説明

オーバーコート材及びそれを用いた半導体装置

【課題】低温短時間で硬化し、充填性に優れ、強靭性及び熱伝導性に優れた硬化物を与え、さらにリペア・リワーク性に優れるオーバーコート材及び該それにより封止したパッケージを備えた半導体装置を提供。
【解決手段】(A)液状エポキシ樹脂100質量部、(B)フェノール系硬化剤5〜95質量部、(C)硬化促進剤10〜150質量部、(D)重量平均粒子径15μm以上30μm未満の粒子を50〜75質量%、5μm以上15μm未満の粒子を15〜25質量%、及び2μm以下の粒子を10〜25質量%含む熱伝導性充填材(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して200〜1000質量部、及び、(E)1分子中に1つのエポキシ基を有する希釈剤50〜200質量部を含有し、(A)成分及び(E)成分中のエポキシ基/(B)成分中のフェノール性水酸基が1.3〜3.0(モル当量比)であるオーバーコート材、及び半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオーバーコート材及びオーバーコート材で封止したパッケージを備える半導体装置に関する。詳細には、充填性、低温速硬化性に優れ、かつ強靭性及び熱伝導性に優れる硬化物を与えるオーバーコート材、及び該オーバーコート材で封止したパッケージを備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器の小型化、軽量化、高性能化等にともない、近年では半導体の実装方式として、旧来のリード線タイプではなく、BGA・CSPを用いた表面実装が採用されている。最近では、パッケージされていない裸のICチップをそのまま実装するフリップチップ実装(ベアチップ実装)が採用されるようになっている。しかし、BGA・CSPは半導体素子を基板に接続する際、接合部に大きな応力が発生しはんだボールにクラックが入り接続不良となる恐れがある。これは、リード接続型のパッケージはリードにより応力を緩和することができるが、BGA・CSP実装のような表面実装型のパッケージは衝撃が直接はんだに伝わるためである。BGA・CSP実装の接続信頼性を向上するために、基板と半導体素子との間隙をアンダーフィル剤で封止する方法が知られている(特許文献1)。
【0003】
アンダーフィル剤で封止する際の課題として、実装後に搭載する半導体素子が動作不良を起こした場合の、半導体素子のリペア・リワーク性がある。従来のエポキシ系の樹脂は熱的、化学的に安定で機械的強度が高いため補強材料としては理想的であるが、一度硬化すると除去することは困難でありリペアやリワークに支障をきたす。その結果、基板を廃棄せざるを得なくなり経済的損失を被ることとなる。本発明者らはリペア・リワーク性に優れ、且つ隙間侵入性が良好な実装用封止材を開発した(特許文献2)。
【0004】
近年、半導体装置の耐落下性への要求が高くなっており、より優れた耐衝撃性を半導体装置に付与できるアンダーフィル剤が求められている。しかし、従来のアンダーフィル剤では耐衝撃性が不十分であった。半導体装置の耐衝撃性をさらに向上するためにはアンダーフィル剤だけでは対応が困難となってきており、その為、パッケージ全体を樹脂で封止して耐衝撃性を向上することが期待されている。
【0005】
パッケージの全体を樹脂で封止する際、パッケージから発生する熱を放出する必要がある。特許文献3及び4は熱伝導性充填材を封止材に高充填し高熱伝導性を付与した半導体封止材を記載している。しかし上記半導体封止材の硬化物は強靭性、耐衝撃性が十分ではなく、パッケージのオーバーコート材としてはさらなる改良が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−77246号公報
【特許文献2】特開2008−177521号公報
【特許文献3】特許第2874089号
【特許文献4】特公平7−47682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
また、BGA・CSPパッケージと共に水晶振動子等の電子部品やプラスチック部品等の耐熱性に劣る部品が混載実装される場合には、オーバーコート材が低温短時間で硬化され、かつ室温でパッケージ全体を未充填なく封止できる必要がある。しかし、高熱伝導性を付与するために熱伝導性充填材を高充填すると、封止材の粘度が非常に高くなるため室温でパッケージ全体を未充填なく封止することが困難になる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、低温短時間で速硬化し、室温での充填性に優れ、強靭性及び熱伝導性に優れた硬化物を与え、さらにリペア・リワーク性に優れるオーバーコート材を提供することを目的とする。また、本発明は、該オーバーコート材により封止したパッケージを備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
(A)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂 100質量部、
(B)フェノール系硬化剤 5〜95質量部、
(C)硬化促進剤 10〜150質量部、
(D)重量平均粒子径15μm以上30μm未満の粒子を50〜75質量%、重量平均粒子径5μm以上15μm未満の粒子を15〜25質量%、及び重量平均粒子径2μm以下の粒子を10〜25質量%含む熱伝導性充填材 (A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して200〜1000質量部、
及び、
(E)1分子中に1つのエポキシ基を有する希釈剤 50〜200質量部
を含有し、(A)成分及び(E)成分中のエポキシ基/(B)成分中のフェノール性水酸基が1.3〜3.0(モル当量比)であるオーバーコート材、及び該オーバーコート材で封止したパッケージを備える半導体装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のオーバーコート材は第1に、(C)硬化促進剤の配合量が多く、かつ(A)液状エポキシ樹脂及び(E)希釈剤中のエポキシ基/(B)フェノール系硬化剤中のフェノール性水酸基が1.3〜3.0(モル当量比)であることを特徴とする。硬化促進剤の配合量が多いことにより低温速硬化性を可能にし、さらに過剰量の硬化促進剤が液状エポキシ樹脂及び希釈剤中のエポキシ基と反応することにより強度の強い硬化物を提供する。該オーバーコート材でパッケージを封止することにより、耐衝撃性に優れ信頼性の高い半導体装置を提供することができる。また、得られる硬化物はガラス転移温度が低く、高温で軟化しリペア・リワーク性に優れる。
【0011】
本発明のオーバーコート材は第2に、特定の粒径分布を有する熱伝導性充填材を配合することを特徴とする。これによってオーバーコート材の低粘度性を維持しつつ硬化物に高い熱伝導性を付与することができるため、パッケージから発生する熱を効果的に放出することができ、かつパッケージ全体を未充填なく十分に封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の半導体装置の一例である二次実装型の半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0014】
(A)液状エポキシ樹脂
(A)液状エポキシ樹脂は1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するものである。本発明の液状エポキシ樹脂は、それ自体が室温(25℃)で液状のものであれば、分子構造、分子量等は特に限定されず、公知の液状エポキシ樹脂を全て用いることができる。中でも、25℃における粘度が0.05Pa・s〜200Pa・s、特に0.1Pa・s〜100Pa・sのものが好ましい。
【0015】
(A)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック方エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂等のトリフェノールアルカン型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの液状エポキシ樹脂は1種単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0016】
中でも、特に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。また、本発明のエポキシ樹脂は下記構造式 で示されるエポキシ化合物を樹脂の充填性に影響を及ぼさない範囲で含有していてもよい。
【0017】
【化1】

