圧回路は、油圧モータ19の上昇側回路21及び下降側回路22と、油圧ポンプ23及びタンク24との間に、コントロール弁25、ロードホールディング弁26、クロスリリーフ弁27を配置したものであって、コントロール弁25を操作レバー28で操作して油圧の供給方向を上昇側回路21と下降側回路22とに切り換えることで油圧モータ19を上昇側に回転させたり、下降側に回転させたりすることができる。
【0012】
前記クロスリリーフ弁27には、該クロスリリーフ弁27のリリーフ圧を切り換えるためのリリーフ圧切換回路31が接続されている。このリリーフ圧切換回路31は、ソレノイド弁32、パイロット弁33、下降操作検出スイッチ34、低圧設定スイッチ35及び警報器36を備えており、リリーフ圧切換回路31が作動することにより、クロスリリーフ弁27に設けられているリリーフ弁27aのリリーフ圧が、通常運転時の高圧設定値からフリー降下時の低圧設定値に切り換えられる。
【0013】
リリーフ弁27aのリリーフ圧として設定される高圧設定値及び低圧設定値は、通常、高圧設定値は、油圧ポンプ23の最大吐出圧力以上に設定され、通常の埋設施工時にはリリーフ弁27aが開かないように設定される。一方の低圧設定値は、油圧ポンプ23から供給される作動油の油圧でリリーフ弁27aを開くことができる程度の圧力、すなわち、油圧ポンプ23の吐出圧力以下の圧力で、かつ、鋼管杭11を保持したオーガ回転駆動装置17の重量によって油圧モータ19に加わる回転方向下降側の力で発生する油圧、すなわち、このときに油圧モータ19から上昇側回路21を介してリリーフ弁27aに作用する油圧ではリリーフ弁27aが開かない圧力の範囲に設定されている。
【0014】
本形態例では、リリーフ弁27aのパイロット室を閉じた状態で高圧設定値になり、低圧設定値は、リリーフ圧切換回路31の作動時にリリーフ弁27aのパイロット室に連通するパイロット弁33のリリーフ圧を調整することによって設定するように形成されている。
【0015】
低圧設定スイッチ35を切り状態(図1に示す状態)として鋼管杭11を埋設施工するときには、オーガ回転駆動装置17で鋼管杭11を回転させた状態で、操作レバー28にてコントロール弁25を下降位置25aに切り換える。これにより、油圧ポンプ23からの作動油が下降位置25aの流路を通って下降側回路22に向かって供給される。
【0016】
油圧がロードホールディング弁26の下降側に作用すると、ブレーキ緩解回路26aによりブレーキ19aが緩解されて油圧モータ19が回転可能になるとともに、上昇側解放回路26bへの油圧の作用で上昇側解放弁26cが開く。作動油は、ロードホールディング弁26の下降側チェック弁26dを通り、クロスリリーフ弁27を通って油圧モータ19の下降側回路22に供給され、油圧モータ19を下降側に回転させて上昇側回路21に流出する。
【0017】
上昇側回路21を逆方向に流れる作動油は、クロスリリーフ弁27を通り、ロードホールディング弁26の上昇側解放弁26c、コントロール弁25の下降位置25aの流路を通ってタンク24に戻る。この作動油の流れによって油圧モータ19が下降側に回転し、油圧ポンプ23からの吐出量を制御することにより、オーガ回転駆動装置17を鋼管杭11の掘削速度に同調して下降させたり、鋼管杭11に適度な押し込み力を与えたりすることができる。
【0018】
このとき、クロスリリーフ弁27のリリーフ弁27aには、下降側回路22を流れる作動油の圧力が作用するが、低圧設定スイッチ35が切り状態でリリーフ圧切換回路31が作動していないため、パイロット室が閉じた状態になっており、リリーフ弁27aのリリーフ圧が油圧ポンプ23の吐出圧力以上に設定された高圧設定値となっていることから、リリーフ弁27aは常に閉じ状態となっている。
【0019】
