説明

オーバレイマルチキャストパケット通信システム

【課題】帯域の狭い通信回線の消費を抑制し、効率的なオーバレイマルチキャスト通信を行うことが出来るオーバレイマルチキャストパケット通信システムを得る。
【解決手段】制御装置の集合が各制御装置間を接続する物理的な通信路の広狭に基づき狭帯域通信路を介さずに接続されている制御装置群からなる複数の副集合に分割され、各副集合内の制御装置は、副集合間の通信路を使用しなくても通信可能に論理的な通信路を形成し、配信を担当する第一の制御装置は、マルチキャストパケットを、各副集合につき一台選択される第二の制御装置にユニキャストで送信し、第二の制御装置は、同一の副集合に属する配信先の制御装置に、パケットを複製して論理的な通信路に沿って配信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭帯域を含むオーバレイネットワークにおいてマルチキャストパケット通信を行う、オーバレイマルチキャストパケット通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オーバレイネットワークを用いたノード間通信、ならびにデータの分散配置をスケーラブルに行う方法として、非特許文献1に代表される分散ハッシュテーブル(DHT:Distributed Hash Table)技術がある。DHTを用いたオーバレイネットワークでは、ネットワークを構成するノードとそこに配置するデータの双方にハッシュ関数を用いて固定長のID値を割り当てる。各々のデータはID値が最も近くなるノードが管理するようにして、データを分散配置する。
【0003】
このDHTを用いて多数のノードとユーザ端末によるオーバレイネットワークを構成し、このネットワーク上でマルチキャスト通信を行う場合、パケットの複製配信処理を何れか1つのノード(配信ノード)が担当する。配信ノードでは参加ユーザが接続する全てのノードを配信情報として管理しており、ある参加ユーザ端末から受信したパケットを複製・配信して全ての参加ユーザにマルチキャストパケットが行き渡る。
【0004】
また、DHT技術以外の方法では、例えば特許文献1に、複雑なVPN管理が不要で且つ種々のトンネル技術に適用可能なマルチキャスト通信の方法が示されている。
【0005】
【非特許文献1】“Chord: A Scalable Peer―to―Peer Lookup Service for Internet Applications”, Proc. ACM SIGCOMM, 2001
【特許文献1】特開2002−176436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、DHT技術を用いて構成したオーバレイネットワークを用いてマルチキャスト通信を行う場合、配信ノードはハッシュ関数の出力値であるノードIDに基づいて選ばれ、参加ユーザ端末やそれが接続するノードの配置とは無関係に決定される。そのため、ユーザ端末から配信ノードまでの通信経路に帯域が狭い回線が存在する場合には、配信ノードへパケットを往復転送することにより、その回線の帯域消費および通信の遅延を生じる。特に下りパケット(配信ノードからユーザ端末に向けて送られてくるパケット)は配信ノードによって複製されているため、自他の通信に及ぼす影響が大きくなる。このように、オーバレイマルチキャスト通信行う際に発生する狭帯域の通信回線への負担を軽減することが課題であった。
【0007】
また、特許文献1の技術によれば、無視できない帯域の違いが存在するネットワークにおいてその帯域差を考慮した転送経路制御によってマルチキャスト配信を行う方法については言及されていない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、帯域の狭い通信回線の消費を抑制し、効率的なオーバレイマルチキャスト通信を行うことが出来るオーバレイマルチキャストパケット通信システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、物理的な通信路を介して相互に接続される制御装置と、前記制御装置に接続する通信端末とを有し、マルチキャストグループとマルチキャストパケットの配信先の制御装置の関係を示すマルチキャスト配信情報がマルチキャストグループごとに一意に決定される一つの第一の制御装置に夫々分散されて保持され、該マルチキャスト配信情報に基づいて前記マルチキャストパケットを転送するオーバレイマルチキャストパケット通信システムにおいて、制御装置間を接続する物理的な通信路の広狭に基づき狭帯域通信路を介さずに接続されている複数の制御装置を夫々含む複数の副集合に分割され、制御装置は、自装置と同じ副集合に所属する全ての制御装置へ通信可能に論理的な通信路を追加し、前記第一の制御装置に保持されるマルチキャスト配信情報は、前記マルチキャストパケットの配信先の制御装置として、副集