説明

オートクレーブ硬化サイクルの設計プロセス及び硬化方法

方法は、ポリイミド樹脂を染み込ませた繊維強化層を用いてプレフォームを形成するステップと、ポリイミド樹脂系から溶媒のほぼ全部を除去するに十分な第1の時間をかけて、第1の真空、圧力、及び温度条件で溶媒を除去し、ポリイミド樹脂のイミド化がほぼ完全に生じるに十分な第2の時間をかけて、第2の真空、圧力、及び温度条件下でポリイミド樹脂系をイミド化し、イミド化の後、プレフォームが所定の温度になるとプレフォームに圧力をかけることを含めた第3の真空、圧力、及び温度条件下でプレフォームを強化し、第4の真空、圧力、及び温度条件でプレフォームを固化し、タービンエンジン部品の形状を有する硬化積層構造物を形成するステップを含む。溶媒除去段階、イミド化段階、強化段階、及び固化段階における所望の結果に応じた、ポリイミド樹脂の全体的な硬化サイクルを設計するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してポリイミド樹脂系に関し、特に、硬化サイクルの設計プロセス及び硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温用熱硬化性ポリイミド樹脂系では、通常、単量体反応体、オリゴマー、又はその組み合わせから、重合体分子を原位置で合成する。この重合体合成反応は、例えば水、メタノール、エタノール等の幾つかの揮発性物質に関連する。材料中の不純物は、好ましくない揮発性物質の生成に繋がる重大な副反応を誘発することがある。更に、この反応プロセスには、所望のガラス転移温度(Tg)を得ると共に完全な強化を行うための、合成した重合体の架橋が含まれる。しわ、気孔、及び剥離等の欠陥を生じることなく、十分な架橋を行うことが望ましい。
【0003】
現時点では、ポリイミド部品の加工は困難である。気孔率が低くて安定性が高い複合材料をもたらすには、硬化サイクル全体にわたって、温度、圧力、及び真空プロファイルを均衡させる必要がある。硬化サイクルが不適切なときは、揮発性物質が捕捉されるか、架橋が不完全になるか、或いは意図しない別の副生成物が生じ、複合部品の性能が落ちることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/154015号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、重合体生成及び架橋時に溶媒の除去、反応の完了、及び揮発性物質の除去を十分に行うことができ且つ最小限の樹脂流出量で所望の最終的な反応生成物が得られる、高温用ポリイミド樹脂系の硬化サイクルの設計プロセスを得ることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
タービンエンジン複合部品の製造方法を提供する実施例により、上述した要求の1つ又は複数を満たすことができる。例示的な方法は、複数の繊維強化層に溶媒中のポリイミド樹脂系を染み込ませてプレフォームを形成するステップと;プレフォームを、溶媒の実質的に全部を除去するに十分な第1の時間間隔だけ、第1の真空、圧力、及び温度条件に曝すことにより、溶媒をポリイミド樹脂系から除去するステップであって、第1の真空及び温度条件が、溶媒除去中に樹脂が約2%よりも多く流出しないように制御されるステップと;溶媒除去後、プレフォームを、ポリイミド樹脂系をほぼ完全にイミド化するに十分な第2の時間間隔だけ、第2の真空、圧力、及び温度条件に曝すことにより、ポリイミド樹脂系をイミド化するステップであって、第2の真空及び温度条件は、イミド化のあいだ、反応で生じた揮発性物質のほぼ全部が除去され且つ目標の粘度のポリイミド樹脂系が得られるように制御されるステップと;イミド化後、プレフォームを、第3の真空、圧力、及び温度条件に曝すと共に、プレフォームが所定の温度になるとプレフォームに圧力をかけることにより、プレフォームを強化するステップであって、第3の真空及び温度条件は、目標の繊維体積分率が得られるように制御されるステップと;強化後、プレフォームを、第4の真空、圧力、及び温度条件に曝すことにより、プレフォームを固化させ、タービンエンジン部品の形状を有する硬化積層構造物を形成するステップと、を含む。
