オートレベリング装置、及びオートレベリング方法
【課題】アクチュエータが有するヒステリシス特性による誤差を低減させることができるオートレベリング装置、及びオートレベリング方法を提供する。
【解決手段】制御ECU3は、フロントハイトセンサ1からの車高値、リアハイトセンサ2からの車高値を取得し、これら車高値から車高差を算出し、該車高差から補正すべきアクチュエータ4のストローク量を算出する。制御ECU3は、上記ストローク量、及びヒステリシス幅に基づいて、直前の値とは逆の方向に、ヒステリシス範囲外へ一時的に交互に複数回突出するような指示位置信号を出力する。これにより、指示位置信号がヒステリシス範囲外へ一時的に交互に突出する度に、モータ4−2が再始動し、最終的に指示位置信号とアクチュエータ位置信号とが一致して停止する。
【解決手段】制御ECU3は、フロントハイトセンサ1からの車高値、リアハイトセンサ2からの車高値を取得し、これら車高値から車高差を算出し、該車高差から補正すべきアクチュエータ4のストローク量を算出する。制御ECU3は、上記ストローク量、及びヒステリシス幅に基づいて、直前の値とは逆の方向に、ヒステリシス範囲外へ一時的に交互に複数回突出するような指示位置信号を出力する。これにより、指示位置信号がヒステリシス範囲外へ一時的に交互に突出する度に、モータ4−2が再始動し、最終的に指示位置信号とアクチュエータ位置信号とが一致して停止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のヘッドランプの光軸方向を補正するオートレベリング装置、及びオートレベリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両への人の乗り込みや、荷物の積み下ろしにより、車体の前後の車高が変化し、ヘッドランプの光軸が初期状態より上方を向くことがある。ヘッドランプの光軸が上方を向くことは、対向車に対して眩惑させてしまいやすくなるため、車両の傾きを検知し、自動でヘッドランプの光軸方向を補正するオートレベリング装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
オートレベリング装置では、ハイトセンサからの前後の車高差情報をもとに、ヘッドランプリフレクタの傾きを調整するモータ及び該モータを駆動するモータドライバからなるアクチュエータを駆動することにより、ヘッドランプ光軸方向を調整する。
【0004】
ここで、図8は、従来技術のオートレベリング装置によるアクチュエータの動作例を説明するための概念図である。同図において、横軸は時間経過、縦軸はアクチュエータに入力される電圧値を示す。つまり同図では、時間経過によって電圧値が相対的に変化していく様子を表している。なお、アクチュエータに入力された電圧値と、アクチュエータの出力であるヘッドランプリフレクタの傾き調整とは1対1対応である。アクチュエータは、モータの寿命を考慮し、頻繁に光軸補正を行うことを防止するため、ヒステリシス特性を持っている。図示の斜線部分がヒステリシス範囲である。モータは、制御ECUからの指示位置信号がヒステリシス範囲外設定され場合に始動し、指示位置信号とアクチュエータの実際の位置を示すアクチュエータ位置信号とが一致したときに停止する。
【0005】
図8に示す例では、一度指示位置信号がヒステリシス範囲外に出たので、その時点からアクチュエータ位置信号の動きが始まり、その動きは指示位置信号とアクチュエータ位置信号が重なるまで続く。これは、意図した通りの補正ができた例である。なお、ヒステリシス範囲は、アクチュエータ位置信号のその時々の位置に合わせて、前後一定の範囲に設定される。したがって、アクチュエータ位置が動くとヒステリシス範囲も動く。
【0006】
図9及び図10は、従来技術のオートレベリング装置によるアクチュエータの他の動作例を説明するための概念図である。このヒステリシス特性により、指示位置信号の不要な変動により、モータは動作することがなくなる一方、図9に示すように、指示位置信号がヒステリシス範囲を出なかった場合には、アクチュエータが駆動せず、意図した補正ができないことがある。そこで、この事象を回避するために、図10に示すように、指示位置信号を一旦、ヒステリシス範囲外に設定することで、アクチュエータを駆動し、その後、指示位置信号を実際に設定したい目標値へ設定し直し、アクチュエータを本来の意図した位置に駆動する制御方法が知られている。
【0007】
【特許文献1】特許第3782634号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ヘッドランプの照射角は、10m前方に垂直に立つ壁への照射上部ラインを測定して傾斜角を求め、この角度が、水平面を基準に−0.90〜−2.10%の範囲内に入ることが求められる。ヒステリシス特性は、アクチュエータにより異なるが、最大で4%程度ある。これを傾斜角率に現れる影響は、約0.4%程度になる。つまり、制御に求められている精度として1.2%以内に収める必要があるのに対し、ヒステリシス特性の影響は大きい。
【0009】
しかしながら、従来技術の方法では、制御ECUからはアクチュエータの状態がわからないために、図11に示すように、アクチュエータ位置を更新中などのアクチュエータ位置信号と指示位置信号とが一致していない状態から再更新を開始すると、稼動中のアクチュエータ位置信号と指示位置信号とが、一旦、一致してしまうことにより、モータが停止し、更新したい目標位置までアクチュエータ位置を変更することができないという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、アクチュエータが有するヒステリシス特性による誤差を低減することができるオートレベリング装置、及びオートレベリング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、ヘッドランプを傾動させるアクチュエータと、車両の前後方向の傾斜に基づく値を有する指示位置信号をアクチュエータに供給することにより、前記アクチュエータを駆動制御して前記ヘッドランプの