オーバーチューブ固定装置,固定部材および内視鏡
【目的】内視鏡の回転を確実にオーバーチューブ30に伝達する。
【構成】内視鏡の先端部14には固定部材20が固定されている。固定部材20の外周面には長手方向に凸部22が形成されている。オーバーチューブ30の挿通路31には長手方向に沿って所定の長さの溝32が形成されている。固定部材20が固定されている内視鏡の先端部14がオーバーチューブ30の挿通路31に挿通されると,内視鏡に固定されている固定部材20に形成されている凸部22がオーバーチューブ30の挿通路31に形成されている溝32に入り込む。内視鏡の先端部14が回転させられると,その回転力がオーバーチューブ30に確実に伝達される。
【構成】内視鏡の先端部14には固定部材20が固定されている。固定部材20の外周面には長手方向に凸部22が形成されている。オーバーチューブ30の挿通路31には長手方向に沿って所定の長さの溝32が形成されている。固定部材20が固定されている内視鏡の先端部14がオーバーチューブ30の挿通路31に挿通されると,内視鏡に固定されている固定部材20に形成されている凸部22がオーバーチューブ30の挿通路31に形成されている溝32に入り込む。内視鏡の先端部14が回転させられると,その回転力がオーバーチューブ30に確実に伝達される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は,オーバーチューブ固定装置,固定部材および内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の挿入部を体腔内に挿入するのに円筒状,かつ可撓性を有するオーバーチューブが内視鏡の挿入部に装着されることがある。オーバーチューブの径方向の厚みが異なる場合,オーバーチューブに曲がりぐせがある場合などには,オーバーチューブは可撓性のものであるから,体腔内でオーバーチューブを周方向に回転させようとしても滑らかに回転できずに急激に回転してしまうことがある。所望の角度だけオーバーチューブを回転させることができない。
【0003】
保護チューブにスリットを形成するとともに,内視鏡先端部に先端部に突起がついた螺旋状の連結部を巻きつけるものもある(特許文献1)。しかしながら,連結部に設けられている突起やスリットが体腔内部を傷つけてしまうおそれがある。また,内視鏡に設けられている回転つまみを回して内視鏡の挿入部は回転させられるが(特許文献2),内視鏡の挿入部の回転をオーバーチューブに伝達することは全く考えられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-262116号公報
【特許文献2】特開2009-50545号公報
【発明の概要】
【0005】
この発明は,オーバーチューブを所望の角度だけ回転させることができるようにすることを目的とする。
【0006】
第1の発明は,内部に内視鏡挿入部が挿入されるルーメンを有し,かつ可撓性を有するオーバーチューブを,内視鏡挿入部と係合させるためのオーバーチューブの固定装置であって,上記内視鏡挿入部の先端部の外周面に着脱自在に固定される固定部材を備え,上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のいずれか一方に凸部が形成され,上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のうち上記凸部が形成されていない,いずれか他方に上記凸部と係合する凹部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によると,内視鏡挿入部の先端部の外周面に固定部材が着脱自在に固定されている。オーバーチューブの先端部の内周面または固定部材の外周面のいずれか一方に凸部が形成され,オーバーチューブの先端部の内周面または固定部材の外周面のうち凸部が形成されていない,いずれか他方に凸部と係合する凹部が形成されている。凸部と凹部とが係合するので,オーバーチューブを内視鏡の挿入部に密着できる。内視鏡挿入部は,オーバーチューブに比べて硬いので基端側で周方向に回転させてもその回転力が先端部に伝わる。内視鏡挿入部を周方向に回転させることにより,その回転力をオーバーチューブに確実に伝達させることができ,オーバーチューブを所望の角度だけ回転させることができる。
【0008】
上記凸部がオーバーチューブの先端部の内周面に形成され,かつ上記凹部が上記固定部材の外周面に形成されていてもよいし,上記凸部が上記固定部材の外周面に形成され,かつ上記凹部が上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されていてもよい。
【0009】
上記固定部材が複数個あってもよい。これらの複数個の上記固定部材は,たとえば,上記内視鏡の挿入部の先端部に加えて先端部以外の挿入部の所定部分に着脱自在に固定されており, 上記オーバーチューブの内周面には,先端部に加えて上記所定部分に対応する部分に,複数の上記固定部材と係合する凹部または凸部が形成されているものである。
【0010】
上記オーバーチューブの径方向の厚肉部を挟んで,上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている上記凸部または上記凹部の反対側の部分に膨張収縮部材が設けられていてもよい。
【0011】
上記内視鏡の挿入部の先端面に鉗子口が形成されている場合には,鉗子口から上記内視鏡の先端面の中央に向かう延長線上の上記内視鏡の外周面に上記凸部または上記凹部が形成されていることが好ましい。
【0012】
上記オーバーチューブの先端部の内周面において,鉗子口から上記内視鏡の先端面の中央に向かう延長線上に上記凸部または上記凹部が形成されていることが好ましい。
【0013】
上記凸部と上記凹部とは離脱自在に係合することが好ましい。
【0014】
上記凸部と上記凹部とを係合させるガイド部が上記オーバーチューブおよび上記固定部材のいずれか一方に形成されていてもよい。
【0015】
また,上記固定部材の外周面に形成されている上記凸部または上記凹部が周方向に離間自在に固定されるものでもよい。
【0016】
第2の発明は,内部に内視鏡挿入部が挿入されるルーメンを有し,かつ可撓性を有するオーバーチューブを,内視鏡挿入部と係合させるための固定部材についてのものである。この固定部材は,上記内視鏡の挿入部の先端部の外周面に着脱自在に固定したときに,上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている凹部に係合する,外周面に形成された凸部,または上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている凸部に係合する,外周面に形成された凹部を備えている。
