説明

オーバープリントニス

【課題】 アルミ箔、アルミ蒸着フィルムなどの、光沢を有する基材表面に印刷されたバーコード上に塗工され、バーコード情報の読み取り精度を向上させることの出来るオーバープリントニスを提供する。
【解決手段】 バインダー樹脂、及び、アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズなる群から選ばれる、前記バインダー樹脂と相溶しない1種以上のビーズを含有することを特徴とするオーバープリントニス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材料の表面を保護するとともに、光拡散性の表面を形成するために用いるオーバープリントニスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種包装材料には、表面保護のため、又、意匠性向上のため、各種のオーバープリントニスの塗工が施されている。意匠性としては、光沢感を付与する場合、又、逆に、艶消し等、光拡散性の表面状態を付与する場合などがある。
【0003】
各種包装材料の中でも、ガスバリア性等の内容物保護の観点から、同時に、意匠性の観点から、アルミ箔をラミネートした材料が多用されている。こうしたアルミ箔層を有する包装材料にも、商品管理の要請からバーコードを印刷する必要があるが、下地がアルミ箔光沢面となるため、バーコードの読み取りが困難になる場合がある。
【0004】
一つの方法として、アルミ箔の光沢を有する面とバーコード印刷面の間に白色インキ層を介在させることで、バーコード印刷の周辺を光拡散層とし、読み取り精度の向上を図っている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、光拡散層は、白色インキ層のみならず、艶消し塗料の塗布によっても形成し得ることになる。光拡散性の表面を得るためのオーバープリントニスとして、各種粒子を含有するコーティング剤が知られている。プラスチックフィルムに塗布された金属光沢面を艶消し状にするために、充填剤の粉末を配合した被覆剤が知られている(例えば、特許文献2参照)。又、液晶ディスプレー用途で、フィルム上に光拡散性を奏するための、アミノ樹脂架橋粒子とバインダー樹脂からなるコーティング剤も知られている(例えば、特許文献3参照)。同様の用途で、バインダー樹脂と不定形ポリカーボネート樹脂粒子を有するコーティング材が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
しかしながら、アルミ箔上のバーコード読み取り精度向上に相応しく用いられるオーバープリントニスについての記載が無い。又、アルミ箔の光沢を有する面とバーコード印刷面の間に白色インキ層を介在させた場合であっても、下地のアルミ箔の影響があり、バーコード読み取り精度の更なる向上が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開2008−174302号公報
【特許文献2】特開昭62−188415号公報
【特許文献3】特開2004−099878号公報
【特許文献4】特開2007−233329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、光沢を有する基材表面に印刷されたバーコード上に塗工され、バーコードの読み取り精度を向上させることの出来るオーバープリントニスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、上記課題を解決すべく、鋭意研究の結果、特定の粒子を含有させたオーバープリントニスが、上記課題を解決できることを見出し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明は、バインダー樹脂、及び、アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズなる群から選ばれる、前記バインダー樹脂と相溶しない1種以上のビーズを含有することを特徴とするオーバープリントニスを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のオーバープリントニスは、アルミ箔等の光沢を有する基材の表面に印刷されたバーコード層の上に塗工されることにより、黒色インキ等で印刷されたバーコード部分の周辺のアルミ基材表面を鏡面反射層から、光拡散層とすることができ、バーコードの読み取り精度を格段に向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のオーバープリントニスは、バインダー樹脂、及び、アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズなる群から選ばれる、前記バインダー樹脂と相溶しない1種以上のビーズを含有することを特徴とするオーバープリントニスである。
