説明

オートサンプラ及び分析システム

【課題】標準試料で校正処理を行った後に被検試料の測定を行う一連の工程を、総て自動化することが可能であると同時に、必要に応じて校正処理を省略することもできるオートサンプラを提供する。
【解決手段】標準試料を収納する区画からなる標準エリアと、被検試料を収納する区画からなる被検エリアとを有し、前記標準エリア内の区画に標準試料が収納されているか否かを検知する試料検知手段を備え、該試料検知手段が、前記標準エリア内の区画に標準試料が収納されていることを検知した場合は、該検知された区画に収納されている標準試料を前記分析計に供給すると共に校正開始信号を発信し、該試料検知手段が、前記標準エリア内の区画に標準試料が収納されていないことを検知した場合は、前記被検エリア内の区画に収納されている被検試料を前記分析計に供給すると共に、実測開始信号を発信することを特徴とするオートサンプラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートサンプラ及び分析システムに関する。更に詳しくは、校正作業を含めて全自動化が可能なオートサンプラ及び分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からオートサンプラを用いた分析システムが種々開発され実用化されている。オートサンプラを使用することにより、複数の試料を自動的に分析計に供給することができる。
オートサンプラと分析計との動作を整合させるため、オートサンプラの動作状況に関する情報を、分析計側に発信することが行われている。例えば、オートサンプラが試料注入信号を発信すると、これを受信したコントローラが、分析計の検出器にデータ収集開始信号を送るシステムが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−221232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来のオートサンプラは、通常、被検試料の供給しか考慮しておらず、この場合、オートサンプラの使用に先立ち、標準試料を用いた校正処理を予め終了させておく必要があった。
また、例えば、オートサンプラのサンプル瓶置場の先頭に任意の数の標準試料を置き、これらの標準試料で校正処理を行った後に被検試料の測定を行う一連の工程を、総て自動化することも行われている。しかしながら、この場合、標準試料を用いた校正処理を被検試料の実測定に先立って必ず行わなければならず、校正処理を省略して前回の校正結果を利用する等の臨機応変的な対応が不可能であった。
さらに、例えば、複数系統の分析経路をもつ分析システムにおいては、校正処理もそれぞれの分析経路ごとに行う必要があるが、このような場合に、オートサンプラに置いた標準試料で校正処理を行った後に被検試料の測定を行う一連の工程を、総て自動化することは不可能であった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、標準試料で校正処理を行った後に被検試料の測定を行う一連の工程を、総て自動化することが可能であると同時に、必要に応じて校正処理を省略することもできるオートサンプラ及び分析システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために、本発明は、以下の構成を採用した。
[1]標準試料を収納する区画からなる標準エリアと、被検試料を収納する区画からなる被検エリアとを含む試料収納場所を備え、該試料収納場所の各区画に収納した複数の試料を、分析計に順次供給するオートサンプラであって、前記標準エリア内の区画に標準試料が収納されているか否かを検知する試料検知手段を備え、該試料検知手段が、前記標準エリア内の区画に試料が収納されていることを検知した場合は、該検知された区画に収納されている標準試料を前記分析計に供給すると共に、校正開始信号を発信し、該試料検知手段が、前記標準エリア内の区画に標準試料が収納されていないことを検知した場合は、前記被検エリア内の区画に収納されている被検試料を前記分析計に供給すると共に、実測開始信号を発信することを特徴とするオートサンプラ。