【0017】
このような固定部材を利用して内視鏡の挿入部とオーバーチューブとを密着でき,内視鏡の挿入部の回転力をオーバーチューブに伝達させることができる。
【0018】
第3の発明は,内部に内視鏡挿入部が挿入されるルーメンを有し,かつ可撓性を有するオーバーチューブが挿入部に装着される内視鏡であって,上記内視鏡の挿入部の先端部の外周面に固定部材が着脱自在に設けられており,上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のいずれか一方に凸部が形成され,上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のうち上記凸部が形成されていない,いずれか他方に上記凸部と係合する凹部が形成されており,上記凸部と上記凹部とが係合することによりオーバーチューブが挿入部に装着されるものである。
【0019】
オーバーチューブが内視鏡挿入部に密着されるので,内視鏡の挿入部の回転力をオーバーチューブに伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】内視鏡とオーバーチューブとを示している。
【図2】(A)はオーバーチューブを,(B)は固定部材が固定された内視鏡の先端部分を示している。
【図3】オーバーチューブの側面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図3のV−V線に沿う断面図である。
【図6】内視鏡の先端部分が挿入されたオーバーチューブの側面図である。
【図7】内視鏡の先端部分が挿入されたオーバーチューブの正面図である。
【図8】オーバーチューブの斜視図である。
【図9】固定部材が固定された内視鏡の挿入部分を示している。
【図10】(A)は,オーバーチューブを,(B)は固定部材が固定された内視鏡の先端部分を示している。
【図11】内視鏡の先端部分が挿入されたオーバーチューブの正面図である。
【図12】固定部材の斜視図である。
【図13】固定部材の斜視図である。
【実施例】
【0021】
図1は,この発明の実施例による内視鏡10とオーバーチューブ30とを示している。
【0022】
内視鏡10には,医師が操作する操作部11が含まれている。この操作部11から被験者の体内に挿入する円柱状かつ長尺状の挿入部15が伸びている。挿入部15には,軟性部12,湾曲部13および先端部14(内視鏡スコープ)が含まれている。先端部14の先端には後述するように,観察窓,光源窓,送水/送気口,鉗子口などが形成されている。光源窓から光源が照射され,観察窓から内視鏡スコープ内に設けられている固体電子撮像素子を用いて撮像される。送水/送気口からは観察窓に設けられているレンズを洗浄するための水,レンズについた水滴等を落とす空気が排出される。鉗子口からは鉗子チャネルが形成されており,鉗子チャネル内に三次元画像取得用プローブが入っている。
【0023】
オーバーチューブ30は,内視鏡10の挿入部15を挿通させて内視鏡10に装着するものである。
【0024】
オーバーチューブ30は,ポリウレタンなどを材料とし,円管状,かつ長尺状のもので,可撓性のものである。
【0025】
図2(A)は,オーバーチューブ30の先端部分を示し,図2(B)は,内視鏡10の挿入部の先端部14を示している。図3は,オーバーチューブ30の先端部分の側面図である。図4は,図3のIV−IV線に沿う断面図,図5は,図3のV−V線に沿う断面図である。
【0026】
主として図2(A),図3および図4に示すように,オーバーチューブ30には,内視鏡10の挿入部15が挿通するように長手方向に挿通路(ルーメン)31が形成されている。オーバーチューブ30の先端部分において,挿通路31の上部には,溝32が長手方向に沿って所定の長さだけ形成されている。図3および図5に示すように,溝32は基端側の部分において,挿通路31に向かって緩やかに傾斜している扇形のガイド部33が形成されている。
【0027】
また,オーバーチューブ30の先端部の上部には,径方向の厚肉部33を挟んで,溝32の反対側の部分に膨張および収縮自在なバルーン40が設けられている。
【0028】
図2(B)を参照して,内視鏡10の先端部14の外周には,円柱状の先端部14を囲むように円管状の固定部材20が嵌め込まれている。固定部材20の内周面21の内径は,先端部14の直径よりも少し小さい。したがって,固定部材20を内視鏡10の先端部14に嵌め込めることはできるが,容易には外れないように固定部材20が内視鏡10の先端部14の所望の位置に固定される。もちろん,固定部材20を内視鏡10の先端部14において先端側(左側)にある程度の力を用いてずらすことにより固定部材20は内視鏡10の先端部14に沿って移動し,内視鏡10から外すことができる。このように,固定部材20は,内視鏡10の先端部14から着脱自在に,先端部14に固定できる。この実施例における固定部材20は円管状に一体成型されているが,後述するように(図12,図13参照),一部が離間できるように構成されていてもよい。
【0029】
固定部材20の外周面には長手方向に沿って径方向に突出した凸部22が形成されている。
【0030】
内視鏡10の先端部14の先端面には,上述したように,送水/送気口16,観察窓17,光源用窓18およびプローブが進退自在に格納されている鉗子口19が形成されている。
【0031】
このように,内視鏡10の先端面には鉗子口19が形成されており,鉗子口19から内視鏡10の先端面の中央に向かう延長線上の内視鏡10の先端部14の外周上に凸部22が形成されていることとなる。
【0032】
図6は,内視鏡10の先端部14がオーバーチューブ30に挿入されている様子を示すオーバーチューブ30の側面図,図7は,内視鏡10の先端部14がオーバーチューブ30に挿入されている様子を示す正面図である。バルーン40は省略されている。
【0033】
固定部材20が装着されている内視鏡10の先端部14がオーバーチューブ30の挿通路31に挿通される。このために,挿通路31の内径は,固定部材20の外径とほぼ同じである。オーバーチューブ30は可撓性であるので,長径が溝32の部分に対応するようにオーバーチューブ30が先端面から見て楕円となるように潰すことにより挿通路31に内視鏡10の先端部14を挿通しやすくなる。
【0034】