【0013】
本発明のオーバープリントニスは、主に、アルミ箔等の光沢乃至は鏡面反射性を有する基材表面に、黒色インキ等で印刷されたバーコード層の上に塗工され、下地の光沢面乃至は鏡面反射面に光拡散性を付与することに貢献する。又、アルミ箔等の光沢乃至は鏡面反射性を有する基材表面と、黒色インキ等で印刷されたバーコード層の間に、光拡散効果を意図して白色層を備えた系であっても、更なる光拡散性を付与することが可能で、バーコードの読み取り精度を格段に向上させることが出来る。
【0014】
本発明のオーバープリントニスを構成するバインダー樹脂としては、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上が好ましく用いられる。
【0015】
これらの中でも、アミノ樹脂、エポキシ樹脂がより好ましく用いられる。
【0016】
本発明のオーバープリントニスを構成する、前記バインダー樹脂と相溶しないビーズとしては、アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズからなる群から選ばれる1種以上のビーズが用いられる。
【0017】
アクリル樹脂ビーズとしては、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。
【0018】
アミノ樹脂ビーズとしては、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物等が挙げられる。
【0019】
ポリオレフィン樹脂ビーズとしては、ポリエチレン樹脂ビーズ、ポリプロピレン樹脂ビーズ等が挙げられる。
【0020】
ビーズの粒子形状は、特には限定されることは無く、略球状でも不定形でも良い。
【0021】
オーバープリントニス中のビーズの含有量としては、不揮発分換算で、バインダー樹脂とビーズの比率(バインダー樹脂/ビーズ)が、20/1〜1/3の範囲であることが好ましい。ビーズ配合量がこの範囲未満であると、光拡散性が不十分となり、読み取り誤差を生じる傾向がある。ビーズ配合量が上記の範囲を超えると、オーバープリントニスの密着性が十分でなくなる傾向がある。より好ましくは、2/1〜1/2の範囲である。
【0022】
これらの中でも、前記したビーズがアミノ樹脂ビーズであり、バインダー樹脂とアミノ樹脂ビーズの比率(バインダー樹脂/アミノ樹脂ビーズ)が、2/1〜1/2の範囲である組み合わせが特に好ましい。
【0023】
オーバープリントニス中のビーズの平均粒子径は、0.1〜30μmであることが好ましい。ビーズ粒径がこの範囲未満であると、光拡散性が不十分となり、読み取り誤差を生じる傾向がある。ビーズ粒径が上記の範囲を超えると、オーバープリントニスの密着性が十分でなくなる傾向がある。
【0024】
平均粒子径の測定は顕微鏡(SEM等)による観察を行い、ビーズが球状の場合はそのい直径を、ビーズが非球状の場合は最長径(観察視野またはその写真上で、個々のビーズを平行な2本の線分で挟み込んだときの最長距離)および最短径(観察視野またはその写真上で、個々のビーズを平行な2本の線分で挟み込んだときの最短距離)を求め、その算術平均値をそのビーズの平均直径とする。さらにビーズ20個程度の直径または平均直径を算術平均し、その値を平均粒子径とすればよい。
【0025】
本発明のオーバープリントニスには、他に任意の成分として、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、泡消剤等の添加剤を含有させることが出来る。
【0026】
溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルを挙げることができる。
【0027】
本発明のオーバープリントニスは、主に、アルミ箔等の光沢乃至は鏡面反射性を有する基材表面に、黒色インキ等で印刷されたバーコード層の上に塗工される。
【0028】
光沢乃至は鏡面反射性を有する基材としては、アルミ箔等の金属箔、金属蒸着フィルム、高輝度インキで印刷された基材等が用いられる。
【0029】
バーコード印刷用インキとしては、従来公知の任意のインキが使用される。インキの乾燥状態の塗布量は、1〜5g/m程度が好ましい。
【0030】