【0006】
[2]試料収納場所の各区画に収納した複数の試料を、複数系統の分析計に順次供給するオートサンプラであって、
1又は複数の区画を1つのブロックとして記憶し、該ブロックに収納された試料を注入すべき流路と、該流路が連通する分析計とを関連付けるデータを記憶する記憶手段と、
前記データに基づき流路を切り替える流路切替手段と、
前記区画に試料が収納されているか否かを検知する試料検知手段と、を備え、
該試料検知手段が、前記ブロック内の区画に試料が収納されていることを検知した場合は、流路を切り替えて所定の分析計に、該検知された区画に収納されている試料を供給すると共に、試料供給信号を発信し、
該試料検知手段が、前記ブロック内の区画に試料が収納されていないことを検知した場合は、以後同一ブロック内の区画に試料が収納されているか否かを検知しないことを特徴とするオートサンプラ。
【0007】
[3]標準試料を収納する区画からなる標準エリアと、被検試料を収納する区画からなる被検エリアとを含む試料収納場所を備え、試料収納場所の各区画に収納した複数の試料を、複数系統の分析計に順次供給するオートサンプラであって、
同一エリア内の1又は複数の区画を1つのブロックとして記憶し、該ブロックに収納された試料を注入すべき流路と、該流路が連通する分析計とを関連付けるデータを記憶する記憶手段と、
前記データに基づき流路を切り替える流路切替手段と、
前記区画に試料が収納されているか否かを検知する試料検知手段と、を備え、
該試料検知手段が、前記標準エリア内における前記ブロック内の区画に試料が収納されていることを検知した場合は、流路を切り替えて所定の分析計に、該検知された区画に収納されている試料を供給すると共に、校正開始信号を発信し、
該試料検知手段が、前記標準エリア内における前記ブロック内の区画に試料が収納されていないことを検知した場合は、以後同一ブロック内の区画に試料が収納されているか否かを検知せず、
該試料検知手段が、前記標準エリア内の全部のブロックにおいて、区画に試料が収納されていないことを検知した場合は、前記被検エリア内の区画に収納されている被検試料を前記分析計に供給すると共に、実測開始信号を発信することを特徴とするオートサンプラ。
【0008】
[4][1]又は[3]に記載のオートサンプラと、分析計と、前記校正開始信号又は実測開始信号を受信すると共に、前記分析計から測定信号を取得するデータ処理装置とを備え、前記データ処理装置は、前記校正開始信号を受信したときに、前記測定信号に基づき校正処理を行い、前記実測開始信号を受信したときに、前記測定信号に基づき実測処理を行うことを特徴とする分析システム。
【0009】
[5]前記データ処理装置は、前記分析計が起動後分析可能な状態になったときに暖機終了信号を前記オートサンプラに送信するものであり、前記オートサンプラは、暖機終了信号を受信後に前記試料検知手段の動作を開始する[4]に記載の分析システム。
[6]前記データ処理装置は、前記測定信号が安定したときに、前記暖機終了信号を送信する[5]に記載の分析システム。
[7]前記分析計が液体クロマトグラフである[2]〜[6]の何れかに記載の分析システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、標準試料で校正処理を行った後に被検試料の測定を行う一連の工程を、総て自動化することが可能であると同時に、必要に応じて校正処理を省略することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第1実施形態に係るイオン分析システムについて説明する。図1に示すように、本実施形態のイオン分析システムは、液体クロマトグラフ式のイオン分析計10とデータ処理装置21と、オートサンプラ30とから概略構成されている。
イオン分析計10は、溶離液槽1の下流側に、脱気装置2、ポンプ3、インジェクタ4、分離カラム5、サプレッサカラム6、検出器7が順次設けられて構成されている。分離カラム5、サプレッサカラム6、検出器7は、恒温槽8の中に収納されている。サプレッサカラム6には、除去液槽11からポンプ12により除去液が供給されるようになっている。