合毎に一台選択される第二の制御装置を設定し、前記第二の制御装置は、マルチキャストグループと、自分と同じ副集合に所属し、マルチキャスト配信先の通信端末が接続されている制御装置と、の関係を示す中継配信情報を保持し、前記第一の制御装置は、前記マルチキャスト配信情報に基づきマルチキャストパケットを前記第二の制御装置にユニキャストで送信し、該ユニキャストで送られてきたパケットを受信した前記第二の制御装置は、前記中継配信情報が示す宛先のマルチキャストグループの配信先の制御装置に、前記パケットを複製して前記論理的な通信路に沿って配信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、一定以上の広さの通信帯域の物理的な通信路で接続されている制御装置群をひとつの副集合とし、各副集合内の制御装置は、副集合間の通信路を使用しなくても通信可能に論理的な通信路を形成し、マルチキャストパケットは、各副集合つき一台定められている所定第一の制御装置に夫々ユニキャストで送信されるので、帯域の狭い通信回線の消費を抑制し、効率的なオーバレイマルチキャスト通信を行うことが出来るオーバレイマルチキャストパケット通信システムを得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
最初に、本発明の実施の形態1にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムのネットワーク構成を説明する。図1に、本発明の実施の形態1にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムのネットワーク構成の一例を示す。
【0013】
図1において、実施の形態1にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムは、制御装置1および通信端末7で構成され、事業者が設置する制御装置1にユーザが通信端末7を接続してマルチキャストパケット通信を行う。制御装置1と別の制御装置1、および制御装置1と通信端末7の間にはそれぞれ論理的な通信路が設定されており、各々の通信路において片方向あるいは双方向の通信が可能である。パケット転送においてはこの論理的通信路に沿った経路を選択することができる。
【0014】
夫々の制御装置1および通信端末7は、何れかのネットワークアイランド8に配属されている。ネットワークアイランド8とは、ネットワーク上のある地点から帯域の狭い通信経路を使用しないで到達可能な領域であり、互いに異なるネットワークアイランド8に属する制御装置1を接続する通信路は同一のネットワークアイランド8に属する制御装置1を接続する通信路に比べて狭い通信帯域を有する。通信帯域が狭い通信路とは、具体的には、実際に早い通信速度が得られない通信路のほか、インターネット・エクスチェンジやISPの接点など、実際は広い帯域が確保されている場所であっても、構造的にアクセスが集中するために1通信あたりに広い通信帯域が確保できないか、負荷をかけることが望ましくない箇所を含む。ネットワークアイランド8への分割は、IPレイヤや実際の通信速度の計測結果に基づいて、事業者により行われる。
【0015】
次に、このようなネットワークを構成する制御装置1の機能構成を説明する。図2は、本発明の実施の形態1にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムを構成するノードの役割を果たす制御装置1の構成を示す図である。
【0016】
図2において、制御装置1は、制御情報管理部2、データベース管理部3、演算処理部4、送信処理部5および受信処理部6を備える。
【0017】
制御情報管理部2は、装置間におけるパケット転送のための転送情報を保持する。転送情報は、自装置1の識別番号である識別番号と、パケット転送可能な相手の制御装置1の識別番号とに関する情報である。識別番号は、自装置1に固有の値からハッシュ関数によって生成した固定長のビット列の上位ビットを、それが所属するネットワークアイランド8に対して一意に割り当てられた識別番号の数字に置き換えられた値である。転送可能な相手の制御装置1は、この識別番号に基づいて設定され、自装置1は、転送可能な相手の制御装置1と論理的な通信路を形成する。各制御装置1がこのように論理的な通信路を形成することにより、図1に示されるネットワークが形成される。
【0018】
データベース管理部3は、オーバレイネットワーク上に分散配置するデータベースを保持する。データベースは、ユーザが属するマルチキャストグループの識別番号と、転送先の制御装置1または通信端末の識別番号とに関する情報(以下、単にエントリという)のデータベースである。制御装置1は、マルチキャスト通信において制御装置1が担う役割によって異なるタイプのデータベースを保持する。制御装置1は、その役割により、配信制御装置1x、中継制御装置1y、および末端制御装置1zの3種類に分けられる。各役割は兼任される場合があってもよい。配信制御装置1xは、マルチキャストグループにおける配信機能を担当する制御装置1である。中継制御装置1yは、各ネットワークアイランド8に一台選択された、配信制御装置1zからのパケットを複製して末端制御装置1zに配信する制御装置1である。末端制御装置1zは、マルチキャストグループに属するユーザの通信端末7が接続される制御装置1である。
