説明

オートドレン並びにこれを用いた排水機構及びコンクリートの浸水養生システム

【課題】負圧の配管上に介在し、空気と水その他の異物を分離して排出する装置の提供。
【解決手段】この装置では、吸引機20の吸引によりタンク10内部を負圧にして、排出口13をフラップ弁14の閉動により閉じ、吸入口11を通して空気を水その他の異物とともに吸入して、空気をタンク10を経て吸引機20から排出し、水その他の異物はタンク10内部に一時的に貯留し、これがタンク10内部に満たされた後、水を吸引延長部15へ吸引機20の最大静圧でタンク10内部の水位が吊り合うまで吸引することによりタンク10内部の負圧をなくして、排出口13を開き、水その他の異物を排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートドレン並びにこれを用いた排水機構及びコンクリートの浸水養生システムに関し、特に、建設工事現場などで空気とともに水その他の異物を吸引する負圧の配管経路上で使用するオートドレン、並びにこれを用いた排水機構及びコンクリートの浸水養生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリートの養生では、乾燥を防ぐだけでなく、セメントの水和反応に必要な水分を十分に供給することで、コンクリートの表層部が緻密化して、品質の向上を図ることができる。
本願出願人は、先の出願(特許文献1参照)で、型枠脱型後のコンクリートの表面(側面)に対して給水を行い、水中養生と同じレベルの養生を実現したコンクリートの浸水養生システム(アクアカーテンシステム)を提案した。
この浸水養生システムは、コンクリートの表面に被着する浸水養生シートと、給水ポンプ、及びこの給水ポンプから延び、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間に配置される給水用の配管を有し、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間に養生水を供給する給水装置と、吸引機、この吸引機から延び、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間に配置される吸引用の配管、及びこの配管上に介在され、空気と養生水及び当該養生水に含まれる粉塵や小径の石などを分離して排出する除水除塵機を有し、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間の空気を養生水とともに吸引する吸引装置とを備え、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間を空気の吸引により負圧にして密着させ、その隙間に養生水を流すことにより、コンクリートの表面を水膜で覆うようにしたものである。
【0003】
ところで、この浸水養生システムでは、吸引装置によりコンクリートの表面と浸水養生シートとの間の空気を養生水とともに吸引することから、吸引機に空気とともに水及び水に含まれる粉塵や小石などが入ると、吸引機が破損したり過負荷により故障を生じたりする虞があり、これに対処するため、吸引機への配管の途中に、除水除塵機が設置されて、空気と水及び水に含まれる粉塵、小石などを分離するようにしている。この場合、除水除塵機は一般に知られているフロート式のオートドレン(例えば特許文献2参照)など動力源を用いない自動排水器が採用されることが好ましいところ、この種の自動排水器は、圧縮空気が送入される正圧の配管経路上で作用し、負圧の配管経路上では機能しないため、空気を水とともに吸引する負圧の配管経路の途中に設置して水及び水に含まれる粉塵や小石などを自然に排出する設備として利用することは困難であった。
そこで、この浸水養生システムにおいては、図9に示すように、吸引用の配管91の途中にペール缶などを用いたタンク92を設置し、このタンク92の内部に水中ポンプ93を設置して、配管92から流れる空気をタンク93を通して吸引機94に吸引し、水、粉塵、小石などの異物はタンク93に回収して、水中ポンプ93で水を排出するようになっている。なお、このシステムでは、タンク92内の水を水中ポンプ93で給水装置側のタンク95へ送り、この水を養生水として再利用し、循環するようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−168804公報