【0012】
データ処理装置21は検出器7に接続され、検出器7で検出される電気伝導率(測定信号)を取得できるようになっている。該データ処理装置21には、表示器22及びプリンタ23が接続されている。データ処理装置21は、オートサンプラ30と各種信号の授受ができるようになっている。
オートサンプラ30はポンプ3の下流側に接続され、溶離液の流れ中に試料を自動的に注入できるようになっている。なお、インジェクタ4からは、手動で試料を注入できるようになっている。
【0013】
オートサンプラ30は、図2に示すように、100カ所(No.1〜100)のサンプル瓶置場(試料収納場所の各区画)を備えている。この100カ所の内、No.1〜80は、被検試料が入ったサンプル瓶を置くべきエリア(被検エリアB)である。また、No.81〜100は、標準試料が入ったサンプル瓶を置くべきエリア(標準エリアA)である。
各エリアにおいて、複数のサンプル瓶を各区画(サンプル瓶置き場)に置く場合は、検知ステップで検知される区画の順序と同じ順序で置く。本実施形態では、例えば標準エリアAにおいてはNo.81、82、83…というように、サンプル瓶置場(区画)のNo.の数字が若い順に詰めて置く。
【0014】
本実施形態のイオン分析システムは、暖機運転を行う暖機ステップ、標準試料の有無を検知する検知ステップ、標準試料により校正を行う校正ステップ、被検試料を測定する実測ステップ、被検試料測定終了後の終了ステップ等の一連の動作を自動的に行うものである。
以下、各ステップについて詳述する。
【0015】
[暖機ステップ]
まず、電源ボタンを押すと、イオン分析計10の暖機運転が開始される。すなわち、ポンプ3とポンプ12がオン状態となり、溶離液が分離カラム5に供給されると共に、除去液がサプレッサカラム6に供給される。
また、恒温槽8のヒーターがオン状態になり恒温槽8内が加熱される。恒温槽8内は、まず、37℃まで急激に加熱される。その後、徐々に設定温度(40℃±1℃)まで加熱され、その後は設定温度が維持される。
なお、暖機運転中オートサンプラ30は待機状態を保っている。
暖機運転は、検出器7の測定信号が安定するまで続けられる。暖機運転終了のタイミングは、データ処理装置21による安定判別機能によって自動的に判断される。
【0016】
検出器7の測定信号が安定したか否かの安定判別は、例えば以下のように行う。まず、時刻Tにおける測定信号Dと、時刻Tから判別時間Tを経過した時刻Tにおける測定信号Dとの差ΔDが、所定の許容範囲D内に収まっていれば安定と判断し、収まっていなければ安定していないと判断する。
また、安定判別は以下のように行うこともできる。まず、時刻Tから判別時間Tを経過した時刻Tまでの間に、n個の測定信号D〜Dを取得し、この間の最大測定信号Dmaxと最小測定信号Dminとの差ΔD’が、所定の許容範囲D内に収まっていれば安定と判断し、収まっていなければ安定していないと判断する。
なお、安定判別の演算に用いる測定信号は、検出器7からの電圧値でもよいし、これを電気伝導度等に変換した値であってもよい。
データ処理装置21は、測定信号が安定していないと判断したときは上記安定判別を繰り返し、安定したと判断したときに安定判別を終了してイオン分析計10の暖機運転を終了させると共に、暖機終了信号をオートサンプラ30に送出する。
なお、安定判別を行わず、一定の時間経過後、例えば30分後に暖機運転を終了してもよい。
【0017】
[検知ステップ]
オートサンプラ30は、暖機終了信号を受信すると検知ステップの動作を開始する。検知ステップでは、まず、No.81のサンプル瓶置場に、標準試料が入ったサンプル瓶が置かれているか否かを試料検知手段により検知する。
