説明

オーダーメイドのための上衣ゲージ服

【課題】着用者の試着回数を減らし、試着時間及び上衣提供者の接客時間を短縮して着用者の体型に最も適合した上衣ゲージ服を選択できるようにする。
【解決手段】身頃後部に首部から腰部にかけて末広がりの放射状に配置された複数のファスナーを具備し該複数のファスナーの開閉によってチェスト寸法とウエスト寸法の寸法差を一定に保った状態にて規定のサイズを変更できることを特徴とするオーダーメイドのための上衣ゲージ服を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紳士用又は婦人用の上衣のオーダーメイドにおいて、上衣着用者(購入者)のチェスト寸法、ウエスト寸法、袖丈、着丈等を採寸するために試着させる上衣ゲージ服に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料品には購入者が自分の体型に合ったものを選ぶ際の目安とするため規格サイズが表示されることが多く、当該表示する規格サイズは日本工業規格(以下JISと称する)が規定するサイズを基準とするものが多い。
【0003】
通常、上衣の仕立てにおいては、チェスト寸法からウエスト寸法を引いた寸法差を一定にして、チェスト寸法とウエスト寸法を変化させてサイズを調整するので、サイズの分類もこれに準じて行われる。
【0004】
JISが提供する「成人男子用衣料のサイズ」( L 4004:2001)によれば、チェスト寸法とウエスト寸法の寸法差が20cmはJ体型、18cmはJY体型、16cmはY体型、14cmはYA体型、12cmはA体型、10cmはAB体型、8cmはB体型、6cmはBB体型、4cmはBE体型、寸法差がない場合にはE体型の10の体型に分け、同じ体型の中でさらにチェスト寸法とウエスト寸法が2cmずつ異なるサイズに分類している。
【0005】
いわゆる標準体型であるJY体型を例に挙げて説明すると、チェスト寸法とウエスト寸法の寸法差は18cmで一定に保ったまま、チェスト88cm、ウエスト70cmを88JY3、チェスト90cm、ウエスト72cmを90JY4、チェスト92cm、ウエスト74cmを92JY5のように、チェスト寸法とウエスト寸法が2cmずつ異なる7つのサイズに分類している(後述する表1参照)。
【0006】
上衣の既製服はJISの規格サイズに準じて製作されるが、予め規定されたサイズであり、1サイズ異なるとチェスト寸法やウエスト寸法の差が最低でも2cmあるため、着用者の体型によっては適合(フィット)せず、着用感が優れない場合や見栄えがしない場合がある。
【0007】
これに対して、着用感に優れ、かつ、見栄えのする衣料品とするべく、着用者の体型に応じて衣料品を仕立てる「オーダーメイド」がある。
【0008】
本発明における「オーダーメイド」とは、予め種々の規定サイズで作製した複数の上衣ゲージ服を用意し、オーダーメイドで上衣を仕立てる者に複数の上衣ゲージ服を着用させて着用者の体型に最も適合する上衣ゲージ服を選択し、当該選択した適合する上衣ゲージ服の型紙を基本の型紙として、袖丈及び着丈を着用者の好みに適合するように基本の型紙を補正し、さらに、なで肩やハト胸等着用者の細かな身体的特徴についても、必要に応じて基本となる型紙を補正し、当該補正した型紙を用いて上衣を仕立てる方法をいう。
【0009】
本発明における「上衣」とは、スーツのジャケット、ブレザー、ベスト、シャツ等に例示される上半身に着用する衣服をいい、「ゲージ服」とは着用者の体型を採寸するための試着服をいう。
【0010】
オーダーメイドは着用者の体型に最も近い上衣ゲージ服の型紙を基本とし、着用者の好みや身体的特徴について補正した型紙を用いて仕立てるため、規定サイズである既製服と比べると着用者の体型により適合した上衣を仕立てることができ、かつ、型紙を新たに作製するフルオーダーメイドに比べて安価で、注文してから納期までの期間もかなり短いという利点がある。
【0011】
また、上衣ゲージ服を着用して採寸を行うと、実際の着用感も確かめられるので、仮縫いの工程を省略して仮縫いと同等の効果を得られるという利点もある。
【0012】
オーダーメイドにて上衣を作製する工程は、まず、着用者は上衣に使用する生地を選択し、当該生地に合うデザインの上衣ゲージ服を試着する。通常、上衣ゲージ服は10着程度用意されており、着用者はそれらの上衣ゲージ服を実際に着用し、比較して、チェスト、ウエストが最も適合した上衣ゲージ服を選択する。その後、袖口及び裾を折り曲げながら好みの袖丈及び着丈を決定して採寸する。