内視鏡10の先端部14がオーバーチューブ30の挿通路31に挿通されると,オーバーチューブ30の内周面に形成されている溝32に固定部材20に形成されている凸部22が入り,オーバーチューブ30と固定部材20とが離脱自在に係合する。内視鏡10の先端部14を周方向に回転させると,その回転力が固定部材20の凸部22およびオーバーチューブ30の溝32を介してオーバーチューブ30に確実に伝達される。
【0035】
オーバーチューブ30の先端部の内周面(挿通路31)において,鉗子口19から内視鏡10の先端面の中央に向かう延長線上に溝32が形成されていることとなる。
【0036】
図8および図9は,他の実施例を示している。
【0037】
図8は,オーバーチューブ30Aを示している。
【0038】
オーバーチューブ30Aには,挿通路31Aの上部に先端側から基端側に向かって所定間隔ごとに複数の溝32A,32Bおよび32Cが形成されている。第1の溝32Aは,オーバーチューブ30Aの先端部に形成されている。第2の溝32Bは,第1の溝32Aよりも基端側に形成されている。第3の溝32Cは,第2の溝32Bよりもさらに基端側に形成されている。
【0039】
第1の溝32A,第2の溝32Bおよび第3の溝32Cのいずれも長手方向に所定の長さを有している。これらの溝32A,32Bおよび32Cのいずれにおいても,基端側には上述したように傾斜しているガイド部33A,33Bおよび33Cが形成されている。
【0040】
図9は,複数の固定部材20A,20Bおよび20Cが固定されている内視鏡10の挿入部15を示している。
【0041】
図9を参照して,内視鏡10の挿入部15には,先端部14から基端側に向かって所定間隔ごとに固定部材20A,20Bおよび20Cが固定されている。これらの固定部材20A,20Bおよび20Cは,オーバーチューブ30Aに形成されている溝32A,32Bおよび32Cの位置に対応して固定されている。
【0042】
第1の固定部材20Aは,内視鏡10の先端部14においてもっとも先端面の近くに固定されている。第2の固定部材20Bは,内視鏡10の挿入部15において第1の固定部材20Aよりも基端側に固定されている。第3の固定部材20Cは,内視鏡10の挿入部分において第2の固定部材20Bよりもさらに基端側に固定されている。
【0043】
第1の固定部材20A,第2の固定部材20Bおよび第3の固定部材20Cのそれぞれには,上述したように,径方向に突出している凸部22A,22Bおよび22Cが形成されている。これらの凸部22A,22Bおよび23Bが,鉗子口19から内視鏡10の挿入部15の先端面の中央に向かう延長線上となるように第1の固定部材20A,第2の固定部材20Bおよび第3の固定部材20Cが内視鏡10の挿入部15に固定されている。
【0044】
図9に示す内視鏡10の挿入部15が,図8に示すオーバーチューブ30Aに挿入されることにより,内視鏡10の挿入部15に固定されている第1の固定部材20Aの凸部22Aがオーバーチューブ30に形成されている第1の溝32Aに入る。同様に,第2の固定部材20Bの凸部22Bがオーバーチューブ30Aに形成されている第2の溝32Bに入り,第3の固定部材20Cの凸部22Cがオーバーチューブ30Aに形成されている第3の溝32Cに入る。凸部22Aと溝32A,凸部22Bと溝32Bおよび凸部22Cと溝32Cがそれぞれ係合する。内視鏡10の挿入部15とオーバーチューブ30Aとが先端部14だけでなく先端部14よりも基端側でも係合することとなるので,内視鏡10の挿入部15の基端側から挿入部分を回転させた場合であっても内視鏡10の挿入部15の回転力をオーバーチューブ30Aの全体に渡って伝達させることができる。
【0045】
図10(A)および図10(B)ならびに図11は,他の実施例を示している。
【0046】
図10(A)はオーバーチューブ50を示し,図10(B)は内視鏡10の先端部14を示している。
【0047】
図10(A)を参照して,オーバーチューブ50には内視鏡10の先端部14(挿入部15)を挿通する挿通路51が形成されている。挿通路51の上部には,長手方向に所定の長さをもち,かつ中心に向かって突出している凸部52が形成されている。また,オーバーチューブ50の外周面には径方向の厚肉部53を挟んで,オーバーチューブ50の内周面(挿通路51)に形成されている凸部52の反対側の部分にバルーン60が設けられている。
【0048】
図10(B)を参照して,内視鏡10の先端部14の周りには円管状の固定部材40が固定されている。固定部材40の外周面には長手方向に沿って溝42が形成されている。鉗子口19から内視鏡10の先端面の中央に向かう延長線上の内視鏡10の先端部14に溝42が位置決めされるように固定部材40が先端部14に固定されている。
【0049】
図11は,図10(A)に示すオーバーチューブ50に図10(B)に示す固定部材40が固定されている内視鏡10の先端部14が挿通されている様子を示す正面図である。バルーン60は省略されている。
【0050】
固定部材40が固定されている内視鏡10の先端部14がオーバーチューブ50の挿通路51に挿通されると,固定部材40に形成されている溝42に,挿通路51に形成されている凸部52が入る。オーバーチューブ50の挿通路51に形成されている凸部52と内視鏡10に固定されている固定部材40の溝42とが離脱自在に係合し,内視鏡10の挿入部分に与えられる回転力がオーバーチューブ50に伝達される。
【0051】
オーバーチューブ50の先端部の内周面(挿通路51)において,鉗子口19から内視鏡10の先端面の中央に向かう延長線上に凸部52が形成されていることとなる。
【0052】
図12および図13は,変形例を示している。
【0053】
図12は,固定部材60の斜視図である。
【0054】
固定部材60は上部において長手方向に切り分けられており,その上部の部分に互いに周方向に近接および離間自在である第1の凸部62Aおよび第2の凸部62Bが形成されている。第1の凸部62Aおよび第2の凸部62Bには対向する位置に穴63が開けられている。その穴63にネジ64が挿入されることにより,第1の凸部62Aと第2の凸部62Bとがネジ止めされる。もっとも,ネジ止めしなくとも第1の凸部62Aと第2の凸部62Bとを接着するようにしてもよい。
【0055】
第1の凸部62Aと第2の凸部62Bとが離れている状態で内視鏡10の挿入部の所望の位置に,内周面61が内視鏡10の挿入部分の外周に嵌め込められる。その位置でネジ止めすることにより,固定部材60が所望の位置に固定される。
【0056】
図13は,固定部材70の斜視図である。
【0057】