光軸の傾きを補正する制御手段とを備えるオートレベリング装置であって、前記制御手段は、前記アクチュエータを駆動制御する際に、前記指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返すことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記アクチュエータが有するヒステリシス特性を入力する入力手段を更に備えることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記アクチュエータが有するヒステリシス特性を記憶する記憶手段を更に備えることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、車両の前後方向の傾斜に基づく値を有する指示位置信号を、ヘッドランプを傾動させるアクチュエータに供給することにより、前記アクチュエータを駆動制御して前記ヘッドランプの光軸の傾きを補正する、オートレベリング制御装置であって、前記駆動制御を行う際、前記指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返すことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、車両の前後方向の傾斜に基づく値を有する指示位置信号を、ヘッドランプを傾動させるアクチュエータに供給することにより、前記アクチュエータを駆動制御して前記ヘッドランプの光軸の傾きを補正するオートレベリング方法であって、前記アクチュエータを駆動制御する際に、前記指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
制御手段は、アクチュエータを駆動制御する際に、車両の前後の傾斜に基づく指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返す。これにより、指示位置信号がヒステリシス範囲外へ一時的に交互に突出する度に、モータ4−2が再び始動し、最終的に指示位置信号とアクチュエータ位置信号とが一致して停止する。したがって、アクチュエータのヒステリシス特性により発生していた誤差を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるオートレベリング装置の構成を示すブロック図である。図1において、オートレベリング装置は、フロントハイトセンサ(車高検出器)1、リアハイトセンサ(車高検出器)2、制御ECU3、及びアクチュエータ4からなる。フロントハイトセンサ1は、車両のフロント側の車高に応じた検出信号(車高値)を制御ECU3に供給する。リアハイトセンサ2は、車両のリア側の車高に応じた検出信号(車高値)を制御ECU3に供給する。なお、ハイトセンサ(車高検出器)は、上述したように車両の前後でなく、前後のどちらか一方に取り付けられていてもよい。
【0018】
制御ECU3は、A/D変換器3−1、CPU(制御回路)3−2、電源制御部3−3、及びD/A変換器3−4からなる。A/D変換器3−1は、フロントハイトセンサ1及びリアハイトセンサ2からの車高に応じた検出信号をデジタル信号に変換してCPU3−2に供給する。CPU3−2は、デジタル信号に変換された、フロント側の車高値とリア側の車高値とから車高差を算出する。
【0019】
なお、フロントハイトセンサ1及びリアハイトセンサ2の検出値と車両の車高値との関係は、フロントハイトセンサ1及びリアハイトセンサ2の取り付け位置や、車種などにより異なるため、事前測定した変換用の関係式や、マップなどを用いて算出する。
【0020】
また、CPU3−2は、算出した車高差から、ヘッドランプの光軸を補正するために、アクチュエータ4を目標値に設定するための指示位置信号を求め、D/A変換器3−4に供給する。なお、該CPU3−2による指示位置信号の求める方法の詳細については後述する。また、CPU3−2は、電源制御部3−3に対して、アクチュエータ4の電源制御を指示する。電源制御部3−3は、CPU3−2からの指示に従ってアクチュエータ4の電源を制御する。D/A変換器3−4は、指示位置信号をデジタル信号に変換してアクチュエータ4に供給する。
【0021】
アクチュエータ4は、ヘッドランプリフレクタ4−1、モータ4−2、及びモータドライバ4−3からなる。ヘッドランプリフレクタ4−1は、ヘッドランプの照射光を前方に反射させる反射鏡である。モータドライバ4−3は、制御ECU3からの指示位置信号とモータ4−2の回転位置を検出するポテンションメータからフィードバックされるアクチュエータ位置信号とが一致するように、モータ4−3を駆動制御し、ヘッドランプリフレクタ4−3に接続された出力軸を伸縮させることで、ヘッドランプリフレクタ4−3の傾きを調整し、フロント側とリア側との車高差によって生じる、ヘッドランプの光軸ずれを補正する。
【0022】
図2は、本第1実施形態によるアクチュエータの構造を説明するための模式図である。図2において、ヘッドランプリフレクタ4−1の焦点位置には光源5が配置されている。光源5から放射された光は、直接、前方に出射されるとともに、ヘッドランプリフレクタ4−1に反射されて前方に出射される。
【0023】
ヘッドランプリフレクタ4−1の上部は、軸を介して回動可能な支点6に接続されている。また、ヘッドランプリフレクタ4−1の下部は、出力軸7を介してモータ4−2の回転軸に接続されている。すなわち、モータ4−2を駆動し、その回転軸を回転させることで、出力軸7を伸縮させることが可能になっている。出力軸7が伸縮することで、ヘッドランプリフレクタ4−1は、上方(破線)、下方(実線)に傾けられる。なお、アクチュエータ位置信号は、出力軸7の伸縮量、すなわちストローク量で表わされる。
【0024】
本第1実施形態によるオートレベリング装置では、フロントハイトセンサ1及びリアハイセンサ2の前後の車高値から得られる車高差情報をもとに、ヘッドランプの光軸を補正するためのストローク量を算出し、該ストローク量に対応する指示位置信号(電圧値)をアクチュエータ4に対して供給する。アクチュエータ4は、この指示位置信号(電圧値)とアクチュエータ位置信号(電圧値)とが一致するように、出力軸7をモータ4−2により伸縮させてヘッドランプリフレクタ4−1の傾きを調整し、ヘッドランプの光軸の向きを補正する。