試料検知手段としては、例えば、光検出器(フォトセンサ)が挙げられる。試料検知手段が光検出器(フォトセンサ)の場合、標準試料が入ったサンプル瓶が置かれているか否かの検知は、例えば以下のように行う。アームの上部に発光素子と受光素子とを対向配置し、これらの素子の間隙に収容可能であって、収容された場合には確実に光を遮るような検知板を上下方向に可動となるように配置する。検知板は通常、発光素子及び受光素子よりも下方、すなわち、光を遮らない位置にあり、かつ、アームの下端よりも下方にその下端が位置している。オートサンプラ30が動作を開始し、アームがサンプル瓶置場に向かって下降すると、検知板はアームとともに下降する。サンプル瓶が置かれている場合には、検知板はサンプル瓶の縁に当接し下降を停止するが、アームはさらに所定位置まで下降を続ける。このとき、下降を停止した検知板はアーム上部に配置された発光素子と受光素子との間隙に収容されて光を遮ることになるため、サンプル瓶が置かれていることを検知することができる。一方、サンプル瓶が置かれていない場合には、アームが所定位置まで下降する際に検知板も下降を続ける。したがって、アームが所定位置まで下降した際にも光が遮られることがなく、サンプル瓶が置かれていないことを検知することができる。
No.81のサンプル瓶置場に、標準試料が入ったサンプル瓶が置かれていることを検知した場合は校正ステップに移行する。No.81のサンプル瓶置場に標準試料が入ったサンプル瓶が置かれていないことを検知した場合は、実測ステップに移行する。
【0018】
[校正ステップ]
校正ステップでは、校正処理が行われる。なお、本発明において校正処理とは、実測ステップにおいて得られた測定信号を被検試料の定性情報及び/又は定量情報に変換できるよう、変換に必要な情報を記憶する処理をいう。
本実施形態では、オートサンプラ30が、No.81の位置におけるサンプル瓶から、標準試料を採取し、その一定量を溶離液中に注入する。そして、注入と同時に校正開始信号(試料供給信号)をデータ処理装置21に送信する。
これにより、標準試料中の既知成分が分離カラム5で分離され、検出器7は、各成分の濃度(既知)に応じた測定信号を出力する。データ処理装置21は、校正開始信号取得時を起点として溶出時刻を計時し、溶出時刻毎の測定信号を取得する。そして、標準試料中の各成分のピーク位置(ピークが得られる溶出時刻)、ピーク高さ(ピークにおける測定信号の高さ)等の情報を記憶する。
なお、校正処理の結果は、必要に応じて表示器22で表示することができる。また、プリンタ23によりプリントアウトすることができる。
オートサンプラ30は、標準試料の注入を終えた後、洗浄処理を行い次の動作に備える。校正処理が終わると次のサンプル瓶置場、すなわちNo.82における検知ステップを開始する。このようにして標準エリアA内の各サンプル瓶置場についてNo.の数字が若い順に検知ステップと校正ステップとを繰り返し、サンプル瓶が置かれていないことを検知したら、実測ステップに移行する。
【0019】
校正ステップでは、イオン分析計10が正常に動作しているかどうかの動作チェックを行うことができる。例えば、所定の溶出時間内に所定数のピークが得られなかった場合や、所定の溶出時刻範囲で得られたピーク高さが所定の値未満であった場合等、正常な校正が行えなかったとして、校正異常信号をデータ処理装置21に出力することができる。この場合、オートサンプラ30自身は待機状態に戻る。
【0020】
[実測ステップ]
実測ステップでは、実測処理が行われる。なお、本発明において実測処理とは、被検試料(定性情報及び/又は定量情報が未知である試料)について得られた測定信号から、当該被検試料の定性情報及び/又は定量情報を求める処理をいう。
本実施形態では、オートサンプラ30が、No.1〜80の位置におけるサンプル瓶から、被検試料を順次採取し、その一定量を溶離液中に注入する。そして、注入と同時に実測開始信号(試料供給信号)をデータ処理装置21に送信する。
これにより、被検試料中の成分が分離カラム5で分離され、検出器7は、各成分の濃度に応じた測定信号を出力する。データ処理装置21は、実測開始信号取得時を起点として溶出時刻を計時し、溶出時刻毎の測定信号を取得する。そして、被検試料中の各成分に対応するピーク位置(ピークが得られる溶出時刻)、ピーク高さ(ピークにおける測定信号の高さ)等の情報を、校正処理で記憶した情報と照らし合わせることにより、被検試料の定性情報及び/又は定量情報を求める。
