説明

オートテンショナ

【課題】オートテンショナにおいて、ベルト軸荷重とスプリング荷重の合力により発生する作用点を軸受部材の軸方向中央に近付ける。
【解決手段】固定部材10と、その軸部12に対して周方向に揺動可能に外嵌合されるボス部22及びボス部22の揺動中心に対してオフセットした位置で回転自在に軸支され、外周面でベルトに接触するプーリ29を有する可動部材20とを設ける。ボス部22と軸部12との間にインサートベアリング40を配置し、ボス部22の周囲に二巻き以上のコイル部51を有し、可動部材20の揺動動作によって縮径する捩りコイルバネ50配置する。軸部12外周と捩りコイルバネ50内周との間に可動部材20の揺動を減衰するスプリングサポート60を設ける。そして、突部70(荷重伝達抑制手段)によって、捩りコイルバネ50の一巻き目51aに加わる荷重をボス部22に伝達するのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト駆動機構におけるベルトの張力を調整可能なオートテンショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、図4に示すようなオートテンショナ301では、スプリング荷重Fsの大きさ及びその位置Ls並びにベルト軸荷重の大きさFh及びその位置Lhにより、合力作用点Lrの位置が決まる。ベルト軸荷重Fhとスプリング荷重Fsの合力Frにより発生する作用点位置Lrをボス部322と軸部312との間に装着された軸受部材340の位置に設定している。この場合、ボス部322の揺動中心に対してプーリ329がオフセットして配置されていると、スプリングトルク及びスプリング荷重Fsが大きくなり、しかも、ベルト軸荷重位置Fhが低いと、合力Lrの作用点がボス部322の下側となる。このことで、可動部材320が傾き、軸受部材340に偏摩耗が発生し、オートテンショナ301の短長寿命化や可動部材320の傾きに起因する異音等が発生するという問題がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1のようにカップ開口部近傍にダンピング材や支持部材を取り付け、カップ部でアームが傾かないようにしている。
【0004】
また、特許文献2では、ベルトはブロード方向と対面する部分に摩擦板と揺動部材とをスプリングとカップとの間に設け、スプリングの押しつけ力によってアームの傾きを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−336702号公報
【特許文献2】特開2003−278864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2のような構造を追加すれば、可動部材の傾きを抑制することができるが、作用点位置を変えることはできず、支持している部材が摩耗すると可動部材の傾きを抑制する効果が小さくなる、という問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルト軸荷重とスプリング荷重の合力により発生する作用点を軸受部材の軸方向中央に近付けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、捩りコイルバネの軸部の基端側における一巻き目に加わる荷重をボス部に伝達するのを抑制する手段を設けた。
【0009】
具体的には、第1の発明では、軸部を有する固定部材と、
上記軸部に対して周方向に揺動可能に外嵌合されるボス部及び該ボス部の揺動中心に対してオフセットした位置で回転自在に軸支され、外周面でベルトに接触するプーリを有する可動部材と、
上記ボス部と上記軸部との間に配置された軸受部材と、
上記ボス部の周囲に配置される二巻き以上のコイル部を有し、上記可動部材の揺動動作によって縮径する捩りコイルバネと、
上記軸部外周と上記捩りコイルバネ内周との間に設けられ、上記可動部材の揺動を減衰するスプリングサポートとを備えたオートテンショナにおいて、
上記捩りコイルバネの上記軸部の基端側における一巻き目に加わる荷重を上記ボス部に伝達するのを抑制する荷重伝達抑制手段を備えている。
【0010】
すなわち、スプリング荷重をFs、ベルト軸荷重をFh、スプリング荷重位置をLs、ベルト軸荷重位置をLhとすると、合力Frは、Fr=Fs+Fhとなり、作用点位置Lrは、Lr=(Fs×Ls+Fh×Lh)/(Fs+Fh)で計算される。上記の構成によると、荷重伝達抑制手段により、捩りコイルバネの軸部の基端側における一巻き目に加わる荷重がボス部に伝達されるのを抑制するので、スプリング荷重Fsが小さく、スプリング荷重位置Lsが大きく(高く)なることで、作用点位置Lrが大きくなる。このため、可動部材の傾きが発生しにくくなり、軸受部材において偏摩耗が発生するのが防止される。一巻き目とは、コイル部を構成する線材の平面視で約360°の略円形の範囲を示す。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記ボス部は、上記軸部の基端側を覆わず、