また、コントロール弁25を中立位置25b(図1に示す状態)に切り換えると、上昇側回路21及び下降側回路22がコントロール弁25を介して共にタンク24に解放された状態になり、上昇側回路21及び下降側回路22のいずれにも油圧が作用せず、ロードホールディング弁26のブレーキ緩解回路26aから油圧が抜けることでブレーキ19aが制動状態になるとともに、上昇側解放回路26b及び下降側解放回路26eにも油圧が作用しないので、上昇側解放弁26c及び下降側解放弁26fが閉じ状態になる。
【0020】
このとき、油圧モータ19には、鋼管杭11を含むオーガ回転駆動装置17の重量が下降側回転方向に作用しているが、ロードホールディング弁26が閉じてブレーキ19aが制動状態になっており、ロードホールディング弁26が閉じて作動油の流動も遮断されているため、油圧モータ19は回転せず、オーガ回転駆動装置17が下降することはなく、上昇することもない。
【0021】
なお、オーガ回転駆動装置17の下降中や上昇中に何らかの原因で油圧モータ19に過大な負荷が掛かり、上昇側回路21や下降側回路22の圧力が上昇した場合、通常は、油圧ポンプ23側(油圧ユニット)に設けたリリーフ弁(図示せず)が開いて異常な圧力上昇を回避する。
【0022】
鋼管杭11をフリー降下状態で埋設施工する場合は、リリーフ圧切換回路31の低圧設定スイッチ35を入り状態とし、操作レバー28を操作してコントロール弁25を下降側位置25aに切り換える。操作レバー28を下降側に操作することにより、下降操作検出スイッチ34がONになってソレノイドバルブ32のソレノイドに通電され、ソレノイドバルブ32の流路が遮断位置32a(図1に示す状態)から開放位置32bに切り換わる。これにより、リリーフ弁27aのパイロット室がソレノイドバルブ32を介してパイロット弁33に連通した状態になり、リリーフ弁27aのリリーフ圧が低圧設定値に切り換えられる。
【0023】
コントロール弁25が下降側位置25aに切り換わることにより、油圧ポンプ23からの作動油は、前記同様に、コントロール弁25の下降側位置25aの流路からロードホールディング弁26、クロスリリーフ弁27を通って油圧モータ19の下降側回路22に供給され、油圧モータ19を下降側に回転させる。油圧モータ19から上昇側回路21に流出した作動油は、上昇側回路21を逆方向に流れ、クロスリリーフ弁27、ロードホールディング弁26、コントロール弁25を通ってタンク24に戻る。このときの油圧ポンプ23からの作動油の吐出量は、ブレーキ緩解回路26aによるブレーキ19aの緩解及び上昇側解放回路26bによる上昇側解放弁26cの開放を行える程度で十分となる。
【0024】
鋼管杭11を含むオーガ回転駆動装置17の重量と、鋼管杭11の推進力とにより決まるオーガ回転駆動装置17の下降速度が、下降側回路22から供給される作動油の流量によって決まる油圧モータ19の下降側への回転速度に対して早い場合は、下降するオーガ回転駆動装置17によって油圧モータ19が下降側に強制的に回転させられる状態になり、油圧モータ19は、供給される作動油量に対して高い回転速度で下降側に回転しようとする。したがって、回転数に比べて作動油の供給量が少なくなるため、下降側回路22の作動油が油圧モータ19に吸引されて下降側回路22の油圧が低下することになる。
【0025】
下降側回路22の油圧が低下すると、ロードホールディング弁26の上昇側解放回路26bに作用する油圧が低下するため、上昇側解放弁26cが閉じて上昇側回路21からタンク24に戻る作動油の回路が遮断される。これにより、油圧モータ19から吐出される作動油によって上昇側回路21の油圧が上昇し、クロスリリーフ弁27のチェック弁27bを介してリリーフ弁27aに作用する油圧が上昇する。
【0026】