【0007】
ここで開示する実施例は、上述の例示的方法で形成されたタービンエンジン複合部品を含む。
【0008】
実施例は、ポリイミド樹脂系を含む複合部品を製造するための硬化サイクルの設計方法を含む。硬化サイクルは、溶媒除去部分、イミド化部分、強化部分、及び固化部分を含む。硬化サイクルの設計方法は、かける真空度と質量流量との間の第1の関係を複数決定し、予め選択しておいたポリイミド樹脂系の溶媒除去をモデリングするステップと;反応が95%完了する時間と温度との間の第2の関係を複数決定し、予め選択しておいたポリイミド樹脂系のイミド化反応速度をモデリングするステップと;反応温度と圧力をかけるまでの時間とかける圧力レベルと加熱速度との間の第3の関係を複数決定し、予め選択しておいたポリイミド樹脂系の強化をモデリングするステップと;加熱速度と応力挙動と部品形状との間の第4の関係を複数決定し、予め選択しておいたポリイミド樹脂系の固化をモデリングするステップと;上述したステップで決定した関係を用いて、ポリイミド樹脂系の真空、圧力、及び温度条件を含む全体的な硬化サイクルを準備するステップと、を含む。
【0009】
本明細書の結びの部分において、本発明とみなされる主題を具体的に挙げ、明確にクレームしている。しかし、添付図面に関連して以下の記述を参照することにより、本発明を最もよく理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】温度、真空、及び圧力の計画を示す典型的な硬化サイクルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
個々の図面を通じて同じ参照符号で同じ要素を示す図面を参照すると、図1に、高温用ポリイミド樹脂系の例示的な硬化サイクルの概略図を示す。
【0012】
一般に、高温用ポリイミド樹脂系の硬化サイクルには鍵となる4つの段階がある。本開示の目的において、その4段階を図1に示すように段階I:溶媒除去、段階II:重合(例えばイミド化)、段階III:強化、段階IV:固化として識別する。典型的な硬化サイクル全体にわたって、制御可能なプロセスパラメータは、温度、真空度、圧力である。これらのパラメータをプロセス全体にわたって調整して、全体的な硬化サイクルが得られる。この例示的な硬化サイクルの設計プロセスを、オートクレーブ内で硬化及び/又は成形される、複数のプレプレグ層を含む部品前駆体、即ちプレフォームに関して示す。部品前駆体は、典型的な「バッグ」に入れられる。オートクレーブのバッグに入れる方法等は、当該技術分野で周知である。ここで開示する原理は、他の硬化方法にも適用可能である。工具の設計を適切に行えば、ここで開示する硬化サイクルを他の複合材料の製造プロセス、例えば真空補助樹脂トランスファー成形(VARTM)、溶媒補助樹脂トランスファー成形(SARTM)、樹脂フィルム注入(RFI)プロセス等にも適用できる。所定のポリイミド樹脂系の全体的な硬化プロセスは、部品の厚み及び/又は形状に依存する。部品の厚みは、プレフォームを形成する際に用いる、積み重ねたプレプレグ層の数に依存する。ここで用いる「比較的薄い」又は「薄い」部品には、プレプレグ層が1〜12層含まれ、「比較的厚い」又は「厚い」部品には、プレプレグ層が13層以上含まれている。
【0013】
実施例では、段階1〜4が、プロセスの物理学に基づいてモデリングされる。次に、このモデルの量的結果を用いて、品質要求を満たす全体的なプロセスが開発される。この全体的なプロセスもまた、材料とプロセスの変化に強い必要がある。
【0014】
段階1:溶媒の除去。段階1のあいだに、溶媒のほぼ全部(>99%)を除去することが望ましい。また、バッグの下方に大きな圧力が蓄積しないようにすることで、部品の構造が無傷で損傷を受けていない状態に保つことも望ましい(部品にかかる圧力>0)。もうひとつの要件は、望ましくないレベルの樹脂の流出を生じることなく(樹脂流出<2%)、揮発性物質(一般には溶媒/水)の除去を行うことである。
【0015】