固定部材70においても,上部において長手方向に切り分けられており,その上部の部分に互いに周方向に近接および離間自在である第1の溝72Aおよび第2の溝72Bが形成している。第1の溝72Aの下部および第2の溝72Bの下部には,接したときに対向する密着面73Aおよび73Bが長手方向に沿って形成されている。
【0058】
固定部材70の外周面には,延長線上が密着面73Aおよび74Aとなる位置に穴74が形成されている。その穴74にネジ75が挿入されることにより,密着面73Aと73Bとが接し,第1の溝72Aと第2の溝73Bから一つの溝が形成される。もっとも,ネジ止めしなくとも密着面73Aと73Bとを接着するようにしてもよい。
【0059】
密着面73Aと73Bとが離れている状態で内視鏡10の挿入部の所望の位置に,内周面71が内視鏡10の挿入部分の外周に嵌め込められる。その位置でネジ止めすることにより,固定部材70が所望の位置に固定される。
【0060】
上述の実施例においては,凸部22,52,溝32,42などは,内視鏡10の挿入部15およびオーバーチューブ10の長手方向の長さの方が周方向の幅よりも長くなっているが,必ずしもそのように規定されていなくともよい。また,凸部22,52,溝32,42などは,それぞれの図面において上部にのみ形成されているが,上部だけでなく下部にも形成するようにしてもよい。
【0061】
図3および図5に示すガイド部33は,溝32に形成されているが,図10(B)に示す固定部材40に形成されている溝42に形成されていてもよい。溝42にガイド部が形成される場合には,先端側に向かって溝の幅が広がるようになろう。また,ガイド部は溝32または溝42に形成するのではなく,図2(B)に示す凸部22または図10(A)に示す凸部52に形成されていてもよい。図2(B)に示す凸部22または図10(A)に示す凸部52にガイド部が形成される場合には,そのガイド部は,図2(B)に示す凸部22では先端側となるほど幅が狭くなるものとなり,図10(A)に示す凸部52では基端側となるほど幅が狭くなるものとなろう。
【符号の説明】
【0062】
10 内視鏡
20 固定部材
22 凸部
30 オーバーチューブ
31 挿通路
32 溝(凹部)
【技術分野】
【0001】
この発明は,オーバーチューブ固定装置,固定部材および内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の挿入部を体腔内に挿入するのに円筒状,かつ可撓性を有するオーバーチューブが内視鏡の挿入部に装着されることがある。オーバーチューブの径方向の厚みが異なる場合,オーバーチューブに曲がりぐせがある場合などには,オーバーチューブは可撓性のものであるから,体腔内でオーバーチューブを周方向に回転させようとしても滑らかに回転できずに急激に回転してしまうことがある。所望の角度だけオーバーチューブを回転させることができない。
【0003】
保護チューブにスリットを形成するとともに,内視鏡先端部に先端部に突起がついた螺旋状の連結部を巻きつけるものもある(特許文献1)。しかしながら,連結部に設けられている突起やスリットが体腔内部を傷つけてしまうおそれがある。また,内視鏡に設けられている回転つまみを回して内視鏡の挿入部は回転させられるが(特許文献2),内視鏡の挿入部の回転をオーバーチューブに伝達することは全く考えられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-262116号公報
【特許文献2】特開2009-50545号公報
【発明の概要】
【0005】
この発明は,オーバーチューブを所望の角度だけ回転させることができるようにすることを目的とする。
【0006】
第1の発明は,内部に内視鏡挿入部が挿入されるルーメンを有し,かつ可撓性を有するオーバーチューブを,内視鏡挿入部と係合させるためのオーバーチューブの固定装置であって,上記内視鏡挿入部の先端部の外周面に着脱自在に固定される固定部材を備え,上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のいずれか一方に凸部が形成され,上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のうち上記凸部が形成されていない,いずれか他方に上記凸部と係合する凹部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によると,内視鏡挿入部の先端部の外周面に固定部材が着脱自在に固定されている。オーバーチューブの先端部の内周面または固定部材の外周面のいずれか一方に凸部が形成され,オーバーチューブの先端部の内周面または固定部材の外周面のうち凸部が形成されていない,いずれか他方に凸部と係合する凹部が形成されている。凸部と凹部とが係合するので,オーバーチューブを内視鏡の挿入部に密着できる。内視鏡挿入部は,オーバーチューブに比べて硬いので基端側で周方向に回転させてもその回転力が先端部に伝わる。内視鏡挿入部を周方向に回転させることにより,その回転力をオーバーチューブに確実に伝達させることができ,オーバーチューブを所望の角度だけ回転させることができる。
【0008】
上記凸部がオーバーチューブの先端部の内周面に形成され,かつ上記凹部が上記固定部材の外周面に形成されていてもよいし,上記凸部が上記固定部材の外周面に形成され,かつ上記凹部が上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されていてもよい。
【0009】
上記固定部材が複数個あってもよい。これらの複数個の上記固定部材は,たとえば,上記内視鏡の挿入部の先端部に加えて先端部以外の挿入部の所定部分に着脱自在に固定されており, 上記オーバーチューブの内周面には,先端部に加えて上記所定部分に対応する部分に,複数の上記固定部材と係合する凹部または凸部が形成されているものである。
【0010】
上記オーバーチューブの径方向の厚肉部を挟んで,上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている上記凸部または上記凹部の反対側の部分に膨張収縮部材が設けられていてもよい。
【0011】
上記内視鏡の挿入部の先端面に鉗子口が形成されている場合には,鉗子口から上記内視鏡の先端面の中央に向かう延長線上の上記内視鏡の外周面に上記凸部または上記凹部が形成されていることが好ましい。
【0012】
上記オーバーチューブの先端部の内周面において,鉗子口から上記内視鏡の先端面の中央に向かう延長線上に上記凸部または上記凹部が形成されていることが好ましい。
【0013】
上記凸部と上記凹部とは離脱自在に係合することが好ましい。
【0014】
上記凸部と上記凹部とを係合させるガイド部が上記オーバーチューブおよび上記固定部材のいずれか一方に形成されていてもよい。
