説明

オートサンプラ及びそれを用いた全有機炭素計、ならびに液体試料採取方法

【課題】試料容器内に封入された液体試料を吸引採取する際の試料容器内への外気の流入を防止する。
【解決手段】バイアル保持部3に貫通可能なカバーによって液体試料が封入された試料容器が配置されている。試料採取用ニードル5の先端部及びガス送り用ニードル7の先端部は、試料容器のカバーを貫通して試料容器内に配置される。試料吸引部11は試料採取用ニードル5を介して試料容器から液体試料を吸引する。試料吸引部11は1つの試料容器に収容された液体試料に対して間欠的に複数回の試料吸引動作を行なう。高純度ガス供給部13はガス送り用ニードル7を介して試料容器内へ高純度空気又は高純度窒素ガスからなる高純度ガスを供給する。高純度ガス供給部13は、少なくとも試料吸引部11の液体試料の吸引動作時に、ガス送り用ニードル7を介して、体積で液体試料が吸引される量以上の高純度ガスを試料容器内へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートサンプラ及びそれを用いた全有機炭素計、ならびに液体試料採取方法に関し、特に、1つの試料容器に収容された液体試料に対して間欠的に複数回の試料採取を行なうオートサンプラ及びそれを用いた全有機炭素計、ならびに液体試料採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全有機炭素計(TOC計)や液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、フローインジェクション装置等の液体試料分析装置において、液体試料を自動的に採取するためにオートサンプラが用いられる(例えば特許文献1,2を参照。)。
【0003】
オートサンプラは、例えばバイアルと呼ばれる試料容器内に貫通可能なカバーによって封入された液体試料に先端部が浸漬されるサンプリングニードルを備えている。サンプリングニードルの先端部は、試料容器のカバーを貫通して試料容器内に侵入し、液体試料に浸漬される。試料容器に備えられる貫通可能なカバーは、例えば、セプタムと呼ばれるシリコーンゴム製の詮又は蓋や、パラフィン製のフィルム、アルミニウム製のフィルムによって形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−122091号公報
【特許文献2】特開2009−294139号公報
【特許文献3】特開2000−298096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図4は、従来のオートサンプラによる液体試料採取時のバイアル周辺の状態を説明するための概略的な断面図である。図4(A)はバイアル内にサンプリングニードルを注入したときの状態を示す。図4(B)は液体試料を吸引したときの状態を示す。
バイアル101内に液体試料103が収容されている。バイアル101は貫通可能なカバー105によって封止されている。
【0006】
図4(A)に示すように、液体試料採取時に、サンプリングニードル107の先端部は、カバー105を貫通して液体試料103に浸漬される。サンプリングニードル107の先端は、液体試料103の吸引時に気体を吸引しない程度にバイアル101内の底面近傍に配置される。
【0007】
図4(B)に示すように、図示しない試料吸引部が駆動されて、バイアル101からサンプリングニードル107を介して所定量の液体試料103が吸引される。液体試料103がバイアル101から吸引されることによってバイアル101内が減圧され、バイアル101の周辺雰囲気の気体(外気)がカバー105とサンプリングニードル107との隙間からバイアル101内に流入する。
【0008】
表1は、従来のオートサンプラを備えたTOC計(全有機炭素計)によって3つの液体試料(試料1〜3)のTOC濃度を測定した結果を示す。各試料について、それぞれ共洗い用の試料吸引後、3回の測定を行なった。試料容器の容量は42mL(ミリリットル)、試料容器内に収容された液体試料の容量は39mL、共洗い用の試料吸引量は3mL、測定用の試料吸引量は4mL、試料吸引速度は約1mL/秒程度、測定用の試料吸引の間隔は約2分で行なった。
【0009】
【表1】

【0010】
試料1〜3のいずれについても、1回目、2回目、3回目と測定回数が後になるほど、測定値が上昇した。このように、バイアル101内に外気が流入すると正確な測定ができないことがあった。