本発明のオーバープリントニスの塗布・印刷方式の具体的な例としては、ロールコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、マイクログラビアコート、カーテンコート、スプレーコート、ダイコート等の塗装方式や、グラビア印刷、フレキソ印刷及びスクリーン印刷等の印刷方式が挙げられる。乾燥は120〜180℃の熱風で5〜30秒程度、蒸発乾燥させる。乾燥状態での塗布量は、1〜5μm程度が好ましい。
【実施例】
【0031】
次に、本発明を、実施例を挙げて更に具体的に説明する。尚、本明細書では特に断りのない限り、部および%は質量基準である。実施例および比較例の塗膜組成および評価結果を表1に示す。
【0032】
(オーバープリントニスベースの調製)
まずバインダー樹脂として、ニカラックST−100(メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)2.7g、ニカラックMS−21(ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合樹脂、不揮発分60%、株式会社三和ケミカル製)1.0g、アクリット6AQ−500(アクリル樹脂、不揮発分50%、大成ファインケミカル株式会社製)9.0g、工業用硝化綿S1/8(ニトロセルロース、不揮発分70%、Bergerac NC製)13.1gを、ついで、添加剤として、エポリードNPGPO(ダイセル化学工業株式会社製)1.1g、溶剤としてメチルエチルケトン35.4g、酢酸エチル16.4g、イソプロピルアルコールを6.3g混合し、オーバープリントニスベースを調製した。
【0033】
(オーバープリントニス(A)の調製)
前記で調製したオーバープリントニスベース85.0gに、ビーズとして、BC―79(アクリルウレタン樹脂ビーズ、平均粒子径6.3μm、株式会社岐阜セラック製造所製)を15.0g添加して、オーバープリントニス(A)を調製した。
【0034】
(オーバープリントニス(B)の調製)
前記で調製したオーバープリントニスベース85.0gに、ビーズとして、BG−06(アクリル樹脂、平均粒子径4μm、株式会社岐阜セラック製造所製)を15.0g添加して、オーバープリントニス(B)を調製した。
【0035】
(オーバープリントニス(C)の調製)
前記で調製したオーバープリントニスベース85.0gに、ビーズとして、BD−62(アクリル樹脂、平均粒子径15μm、株式会社岐阜セラック製造所製)を15.0g添加して、オーバープリントニス(C)を調製した。
【0036】
(オーバープリントニス(D)の調製)
前記で調製したオーバープリントニスベース85.0gに、ビーズとして、アートパールGR−800透明(アクリル樹脂、平均粒子径6μm、根上工業株式会社製)を15.0g添加して、オーバープリントニス(D)を調製した。
【0037】
(オーバープリントニス(E)の調製)
前記で調製したオーバープリントニスベース85.0gに、ビーズとして、ガンツパールGM−0401S(ウレタン樹脂、平均粒子径4μm、ガンツ化成株式会社製)を15.0g添加して、オーバープリントニス(E)を調製した。
【0038】
(オーバープリントニス(F)の調製)
前記で調製したオーバープリントニスベース85.0gに、ビーズとして、テクポリマーMBX−8(アクリル樹脂、平均粒子径8μm、積水化成品工業株式会社製)を15.0g添加して、オーバープリントニス(F)を調製した。
【0039】
(オーバープリントニス(G)の調製)
前記で調製したオーバープリントニスベース85.0gに、ビーズとして、エポスターM05(ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物、平均粒子径5μm、株式会社日本触媒製)を15.0g添加して、オーバープリントニス(G)を調製した。
【0040】
(オーバープリントニス(H)の調製)
前記で調製したオーバープリントニスベース85.0gに、ビーズとして、キイライトWA#4000(アルミナ、平均粒子径3μm、キイライト研磨材株式会社製)を15.0g添加して、オーバープリントニス(H)を調製した。
【0041】
(オーバープリントニス(I)の調製)
前記で調製したオーバープリントニスベース85.0gに、ビーズとして、ルワックスAF−31(ポリオレフィン樹脂、平均粒子径5μm、BASFジャパン株式会社製)を15.0g添加して、オーバープリントニス(I)を調製した。
【0042】
(オーバープリントニス(J)の調製)
前記で調製したオーバープリントニスベース85.0gに、ビーズとして、ランコワックスPP1362D(ポリオレフィン樹脂、平均粒子径6μm、日本ルーブリゾール株式会社製)を15.0g添加して、オーバープリントニス(J)を調製した。
