説明

オーディオ装置

【課題】 入力音の内容によらずサラウンド音の出力を維持して違和感の発生を防止することができる「オーディオ装置」を提供すること。
【解決手段】 オーディオ装置100は、2チャンネルのステレオ信号であるL信号とR信号の相関の程度を算出する相関値算出部40と、R信号の中のL信号と相関の高い成分を適応アルゴリズムを用いて適応フィルタのフィルタ係数を更新することにより抽出してL信号から差し引くことによりサラウンドL信号を生成するSL信号生成部20と、同様にしてサラウンドR信号を生成するSR信号生成部30と、相関値算出部40によって算出された相関値の大小に応じて、SL信号生成部20およびSR信号生成部30による適応アルゴリズムにおいてフィルタ係数の更新を行う際に用いられるステップサイズパラメータμの値を可変に設定するμ設定部42とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2チャンネルのステレオ信号から2組以上のサラウンド信号を生成するオーディオ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2チャンネルのステレオ信号からサラウンド信号を生成するオーディオ装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このオーディオ装置では、入力されたステレオ信号INL、INRを適応無相関化器に通すことにより、サラウンド信号SL、SRを生成している。例えば、この適応無相関化器は、FIRフィルタによる適応信号処理によって実現される。
【特許文献1】特開2003−333698号公報(第3−6頁、図1−13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示されたオーディオ装置では、例えばサラウンド信号SLの生成は、ステレオ信号INLからステレオ信号INRに含まれるこのステレオ信号INLに相関の高い成分を差し引くことにより行われており、これをLMS(Least Mean Square)アルゴリズムによってフィルタ特性が更新されるFIRフィルタによって実現している。サラウンド信号SRについても同様である。このため、モノラル信号のように非常に相関の高いステレオ信号INL、INRが入力されると、サラウンド信号SL、SRの成分がほとんど消失してしまい、サラウンド用のスピーカからほとんど音が出力されない状態となって、オーディオ装置の聴取者に違和感を与えるという問題があった。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、入力音の内容によらずサラウンド音の出力を維持して違和感の発生を防止することができるオーディオ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明のオーディオ装置は、2チャンネルのステレオ信号であるL信号とR信号の相関の程度を算出する相関値算出手段と、R信号の中のL信号と相関の高い成分を適応アルゴリズムを用いて適応フィルタのフィルタ係数を更新することにより抽出して、L信号から差し引くことにより第1のサラウンド信号を生成する第1のサラウンド信号生成手段と、L信号の中のR信号と相関の高い成分を適応アルゴリズムを用いて適応フィルタのフィルタ係数を更新することにより抽出して、R信号から差し引くことにより第2のサラウンド信号を生成する第2のサラウンド信号生成手段と、相関値算出手段によって算出された相関値の大小に応じて、第1および第2のサラウンド信号生成手段による適応アルゴリズムにおいてフィルタ係数の更新を行う際に用いられるステップサイズパラメータμの値を可変に設定するμ設定手段とを備えている。L信号とR信号の相関の程度に応じてステップサイズパラメータμの値を可変に設定することにより、L信号とR信号の相関の程度に応じて変化するサラウンド信号が消失するまでの時間を調整することが可能になり、入力音の内容によらずサラウンド信号の出力を維持して違和感の発生を防止することが可能になる。
【0006】
また、上述したμ設定手段は、相関値が大きいときにステップサイズパラメータμを小さな値に、反対に、相関値が小さいときにステップサイズパラメータμを大きな値に設定することが望ましい。これにより、L信号とR信号の相関が高い場合にサラウンド信号が速やかに減衰することを防止することができ、サラウンド音の聴取者が感じる違和感を低減することが可能になる。
【0007】