リリーフ弁27aのリリーフ圧は、前述のように、リリーフ圧切換回路31が作動して低圧設定値となっていることから、僅かな油圧の上昇でリリーフ弁27aが開状態となり、上昇側回路21の作動油がチェック弁27b、リリーフ弁27a及びチェック弁27cを通って下降側回路22に流れる。したがって、作動油がクロスリリーフ弁27を介して油圧モータ19に循環する状態になるので、下降側回路22が負圧になることはなく、鋼管杭11の推進力によるオーガ回転駆動装置17の下降速度に見合った回転速度で油圧モータ19を回転させることができ、フリー降下状態で鋼管杭11を埋設施工することができる。
【0027】
逆に、油圧ポンプ23からの吐出量が油圧モータ19の回転速度に対して過剰な場合は、下降側回路22の油圧が上昇し、クロスリリーフ弁27のチェック弁27dを介して作用する油圧でリリーフ弁27aが開き、下降側回路22の余剰の作動油がチェック弁27d、リリーフ弁27a及びチェック弁27eを通り、上昇側回路21に流れてタンク24に戻る状態となり、鋼管杭11の推進力に追従する分だけの作動油が油圧モータ19に供給される状態となる。これにより、鋼管杭11を含むオーガ回転駆動装置17の重量と、鋼管杭11の推進力とにより決まる下降速度と、油圧モータ19に加わる僅かな油圧とによってオーガ回転駆動装置17が下降し、鋼管杭11の埋設が進行する状態となる。
【0028】
施工後に操作レバー28でコントロール弁25を中立位置25bに戻すと、低圧設定スイッチ35が入り状態のままでも、下降操作検出スイッチ34がOFFとなることから、ソレノイドバルブ32が遮断位置32aに切り換わる。これにより、リリーフ弁27aのパイロット室が閉じられるので、リリーフ弁27aのリリーフ圧が高圧設定値となる。したがって、鋼管杭11を切り離したオーガ回転駆動装置17の上昇は、コントロール弁25を上昇位置25cに切り換えることによって通常通り行うことができる。
【0029】
また、オーガ回転駆動装置17を上昇させた状態でコントロール弁25が中立位置25bの場合も、リリーフ弁27aのリリーフ圧が高圧設定値となっているため、リリーフ弁27aが開いて作動油が油圧モータ19を循環することはなく、オーガ回転駆動装置17が自由落下することはない。さらに、低圧設定スイッチ35が入り状態のときに警報器36を作動させることにより、オペレーターがフリー降下中であることを認識でき、フリー降下終了後には、低圧設定スイッチ35の切り忘れに対して注意を促すことができる。
【0030】
一方、リリーフ圧切換回路31を作動させずに、コントロール弁25を下降位置25aにして通常の埋設施工を行っている場合、地盤の影響で鋼管杭11に過大な押し込み力が掛かって本体前部が浮いた状態となったときに、誤って低圧設定スイッチ35を入り状態にすると、油圧モータ19が強制的に上昇側に回転(逆回転)させられる状態になり、油圧モータ19が上昇側回路21の作動油を吸引することになる。
【0031】
このとき、コントロール弁25が下降位置25aにある状態で低圧設定スイッチ35を入り状態にしたので、前述の通り、リリーフ圧切換回路31が作動状態となり、リリーフ弁27aのリリーフ圧がパイロット弁33にて設定された低圧設定値になる。したがって、油圧ポンプ23から下降側回路22に供給される作動油によって、更には逆回転する油圧モータ19から下降側回路22に吐出される作動油によって、下降側回路22の油圧が上昇し、クロスリリーフ弁27のリリーフ弁27aが開き、下降側回路22の作動油が、チェック弁27d、リリーフ弁27a及びチェック弁27eを通って上昇側回路21に流れ、上昇側回路21が負圧になることを防止する。
【0032】
図3は本発明のオーガ昇降装置の油圧回路の第2形態例を示す要部の回路図であるなお、以下の説明において、前記第1形態例に示した油圧回路の構成要素と同一の構成要素には主要部に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0033】
