説明

オーディオ再生装置、オーディオ再生方法、及びオーディオ再生プログラム

【課題】ポータブル装置をオーディオ装置に接続して、このポータブル装置から出力されていたレベルと同じレベルの音量でオーディオ装置から楽曲音を出力する。
【解決手段】ケーブル30を介してポータブル装置10が接続されると、オーディオ機器20はポータブル装置10側の音量設定値を問い合わせる。ポータブル装置10は、音量記憶部17から音量制御信号VOL1に対応する音量設定値を読み出し、オーディオ機器20へ送信する。オーディオ機器20は、音量記憶部29内の音量設定テーブルを参照し、ポータブル装置10から得られた音量設定値に対応するオーディオ機器20側の音量設定値を設定し、これに応じた音量制御信号VOL2を増幅部24に与える。これにより、ポータブル装置10の増幅部13から出力されていたレベルとほぼ同じレベルの音量でオーディオ機器20のスピーカ25から楽曲音を出力することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ再生技術、特にポータブル装置と据え置き型のオーディオ機器を接続して再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不揮発性メモリに楽曲データ等を記憶するデジタルプレーヤと呼ばれるポータブル装置が普及している。特に、最近では、ポータブル装置に使用される不揮発性メモリの大容量化が進んだことや、記憶媒体として超小型のハードディスクが採用されたこと等から、極めて大量のコンテンツ(楽曲データ等)がポータブル装置に記憶できるようになっている。
【0003】
このため、ユーザは、例えば自己が所有するすべてのコンテンツをポータブル装置に格納し、出先等であっても、好みの楽曲を自由に選んでヘッドホンやイヤホン等で聞くことができる。また、帰宅した時には、ポータブル装置のヘッドホン等を使用する代わりに、このポータブル装置をステレオ装置等の据え置き型のオーディオ機器に接続し、オーディオ機器のスピーカから高音質の音楽を楽しむこともできる。
【0004】
下記特許文献1には、ポータブル装置とオーディオ機器を接続し、オーディオ機器が備える特有の機能でポータブル装置を制御することができるオーディオシステムが記載されている。
このオーディオシステムでは、ケーブルを介してポータブル装置をオーディオ機器に接続すると、接続を検出したポータブル装置からオーディオ機器に対して、記憶している楽曲管理データを送信する。オーディオ機器は、受信した楽曲管理データの中から再生する楽曲をランダムに選択し、その楽曲の再生指示をポータブル装置に送信する。
【0005】
ポータブル装置は、再生指示に従って選択された楽曲データを再生部で再生し、楽曲信号をオーディオ機器に供給する。オーディオ機器は、供給された楽曲信号を音響信号に変換して楽曲音をスピーカから出力する。これにより、ポータブル装置側にランダム再生機能が備わっていなくても、オーディオ機器の制御によってランダム再生を実現することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2007−172792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のオーディオシステムでは、次のような問題点があった。
即ち、ポータブル装置とオーディオ機器では、それぞれ音量設定が独立して行われるようになっている。このため、接続前にポータブル装置から出力されていた音量と、接続後にオーディオ装置から出力される音量が異なり、オーディオ装置側で音量を再調整する必要がある。
【0008】
特に、ポータブル装置に格納された楽曲データの録音レベルは楽曲毎に異なるため、ポータブル装置で再生する時点で、ユーザの好みに応じて音量調整が行われている。一方、オーディオ装置側の音量調整は、一般的に最後に使用して電源を切断する直前の状態に保持されている。従って、録音レベルが低いCD(コンパクト・ディスク)を聞くためにボリュームを上げた状態で使用していたオーディオ機器に、録音レベルの高い楽曲データを出力するポータブル装置を接続した場合、オーディオ機器のスピーカから突然大音響が出力されるおそれがある。
【0009】
また、ユーザによっては、オーディオ機器の電源を切る際に、音量を最小レベルにすることもある。このような場合、ポータブル装置を接続してもスピーカから音が出ないので、ポータブル装置を接続する都度、オーディオ機器の音量を調整する必要がある。
【0010】