【0013】
上衣の仕立てに当っては、適合した上衣ゲージ服の型紙を基本の型紙とし、試着時に決定した好みの袖丈及び着丈となるように型紙を補正し、必要であれば着用者の細かな身体的特徴についても型紙を補正して、当該補正した型紙を用いて上衣を仕立てる。
【0014】
特許文献1には、着用者の体型に適合させるため、寸法調整の必要な前後身頃の裾、両肩、両脇、両袖、左右袖ぐり部分は仮縫い状態とし、その他寸法調整が不必要な部分は完全に縫製した基準寸法の半製品に仕上げた試着用の上衣が記載されている。
【0015】
また、特許文献2にはコート背面中央縦長状に折り込み部を設け、該折り込み部接合部にファスナー等の接合具を設けて、該接合部を開放することで背幅を拡張できるコートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平5−140802号公報
【特許文献2】特開昭62−184104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前記オーダーメイドによれば、予め上衣ゲージ服の1サイズ当りの寸法の差を小さくして、多数の上衣ゲージ服を用意すれば、着用者の体型に、より適合する上衣ゲージ服を選択することができ、着用感に優れ、かつ見栄えのする上衣を仕立てることができる。
【0018】
しかしながら、上衣ゲージ服を多数用意すれば、上衣ゲージ服の製作費が高額となるため、商品そのものの価格も高額になると共に、店舗内に広い収納場所が必要になるため、その他に陳列できる商品等を減らさなければならなくなるという問題がある。
【0019】
また、上衣ゲージ服の寸法の差が僅かであれば、着用者が最も適合する上衣ゲージ服を選択するまでに試着する回数も多くなって、試着に要する時間が長くなるので着用者の負担が大きく、また、上衣を提供する側の接客時間も長時間となり、単位時間当たりに接客できる人数が減少するという問題もある。
【0020】
しかし、上衣ゲージ服の数を減らせば、着用者の体型に適合する上衣の仕立てが難く、既製服との差別化が困難となるといった問題が生じる。
【0021】
特許文献1に記載の発明は、仮縫い部分をほどいたりつめたりしながら着用者の体型に合わせて仕立て直す必要があり手間がかかる。また、実際に着用するするスーツを用いて補正を行うため、背中等に、補正による不要な生地が折りたたまれて残ることもあり、完成したスーツのシルエットや、着用感に影響を与える虞がある。また、太すぎたり、細すぎたりといった極端な体型には対応できない虞もある。
【0022】
特許文献2には、背中中央部の接合具を開放することにより、サイズが変更できるコートが記載されているが、接合具は首元から足元にかけて平行に配置されており、一人用もしくは二人用の2種の異なるサイズにしか変更することができない。
【0023】
本発明者らは前記諸問題を解決することを技術的課題とし、試行錯誤的な数多くの試作を繰り返した結果、上衣ゲージ服の身頃後部に首部から腰部にかけて末広がりの放射状に配置された複数のファスナーを具備して、該複数のファスナーを開閉にて調節し、チェスト寸法とウエスト寸法の差を一定に保った状態にて一着の上衣ゲージ服を複数の規定のサイズに変更できるようにすることで、一着の試着により、複数の上衣ゲージ服を試着した時と同等の効果を得られるので、試着回数を減らし、試着に要する時間を短縮して着用者の負担を減らすと同時に上衣提供者の接客時間も短縮して、着用者の体型に最も適合した上衣ゲージ服を選択できるようにすることで当該技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
前記技術的課題は、本発明によって解決できる。
【0025】
本発明は、身頃後部に首部から腰部にかけて末広がりの放射状に配置された複数のファスナーを具備し該複数のファスナーの開閉によってチェスト寸法とウエスト寸法の寸法差を一定に保った状態にて上衣の規定のサイズを変更できることを特徴とするオーダーメイドのための上衣ゲージ服である(請求項1)。
【0026】
また、本発明は、身頃後部に首部から腰部にかけて末広がりの放射状に配置された複数のファスナーを具備し該複数のファスナーの開閉によってチェスト寸法とウエスト寸法の寸法差を一定に保った状態にてチェスト寸法及びウエスト寸法が変更できることを特徴とするオーダーメイドのための上衣ゲージ服である(請求項2)。