【0043】
(比較例オーバープリントニス(X)の調製)
前記で調製したオーバープリントニスベースを、ビーズを含有しない比較例オーバープリントニス(X)とした。
【0044】
(実験−1試験用塗工物の作成)
(1)膜厚17μmの硬質アルミ箔に、PPZ−C96白(TiO 21%含有白インキ、粘度20〜80mPa・s、株式会社T&K TOKA製)を、ヘリオ版175線を用いグラビア方式でベタ印刷し、乾燥状態での塗布量を1.5g/m程度となる白着色層を形成した。
(2)墨インキTF−842 805墨(カーボン16%含有墨インキ、粘度 ザーンカップNo.3 34秒、DIC株式会社製)を、腐食版200線21μmを用いグラビア方式でモジュール0.200mmのバーコード柄を印刷した。
(3)前記で調製したオーバープリントニス(A)〜(J)を乾燥状態での塗布量が、2gm程度のなるようバーコーターで塗布し、実験−1試験用塗工物を作成した。
【0045】
(評価方法:SC値)
バーコード検証機としてムナゾウ株式会社製TruCheck401−RLを用いて、10回スキャンを行った。走査反射率波形における最大反射率と最小反射率の差であるSC値(シンボルコントラスト値:単位%)を評価した。
【0046】
(実験−2試験用塗工物の作成)
(1)膜厚17μmの硬質アルミ箔に、墨インキTF−842 805墨(カーボン16%含有墨インキ、粘度 ザーンカップNo.3 34秒、DIC株式会社製)を、腐食版200線21μmを用いグラビア方式でモジュール0.200mmのバーコード柄を印刷した。
(2)前記で調製したオーバープリントニス(A)〜(J)を乾燥状態での塗布量が、3gm程度のなるようバーコーターで塗布し、実験−2試験用塗工物を作成した。オーバープリントニス(G)については、塗布量を2g/m程度と、4g/m程度の、2段階のサンプルを作成した。
【0047】
(評価方法:SC値)
実験−1と同様、バーコード検証機としてムナゾウ株式会社製TruCheck401−RLを用いて、10回スキャンを行った。走査反射率波形における最大反射率と最小反射率の差であるSC値(シンボルコントラスト値:単位%)を評価した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1から、本願発明の、ビーズを含有するオーバープリントニスを施したバーコード層のSC値が向上していることが分かる。更に、特定の樹脂ビーズ(アミノ樹脂ビーズ)を採用した場合は、光沢下地の光拡散率向上に寄与している白色層が無い場合でも、バーコード層のSC値の向上に大きく寄与することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のオーバープリントニスは、各種包装材料、特に、アルミ箔など、光沢を有する表面にバーコードを印刷した材料の表面保護、光拡散性の更なる付与に大きく貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、及び、アクリル樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、アミノ樹脂ビーズ、ポリオレフィン樹脂ビーズ、アルミナビーズなる群から選ばれる、前記バインダー樹脂と相溶しない1種以上のビーズを含有することを特徴とするオーバープリントニス。
【請求項2】
前記したバインダー樹脂が、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含有する請求項1に記載のオーバープリントニス。
【請求項3】
前記したバインダー樹脂とビーズの比率(バインダー樹脂/ビーズ)が、20/1〜1/3の範囲である請求項1又は2に記載のオーバープリントニス。
【請求項4】
前記したビーズの平均粒子径が0.1〜30μmである請求項1〜3の何れかに記載のオーバープリントニス。
【請求項5】
前記したビーズがアミノ樹脂ビーズであり、バインダー樹脂とビーズの比率(バインダー樹脂/ビーズ)が、2/1〜1/2の範囲である請求項1〜4の何れかに記載のオーバープリントニス。
【請求項6】
バーコード被覆用に用いる請求項1〜5の何れかに記載のオーバープリントニス。

【公開番号】特開2010−248436(P2010−248436A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101851(P2009−101851)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】