【0019】
図3は、データベースの例を説明する図である。この例に示すデータベースは、マルチキャストグループと宛先の中継制御装置1yとに関するエントリのデータベースである。以下、図3のような、宛先が中継制御装置1yのエントリのデータベースをマルチキャスト配信情報とよび、後述する中継制御装置1yや末端制御装置1zが保持するデータベースと区別する。マルチキャスト配信情報は、分散ハッシュによって何れかの制御装置1のデータベース管理部3に保存されており、各マルチキャストグループにとって、該グループのエントリが含まれるマルチキャスト配信情報を保持する制御装置1が、配信制御装置1xとなる。
【0020】
中継制御装置1yは、配信制御装置1xから送信されるパケットを、同じネットワークアイランド8に所属し、マルチキャストグループに参加している通信端末7が接続されている末端制御装置1zの数だけ複製し、該末端制御装置1zを宛先として論理的な通信路に沿って転送する。このようにパケットを転送するために、中継制御装置1yのデータベース管理部3には、図3のデータベースにおいて、各エントリのパケットの複製配信先として中継制御装置1yの代わりに末端制御装置1zの識別番号が記されているデータベースが保持されている。
【0021】
末端制御装置1zのデータベースには、図3のデータベースにおいて、各エントリのパケットの複製配信先として、中継制御装置1yの代わりに、自装置1zに接続され、マルチキャストグループに参加している通信端末7の識別番号が記されている。
【0022】
送信処理部5および受信処理部6は、外部ネットワークとの通信を行う。
【0023】
演算処理部4は、制御情報管理部2、データベース管理部3、送信処理部5および受信処理部6を連結し、受信処理部6から到達するデータを解析し、それがネットワークの制御要求であれば制御情報処理部2へ、データベースの取得要求であればデータベース管理部3へ、また他の制御装置1へ転送すべきデータであれば制御情報処理部2を参照の上で送信処理部5より外部ネットワークへ転送する。
【0024】
次に、実施の形態1にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムにおいてマルチキャストパケットが転送される動作を説明する。図4は、実施の形態1にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムにおけるマルチキャストパケットの配信経路を説明する図である。
【0025】
図4において、何れかの通信端末7からマルチキャストパケットを受信した制御装置1は、論理的通信路を用いてそのパケットを中継制御装置1yに転送し、該中継制御装置1yがそのパケットを配信制御装置1xに転送する。配信制御装置1xはそのデータベース管理部3に保存されたマルチキャスト配信情報を参照し、マルチキャストグループ識別番号に対応するエントリを検索する。エントリで指定された配信数だけパケットを複製し、配信先の中継制御装置1y群に1パケットずつそれぞれユニキャストで送信する。次に、中継制御装置1yは、データベース管理部3に保持されるデータベースを参照し、マルチキャストグループ識別番号に対応するエントリを検索し、配信制御装置1xからユニキャストで受信したパケットを複製して宛先の末端制御装置1z群にそれぞれユニキャストで送信する。パケットを受信した末端制御装置1zは、自装置1zのデータベース管理部3のデータベースを参照し、マルチキャストグループ識別番号に対応するエントリを検索し、自宛先の通信端末7にパケットを送信し、該通信端末7はマルチキャストパケットを受信する。
【0026】
このように、実施の形態1によるマルチキャストパケット通信においては、各ネットワークアイランド8の中継制御装置1yに夫々ユニキャストでパケットが送信され、中継制御装置1yは該パケットを複製して同一のネットワークアイランド8に所属する末端制御装置1zに送信する。因みに、非特許文献1のような一般的なDHT技術のみに基づいて構築されたオーバレイネットワークにおいて、マルチキャストパケット通信を行う場合、実施の形態1による構成に示したような中継制御装置1yを持たないので、図5に示すように、配信を担当する制御装置(実施の形態1における配信制御装置1xに相当)は、受信する通信端末が接続されている制御装置(末端制御装置1zに相当)に向け、該送信先の制御装置の数だけパケットを複製して送信する。このことからわかるように、実施の形態1によるマルチキャストパケット通信の通信方法によれば、ネットワークアイランド8間の狭帯域の通信路を通過するパケットの数を低減することができる。