【0027】
また、本発明は、前記複数のファスナーが4本の線ファスナー部品からなることを特徴とする請求項1又は2記載のオーダーメイドのための上衣ゲージ服である(請求項3)
【0028】
また、本発明は、袖部に目盛を具備した請求項1乃至3いずれか記載のオーダーメイドのための上衣ゲージ服である(請求項4)。
【0029】
また、本発明は、身頃後部の裾部にメジャーを具備した請求項4記載のオーダーメイドのための上衣ゲージ服である(請求項5)。
【0030】
また、本発明は、身頃の裾部に着脱できる帯状の裾部を具備した請求項5記載のオーダーメイドのための上衣ゲージ服である(請求項6)。
【発明の効果】
【0031】
請求項1及び2に係る発明によれば、身頃後部に首部から腰部にかけて末広がりの放射状に配置された複数のファスナーを具備し該複数のファスナーの開閉によってチェスト寸法とウエスト寸法の寸法差を一定に保った状態にて上衣の規定のサイズを変更できるまたはチェスト寸法、ウエスト寸法が変更できることを特徴とするオーダーメイドのための上衣ゲージ服であるので、一度の試着で、複数着の上衣ゲージ服を試着した時と同等の効果を得られるので、何度も脱ぎ着する着用者の負担を軽減し、試着時間を短くして、着用者の体型に最も適合した上衣ゲージ服が選択できる。
【0032】
また、着用者一人当たりの接客時間も短縮できるので、単位時間当たりの接客人数を増加させることができる。
【0033】
さらに、一着の上衣ゲージ服にサイズの異なる複数着の上衣ゲージ服と同等の効果が期待できるので、予め用意する上衣ゲージ服の数を減らすことができ、店舗内に上衣ゲージ服を陳列する面積を減らして他の商品等を陳列する面積を増やせるので、店舗内を有効に使用することができる。
【0034】
請求項3に係る発明によれば、前記複数のファスナーが4本の線ファスナー部品からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のオーダーメイドのための上衣ゲージ服であるので、ファスナーの開閉が容易であり、着用者は一度、該上衣ゲージ服を着用すれば着替えなくても4着の異なるサイズのゲージ服を着用した時と同じ効果が得られるので、着用者の負担を減らし、上衣ゲージ服の試着回数を減らして、最も適合する上衣ゲージ服が選択できる。
【0035】
請求項4に係る発明によれば、袖部に目盛を具備するので、袖を折り曲げて着用者の好みの長さにするだけで、改めてメジャーで測らなくても、袖部の目盛を読んで袖丈の採寸ができ、採寸に要する時間を短縮することができる。
【0036】
請求項5に係る発明によれば、身頃後部の裾部にメジャーを具備しているので、裾から踵までの長さを測ることで総丈を測定することができる。
なお、総丈とは首の後ろ中心から踵までの長さのことであり、総丈の約半分の長さが着丈の目安となる。これまで総丈の測定は首の後ろ中心から踵までをメジャーで測る必要があったため背の低い男性や女性従業員では測定が困難な場合があったが、裾部にメジャーを具備することで容易に総丈を測ることができるので、短い時間で総丈を採寸でき、着丈の目安を付けやすくなる。
【0037】
請求項6に係る発明によれば、身頃後部の裾部に着脱できる帯状の裾部を具備するので、予め用意した上衣ゲージ服の着丈が着用者の好みよりも短い場合であっても、着脱式の帯状の裾部をつけて、着丈を長くすることができ、着丈が長い場合の上衣のシルエットを着用者が鏡に写して自ら目で見て確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る上衣ゲージ服の一態様の背面図である。
【図2】本発明に係る上衣ゲージ服の一態様の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施形態につき例を挙げて説明する。
【0040】
本発明において、チェスト寸法とは脇の下あたりの周囲の寸法、ウエスト寸法とはへその上あたりの周囲の寸法、着丈は首の後ろ中心から上衣の裾までの寸法、袖丈は肩先から袖口までの寸法をいう。
【0041】
本発明にかかる上衣ゲージ服は、身頃後部の首部から腰部にかけて末広がりの放射状に配置された複数のファスナーを具備するものである。
【0042】