【特許文献2】特開平11−63388公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のコンクリートの浸水養生システムでは、吸引装置により吸引した空気と水、粉塵、小石などの異物を分離、排出するために、吸引用の配管の途中にタンクを設置し、このタンクの内部に水中ポンプを設置して、配管から流れる空気をタンクを通して吸引機に吸引し、水、粉塵、小石などの異物はタンクに回収して、水中ポンプで水を排出するようにしているため、吸引機とは別に水中ポンプなどの動力源が必要で、吸引機を含む排水機構全体が複雑となり、また、タンク内の水不足による水中ポンプの焼付きを防止するために、昼夜を通しての設備の維持管理が必要で、設備管理が煩雑になるなどの問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、空気とともに水、粉塵、小石などの異物(以下、単に水その他の異物という。)を吸引する負圧の配管経路上で、吸引機とは別に動力を必要としない簡単な装置構成により、空気と水その他の異物を分離して排出することができ、また、装置に対する特別な管理を不要とし、設備管理を大幅に軽減することのできるオートドレン、並びにこれを用いた排水機構及びコンクリートの浸水養生システムを提供する、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、吸引機に連結され、空気を水その他の異物とともに吸引する配管経路上に介在され、空気と水その他の異物を分離して排出するオートドレンであって、一定量の水その他の異物を収容可能なタンクからなり、前記タンクに、前記吸引機に連結する吸引側の配管を接続し、前記タンク内部を吸引するための吸引口と、空気と水その他の異物を吸入する吸入側の配管を接続し、前記タンク内部に空気を水その他の異物とともに吸入するための吸入口と、前記タンク内部の水その他の異物を排出するためのフラップ弁付きの排出口と、前記吸引口から上方に向けて立ち上げられ、前記タンク内部に水その他の異物が満たされた後の前記吸引機の最大静圧による吸引により前記タンク内部の水その他の異物が上昇可能な最大高さよりも高い位置まで延び、前記タンク内部に水その他の異物が満たされた後の前記タンク内部の水を吸引するための吸引延長部とを備え、前記吸引機の吸引により前記タンク内部を負圧にして、前記排出口を前記フラップ弁の閉動により閉じ、前記吸入口を通して空気を水その他の異物とともに吸入し、空気を前記タンクを経て、前記吸引機から排出し、水その他の異物は前記タンク内部に一時的に貯留して、前記タンク内部に水その他の異物が満たされた後の水を前記吸引延長部へ前記吸引機の最大静圧で前記タンク内部の水位が吊り合うまで吸引することにより前記タンク内部の負圧をなくして、前記排出口を前記フラップ弁の開動により開き、前記タンク内部の水その他の異物を排出する、ことを要旨とする。
この場合、タンク内部に水その他の異物を排出口方向へ移動案内するガイドを有することが好ましい。
また、排出口はタンクの下部から略水平に延びる略円筒状に形成されて、フラップ弁は、前記排出口に嵌合可能にかつ前記排出口の軸回りに回転可能な略円筒状の管からなり、先端開口を斜め上向きに形成される連結管と、前記連結管の先端開口上に当該開口の上部側に設けられるヒンジ部材を介して当該開口を開閉可能に取り付けられる弁本体とを備え、前記フラップ弁は前記排出口に対して取付角度を調整可能に取り付けられることが好ましい。
さらに、吸引延長部は下部が大径に上部が小径に形成されることが好ましい。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、空気を吸引する吸引機、及び前記吸引機に連結され、空気を水その他の異物とともに吸引する配管経路上に介在され、空気と水その他の異物を分離して排出する除水除塵機とを備え、空気を水その他の異物とともに吸引し、空気と水その他の異物とを分離して排出する排水機構において、前記除水除塵機に上記のオートドレンを用いた、ことを要旨とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、コンクリートの表面に被着する浸水養生シートと、給水ポンプ、及び前記給水ポンプから延び、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間に配置される給水用の配管を有し、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間に養生水を供給する給水装置と、吸引機、前記吸引機から延び、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間に配置される吸引用の配管、及び前記配管上に介在され、空気と養生水及び当該養生水に含まれる異物を分離して排出する除水除塵機を有し、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間の空気を養生水とともに吸引する吸引装置とを備え、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間を空気の吸引により負圧にして密着させ、その隙間に養生水を流すコンクリートの浸水養生システムにおいて、前記吸引装置の除水除塵機に上記のオートドレンを用いた、ことを要旨とする。