本形態例に示す油圧回路は、前記クロスリリーフ弁を、前記第1形態例に示した一体型のクロスリリーフ弁27に代えて、上昇側回路21と下降側回路22とを接続するようにしてそれぞれ設けた単独の一対のリリーフ弁51,52の組み合わせで構成するとともに、両リリーフ弁51,52のリリーフ圧の切り換えを、ソレノイド弁53と一対のパイロット弁54,55との組み合わせで行うように構成している。
【0034】
パイロット弁54,55は、一方のパイロット弁54が高圧設定用、他方のパイロット弁55が低圧設定用であり、慚愧第1形態例と同様に、高圧設定用のパイロット弁54は、前記リリーフ弁51,52に作用する油圧が油圧ポンプ23の吐出圧力以上になったときにリリーフ弁51,52が開くように設定され、低圧設定用のパイロット弁55は、リリーフ弁51,52に作用する油圧がオーガ回転駆動装置17の重量によって油圧モータ19に加わる回転方向下降側の力で発生する油圧ではリリーフ弁51,52が開かないように設定されている。
【0035】
低圧設定スイッチ35が切り状態(図3に示す状態)でコントロール弁25が下降位置25aに切り換えられると、油圧ポンプ23から吐出された作動油は、コントロール弁25、ロードホールディング弁26、クロスリリーフ弁27を通って油圧モータ19の下降側回路22に供給され、油圧モータ19を下降側に回転させて上昇側回路21に流出し、逆方向に流れてタンク24に戻る。このとき、ソレノイド弁53の流路が高圧設定用のパイロット弁54に連通する高圧側53aとなっていることから、リリーフ弁51,52のリリーフ圧が高圧設定値となっているため、常に閉じ状態となっている。
【0036】
低圧設定スイッチ35を入り状態とし、操作レバー28を操作してコントロール弁25を下降側位置25aに切り換えると、下降操作検出スイッチ34がONになってソレノイドバルブ53が低圧側53bに切り換わり、リリーフ弁51,52のリリーフ圧が低圧設定用のパイロット弁55に設定された低圧設定値に切り換えられる。
【0037】
鋼管杭11の推進力によるオーガ回転駆動装置17の降下速度が早く、油圧モータ19が下降側に回転させられる状態になると、前記第1形態例と同様に、ロードホールディング弁26が閉じて上昇側回路21の油圧が上昇するので、上昇側回路21の油圧上昇によって開弁する一方のリリーフ弁51が開き、上昇側回路21の作動油がリリーフ弁51を通って下降側回路22に流れ、油圧モータ19に循環する。これにより、下降側回路22が負圧になることを防止しながら、鋼管杭11をフリー降下状態で埋設施工することができる。
【0038】
また、埋設施工時に鋼管杭11への過大な押し込み力で本体前部が浮いた状態で低圧設定スイッチ35を入り状態にすると、油圧モータ19が逆回転して下降側回路22の油圧が上昇するので、下降側回路22の油圧上昇によって開弁する他方のリリーフ弁52が開き、下降側回路22の作動油がリリーフ弁52を通って上昇側回路21に流れ、上昇側回路21が負圧になることを防止する。
【0039】
両形態例に示すように、オーガフリー降下機構として、油圧モータ19とロードホールディング弁26との間に、リリーフ圧を切換可能としたクロスリリーフ弁27、あるいは、一対のリリーフ弁51,52を用いたクロスリリーフ弁を設けるとともに、このクロスリリーフ弁のリリーフ圧を高圧と低圧とで適切に設定するように形成したことにより、上昇側回路21及び下降側回路22に負圧が発生することを防止して油圧モータ19を確実に保護することができる。
【0040】
また、クロスリリーフ弁の高圧側のリリーフ圧を油圧ポンプ23の吐出圧以上に設定することにより、通常の操作でクロスリリーフ弁が開くことはないので、通常の埋設施工は今までと同様にして行うことができる。さらに、クロスリリーフ弁の低圧側のリリーフ圧を、鋼管杭11又はオーガスクリューを含むオーガ回転駆動装置17の重量によって油圧モータ19から発生する油圧ではクロスリリーフ弁が開かないように設定することにより、上昇状態のオーガ回転駆動装置17が自由落下することを防止できる。