【0018】
ここで、Rは水素原子又は炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、更に好ましくは炭素数1〜3の一価炭化水素基であり、一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基等が挙げられる。また、xは1〜4の整数、特に1又は2である。
【0019】
なお、上記式で示されるエポキシ化合物を配合する場合、その配合量は全(A)液状エポキシ樹脂中25質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であることがよい。25質量%未満であると組成物の粘度が上昇したり、硬化物の耐熱性が低下するおそれがある。なお、その上限は100質量%でもよい。このようなエポキシ化合物としては、エピコート630(ジャパンエポキシレジン社製)、RE600NM(日本化薬(株)製)が挙げられる。
【0020】
(A)成分は、エポキシ樹脂中に含まれる全塩素含有量が1500ppm以下、特に1000ppm以下であることが望ましい。また、100℃で50%エポキシ樹脂濃度における20時間での抽出水塩素が10ppm以下であることが望ましい。全塩素含有量または抽出水塩素の量が前記上限値以下であることにより、半導体装置の耐湿性が良好となり信頼性が向上する。
【0021】
本発明の(A)液状エポキシ樹脂はシリコーン変性エポキシ樹脂をさらに含むことが好ましい。シリコーン変性エポキシ樹脂を含む事により、得られる硬化物の応力を緩和してクラックの発生を抑制し、さらに半導体装置に耐熱衝撃性を付与することができる。
【0022】
シリコーン変性エポキシ樹脂は、アルケニル基含有エポキシ樹脂と下記平均組成式(4)
[化2]

SiO(4−a−b)/2 (4)

