説明

オーバープリントカード

【課題】内部に存在する磁気層やICチップ等を外部から目視できないようにするための隠蔽層と白色層等のオーバープリント層を有し、白色層の層厚を厚くすることなく、白色度と輝度を共に向上できるようにしたオーバープリントカードの提供を課題とする。
【解決手段】カード基材上に、隠蔽層と白色層と表面保護層とがこの相対的順序で少なくとも積層されてなるオーバープリントカードであって、白色層には白色顔料と白色度を向上させるための微細フィラーが含まれていると共に、表面保護層の表面には光の散乱を促進させるための微細凹凸が設けられていることを特徴とするオーバープリントカード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に存在する磁気層やICチップ等を外部から目視できないようにするための隠蔽層と白色層等のオーバープリント層を有するオーバープリントカードに関する。
【背景技術】
【0002】
オーバープリントカードにおける白色層の形成には、例えば、溶剤蒸発型白インキが使用されている。そして、その白インキ中には白色顔料としてルチルやアナターゼ型の二酸化チタンが用いられている。また、二酸化チタンにはAl、Zn、Si等の表面処理が施されていることが一般的である。
【0003】
このような白インキを用いて形成する白色層の白色度や鮮明度を高めるには、白インキ中の白色顔料の含有量を高めることが考えられるが、含有量が多くなるにつれて、インキの流動性が悪くなったり、保存中に沈殿、分離等が生じ易くなって貯蔵安定性が損なわれ易くなってしまう。
また、白色顔料の含有量を高めることによりインキ中の樹脂バインダーの含有割合が低下すると、白インキからなる被膜の凝集力が著しく低下してしまい、得られる白色層の剥離や割れ(クラック)、白色層の耐摩耗性や耐水性の低下等が起き易くなってしまうため、白色顔料の含有量を高くするには限界がある。
【0004】
一方、最近のオーバープリントカードには、内部の磁気層やICチップ等の存在が分からないようにすることは無論のこと、より白さを追求することや、より明るさを追及すること等の要求が増える傾向にある。これらの要求を満足させるためには、白色層の膜厚を厚くする必要がある。しかしながら、例えば、内部に磁気層を有するオーバープリントカードにおいては、その磁気層上に設けることのできる非磁性タイプの隠蔽層や白色層の膜厚は、磁気ストライプの性能によって決まってしまうため、磁気層上に設けることのできるこれらの層の厚みには限界があり、白色度の向上のみを目的として層厚をあまり厚く設定することはできない。
【0005】
このような状況の下、特許文献1では、カードの樹脂基材の面を所定の粗さにマット加工することにより、内部のICチップ等の存在を分からなくなるようにするための提案がなされている。また、特許文献2では、隠蔽層の表面を細かく荒らしたり、粒子を分散したプラスチック材料を塗布して粗い面を作っておくことにより、白色の隠蔽層を得るようにした提案がなされている。しかしながら、これらの提案によれば、内部のICチップ等の存在を分かり難くできたり、白色の隠蔽層を設けることができるようにはなるが、白色度と輝度を白色層の厚さを厚くすることなく向上できるものではなく、最近のオーバープリントカードにおける如上のような要求を満足させるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−71244号公報
【特許文献2】特開2001−341476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は従来技術のこのような問題を解決するためになされたものであり、オーバープリントカードを構成する白色層の層厚を厚くすることなく、白色度と輝度を共に向上できるようにしたオーバープリントカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされ、請求項1記載の発明は、カード基材上に、隠蔽層と白色層と表面保護層とがこの相対的順序で少なくとも積層されてなるオーバープリントカードであって、白色層には白色顔料と白色度を向上させるための微細フィラーが含まれていると共に、表面保護層の表面には光の散乱を促進させるための微細凹凸が設けられていることを特徴とするオーバープリントカードである。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のオーバープリントカードにおいて、前記白色層には白色顔料である酸化チタン微粒子と微細フィラーであるシリカ微粒子が含まれていることを特徴とする。
【0010】
さらにまた、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のオーバープリントカードにおいて、前記白色層には粒径が0.5〜10μmのシリカ微粒子が3.0〜10重量%の割合で含まれていることを特徴とする。
【0011】
さらにまた、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のオーバープリントカードにおいて、前記表面保護層の微細凹凸は算術平均粗さが0.2〜1.5μmであることを特徴とする。
【0012】