なお、実測処理の結果は、必要に応じて表示器22で表示することができる。また、プリンタ23によりプリントアウトすることができる。
【0021】
[終了ステップ]
オートサンプラの総ての試料について実測処理が終了したとき、実測ステップを終了し、終了ステップに移行する。総ての試料について実測処理が終了したことは、サンプル瓶の有無をオートサンプラ30が検知することによって判断してもよいし、予め入力した試料数又は時間に基づいて判断してもよい。
終了ステップでは、恒温槽8のヒーターがオフ状態になり恒温槽8内が次第に冷却される。約30℃程度まで冷却されたら(通常20分程度)、電源をオフとする。なお、電源オフに代えて、スリープ状態等の省電力状態としてもよい。
【0022】
本実施形態によれば、オートサンプラ30の試料収納場所が、被検エリアBと標準エリアAを有するので、標準エリアAにおける標準試料の有無を検知することにより、校正ステップと実測ステップのいずれに移行すべきかを判断することができる。
したがって、オートサンプラ30に試料をセットした後は、標準試料の有無に関わらず、総ての試料の測定を自動的に行わせることができる。
【0023】
次に、図3は本発明の第2実施形態を示す構成図である。図3に示すように、第2実施形態の分析システムは、液体クロマトグラフ式の第1のイオン分析計50及び第2のイオン分析計60と、オートサンプラ70とから概略構成されている。
第1のイオン分析計50は、第1の溶離液槽51の下流側に、脱気装置52、ポンプ53、インジェクタ54、分離カラム55、サプレッサカラム(図示せず)、検出器56が順次設けられて構成されている。分離カラム55、サプレッサカラム(図示せず)、検出器56は、図示はしていないが恒温槽の中に収納されている。サプレッサカラム(図示せず)には、除去液槽(図示せず)からポンプ(図示せず)により除去液が供給されるようになっている。さらに、第1のイオン分析計50に内蔵されたデータ処理装置57は検出器56に接続され、検出器56で検出される電気伝導率(測定信号)を取得できるようになっている。該データ処理装置57には、表示器58及びプリンタ59が接続されている。データ処理装置57は、オートサンプラ70と各種信号の授受ができるようになっている。
なお、第1の溶離液槽51には、陽イオン用の溶離液が収容されている。
第2のイオン分析計60は、第1のイオン分析計50と同様に構成されているため詳細な説明を省略するが、第2の溶離液槽61には、陰イオン用の溶離液が収容されている。
【0024】
オートサンプラ70は、第1実施形態と同様に、図2に示すように、100カ所(No.1〜100)のサンプル瓶置場(試料収納場所の各区画)を備えている。この100カ所の内、No.1〜80は、被検試料が入ったサンプル瓶を置くべきエリア(被検エリアB)である。また、No.81〜100は、標準試料が入ったサンプル瓶を置くべきエリア(標準エリアA)である。
なお、No.81〜100のサンプル瓶置場(標準エリアA)は、例えば、奇数No.の区画は、陽イオン標準試料が入ったサンプル瓶を置くべき陽イオン標準試料ブロック、偶数No.の区画は、陰イオン標準試料が入ったサンプル瓶を置くべき陰イオン標準試料ブロックとなっている。
各エリアおよび各ブロックにおいて、複数のサンプル瓶を置く場合は、検知ステップで検知される区画の順序と同じ順序で置く。本実施形態では、例えば標準エリアAの陽イオン標準試料ブロックにおいてはNo.81、83、85…というように、また標準エリアAの陰イオン標準試料ブロックにおいてはNo.82、84、86…というように、サンプル瓶置場(区画)のNo.の数字が若い順に詰めて置く。
【0025】
オートサンプラ70はポンプ53及びポンプ63の下流側に接続され、6方バルブ(流路切替手段)を介していずれかの溶離液の流路中に試料を自動的に注入できるようになっている。なお、インジェクタ54及び64からは、手動で試料を注入できるようになっている。
オートサンプラ70に設けられている6方バルブはサンプルループ、第1のイオン分析計50に連通する流路及び第2のイオン分析計60に連通する流路に接続され、採取した試料を第1のイオン分析計50又は第2のイオン分析計60のいずれかに供給できるようになっている。