で表され、かつ1分子中のケイ素原子の数が20〜400、好ましくは40〜200であり、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を好ましくは1〜5個、より好ましくは2〜4個、特に好ましくは2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとのヒドロシリル化反応により製造することができる。該ヒドロシリル化反応は公知の反応条件で行えばよく、例えば白金系触媒を用いて行うのがよい。
【0023】
上記式(4)中、aは0.005〜0.1、好ましくは0.01〜0.05の正数であり、bは1.8〜2.2、好ましくは1.9〜2.0の正数であり、かつ、a+bの和は1.81〜2.3、好ましくは1.91〜2.05の正数である。
【0024】
上記式(4)中、Rは脂肪族不飽和基以外の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、炭素原子数1〜10、特に1〜8のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、キシリル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;及びこれらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部が塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換されたクロロメチル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基等を挙げることができる。
【0025】
アルケニル基含有エポキシ樹脂としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
【化3】

上記式中、Rは水素原子、炭素原子数1〜6の、非置換もしくは置換の一価炭化水素基、アルコキシ基又はアルコキシアルキル基であり、Rは水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基であり、pは0以上、好ましくは1〜50の整数、更に好ましくは1〜10の整数である。
【0026】
シリコーン変性エポキシ樹脂としては、特に下記式(2)または(3)で表される樹脂が好適である。
【0027】
【化4】

【化5】

【0028】
上記各式中、R、R、R、pは上述の通りであり、Rはグリシジル基であり、Rは末端に式中のSi原子に結合する酸素原子、あるいは水酸基を含有していてもよい非置換又は置換の2価炭化水素基であり、nは0以上、好ましくは18〜398、更に好ましくは38〜198の整数である。
【0029】
上記式中のRとしては、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシエチル基等のアルコキシ基及びアルコキシアルキル基が例示される。
【0030】
はSi原子に結合する酸素原子、あるいは水酸基を含有してもよい非置換又は置換の2価炭化水素基であり、例えば、−CHCHCH−、−O−CH−CH(OH)−CH−O−CHCHCH−、−O−CHCHCH−(なお、前記構造の端部の酸素原子が、Si原子に結合する)が例示される。シリコーン変性エポキシ樹脂は1種単独でも2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明では(A)成分または後述する(B)成分のいずれか一方がシリコーン変性された樹脂を含有するのがよい。シリコーン変性された樹脂の使用量は、例えば、前記シリコーン変性エポキシ樹脂および/または後記シリコーン変性フェノール樹脂の合計質量が、(A)成分、(B)成分、及び(E)成分の合計質量に対して、1〜30質量%、好ましくは5〜25質量%とするのがよい。シリコーン変性樹脂成分の配合量が少なすぎると半導体装置の耐熱衝撃性が劣化する場合があり、多すぎると封止材が高粘度化し作業性が悪くなる場合がある。
【0032】
(B)フェノール系硬化剤
(B)成分は、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば、分子構造、分子量等は特に限定されず、公知のフェノール系樹脂硬化剤を全て使用することができる。特に、それ自体が室温(25℃)で液状のものがよく、中でも、25℃における粘度が10Pa・s以下、特に5Pa・s以下のものが好ましい。該(B)成分の配合量は(A)成分100質量部に対し5〜95質量部、好ましくは30〜90質量部であることがよい。
【0033】
(B)成分としては、例えば、1分子中にフェノール性水酸基を少なくとも2個以上有するフェノール樹脂が挙げられ、より具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;パラキシリレン変性ノボラック樹脂、メタキシリレン変性ノボラック樹脂、オルソキシリレン変性ノボラック樹脂等のキシリレン変性ノボラック樹脂;ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、フェノールアラルキル型樹脂、ビフェニルアラルキル型樹脂等のフェノール樹脂;トリフェノールメタン型樹脂、トリフェノールプロパン型樹脂等のトリフェノールアルカン型樹脂及びその重合体等のフェノール樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等がいずれも使用可能である。
【0034】
中でも、特に下記式(1)で示されるアルケニル基を含有するフェノール系硬化剤が好ましい。
【化6】