段階1のあいだ、加熱計画は一般に上昇及び保持サイクルを含む。説明を簡潔にするために、この段階を「上昇」及び「保持」であると記述するが、上昇/保持の如何なる組み合わせも本開示の範囲内であることを意図している。所定の加熱計画(上昇/保持)について、溶媒が発生又は放出し、気体圧力の蓄積によって圧力勾配が生じる。揮発性物質は、真空口から排出される。この加熱計画では、真空度対質量流量の曲線の作成が、揮発性物質発生速度、気泡の成長、及び気体の圧力、プレフォームの厚み、プレフォーム内の圧力勾配、プレフォームの浸透性及び圧縮性等を考慮に入れて行われる。その情報は、所定の加熱サイクルに十分な真空度をもたらすべく、プロセス設計において用いられる。このプロセス設計に、かける真空度対時間のプロファイルを含めてもよく、それによって、真空条件を一定値に限定するのではなく変化させることが可能になる。一般に、保持時間は、段階1で溶媒のほぼ全部が除去されるに十分な時間である。かける真空度を制御することで、樹脂が不足した積層品に繋がる樹脂の過度な流出、即ち樹脂流出が生じないように制御する。
【0016】
段階2:重合。段階2中に単量体又はオリゴマー状反応体が反応することで多数の副生成物(揮発性物質)が生じ且つ目標の分子量を有する重合体が1つ又は複数生じる。段階2を促進する鍵となる事項には、段階1と同様に揮発性物質除去も含まれる。しかし、段階2で除去する揮発性物質は一般に反応生成物であり、段階1の場合のような揮発する溶媒/水ではない。段階2のあいだ、所望の結果には、単量体の反応が実質的に完了すること(>95%)、加熱サイクル全体にわたってバッグの下方に圧力が蓄積しないこと(部品にかかる圧力>0)、樹脂の流出を実質的に生じることなく(樹脂流出<2%)、揮発性物質が除去されること、並びに目標度合の重合が達成されること(粘度が所定の値よりも高くなることでわかる)が含まれる。
【0017】
このプロセス設計では、単量体の反応を完了させるように、重合速度が特徴付けられる。保持時間は、反応が完了するに十分な時間だけ設けられる。例えば、様々な温度における簡単な設計曲線を、所定の材料系に関する温度と対比させた(重合が95%生じる)時間として描くことができる。全体的な硬化サイクルにおいて、最適化された保持時間と温度がもたらされる。再び、段階2の設計基準を満たすように、反応で生じた揮発性物質の除去と部品にかかる圧力が、段階1と同様に制御される。
【0018】
段階3:強化。強化中に重合体が溶融し、架橋プロセスが始まる。まず、樹脂の粘度が温度上昇に伴って低くなる。架橋反応が始まると分子量が指数関数的に高くなり、粘度が上昇し、材料がガラス相になる。所定の樹脂系について、粘度測定及び架橋速度に基づくモデルを用いて、様々な熱サイクルが粘度挙動について評価される。段階3に所望の結果には、樹脂の損失が最小限(<2%)であること、気孔率が3%未満であり剥離が全く生じていない、目標の繊維体積分率を有する完全に強化された部品が含まれる。
【0019】
樹脂の損失を最小限にし、完全な強化を行うための鍵となるパラメータには、圧力をかける際の温度、圧力の度合、及び加熱速度が含まれる。圧力をかける適時性は、気孔率の点からも重要である。二次的反応によってまだ揮発性物質が生じている時に圧力を尚早にかけてしまうと、気孔率が高くなり、特に工具側の気孔率が高くなる。圧力をかけるのが遅すぎると、樹脂が十分に流れず、強化が完全に行われなくなることがある。
【0020】
圧力をかけると、最初に樹脂に負荷が伝わり、その樹脂が流れてまだ満たされていない領域を満たすことで、繊維体積分率が高くなる。そのような布の圧縮性によって、繊維がかけられた圧力をいくらか共有する。そのように繊維が負荷を共有する度合は、繊維体積分率と共に指数関数的に高くなる。圧力をかけるのが遅すぎると、樹脂が十分には流れず、気孔が生じてしまう。強化中に樹脂が絞り出されすぎると、最終的な架橋中に樹脂が収縮を起こすので、連結した気孔又は剥離が生じることがある。
【0021】
段階4:固化。部品がようやく形成される固化中に、部品が応力を蓄積できるようになる。部品を工具から取り出す時に部品が破損しないように、固化中の残存応力は最小限にすべきである。固化中の所望の結果には、工具側の層にかかる応力が最小限になること、部品の厚み方向の応力が最小限になることが含まれる。