本発明は、試料容器内に封入された液体試料を吸引採取する際の試料容器内への外気の流入を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかるオートサンプラは、貫通可能なカバーによって試料容器内に封入された液体試料を吸引するために先端部が上記カバーを貫通して上記液体試料に浸漬される試料採取用ニードルと、上記試料採取用ニードルを介して上記液体試料を上記試料容器から吸引するための試料吸引部と、先端部が上記カバーを貫通して上記試料容器内に配置されるガス送り用ニードルと、上記ガス送り用ニードルを介して上記試料容器内へ高純度ガスを供給するための高純度ガス供給部と、を備えている。上記高純度ガスは高純度空気又は高純度窒素ガスである。上記試料吸引部は、1つの上記試料容器に収容された上記液体試料に対して間欠的に複数回の試料吸引動作を行なうものである。上記高純度ガス供給部は、少なくとも上記試料吸引部の上記液体試料の吸引動作時に、上記ガス送り用ニードルを介して、体積で上記液体試料が吸引される量以上の上記高純度ガスを上記試料容器内へ供給する。
ここで、試料吸引部の試料吸引動作には、測定用の液体試料を採取するための動作のほか、共洗い用の液体試料を採取するための動作も含まれる。
また、高純度空気及び高純度窒素ガスには、超高純度空気及び超高純度窒素ガスも含まれる。
試料吸引部の吸引動作時に、体積で液体試料が吸引される量以上の高純度ガスを試料容器内へ供給することにより、試料容器周辺の外気の試料容器内へ流入が妨げられる。
【0012】
本発明のオートサンプラにおいて、上記高純度ガス供給部は、上記ガス送り用ニードル先端部が上記試料容器内に配置されているときに上記試料容器内が陽圧になる程度に上記高純度ガスを上記試料容器内へ連続的に供給する例を挙げることができる。ただし、本発明のオートサンプラで、高純度ガス供給部は高純度ガスを連続的に供給するものでなくてもよい。
【0013】
また、上記ガス送り用ニードル先端部は、上記液体試料の採取時に、上記試料容器内で上記液体試料とは接触しない位置に配置される例を挙げることができる。ただし、本発明のオートサンプラで、ガス送り用ニードル先端部は液体試料と接触する位置に配置されてもよい。
【0014】
本発明にかかる全有機炭素計は、本発明のオートサンプラと、上記オートサンプラから供給される液体試料中の全炭素分を二酸化炭素に変換するためのTC(全炭素)反応器と、上記オートサンプラから供給される液体試料中の無機炭素分を二酸化炭素に変換するためのIC(無機炭素)反応器と、上記TC反応器及び上記IC反応器から移送される二酸化炭素濃度を検出するための検出部と、上記TC反応器及び上記IC反応器から上記検出部へ二酸化炭素を移送するためのキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給部と、を備えている。上記キャリアガスは高純度空気又は高純度窒素ガスである。上記オートサンプラの上記高純度ガス供給部は、上記キャリアガス供給部とガス供給源を共用する。
【0015】
本発明にかかる液体試料採取方法は、貫通可能なカバーによって試料容器内に封入された液体試料であって1つの上記試料容器に収容された上記液体試料に対して間欠的に複数回の吸引採取を行なう。さらに本発明の液体試料採取方法は、試料採取用ニードルの先端部を上記カバーを貫通させて上記液体試料に浸漬させ、かつ、ガス送り用ニードルの先端部を上記カバーを貫通させて上記試料容器内に配置した状態で、少なくとも上記液体試料の吸引採取時に、体積で上記液体試料の吸引量以上の高純度空気又は高純度窒素ガスからなる高純度ガスを上記試料容器内へ供給しながら、上記試料採取用ニードルを介して上記試料容器内から上記液体試料を吸引採取する。
ここで、液体試料の吸引採取には、測定用の液体試料採取のほか、共洗い用の液体試料採取も含まれる。
液体試料の吸引採取時に、体積で液体試料が吸引される量以上の高純度ガスを試料容器内へ供給することにより、試料容器周辺の外気の試料容器内へ流入が妨げられる。
【0016】
本発明の液体試料採取方法において、上記ガス送り用ニードル先端部が上記試料容器内に配置されているときに上記試料容器内が陽圧になる程度に上記高純度ガスを上記試料容器内へ連続的に供給する例を挙げることができる。ただし、本発明の液体試料採取方法は、高純度ガスを間欠的に供給してもよい。