ファスナーは何度でも開け閉めできるものであれば限定されず、線ファスナー、面ファスナー等を例示することができるが、開け閉めがしやすい線ファスナーであることが好ましい。
【0043】
ファスナーはいずれも左右の異なる部品が対をなし、左右の部品が一組揃えばファスナーを閉じることができる。
以下、左右の異なるファスナー部品を右ファスナー部品、左ファスナー部品と区別して称する。
【0044】
本発明に係る上衣ゲージ服は複数のファスナー部品を有しており、左右のファスナー部品が対を形成してファスナーを閉じることができればよいが、2〜4本のファスナー部品を有していることが好ましい。
4本以上であると背中に折り込まれるファスナー部品の数が多くなるので、正確に採寸できなくなると共に着用感及び上衣のシルエットにも影響を与えるので好ましくないからである。
【0045】
左右のファスナー部品の配置について、図1に基づいて説明する。
【0046】
図1に記載の本発明の一態様に係る上衣ゲージ服は、ファスナー部品(1)〜(4)の4本のファスナー部品を具備しており、一番右端のファスナー部品(1)は右ファスナー部品であり、残りのファスナー部品(2)、ファスナー部品(3)、ファスナー部品(4)は全て左ファスナー部品である。もちろん、一番左端のファスナー部品(4)のみが左ファスナー部品であり、残りのファスナー部品(3)、ファスナー部品(2)、ファスナー部品(1)が全て右ファスナー部品でもよい。
【0047】
前記のように左右のファスナー部品を配置することで、右ファスナー部品(1)と左ファスナー部品(2)を一組としてファスナーを閉じれば、全ファスナーを開放している時と比べて、上衣ゲージ服のサイズが規定のサイズの1サイズ小さな上衣ゲージ服となる。
【0048】
さらに、右ファスナー部品(1)と左ファスナー部品(3)とを一組として閉じれば規定のサイズの2サイズ分、右ファスナー部品(1)と左ファスナー部品(4)を閉じれば規定のサイズの3サイズ分小さくすることができるので、4本のファスナー部品を具備する上衣ゲージ服は、一着で4つの規定のサイズの上衣ゲージ服と同等といえる。
【0049】
本発明に係る上衣ゲージ服において規定のサイズの1サイズとは、チェストとウエストの寸法差を一定に保つ限り、所望により適宜変更することができる。
【0050】
規定のサイズの1サイズがJIS規格に準じる場合には、チェスト寸法とウエスト寸法が共に2cmずつ短くなるようにファスナー部品を配置すれば、チェスト寸法とウエスト寸法の寸法差を変化させずに、JIS規格のサイズを1サイズずつ小さいサイズに変更することができる。
【0051】
本発明の一態様に係る上衣ゲージ服は、袖に目盛(21)を具備している。
この目盛(21)には予め袖丈の長さの数値が記載されているので、袖部を目盛に沿って内側に折り曲げて、目盛に記載された数値を読むことで、直ちに袖丈の採寸を行えるため、従来のメジャーによる採寸に比べて短時間で採寸することができる。
【0052】
目盛(21)の間隔は、0.5cm〜2cmであることが好ましい。0.5cm以下であると袖を折り曲げた時に直ちに目盛を数え難く、採寸に時間を要する虞があり、また、2cm以上であると正確に採寸できなくなる虞がありいずれも好ましくないからである。
【0053】
本発明の一態様に係る上衣ゲージ服は、身頃後部の裾部にメジャー(31)を具備している。メジャー(31)は巻き取り式のメジャーであることが好ましい。
【0054】
メジャー(31)に記載されている目盛の数値は上衣ゲージ服の着丈の長さから始まるようにすることが好ましい。
例えば着丈72cmとなるように製作した上衣ゲージ服であれば、目盛を72cmから始まるようにすれば、裾部に具備されているメジャーを着用者の踵まで伸ばした時の目盛の数値を読めばそのまま総丈の寸法となる。これにより首元からメジャーを伸ばさなくても総丈の採寸を行うことができるので、背の低い男性や女性従業員であっても総丈の採寸を短時間で行うことができる。
【0055】
着丈は総丈の半分の長さの寸法を目安とするが、身長の高い人等は予め用意したゲージ服の着丈が総丈の半分に満たない場合があり、また、長い着丈を好む着用者の場合は用意したゲージ服の着丈が好みの長さに満たない場合がある。
【0056】
本発明の一態様に係る上衣ゲージ服は、裾部にファスナー部品(41)と当該裾部のファスナー部品と着脱できるファスナー部品を備えた帯状の裾部(42)を具備している。