【0025】
このとき、従来技術で説明したように、指示位置信号更新のタイミングで、アクチュエータ4のヒステリシス特性により、目標のストローク量に達する前にモータ4−2が停止してしまわないように、制御ECU3は、ヒステリシス回避動作を行う。ヒステリシス回避動作とは、直前の値とは逆の方向に、ヒステリシス範囲外へ一時的に交互に複数回突出するような指示位置信号を出力することで、最終的に目標のストローク量に達するようにアクチュエータの動作を制御することである。
【0026】
図3は、本第1実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータ特性の一例を示す図である。図3において、縦軸はストローク量であり、横軸は信号電圧比(アクチュエータ位置電圧/アクチュエータ電源電圧)である。アクチュエータ4は、出力軸7の位置(ストローク量)をポテンションメータからのフィードバック信号(アクチュエータ位置信号)として取得し、該アクチュエータ位置信号と制御ECU3からの指示位置信号とを比較する。
【0027】
指示位置信号とアクチュエータ位置信号とは、アクチュエータ4の電源電圧に対する比により示される。出力軸の稼動範囲は、アクチュエータ電源電圧に対するアクチュエータ位置信号の信号電圧比で約10%〜90%の範囲内である。例えば、ストローク6mm位置は、10%であるため、電源電圧が12Vのとき、アクチュエータ位置信号は1.2Vとなる。
【0028】
また、制御ECU3からの出力電圧とストローク量とは、以下のように表わされる。
制御ECUからの出力電圧 ストローク量
10.8V(90%) 0mm
6.0V(50%) 3mm
1.2V(10%) 6mm
【0029】
これら数値の間は、図3に示す1次方程式の変化で補完される。具体的には、出力電圧X(V)、ストローク量をY(mm)としたときに、以下のように表わされる。
Y=6−0.625(X−1.2)
=−0.625X+6.75
但し、図2、3で説明したものはX、Yの対応関係の一例であり、限定されるものではない。
【0030】
図4は、本第1実施形態のオートレベリング装置の動作を説明するためのフローチャートである。制御ECU3は、まず、アクチュエータ4のヒステリシス特性を取得し(ステップS10)、ヒステリシス特性からヒステリシス幅を特定する(ステップS12)。ヒステリシス特性は、アクチュエータ仕様により何種類か存在するので、制御ECU3は、取り付けられるアクチュエータ4のヒステリシス範囲を初期設定しておく必要がある。
【0031】
そこで、本第1実施形態による制御ECU3では、仕様の異なるアクチュエータ4に対応するために、全ての仕様を網羅できる制御パターン(想定できる最大のヒステリシス範囲よりも大きな「ヒステリシス回避動作時の変動幅」とする)にて初期設定するか、それぞれに対応するように異なる制御パターンを予め記憶しておく。
【0032】
異なる複数の制御パターンを記憶しておく場合には、手入力で設定するか、あるいは、車両に取り付けられているアクチュエータ4の仕様を車両から通信を介して取得することにより、アクチュエータ4のヒステリシス範囲を適切なものへと切り替える。
【0033】
次に、制御ECU3は、フロントハイトセンサ1からの車高値、リアハイトセンサ2からの車高値を取得し(ステップS14)、これら車高値から車高差を算出し、該車高差から補正すべきアクチュエータ4のストローク量を算出する(ステップS16)。
【0034】
次に、制御ECU3は、上記ストローク量、及びヒステリシス幅に基づいて、ヒステリシス回避動作によりアクチュエータ4に対して指示位置信号を出力する。ヒステリシス回避動作では、指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返す。かつ、下方値指示制御で指示する下方値と、上方値指示制御で指示する上方値との差を大きくすることで、下方値または上方値が、ヒステリシス範囲の外に達するように制御する。例えば、ヒステリシス幅が信号電圧比で4.0%の場合、下方値と上方値の差を6.0%程度に設定する。これにより、指示位置信号がヒステリシス範囲外へ一時的に交互に突出する度に、モータ4−2が再始動し、最終的に指示位置信号とアクチュエータ位置信号とが一致する。その後、ステップS14に戻り、上述した処理を繰り返すことで、車高差に応じてヘッドランプの光軸を補正する動作を繰り返す。
【0035】
次に、図5は、本第1実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータの動作例を説明するための概念図である。図5において、横軸は時間経過、縦軸は電圧値を示し、実線が指示位置信号、破線がアクチュエータ位置信号、斜線部分がヒステリシス範囲を示す。本第1実施形態では、上述したように、指示位置信号更新のタイミングで、アクチュエータ4のヒステリシス特性により、目標のストローク量に達する前にモータ4−2が停止してしまわないように、ヒステリシス回避動作を行う。図5の例におけるヒステリシス回避動作は、下方値指示制御、上方値指示制御を各2回実行する。
【0036】
該ヒステリシス回避動作が行われることにより、アクチュエータでは、指示位置信号がヒステリシス範囲外に突出する度にモータが再び始動し、最終的に、指示位置信号とアクチュエータ位置信号とが一致して停止する。これにより、本第1実施形態では、アクチュエータのヒステリシス特性により発生していた誤差を低減することができる。
【0037】
図6は、本第1実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータの他の動作を説明するための概念図である。図6に示すように、ヒステリシス回避動作中に指示位置信号とアクチュエータ位置信号とが一致(交差)してしまった場合においても、その後も、ヒステリシス回避動作を行うようにしておくことで、最終的に、指示位置信号に応じた位置で停止するので、アクチュエータのヒステリシス特性により発生していた誤差を回避することができる。