【0027】
次に、実施の形態1によるオーバレイマルチキャストパケット通信システムの、あるユーザの通信端末7があるマルチキャストグループに参加する場合の動作を説明する。図6は、通信端末7があるマルチキャストグループに参加する参加処理動作を説明するフローチャートである。
【0028】
図6において、通信端末7が接続する末端制御装置1zにマルチキャストパケットの参加要求メッセージを送信する(ステップS1)と、末端制御装置1zの演算処理部4は、自装置1zのデータベース管理部3に保持されるデータベースを参照し、参加要求があったマルチキャストグループのエントリを検索することにより、そのマルチキャストグループのパケットを自装置1zに接続している別の通信端末7に配信しているかどうかを判定する(ステップS2)。既に他の通信端末7に配信している場合(ステップS2、Yes)、自装置1zまでパケットを届ける経路は存在するので、参加要求を出した通信端末7にパケットを複製配信するように自装置1zのデータベースに記載されるマルチキャストグループの宛先に追加し(ステップS7)、処理を終了する。
【0029】
要求メッセージを受信した末端制御装置1zの演算処理部4が、自装置1zに接続されている通信端末7のうち、他にこのマルチキャストグループの配信を受けている通信端末7がないと判定する場合(ステップS2、No)、末端制御装置1zは、データベースにこのマルチキャストグループの識別番号と要求メッセージを送信した通信端末7のエントリを加えるとともに、自装置1が所属するネットワークアイランド8の中継制御装置1yに対し、自装置1zにパケットを複製配信するよう要求メッセージを送信する(ステップS3)。中継制御装置1yが該要求メッセージを受信すると、該中継制御装置1yの演算処理部4は、データベース管理部3に保持されるデータベースを参照し、参加要求があったマルチキャストグループのエントリを検索することにより、そのマルチキャストグループのパケットを、自装置1yが所属するネットワークアイランド8に所属する末端制御装置1zで、要求メッセージを送信した末端制御装置1z以外の末端制御装置1zに配信しているかどうかを判定する(ステップS4)。既に他の末端制御装置1zに配信している場合(ステップS4、Yes)、自装置1yまでパケットを届ける経路は存在するので、要求メッセージを送信した末端制御装置1zをデータベースに記載されるパケット複製配信先に加えることで、該末端制御装置1zにパケットを複製配信するように設定し(ステップS8)、処理を終了する。
【0030】
要求メッセージを受信した中継制御装置1yの演算処理部4が、自装置1yから配信している末端制御装置1zのうち、他にこのマルチキャストグループの配信を受けている末端制御装置1zがないと判定する場合(ステップS4、No)、要求メッセージを受信した中継制御装置1yは、データベースにこのマルチキャストグループの識別番号と要求メッセージを送信した末端制御装置1zのエントリを加えるとともに、配信制御装置1xに対して自装置1yにパケットを複製配信するよう要求メッセージを送信する(ステップS5)。要求メッセージを受信した配信制御装置1xは、自装置1xの演算処理部4が、自装置1xのデータベース管理部3に保持されるデータベースに、そのマルチキャストグループの複製配信先に、要求メッセージを送信した中継制御装置1yを追加することで、該中継制御装置1yに複製配信するように設定し(ステップS6)、処理を終了する。
【0031】
このように、マルチパケット通信を行っている通信端末7と同一のネットワークアイランド8に所属する通信端末7が新規にマルチキャストパケットの受信を希望する場合、できるだけ配信制御装置1xのデータベースを変更することなく通信端末7のマルチパケット通信への参加処理が実行されるので、参加要求メッセージがネットワークアイランド8間を通過することによる狭帯域回線の負荷を低減することができる。
【0032】
このように、実施の形態1にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムによれば、一定以上の広さの通信帯域の物理的な通信路で接続されている制御装置群をひとつの副集合(ネットワークアイランド)とし、各副集合内の制御装置は、副集合間の通信路を使用しなくても通信可能に論理的な通信路を形成し、マルチキャストパケットは、各副集合につき一台定められている所定第一の制御装置に夫々ユニキャストで送信され、前記所定第一の制御装置は、該ユニキャストで送られてきたパケットを、マルチキャスト配信先である制御装置に複製配信するように構成されているので、帯域の狭い通信回線の消費を抑制し、効率的なオーバレイマルチキャスト通信を行うことが出来る。
【0033】
実施の形態2.