この帯状の裾部(42)を連結することで、着丈が長い場合であっても着用者が鏡に映して自ら目で見て確認することができるので、着丈が短かすぎて、長い場合を想像するしかない場合と比べて、着用者の着丈の好みとのずれを生じさせることなく着丈の長さを決定することができる。
【0057】
着脱式の帯状の裾部(42)は上部と下部にファスナー部品を有している。帯状の裾部(42)の上部ファスナー部品と上衣の裾部に具備するファスナー部品(41)とを連結させることで、上衣ゲージ服に帯状の裾部を一つ取り付けることができる。
また、帯状の裾部(42)は下部にもファスナー部品を有しているので、2枚目の帯状の裾部の上部ファスナー部品と連結させることで、2枚目の帯状の裾部を取り付けることができる。
このようにして、着用者の好みの着丈になるまで帯状の裾部(42)を取り付けることができる。
【0058】
帯状の裾部の幅は長さが明らかであれば適宜所望の長さであればよいが、1cm〜4cmであることが好ましい。1cm未満または4cmより長ければ、着用者の好みの長さを決定するまでに時間がかかる虞がありいずれも好ましくないためである。
また、帯状の裾部の幅は1cm〜4cmのいずれか同一の長さであるものを複数用意してもよいし、各種異なる幅の長さの帯状の裾部を複数用意してもよい。
【0059】
本発明の一態様に係る上衣ゲージ服の裾部に具備するファスナー部品(41)は身頃後部の中央付近で右半分と左半分に分かれており、帯状の裾部(42)も右半分、左半分に分かれている。
本発明に係るゲージ服の身頃後部には複数のファスナー部品を具備するため、1本で裾部全体を覆う帯状の裾部とすることができないからである。
しかし、着用者は右半分、左半分を鏡に映して着丈の長さを確認できるので特段の不都合はない。
【0060】
また、本発明の上衣ゲージ服の裾部に具備するファスナー部品は、右ファスナー部品と左ファスナー部品のいずれでも良いが、右半分と左半分で左右の異なるファスナー部品を具備することが好ましく、また、帯状の裾部の上部と下部のファスナー部品はいずれが上部でも下部でもよいが、右ファスナー部品と左ファスナー部品の異なる組み合わせで具備することが好ましい。
このように配置することにより、ファスナーを連結する際にどのような組み合わせでも連結することができると共に、帯状の裾部を収納する際に右半分及び左半分を連結することができるようになり、収納し易いためである。
【実施例】
【0061】
本発明に係る上衣ゲージ服を、JIS規格の男性上衣の標準寸法であるJY体型を例に挙げて説明する。
【0062】
表1(日本工業規格「成人男子用衣料のサイズ」 L 4004:2001から引用)に示す7つのサイズはJIS規格のJY体型に属するサイズである。
【表1】

【0063】
実施例にかかる上衣ゲージ服には、身頃後部に4本の線ファスナー部品を具備しており、右から(I)、(II)、(III)、(IV)と称する。一番右の線ファスナー部品(I)のみ右・線ファスナー部品であり、それ以外の(II)、(III)、(IV)の3本は左・線ファスナー部品である。
【0064】
前記4本の線ファスナー部品は首部から腰部にかけて放射状に配置されており、左右のファスナー部品を組み合わせて連結させると上衣ゲージ服のチェスト寸法とウエスト寸法が2cmずつ小さくなるように配置している。
【0065】
当該線ファスナー部品は放射状に配置されているため左右・線ファスナー部品を連結させることで肩幅も小さくすることができる。肩幅はJISでは規定されていないが、本実施例においては45.1cmから0.7cmずつ小さくなるように配置している。
【0066】
ファスナー部品が全開の時、実施例に係る上衣ゲージ服はJIS規格の94JY6に該当し、チェストが94cm、ウエストが76cmとなる。つまり、4本の線ファスナーを全開にして着用したとき、着用者は94JY6のサイズのゲージ服を着用したことになる。
【0067】
着用した94JY6に該当する上衣ゲージ服が着用者の体型よりも大きい場合であっても、着用者は当該上衣ゲージ服を脱がずに、前記右・線ファスナー部品(I)と前記左・線ファスナー部品(II)を連結させれば、着用者はチェストが92cm、ウエストが74cmの92JY5のゲージ服を着用していることになる。
【0068】