【0038】
なお、上述したヒステリシス回避動作において、一時的にヒステリシス範囲外に突出する時間幅は、アクチュエータが十分に動くようにするため、約1ms以上とする。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
上述した第1実施形態では、ヒステリシス回避動作のたびに、モータが動作するため、モータの寿命に影響を与える可能性がある。そこで、本第2実施形態では、この事象を回避するために、ヒステリシス回避動作において、指示位置信号を複数回突出させて出力する際、その値を可変することを特徴としている。
【0040】
例えば、光軸を補正する際に、ヒステリシス回避動作において、1回目の値を、ヒステリシス範囲から十分に突出する値になるように設定する。ヒステリシス幅が信号電圧比で4.0%の場合、1回目の値を6.0%程度に設定する。そして、ヒステリシス回避動作における2回目以降の値をヒステリシス幅より小さくする。
【0041】
図7は、本第2実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータの動作を説明するための概念図である。図7に示すように、ヒステリシス回避動作において、ヒステリシス範囲外へ突出する1回目を、ヒステリシス範囲から十分に突出する値とし、2回目以降では、ヒステリシス幅より小さな値としている。
【0042】
このように、本第2実施形態によれば、ヒステリシス回避動作において、複数回突出する指示位置信号の値を可変することにより、必要以上にモータを稼動させることなく、ヒステリシスによる誤差を低減することができる。
【0043】
但し、ヒステリシス回避動作において、ヒステリシス範囲外へ突出する2回目以降の値を小さくしすぎると、元々の目的である誤差の低減に影響が出てくる。したがって、誤差の許容値として、信号電圧比で1%は許容範囲内であるため、ヒステリシス幅の−1%程度に設定する。
【0044】
なお、上述した第1実施形態において、「ヒステリシス幅が信号電圧比で4.0%の場合」とは、信号電圧が一般の車両と同様12Vの場合、ヒステリシス幅は上下それぞれ0.48Vの幅を持つことを指す。これに対して、第2実施形態では、指示位置信号の1回目の変動幅は「6%」=0.72V、2回目以降は「ヒステリシス幅の−1%」=3%=0.36Vである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態によるオートレベリング装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本第1実施形態によるアクチュエータの構造を説明するための模式図である。
【図3】本第1実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータ特性の一例を示す図である。
【図4】本第1実施形態のオートレベリング装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本第1実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータの動作例を説明するための概念図である。
【図6】本第1実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータの他の動作を説明するための概念図である。
【図7】本第2実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータの動作を説明するための概念図である。
【図8】従来技術のオートレベリング装置によるアクチュエータの動作例を説明するための概念図である。
【図9】従来技術のオートレベリング装置によるアクチュエータの他の動作例を説明するための概念図である。
【図10】従来技術のオートレベリング装置によるアクチュエータの他の動作例を説明するための概念図である。
【図11】従来技術のオートレベリング装置での問題となる動作例を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0046】
1 フロントハイトセンサ
2 リアハイとセンサ
3 制御ECU
3−1 A/D変換器
3−2 CPU(制御回路)
3−3 電源制御部
3−4 D/A変換器
4 アクチュエータ
4−1 ヘッドランプリフレクタ
4−2 モータ
4−3 モータドライバ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のヘッドランプの光軸方向を補正するオートレベリング装置、及びオートレベリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両への人の乗り込みや、荷物の積み下ろしにより、車体の前後の車高が変化し、ヘッドランプの光軸が初期状態より上方を向くことがある。ヘッドランプの光軸が上方を向くことは、対向車に対して眩惑させてしまいやすくなるため、車両の傾きを検知し、自動でヘッドランプの光軸方向を補正するオートレベリング装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
オートレベリング装置では、ハイトセンサからの前後の車高差情報をもとに、ヘッドランプリフレクタの傾きを調整するモータ及び該モータを駆動するモータドライバからなるアクチュエータを駆動することにより、ヘッドランプ光軸方向を調整する。
【0004】
ここで、図8は、従来技術のオートレベリング装置によるアクチュエータの動作例を説明するための概念図である。同図において、横軸は時間経過、縦軸はアクチュエータに入力される電圧値を示す。つまり同図では、時間経過によって電圧値が相対的に変化していく様子を表している。なお、アクチュエータに入力された電圧値と、アクチュエータの出力であるヘッドランプリフレクタの傾き調整とは1対1対応である。アクチュエータは、モータの寿命を考慮し、頻繁に光軸補正を行うことを防止するため、ヒステリシス特性を持っている。図示の斜線部分がヒステリシス範囲である。モータは、制御ECUからの指示位置信号がヒステリシス範囲外設定され場合に始動し、指示位置信号とアクチュエータの実際の位置を示すアクチュエータ位置信号とが一致したときに停止する。