また、上述した第1のサラウンド信号生成手段は、L信号を遅延させて出力する遅延手段と、R信号を適応フィルタに通した後の信号を遅延手段を通した後の信号から差し引いてエラー信号を生成する加算手段と、エラー信号のパワーが最小となるようにLMSアルゴリズムを用いて適応フィルタのフィルタ係数を更新するLMSアルゴリズム処理手段とを備え、第2のサラウンド信号生成手段は、R信号を遅延させて出力する遅延手段と、L信号を適応フィルタに通した後の信号を遅延手段を通した後の信号から差し引いてエラー信号を生成する加算手段と、エラー信号のパワーが最小となるようにLMSアルゴリズムを用いて適応フィルタのフィルタ係数を更新するLMSアルゴリズム処理手段とを備え、μ設定手段は、第1および第2のサラウンド信号生成手段に含まれるLMSアルゴリズム処理手段によってフィルタ係数を更新する際に用いられるステップサイズパラメータμの値を設定することが望ましい。これにより、適応フィルタを用いてR信号の中のL信号と相関の高い成分、あるいはL信号の中のR信号と相関の高い成分を抽出する際のフィルタ係数更新の収束の程度を可変することができ、L信号とR信号の相関の程度に応じてサラウンド音を調整することが可能になる。
【0008】
また、上述した相関値算出手段は、ステレオ信号がモノラル信号であるか否かを判定しており、μ設定手段は、相関値算出手段によってモノラル信号である旨の判定がなされたときにステップサイズパラメータμを小さな値に、モノラル信号でない旨の判定がなされたときにステップサイズパラメータμを大きな値に設定することが望ましい。これにより、L信号とR信号の相関が最も高いモノラル音声が入力されたときにサラウンド信号の減衰を低減することが可能となり、違和感の発生を防止することができる。また、モノラル音声か否かは比較的容易に判定することができることから、処理の簡略化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した一実施形態のオーディオ装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態のオーディオ装置の構成を示す図である。図1に示すオーディオ装置100は、車両に搭載されており、加算部10、12、LPF(ローパスフィルタ)14、SL信号生成部20、SR信号生成部30、相関値算出部40、μ設定部42を備えている。このオーディオ装置100には、6個(5.1ch)のスピーカ110、112、120、122、130、132が接続されている。
【0010】
一方の加算部10は、入力されるステレオ信号(L信号、R信号)を加算する。加算された信号は、聴取者の前方に設置されたセンタースピーカとしてのスピーカ110から出力される。他方の加算部12は、加算部10と同様に、入力されるステレオ信号を加算する。加算された信号は、LPF14を通して低域成分を抽出した後、聴取者の後方に設置されたサブウーハーとしてのスピーカ112から出力される。なお、本実施形態では、ステレオ信号を単純に加算してスピーカ110から出力したが、スピーカ110から出力する信号の生成方法はこれに限定されず、他の方法を用いるようにしてもよい。
【0011】
SL信号生成部20は、第1のサラウンド信号生成手段であって、入力されるL信号およびR信号に基づいてサラウンドL信号を生成し、聴取者の左あるいは左後方に設置されたスピーカ130から出力する。SR信号生成部30は、第2のサラウンド信号生成手段であって、入力されるL信号およびR信号に基づいてサラウンドR信号を生成し、聴取者の右あるいは右後方に設置されたスピーカ132から出力する。上述したサラウンドL信号およびサラウンドR信号の生成は、LMSアルゴリズムを用いて適応フィルタのフィルタ係数の値を更新することにより行われる。
【0012】
相関値算出部40は、相関値算出手段であって、入力されるL信号とR信号の相関値を算出する。入力されるステレオ信号がモノラル音声に近いほどL信号とR信号の相関値が大きくなる。μ設定部42は、μ設定手段であって、相関値算出部40によって算出された相関値に基づいて、SL信号生成部20あるいはSR信号生成部30によって適応フィルタのフィルタ係数の値を更新する際に用いられるステップサイズパラメータμの値を設定する。具体的には、相関値が大きいほど(モノラル音声に近いほど)ステップサイズパラメータμが小さな値に設定される。
【0013】
なお、入力されるステレオ信号の内のL信号は、聴取者の左前方に設置されたスピーカ120から直接出力される。また、入力されるステレオ信号の内のR信号は、聴取者の右前方に設置されたスピーカ122から直接出力される。
【0014】