【0022】
応力を促進する主なパラメータは、部品が応力を蓄積し始めるだけの係数を有する状態として定義される、ゲル化点における部品と工具の温度である。そのような応力は、加熱速度、特に厚い領域を有する部品の加熱速度に関係している。工具側にかかる表面応力を解放させた後、部品が工具から取り出される。表面応力を管理しないと、変形が生じ、最終的に損傷が生じることがある。厚み方向の応力は、熱勾配と収縮によって生じる。所定の樹脂系/部品の形状配列について、固化中の工程パラメータが最適化されるように、加熱速度と応力挙動をモデリングできる。
【0023】
このように、高温用ポリイミド樹脂系の全体的な硬化サイクルの設計には、樹脂流出、揮発性物質除去、重合度合、強化、及び部品応力の管理が含まれる。
【0024】
以下に示す実施例では、プレポリマー混合物を用いて、適切な硬化条件下で硬化を行うと積層複合部品が得られる強化プレプレグ層を形成する。例示の樹脂系は、第1のプレポリマー成分と第2のプレポリマー成分を含む。第1のプレポリマー成分は、式:E1−[R1n−E1で表される第1のポリイミドオリゴマー、又は単量体混合物M1を含む。第2のプレポリマー成分は、単量体混合物M2と、式E2−[R2n−E2で表される第2のポリイミドオリゴマー、又はその組み合わせを含む。これらのオリゴマーにおいて、E1とE2はそれぞれに架橋性官能基を含み、nは約1から約5を含み、R1とR2はそれぞれに下記の構造式を有する。
【0025】
【化1】

このとき、Vは四価の置換又は非置換芳香単環式又は多環式連結構造物であり、Rは二価の置換又は非置換有機基である。また、M1とM2は各々が、少なくとも1種のジアミン化合物を含むジアミン成分、少なくとも1種の二無水物化合物を含む二無水物成分、及び少なくとも1種の末端基化合物を含む末端基成分を含む。
【実施例1】
【0026】
薄型パネル
ポリイミド樹脂系の例示的な全体的硬化サイクルを示す。硬化サイクルは、形成する部品の形状に応じて調整可能である。薄型パネルの場合の典型的な硬化サイクルは、次の段階を含む。
【0027】
段階1:溶媒除去:(制御に際しラギングサーモカップル、即ちLOTCを使用)。真空度を2.5”Hgに設定し、1°F/分で185°Fに加熱し、LOTCが175°Fに到達した時点で185°Fの保持を開始し、185°Fに2時間保持する。
【0028】
段階2:イミド化:0.3°F/分で260°Fに加熱し、LOTCが250°Fに到達した時点で真空度を5”Hgに設定し、1°F/分で480°Fに加熱し、LOTCが470°Fに到達した時点で480°Fの保持を開始し、480°Fに5時間保持する。
【0029】
段階3:強化:0.5°F/分で530°Fに加熱し、LOTCが500°Fに到達した時点で5psi/分で200psiに加圧し、圧力が25psiに到達した時点で真空を止めて排気を行い、大気圧にする。
【0030】
段階4:固化:1.5°F/分で625°Fに加熱し、LOTCが615°Fに到達した時点で625°Fの保持を開始し、625°Fに6時間保持し、5°F/分で550°Fに冷却し、1°F/分で500°Fに冷却し、3°F/分で150°Fに冷却する。
【実施例2】
【0031】
別の例示的な全体的硬化サイクルは、次のことを含む。真空度を5”Hgに設定し、2°F/分で190°Fに加熱し、190°Fに1時間保持し、2°F/分で220°Fに加熱し、220に1.5時間保持し、2°F/分で450°Fに加熱し、T=400°Fになった時点で真空度を最高まで上昇させ、450に3時間保持し、1°F/分で600°Fに加熱し、ラギングサーモカップルが470°Fに到達した時点で圧力を10psi/分でかけ、平均TCが590°Fに到達した時点で600°Fの保持を開始し、600°Fに6時間保持し、5°F/分で550°Fに冷却し、1°F/分で500°Fに冷却し、3°F/分で150°Fに冷却する。
【実施例3】
【0032】