上記式中、R6は炭素原子数1〜15、好ましくは炭素数1〜4の鎖状もしくは分岐状アルキル基であり、Rは炭素数2〜6のアルケニル基であり、nは0〜5の整数であり、好ましくは1〜3の整数である。フェノール系硬化剤がアルケニル基を含有することにより、原料の液状化の点で好ましい。特に、アルケニル基含有フェノールノボラック樹脂が好ましく、例えばMEH−8000H(明和化成株式会社製)が挙げられる。
【0035】
フェノール系硬化剤は、通常、液状エポキシ樹脂中のエポキシ基と硬化剤中のフェノール性水酸基のモル当量比が1:1となる量で使用するのが一般的であるが、本発明は(A)成分中及び後述する(E)成分中のエポキシ基/(B)成分中のフェノール性水酸基が1.3〜3.0(モル当量比)、好ましくは1.5〜2.5(モル当量比)となる量、即ちエポキシ基過剰系で配合することを特徴とする。モル当量比は、(A)液状エポキシ樹脂及び(E)希釈剤中のエポキシ基の合計モル数と(B)フェノール系硬化剤中のフェノール性水酸基の合計モル数の比である。本発明のオーバーコート材は、過剰量のエポキシ基が、後述する(C)硬化促進剤とさらに反応することにより、強靭な硬化物を提供する。エポキシ基が上記下限値未満では、硬化物が所望の強度を有さず、前記上限値超えでは過剰のエポキシ樹脂が硬化促進剤と反応しすぎるため硬化促進剤の機能が低下し機械的強度の減少が見られるようになる。
【0036】
(B)成分はシリコーン変性フェノール樹脂を含んでいてもよい。これにより得られる硬化物の応力を緩和しクラックの発生を抑制することができる。シリコーン変性フェノール樹脂としては、例えば、アルケニル基含有フェノール樹脂と、上述した平均組成式(4)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの付加反応生成物が挙げられる。シリコーン変性フェノール樹脂は、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0037】
該シリコーン変性フェノール樹脂としては下記式(5)または(6)で表される樹脂が好適である。
【0038】
【化7】

【化8】

(上記各式中、R、R、R、R、n及びpは上述したものと同じである。)
【0039】
(C)硬化促進剤
硬化促進剤はオーバーコート材の硬化反応を促進するために使用する。該硬化促進剤の配合量は、(A)液状エポキシ樹脂100質量部に対し、10〜150質量部、好ましくは50〜150質量部、より好ましくは90〜150質量部である。本発明のオーバーコート材は硬化促進剤を多量に添加する事を特徴とし、これにより低温で速やかに硬化する事ができる。また過剰量の硬化促進剤が(A)成分及び(E)成分のエポキシ基と反応することにより、強固な硬化物を提供することができる。該硬化促進剤は、エポキシ樹脂の硬化反応を促進させるものならば特に限定されず、公知のものを全て使用することができ、例えば、イミダゾール化合物、第3級アミン化合物、有機リン系化合物等を挙げることができる。中でもイミダゾール化合物が好適であり、イミダゾール化合物を使用することにより硬化物の強靭性がより向上する。
【0040】
イミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,2−ジエチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4,5−トリフェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−アリル−4,5−ジフェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,2−ジエチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールが好ましい。
【0042】
また、第3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルトリメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン等の窒素原子に結合する置換基としてアルキル基やアラルキル基を有するアミン化合物;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7及びそのフェノール塩、オクチル酸塩、オレイン酸塩等のシクロアミジン化合物やその有機酸との塩;下記構造式で表される化合物等のシクロアミジン化合物と4級ホウ素化合物との塩又は錯塩等が挙げられる。
【0043】
【化9】