この場合、オートドレンの排出口は給水装置の給水源として設置される集水タンクへ延長され、前記オートドレンから排出される水が前記集水タンクに収容されて、前記給水装置により養生水として循環されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオートドレン、並びにこれを用いた排水機構及びコンクリートの浸水養生システムによれば、上記の構成により、吸引機の吸引によりタンク内部を負圧にして、排出口をフラップ弁の閉動により閉じ、吸入口を通して空気を水その他の異物とともに吸入し、空気をタンクを経て、吸引機から排出し、水その他の異物はタンク内部に一時的に貯留して、タンク内部に水その他の異物が満たされた後の水を吸引延長部へ吸引機の最大静圧でタンク内部の水位が吊り合うまで吸引することによりタンク内部の負圧をなくして、排出口をフラップ弁の開動により開き、タンク内部の水その他の異物を排出するようにしたので、空気を水その他の異物とともに吸引する負圧の配管経路上で、吸引機とは別に動力を必要としない簡単な装置構成により、空気と水その他の異物を分離して排出することができ、また、このオートドレンの場合、特別な管理が不要で、設備管理を大幅に軽減することができる、という本願発明固有の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態におけるオートドレンの基本構成を示す図
【図2】同オートドレンを利用した排水機構の構成を示す図
【図3】同排水機構の動作を示し、吸引機の作動により配管経路の吸引を開始し、タンク内部を負圧にして、排出口のフラップ弁を閉じ、吸入側の配管、吸入口を通して空気を水その他の異物とともにタンク内部に吸入する状態を示す図
【図4】同排水機構の動作を示し、空気を水その他の異物とともにタンク内部に吸入する動作が継続している状態を示す図
【図5】同排水機構の動作を示し、タンク内部に水その他の異物が満たされて、配管系統の閉塞状態が発生した状態から、タンク内部で、水その他の異物を吸引延長部に、吸引機の最大静圧でタンク内部の水位が吊り合う所定の高さまで吸引して、タンク内部の負圧状態をなくし、タンク内部の水圧により排出口のフラップ弁を押し開いて、タンク内部の水その他の異物をタンク外部へ排出する状態を示す図
【図6】同排水機構の動作を示し、タンク内部の水その他の異物をタンク外部へ排出して、タンク内部の水位が吸引側の配管の下部の下まで下がることにより、タンク内部に空気の流路が確保されて、配管経路の吸引を再開する状態を示す図
【図7】コンクリートの浸水養生システムの基本構成を示す図
【図8】同浸水養生システムに採用する排水機構の構成を示す図
【図9】コンクリートの浸水養生システムに採用される従来の排水機構の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。図1にこの発明に基づくオートドレンを示している。
図1に示すように、オートドレン1は、吸引機20に連結され、空気を水その他の異物とともに吸引する配管経路上に介在され、空気と水その他の異物を分離して排出する排水、排塵構造を備える。
【0013】
このオートドレン1は全体がタンク10からなり、吸引口11、吸入口12、排出口13及び吸引延長部15とを備えて構成される。
【0014】
タンク10は一定量の水その他の異物を収容可能な密閉された収容空間を有する水槽になっている。この場合、タンク10は全体が略錐状に形成され、底面が中央の平面101とその周囲で周面から中央の平面101に向けて下り傾斜の傾斜面102とからなる。この底面の傾斜面102はタンク10内部の水その他の異物を排出口13に向けて移動案内するためのガイドをなす。なお、このタンク10は支持脚、台座などの支持手段を介して設置面に設置される。
【0015】
吸引口11は、吸引機20に連結する吸引側の配管16を接続し、タンク10内部を吸引するための吸引口で、この場合、吸引口11はタンク10の上面の所定の位置に形成される。
【0016】
吸入口12は、空気と水その他の異物を吸入する吸入側の配管17を接続し、タンク10内部に空気とともに水その他の異物を吸入するための吸入口で、この場合、吸入口12はタンク10の上面に吸引口11とは異なる所定の位置に形成される。
【0017】
排出口13は、タンク10内部の水その他の異物を排出するための排出口で、タンク10の下部から外側に向けて延び、先端の開口130にフラップ弁14がヒンジ部材を介して開閉可能に取り付けられる。この場合、排出口13は略L字形の円筒状の管材からなり、タンク10の底面中央の平面101から略L字形にタンク10の外周方向に向けて延ばされる。また、この場合、排出口13の先端の開口130は斜め上向きに形成されて、この開口130上にフラップ弁14がこの開口130の上部側に設けられるヒンジ部材を介して開口130を開閉可能に取り付けられる。