本発明は、ポータブル装置をオーディオ機器に接続したときに、このポータブル装置から出力されていたレベルとほぼ同じレベルの音量でオーディオ機器のスピーカから楽曲音を出力することができるオーディオ再生装置やオーディオ再生方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るオーディオ再生装置は、楽曲データを記憶するポータブル装置と、スピーカから楽曲音を出力するオーディオ機器とを接続して構成されるオーディオ再生装置であって、前記ポータブル装置は、前記楽曲データが記憶された楽曲記憶手段から楽曲データを読み出して楽曲信号を再生する再生手段と、前記楽曲信号を出力する出力手段と、前記楽曲信号を前記出力手段から所望レベルの楽曲音として出力するために第1の音量設定値を入力する操作手段と、前記楽曲信号を前記第1の音量設定値に応じたレベルに増幅して前記出力手段に出力する第1の増幅手段と、前記オーディオ機器からの問い合わせに応じて前記第1の音量設定値を出力する第1の制御手段とを備えている。
また、前記オーディオ機器は、前記ポータブル装置に対して前記第1の音量設定値を問い合わせ、該第1の音量設定値に基づいて第2の音量設定値を出力する第2の制御手段と、前記楽曲信号を前記第2の音量設定値に応じたレベルに増幅して前記スピーカから楽曲音を出力する第2の増幅手段とを備えることを特徴とする。
【0012】
なお、前記第2の制御手段は、前記第1の音量設定値と前記第2の音量設定値の関係を固定的に対応付けるための音量設定テーブルを有することができる。
【0013】
また、前記第2の制御手段は、前記第1の音量設定値と前記第2の音量設定値を対応付けるための音量設定テーブルと、前記スピーカから出力される楽曲音のレベルを変更するために、前記第2の音量設定値を変更する操作部とを有し、前記第2の増幅手段によって前記スピーカから前記楽曲音の出力が開始されたあと、一定時間内に前記操作部に対して前記第2の音量設定値を変更する操作が行われた場合に、該操作に基づいて前記音量設定テーブルの内容を変更するように構成しても良い。
【0014】
更に、前記第1の制御手段は、前記オーディオ機器からの問い合わせに応じて前記第1の音量設定値の平均値を出力するように構成することができる。
【0015】
また、前記第1の制御手段は、前記第1の音量設定値の変化を所定時間だけ記憶する記憶部を有し、前記オーディオ機器からの問い合わせに応じて、前記記憶部に記憶された所定時間前の前記第1の音量設定値を読み出して出力するように構成しても良い。
【0016】
本発明の第2の観点に係るオーディオ再生方法は、楽曲データが記憶された楽曲記憶手段から楽曲データを読み出して楽曲信号を再生する再生手段、及び操作手段から入力された第1の音量設定値に従って前記楽曲信号を増幅して出力手段に出力する第1の増幅手段を備えるポータブル装置と、前記ポータブル装置から与えられる前記楽曲信号を第2の音量設定値に応じたレベルに増幅してスピーカから楽曲音を出力する第2の増幅手段を備えるオーディオ機器とを接続したオーディオ再生装置によるオーディオ再生方法であって、
前記オーディオ機器が、前記ポータブル装置の接続を検出したときに、該ポータブル装置に対して前記第1の音量設定値を問い合わせる処理と、
前記ポータブル装置が、前記オーディオ機器からの問い合わせに応じて前記第1の音量設定値を送信する処理と、
前記オーディオ機器が、前記ポータブル装置から受信した前記第1の音量設定値に対応する第2の音量設定値を設定する処理と、
前記オーディオ機器の第2の増幅手段が、前記ポータブル装置から与えられる前記楽曲信号を前記第2の音量設定値に応じたレベルに増幅してスピーカから楽曲音を出力する処理とを、順次行うことを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の観点に係るオーディオ再生プログラムは、楽曲データを記憶するポータブル装置とスピーカから楽曲音を出力するオーディオ機器とを接続し、前記ポータブル装置側で設定された音量設定値に従って前記オーディオ装置側のスピーカから所望レベルで楽曲音を出力するために、コンピュータを用いて、
前記オーディオ機器が、前記ポータブル装置の接続を検出したときに、該ポータブル装置に対して前記音量設定値を問い合わせる処理と、
前記ポータブル装置が、前記オーディオ機器からの問い合わせに応じて前記音量設定値を送信する処理と、
前記オーディオ機器が、前記ポータブル装置から受信した前記音量設定値に対応する前記所望レベルを設定する処理とを、順次実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、オーディオ機器にポータブル装置が接続されたときに、オーディオ機器がポータブル装置側の第1の音量設定値を問い合わせ、ポータブル装置から得られた第1の音量設定値に対応するオーディオ機器側の第2の音量設定値に従って、ポータブル装置から与えられる楽曲信号を増幅してスピーカから出力するように構成している。これにより、ポータブル装置をオーディオ機器に接続して、このポータブル装置から出力されていたレベルと同じレベルの音量でオーディオ機器のスピーカから楽曲音を出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態のオーディオ再生装置は、楽曲データを有し楽曲信号を出力するポータブル装置10と、このポータブル装置10から供給される楽曲信号を適切なレベルに増幅して楽曲音を出力するオーディオ機器20と、これらの間を接続するケーブル30で構成されている。