【0044】
また、有機リン系化合物としては、例えば、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルトリルホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等のトリオルガノホスフィン化合物;テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等の4級ホスホニウム塩等が挙げられる。これら硬化促進剤は1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
本発明の硬化促進剤は、マイクロカプセル化した硬化促進剤であるのがよい。マイクロカプセル化した硬化促進剤は、ポリマーを殻材として、該ポリマー中に上述した硬化促進剤(以下、触媒化合物と称す)が閉じ込められたものである。マイクロカプセルのシェルを構成する樹脂は、保存安定性の維持と速硬化性の確保の観点から、融点が60〜90℃、好ましくは65〜75℃であるのがよい。上記シェルの融点以上で加熱するとシェルが溶融し、包含されている触媒化合物が染み出し硬化反応を急速に進めることができる。また、封止材が硬化促進剤を多量に含有すると保存安定性が低下する傾向があるが、マイクロカプセル化することにより保存安定性を向上することができる。このような樹脂としては、前記融点条件を満たすものであれば特に限定されず、公知のものを全て使用することができる。例えば、(メタ)アクリル系単量体、アクリル酸エステル、イタコン酸エステル、クロトン酸エステル等の炭素数1〜8のアルキルエステル、前記アルキルエステルのアルキル基がアリル基等の置換基を有するもの、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル等の単官能性単量体、及びエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド等の多官能単量体から選ばれる1種又は2種以上の単量体を(共)重合することにより得られたポリマーが挙げられる。中でも、(メタ)アクリレート系単量体の重合物が好ましい。
【0046】
マイクロカプセル化された硬化促進剤の製造方法としては様々な方法が挙げられるが、生産性及び球状度が高いマイクロカプセルを製造するためには、通常、懸濁重合法及び乳化重合法など、従来から公知の方法で製造することができる。例えばエポキシ樹脂硬化剤用アミン類を主成分とする固体状芯物質を、重合性二重結合を有する有機酸を含有するラジカル重合性モノマーでマイクロカプセル化する方法が特開平5−247179号公報に開示されている。
【0047】
一般的に使用されている触媒の分子構造から高濃度マイクロカプセルを得るためには、触媒化合物10質量部に対して使用する上記単量体の総量が10〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは20〜50質量部であるのがよい。10質量部未満ではマイクロカプセル化した効果を十分に発揮することができなくなる。また、200質量部を超えると、触媒の比率が低くなるため十分な硬化性を得るためには多量に使用しなければならなくなり、経済的に不利となる。即ち、マイクロカプセル中に含有される触媒化合物の濃度が5〜50質量%、好ましくは10〜50質量%であることが好ましい。
【0048】
このような方法で得られるマイクロカプセル化された硬化促進剤は、平均粒径0.5〜10μm、特に、平均粒径1〜5μmのものが望ましい。平均粒径が小さすぎると、比表面積が大きくなり、混合した時にオーバーコート材の粘度が高くなるおそれがある。また平均粒径が10μmを超えると、オーバーコート材中での分散が不均一になり信頼性の低下を引き起こすおそれがある。
【0049】
作業性の面から硬化促進剤を液状エポキシ樹脂に分散させて液状にしてもよく、硬化促進剤と液状エポキシ樹脂との比は、硬化促進剤5〜40質量部に対して液状エポキシ樹脂と希釈剤の合計が60〜95質量部となるのが好ましい。硬化促進剤はマイクロカプセル化していない硬化促進剤とマイクロカプセル化した硬化剤とを併用してもよい。
【0050】
(D)熱伝導性充填材
本発明は特定の粒径分布を有する熱伝導性充填材を配合することにより、オーバーコート材の低粘度性を維持しながら、高い熱伝導性を付与することを可能にする。即ち、本発明の熱伝導性充填材は、重量平均粒子径15μm以上30μm未満の粒子50〜75質量%、重量平均粒子径5μm以上15μm未満の粒子15〜25質量%、及び重量平均粒子径2μm以下の粒子10〜25質量%を含む充填材である。好ましくは、重量平均粒子径15μm以上30μm未満の粒子60〜70質量%、重量平均粒子径5μm以上15μm未満の粒子20〜25質量%、及び重量平均粒子径2μm以下の粒子10〜20質量%を含む充填材である。なお、本発明の熱伝導性充填材は重量平均粒径30μm以上の粒子を少量含んでいてもよい。また、本発明の熱伝導性充填材は平均粒径0.1〜100μmを有する粒子から成ることが良い。該平均粒径が0.1μmより小さい粒子を含むと得られる組成物のチキソ指数が高くなり、伸展性に乏しいものとなり、100μmより大きい粒子を含むと樹脂組成物中の均一性が乏しくなる。充填材は如何なる形状でもよく、不定形でも球形でもよい。尚、上記重量平均粒径は、例えばレーザー光回折法による粒度分布測定における重量平均値D50(又は、メジアン径)等として求めることができる。
【0051】
本発明の(D)熱伝導性充填材は10W/mK以上の熱伝導率を有する熱伝導性充填材であるのがよい。熱伝導率が10W/mKより小さいと、オーバーコート材の熱伝導率が小さくなるため好ましくない。かかる熱伝導性充填材としては、10W/mK以上の熱伝導率を有する充填材であればいかなる充填材でもよいが、好ましくは、アルミニウム粉末、銅粉末、銀粉末、ニッケル粉末、金粉末、金属ケイ素粉末、アルミナ粉末、酸化亜鉛粉末、酸化マグネシウム粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ホウ素粉末、窒化珪素粉末、ダイヤモンド粉末、カーボン粉末、インジウム粉末、ガリウム粉末など挙げられる。充填材は1種類単独あるいは2種類以上を混ぜ合わせたものでも良い。
【0052】
(D)熱伝導性充填材の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計質量100質量部に対して、200〜1000質量部、好ましくは400〜800質量部であるのがよい。前記下限値未満では、膨張収縮が大きく信頼性低下となり、前記上限値超では高粘度により未充填となるため好ましくない。
【0053】
(E)希釈剤