部品が比較的厚い場合又は複雑な形状の場合には、硬化サイクルを変更して用いてもよい。全体的硬化サイクルは、次のことを含む。真空度を5”Hgに設定し、1°F/分で190°Fに加熱し、0.2°F/分で220°Fに加熱し、1°F/分で340°Fに加熱し、0.3°F/分で380°Fに加熱し、1°F/分で440°Fに加熱し、T=400°Fになった時点で真空度を最高まで上昇させ、0.2°F/分で470°Fに加熱し、ラギングサーモカップルが470°Fになった時点で圧力を10psi/分でかけ、1°F/分で600°Fに加熱し、600°Fに6時間保持し、0.5°F/分で550°Fに冷却し、1°F/分で500°Fに冷却し、3°F/分で150°Fに冷却する。
【実施例4】
【0033】
部品が比較的厚い場合又は複雑な形状の場合には、別の硬化サイクルを用いてもよい。全体的硬化サイクルは、次のことを含む。真空度を5”Hgに設定し、3°F/分で190°Fに加熱し、190°Fに1時間保持し、3°F/分で220°Fに加熱し、220°Fに1時間保持し、3°F/分で360°Fに加熱し、360°Fに1時間保持する。360°Fで1時間保持した後、真空度を最高まで上昇させ、3°F/分で480°Fに加熱し、480°Fに90分間保持し、3°F/分で510°Fに加熱し、510°Fに30分間保持する。510°Fで30分間保持した後、10psi/分で200psiまで圧力をかけながら1°F/分で540°Fに加熱し、30psiの時に排気を行い、540°Fに3時間保持し、1°F/分で580°Fに加熱し、580°Fに2時間保持し、1°F/分で610°Fに加熱し、610°Fに3時間保持し、0.5°F/分で450°Fに冷却し、1°F/分で350°Fに冷却し、4°F/分で140°Fに冷却する。
【実施例5】
【0034】
ポリイミド樹脂系の、別の例示的な全体的硬化サイクルは、下記のことを含む(薄型パネルの場合)。真空度を2−4”Hgに設定し、2°F/分で190°Fに加熱し、190°Fに1.5時間保持し、2°F/分で220°Fにまで上昇させ、220°Fに1.5時間保持し、2°F/分で484°Fにまで上昇させ、温度が440°Fに到達した時点で真空度を最高まで上昇させ、最高真空度をサイクルが終了するまで維持し、480°Fに3時間保持し、2°F/分で575°Fにまで上昇させ、575°Fに45分間保持し、1°F/分で650°Fにまで上昇させ、ラギングサーモカップルが595°Fに到達した時点で10psi/分で加圧して200psiにし、650°Fに5時間保持し、0.5°F/分で610°Fに冷却し、1°F/分で550°Fに冷却し、3°F/分で400°Fに冷却する。
【実施例6】
【0035】
実施例5の例示的なポリイミド樹脂系に関して、パネルが比較的厚い場合又は複雑な形状の場合のために変更した全体的硬化サイクルは、下記のことを含む。真空度を5”Hgに設定し、1°F/分で190°Fに加熱し、0.2°F/分で220°Fに加熱し、1°F/分で340°Fに加熱し、0.3°F/分で380°Fに加熱し、1°F/分で460°Fに加熱し、Tが440°Fになった時点で真空度を最高まで上昇させ、0.2°F/分で490°Fに加熱し、1°F/分で650°Fに加熱し、ラギングサーモカップルが470°Fに到達した時点で10psi/分で圧力をかけ、650°Fに6時間保持し、0.5°F/分で610°Fに冷却し、1°F/分で500°Fに冷却し、3°F/分で150°Fに冷却する。
【0036】
例示の樹脂系は、エンドキャッピング剤であるNE、BTDA、メタフェニレンジアミン(メタPDA)、及び4,4’−(1,3−フェニレン−ビス(1−メチルエチリデン
))ビスアニリン(ビス−M)の反応生成物(オリゴマー)を含む粉末から成る第1のプレポリマー成分を含む。このポリイミドオリゴマーに相当する市販のプレポリマーの一例として、オハイオ州ブルーアッシュにあるMaverick社が市販しているMM9.36がある。その代わりに、この第1のプレポリマー成分は単量体混合物であってもよい。
【0037】
第2のプレポリマー成分は、4,4’−(1,3−フェニレン−ビス(1−メチルエチ