次に、本発明の実施の形態2にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムについて説明する。実施の形態2にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムは、ある通信端末7からマルチキャストパケットをマルチキャストグループに送信したとき、配信制御装置1xが、そのパケットを配信制御装置1xに宛てて送信した中継制御装置1yに対してマルチキャスト配信情報の該当するエントリを送信することが特徴である。ネットワーク構成、制御装置の機能構成、およびマルチキャストグループへの参加処理は、実施の形態1と同等であるので説明を省略し、本実施の形態のパケット通信システムの特徴であるあるマルチキャスト配信情報の複製を送信する動作についてのみ説明する。
【0034】
図7は、図2のネットワークにおいて、中継制御装置1yに対してマルチキャスト配信情報の複製を送信する動作を説明する図である。
【0035】
図7において、中継制御装置1yが同一のネットワークアイランド8に所属する通信端末7から末端制御装置1zを経由してマルチキャストパケットを受信すると、そのパケットは配信制御装置1xに転送される(図中破線矢印(1))。一回マルチキャストパケットを受信した配信中継装置1xは、パケットを転送してきた中継制御装置1yに対してマルチキャスト配信情報の中から宛先のマルチキャストグループに関するエントリの複製を、前記するマルチキャストパケットを中継した中継制御装置1yに送信し、これを受信した中継制御装置1yはこのマルチキャスト配信情報のエントリを自装置1yのデータベース管理部3に記憶する(図中点線矢印(2))。こうして、中継制御装置1yは、このマルチキャストグループに関して、配信制御装置1xとしての機能が付加される。
【0036】
この状態で配下の何れかの通信端末7(最初の通信端末と同一でなくてもよい)が上記と同一のマルチキャストグループに宛てたパケットを送信すると、そのパケットは中継制御装置1yに転送され、前記するデータベース管理部3に記憶されたマルチキャスト配信情報を参照することによって自らパケットを複製し、リストに記載される宛先の中継制御装置1yに配信する(図中破線矢印(3))。その後の転送処理は、実施の形態1にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムのパケットを送信する動作と同様である。
【0037】
このように、実施の形態2にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムによれば、配信制御装置1xがマルチキャストパケットを受信すると、該パケットが経由して送られてきた中継制御装置1yに該当するマルチキャスト配信情報を複製して送信し、該中継制御装置1yは、送信されてきたマルチキャスト配信情報と、保持する中継配信情報とに基づいて該当するマルチキャストグループ宛のパケットを転送するようにしたので、実施の形態1にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムに比較して、中継制御装置1yへの配信に当たって配信制御装置1xを経由する必要がなくなるため、ネットワークアイランド8間の狭帯域の通信路上での転送回数が低減される。また、送信元の通信端末7と同一のネットワークアイランド8に存在する通信端末7への配信パケットは中継制御装置1yで折り返して配信されるので、ネットワークアイランド8外部の通信路を経由せずに配信される。
【0038】
ところで、実施の形態1および実施の形態2によるオーバレイマルチキャストパケット通信システムにおいて、各ネットワークアイランド8間の通信路は、中継制御装置1yのみが保持できるように構成してもよい。このようにすることで、同一のネットワークアイランド8内の転送回数をさらに低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムは、狭帯域を含むオーバレイネットワークにおいてマルチキャストパケット通信を行うオーバレイマルチキャストパケット通信システムに適用して好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施の形態1にかかるオーバレイマルチキャストパケット通信システムのネットワーク構成の一例を説明する図である。
【図2】実施の形態1にかかる制御装置の機能構成を説明する図である。
【図3】データベースの例を説明する図である。
【図4】実施の形態1のパケット通信システムにおけるマルチキャストパケットの配信経路を説明する図である。
【図5】一般的なオーバレイマルチキャストパケット通信システムにおけるマルチキャストパケットの配信経路を説明する図である。