【0018】
吸引延長部15は、吸引口11から上方に向けて立ち上げられ、タンク10内部に水その他の異物が満たされた後の吸引機20の最大静圧による吸引によりタンク10内部の水その他の異物が上昇可能な最大高さよりも高い位置まで延び、タンク10内部に水その他の異物が満たされた後のタンク10内部の水を吸引するためのもので、この場合、吸引機20の最大静圧に応じた所定の高さを有する縦配管が吸引口11上に設置固定されて形成される。なお、この縦配管は下部が大径に上部が小径に形成されることが好ましい。
【0019】
このようにしてこのオートドレン1は吸引口11に吸引延長部15を介して吸引側の配管16が接続され、吸入口12に吸入側の配管17が接続されて、空気を水その他の異物とともに吸引する負圧の配管経路上に介在される。
この状態から、吸引機20により配管経路を吸引すると、タンク10内部が負圧になって、排出口13のフラップ弁14が閉じ(このフラップ弁14により排出口13は密閉されてこの排出口13からの空気などの流れ込みが防止され、)、吸入側の配管17、吸入口12を通して空気が水その他の異物とともにタンク10内部に吸入される。空気はタンク10の吸引口11、吸引延長部15、吸引側の配管16を通して、吸引機20から大気に放出される。重量物の水、粉塵、小石などの異物はタンク10内部に落下して一時的に貯留される。この場合、これらの異物はタンク10内部で底面の傾斜面102の案内により、底面の中央に集められ、排出口13に向けて移動される。この吸引動作が継続し、タンク10内部に水その他の異物が満たされると、配管系統に閉塞状態が発生し、タンク10内部では、水その他の異物が吸引延長部15に、吸引機20の最大静圧でタンク10内部の水位が吊り合う所定の高さまで吸引される。このとき、吸引延長部15に設定された所定の高さによりタンク10内部の水位は吸引延長部15の高さ以上に上昇することがなく、また、この場合、吸引延長部15は下部が大径に上部が小径に形成されることにより、吸引延長部15での水位の上昇を低く調整することができ、タンク10内部に吸入された水の吸引機20への流入は確実に防止される。そして、吸引機20の最大静圧でタンク10内部の水位が吊り合うと、タンク10内部の負圧状態がなくなり、タンク10内部の水圧により排出口13のフラップ弁14が押し開かれ、タンク10内部の水その他の異物がタンク10の外部へ排出される。以上の動作は瞬時に行われる。このようにしてタンク10内部の水その他の異物がタンク10外部へ排出され、タンク10内部の水位が下がり、タンク10内部に空気の流路が確保されると、配管経路の吸引が再開され、上記と同様の動作が繰り返される。
【0020】
以上説明したように、このオートドレン1では、上記の構成により、吸引機20の吸引によりタンク10内部を負圧にして、排出口13をフラップ弁14の閉動により閉じ、吸入口12を通して空気を水その他の異物とともに吸入し、空気をタンク10を経て、吸引機20から排出し、重量物の水、粉塵、小石などの異物はタンク10内部に一時的に貯留して、タンク10内部に水その他の異物が満たされた後の水を吸引延長部15へ吸引機20の最大静圧でタンク10内部の水位が吊り合うまで吸引することによりタンク10内部の負圧をなくして、排出口13をフラップ弁14の開動により開き、タンク10内部の水その他の異物を排出するようにしたので、空気を水その他の異物とともに吸引する負圧の配管経路上で、吸引機20とは別に動力を必要としない簡単な装置構成により、空気と水その他の異物を確実に分離し、空気を吸引機20を通して排出し、水その他の異物をオートドレン1から(吸引機20に流入することなしに)外部へ排出することができる。このようにして吸引機20に水その他の異物が入らないようにしたことで、吸引機20の負担を大幅に軽減することができる。また、このオートドレン1の場合、特別な管理が不要で、設備管理を大幅に軽減することができる。
【0021】
図2にこのオートドレン1を用いた排水機構2を示している。図2に示すように、この排水機構2は、空気を吸引する吸引機20、及びこの吸引機20に連結され、空気を水その他の異物とともに吸引する配管経路上に介在され、空気と水その他の異物を分離して排出する除水除塵機21とを備えて構成される。
【0022】
この排水機構2では、吸引機20は、安定した吸引力を維持し静圧を確保しやすいこと、長期間の運転に耐えられることが求められるため、遠心ファン、特にターボファンが採用される。この吸引機20は後述するタンク10の上面に設置されてタンク10の吸引口11に吸引延長部15、吸引側の配管16をなす配管を介して接続される。