希釈剤はオーバーコート材を低粘度化し室温での充填性をさらに向上する。本発明の希釈剤は1分子中に1つのエポキシ基を有する希釈剤であり、単官能エポキシ化合物であるのがよい。これによって希釈剤が(B)フェノール系硬化剤や(C)硬化促進剤と反応し、室温でより強固な硬化物を提供する事ができる。このような単官能エポキシ化合物としては、脂肪族単官能エポキシ化合物、脂肪族二官能エポキシ化合物、芳香族単官能エポキシ化合物等を単独であるいは二種以上を組み合わせて使用することができる。より具体的には、o−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、シクロへキサンジメチロール型エポキシ樹脂、フェニルグリシジルエーテル、o−クレジルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)グリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等の一つまたは二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0054】
希釈剤の配合量は(A)成分100質量部に対し50〜200質量部、好ましくは60〜100質量部である。希釈剤の配合量が上記下限値未満では、オーバーコート材の粘度が高くなり、空気巻き込みによる未充填発生の原因となる。希釈剤の配合量が上記上限値超では硬化後の強靭性が著しく低下する場合があるため好ましくない。本発明のオーバーコート材は室温(25℃)における粘度が10〜1000Pa・s、好ましくは40〜400Pa・sであり、特に、室温(25℃)で液状であるのがよい。
【0055】
本発明のオーバーコート材には、上記各成分に加えて、必要に応じて他の成分を配合することができる。但し、得られるオーバーコート材が上記粘度であり、かつ本発明の効果を損なうものであってはならない。例えば、得られる硬化物の応力を緩和させるために、シリコーンゴム、シリコーンオイル、液状のポリブタジエンゴム等を配合してもよい。また、表面処理剤、接着性向上用のシランカップリング剤、カーボンブラック、アデカブラック等の顔料、低粘度化用の溶剤、染料、酸化防止剤、その他の添加剤等を配合することができる。前記表面処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、テトラエトキシシラン等が挙げられ、これは無機充填材成分の表面を疎水化処理し、樹脂成分との濡れ性向上に効果を発揮する。また、前記シランカップリング剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、KBM403(商品名、信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0056】
本発明のオーバーコート材は、上記各成分を同時に、又は逐次的に、装置内へ投入し、必要により15〜25℃の範囲の冷却処理を行いながら、撹拌、溶解、混合、分散等の操作を行うことによって調製することができる。これらの撹拌、溶解、混合、分散等の操作に用いられる装置は特に限定されない。例えば、撹拌及び加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。また、前記装置の複数を適宜組み合わせてもよい。
【0057】
本発明のオーバーコート材は室温で低粘度であるため充填性に優れ、パッケージをボイドなく封止することができるため、パッケージの全面封止のために好適に使用することができる。パッケージを全面封止する場合には、60℃における粘度が10Pa・s以下であることが特に好ましく、これにより良好な伸展性を維持することができる。尚、本発明における粘度は、ブルックフィールド社製、E型粘度計により測定できる。
【0058】
本発明は上記オーバーコート材で封止したパッケージを備える半導体装置を提供する。該半導体装置としては、半導体素子を保持するキャリア基板と、配線基板との隙間をアンダーフィル剤にて封止したパッケージを、本発明のオーバーコート材により封止した半導体装置が挙げられる。このような半導体装置の一例を図1に示す。図1は、CSPパッケージを本発明のオーバーコート材により全面封止した、二次実装型の半導体装置の断面図である。詳細には、半導体素子7をキャリア基板8にフリップチップ接続したCSPパッケージ6の、該キャリア基板8の裏面をはんだボール4により配線基板5に実装し、該キャリア基板の裏面と配線基板との隙間をアンダーフィル剤3にて封止したパッケージにおいて、配線基板5の上にシールド2を設け、本発明のオーバーコート材1をパッケージの上部からポッティングすることにより、CSPパッケージ6を本発明のオーバーコート材で全面封止した半導体装置である。CSPパッケージは従来公知の方法により製造されたものであり、配線基板及びアンダーフィル剤は従来公知のものを使用すればよい。
【0059】
パッケージの封止工程としては、例えば、事前に乾燥させた、配線基板にパッケージを実装したデバイスを25〜60℃に加熱させたホットプレート上に置き、ディスペンサー等の塗布機器を用いて、パッケージの上部より本発明のオーバーコート材を500mg〜3g/回で数回滴下して塗布する。本発明のオーバーコート材は100〜150℃の加熱温度で3〜40分間で硬化することができる。
【0060】
本発明のオーバーコート材は低粘度を維持したまま高い熱伝導性を有し、硬化物に高熱伝導性、例えば1.5W/mK以上の熱伝導性を付与する。そのため室温での充填性に優れ、且つパッケージから発生する熱を効果的に放出することができる。また低温で十分硬化できるため、耐熱性に劣る部品が実装されるパッケージにおいても好適に使用することができる。さらに本発明のオーバーコート材は優れた強度を有する硬化物を提供するため、本発明のオーバーコート材でパッケージを全面封止することにより、耐衝撃性に優れ信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0061】
また、本発明のオーバーコート材よりなる硬化物はガラス転移温度が低いため加熱(例えば260℃)により軟化する。その為、リペア及びリワーク性に優れており、硬化後に接続不良が発見された場合に、加熱することにより容易にパッケージを配線基板から取り外すことができ、パッケージ及び配線基板の再利用が可能である。そのため、本発明のオーバーコート材は半導体素子の封止材(例えば、図1に示す封止樹脂9)としても良好に使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例及び比較例を示して具体的に説明するが、本発明は下記実施例に
制限されるものではない。
【0063】
下記実施例及び比較例で使用した成分は下記のとおりである。
【0064】
(A)液状エポキシ樹脂
・ビスフェノールF型エポキシ樹脂:YDF8170(東都化成社製)エポキシ当量:160、粘度0.13mP・s(25℃)
・シリコーン変性エポキシ樹脂:下記式(7)で示される末端ビニル基含有エポキシ樹脂と下記式(8)で示されるオルガノポリシロキサンの付加反応生成物
【化10】