【0017】
また、上記ガス送り用ニードル先端部は、上記液体試料の採取時に、上記試料容器内で上記液体試料とは接触しない位置に配置される例を挙げることができる。ただし、本発明の液体試料採取方法で、ガス送り用ニードル先端部は液体試料と接触する位置に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のオートサンプラ及び液体試料採取方法は、液体試料の吸引採取時に、体積で液体試料が吸引される量以上の高純度ガスを試料容器内へ供給するので、試料容器周辺の外気の試料容器内へ流入が妨げられる。これにより、本発明のオートサンプラ及び液体試料採取方法は、試料容器内に封入された液体試料を吸引採取する際の試料容器内への外気の流入に起因する誤測定を防止できる。
【0019】
本発明のオートサンプラにおいて、高純度ガス供給部は、ガス送り用ニードル先端部が試料容器内に配置されているときに試料容器内が陽圧になる程度に高純度ガスを試料容器内へ連続的に供給するようにし、
本発明の液体試料採取方法は、ガス送り用ニードル先端部が試料容器内に配置されているときに試料容器内が陽圧になる程度に高純度ガスを上記試料容器内へ連続的に供給するようにすれば、バルブの開閉などによって高純度ガスを間欠的に供給する場合に比べて、高純度ガス供給部の構成が簡単になる。
【0020】
本発明のオートサンプラにおいて、ガス送り用ニードル先端部は、液体試料の採取時に、試料容器内で液体試料とは接触しない位置に配置されるようにし、
本発明の液体試料採取方法は、ガス送り用ニードル先端部は、液体試料の採取時に、試料容器内で液体試料とは接触しない位置に配置されるようにすれば、ガス送り用ニードルを介して供給される高純度ガスによって液体試料が攪拌されるのを防止できる。
【0021】
本発明の全有機炭素計は、本発明のオートサンプラを備え、キャリアガス供給部とオートサンプラの高純度ガス供給部とでガス供給源を共用するようにしたので、それらのガス供給部ごとにガス供給源を設ける場合に比べて、全有機炭素計の設置面積が小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】オートサンプラの一実施例の概略的な構成図である。
【図2】本発明のオートサンプラによる液体試料採取時のバイアル周辺の状態を説明するための概略的な断面図である。(A)はバイアル内にサンプリングニードルを注入したときの状態を示す。(B)は液体試料を吸引したときの状態を示す。
【図3】本発明のTOC計の一実施例を説明するための概略的な流路図である。
【図4】従来のオートサンプラによる液体試料採取時のバイアル周辺の状態を説明するための概略的な断面図である。(A)はバイアル内にサンプリングニードルを注入したときの状態を示す。(B)は液体試料を吸引したときの状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、オートサンプラの一実施例の概略的な構成図である。
オートサンプラ1は、バイアル保持部3、サンプリングニードル(試料採取用ニードル)5、ガス送り用ニードル7、ニードル移動機構9、試料吸引部11及び高純度ガス供給部13を備えている。
【0024】
バイアル保持部3は、複数のバイアル(試料容器)を保持し、それらのバイアルを試料採取位置に順次配置する。バイアル保持部3に配置されるバイアル内には、貫通可能なカバーによって液体試料が封入されている。
【0025】
サンプリングニードル5及びガス送り用ニードル7はニードル駆動機構9によって移動される。ニードル駆動機構9は、ニードル5,7を上下移動させ、ニードル5,7の先端部を、試料採取位置に配置されたバイアルのカバーを貫通させてバイアル内に侵入させる。また、ニードル駆動部9は、ニードル5,7をニードル洗浄位置に移動させて、サンプリングニードル5の先端部を洗浄させる。なお、ガス送り用ニードル7の先端部も洗浄されてもよい。
【0026】
試料吸引部11は、サンプリングニードル5を介して、バイアル保持部3の試料採取位置に配置されたバイアル内に収容された液体試料を吸引し、分析装置の試料分析部へ送る。試料吸引部11は、1つのバイアルに収容された液体試料に対して間欠的に複数回の試料吸引動作を行なう。
【0027】