【0015】
また,上記固定部材の外周面に形成されている上記凸部または上記凹部が周方向に離間自在に固定されるものでもよい。
【0016】
第2の発明は,内部に内視鏡挿入部が挿入されるルーメンを有し,かつ可撓性を有するオーバーチューブを,内視鏡挿入部と係合させるための固定部材についてのものである。この固定部材は,上記内視鏡の挿入部の先端部の外周面に着脱自在に固定したときに,上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている凹部に係合する,外周面に形成された凸部,または上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている凸部に係合する,外周面に形成された凹部を備えている。
【0017】
このような固定部材を利用して内視鏡の挿入部とオーバーチューブとを密着でき,内視鏡の挿入部の回転力をオーバーチューブに伝達させることができる。
【0018】
第3の発明は,内部に内視鏡挿入部が挿入されるルーメンを有し,かつ可撓性を有するオーバーチューブが挿入部に装着される内視鏡であって,上記内視鏡の挿入部の先端部の外周面に固定部材が着脱自在に設けられており,上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のいずれか一方に凸部が形成され,上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のうち上記凸部が形成されていない,いずれか他方に上記凸部と係合する凹部が形成されており,上記凸部と上記凹部とが係合することによりオーバーチューブが挿入部に装着されるものである。
【0019】
オーバーチューブが内視鏡挿入部に密着されるので,内視鏡の挿入部の回転力をオーバーチューブに伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】内視鏡とオーバーチューブとを示している。
【図2】(A)はオーバーチューブを,(B)は固定部材が固定された内視鏡の先端部分を示している。
【図3】オーバーチューブの側面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図3のV−V線に沿う断面図である。
【図6】内視鏡の先端部分が挿入されたオーバーチューブの側面図である。
【図7】内視鏡の先端部分が挿入されたオーバーチューブの正面図である。
【図8】オーバーチューブの斜視図である。
【図9】固定部材が固定された内視鏡の挿入部分を示している。
【図10】(A)は,オーバーチューブを,(B)は固定部材が固定された内視鏡の先端部分を示している。
【図11】内視鏡の先端部分が挿入されたオーバーチューブの正面図である。
【図12】固定部材の斜視図である。
【図13】固定部材の斜視図である。
【実施例】
【0021】
図1は,この発明の実施例による内視鏡10とオーバーチューブ30とを示している。
【0022】
内視鏡10には,医師が操作する操作部11が含まれている。この操作部11から被験者の体内に挿入する円柱状かつ長尺状の挿入部15が伸びている。挿入部15には,軟性部12,湾曲部13および先端部14(内視鏡スコープ)が含まれている。先端部14の先端には後述するように,観察窓,光源窓,送水/送気口,鉗子口などが形成されている。光源窓から光源が照射され,観察窓から内視鏡スコープ内に設けられている固体電子撮像素子を用いて撮像される。送水/送気口からは観察窓に設けられているレンズを洗浄するための水,レンズについた水滴等を落とす空気が排出される。鉗子口からは鉗子チャネルが形成されており,鉗子チャネル内に三次元画像取得用プローブが入っている。
【0023】
オーバーチューブ30は,内視鏡10の挿入部15を挿通させて内視鏡10に装着するものである。
【0024】
オーバーチューブ30は,ポリウレタンなどを材料とし,円管状,かつ長尺状のもので,可撓性のものである。
【0025】
図2(A)は,オーバーチューブ30の先端部分を示し,図2(B)は,内視鏡10の挿入部の先端部14を示している。図3は,オーバーチューブ30の先端部分の側面図である。図4は,図3のIV−IV線に沿う断面図,図5は,図3のV−V線に沿う断面図である。
【0026】
主として図2(A),図3および図4に示すように,オーバーチューブ30には,内視鏡10の挿入部15が挿通するように長手方向に挿通路(ルーメン)31が形成されている。オーバーチューブ30の先端部分において,挿通路31の上部には,溝32が長手方向に沿って所定の長さだけ形成されている。図3および図5に示すように,溝32は基端側の部分において,挿通路31に向かって緩やかに傾斜している扇形のガイド部33が形成されている。
【0027】
また,オーバーチューブ30の先端部の上部には,径方向の厚肉部33を挟んで,溝32の反対側の部分に膨張および収縮自在なバルーン40が設けられている。
【0028】
図2(B)を参照して,内視鏡10の先端部14の外周には,円柱状の先端部14を囲むように円管状の固定部材20が嵌め込まれている。固定部材20の内周面21の内径は,先端部14の直径よりも少し小さい。したがって,固定部材20を内視鏡10の先端部14に嵌め込めることはできるが,容易には外れないように固定部材20が内視鏡10の先端部14の所望の位置に固定される。もちろん,固定部材20を内視鏡10の先端部14において先端側(左側)にある程度の力を用いてずらすことにより固定部材20は内視鏡10の先端部14に沿って移動し,内視鏡10から外すことができる。このように,固定部材20は,内視鏡10の先端部14から着脱自在に,先端部14に固定できる。この実施例における固定部材20は円管状に一体成型されているが,後述するように(図12,図13参照),一部が離間できるように構成されていてもよい。
【0029】
固定部材20の外周面には長手方向に沿って径方向に突出した凸部22が形成されている。
【0030】
内視鏡10の先端部14の先端面には,上述したように,送水/送気口16,観察窓17,光源用窓18およびプローブが進退自在に格納されている鉗子口19が形成されている。
【0031】
このように,内視鏡10の先端面には鉗子口19が形成されており,鉗子口19から内視鏡10の先端面の中央に向かう延長線上の内視鏡10の先端部14の外周上に凸部22が形成されていることとなる。
【0032】
図6は,内視鏡10の先端部14がオーバーチューブ30に挿入されている様子を示すオーバーチューブ30の側面図,図7は,内視鏡10の先端部14がオーバーチューブ30に挿入されている様子を示す正面図である。バルーン40は省略されている。