さらにまた、請求項5記載の発明は、請求項1乃至4記載のいずれかに記載のオーバープリントカードにおいて、前記隠蔽層により磁気記録層が目視不可能な状態で覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のオーバープリントカードは、カード基材上に、隠蔽層と白色層と表面保護層とがこの相対的順序で少なくとも積層されていて、白色層には白色顔料と白色度を向上させるための微細フィラーが含まれていると共に、表面保護層の表面には光の散乱を促進させるための微細凹凸が設けられているので、白色層をそれ程厚くすることなく、白色度並びに輝度を共に高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のオーバープリントカードの概略の断面構成を示す説明図である。
【図2】従来のオーバープリントカードの概略の断面構成を示す説明図である。
【図3】従来のオーバープリントカードと本発明のオーバープリントカードにおける白色層と隠蔽層の構造と光の散乱の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして説明する。図1は本発明のオーバープリントカードの概略の断面構成を示している。図示されているように、本発明のオーバープリントカードは、カード基材1上に、隠蔽層3と白色層4と表面保護層6とがこの相対的順序で積層されてなるオーバープリントカードであって、白色層4には白色顔料と白色度を向上させるための微細フィラーが含まれていると共に、表面保護層6の表面には光の散乱を促進させるための微細凹凸が設けられている。
図中、2はオーバーシート層、7は磁気層、5は絵柄層をそれぞれ示している。
【0016】
一方、図2には、従来のオーバープリントカードの概略の断面構成が示してある。このオーバープリントカードは、カード基材21の上に、磁気層27が一部に埋設されているオーバーシート層22と隠蔽層23と白色層24と絵柄層25と表面保護層26とが順次積層されている点で、図1に示すオーバープリントカードと略同じ構成となっているが、
白色層と表面保護層の構成が全く異なっている。
すなわち、白色層24には白色顔料は含んでいるが、白色度を向上させるための微細フィラーは含まれていないと共に、表面保護層26の表面は光輝度を出すためにグロス処理が施されていて、平滑になっている。
【0017】
上述したような構成の本発明に係るオーバープリントカードの一部を構成するカード基材1としては、ポリエステル樹脂、アクリロニトリブタジエンスチレン共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トリアセテート、ポリアミド等の樹脂からなる基材が用いられる。
【0018】
一方、隠蔽層3は、下部に位置するオーバーシート層2の一部に埋設されている磁気層7を目視不可能となるように隠蔽するための層である。この隠蔽層3は、例えば、蒸着アルミニウム箔を粉砕した、厚みが1.0〜2.0μm程度で、平均粒径(本明細書では、微粒粉末を平面的に投影した際の大きさをいい、球状粒子の径であることを意味しない。)が6.0〜8.0μm程度のアルミニウム粉末に樹脂をコーティングしてなるノンフィーリングタイプの顔料を樹脂バインダー中に混練してなる隠蔽性インキを用い、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の印刷方式により設けることができる。
【0019】
隠蔽性インキの樹脂バインダーとしては、ポリ酢酸ビニルとその共重合樹脂、エチレン−酢酸共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、環化ゴム系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸樹脂等の熱硬化型樹脂や、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。これらの中から、一種あるいは二種以上を適宜に組み合わせて用いるようにすればよい。
これらの中では、インキのビヒクル、色料、助剤等との相溶性や隣接する層との密着性を考慮すると、ポリ酢酸ビニルとその共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂が好ましく用いられる。
【0020】
この隠蔽層3は上述したような組成の隠蔽性インキを用い、上述した各種印刷方式により直接設けるようにしてもよいが、転写フィルムを使用して転写方式により設けるようにしてもよい。転写方式によりこの隠蔽層3を設けるに当たっては、後述する白色層4や絵柄層5も転写層として有する転写フィルムを用い、一回の転写で隠蔽層3と白色層4と絵柄層5を設けるようにしてもよい。この隠蔽層3の層厚は1.5〜2.0μm程度であればよい。
【0021】
このような隠蔽層3上に設けられている白色層4には、白色顔料と白色度を向上させるための微細フィラーが含まれている。
そしてこのような白色層4は、例えば、ルチルやアナターゼ型の二酸化チタン等の白色顔料と、シリカ微粒子に代表される微細フィラーが混練されてなる溶剤蒸発型白インキを用い、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の印刷方式により設けることができる。この白色層4も前記した隠蔽層3と同様に、転写フィルムを用いて転写方式により設けるようにしてもよい。また、白色層4と絵柄層5を同時に転写方式で設けるようにしてもよい。
【0022】
上記した白インキ中のルチンや酸化チタン等の白色顔料の粒径は、0.03〜0.3μm程度が好ましいが、分散性や耐候性を考慮すると0.05〜0.1μm程度がより好ましい。さらに、酸化チタンの場合は、Al、Zn、Si等で表面処理が施されているもの、中でもAl(OH)、ZnO/Al(OH)により表面処理が施されたものが樹脂バインダーと良好な親和性を示すため好ましく用いられる。
【0023】