【0020】
ポータブル装置10は、圧縮符号化された音楽ファイルである複数の楽曲データやこれらの楽曲データを管理するための楽曲管理データが記憶された、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリや超小型ハードディスク等からなる楽曲記憶部11を有している。楽曲記憶部11には、再生部12が接続されている。
【0021】
再生部12は、楽曲記憶部11から楽曲データを読み出して復号化することにより、アナログの楽曲信号を再生するものである。再生部12で再生された楽曲信号は、ヘッドホン等を駆動するために増幅部13に与えられると共に、ライン出力L,Rとしてオーディオ機器20側へ転送するために、コネクタC1に出力されるようになっている。
【0022】
増幅部13は、再生部12で再生された楽曲信号をヘッドホン等を駆動できるレベルに電力増幅するもので、音量制御信号VOL1によってその出力レベルを調整することができるようになっている。増幅部13の出力側は、ヘッドホン・ジャックJに接続されている。
【0023】
コネクタC1は、ポータブル装置10とオーディオ機器20のと間を、ケーブル30を介して着脱自在に接続するためのもので、再生部12で再生された楽曲信号(左右のライン出力L,R)の他、これらのポータブル装置10とオーディオ機器20間の制御信号CONを転送するようになっている。制御信号CONは、通信部14を介して制御部15との間で送受信されるようになっている。則ち、通信部14は、制御部15で使用される論理レベルの信号と、ケーブル30で転送される信号(例えば、USB規格の信号)との間のレベル変換等を行うものである。
【0024】
制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)とメモリで構成され、このメモリに格納された制御用のプログラムをCPUで順次読み出して実行することにより、ポータブル装置10全体の動作を制御するものである。また、制御部15は、楽曲記憶部11に記憶された楽曲データを楽曲信号にデコードする機能も有している。制御部15には、楽曲記憶部11、再生部12、増幅部13、及び通信部14が接続される他、操作部16と音量記憶部17が接続されている。
【0025】
操作部16は、ポータブル装置10の電源をオン・オフしたり、再生する楽曲を選択したり、ヘッドホンの音量を調整したりするためのものである。音量記憶部17は、操作部16で設定された音量設定値を記憶するものである。この音量記憶部17に記憶された音量設定値は、制御部15から増幅部13に与える音量制御信号VOL1に対応する値である。
【0026】
オーディオ機器20は、ポータブル装置10のコネクタC1に対応して、このポータブル装置10から与えられるライン出力L,Rを入力すると共に、ポータブル装置10との間で制御信号CONを送受信するため、ケーブル30を着脱自在に接続するコネクタC2を有している。
【0027】
コネクタC2に入力されるライン出力L,Rは、チューナ21やディスク再生部22の出力信号と共に、セレクタ23の入力側に与えられるようになっている。なお、チューナ21は、FM放送等を受信する受信機であり、ディスク再生部22は、CD,MD,DVD等の記憶メディアに記録された楽音データから楽曲信号を再生するものである。
【0028】
セレクタ23は、入力側の信号を選択信号SELに従って選択して出力するもので、このセレクタ23の出力側に増幅部24が接続されている。増幅部24は、セレクタ23で選択されて出力される楽曲信号を、スピーカ等を駆動できるレベルに電力増幅するもので、音量制御信号VOL2によってその出力レベルを調整することができるようになっている。増幅部24の出力側には、楽曲音を出力するスピーカ25が接続されている。
【0029】
一方、コネクタC2で送受信する制御信号CONは、通信部26を介して制御部27との間で送受信されるようになっている。則ち、通信部26は、制御部27で使用される論理レベルの信号と、ケーブル30で転送される信号との間のレベル変換等を行うものである。
【0030】