【図6】実施の形態1のパケット通信システムにおいて、通信端末がマルチキャストグループに参加する参加処理動作を説明するフローチャートである。
【図7】実施の形態2のパケット通信システムにおいて、中継制御装置に対してマルチキャスト配信情報のエントリの複製を送信する動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1 制御装置
1x 配信制御装置
1y 中継制御装置
1z 末端制御装置
2 制御情報管理部
3 データベース管理部
4 演算処理部
5 送信処理部
6 受信処理部
7 通信端末
8 ネットワークアイランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的な通信路を介して相互に接続される制御装置と、前記制御装置に接続する通信端末とを有し、マルチキャストグループとマルチキャストパケットの配信先の制御装置の関係を示すマルチキャスト配信情報がマルチキャストグループごとに一意に決定される一つの第一の制御装置に夫々分散されて保持され、該マルチキャスト配信情報に基づいて前記マルチキャストパケットを転送するオーバレイマルチキャストパケット通信システムにおいて、
制御装置間を接続する物理的な通信路の広狭に基づき狭帯域通信路を介さずに接続されている複数の制御装置を夫々含む複数の副集合に分割され、制御装置は、自装置と同じ副集合に所属する全ての制御装置へ通信可能に論理的な通信路を追加し、
前記第一の制御装置に保持されるマルチキャスト配信情報は、前記マルチキャストパケットの配信先の制御装置として、副集合毎に一台選択される第二の制御装置を設定し、
前記第二の制御装置は、マルチキャストグループと、自分と同じ副集合に所属し、マルチキャスト配信先の通信端末が接続されている制御装置と、の関係を示す中継配信情報を保持し、
前記第一の制御装置は、前記マルチキャスト配信情報に基づきマルチキャストパケットを前記第二の制御装置にユニキャストで送信し、
該ユニキャストで送られてきたパケットを受信した前記第二の制御装置は、前記中継配信情報が示す宛先のマルチキャストグループの配信先の制御装置に、前記パケットを複製して前記論理的な通信路に沿って配信する、
ことを特徴とするオーバレイマルチキャストパケット通信システム。
【請求項2】
前記第二の制御装置同士のみが異なる副集合間に論理的な通信路を形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のオーバレイマルチキャストパケット通信システム。
【請求項3】
新規に通信端末がマルチキャストグループへの参加を所望する場合、該通信端末は前記第二の制御装置に参加要求メッセージを送信し、
該メッセージを受信した前記第二の制御装置は、前記通信端末が接続されている制御装置を、前記中継配信情報の前記マルチキャストグループのマルチキャスト配信先に追加する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のオーバレイマルチキャストパケット通信システム。
【請求項4】
マルチキャストグループに所属する通信端末がマルチキャストパケットを送信したとき、制御装置は、該パケットを、前記論理的な通信路に沿って自装置と同一の副集合に所属する第二の制御装置を経由する転送経路をとって、前記マルチキャストグループに関するマルチキャスト配信情報を保持する第一の制御装置に転送し、
前記パケットを受信した前記第一の制御装置は、前記パケットが経由した前記第二の制御装置に前記マルチキャスト配信情報を複製して送信し、前記マルチキャスト配信情報を受信した前記第二の制御装置は、自装置と同一の副集合に属する制御装置に接続されている通信端末から前記マルチキャストグループ宛のマルチキャストパケットを受け取ると、前記受信したマルチキャスト配信情報に基づき、異なる副集合に属する第二の制御装置にユニキャストで前記マルチキャストパケットを送信するとともに、自装置の中継配信情報に保持される前記マルチキャストグループに所属する通信端末が接続している制御装置へ、前記マルチキャストグループ宛のパケットを複製して前記論理的な通信路に沿って配信する、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかひとつに記載のオーバレイマルチキャストパケット通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−141391(P2009−141391A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312233(P2007−312233)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】