上記荷重伝達抑制手段は、上記軸部の上記ボス部に覆われていない外周から径方向外側へ突出し、上記一巻き目に加わる荷重を上記スプリングサポートを介して支持する突部よりなるものとする。
【0012】
上記の構成によると、一巻き目に加わる荷重は、突部に支持され、ボス部には伝わらず、ボス部には、二巻き目以降に加わる荷重が伝わるので、作用点位置Lrが高くなる。また、一巻き目に加わる荷重は、スプリングサポートを介して突部に支持されているので、可動部材の揺動は減衰される。
【0013】
第3の発明では、第1の発明において、
上記ボス部は、上記軸部の基端側を覆わず、
上記荷重伝達抑制手段は、上記軸部の上記ボス部に覆われていない外周を覆い、上記一巻き目に加わる荷重を上記スプリングサポートを介して支持する金属製リングよりなるものとする。
【0014】
上記の構成によると、一巻き目に加わる荷重は、金属製のリングで支持され、ボス部には伝わらず、ボス部には、二巻き目以降に加わる荷重が伝わるので、作用点位置Lrが高くなる。また、一巻き目に加わる荷重は、スプリングサポートを介して金属製リングに支持されているので、可動部材の揺動は減衰される。
【0015】
第4の発明では、第1の発明において、
上記ボス部は、上記軸部の基端側まで覆い、
上記荷重伝達抑制手段は、上記ボス部における、上記軸部の基端側を覆うと共に、上記一巻き目の内周に当接し、該一巻き目に加わる荷重によって該一巻き目が縮径するのを防止する金属製リングよりなるものとする。
【0016】
上記の構成によると、金属製リングにより一巻き目に荷重が加わっても縮径しないので、金属製リングの内側にあるボス部には伝わらず、ボス部には、二巻き目以降に加わる荷重が伝わるので、作用点位置Lrが高くなる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、荷重伝達抑制手段により、捩りコイルバネの一巻き目に加わる荷重をボス部に伝達するのを抑制するようにしたことにより、ベルト軸荷重とスプリング荷重の合力により発生する作用点が軸受部材の軸方向中央に近付き、可動部材の傾きが抑制され、軸受部材の偏摩耗を防いでオートテンショナの短寿命化や可動部材の傾きに起因する異音等の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1にかかるオートテンショナを示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態2にかかるオートテンショナを示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態3にかかるオートテンショナを示す断面図である。
【図4】従来のオートテンショナを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態にかかるオートテンショナ1の全体構成を示しており、このオートテンショナ1は、自動車用エンジンの出力トルクの一部を1本の伝動ベルトを介して複数の補機に伝達するようにしたサーペンタインレイアウトのベルト式補機駆動装置において使用されるものであり、伝動ベルトに所定の張力を付与する作動を行いつつ、その作動状態に応じて該作動に対するダンピング力を自動的に変化させるようになっている。
【0021】
このオートテンショナ1は、例えばエンジンに固定される固定部材10と、この固定部材10に揺動軸心P回りに揺動可能に支持された可動部材20とを備えている。
【0022】
上記の固定部材10は、有底筒状のハウジング部11と、このハウジング部11内の底壁中央に立設された軸部12とを有する。軸部12の外周面は、先端側に向かって外径が漸次小さくなる断面テーパ状に形成されており、また、軸部12の軸心P部分には、該軸部12を軸方向に貫通するボルト孔13が設けられている。ハウジング部11の外周には、図外の取付部が設けられており、固定部材10は、これら取付部及びボルト孔13においてボルトによりエンジンに固定されるようになっている。さらに、ハウジング部11の周壁における周方向の一部には、該周壁を半径方向に貫通しかつ底壁に接する位置から開口近傍位置に達するスリット状の係止部(図示せず)が形成されている。
【0023】