制御部27は、ポータブル装置10の制御部15と同様に、CPUとメモリで構成され、このメモリに格納された制御用のプログラムをCPUで順次読み出して実行することにより、オーディオ機器20全体の動作を制御するものである。制御部27には、チューナ21、ディスク再生部22、セレクタ23、増幅部24、及び通信部26が接続される他、操作部28と音量記憶部29が接続されている。なお、セレクタ23に対する選択信号SELや、増幅部24に対する音量制御信号VOL2は、この制御部27から出力されるようになっている。
【0031】
操作部28は、ユーザの好みに応じてオーディオ再生装置全体の動作の指示を行うためのもので、オーディオ機器20のみならず、ポータブル装置10に対する操作(例えば、楽曲記憶部11内の楽曲管理データを呼び出して、再生する楽曲を指定する操作等)もできるようになっている。
【0032】
音量記憶部29は、操作部28でスピーカ出力のために設定された音量設定値を記憶するものである。この音量記憶部29に記憶された音量設定値は、制御部27から増幅部24に与えられる音量制御信号VOL2に対応する値である。更に、この音量記憶部29には、ポータブル装置10の音量設定値とオーディオ機器20の音量設定値の対応関係を示す音量設定テーブルが記憶されている。
【0033】
ここで、音量記憶部29に記憶される音量設定テーブルについて説明する。
ポータブル装置10のヘッドホン・ジャックJや、オーディオ機器20のスピーカ25から出力される音量は、一般的に数値によって段階的に設定されるようになっている。音量設定値の範囲は、例えばポータブル装置10では、0(最小値)〜19(最大値)の20段階となっており、オーディオ機器20では、0(最小値)〜39(最大値)の40段階となっている。これらの数値は、実際の出力電力の値(例えば1W等)を示すものではなく、装置や機器で任意に設定される相対的な値である。従って、ポータブル装置10で音量設定値を10に設定してヘッドホンで聴いていた楽曲を、オーディオ機器20のスピーカ25で聴く場合、このオーディオ機器20の音量設定値を同じ10に設定しても、同じレベルで違和感なく聴くことができるとは限らない。
【0034】
このため、ポータブル装置10の出力からオーディオ機器20の出力に切り替えたときに、ほとんど同じレベルと感じられるような音量設定値の対応関係が予め設定されている必要がある。音量設定テーブルは、図2に一例を示すように、ポータブル装置10の音量設定値毎に、オーディオ機器20から同じレベルの音量を出力する場合の音量設定値を対応付けて記録したものである。
【0035】
次に、図1のオーディオ再生装置の動作を、ポータブル装置10とオーディオ機器20に分けて説明する。
(1) ポータブル装置10の動作
ポータブル装置10では、操作部16からの操作入力、またはケーブル30を介してオーディオ機器20から与えられるコマンドに従い、制御部15の制御によって各種の処理が行われる。
【0036】
図3のステップS11において、制御部15は、操作部16からの操作入力またはオーディオ機器20からのコマンド受信等の新たな動作要求を監視し、新たな動作要求がない場合はそれまでの動作(例えば楽曲データの再生出力等)を継続する(ステップS11;いいえ)。操作入力等が検出されると(ステップS11;はい)ステップS12へ進む。
【0037】
ステップS12において、制御部15は、新たな動作要求が楽曲選択操作または再生コマンド受信によるものであるか否かを判定する。新たな動作要求が、楽曲選択操作または再生コマンド受信の場合(ステップS12;はい)はステップS13へ進み、それ以外の場合(ステップS12;いいえ)はステップS14へ進む。
【0038】
ステップS13において、制御部15は、楽曲選択操作または受信した再生コマンドに従って、再生部12に対して楽曲記憶部11から楽曲データを読み出して再生させるための指示を行う(ステップS13)。これにより、再生部12は、指定された楽曲データを楽曲記憶部11から読み出し、復号化してアナログに変換した楽曲信号を増幅部13に与えると共に、ライン出力L,RとしてコネクタC1に出力する。
【0039】
増幅部13に与えられた楽曲信号は、この増幅部13によって増幅され、制御部15から与えられる音量制御信号VOL1に従って出力電力が調整されて、ヘッドホン・ジャックJに出力される。なお、コネクタC1に出力されるライン出力L,Rのレベルは、音量制御信号VOL1に影響されない。ステップS13のあと、ステップS11に戻る。
【0040】
ステップS14において、制御部15は、新たな動作要求が音量設定操作か否かを判定する。新たな動作要求が、音量設定操作の場合(ステップS14;はい)はステップS15へ進み、それ以外の場合(ステップS14;いいえ)はステップS17へ進む。
【0041】