【化11】

エポキシ当量:220、粘度:46Pa・s(25℃)、Si含有量:14wt%
【0065】
(B)フェノール系硬化剤
アルケニル基含有フェノール樹脂:MEH−8000H(明和化成社製、粘度:2500mPa・s、OH当量:141g/eq)
【0066】
(C)硬化促進剤
マイクロカプセル化触媒:HX−3088(旭化成社製、コア材の平均粒径:2μm、最大粒径:75μm、シェル材の融点:70℃、コア材:イミダゾール系化合物、シェル材:ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA))
【0067】
(D)無機充填材
アルミナA:重量平均粒径20μm、熱伝導率29W/mK
アルミナB:重量平均粒径10μm、熱伝導率29W/mK
アルミナC:重量平均粒径0.7μm、熱伝導率29W/mK
【0068】
(E)希釈剤
p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル:EX−146(ナガセケムテックス社製) エポキシ当量:226
【0069】
(F)その他の成分
シランカップリング剤:KBM403(信越化学工業社製)
顔料:アデカブラック(アデカ)
【0070】
[実施例1、2、比較例1〜7]
上記成分を下記表1に示す組成及び配合量で配合し、プラネタリーミキサーを使用して均一に混練することによりオーバーコート材を調製した。各オーバーコート材を用いて、下記に示す各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0071】
粘度
各オーバーコート材を直径18mmのコーンを用いて、0.2mm厚となるように塗布し、25℃、40℃、60℃の粘度を測定した。粘度はE型粘度計(ブルックフィールド社製)により測定した。
【0072】
熱伝導性
各オーバーコート材を100℃のオーブンに30分間静置し、十分に硬化させた後の成型物から直径12mmの円盤を切り取り、LFA 447 Xe フラッシュアナライザー(NETZSCH社製)を用いて熱伝導性の測定を行った。
【0073】
接着強度
ソルダーマスクPSR−4000AUS308(太陽インキ化学工業(株)社製)を全面にコートしたBT基板(BT=ビスマレイミドトリアジン樹脂)に各オーバーコート材を塗布し、2mm×2mmのSiチップを乗せ、100℃に加熱したオーブンにて30分間硬化させた。硬化後の基板を260℃の熱板に40秒静置した。硬化後の基板の室温と260℃での接着強度を、ダイシェアテスターを用いて測定した。
【0074】
反応性
各オーバーコート材10mgについて、昇温スピード5℃/minのDSCによって発熱量を測定し初期発熱量とした。次に、各オーバーコート材を100℃で30分間加熱後の発熱量を上記と同様に測定し反応後発熱量とした。下記式により反応率を算出した。
反応率(%)=(初期発熱量−反応後発熱量)/初期発熱量×100(%)
【0075】
充填性
縦20mm×横20mm×高さ2mmの容器の中央にオーバーコート材を十分量ポッティングし、60℃の熱板の上で静置した。20分後のオーバーコート材の充填度合いを評価した。全体に充填しているものを○、充填していないものを×で示す。
【0076】
保存安定性
各オーバーコート材の25℃における粘度(初期値)と、25℃で24時間放置後の粘度をそれぞれ測定し、粘度の上昇率が20%以下である場合を○、上昇率が20%を超えた場合を×とした。
室温曲げ強さ
各オーバーコート材を厚さ4mm×幅10mm×長さ100mmに成型し、100℃に加熱したオーブンにて30分間加熱して硬化した。室温での各硬化物の曲げ強さをJISK 6911に準拠して測定した。
【0077】
【表1】