【0033】
固定部材20が装着されている内視鏡10の先端部14がオーバーチューブ30の挿通路31に挿通される。このために,挿通路31の内径は,固定部材20の外径とほぼ同じである。オーバーチューブ30は可撓性であるので,長径が溝32の部分に対応するようにオーバーチューブ30が先端面から見て楕円となるように潰すことにより挿通路31に内視鏡10の先端部14を挿通しやすくなる。
【0034】
内視鏡10の先端部14がオーバーチューブ30の挿通路31に挿通されると,オーバーチューブ30の内周面に形成されている溝32に固定部材20に形成されている凸部22が入り,オーバーチューブ30と固定部材20とが離脱自在に係合する。内視鏡10の先端部14を周方向に回転させると,その回転力が固定部材20の凸部22およびオーバーチューブ30の溝32を介してオーバーチューブ30に確実に伝達される。
【0035】
オーバーチューブ30の先端部の内周面(挿通路31)において,鉗子口19から内視鏡10の先端面の中央に向かう延長線上に溝32が形成されていることとなる。
【0036】
図8および図9は,他の実施例を示している。
【0037】
図8は,オーバーチューブ30Aを示している。
【0038】
オーバーチューブ30Aには,挿通路31Aの上部に先端側から基端側に向かって所定間隔ごとに複数の溝32A,32Bおよび32Cが形成されている。第1の溝32Aは,オーバーチューブ30Aの先端部に形成されている。第2の溝32Bは,第1の溝32Aよりも基端側に形成されている。第3の溝32Cは,第2の溝32Bよりもさらに基端側に形成されている。
【0039】
第1の溝32A,第2の溝32Bおよび第3の溝32Cのいずれも長手方向に所定の長さを有している。これらの溝32A,32Bおよび32Cのいずれにおいても,基端側には上述したように傾斜しているガイド部33A,33Bおよび33Cが形成されている。
【0040】
図9は,複数の固定部材20A,20Bおよび20Cが固定されている内視鏡10の挿入部15を示している。
【0041】
図9を参照して,内視鏡10の挿入部15には,先端部14から基端側に向かって所定間隔ごとに固定部材20A,20Bおよび20Cが固定されている。これらの固定部材20A,20Bおよび20Cは,オーバーチューブ30Aに形成されている溝32A,32Bおよび32Cの位置に対応して固定されている。
【0042】
第1の固定部材20Aは,内視鏡10の先端部14においてもっとも先端面の近くに固定されている。第2の固定部材20Bは,内視鏡10の挿入部15において第1の固定部材20Aよりも基端側に固定されている。第3の固定部材20Cは,内視鏡10の挿入部分において第2の固定部材20Bよりもさらに基端側に固定されている。
【0043】
第1の固定部材20A,第2の固定部材20Bおよび第3の固定部材20Cのそれぞれには,上述したように,径方向に突出している凸部22A,22Bおよび22Cが形成されている。これらの凸部22A,22Bおよび23Bが,鉗子口19から内視鏡10の挿入部15の先端面の中央に向かう延長線上となるように第1の固定部材20A,第2の固定部材20Bおよび第3の固定部材20Cが内視鏡10の挿入部15に固定されている。
【0044】
図9に示す内視鏡10の挿入部15が,図8に示すオーバーチューブ30Aに挿入されることにより,内視鏡10の挿入部15に固定されている第1の固定部材20Aの凸部22Aがオーバーチューブ30に形成されている第1の溝32Aに入る。同様に,第2の固定部材20Bの凸部22Bがオーバーチューブ30Aに形成されている第2の溝32Bに入り,第3の固定部材20Cの凸部22Cがオーバーチューブ30Aに形成されている第3の溝32Cに入る。凸部22Aと溝32A,凸部22Bと溝32Bおよび凸部22Cと溝32Cがそれぞれ係合する。内視鏡10の挿入部15とオーバーチューブ30Aとが先端部14だけでなく先端部14よりも基端側でも係合することとなるので,内視鏡10の挿入部15の基端側から挿入部分を回転させた場合であっても内視鏡10の挿入部15の回転力をオーバーチューブ30Aの全体に渡って伝達させることができる。
【0045】
図10(A)および図10(B)ならびに図11は,他の実施例を示している。
【0046】
図10(A)はオーバーチューブ50を示し,図10(B)は内視鏡10の先端部14を示している。
【0047】
図10(A)を参照して,オーバーチューブ50には内視鏡10の先端部14(挿入部15)を挿通する挿通路51が形成されている。挿通路51の上部には,長手方向に所定の長さをもち,かつ中心に向かって突出している凸部52が形成されている。また,オーバーチューブ50の外周面には径方向の厚肉部53を挟んで,オーバーチューブ50の内周面(挿通路51)に形成されている凸部52の反対側の部分にバルーン60が設けられている。
【0048】
図10(B)を参照して,内視鏡10の先端部14の周りには円管状の固定部材40が固定されている。固定部材40の外周面には長手方向に沿って溝42が形成されている。鉗子口19から内視鏡10の先端面の中央に向かう延長線上の内視鏡10の先端部14に溝42が位置決めされるように固定部材40が先端部14に固定されている。
【0049】
図11は,図10(A)に示すオーバーチューブ50に図10(B)に示す固定部材40が固定されている内視鏡10の先端部14が挿通されている様子を示す正面図である。バルーン60は省略されている。
【0050】
固定部材40が固定されている内視鏡10の先端部14がオーバーチューブ50の挿通路51に挿通されると,固定部材40に形成されている溝42に,挿通路51に形成されている凸部52が入る。オーバーチューブ50の挿通路51に形成されている凸部52と内視鏡10に固定されている固定部材40の溝42とが離脱自在に係合し,内視鏡10の挿入部分に与えられる回転力がオーバーチューブ50に伝達される。
【0051】
オーバーチューブ50の先端部の内周面(挿通路51)において,鉗子口19から内視鏡10の先端面の中央に向かう延長線上に凸部52が形成されていることとなる。
【0052】
図12および図13は,変形例を示している。
【0053】
図12は,固定部材60の斜視図である。
【0054】
固定部材60は上部において長手方向に切り分けられており,その上部の部分に互いに周方向に近接および離間自在である第1の凸部62Aおよび第2の凸部62Bが形成されている。第1の凸部62Aおよび第2の凸部62Bには対向する位置に穴63が開けられている。その穴63にネジ64が挿入されることにより,第1の凸部62Aと第2の凸部62Bとがネジ止めされる。もっとも,ネジ止めしなくとも第1の凸部62Aと第2の凸部62Bとを接着するようにしてもよい。