一方、上記の可動部材20は、有底筒状のハウジング部21と、このハウジング部21の底壁中央に上記固定部材10の軸部12の先端側から外嵌合可能に設けられたボス部22とを有する。ボス部22は、ハウジング部21の底壁から該ハウジング部21の開口側に向かって延びるように形成されており、その内周面は、ハウジング部21の開口側に向かって内径が漸次大きくなる断面テーパ状に形成されている。ボス部22の内周面のテーパ角は、軸部12の外周面のテーパ角と略同じである。この可動部材20は、ハウジング部21の開口が固定部材10のハウジング部11の開口と重なり合うとともに、ボス部22が固定部材10の軸部12上に該軸部12の先端側から外嵌合された状態に配置されている。軸部12はボス部22を軸方向に貫通しており、その先端部分がハウジング部21の底壁から軸方向に突出している。この先端部分には、略円板状をなしていて外径がボス部22の内径よりも大きいフロントプレート23が係止されており、これにより、ボス部22が軸部12から抜け出ないようになっている。また、ハウジング部21の周壁における周方向の一部でありかつ底壁近傍の部位には、該周壁を半径方向に貫通する係止孔(図示せず)が形成されている。
【0024】
上記ハウジング部21の外周には、アーム部24が半径方向外方に向かって突出するように設けられており、このアーム部24の先端には、プーリ保持部25が設けられている。プーリ保持部25には、揺動軸心Pに平行な方向に延びるボルト孔26が形成されている。プーリ保持部25の先端側外周は小径になっており、この小径部上には、ベアリング27が内輪において外嵌合されている。この内輪は、ボルト孔26に螺着された鍔付ボルト28の鍔部によりプーリ保持部25に取り付けられている。ベアリング27の外輪上には、プーリ29が回転一体に外嵌合されており、このプーリ29が伝動ベルトに接触してプーリ軸心Q回りに回転しつつ該伝動ベルトを押圧するようになっている。
【0025】
上記可動部材20のボス部22と固定部材10の軸部12との間には、軸受部材としての略円筒状のインサートベアリング40が介装されており、可動部材20は、このインサートベアリング40を介して固定部材10に揺動軸心P回りに揺動可能に支持されている。インサートベアリング40の内外周面はそれぞれ断面テーパ状に形成されている。内周面のテーパ角は軸部12の外周面と略同じであり、外周面のテーパ角は、ボス部22の内周面と略同じである。また、上記のフロントプレート23と、可動部材20のハウジング部21の底壁との間には、インサートベアリング40と同じ材料からなる円板状のスラストワッシャ41が介装されている。
【0026】
上記固定部材10と可動部材20との間には、固定部材10に対し、可動部材20をプーリ29が伝動ベルトを押圧する方向に向かって揺動軸心P回りに回動するように常時付勢する捩りコイルバネ50が介装されている。具体的には、この捩りコイルバネ50は、固定部材10のハウジング部11と可動部材20のハウジング部21との間に収容されており、右巻きのコイル部51と、このコイル部51における固定部材10側の端部から半径方向外方に向かって突出する固定側タング(図示せず)と、コイル部51における可動部材20側の端部から半径方向外方に向かって突出する揺動側タング(図示せず)とを有する。コイル部51は、可動部材20のボス部22上に嵌め込まれていて、固定側タングは固定部材10の係止部に周方向の移動を規制された状態に係止されている。一方、揺動側タングは可動部材20の係止孔に同じく周方向の移動を規制された状態に係止されている。
【0027】
また、捩りコイルバネ50は、コイル部51が縮径する方向に捩られた状態で固定部材10及び可動部材20間に介装されており、このことで、コイル部51が拡径する方向の捩りトルクでもって可動部材20を回動付勢するようになっている。さらに、この捩りコイルバネ50は、例えば四巻き程度のコイル部51が軸方向に圧縮された状態で介装されており、このことで、上記のスラストワッシャ41がフロントプレート23と可動部材20のハウジング部21との間に挟圧された状態となっている。
【0028】
上記捩りコイルバネ50のコイル部51と上記可動部材20のボス部22との間には、略鍔付円筒状のスプリングサポート60が介装されている。このスプリングサポート60は、可動部材20のボス部22上に外嵌合されていて該ボス部22に対し摺接可能な円筒状のダンピング部61と、このダンピング部61の一方の開口縁に設けられた外向きフランジ状の鍔部62とからなっている。ダンピング部61の軸方向寸法は、捩りコイルバネ50のコイル部51の二巻き分の軸方向寸法と略同じである。鍔部62は、コイル部51の固定側タングの側の端部と固定部材10のハウジング部11の底壁との間に配置されていて、コイル部51の圧縮力により両者間に挟圧保持されており、このことで、スプリングサポート60は、固定部材10側に回動不能に固定されるようになっている。
【0029】