【0078】
表1より、本発明のオーバーコート材は低粘度を維持しつつ高い熱伝導性を硬化物に付与することが出来、充填性に優れる。また、低温で速やかに反応することができ、強度の強い硬化物を提供することができる。さらに、260℃に加熱すると接着強度が低減するためリペア・リワーク性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のオーバーコート材は低温速硬化性および充填性に優れ、かつ熱伝導性に優れた硬化物を提供できるため、耐熱性に劣る部品が実装される半導体装置においても好適に使用することができる。さらに、該オーバーコート材は強度に優れた硬化物を提供するため、該オーバーコート材の硬化物でパッケージを全面封止することにより、耐衝撃性に優れ信頼性の高い半導体装置を提供することができる。さらに、リペア・リワーク性に優れるため、半導体素子の封止材としても良好に使用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1.オーバーコート材
2.シールド
3.アンダーフィル剤
4.はんだボール
5.配線基板
6.CSPパッケージ
7.半導体素子
8.キャリア基板
9.封止樹脂
10.アンダーフィル剤
11.はんだボール
12.電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に2つ以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂 100質量部、
(B)フェノール系硬化剤 5〜95質量部、
(C)硬化促進剤 10〜150質量部、
(D)重量平均粒子径15μm以上30μm未満の粒子を50〜75質量%、重量平均粒子径5μm以上15μm未満の粒子を15〜25質量%、及び重量平均粒子径2μm以下の粒子を10〜25質量%含む熱伝導性充填材 (A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して200〜1000質量部、
及び、
(E)1分子中に1つのエポキシ基を有する希釈剤 50〜200質量部
を含有し、(A)成分及び(E)成分中のエポキシ基/(B)成分中のフェノール性水酸基が1.3〜3.0(モル当量比)であるオーバーコート材。
【請求項2】
(D)熱伝導性充填材が10W/mK以上の熱伝導率を有する請求項1に記載のオーバーコート材。
【請求項3】
(C)硬化促進剤がマイクロカプセル化されている請求項1または2に記載のオーバーコート材。
【請求項4】
(B)成分が下記一般式(1)で表されるアルケニル基含有フェノール系硬化剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載のオーバーコート材。
【化1】

(上記式中、R6は炭素原子数1〜15の鎖状もしくは分岐状アルキル基であり、Rは炭素数2〜6のアルケニル基であり、nは0〜5の整数である)
【請求項5】
(A)成分および/または(B)成分がシリコーン変性された樹脂を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のオーバーコート材。
【請求項6】
(D)熱伝導性充填材が、アルミニウム粉末、銅粉末、銀粉末、ニッケル粉末、金粉末、金属ケイ素粉末、アルミナ粉末、酸化亜鉛粉末、酸化マグネシウム粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ホウ素粉末、窒化珪素粉末、ダイヤモンド粉末、カーボン粉末、インジウム粉末、及びガリウム粉末から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオーバーコート材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のオーバーコート材で封止したパッケージを備える半導体装置。
【請求項8】
前記パッケージが半導体素子と該半導体素子を保持するキャリア基板とからなり、該キャリア基板の裏面と配線基板との隙間がアンダーフィル剤で封止されており、該パッケージの全面が請求項1〜6のいずれか1項に記載のオーバーコート材で封止されていることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−77098(P2012−77098A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204297(P2010−204297)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】