【0023】
除水除塵機21は上記のオートドレン1が利用される。この除水除塵機21は上記のオートドレン1と同様の基本構成を備えるが、一部の構成が若干変更される。
このオートドレン1の場合、タンク10は全体が横長の箱型に形成され、上面に吸引機20が設置されるようになっている。また、タンク10の内部には底面側に両側面の上下方向中央付近から底面中央に向けて断面略V字形の傾斜面102が形成されて(図3参照)、これがタンク10内部の水その他の異物を後述する排出口13へ向けて移動案内するためのガイドになっている。なお、この場合、底面中央にさらに、排出口13とは反対側の端部から排出口13側の端部に向けて下り勾配を付けることで、タンク10内部の水その他の異物を排出口13に呼込みやすくすることができる。
吸引口11は、タンク10の上面の長さ方向の一端側に形成され、この吸引口11に吸引機20に連結する吸引側の配管16が接続される。
吸入口12は、タンク10の他端側の端面の高さ方向の略中央に形成され、この吸入口12に空気と水その他の異物を吸入する吸入側の配管17が接続される。
排出口13は、円筒状の管材からなり、タンク10の一端側の端面の下部中央にタンク10内部の断面略V字形の傾斜面102の下部に対向して連結され、外側に向けて延ばされる。この排出口13の先端にはフラップ弁14がこの排出口13を開閉可能に取り付けられる。この場合、フラップ弁14は、排出口13に嵌合可能にかつ排出口13の軸回りに回転可能な略円筒状の管からなり、先端開口140を斜め上向きに形成される連結管141と、連結管141の先端開口140上に当該開口140の上部側に設けられるヒンジ部材を介して当該開口140を開閉可能に取り付けられる弁本体142とからなり、フラップ弁14が排出口13に対して取付角度を調整可能に取り付けられる。これにより、フラップ弁14の連結管141を排出口13に対して適宜回転させることにより、弁部材142を排出口13に対して上下方向に開閉する位置から左右方向に適宜の角度だけ傾斜させて上斜め下斜め方向に開閉するようにして、弁部材142の自重による弁部材142の先端開口140を閉じる方向の力及びタンク10内部の負圧による弁部材142の先端開口140を閉じる方向の力の合力とタンク10内部の水圧による弁部材142を押し開く力とのバランス、すなわち、前者の合力が後者の力よりも小さい状態では弁部材142が開き、反対に大きい場合は弁部材142が閉じる、弁部材142の開閉動作を最適な状態に調整できるようにした。
吸引延長部15は、吸引側の配管16とともに、所定の長さを有する略L字形の管材からなり、水平方向の一端がタンク10上の吸引機20に接続され、垂直方向の他端側がタンク10上面の吸引口11を通じてタンク10内部に上下方向略中央付近まで挿通され、この他端側が吸引延長部15としてタンク10の上面から上方に所定の高さまで立ち上げられる。また、この場合、吸引延長部15の下部が大径に上部が小径に形成される。
【0024】
このようにして排水機構2はタンク10の吸入口12に吸入側の配管17が接続されて、空気を水その他の異物とともに吸引する配管経路上に介在される。
【0025】
図3乃至図6にこの排水機構2の動作を例示している。
図3に示すように、吸引機20の作動により配管経路の吸引を開始すると、タンク10内部が負圧になって、排出口13のフラップ弁14(弁本体142、以下同じ)が閉じ、吸入側の配管17、吸入口12を通して空気が水その他の異物とともにタンク10内部に吸入される。この場合、空気、水その他の異物の流速はタンク10内部で急激に減速される。
図3及び図4に示すように、空気はタンク10の吸引口11に通された配管を経て、吸引機20から大気に放出される。重い水、粉塵、小石などの異物はタンク10内部に一時的に貯留され、これらの異物はタンク10底面に沈殿される。この場合、これらの異物はタンク10内部で底面側のガイドにより、底面中央に、排出口13に向けて移動しやすい状態に集められる。この吸引動作は、図4に示すように、吸引延長部15の配管の下部に空隙がある間継続される。
図5に示すように、タンク10内部に水その他の異物が満たされると、この場合、吸引延長部15の配管の下部に空隙がなくなった時点で、配管系統の閉塞状態を発生し、タンク10内部では、水その他の異物が吸引延長部15に、吸引機20の最大静圧でタンク10内部の水位が吊り合う所定の高さまで吸引される。このとき、吸引延長部15の所定の高さによりタンク10内部の水位は吸引延長部15の高さ以上に上昇することがなく、また、この場合、吸引延長部15の配管は下部が大径に上部が小径に形成され、吸引延長部15での水位の上昇が低く調整されるので、タンク10内部に吸入された水の吸引機20への流入は確実に防止される。そして、吸引機20の最大静圧でタンク10内部の水位が吊り合うと、タンク10内部の負圧状態がなくなり、タンク10内部の水圧により排出口13のフラップ弁14が押し開かれ、タンク10内部の水その他の異物がタンク10外部へ排出される。以上の動作は瞬時に行われる。