リデン))ビスアニリン(ビス−M)、1,4−フェニレンジアミン(パラ−PDA)、その誘導体、及びその混合物を含む、ジアミン成分を含む単量体混合物である。この単量体混合物は更に、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BT
DA)、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、その
誘導体、及びその混合物を含む、二無水物成分を含み得る。末端基成分は、5−ノルボルネン2,3−ジカルボン酸のモノメチルエステル(NE)、その誘導体、及びその混合物を含み得る。
【0038】
別の例示的な樹脂系は、例えば、2,3−3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二
無水物(a−BPDA)、これの誘導体及びその混合物等の二無水物と、アミノフェノキシベンゼン(APB)、メタフェニレンジアミン(メタ−PDA)、その誘導体及びその混合物から選択された1種以上のジアミンと、無水フェニルエチニルフタル酸(PEPA)、その誘導体、及びその混合物から選択された末端基との反応生成物を含有する、第1のプレポリマー成分を含む。第2のプレポリマー成分は、ピロメリット酸の二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸の二無水物(BPDA)、及び/又は3
,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸の二無水物(BTDA)、その誘導
体及び混合物が含まれる。前記ジアミン成分には1,4−フェニレンジアミン(パラ−PDA)及び/又はアミノフェノキシベンゼン(APB)、その誘導体、及びその混合物を含む二無水物成分を含有する、単量体混合物を含み得る。末端基成分は、無水フェニルエチニルフタル酸(PEPA)、その誘導体、及びその混合物を含み得る。
【0039】
このように、開示の硬化サイクル設計プロセスを用いて、ポリイミド樹脂系の全体的硬化サイクルを提供できる。この設計プロセスでは、所望の結果が最適化されるように、プロセスの各段階をモデリングする。本明細書に開示の例示的な硬化サイクルを用いて、高性能/耐温度性樹脂マトリクス複合構造物を製造できる。この例示的な硬化サイクル設計プロセスにより、重合体生成及び架橋時に、溶媒の除去、反応の完了、及び揮発性物質の除去を十分に行うことができ、且つ最小限の樹脂流出量で、所望の最終的な反応生成物が得られる。
【0040】
本明細書では、最適な態様も含め、例を用いて本発明を開示したが、これによってまた、当業者は本発明を構成及び利用できる。本発明の特許請求の範囲は、請求項に定義されているが、当業者に想到可能なその他の例も含み得る。こうした他の例は、請求項の文言と相違ない構成要素を有する場合、又は請求項の文言と実質的な相違を有さない等価の構成要素を有する場合、特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジン複合部品の製造方法であって、
複数の繊維強化層に溶媒中のポリイミド樹脂系を染み込ませてプレフォームを形成するステップと、
前記プレフォームを、前記溶媒の実質的に全部を除去するに十分な第1の時間間隔だけ、第1の真空、圧力、及び温度条件に曝すことにより、前記溶媒を前記ポリイミド樹脂系から除去するステップであって、前記第1の真空及び温度条件が、溶媒除去中に樹脂が約2%よりも多く流出しないように制御されるステップと、
溶媒除去後、前記プレフォームを、前記ポリイミド樹脂系をほぼ完全にイミド化するに十分な第2の時間間隔だけ、第2の真空、圧力、及び温度条件に曝すことにより、前記ポリイミド樹脂系をイミド化するステップであって、前記第2の真空及び温度条件は、イミド化のあいだ、反応で生じた揮発性物質のほぼ全部が除去され且つ目標の粘度のポリイミド樹脂系が得られるように制御されるステップと、
イミド化後、前記プレフォームを、第3の真空、圧力、及び温度条件に曝すと共に、前記プレフォームが所定の温度になると前記プレフォームに圧力をかけることにより、前記プレフォームを強化するステップであって、前記第3の真空及び温度条件は、目標の繊維体積分率が得られるように制御されるステップと、