図2は、SL信号生成部20およびSR信号生成部30の詳細構成を示す図である。図2に示すように、SL信号生成部20は、FIRフィルタ21、適応フィルタ(ADF)22、加算部23、LMSアルゴリズム処理部24を備えている。FIRフィルタ21は、遅延回路(遅延手段)として用いられており、入力されるL信号をタップ数(例えば32タップ)に応じた時間だけ遅延して出力する。適応フィルタ22は、FIRフィルタと同じ構成を有しており、入力されるR信号に対して所定のタップ係数Wを乗算して出力する。加算部23は、加算手段であって、FIRフィルタ21から出力されるL信号から適応フィルタ22から出力される信号を減算し、エラー信号eを出力する。LMSアルゴリズム処理部24は、LMSアルゴリズム処理手段であって、LMSアルゴリズムを用いて、加算部23から出力されるエラー信号eのパワーが最小となるように適応フィルタ22のフィルタ係数を可変する。また、加算部23から出力されるエラー信号eは、そのままサラウンドL信号(SL信号)として取り出され、スピーカ130から出力される。
【0015】
図3は、適応フィルタ22の詳細構成を示す図である。図3に示すように、適応フィルタ22は、複数の遅延素子221と、それぞれの遅延素子221に保持された信号に対して可変のフィルタ係数を乗算する乗算部222と、それぞれの乗算部222の出力を加算する加算部223とを備えている。複数の乗算部222のそれぞれのフィルタ係数(乗数)の値は、LMSアルゴリズム処理部24によって更新される。
【0016】
LMSアルゴリズム処理部24は、加算部23から出力されるエラー信号eのパワーが最小となるように適応フィルタ22のフィルタ係数の値を更新しており、適応フィルタ22では入力されたR信号の成分の内のL信号と相関の高い成分を抽出するようにフィルタ係数の値が更新される。すなわち、LMSアルゴリズム処理部24には、R信号と加算部23から出力されるエラー信号eとが入力されており、これらのR信号とエラー信号eがLMSアルゴリズムによって処理されることにより、LMSアルゴリズム処理部24から適応フィルタ22内の各乗算部222に対してフィルタ係数の更新指令が出力され、各遅延素子221に保持された信号に重畳されるフィルタ係数の値が変更される。
【0017】
このように、適応フィルタ22によってR信号の中のL信号と相関の高い成分が抽出され、この成分が加算部23によってL信号から減算されている。したがって、加算部23から出力されるエラー信号eは、L信号の中でR信号と相関の高くない成分のみが含まれることになり、これをサラウンドL信号として用いている。
【0018】
ところで、LMSアルゴリズムは、瞬時自乗誤差を評価量としたアルゴリズムであり、LMSアルゴリズム処理部24は、以下の式にしたがってフィルタ係数Wの値を更新する。
【0019】
W(n+1)=W(n)+2μ・e(n)・R(n) …(1)
ここで、μはステップサイズパラメータであり、この値を大きく設定することによりフィルタ係数Wの収束が速くなり、反対にこの値を小さく設定することによりフィルタ係数Wの収束が遅くなる。
【0020】
上述したように、SL信号生成部20から出力されるサラウンドL信号は、L信号の中でR信号と相関の高くない成分のみを含んでいるため、相関の高いL信号とR信号(モノラル音声あるいはこれに近いL信号とR信号)が入力されると、サラウンドL信号の成分がほとんどなくなってしまう。本実施形態では、相関値算出部40によってL信号とR信号の相関値を算出し、高い相関値が得られた場合には、μ設定部42によって(1)式に示したステップサイズパラメータμの値を小さく設定している。例えば、相関値が所定値以上の場合にステップサイズパラメータμの値が0.0001に設定され、それ以外の場合にステップサイズパラメータμの値が0.001に設定される。これにより、適応フィルタ22のフィルタ係数の値を更新することによって行われる相関除去の度合いを弱めることができるため、サラウンドL信号の成分がほとんどなくなってしまうことを回避することができる。
【0021】
SR信号生成部30は、FIRフィルタ31、適応フィルタ(ADF)32、加算部33、LMSアルゴリズム処理部34を備えている。FIRフィルタ31は、遅延回路として用いられており、入力されるR信号をタップ数(例えば32タップ)に応じた時間だけ遅延して出力する。適応フィルタ32は、FIRフィルタと同じ構成を有しており、入力されるL信号に対して所定のタップ係数Wを乗算して出力する。加算部33は、FIRフィルタ31から出力されるR信号から適応フィルタ32から出力される信号を減算し、エラー信号eを出力する。LMSアルゴリズム処理部34は、LMSアルゴリズムを用いて、加算部33から出力されるエラー信号eのパワーが最小となるように適応フィルタ32のフィルタ係数を可変する。また、加算部33から出力されるエラー信号eは、そのままサラウンドR信号(SR信号)として取り出され、スピーカ132から出力される。
【0022】