図6に示すように、タンク10内部の水その他の異物がタンク10外部へ排出され、タンク10内部の水位が吸引延長部15の配管の下部の下まで下がると、タンク10内部に空気の流路が確保されて、配管経路の吸引が再開され、上記と同様の動作が繰り返される。
【0026】
以上説明したように、この排水機構2によれば、空気を吸引する吸引機20、及び吸引機20に連結され、空気を水その他の異物とともに吸引する配管経路上に介在され、空気と水その他の異物を分離して排出する除水除塵機21とを備え、空気を水その他の異物とともに吸引し、空気と水その他の異物とを分離して排出する排水機構において、除水除塵機21に既述のオートドレン1を採用したので、このオートドレン1の作用により、空気を水その他の異物とともに吸引する負圧の配管経路上で、吸引機20とは別に動力を必要としない簡単な装置構成により、空気と水その他の異物を確実に分離して排出することができ、また、このオートドレン1の場合、特別な管理は不要で、夜勤時でも設備を放置することができ、設備管理を大幅に軽減することができる。
【0027】
なお、この排水機構2では、吸引機20を除水除塵機21のタンク10の上面に設置する形式としたが、これら吸引機20及び除水除塵機21を一つのボックスに組み込んで一体化してもよい。このようにすることにより装置全体をコンパクトにすることができ、外観を良好にすることもできる。また、この場合、ボックスの下部にローラ、ソリ状の脚その他走行性を有する各種走行手段を併せて備えることにより、建設現場などでの移動、設置が容易になる。
【0028】
図7にこのオートドレン1を用いたコンクリートの浸水養生システム3(アクアカーテンシステム)を示している。図7に示すように、この浸水養生システム3は、コンクリートCの表面に被着する浸水養生シート31と、給水ポンプ32、集水タンク33及び給水ポンプ32から延び、コンクリートCの表面と浸水養生シート31との間に配置される給水用の配管34を有し、コンクリートCの表面と浸水養生シート31との間に養生水を供給する給水装置35と、吸引機20、吸引機20から延び、コンクリートCの表面と浸水養生シートと31の間に配置される吸引用の配管16、17、及びこの配管16、17間に介在され、空気と養生水及び当該養生水に含まれる異物を分離して排出する除水除塵機21(図8参照)を有し、コンクリートCの表面と浸水養生シート31との間の空気を養生水とともに吸引する吸引装置36とを備え、コンクリートCの表面と浸水養生シート31との間を空気の吸引により負圧にして密着させ、その隙間に養生水を流す構成になっている。
【0029】
この浸水養生システム3では、図8に示すように、吸引装置36の除水除塵機21に既述のオートドレン1が利用され、この場合、吸引装置36の排水機構(吸引機20及び除水除塵機21)に上記の排水機構2と同様の構成が採用される。この場合、オートドレン1の排出口13は、給水装置35の給水源として設置される集水タンク33へ延長される。
このようにしてこのシステム3によりコンクリートCの表面と浸水養生シート31との間を空気の吸引により負圧にして密着させ、その隙間に養生水を流す動作の中で、空気を水その他の異物とともに吸引する配管経路上において、図8に示すように、オートドレン1を含む排水機構2の作用により空気と水その他の異物を分離して排出する。そして、この排水機構2から排出される水を集水タンク33に収容して、給水装置35により養生水として循環する。
【0030】
以上説明したように、この浸水養生システム3によれば、吸引装置36の排水機構に既述のオートドレン1を利用した排水機構2を採用したので、この排水機構2の作用により、空気を水その他の異物とともに吸引する負圧の配管経路上で、吸引機20とは別に動力を必要としない簡単な装置構成により、空気と水その他の異物を確実に分離して排出し、この水を養生水として再利用することができる。また、このオートドレン1の場合、特別な管理は不要で、夜勤時でも設備を放置することができ、設備管理を大幅に軽減することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 オートドレン
10 タンク
101 平面
102 傾斜面(ガイド)
11 吸引口
12 吸入口
13 排出口
130 開口
14 フラップ弁
140 先端開口
141 連結管
142 弁本体
15 吸引延長部
16 吸引側の配管
17 吸入側の配管
2 排水機構
20 吸引機
21 除水除塵機
3 コンクリートの浸水養生システム(アクアカーテンシステム)
31 浸水養生シート
32 給水ポンプ
33 集水タンク