そして、オートテンショナ1は、捩りコイルバネ50の軸部12の基端側(エンジン側)における一巻き目51aに加わる荷重をボス部22に伝達するのを抑制する荷重伝達抑制手段を備えている。一巻き目51aとは、コイル部51におけるエンジン側の線材の平面視で約360°の略円形の範囲を示す。本実施形態の荷重伝達抑制手段は、軸部12における、ボス部22に覆われていない外周から径方向外側へ突出し、一巻き目51aに加わる荷重をスプリングサポート60を介して支持する突部70よりなる。突部70の形状は、特に限定されず、過度に応力が集中してスプリングサポート60が摩耗しない形状が望ましい。例えば、平面視で揺動軸心Pを中心とする円弧状外周を有するように膨出したものとする。
【0030】
−作動−
ここで、上記のように構成されたオートテンショナ1の作動について説明する。
【0031】
自動車用エンジンの作動に伴い、伝動ベルトの張力が低下したときには、オートテンショナ1では、捩りコイルバネ50の捩りトルクでもって可動部材20がベルト押圧方向に回動し、プーリ29が伝動ベルトを押圧するので、ベルト張力の低下が抑えられる。逆に伝動ベルトの張力が上昇したときには、そのベルト反力によりプーリ29が押圧され、可動部材20がベルト押圧方向とは反対の方向に回動するので、ベルト張力の上昇が抑えられる。
【0032】
一方、捩りコイルバネ50の捩りトルクの反力でもって、この捩りコイルバネ50のコイル部51における周方向の一部は半径方向内方に向かって常にスプリング荷重Fsで押圧されている。本実施形態では、突部70が設けられているので、スプリング荷重Fsのうち一巻き目51aに加わる荷重が突部70によって軸部12に支持される。ベルト軸荷重をFh、スプリング荷重位置をLs、ベルト軸荷重位置をLhとすると、合力Frは、Fr=Fs+Fhとなり、作用点位置Lrは、Lr=(Fs×Ls+Fh×Lh)/(Fs+Fh)で計算される。突部70により、捩りコイルバネ50の軸部12の基端側における一巻き目51aに加わる荷重がボス部22に伝達されるのが抑制される。このことで、スプリング荷重Fsが小さく、スプリング荷重位置Lsが大きく(エンジンからの距離が大きく)なり、作用点位置Lrが大きくなる。このため、図4に示す従来のオートテンショナ301に比べ、アーム部24の図1の揺動軸心Pに対する傾きの拡大が効果的に防止される。
【0033】
可動部材20のボス部22における周方向のエンジン側がスプリングサポート60のダンピング部61とインサートベアリング40との間に挟圧されている。また、突部70と捩りコイルバネ50の一巻き目51aとの間にスプリングサポート60のエンジン側が挟圧されている。よって、可動部材20の揺動に伴い、スプリングサポート60のダンピング部61とボス部22との間、及びインサートベアリング40とボス部22との間には、それぞれ摺動摩擦が発生し、それらが可動部材20の揺動を減衰させるダンピング力として作用する。そして、一巻き目51aに加わった荷重は、スプリングサポート60を介して突部70に伝達されるので、ダンピング力の低下が防止される。
【0034】
これらの結果、オートテンショナ1は、ベルト張力が低下したときには速やかに伝動ベルトを押圧してベルト張力の低下を抑え、一方、ベルト張力が増大したときには緩やかにベルト反力の増加分を吸収してベルト張力の増大を抑える。このようにすることで、張力変動に起因する伝動ベルトのばたつきが回避され、これにより、補機プーリに対する伝動ベルトの滑りが抑えられてトルク伝達が確実化するとともに、伝動ベルトの寿命の短命化が防止されることとなる。
【0035】
したがって、本実施形態にかかるオートテンショナ1によると、作用点位置Lrがインサートベアリング40の軸方向中央に近付き、アーム部24の傾きが抑制され、インサートベアリング40の偏摩耗を防いでオートテンショナ1の短寿命化やアーム部24の傾きに起因する異音等の発生を防止することができる。
【0036】
(実施形態2)
図2は本発明の実施形態2を示し、荷重伝達抑制手段が異なる点で上記実施形態1と異なる。なお、以下の各実施形態では、図1と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0037】
本実施形態のオートテンショナ101の荷重伝達抑制手段は、軸部12のボス部22に覆われていない外周を覆う金属製リング170よりなる。金属製リング170の外径は、スプリングサポート60の内径よりも若干小さく、少なくとも一巻き目51aの内面が当接する範囲に配置されている。そのことで、一巻き目51aに加わる荷重をスプリングサポート60を介して支持するようになっている。金属製リング170は、例えば、ステンレスパイプで構成され、一巻き目51aに加わる荷重によって変形しない強度を有するのが望ましい。
【0038】
本実施形態によると、一巻き目51aに加わる荷重は、金属製リング170で支持され、ボス部22には伝わらない。ボス部22には、二巻き目以降に加わる荷重のみが伝わるので、作用点位置Lrが高くなる。また、一巻き目51aに加わる荷重は、スプリングサポート60を介して金属製リング170に支持されているので、可動部材20の揺動は減衰される。