ステップS15において、制御部15は操作部16によって設定された音量設定値を音量記憶部17に記憶する。更に、ステップS16において、制御部15は、設定された音量設定値に基づいて増幅部13に与える音量制御信号VOL1を変更する。これにより、増幅部13からヘッドホン・ジャックJに出力される出力電力が変更される(ステップS16)。ステップS16のあと、ステップS11に戻る。
【0042】
ステップS17において、制御部15は、新たな動作要求がオーディオ機器20からの音量設定値の通知を要求するコマンドか否かを判定する。新たな動作要求が、オーディオ機器20からの音量設定値の通知を要求するコマンドの場合(ステップS17;はい)はステップS18へ進み、それ以外の場合(ステップS17;いいえ)はステップS19へ進む。
ステップS18において、制御部15は、音量記憶部17に記憶されている音量設定値を読み出し、通信部14を介してオーディオ機器20側へ送信する。ステップS18のあと、ステップS11に戻る。
【0043】
ステップS19へ進んだ場合(ステップS17;いいえ)は、制御部15は、ステップS11で与えられたその他の操作要求(例えば、楽曲再生の一時停止や終了等の要求)に応じた処理を行い、ステップS11へ戻る。
【0044】
(2) オーディオ機器20の動作
オーディオ機器20は、ポータブル装置10と接続してこのポータブル装置10から出力される楽曲信号を増幅してスピーカ25から楽曲音を出力する他、選択信号SELによってチューナ21やディスク再生部22の出力を選択してスピーカ25から楽曲音等を出力することができるが、ここではポータブル装置10と接続した場合の動作を説明する。
【0045】
図4のステップS21において、制御部27は、ケーブル30及び通信部26を介して与えられるポータブル装置10からの制御信号CONを監視し、ポータブル装置10が接続されたか否かを判定する。ポータブル装置10が接続されていない場合(ステップS21;いいえ)はステップS21による監視を継続し、ポータブル装置10の接続が確認される(ステップS21;はい)とステップS22へ進む。なお、このステップS21の処理は、オーディオ機器20の増幅動作用の電源が投入されていない待機状態においても、行われるようになっている。
【0046】
ステップS22において、制御部27は、オーディオ機器20の電源がオンとなっているか否かを判定する。電源がオンとなっていない場合(即ち、オフの場合)(ステップS22;いいえ)はステップS23へ進み、制御部27は増幅動作用の電源を投入し、ステップS24へ進む。電源が既にオンになっている場合(ステップS22;はい)は、直ちにステップS24へ進む。
【0047】
ステップS24において、制御部27は、ポータブル装置10に対してその音量設定値の通知を要求するコマンドを送信し、このポータブル装置10における音量設定値を取得する。これは、図3におけるポータブル装置10側のステップS17,S18の処理に対応するものである。ステップS24のあと、ステップS25へ進む。
【0048】
ステップS25において、制御部27は、音量記憶部29に記憶されている音量設定テーブルを参照し、ポータブル装置10における音量設定値に対応するオーディオ機器20の音量設定値を調べる。更に、制御部27は、音量設定テーブルから得たオーディオ機器20の音量設定値に基づいて、増幅部24に対する音量制御信号VOL2を生成して出力する。これにより、オーディオ機器20のスピーカ25から出力される音量が、ポータブル装置10側の音量設定値に応じて設定される。ステップS25のあと、ステップS26へ進む。
【0049】
ステップS26において、制御部27は、セレクタ23がポータブル装置10を選択しているか否かを判定する。セレクタ23がポータブル装置10以外(即ち、チューナ21やディスク再生部22)を選択している場合(ステップS26;ポータブル装置以外)はステップS27へ進み、このセレクタ23でポータブル装置10を選択するように切り替え、ステップS28へ進む。セレクタ23が既にポータブル装置10を選択している場合(ステップS26;ポータブル装置)は、直ちにステップS28へ進む。
【0050】
ステップS28において、制御部27は、操作部28からの入力等に基づいて、ポータブル装置10に楽曲データを再生して楽曲信号を出力させるための再生コマンドを送信し、ステップS29へ進む。再生コマンドを受信したポータブル装置10では、図3のステップS12,S13の処理が行われ、再生された楽曲信号がケーブル30を介してオーディオ機器20のセレクタ23に送信される(ステップS28)。
【0051】
ステップS29において、ポータブル装置10から送られてきた楽曲信号は、オーディオ機器20のセレクタ23で選択され、増幅部24に与えられる。増幅部24は、セレクタ23で選択された楽曲信号を、音量制御信号VOL2に応じたレベルに増幅し、スピーカ25から出力する。