高純度ガス供給部13は、ガス送り用ニードル7に高純度空気又は高純度窒素ガスを供給する。この実施例では、高純度ガス供給部13は高純度空気を供給する。高純度ガス供給部13は、少なくとも試料吸引部11の液体試料の吸引動作時に、ガス送り用ニードル7を介して、体積で液体試料が吸引される量以上の高純度空気をバイアル内へ供給する。
【0028】
図2は、本発明のオートサンプラによる液体試料採取時のバイアル周辺の状態を説明するための概略的な断面図である。図2(A)はバイアル内にサンプリングニードルを注入したときの状態を示す。図2(B)は液体試料を吸引したときの状態を示す。
バイアル15内に液体試料15が収容されている。バイアル15は貫通可能なカバー19によって封止されている。カバー19は、例えばパラフィン製のフィルムによって形成されている。
【0029】
図2(A)に示すように、液体試料採取時に、サンプリングニードル5の先端部及びガス送り用ニードル7の先端部はカバー19を貫通してバイアル15内に配置される。
サンプリングニードル5の先端部は、液体試料17に浸漬され、液体試料17の吸引時に気体を吸引しない程度にバイアル15内の底面近傍に配置される。
【0030】
ガス送り用ニードル7の先端部は、バイアル15内で液体試料17と接触しない位置に配置される。ガス送り用ニードル7には高純度ガス供給部13(図1を参照。)から高純度空気が連続的に供給されている。ガス送り用ニードル7の先端からバイアル15内に高純度空気が供給されて、バイアル15内が陽圧になっている。ガス送り用ニードル7内を流れる高純度空気の流速は、例えば80mL/分である。
バイアル15内に供給された高純度空気は、カバー19とサンプリングニードル5の隙間、及びカバー19とガス送り用ニードル7の隙間から、バイアル15外へ放出される。
【0031】
図2(B)に示すように、試料吸引部11(図1を参照。)が駆動されて、バイアル15からサンプリングニードル5を介して所定量の液体試料17が吸引される。試料吸引速度は例えば約1mL/秒程度である。液体試料17の採取時に、バイアル15内には、高純度ガス供給部13からガス送り用ニードル7を介して、体積で液体試料17が吸引される量以上の高純度空気が供給されているので、カバー19とサンプリングニードル5の隙間、及びカバー19とガス送り用ニードル7の隙間から、バイアル15内に外気が流入することはない。
【0032】
表2は、本発明のオートサンプラを備えたTOC計によって3つの液体試料(試料4〜6)のTOC濃度を測定した結果を示す。各試料について、それぞれ共洗い用の試料吸引後、3回の測定を行なった。バイアルの容量は42mL、バイアル内に収容された液体試料の容量は39mL、共洗い用の試料吸引量は3mL、測定用の試料吸引量は4mL、試料吸引速度は約1mL/秒程度、測定用の試料吸引の間隔は約2分で行なった。
【0033】
【表2】

【0034】
本発明のオートサンプラを用いた試料4〜6の測定では、従来のオートサンプラを用いた試料1〜3の測定(表1を参照。)とは異なり、測定回数が後になっても測定値が上昇しなかった。
このように、本発明のオートサンプラは、バイアル内に封入された液体試料を吸引採取する際のバイアル内への外気の流入に起因する誤測定を防止することができる。
【0035】
この実施例では、高純度ガス供給部13は高純度空気を所定流量で連続的に供給しているが、本発明のオートサンプラで、高純度ガス供給部は高純度ガスを間欠的に供給してもよい。例えば、高純度ガス供給部は、試料吸引部がバイアル内の液体試料を吸引することによってバイアル内が減圧するときのみに、高純度ガスをバイアル内に供給するようにしてもよい。高純度ガスを間欠的に供給するには、高純度ガスを供給する流路に開閉弁を設ければよい。これにより、バイアル内から液体試料を吸引採取する際にバイアル内へ外気が流入するのを防止できる。
【0036】
図3は、本発明のTOC計の一実施例を説明するための概略的な流路図である。
8ポートロータリーバルブ21とシリンジ23が設けられている。オートサンプラの試料吸引部11を構成する(図1参照)。8ポートロータリーバルブ21のポートには、サンプリングニードル5につながる流路、TC反応器25で使用される酸化剤を供給するための流路、IC反応器27で使用される酸を供給するための流路、希釈水を供給するための流路、TC反応器25につながる流路、IC反応器27につながる流路、不要な液体を排出するためのドレイン流路が接続されている。
【0037】