強化後、前記プレフォームを、第4の真空、圧力、及び温度条件に曝すことにより、前記プレフォームを固化させ、タービンエンジン部品の形状を有する硬化積層構造物を形成するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記ポリイミド樹脂系が、
エンドキャッピング剤、3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水
物(BTDA)、メタフェニレンジアミン(メタPDA)、及び4,4’−(1,3−フ
ェニレン−ビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン(ビス−M)、及びその混合物から成る単量体混合物、又は前記単量体混合物の反応生成物を含有する第1のプレポリマー成分と、
4,4’−(1,3−フェニレン−ビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン(ビ
ス−M)、1,4−フェニレンジアミン(パラ−PDA)、その誘導体、及びその混合物を含むジアミン成分、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BP
DA)、その誘導体、及びその混合物を含む二無水物成分、並びに5−ノルボルネン2,3−ジカルボン酸のモノメチルエステル(NE)、その誘導体、及びその混合物を含む末端基成分から成る単量体混合物を含有する第2のプレポリマー成分と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリイミド樹脂系が、
2,3−3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA);アミノフェノキシベンゼン(APB)、メタフェニレンジアミン(メタ−PDA)、その誘導体、及びその混合物から選択したジアミン;並びに無水フェニルエチニルフタル酸(PEPA)、その誘導体、及びその混合物から選択した末端基から成る単量体混合物、又は前記単量体混合物の反応生成物を含有する第1のプレポリマー成分と、
ピロメリット酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、及び3,4,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、その誘導体、及びその混合物のうち少なくとも1種を含む二無水物成分;1,4−フェニレンジアミン(パラ−PDA)、アミノフェノキシベンゼン(APB)、その誘導体、及びその混合物のうち少なくとも1種を含むジアミン成分;並びに無水フェニルエチニルフタル酸(PEPA)、その誘導体、及びその混合物を含む末端基成分から成る単量体混合物を含有する第2のプレポリマー成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の真空、圧力、及び温度条件が、
前記真空を、2.5”Hgと5”Hgを含む約2.5”Hgから約5”Hgの範囲の第1の真空度に設定することと、
前記温度を、第1の温度から、1°F/分と3°F/分を含む約1°F/分から約3°F/分の範囲の上昇速度で約190°Fにまで上昇させることとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の真空、圧力、及び温度条件が、
前記ポリイミド樹脂系の温度を185°Fと190°Fを含む約185°Fから約190°Fの範囲の溶媒除去温度に約1時間保持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の真空、圧力、及び温度条件が、
前記温度を360°Fと480°Fを含む約360°Fから480°Fの範囲の所定のイミド化温度にまで上昇させ、前記ポリイミド樹脂系が前記イミド化温度よりも低い所定の温度になると真空度を上昇させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第3の真空、圧力、及び温度条件が、