またオートサンプラ70は、陽イオン標準試料ブロックをなす区画および陰イオン標準試料ブロックをなす区画を記憶し、該ブロックに収納された試料を注入すべき流路と、該流路が連通する分析計とを関連付けるデータを記憶する記憶手段を備えており、オートサンプラ70の6方バルブは、該記憶手段のデータに基づいて流路を切り替えるように構成されている。
具体的には、オートサンプラ70において、第1の溶離液槽51中の陽イオン用の溶離液が6方バルブを介して第1のイオン分析計50へ送られる第1の流路と、第2の溶離液槽61中の陰イオン用の溶離液が6方バルブを介して第2のイオン分析計60へ送られる第2の流路が形成され、陽イオン標準試料ブロックのサンプル瓶から採取した試料は第1の流路に注入され、陰イオン標準試料ブロックのサンプル瓶から採取した試料は第2の流路に注入されるように、データ処理装置57および6方バルブ(流路切替手段)が制御されている。
【0026】
第2実施形態の分析システムは、前述のように2系統の分析計をもつ分析システムであるが、第1実施形態同様、暖機ステップ、検知ステップ、校正ステップ、実測ステップ、終了ステップ等の一連の動作を自動的に行うものである。
ここで、暖機ステップ、実測ステップ及び終了ステップについては、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
以下、第2実施形態の検知ステップ及び校正ステップについて詳述する。
【0027】
オートサンプラ70は、まずNo.81のサンプル瓶置場に、標準試料が入ったサンプル瓶が置かれているか否かを試料検知手段により検知する。ここで、試料検知手段については、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
No.81のサンプル瓶置場に標準試料が入ったサンプル瓶が置かれていることを検知した場合は校正ステップに移行する。すなわち、陽イオンの第一番目の標準試料を採取し、その一定量を陽イオン用の溶離液中(第1の流路)に注入する。そして、注入と同時に校正開始信号(試料供給信号)をデータ処理装置57に送信する。
これにより、第1のイオン分析計50は校正処理を行う。すなわち、標準試料中の既知成分が分離カラム55で分離され、検出器56は、各成分の濃度(既知)に応じた測定信号を出力する。データ処理装置57は、校正開始信号取得時を起点として溶出時刻を計時し、溶出時刻毎の測定信号を取得する。そして、標準試料中の各成分のピーク位置(ピークが得られる溶出時刻)、ピーク高さ(ピークにおける測定信号の高さ)等の情報を記憶する。
なお、校正処理の結果は、必要に応じて表示器58で表示することができる。また、プリンタ59によりプリントアウトすることができる。
【0028】
オートサンプラ70は、標準試料の注入を終えた後、洗浄処理を行い、そして次のサンプル瓶置場、すなわちNo.82における検知ステップを開始する。No.82のサンプル瓶置場に標準試料が入ったサンプル瓶が置かれていることを検知した場合は校正ステップに移行する。すなわち、陰イオンの第一番目の標準試料を採取し、その一定量を陰イオン用の溶離液中(第2の流路)に注入する。そして、注入と同時に校正開始信号をデータ処理装置67に送信する。これにより、第2のイオン分析計60は校正処理を行う。
【0029】
オートサンプラ70は、No.82において標準試料の注入と洗浄を終えた後、第1のイオン分析計50からの校正終了信号を待って、次のサンプル瓶置場、すなわちNo.83における検知ステップを開始する。すなわち、陽イオンの第二番目の標準試料を採取し、その一定量を陽イオン用の溶離液中(第1の流路)に注入する。そして、注入と同時に校正開始信号をデータ処理装置57に送信する。これにより、第1のイオン分析計50は校正処理を行う。
このようにして順次検知ステップと校正ステップを繰り返す。(正常な校正が行われなかった場合は、校正異常信号を出力する。これを受けてオートサンプラは待機状態に戻る。)
【0030】