【0052】
以上詳細に説明したように、本実施形態のオーディオ再生装置は、オーディオ機器20にポータブル装置10が接続されたときに、オーディオ機器20がポータブル装置10側の音量設定値を問い合わせ、ポータブル装置10から得られた音量設定値に対応するオーディオ機器20側の音量設定値に従って、増幅部24に対する音量制御信号VOL2を出力するように構成している。これにより、ポータブル装置10をオーディオ機器20に接続して、このポータブル装置10から出力されていたレベルと同じレベルの音量でオーディオ機器20から楽曲音を出力することができるという利点がある。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、次のような種々の変形が可能である。
(a) 音量設定テーブルは、予め固定的に設定されたものである必要はなく、ユーザがポータブル装置10をオーディオ機器20に接続した後、音量調整をした場合に、その音量調整後の音量設定値に基づいて修正を加えるような学習機能を持たせるようにしても良い。
【0054】
例えば、ポータブル装置10から受信した音量設定値xに基づいて音量設定テーブルを参照し、オーディオ機器20側の音量設定値yを定めて楽曲音をスピーカ25から出力開始した直後(例えば、10秒以内)に、操作部28からスピーカ25の音量の調整操作が行われた場合、その調整後の音量設定値zをポータブル装置10の音量設定値xに対するオーディオ機器20側の音量設定値として音量設定テーブルを修正する。或いは、音量設定値yとzの平均値等を修正後の音量設定値とすることもできる。
【0055】
(b) ユーザによっては、ポータブル装置10を用いてヘッドホンでの楽曲音の聴取を終了するときに、次回のヘッドホンによる楽曲音の聴取の際に、過大な音量で再生されることを避けるために、音量を小さくして(または最小にして)ヘッドホンでの聴取を終了させることもある。この場合、オーディオ機器20で取得するポータブル装置10側の音量設定値は、実際よりも小さな値となってしまう。このような状況を避けるため、ポータブル装置10の音量記憶部17に音量設定値の平均値を記憶しておき、オーディオ機器20からの問い合わせに対して、その平均値を出力するように構成しても良い。
【0056】
或いは、音量記憶部17に所定時間前(例えば、聴取終了から30秒前)の音量設定値を記憶させておき、オーディオ機器20からの音量設定値の問い合わせに応じて、この音量記憶部17に記憶された所定時間(即ち、30秒)前の音量設定値を読み出して出力するように構成しても良い。
【0057】
(c) ポータブル装置10からオーディオ機器20に、アナログの楽曲信号をライン出力L,Rとして出力しているが、楽曲記憶部11から読み出されたディジタルの楽曲データをオーディオ機器20に出力するように構成することもできる。但し、その場合には、オーディオ機器20側で、図示しないD/Aコンバータにより楽曲データをアナログに変換する必要がある。
【0058】
(d) 図1に示す構成や、図3及び図4に示す動作は一例であり、ポータブル装置10やオーディオ機器20の構成と動作は、例示したものに限定されない。例えば、オーディオ機器20の操作部28は、制御部27に直結した構成となっているが、赤外線通信等を使用したリモートコントローラを用いても良い。
【0059】
(e) ポータブル装置10とオーディオ機器20の間の接続は、必ずしもケーブル30を使用する必要はない。例えば、Bluetooth(登録商標)等の短距離無線通信を用いて接続することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態を示すオーディオ再生装置の構成図である。
【図2】図1中の音量設定テーブルの一例を示す図である。
【図3】図1中のポータブル装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図1中のオーディオ機器の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
10 ポータブル装置
11 楽曲記憶部
12 再生部
13,24 増幅部
14,26 通信部
15,27 制御部
16,28 操作部
17,29 音量記憶部
20 オーディオ機器
23 セレクタ
25 スピーカ
30 ケーブル
C1,C2 コネクタ
J ヘッドホン・ジャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲データを記憶するポータブル装置と、スピーカから楽曲音を出力するオーディオ機器とを接続して構成されるオーディオ再生装置であって、
前記ポータブル装置は、