TOC計内にキャリアガスを取り込むためのキャリアガス入口29が設けられている。キャリアガス入口29にキャリアガス流路31が接続されている。キャリアガス流路31に、入口29側から順に、電磁弁33、調圧弁35、圧力計37が設けられている。キャリアガス入口29には、高純度空気又は高純度窒素ガスの供給源として、ボンベ又は精製装置が接続される。キャリアガス流路31は、圧力計37よりも下流側で、キャリアガス流路39,41,43に分岐している。
【0038】
キャリアガス流路39はオートサンプラのガス送り用ニードル7に接続されている。キャリアガス入口29、キャリアガス流路31,39、電磁弁33、調圧弁35、及び圧力計37は、オートサンプラの高純度ガス供給部13を構成する(図1参照。)。
【0039】
キャリアガス流路41はマスフローコントローラ45、電磁弁47を介してIC反応器27に接続されている。キャリアガス流路43はマスフローコントローラ49、電磁弁51を介してTC反応器25に接続されている。キャリアガス入口29、キャリアガス流路31,41,43、電磁弁33、調圧弁35、圧力計37、マスフローコントローラ45,49、及び電磁弁47,51は、TOC計のキャリアガス供給部を構成する。
【0040】
この実施例では、オートサンプラの高純度ガス供給部と、TOC計のキャリアガス供給部でガス供給源が共用されている。ただし、本発明のTOC計で、オートサンプラの高純度ガス供給部と、TOC計のキャリアガス供給部とで、別々のガス供給源が設けられていてもよい。
【0041】
IC反応器27は、3方電磁弁53を介して除湿及びガス処理部55に接続されている。3方電磁弁53は、IC反応器25を除湿及びガス処理部55又はドレイン流路に切り替えて接続する。TC反応器25は除湿及びガス処理部55に接続されている。除湿及びガス処理部55は検出部57に接続されている。
【0042】
TC反応器25は、液体試料中のTCを二酸化炭素に変換するためのものである。TC反応器25のガラス容器の内部にUV(紫外線)ランプが設けられている。TC反応器25のガラス容器の周囲にはヒータが設けられている。そのヒータにより、TC反応器25のガラス容器内部が所定温度に調節される。TC反応器25内に酸化剤及び液体試料が注入される。TC反応器25内で液体試料中のTCは燃焼酸化されて二酸化炭素に変換される。生成した二酸化炭素は、キャリアガス流路43からTC反応器25へ供給されるキャリアガスとともに除湿及びガス処理部55へ送られる。
【0043】
IC反応器27は、液体試料中のICを二酸化炭素に変換するためのものである。IC反応器27内に酸及び液体試料が注入される。さらに、キャリアガス流路41からIC反応器27へキャリアガスが吹き込まれて、IC反応器27内で液体試料中のICのみが二酸化炭素に変換される。生成した二酸化炭素は、キャリアガスとともに除湿及びガス処理部55へ送られる。
【0044】
除湿及びガス処理部55は、ガス中の水分を除去する電子クーラーや、ハロゲン成分を除去するハロゲンスクラバーなどを備えている。TC反応器25又はIC反応器27で生成した二酸化炭素は、キャリアガスともに除湿及びガス処理部55を経て検出部57に送られる。検出部57は、非分散型赤外光度計(NDIR)にてなり、二酸化炭素濃度を検出する。検出部57の検出信号はピーク形状をなし、その面積は二酸化炭素濃度に比例する。既知の有機物を含む標準試料を測定することにより装置が校正され、その校正結果を元に未知試料測定が行なわれる。同一の液体試料についてTC測定とIC測定を行ない、TC濃度からIC濃度を引き算することによりTOC濃度が得られる。
【0045】
ガス送り用ニードル7には、キャリアガス流路39を介して、キャリアガスが連続的に供給されている。ガス送り用ニードル7に供給されるキャリアガス流量は、バイアル15から液体試料17を採取する時に、体積で液体試料17が吸引される量以上のキャリアガスが供給されるように設定されている。これにより、図2を参照して説明したように、バイアル15から液体試料17を採取する時に、バイアル15内に外気が流入するのを防止することができる。
【0046】
この実施例では、IC反応器27を用いて液体試料中のICを二酸化炭素に変換しているが、シリンジ23がIC反応器を兼ねているTOC計もある(例えば特許文献3を参照。)。