34 給水用の配管
35 給水装置
36 吸引装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引機に連結され、空気を水その他の異物とともに吸引する配管経路上に介在され、空気と水その他の異物を分離して排出するオートドレンであって、
一定量の水その他の異物を収容可能なタンクからなり、
前記タンクに、
前記吸引機に連結する吸引側の配管を接続し、前記タンク内部を吸引するための吸引口と、
空気と水その他の異物を吸入する吸入側の配管を接続し、前記タンク内部に空気を水その他の異物とともに吸入するための吸入口と、
前記タンク内部の水その他の異物を排出するためのフラップ弁付きの排出口と、
前記吸引口から上方に向けて立ち上げられ、前記タンク内部に水その他の異物が満たされた後の前記吸引機の最大静圧による吸引により前記タンク内部の水その他の異物が上昇可能な最大高さよりも高い位置まで延び、前記タンク内部に水その他の異物が満たされた後の前記タンク内部の水を吸引するための吸引延長部と、
を備え、
前記吸引機の吸引により前記タンク内部を負圧にして、前記排出口を前記フラップ弁の閉動により閉じ、前記吸入口を通して空気を水その他の異物とともに吸入し、空気を前記タンクを経て、前記吸引機から排出し、水その他の異物は前記タンク内部に一時的に貯留して、
前記タンク内部に水その他の異物が満たされた後の水を前記吸引延長部へ前記吸引機の最大静圧で前記タンク内部の水位が吊り合うまで吸引することにより前記タンク内部の負圧をなくして、前記排出口を前記フラップ弁の開動により開き、前記タンク内部の水その他の異物を排出する、
ことを特徴とするオートドレン。
【請求項2】
タンク内部に水その他の異物を排出口方向へ移動案内するガイドを有する請求項1に記載のオートドレン。
【請求項3】
排出口はタンクの下部から略水平に延びる略円筒状に形成されて、フラップ弁は、前記排出口に嵌合可能にかつ前記排出口の軸回りに回転可能な略円筒状の管からなり、先端開口を斜め上向きに形成される連結管と、前記連結管の先端開口上に当該開口の上部側に設けられるヒンジ部材を介して当該開口を開閉可能に取り付けられる弁本体とを備え、前記フラップ弁は前記排出口に対して取付角度を調整可能に取り付けられる請求項1又は2に記載のオートドレン。
【請求項4】
吸引延長部は下部が大径に上部が小径に形成される請求項1乃至3のいずれかに記載のオートドレン。
【請求項5】
空気を吸引する吸引機、及び前記吸引機に連結され、空気を水その他の異物とともに吸引する配管経路上に介在され、空気と水その他の異物を分離して排出する除水除塵機とを備え、空気を水その他の異物とともに吸引し、空気と水その他の異物とを分離して排出する排水機構において、
前記除水除塵機に請求項1乃至4のいずれかに記載のオートドレンを用いたことを特徴とする排水機構。
【請求項6】
コンクリートの表面に被着する浸水養生シートと、給水ポンプ、及び前記給水ポンプから延び、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間に配置される給水用の配管を有し、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間に養生水を供給する給水装置と、吸引機、前記吸引機から延び、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間に配置される吸引用の配管、及び前記配管上に介在され、空気と養生水及び当該養生水に含まれる異物を分離して排出する除水除塵機を有し、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間の空気を養生水とともに吸引する吸引装置とを備え、コンクリートの表面と浸水養生シートとの間を空気の吸引により負圧にして密着させ、その隙間に養生水を流すコンクリートの浸水養生システムにおいて、
前記吸引装置の除水除塵機に請求項1乃至4のいずれかに記載のオートドレンを用いたことを特徴とするコンクリートの浸水養生システム。
【請求項7】
オートドレンの排出口は給水装置の給水源として設置される集水タンクへ延長され、前記オートドレンから排出される水が前記集水タンクに収容されて、前記給水装置により養生水として循環される請求項6に記載のコンクリートの浸水養生システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−36191(P2013−36191A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171665(P2011−171665)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【Fターム(参考)】