LMSアルゴリズム処理部34は、加算部33から出力されるエラー信号eのパワーが最小となるように適応フィルタ32のフィルタ係数の値を更新しており、適応フィルタ32では入力されたL信号の成分の内のR信号と相関の高い成分を抽出するようにフィルタ係数の値が更新される。すなわち、LMSアルゴリズム処理部34には、L信号と加算部33から出力されるエラー信号eとが入力されており、これらのL信号とエラー信号eがLMSアルゴリズムによって処理されることにより、LMSアルゴリズム処理部34から適応フィルタ32内の各乗算部に対してフィルタ係数の更新指令が出力され、各遅延素子に保持された信号に重畳されるフィルタ係数の値が変更される。
【0023】
このように、適応フィルタ32によってL信号の中のR信号と相関の高い成分が抽出され、この成分が加算部33によってL信号から減算されている。したがって、加算部33から出力されるエラー信号eは、R信号の中でL信号と相関の高くない成分のみが含まれることになり、これをサラウンドR信号として用いている。
【0024】
ところで、LMSアルゴリズムは、瞬時自乗誤差を評価量としたアルゴリズムであり、LMSアルゴリズム処理部34は、以下の式にしたがってフィルタ係数Wの値を更新する。
【0025】
W(n+1)=W(n)+2μ・e(n)・L(n) …(2)
ここで、μはステップサイズパラメータであり、この値を大きく設定することによりフィルタ係数Wの収束が速くなり、反対にこの値を小さく設定することによりフィルタ係数Wの収束が遅くなる。
【0026】
上述したように、SR信号生成部30から出力されるサラウンドR信号は、R信号の中でL信号と相関の高くない成分のみを含んでいるため、相関の高いL信号とR信号(モノラル音声あるいはこれに近いL信号とR信号)が入力されると、サラウンドR信号の成分がほとんどなくなってしまう。本実施形態では、相関値算出部40によってL信号とR信号の相関値を算出し、高い相関値が得られた場合には、μ設定部42によって(2)式に示したステップサイズパラメータμの値を小さく設定している。これにより、適応フィルタ32のフィルタ係数の値が更新されて、L信号の中からR信号と相関の高い成分が抽出されるまでの時間が長くなるため、サラウンドR信号の成分がほとんどなくなってしまうことを回避することができる。
【0027】
このように、L信号とR信号の相関の程度に応じてステップサイズパラメータμの値を可変に設定することにより、L信号とR信号の相関の程度に応じて変化するサラウンド信号が消失するまでの時間を調整することが可能になり、入力音の内容によらずサラウンド信号の出力を維持して違和感の発生を防止することが可能になる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。上述した実施形態では、入力されるL信号とR信号に基づいて相関値算出部40によって相関値を算出したが、入力される信号フォーマットにモノラル音声かステレオ音声かの情報が含まれている場合には、相関値算出部40は、単にこの情報を検出してステレオ信号かモノラル信号かを判定するようにしてもよい。μ設定部42では、モノラル音声の場合にはステップサイズパラメータμを小さな値に設定し、ステレオ音声の場合にはステップサイズパラメータμを大きな値に設定する。これにより、L信号とR信号の相関が最も高いモノラル音声が入力されたときにサラウンド信号の減衰を低減することが可能となり、違和感の発生を防止することができる。また、モノラル音声か否かは比較的容易に判定することができることから、処理の簡略化が可能となる。
【0029】
図4は、ステップサイズパラメータμの可変設定に関する変形例を示す流れ図である。例えば、図1に示したオーディオ装置100の構成がCDプレーヤに内蔵あるいは外付けされているものとする。
【0030】
CDプレーヤによってCDに対するトラック再生が開始されると(ステップ100)、相関値算出部40は、再生信号としてモノラル信号を検出したか否かを判定する(ステップ101)。例えば、再生信号を生成するデコーダ(図示せず)によって再生信号がモノラル信号かステレオ信号かが識別されており、モノラル信号の場合には所定のフラグがセットされるものとすると、相関値算出部40はこのフラグがセットされたか否かを調べることによりステップ101の判定を行う。再生信号がモノラル信号である場合にはステップ101の判定において肯定判断が行われ、次に、μ設定部42は、モノラル信号用にμを小さな値(μ1)に設定する(ステップ102)。一方、再生信号がモノラル信号でない場合(ステレオ信号の場合)にはステップ101の判定において否定判断が行われ、次に、相関値算出部40は、ステレオ信号のL/R間の相関値が一定時間ある値(あるいは範囲)を超えたか否かを判定する(ステップ103)。