また、樹脂バインダーとしては、ポリ酢酸ビニルとその共重合樹脂、エチレン−酢酸共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、環化ゴム系樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、ポリ乳酸樹脂等の熱硬化型樹脂や、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0024】
一方、微細フィラーとしては、粒径が0.5〜10μm程度、好ましくは0.5〜2μm程度のシリカ微粒子を具体例として挙げることができる。この微細フィラーの白インキ中の含有割合は、3.0〜10重量%程度、好ましくは3.0〜6.0重量%程度であればよい。
【0025】
このような組成の白インキにより形成される白色層4における白色顔料の含有率は、白色度やバインダー樹脂との相溶性、隣接する層との密着性を考慮すると、30〜60%程度、好ましくは40〜50%程度である。これよりも含有率が低いと白色度が落ちるために下層の隠蔽層の層厚を厚くする必要が出てくる。また、高い場合は、白インキ中における白色顔料の分散が均一になり難くなると共に、隣接する層との密着性が低下し易くなる。因みに、白インキの白色度は、その中の酸化チタンの含有率が60%程度で一番高くなり、それ以上酸化チタンを含有させても白色度は向上しない。白色層4の層厚は4.0〜5.0程度であればよい。
【0026】
このような白色層4の上に設けられているのが、絵柄層5であり、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の印刷方式や、転写方式等の画像形成手段により所定の絵柄が形成される層である。この絵柄層5の層厚は0.5〜1.0μm程度であればよい。
【0027】
そして、この絵柄層5の上には、ポリエステル樹脂、アクリロニトリブタジエンスチレン共重合樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、トリアセテート、ポリアミド等の樹脂からなる表面保護層6が設けられているが、この表面保護層6の表面には光の散乱を促進させるための微細凹凸が設けられている。この微細凹凸は、算術平均粗さが0.2〜1.5μm程度の範囲にあると、光の散乱がより促進されるようになる。このような微細凹凸は、微細凹凸が表面に形成されているSUS版やエンボスロール等を用いて賦型することによって、あるいは、表面保護層形成面に、例えば25〜35μmの粗さに凹凸処理されたエポキシアクリル酸エステルを主成分とする転写フィルムを重ね、100〜160℃程度の温度で、10〜50Mpa程度の圧力を掛けて形成すればよい。
【0028】
本発明のオーバープリントカードは、上述したように、白色層4には白色顔料と白色度を向上させるための微細フィラーが含まれていると共に、表面保護層6の表面には光の散乱を促進させるための微細凹凸が設けられているので、隠蔽層上に積層されているこれらの白色層4と表面保護層6との協働により、図3(b)にも示すように、白色層4の厚みを厚くすることなく、白色度と輝度を向上させることができるようになる。
図3(a)は従来のオーバープリントカードにおける隠蔽層33と白色層34の構成と光の散乱状況を示しており、図3(b)は本発明のオーバープリントカードにおける隠蔽層303と白色層304の構成と光の散乱の状況を示している。そして、38は酸化チタン微粒子を、39はシリカ微粒子をそれぞれ示している。このような構造を一部に有する従来のオーバープリントカードと本発明のオーバープリントカードをプリコントラストメ
ーターPCM−II(サカタインクスエンジニアリング社製)を用い、Bフィルターを使用してそれぞれの反射率を測定したところ、本発明のオーバープリントカードはその反射率が8〜10%程度高くなっており、白色度が増していることが分かった。
【符号の説明】
【0029】
1、21・・・カード基材
2、22・・・オーバーシート層
3、23、33、303・・・隠蔽層
4、24、34、304・・・白色層
5、25・・・絵柄層
6、26・・・表面保護層
7、27・・・磁気層
38・・・二酸化チタン微粒子
39・・・シリカ微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード基材上に、隠蔽層と白色層と表面保護層とがこの相対的順序で少なくとも積層されてなるオーバープリントカードであって、白色層には白色顔料と白色度を向上させるための微細フィラーが含まれていると共に、表面保護層の表面には光の散乱を促進させるための微細凹凸が設けられていることを特徴とするオーバープリントカード。
【請求項2】
前記白色層には白色顔料である酸化チタン微粒子と微細フィラーであるシリカ微粒子が含まれていることを特徴とする請求項1記載のオーバープリントカード。
【請求項3】
前記白色層には粒径が0.5〜10μmのシリカ微粒子が3.0〜10重量%の割合で含まれていることを特徴とする請求項1または2記載のオーバープリントカード
【請求項4】
前記表面保護層の微細凹凸は算術平均粗さが0.2〜1.5μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のオーバープリントカード。
【請求項5】
前記隠蔽層により磁気記録層が目視不可能な状態で覆われていることを特徴とする請求項1乃至4記載のいずれかに記載のオーバープリントカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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