また、この実施例では、本発明のオートサンプラをTOC計に適用しているが、本発明のオートサンプラが適用される装置はTOC計に限定されるものではない。本発明のオートサンプラは、例えば液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、フローインジェクション装置等の液体試料分析装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 オートサンプラ
5 サンプリングニードル(試料採取用ニードル)
7 ガス送り用ニードル
11 試料吸引部
13 高純度ガス供給部
15 バイアル(試料容器)
17 液体試料
19 カバー
25 TC反応器
27 IC反応器
57 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通可能なカバーによって試料容器内に封入された液体試料を吸引するために先端部が前記カバーを貫通して前記液体試料に浸漬される試料採取用ニードルと、
前記試料採取用ニードルを介して前記液体試料を前記試料容器から吸引するための試料吸引部と、
先端部が前記カバーを貫通して前記試料容器内に配置されるガス送り用ニードルと、
前記ガス送り用ニードルを介して前記試料容器内へ高純度ガスを供給するための高純度ガス供給部と、を備え、
前記高純度ガスは高純度空気又は高純度窒素ガスであり、
前記試料吸引部は、1つの前記試料容器に収容された前記液体試料に対して間欠的に複数回の試料吸引動作を行なうものであり、
前記高純度ガス供給部は、少なくとも前記試料吸引部の前記液体試料の吸引動作時に、前記ガス送り用ニードルを介して、体積で前記液体試料が吸引される量以上の前記高純度ガスを前記試料容器内へ供給する、オートサンプラ。
【請求項2】
前記高純度ガス供給部は、前記ガス送り用ニードル先端部が前記試料容器内に配置されているときに前記試料容器内が陽圧になる程度に前記高純度ガスを前記試料容器内へ連続的に供給する請求項1に記載のオートサンプラ。
【請求項3】
前記ガス送り用ニードル先端部は、前記液体試料の採取時に、前記試料容器内で前記液体試料とは接触しない位置に配置される請求項1又は2に記載のオートサンプラ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のオートサンプラと、
前記オートサンプラから供給される液体試料中の全炭素分を二酸化炭素に変換するためのTC反応器と、
前記オートサンプラから供給される液体試料中の無機炭素分を二酸化炭素に変換するためのIC反応器と、
前記TC反応器及び前記IC反応器から移送される二酸化炭素濃度を検出するための検出部と、
前記TC反応器及び前記IC反応器から前記検出部へ二酸化炭素を移送するためのキャリアガスを供給するためのキャリアガス供給部と、を備え、
前記キャリアガスは高純度空気又は高純度窒素ガスであり、
前記オートサンプラの前記高純度ガス供給部は、前記キャリアガス供給部とガス供給源を共用する、全有機炭素計。
【請求項5】
貫通可能なカバーによって試料容器内に封入された液体試料であって1つの前記試料容器に収容された前記液体試料に対して間欠的に複数回の吸引採取を行なう際に、
試料採取用ニードルの先端部を前記カバーを貫通させて前記液体試料に浸漬させ、かつ、ガス送り用ニードルの先端部を前記カバーを貫通させて前記試料容器内に配置した状態で、
少なくとも前記液体試料の吸引採取時に、体積で前記液体試料の吸引量以上の高純度空気又は高純度窒素ガスからなる高純度ガスを前記試料容器内へ供給しながら、前記試料採取用ニードルを介して前記試料容器内から前記液体試料を吸引採取する、液体試料採取方法。
【請求項6】
前記ガス送り用ニードル先端部が前記試料容器内に配置されているときに前記試料容器内が陽圧になる程度に前記高純度ガスを前記試料容器内へ連続的に供給する請求項5に記載の液体試料採取方法。
【請求項7】
前記ガス送り用ニードル先端部は、前記液体試料の採取時に、前記試料容器内で前記液体試料とは接触しない位置に配置される請求項5又は6に記載の液体試料採取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202895(P2012−202895A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69248(P2011−69248)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】