【0005】
図8に示す例では、一度指示位置信号がヒステリシス範囲外に出たので、その時点からアクチュエータ位置信号の動きが始まり、その動きは指示位置信号とアクチュエータ位置信号が重なるまで続く。これは、意図した通りの補正ができた例である。なお、ヒステリシス範囲は、アクチュエータ位置信号のその時々の位置に合わせて、前後一定の範囲に設定される。したがって、アクチュエータ位置が動くとヒステリシス範囲も動く。
【0006】
図9及び図10は、従来技術のオートレベリング装置によるアクチュエータの他の動作例を説明するための概念図である。このヒステリシス特性により、指示位置信号の不要な変動により、モータは動作することがなくなる一方、図9に示すように、指示位置信号がヒステリシス範囲を出なかった場合には、アクチュエータが駆動せず、意図した補正ができないことがある。そこで、この事象を回避するために、図10に示すように、指示位置信号を一旦、ヒステリシス範囲外に設定することで、アクチュエータを駆動し、その後、指示位置信号を実際に設定したい目標値へ設定し直し、アクチュエータを本来の意図した位置に駆動する制御方法が知られている。
【0007】
【特許文献1】特許第3782634号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ヘッドランプの照射角は、10m前方に垂直に立つ壁への照射上部ラインを測定して傾斜角を求め、この角度が、水平面を基準に−0.90〜−2.10%の範囲内に入ることが求められる。ヒステリシス特性は、アクチュエータにより異なるが、最大で4%程度ある。これを傾斜角率に現れる影響は、約0.4%程度になる。つまり、制御に求められている精度として1.2%以内に収める必要があるのに対し、ヒステリシス特性の影響は大きい。
【0009】
しかしながら、従来技術の方法では、制御ECUからはアクチュエータの状態がわからないために、図11に示すように、アクチュエータ位置を更新中などのアクチュエータ位置信号と指示位置信号とが一致していない状態から再更新を開始すると、稼動中のアクチュエータ位置信号と指示位置信号とが、一旦、一致してしまうことにより、モータが停止し、更新したい目標位置までアクチュエータ位置を変更することができないという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、アクチュエータが有するヒステリシス特性による誤差を低減することができるオートレベリング装置、及びオートレベリング方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、ヘッドランプを傾動させるアクチュエータと、車両の前後方向の傾斜に基づく値を有する指示位置信号をアクチュエータに供給することにより、前記アクチュエータを駆動制御して前記ヘッドランプの光軸の傾きを補正する制御手段とを備えるオートレベリング装置であって、前記制御手段は、前記アクチュエータを駆動制御する際に、前記指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返すことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記アクチュエータが有するヒステリシス特性を入力する入力手段を更に備えることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記アクチュエータが有するヒステリシス特性を記憶する記憶手段を更に備えることを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、車両の前後方向の傾斜に基づく値を有する指示位置信号を、ヘッドランプを傾動させるアクチュエータに供給することにより、前記アクチュエータを駆動制御して前記ヘッドランプの光軸の傾きを補正する、オートレベリング制御装置であって、前記駆動制御を行う際、前記指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返すことを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、車両の前後方向の傾斜に基づく値を有する指示位置信号を、ヘッドランプを傾動させるアクチュエータに供給することにより、前記アクチュエータを駆動制御して前記ヘッドランプの光軸の傾きを補正するオートレベリング方法であって、前記アクチュエータを駆動制御する際に、前記指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
制御手段は、アクチュエータを駆動制御する際に、車両の前後の傾斜に基づく指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返す。これにより、指示位置信号がヒステリシス範囲外へ一時的に交互に突出する度に、モータ4−2が再び始動し、最終的に指示位置信号とアクチュエータ位置信号とが一致して停止する。したがって、アクチュエータのヒステリシス特性により発生していた誤差を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるオートレベリング装置の構成を示すブロック図である。図1において、オートレベリング装置は、フロントハイトセンサ(車高検出器)1、リアハイトセンサ(車高検出器)2、制御ECU3、及びアクチュエータ4からなる。フロントハイトセンサ1は、車両のフロント側の車高に応じた検出信号(車高値)を制御ECU3に供給する。リアハイトセンサ2は、車両のリア側の車高に応じた検出信号(車高値)を制御ECU3に供給する。なお、ハイトセンサ(車高検出器)は、上述したように車両の前後でなく、前後のどちらか一方に取り付けられていてもよい。