【0041】
加えて、フリー降下は、低圧設定スイッチ35と下降操作検出スイッチ34とが共にONになったときのみに行えるようにすることにより、誤操作を確実に防止することができ、警報器36を設けて低圧設定スイッチ35を入り状態にしたときに警報器36を作動させることにより、低圧設定スイッチ35が入り状態になっていることをオペレータに知らせることができ、切り忘れないように注意を促すことができる。
【0042】
なお、両形態例では、鋼管杭を埋設施工する杭打機を例示したが、オーガスクリューで掘削施工する杭打機でも同様であり、オーガ昇降装置がラックピニオンを利用したものであってもよい。さらに、杭打機の規模などの条件によっては、下降操作検出スイッチや警報器を省略することができる。また、警報器は、警告灯や警報音を適宜使用でき、複数種を併用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のオーガ昇降装置の油圧回路の第1形態例を示す要部の回路図である。
【図2】オーガ回転駆動装置を備えた杭打機の一例を示す側面図である。
【図3】本発明のオーガ昇降装置の油圧回路の第2形態例を示す要部の回路図である。
【符号の説明】
【0044】
11…鋼管杭、11a…羽根、12…杭打機、13…下部走行体、14…上部旋回体、15…リーダ、16…バックステー、17…オーガ回転駆動装置、18…オーガ昇降装置、18a…チェーン、19…油圧モータ、19a…ブレーキ、21…上昇側回路、22…下降側回路、23…油圧ポンプ、24…タンク、25…コントロール弁、25a…下降位置、25b…中立位置、25c…上昇位置、26…ロードホールディング弁、26a…ブレーキ緩解回路、26b…上昇側解放回路、26c…上昇側解放弁、26d…下降側チェック弁、26e…下降側解放回路、26f…下降側解放弁、27…クロスリリーフ弁、27a…リリーフ弁、27b,27c,27d,27e…チェック弁、28…操作レバー、31…リリーフ圧切換回路、32…ソレノイド弁、32a…遮断位置、32b…開放位置、33…パイロット弁、34…下降操作検出スイッチ、35…低圧設定スイッチ、36…警報器、51,52…リリーフ弁、53…ソレノイド弁、53a…高圧側、53b…低圧側、54,55…パイロット弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダに上下動可能に設けたオーガ回転駆動装置を、油圧ポンプからコントロール弁及びロードホールディング弁を介して供給される作動油によって作動する油圧モータにより昇降させるオーガ昇降装置の油圧回路において、前記油圧モータと前記ロードホールディング弁との間に、リリーフ圧を切換可能としたクロスリリーフ弁を設けたことを特徴とするオーガ昇降装置の油圧回路。
【請求項2】
前記クロスリリーフ弁のリリーフ圧は、前記油圧ポンプの吐出圧より高い高圧設定値と、前記油圧ポンプの吐出圧より低い低圧設定値とに切換可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載のオーガ昇降装置の油圧回路。
【請求項3】
前記リリーフ圧の低圧設定値への切り換えは、低圧設定スイッチが投入され、かつ、前記コントロール弁が下降位置に操作されたときに行われることを特徴とする請求項2記載のオーガ昇降装置の油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−1982(P2009−1982A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161517(P2007−161517)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】