前記楽曲データが記憶された楽曲記憶手段から楽曲データを読み出して楽曲信号を再生する再生手段と、
前記楽曲信号を出力する出力手段と、
前記楽曲信号を前記出力手段から所望レベルの楽曲音として出力するために第1の音量設定値を入力する操作手段と、
前記楽曲信号を前記第1の音量設定値に応じたレベルに増幅して前記出力手段に出力する第1の増幅手段と、
前記オーディオ機器からの問い合わせに応じて前記第1の音量設定値を出力する第1の制御手段と、を備え、
前記オーディオ機器は、
前記ポータブル装置に対して前記第1の音量設定値を問い合わせ、該第1の音量設定値に基づいて第2の音量設定値を出力する第2の制御手段と、
前記楽曲信号を前記第2の音量設定値に応じたレベルに増幅して前記スピーカから楽曲音を出力する第2の増幅手段と、を備える
ことを特徴とするオーディオ再生装置。
【請求項2】
前記第2の制御手段は、
前記第1の音量設定値と前記第2の音量設定値の関係を固定的に対応付けるための音量設定テーブルを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のオーディオ再生装置。
【請求項3】
前記第2の制御手段は、
前記第1の音量設定値と前記第2の音量設定値を対応付けるための音量設定テーブルと、
前記スピーカから出力される楽曲音のレベルを変更するために、前記第2の音量設定値を変更する操作部とを有し、
前記第2の増幅手段によって前記スピーカから前記楽曲音の出力が開始されたあと、一定時間内に前記操作部に対して前記第2の音量設定値を変更する操作が行われた場合に、該操作に基づいて前記音量設定テーブルの内容を変更するように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載のオーディオ再生装置。
【請求項4】
前記第1の制御手段は、前記オーディオ機器からの問い合わせに応じて前記第1の音量設定値の平均値を出力する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のオーディオ再生装置。
【請求項5】
前記第1の制御手段は、前記第1の音量設定値の変化を所定時間だけ記憶する記憶部を有し、
前記オーディオ機器からの問い合わせに応じて、前記記憶部に記憶された所定時間前の前記第1の音量設定値を読み出して出力する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のオーディオ再生装置。
【請求項6】
楽曲データが記憶された楽曲記憶手段から楽曲データを読み出して楽曲信号を再生する再生手段、及び操作手段から入力された第1の音量設定値に従って前記楽曲信号を増幅して出力手段に出力する第1の増幅手段を備えるポータブル装置と、
前記ポータブル装置から与えられる前記楽曲信号を第2の音量設定値に応じたレベルに増幅してスピーカから楽曲音を出力する第2の増幅手段を備えるオーディオ機器とを接続したオーディオ再生装置によるオーディオ再生方法であって、
前記オーディオ機器が、前記ポータブル装置の接続を検出したときに、該ポータブル装置に対して前記第1の音量設定値を問い合わせる処理と、
前記ポータブル装置が、前記オーディオ機器からの問い合わせに応じて前記第1の音量設定値を送信する処理と、
前記オーディオ機器が、前記ポータブル装置から受信した前記第1の音量設定値に対応する第2の音量設定値を設定する処理と、
前記オーディオ機器の第2の増幅手段が、前記ポータブル装置から与えられる前記楽曲信号を前記第2の音量設定値に応じたレベルに増幅してスピーカから楽曲音を出力する処理と、を順次行う
ことを特徴とするオーディオ再生方法。
【請求項7】
楽曲データを記憶するポータブル装置とスピーカから楽曲音を出力するオーディオ機器とを接続し、前記ポータブル装置側で設定された音量設定値に従って前記オーディオ装置側のスピーカから所望レベルで楽曲音を出力するために、コンピュータを用いて、
前記オーディオ機器が、前記ポータブル装置の接続を検出したときに、該ポータブル装置に対して前記音量設定値を問い合わせる処理と、
前記ポータブル装置が、前記オーディオ機器からの問い合わせに応じて前記音量設定値を送信する処理と、
前記オーディオ機器が、前記ポータブル装置から受信した前記音量設定値に対応する前記所望レベルを設定する処理と、を順次実行させる
ことを特徴とするオーディオ再生プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−86603(P2010−86603A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254605(P2008−254605)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】