【0055】
第1の凸部62Aと第2の凸部62Bとが離れている状態で内視鏡10の挿入部の所望の位置に,内周面61が内視鏡10の挿入部分の外周に嵌め込められる。その位置でネジ止めすることにより,固定部材60が所望の位置に固定される。
【0056】
図13は,固定部材70の斜視図である。
【0057】
固定部材70においても,上部において長手方向に切り分けられており,その上部の部分に互いに周方向に近接および離間自在である第1の溝72Aおよび第2の溝72Bが形成している。第1の溝72Aの下部および第2の溝72Bの下部には,接したときに対向する密着面73Aおよび73Bが長手方向に沿って形成されている。
【0058】
固定部材70の外周面には,延長線上が密着面73Aおよび74Aとなる位置に穴74が形成されている。その穴74にネジ75が挿入されることにより,密着面73Aと73Bとが接し,第1の溝72Aと第2の溝73Bから一つの溝が形成される。もっとも,ネジ止めしなくとも密着面73Aと73Bとを接着するようにしてもよい。
【0059】
密着面73Aと73Bとが離れている状態で内視鏡10の挿入部の所望の位置に,内周面71が内視鏡10の挿入部分の外周に嵌め込められる。その位置でネジ止めすることにより,固定部材70が所望の位置に固定される。
【0060】
上述の実施例においては,凸部22,52,溝32,42などは,内視鏡10の挿入部15およびオーバーチューブ10の長手方向の長さの方が周方向の幅よりも長くなっているが,必ずしもそのように規定されていなくともよい。また,凸部22,52,溝32,42などは,それぞれの図面において上部にのみ形成されているが,上部だけでなく下部にも形成するようにしてもよい。
【0061】
図3および図5に示すガイド部33は,溝32に形成されているが,図10(B)に示す固定部材40に形成されている溝42に形成されていてもよい。溝42にガイド部が形成される場合には,先端側に向かって溝の幅が広がるようになろう。また,ガイド部は溝32または溝42に形成するのではなく,図2(B)に示す凸部22または図10(A)に示す凸部52に形成されていてもよい。図2(B)に示す凸部22または図10(A)に示す凸部52にガイド部が形成される場合には,そのガイド部は,図2(B)に示す凸部22では先端側となるほど幅が狭くなるものとなり,図10(A)に示す凸部52では基端側となるほど幅が狭くなるものとなろう。
【符号の説明】
【0062】
10 内視鏡
20 固定部材
22 凸部
30 オーバーチューブ
31 挿通路
32 溝(凹部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に内視鏡挿入部が挿入されるルーメンを有し,かつ可撓性を有するオーバーチューブを,内視鏡挿入部と係合させるためのオーバーチューブの固定装置であって,
上記内視鏡の挿入部の先端部の外周面に着脱自在に固定される固定部材を備え,
上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のいずれか一方に凸部が形成され,
上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のうち上記凸部が形成されていない,いずれか他方に上記凸部と係合する凹部が形成されている,
オーバーチューブ固定装置。
【請求項2】
上記凸部がオーバーチューブの先端部の内周面に形成され,かつ上記凹部が上記固定部材の外周面に形成されている,
請求項1に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項3】
上記凸部が上記固定部材の外周面に形成され,かつ上記凹部が上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている,
請求項1に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項4】
上記固定部材が複数個あり,これらの複数個の上記固定部材が,
上記内視鏡の挿入部の先端部に加えて先端部以外の挿入部の所定部分に着脱自在に固定されており,
上記オーバーチューブの内周面には,先端部に加えて上記所定部分に対応する部分に,複数の上記固定部材と係合する凹部または凸部が形成されている,
請求項1から3のうち,いずれか一項に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項5】
上記オーバーチューブの径方向の厚肉部を挟んで,上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている上記凸部または上記凹部の反対側の部分に膨張収縮部材が設けられている,
請求項1から4のうち,いずれか一項に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項6】
上記内視鏡の挿入部の先端面には鉗子口が形成されており,鉗子口から上記内視鏡の先端面の中央に向かう延長線上の上記内視鏡の外周面に上記凸部または上記凹部が形成されている,
請求項1から5のうち,いずれか一項に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項7】
上記オーバーチューブの先端部の内周面において,鉗子口から上記内視鏡の先端面の中央に向かう延長線上に上記凸部または上記凹部が形成されている,
請求項6に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項8】
上記凸部と上記凹部とは離脱自在に係合する請求項1から7のうち,いずれか一項に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項9】
上記凸部と上記凹部とを係合させるガイド部が上記オーバーチューブおよび上記固定部材のいずれか一方に形成されている,請求項1から8のうち,いずれか一項に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項10】
上記固定部材の外周面に形成されている上記凸部または上記凹部が周方向に離間自在に固定されるものである,請求項1から9のうち,いずれか一項に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項11】
内部に内視鏡挿入部が挿入されるルーメンを有し,かつ可撓性を有するオーバーチューブを,内視鏡挿入部と係合させるための固定部材であって,