【0018】
制御ECU3は、A/D変換器3−1、CPU(制御回路)3−2、電源制御部3−3、及びD/A変換器3−4からなる。A/D変換器3−1は、フロントハイトセンサ1及びリアハイトセンサ2からの車高に応じた検出信号をデジタル信号に変換してCPU3−2に供給する。CPU3−2は、デジタル信号に変換された、フロント側の車高値とリア側の車高値とから車高差を算出する。
【0019】
なお、フロントハイトセンサ1及びリアハイトセンサ2の検出値と車両の車高値との関係は、フロントハイトセンサ1及びリアハイトセンサ2の取り付け位置や、車種などにより異なるため、事前測定した変換用の関係式や、マップなどを用いて算出する。
【0020】
また、CPU3−2は、算出した車高差から、ヘッドランプの光軸を補正するために、アクチュエータ4を目標値に設定するための指示位置信号を求め、D/A変換器3−4に供給する。なお、該CPU3−2による指示位置信号の求める方法の詳細については後述する。また、CPU3−2は、電源制御部3−3に対して、アクチュエータ4の電源制御を指示する。電源制御部3−3は、CPU3−2からの指示に従ってアクチュエータ4の電源を制御する。D/A変換器3−4は、指示位置信号をデジタル信号に変換してアクチュエータ4に供給する。
【0021】
アクチュエータ4は、ヘッドランプリフレクタ4−1、モータ4−2、及びモータドライバ4−3からなる。ヘッドランプリフレクタ4−1は、ヘッドランプの照射光を前方に反射させる反射鏡である。モータドライバ4−3は、制御ECU3からの指示位置信号とモータ4−2の回転位置を検出するポテンションメータからフィードバックされるアクチュエータ位置信号とが一致するように、モータ4−3を駆動制御し、ヘッドランプリフレクタ4−3に接続された出力軸を伸縮させることで、ヘッドランプリフレクタ4−3の傾きを調整し、フロント側とリア側との車高差によって生じる、ヘッドランプの光軸ずれを補正する。
【0022】
図2は、本第1実施形態によるアクチュエータの構造を説明するための模式図である。図2において、ヘッドランプリフレクタ4−1の焦点位置には光源5が配置されている。光源5から放射された光は、直接、前方に出射されるとともに、ヘッドランプリフレクタ4−1に反射されて前方に出射される。
【0023】
ヘッドランプリフレクタ4−1の上部は、軸を介して回動可能な支点6に接続されている。また、ヘッドランプリフレクタ4−1の下部は、出力軸7を介してモータ4−2の回転軸に接続されている。すなわち、モータ4−2を駆動し、その回転軸を回転させることで、出力軸7を伸縮させることが可能になっている。出力軸7が伸縮することで、ヘッドランプリフレクタ4−1は、上方(破線)、下方(実線)に傾けられる。なお、アクチュエータ位置信号は、出力軸7の伸縮量、すなわちストローク量で表わされる。
【0024】
本第1実施形態によるオートレベリング装置では、フロントハイトセンサ1及びリアハイセンサ2の前後の車高値から得られる車高差情報をもとに、ヘッドランプの光軸を補正するためのストローク量を算出し、該ストローク量に対応する指示位置信号(電圧値)をアクチュエータ4に対して供給する。アクチュエータ4は、この指示位置信号(電圧値)とアクチュエータ位置信号(電圧値)とが一致するように、出力軸7をモータ4−2により伸縮させてヘッドランプリフレクタ4−1の傾きを調整し、ヘッドランプの光軸の向きを補正する。
【0025】
このとき、従来技術で説明したように、指示位置信号更新のタイミングで、アクチュエータ4のヒステリシス特性により、目標のストローク量に達する前にモータ4−2が停止してしまわないように、制御ECU3は、ヒステリシス回避動作を行う。ヒステリシス回避動作とは、直前の値とは逆の方向に、ヒステリシス範囲外へ一時的に交互に複数回突出するような指示位置信号を出力することで、最終的に目標のストローク量に達するようにアクチュエータの動作を制御することである。
【0026】
図3は、本第1実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータ特性の一例を示す図である。図3において、縦軸はストローク量であり、横軸は信号電圧比(アクチュエータ位置電圧/アクチュエータ電源電圧)である。アクチュエータ4は、出力軸7の位置(ストローク量)をポテンションメータからのフィードバック信号(アクチュエータ位置信号)として取得し、該アクチュエータ位置信号と制御ECU3からの指示位置信号とを比較する。
【0027】
指示位置信号とアクチュエータ位置信号とは、アクチュエータ4の電源電圧に対する比により示される。出力軸の稼動範囲は、アクチュエータ電源電圧に対するアクチュエータ位置信号の信号電圧比で約10%〜90%の範囲内である。例えば、ストローク6mm位置は、10%であるため、電源電圧が12Vのとき、アクチュエータ位置信号は1.2Vとなる。
【0028】
また、制御ECU3からの出力電圧とストローク量とは、以下のように表わされる。
制御ECUからの出力電圧 ストローク量
10.8V(90%) 0mm
6.0V(50%) 3mm
1.2V(10%) 6mm
【0029】
これら数値の間は、図3に示す1次方程式の変化で補完される。具体的には、出力電圧X(V)、ストローク量をY(mm)としたときに、以下のように表わされる。
Y=6−0.625(X−1.2)
=−0.625X+6.75
但し、図2、3で説明したものはX、Yの対応関係の一例であり、限定されるものではない。
【0030】
図4は、本第1実施形態のオートレベリング装置の動作を説明するためのフローチャートである。制御ECU3は、まず、アクチュエータ4のヒステリシス特性を取得し(ステップS10)、ヒステリシス特性からヒステリシス幅を特定する(ステップS12)。ヒステリシス特性は、アクチュエータ仕様により何種類か存在するので、制御ECU3は、取り付けられるアクチュエータ4のヒステリシス範囲を初期設定しておく必要がある。
【0031】