ステレオ信号の中にはL/R間の相関が高い音楽等や、反対に相関が低い音楽等が存在する。相関が高い音楽等についてはステップ103の判定において肯定判断が行われ、次に、μ設定部42は、L/R間の相関が高いステレオ信号用にμを小さな値(μ2)に設定する(ステップ104)。また、相関が低い音楽等についてはステップ103の判定において否定判断が行われ、次に、μ設定部42は、L/R間の相関が低いステレオ信号用にμを大きな値(μ3)に設定する(ステップ105)。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一実施形態のオーディオ装置の構成を示す図である。
【図2】SL信号生成部およびSR信号生成部の詳細構成を示す図である。
【図3】適応フィルタの詳細構成を示す図である。
【図4】ステップサイズパラメータμの可変設定に関する変形例を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0032】
10、12、23、33 加算部
14 LPF(ローパスフィルタ)
20 SL信号生成部
21、31 FIRフィルタ
22、32 適応フィルタ(ADF)
24、34 LMSアルゴリズム処理部
30 SR信号生成部
40 相関値算出部
42 μ設定部
100 オーディオ装置
110、112、120、122、130、132 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2チャンネルのステレオ信号であるL信号とR信号の相関の程度を算出する相関値算出手段と、
前記R信号の中の前記L信号と相関の高い成分を適応アルゴリズムを用いて適応フィルタのフィルタ係数を更新することにより抽出して、前記L信号から差し引くことにより第1のサラウンド信号を生成する第1のサラウンド信号生成手段と、
前記L信号の中の前記R信号と相関の高い成分を適応アルゴリズムを用いて適応フィルタのフィルタ係数を更新することにより抽出して、前記R信号から差し引くことにより第2のサラウンド信号を生成する第2のサラウンド信号生成手段と、
前記相関値算出手段によって算出された相関値の大小に応じて、前記第1および第2のサラウンド信号生成手段による適応アルゴリズムにおいて前記フィルタ係数の更新を行う際に用いられるステップサイズパラメータμの値を可変に設定するμ設定手段と、
を備えることを特徴とするオーディオ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記μ設定手段は、前記相関値が大きいときに前記ステップサイズパラメータμを小さな値に、反対に、前記相関値が小さいときに前記ステップサイズパラメータμを大きな値に設定することを特徴とするオーディオ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1のサラウンド信号生成手段は、前記L信号を遅延させて出力する遅延手段と、前記R信号を前記適応フィルタに通した後の信号を前記遅延手段を通した後の信号から差し引いてエラー信号を生成する加算手段と、前記エラー信号のパワーが最小となるようにLMSアルゴリズムを用いて前記適応フィルタのフィルタ係数を更新するLMSアルゴリズム処理手段とを備え、
前記第2のサラウンド信号生成手段は、前記R信号を遅延させて出力する遅延手段と、前記L信号を前記適応フィルタに通した後の信号を前記遅延手段を通した後の信号から差し引いてエラー信号を生成する加算手段と、前記エラー信号のパワーが最小となるようにLMSアルゴリズムを用いて前記適応フィルタのフィルタ係数を更新するLMSアルゴリズム処理手段とを備え、
前記μ設定手段は、前記第1および第2のサラウンド信号生成手段に含まれる前記LMSアルゴリズム処理手段によって前記フィルタ係数を更新する際に用いられる前記ステップサイズパラメータμの値を設定することを特徴とするオーディオ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
前記相関値算出手段は、前記ステレオ信号がモノラル信号であるか否かを判定しており、
前記μ設定手段は、前記相関値算出手段によってモノラル信号である旨の判定がなされたときに前記ステップサイズパラメータμを小さな値に、モノラル信号でない旨の判定がなされたときに前記ステップサイズパラメータμを大きな値に設定することを特徴とするオーディオ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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