例えば、No.84(陰イオン標準試料ブロック)における検知ステップにおいて、サンプル瓶が置かれていないことを検知した場合は、No.85(陽イオン標準試料ブロック)における検知ステップに移行する。この場合、No.85においてもサンプル瓶が置かれていないことを検知した場合には、実測ステップに移行する。
一方、No.84にサンプル瓶が置かれていないことを検知した後、No.85(陽イオン標準試料ブロック)においてサンプル瓶が置かれていることを検知した場合には、校正ステップに移行する。該校正処理後には、No.87(陽イオン標準試料ブロック)における検知ステップに移行し、以後、サンプル瓶が置かれていないことを検知するまで陽イオン標準試料ブロックの区画のみにおいてサンプル瓶の検知を行い、陰イオン標準試料ブロック内の区画については、試料が収納されているか否かの検知は行わない。
【0031】
本実施形態によれば、オートサンプラ70の試料収納場所が、被検エリアBと標準エリアAを有することにより第1の実施形態と同様の効果が得られるほか、上記記憶手段および流路切替手段(六方バルブ)を有するので、複数系統の分析計の校正処理を総て自動で行うことができる。
さらに、試料検知手段が、1つのブロック内の区画に試料が収納されていないことを検知した場合は、このブロック内の区画に試料が収納されているか否かを検知しないように構成されているので、例えば、陽イオンと陰イオンの標準試料の数が異なる場合のように、分析計ごとの標準試料の数量が異なる場合であっても、無駄な動きが少なくなり、総ての校正処理を早く終わらせることができる。
【0032】
なお、本実施形態において、オートサンプラ70のNo.81〜100のサンプル瓶置場は、奇数No.の区画を陽イオン標準試料ブロックとし、偶数No.の区画を陰イオン標準試料ブロックとして説明したが、例えば、No.81〜90のサンプル瓶置場を陽イオン標準試料ブロックとし、No.91〜100のサンプル瓶置場を陰イオン標準試料ブロックとしてもよい。
また、本実施形態においては、標準エリアAにブロックを設けたものとして説明したが、被検エリアBにブロックを設けてもよい。この場合には、例えば、No.1〜10の区画に置いた被検試料を第1のイオン分析計50で実測し、No.11〜20の区画に置いた被検試料を第2のイオン分析計60で実測すること等ができる。さらに、本実施形態においては、2系統の分析計をもつ分析システムとして説明したが、3系統以上の分析計をもつ分析システムとすることもできる。
【0033】
なお、いずれの実施形態においても、イオン分析計としてサプレッサカラムを有するものとしたが、サプレッサカラムは省略しても差し支えない。
さらに、本発明の分析計は、液体クロマトグラフ式のイオン分析計に限定されず、ガスクロマトグラフ式、フローインジェクション式又は電気泳動式等を採用した各種分析計等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第1実施形態に係るイオン分析システムの概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るオートサンプラの試料収納場所の概念図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るイオン分析システムの概略構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1,51,61…溶離液槽、2,52,62…脱気装置、3,53,63…ポンプ、
4,54,64…インジェクタ、5,55,65…分離カラム、6…サプレッサカラム、
7,56,66…検出器、8…恒温槽、10,50,60…イオン分析計、
11…除去液槽、12…ポンプ、21,57,67…データ処理装置、
22,58,68…表示器、23,59,69…プリンタ、30,70…オートサンプラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準試料を収納する区画からなる標準エリアと、被検試料を収納する区画からなる被検エリアとを含む試料収納場所を備え、該試料収納場所の各区画に収納した複数の試料を、分析計に順次供給するオートサンプラであって、