同様に、右・線ファスナー部品(I)と前記左・線ファスナー部品(III)を連結させることで、チェストが90cm、ウエストが72cmである90JY4、右・線ファスナー部品(I)と前記左・線ファスナー部品(IV)を連結させることで、チェストが88cm、ウエストが70cmである88JY3のゲージ服を着用していることになる。
【0069】
このように、右・線ファスナー部品(I)に連結させる左・線ファスナー部品を(II)、(III)、(IV)と変えることで、着用者は上衣ゲージ服を一度も脱がずに4つの異なるサイズの上衣ゲージ服を着用していることとなり、4つの異なるサイズの上衣ゲージ服に着替えた時と同様の効果を得られるため、着用者に負担をかけずに短い時間で最も適合するサイズを選択することができる。
【0070】
最も適合する上衣ゲージ服の左右・線ファスナー部品の組み合わせに該当するJIS規格のサイズを記録した後、着用者の細かな身体的特徴、例えばなで肩やハト胸等があれば記録する。
【0071】
袖丈の採寸は袖部を着用者の好みの長さに折り曲げて、折り曲げ部分の目盛を読んで行う。
【0072】
着丈は裾部に備えられている巻き取り式のメジャーを着用者の踵まで引き出して総丈を測定し、総丈の半分の寸法を着丈の目安とする。
【0073】
上衣ゲージ服が総丈の半分の寸法に満たない場合や、着用者が長い着丈を好む場合には帯状の裾部を左右の裾部と線ファスナーにて連結し、着用者が鏡に写しながら自ら確認して着丈を決定する。決定した着丈の寸法は、連結する帯状の裾部の幅の寸法が明らかであるので、上衣ゲージ服の着丈に前記連結した帯状の裾部の幅の寸法を加えることで採寸できる。
【0074】
つまり、右・線ファスナー部品(I)と前記左・線ファスナー部品(III)を連結させて90JY4のサイズが着用者に最も適合した場合は、90JY4の型紙を基本として用い、記録しておいた身体的特徴に応じて型紙を補正し、さらに採寸した袖丈及び着丈に前記型紙を補正し、補正後の型紙を用いて上衣を仕立てることで、着用者の体型に最も適合し着用感に優れ、かつ、見栄えのする上衣を仕立てることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る上衣ゲージ服は、一着の上衣ゲージ服が異なるサイズの複数のゲージ服と同等なので、一回の試着で複数の上衣ゲージ服を試着した時と同等の効果を得られて、着用者の試着回数を減らし、試着時間及び上衣提供者の接客時間を短縮して着用者の体型に最も適合した上衣ゲージ服を選択できるため、産業上の利用可能性が高い発明といえる。
【符号の説明】
【0076】
1 ファスナー部品
2 ファスナー部品
3 ファスナー部品
4 ファスナー部品
21 袖部の目盛
31 巻き取り式のメジャー
41 上衣ゲージ服裾部のファスナー部品
42 着脱式帯状の裾部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
身頃後部に首部から腰部にかけて末広がりの放射状に配置された複数のファスナーを具備し該複数のファスナーの開閉によってチェスト寸法とウエスト寸法の寸法差を一定に保った状態にて上衣の規定のサイズを変更できることを特徴とするオーダーメイドのための上衣ゲージ服。
【請求項2】
身頃後部に首部から腰部にかけて末広がりの放射状に配置された複数のファスナーを具備し該複数のファスナーの開閉によってチェスト寸法とウエスト寸法の寸法差を一定に保った状態にてチェスト寸法及びウエスト寸法が変更できることを特徴とするオーダーメイドのための上衣ゲージ服。
【請求項3】
前記複数のファスナーが4本の線ファスナー部品からなることを特徴とする請求項1又は2記載のオーダーメイドのための上衣ゲージ服。
【請求項4】
袖部に目盛を具備した請求項1乃至3いずれか記載のオーダーメイドのための上衣ゲージ服。
【請求項5】
身頃後部の裾部にメジャーを具備した請求項4記載のオーダーメイドのための上衣ゲージ服。
【請求項6】
身頃の裾部に着脱できる帯状の裾部を具備した請求項5記載のオーダーメイドのための上衣ゲージ服。




【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−60676(P2013−60676A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198762(P2011−198762)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(500032132)株式会社オンリー (1)