前記温度を約470°Fよりも高い所定の強化温度にまで上昇させ、前記ポリイミド樹脂系が470°Fと510°Fを含む約470°Fから510°Fの範囲の所定の温度になると圧力をかけることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第4の真空、圧力、及び温度条件が、
所定の圧力下で前記温度を、600°Fと650°Fを含む約600°Fから約650°Fの所定の架橋温度にまで上昇させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の真空、圧力、及び温度条件が、前記真空を2.5”Hgと5”Hgを含む約2.5”Hgから約5”Hgの範囲の第1の真空度に設定し、前記温度を第1の温度から1°F/分と2°F/分を含む約1°F/分から約2°F/分の範囲の上昇速度で約190°Fにまで上昇させ、前記ポリイミド樹脂系の温度を185°Fと190°Fを含む約185°Fから約190°Fの範囲の溶媒除去温度に約1時間保持することを含み、
前記第2の真空、圧力、及び温度条件が、前記温度を360°Fと480°Fを含む約360°Fから480°Fの範囲の所定のイミド化温度にまで上昇させ、前記ポリイミド樹脂系が前記イミド化温度よりも低い所定の温度になると真空度を上昇させることを含み、
前記第3の真空、圧力、及び温度条件が、前記温度を約470°Fよりも高い所定の強化温度にまで上昇させ、前記ポリイミド樹脂系が470°Fと510°Fを含む約470°Fから510°Fの範囲の所定の温度になると圧力をかけること含み、
前記第4の真空、圧力、及び温度条件が、所定の圧力下で前記温度を600°Fと650°Fを含む約600°Fから約650°Fの所定の架橋温度にまで上昇させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも前記第1の真空、圧力、及び温度条件が、繊維強化層の数が約12以下の前記部品を製造する場合と、繊維強化層の数が12を超える前記部品を製造する場合とで異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の真空、圧力、及び温度条件が、可変真空条件を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法で形成されたタービンエンジン複合部品。
【請求項13】
請求項9に記載の方法で形成されたタービンエンジン複合部品。
【請求項14】
ポリイミド樹脂系を含む複合部品を製造するための、溶媒除去部分、イミド化部分、強化部分、及び固化部分を含む硬化サイクルの設計方法であって、
a)かける真空度と質量流量との間の第1の関係を複数決定し、予め選択しておいたポリイミド樹脂系の溶媒除去をモデリングするステップと、
b)反応が95%完了する時間と温度との間の第2の関係を複数決定し、前記予め選択しておいたポリイミド樹脂系のイミド化反応速度をモデリングするステップと、
c)反応温度と圧力をかけるまでの時間とかける圧力レベルと加熱速度との間の第3の関係を複数決定し、前記予め選択しておいたポリイミド樹脂系の強化をモデリングするステップと、
d)加熱速度と応力挙動と部品形状との間の第4の関係を複数決定し、前記予め選択しておいたポリイミド樹脂系の固化をモデリングするステップと、
e)ステップ(a)〜(d)で決定した関係を用いて、前記ポリイミド樹脂系の真空、圧力、及び温度条件を含む全体的な硬化サイクルを準備するステップと、を含む方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−516253(P2012−516253A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−547939(P2011−547939)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/068931
【国際公開番号】WO2010/087918
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】