前記標準エリア内の区画に標準試料が収納されているか否かを検知する試料検知手段を備え、
該試料検知手段が、前記標準エリア内の区画に標準試料が収納されていることを検知した場合は、該検知された区画に収納されている標準試料を前記分析計に供給すると共に、校正開始信号を発信し、
該試料検知手段が、前記標準エリア内の区画に標準試料が収納されていないことを検知した場合は、前記被検エリア内の区画に収納されている被検試料を前記分析計に供給すると共に、実測開始信号を発信することを特徴とするオートサンプラ。
【請求項2】
試料収納場所の各区画に収納した複数の試料を、複数系統の分析計に順次供給するオートサンプラであって、
1又は複数の区画を1つのブロックとして記憶し、該ブロックに収納された試料を注入すべき流路と、該流路が連通する分析計とを関連付けるデータを記憶する記憶手段と、
前記データに基づき流路を切り替える流路切替手段と、
前記区画に試料が収納されているか否かを検知する試料検知手段と、を備え、
該試料検知手段が、前記ブロック内の区画に試料が収納されていることを検知した場合は、流路を切り替えて所定の分析計に、該検知された区画に収納されている試料を供給すると共に、試料供給信号を発信し、
該試料検知手段が、前記ブロック内の区画に試料が収納されていないことを検知した場合は、以後同一ブロック内の区画に試料が収納されているか否かを検知しないことを特徴とするオートサンプラ。
【請求項3】
標準試料を収納する区画からなる標準エリアと、被検試料を収納する区画からなる被検エリアとを含む試料収納場所を備え、試料収納場所の各区画に収納した複数の試料を、複数系統の分析計に順次供給するオートサンプラであって、
同一エリア内の1又は複数の区画を1つのブロックとして記憶し、該ブロックに収納された試料を注入すべき流路と、該流路が連通する分析計とを関連付けるデータを記憶する記憶手段と、
前記データに基づき流路を切り替える流路切替手段と、
前記区画に試料が収納されているか否かを検知する試料検知手段と、を備え、
該試料検知手段が、前記標準エリア内における前記ブロック内の区画に試料が収納されていることを検知した場合は、流路を切り替えて所定の分析計に、該検知された区画に収納されている試料を供給すると共に、校正開始信号を発信し、
該試料検知手段が、前記標準エリア内における前記ブロック内の区画に試料が収納されていないことを検知した場合は、以後同一ブロック内の区画に試料が収納されているか否かを検知せず、
該試料検知手段が、前記標準エリア内の全部のブロックにおいて、区画に試料が収納されていないことを検知した場合は、前記被検エリア内の区画に収納されている被検試料を前記分析計に供給すると共に、実測開始信号を発信することを特徴とするオートサンプラ。
【請求項4】
請求項1又は請求項3に記載のオートサンプラと、分析計と、前記校正開始信号又は実測開始信号を受信すると共に、前記分析計から測定信号を取得するデータ処理装置とを備え、
前記データ処理装置は、前記校正開始信号を受信したときに、前記測定信号に基づき校正処理を行い、前記実測開始信号を受信したときに、前記測定信号に基づき実測処理を行うことを特徴とする分析システム。
【請求項5】
前記データ処理装置は、前記分析計が起動後分析可能な状態になったときに暖機終了信号を前記オートサンプラに送信するものであり、
前記オートサンプラは、暖機終了信号を受信後に前記標準試料検知手段の動作を開始する請求項4に記載の分析システム。
【請求項6】
前記データ処理装置は、前記測定信号が安定したときに、前記暖機終了信号を送信する請求項5に記載の分析システム。
【請求項7】
前記分析計が液体クロマトグラフである請求項4〜6の何れかに記載の分析システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−225420(P2007−225420A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46427(P2006−46427)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】