【0039】
したがって、本実施形態にかかるオートテンショナ101においても、作用点位置Lrがインサートベアリング40の軸方向中央に近付き、アーム部24の傾きが抑制され、インサートベアリング40の偏摩耗を防いでオートテンショナ1の短寿命化やアーム部24の傾きに起因する異音等の発生を防止することができる。
【0040】
(実施形態3)
図3は本発明の実施形態3を示し、荷重伝達抑制手段が異なる点で上記実施形態1と異なる。
【0041】
本実施形態のオートテンショナ201では、ボス部22は、ハウジング部11の底面近傍まで延びている。本実施形態の荷重伝達抑制手段は、ボス部22における、軸部12の基端側を覆うと共に、一巻き目51aの内周に当接する金属製リング270よりなる。この金属製リング270の外径は、上記実施形態2の金属製リング170よりも大きく、ベルト軸荷重位置Lhが0のときの一巻き目51aの内径よりも若干小さい程度とする。金属製リング270は、例えば、ステンレスパイプで構成され、一巻き目51aに加わる荷重によって変形しない程度の強度を有し、一巻き目51aが縮径するのを防止するようになっている。
【0042】
本実施形態においても、金属製リング270により一巻き目51aに荷重が加わっても縮径しないので、その荷重は、金属製リング270の内側にあるボス部22に伝わらない。そして、ボス部22には、二巻き目以降に加わる荷重が伝わるので、作用点位置Lrが高くなる。
【0043】
したがって、本実施形態にかかるオートテンショナ201においても、作用点位置Lrがインサートベアリング40の軸方向中央に近付き、アーム部24の傾きが抑制され、インサートベアリング40の偏摩耗を防いでオートテンショナ1の短寿命化やアーム部24の傾きに起因する異音等の発生を防止することができる。
【0044】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0045】
すなわち、上記実施形態では、プーリ保持部25のエンジン側にプーリ29を配置したが、エンジンと反対側に設けてもよい。
【0046】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0047】
1,101,201 オートテンショナ
10 固定部材
12 軸部
20 可動部材
22 ボス部
29 プーリ
40 インサートベアリング(軸受部材)
50 コイルバネ
51 コイル部
51a 一巻き目
60 スプリングサポート
61 ダンピング部
62 鍔部
70 突部(荷重伝達特性手段)
170 金属製リング(荷重伝達特性手段)
270 金属製リング(荷重伝達特性手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部を有する固定部材と、
上記軸部に対して周方向に揺動可能に外嵌合されるボス部及び該ボス部の揺動中心に対してオフセットした位置で回転自在に軸支され、外周面でベルトに接触するプーリを有する可動部材と、
上記ボス部と上記軸部との間に配置された軸受部材と、
上記ボス部の周囲に配置される二巻き以上のコイル部を有し、上記可動部材の揺動動作によって縮径する捩りコイルバネと、
上記軸部外周と上記捩りコイルバネ内周との間に設けられ、上記可動部材の揺動を減衰するスプリングサポートとを備えたオートテンショナにおいて、
上記捩りコイルバネの上記軸部の基端側における一巻き目に加わる荷重を上記ボス部に伝達するのを抑制する荷重伝達抑制手段を備えている
ことを特徴とするオートテンショナ。
【請求項2】
請求項1に記載のオートテンショナにおいて、
上記ボス部は、上記軸部の基端側を覆わず、
上記荷重伝達抑制手段は、上記軸部の上記ボス部に覆われていない外周から径方向外側へ突出し、上記一巻き目に加わる荷重を上記スプリングサポートを介して支持する突部よりなる
ことを特徴とするオートテンショナ。
【請求項3】
請求項1に記載のオートテンショナにおいて、
上記ボス部は、上記軸部の基端側を覆わず、
上記荷重伝達抑制手段は、上記軸部の上記ボス部に覆われていない外周を覆い、上記一巻き目に加わる荷重を上記スプリングサポートを介して支持する金属製リングよりなる
ことを特徴とするオートテンショナ。
【請求項4】
請求項1に記載のオートテンショナにおいて、
上記ボス部は、上記軸部の基端側まで覆い、
上記荷重伝達抑制手段は、上記ボス部における、上記軸部の基端側を覆うと共に、上記一巻き目の内周に当接し、該一巻き目に加わる荷重によって該一巻き目が縮径するのを防止する金属製リングよりなる
ことを特徴とするオートテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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