上記内視鏡の挿入部の先端部の外周面に着脱自在に固定したときに,上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている凹部に係合する,外周面に形成された凸部,または上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている凸部に係合する,外周面に形成された凹部,
を備えた固定部材。
【請求項12】
内部に内視鏡挿入部が挿入されるルーメンを有し,かつ可撓性を有するオーバーチューブが挿入部に装着される内視鏡であって,
上記内視鏡の挿入部の先端部の外周面に固定部材が着脱自在に設けられており,
上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のいずれか一方に凸部が形成され,
上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のうち上記凸部が形成されていない,いずれか他方に上記凸部と係合する凹部が形成されており,
上記凸部と上記凹部とが係合することによりオーバーチューブが挿入部に装着される,
内視鏡。
【請求項1】
内部に内視鏡挿入部が挿入されるルーメンを有し,かつ可撓性を有するオーバーチューブを,内視鏡挿入部と係合させるためのオーバーチューブの固定装置であって,
上記内視鏡の挿入部の先端部の外周面に着脱自在に固定される固定部材を備え,
上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のいずれか一方に凸部が形成され,
上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のうち上記凸部が形成されていない,いずれか他方に上記凸部と係合する凹部が形成されている,
オーバーチューブ固定装置。
【請求項2】
上記凸部がオーバーチューブの先端部の内周面に形成され,かつ上記凹部が上記固定部材の外周面に形成されている,
請求項1に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項3】
上記凸部が上記固定部材の外周面に形成され,かつ上記凹部が上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている,
請求項1に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項4】
上記固定部材が複数個あり,これらの複数個の上記固定部材が,
上記内視鏡の挿入部の先端部に加えて先端部以外の挿入部の所定部分に着脱自在に固定されており,
上記オーバーチューブの内周面には,先端部に加えて上記所定部分に対応する部分に,複数の上記固定部材と係合する凹部または凸部が形成されている,
請求項1から3のうち,いずれか一項に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項5】
上記オーバーチューブの径方向の厚肉部を挟んで,上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている上記凸部または上記凹部の反対側の部分に膨張収縮部材が設けられている,
請求項1から4のうち,いずれか一項に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項6】
上記内視鏡の挿入部の先端面には鉗子口が形成されており,鉗子口から上記内視鏡の先端面の中央に向かう延長線上の上記内視鏡の外周面に上記凸部または上記凹部が形成されている,
請求項1から5のうち,いずれか一項に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項7】
上記オーバーチューブの先端部の内周面において,鉗子口から上記内視鏡の先端面の中央に向かう延長線上に上記凸部または上記凹部が形成されている,
請求項6に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項8】
上記凸部と上記凹部とは離脱自在に係合する請求項1から7のうち,いずれか一項に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項9】
上記凸部と上記凹部とを係合させるガイド部が上記オーバーチューブおよび上記固定部材のいずれか一方に形成されている,請求項1から8のうち,いずれか一項に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項10】
上記固定部材の外周面に形成されている上記凸部または上記凹部が周方向に離間自在に固定されるものである,請求項1から9のうち,いずれか一項に記載のオーバーチューブ固定装置。
【請求項11】
内部に内視鏡挿入部が挿入されるルーメンを有し,かつ可撓性を有するオーバーチューブを,内視鏡挿入部と係合させるための固定部材であって,
上記内視鏡の挿入部の先端部の外周面に着脱自在に固定したときに,上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている凹部に係合する,外周面に形成された凸部,または上記オーバーチューブの先端部の内周面に形成されている凸部に係合する,外周面に形成された凹部,
を備えた固定部材。
【請求項12】
内部に内視鏡挿入部が挿入されるルーメンを有し,かつ可撓性を有するオーバーチューブが挿入部に装着される内視鏡であって,
上記内視鏡の挿入部の先端部の外周面に固定部材が着脱自在に設けられており,
上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のいずれか一方に凸部が形成され,
上記オーバーチューブの先端部の内周面または上記固定部材の外周面のうち上記凸部が形成されていない,いずれか他方に上記凸部と係合する凹部が形成されており,
上記凸部と上記凹部とが係合することによりオーバーチューブが挿入部に装着される,
内視鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−192029(P2012−192029A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58001(P2011−58001)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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