そこで、本第1実施形態による制御ECU3では、仕様の異なるアクチュエータ4に対応するために、全ての仕様を網羅できる制御パターン(想定できる最大のヒステリシス範囲よりも大きな「ヒステリシス回避動作時の変動幅」とする)にて初期設定するか、それぞれに対応するように異なる制御パターンを予め記憶しておく。
【0032】
異なる複数の制御パターンを記憶しておく場合には、手入力で設定するか、あるいは、車両に取り付けられているアクチュエータ4の仕様を車両から通信を介して取得することにより、アクチュエータ4のヒステリシス範囲を適切なものへと切り替える。
【0033】
次に、制御ECU3は、フロントハイトセンサ1からの車高値、リアハイトセンサ2からの車高値を取得し(ステップS14)、これら車高値から車高差を算出し、該車高差から補正すべきアクチュエータ4のストローク量を算出する(ステップS16)。
【0034】
次に、制御ECU3は、上記ストローク量、及びヒステリシス幅に基づいて、ヒステリシス回避動作によりアクチュエータ4に対して指示位置信号を出力する。ヒステリシス回避動作では、指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返す。かつ、下方値指示制御で指示する下方値と、上方値指示制御で指示する上方値との差を大きくすることで、下方値または上方値が、ヒステリシス範囲の外に達するように制御する。例えば、ヒステリシス幅が信号電圧比で4.0%の場合、下方値と上方値の差を6.0%程度に設定する。これにより、指示位置信号がヒステリシス範囲外へ一時的に交互に突出する度に、モータ4−2が再始動し、最終的に指示位置信号とアクチュエータ位置信号とが一致する。その後、ステップS14に戻り、上述した処理を繰り返すことで、車高差に応じてヘッドランプの光軸を補正する動作を繰り返す。
【0035】
次に、図5は、本第1実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータの動作例を説明するための概念図である。図5において、横軸は時間経過、縦軸は電圧値を示し、実線が指示位置信号、破線がアクチュエータ位置信号、斜線部分がヒステリシス範囲を示す。本第1実施形態では、上述したように、指示位置信号更新のタイミングで、アクチュエータ4のヒステリシス特性により、目標のストローク量に達する前にモータ4−2が停止してしまわないように、ヒステリシス回避動作を行う。図5の例におけるヒステリシス回避動作は、下方値指示制御、上方値指示制御を各2回実行する。
【0036】
該ヒステリシス回避動作が行われることにより、アクチュエータでは、指示位置信号がヒステリシス範囲外に突出する度にモータが再び始動し、最終的に、指示位置信号とアクチュエータ位置信号とが一致して停止する。これにより、本第1実施形態では、アクチュエータのヒステリシス特性により発生していた誤差を低減することができる。
【0037】
図6は、本第1実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータの他の動作を説明するための概念図である。図6に示すように、ヒステリシス回避動作中に指示位置信号とアクチュエータ位置信号とが一致(交差)してしまった場合においても、その後も、ヒステリシス回避動作を行うようにしておくことで、最終的に、指示位置信号に応じた位置で停止するので、アクチュエータのヒステリシス特性により発生していた誤差を回避することができる。
【0038】
なお、上述したヒステリシス回避動作において、一時的にヒステリシス範囲外に突出する時間幅は、アクチュエータが十分に動くようにするため、約1ms以上とする。
【0039】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
上述した第1実施形態では、ヒステリシス回避動作のたびに、モータが動作するため、モータの寿命に影響を与える可能性がある。そこで、本第2実施形態では、この事象を回避するために、ヒステリシス回避動作において、指示位置信号を複数回突出させて出力する際、その値を可変することを特徴としている。
【0040】
例えば、光軸を補正する際に、ヒステリシス回避動作において、1回目の値を、ヒステリシス範囲から十分に突出する値になるように設定する。ヒステリシス幅が信号電圧比で4.0%の場合、1回目の値を6.0%程度に設定する。そして、ヒステリシス回避動作における2回目以降の値をヒステリシス幅より小さくする。
【0041】
図7は、本第2実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータの動作を説明するための概念図である。図7に示すように、ヒステリシス回避動作において、ヒステリシス範囲外へ突出する1回目を、ヒステリシス範囲から十分に突出する値とし、2回目以降では、ヒステリシス幅より小さな値としている。
【0042】
このように、本第2実施形態によれば、ヒステリシス回避動作において、複数回突出する指示位置信号の値を可変することにより、必要以上にモータを稼動させることなく、ヒステリシスによる誤差を低減することができる。
【0043】
但し、ヒステリシス回避動作において、ヒステリシス範囲外へ突出する2回目以降の値を小さくしすぎると、元々の目的である誤差の低減に影響が出てくる。したがって、誤差の許容値として、信号電圧比で1%は許容範囲内であるため、ヒステリシス幅の−1%程度に設定する。
【0044】
なお、上述した第1実施形態において、「ヒステリシス幅が信号電圧比で4.0%の場合」とは、信号電圧が一般の車両と同様12Vの場合、ヒステリシス幅は上下それぞれ0.48Vの幅を持つことを指す。これに対して、第2実施形態では、指示位置信号の1回目の変動幅は「6%」=0.72V、2回目以降は「ヒステリシス幅の−1%」=3%=0.36Vである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態によるオートレベリング装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本第1実施形態によるアクチュエータの構造を説明するための模式図である。
【図3】本第1実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータ特性の一例を示す図である。
【図4】本第1実施形態のオートレベリング装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本第1実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータの動作例を説明するための概念図である。
【図6】本第1実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータの他の動作を説明するための概念図である。
【図7】本第2実施形態のオートレベリング装置による、アクチュエータの動作を説明するための概念図である。
【図8】従来技術のオートレベリング装置によるアクチュエータの動作例を説明するための概念図である。
【図9】従来技術のオートレベリング装置によるアクチュエータの他の動作例を説明するための概念図である。
【図10】従来技術のオートレベリング装置によるアクチュエータの他の動作例を説明するための概念図である。
【図11】従来技術のオートレベリング装置での問題となる動作例を説明するための概念図である。
【符号の説明】
【0046】
1 フロントハイトセンサ
2 リアハイとセンサ
3 制御ECU
3−1 A/D変換器
3−2 CPU(制御回路)
3−3 電源制御部
3−4 D/A変換器
4 アクチュエータ
4−1 ヘッドランプリフレクタ
4−2 モータ
4−3 モータドライバ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドランプを傾動させるアクチュエータと、車両の前後方向の傾斜に基づく値を有する指示位置信号をアクチュエータに供給することにより、前記アクチュエータを駆動制御して前記ヘッドランプの光軸の傾きを補正する制御手段とを備えるオートレベリング装置であって、
前記制御手段は、
前記アクチュエータを駆動制御する際に、前記指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返すことを特徴とするオートレベリング装置。
【請求項2】
前記アクチュエータが有するヒステリシス特性を入力する入力手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載のオートレベリング装置。
【請求項3】
前記アクチュエータが有するヒステリシス特性を記憶する記憶手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載のオートレベリング装置。
【請求項4】
車両の前後方向の傾斜に基づく値を有する指示位置信号を、ヘッドランプを傾動させるアクチュエータに供給することにより、前記アクチュエータを駆動制御して前記ヘッドランプの光軸の傾きを補正する、オートレベリング制御装置であって、
前記駆動制御を行う際、前記指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返すことを特徴とするオートレベリング制御装置。
【請求項5】
車両の前後方向の傾斜に基づく値を有する指示位置信号を、ヘッドランプを傾動させるアクチュエータに供給することにより、前記アクチュエータを駆動制御して前記ヘッドランプの光軸の傾きを補正するオートレベリング方法であって、
前記アクチュエータを駆動制御する際に、前記指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返すことを特徴とするオートレベリング方法。
【請求項1】
ヘッドランプを傾動させるアクチュエータと、車両の前後方向の傾斜に基づく値を有する指示位置信号をアクチュエータに供給することにより、前記アクチュエータを駆動制御して前記ヘッドランプの光軸の傾きを補正する制御手段とを備えるオートレベリング装置であって、
前記制御手段は、
前記アクチュエータを駆動制御する際に、前記指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返すことを特徴とするオートレベリング装置。
【請求項2】
前記アクチュエータが有するヒステリシス特性を入力する入力手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載のオートレベリング装置。
【請求項3】
前記アクチュエータが有するヒステリシス特性を記憶する記憶手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載のオートレベリング装置。
【請求項4】
車両の前後方向の傾斜に基づく値を有する指示位置信号を、ヘッドランプを傾動させるアクチュエータに供給することにより、前記アクチュエータを駆動制御して前記ヘッドランプの光軸の傾きを補正する、オートレベリング制御装置であって、
前記駆動制御を行う際、前記指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返すことを特徴とするオートレベリング制御装置。
【請求項5】
車両の前後方向の傾斜に基づく値を有する指示位置信号を、ヘッドランプを傾動させるアクチュエータに供給することにより、前記アクチュエータを駆動制御して前記ヘッドランプの光軸の傾きを補正するオートレベリング方法であって、
前記アクチュエータを駆動制御する際に、前記指示位置信号の値を、本来の指示位置に対応する値より下の値に一時的に下げる下方値指示制御と、本来の指示位置に対応する値より上の値に一時的に上げる上方値指示制御を、所定回数交互に繰り返すことを特徴とするオートレベリング方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−89594(P2010−89594A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260265(P2008−260265)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]