説明

オーバーモールドインサートを有するビーム

金属クロスバー12と、金属クロスバー12上に成形されるプラスチック製の補強リブ14とを含む、衝撃吸収ビーム10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の衝撃ビームに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝撃ビームは、車両が障害物との衝撃にさらされる場合に、保護を提供するように作用するタイプのクロスピースとして知られている。
【0003】
一般的に、このような衝撃ビームは、前記ビームが極端な変形にさらされる場合にも、衝撃によるエネルギーを吸収するのに適している。
【0004】
このようなビームには2種類の保護が期待される。
【0005】
静止している物体に対して衝撃が生じ、かつ通常では2つの車両のバンパー同士の衝撃に相当する高さで生じる場合は、車両のサイドレールと同じ高さにあり、これにつながって延在する高い位置にある1つの衝撃ビームが、車両後方の部分の保護を確保し、可能な限り衝撃エネルギーを吸収する。
【0006】
反対に、歩行者の脚部に対して衝撃が生じた場合は、低い位置にある第2の衝撃ビームが、歩行者の脚部、特に膝が、重大な負傷を生じる程度まで変形されることを回避する。
【0007】
本発明は、全ての衝撃ビーム、すなわち高い位置のビームにも、低い位置のビームにも関する。
【0008】
この分野では、多くの場合プラスチック材料、より一般にはフォームからなる吸収材で内側を覆われる、多くの場合金属製の剛性の高いクロスピースを備えるビーム構成が、使用されることが一般的である。剛性の高いクロスピースは、曲げ強度を与え、車両幅全体にわたって支承面を提供し、それによって吸収材は、バンパー表皮の後方で、車両の残りの部分に伝達されるエネルギーの量を低減させるために、本質的に圧縮作用することが可能である。
【0009】
しかし、このような構造は、1つの部品が別の部品に取り付けられる、または衝撃の際には相互に接触する2つの個別の部品を結合させることによりできていることは明白である。
【0010】
さらに、自動車の衝撃ビーム以外の分野では、プラスチック材料からなる補強リブを金属製の断面形状形成された部材にオーバーモールドすることによって、ハイブリッドクロスピースを提供することができ、これにより生じるアセンブリの断面二次モーメントを有利に活用することが知られている。欧州特許第0370342号明細書は、このようなクロスピースの一例を開示している。
【0011】
意外にも、このような構造は、衝撃ビームにはこれまで採用されていなかった。その理由としては、衝撃ビームには、応力が突然加えられるということが考えられ、これは、複合構造の部品には適さない、異なる作用を示唆するからであることが考えられる。
【0012】
さらに、従来技術から知られているハイブリッドクロスピースでは不可能であると思われる、大幅な変形が生じた際にも、衝撃ビームは、衝撃エネルギーを吸収しなくてはならない。実際にこのようなクロスピースでは、プラスチック材料は、分離された結合点のみで金属製の断面形状形成された部材に付けられており、特に大幅な変形が生じた場合には、これらの結合点は容易に破損してしまう。
【0013】
しかし、シミュレーションおよび実車試験を行い、突然の衝撃の際に、衝撃ビームがハイブリッド構造の部品に適合する作用を有すること、またハイブリッド構造の方がより小型にすることが可能であり、同等の作用に対して重量がかなり低減可能であることを、本発明の発明者らは見出した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって本発明の目的は、製造および車両への取り付けがより容易であり、より小型化、軽量化されるとともに、従来の衝撃ビームよりコストが低いという長所を有する、新たな衝撃ビーム構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、金属クロスピースを備える衝撃ビームを提供する。前記衝撃ビームは、さらに、プラスチック材料からなりかつ金属クロスピースにオーバーモールドされる補強リブを備える。
【0016】
本発明の意味において、「補強リブ」とは、断面二次モーメントを維持するように、クロスピースの形状を保持する能力を向上させるように構成されるリブを意味する。このようなリブは、「安定器リブ」とも呼ぶことができる。
【0017】
本発明の特定の実施形態では、クロスピースは、縁部によって画定される少なくとも1つの窓部が備えられ、補強リブを形成するためにクロスピースにオーバーモールドされるプラスチック材料は、前記縁部を少なくとも部分的に被覆し、これによりリブを形成するプラスチック材料は、金属クロスピースに機械的に固定される。
【0018】
この実施形態では、プラスチック材料は、クロスピース内の窓部を満たさず、前記窓部は、これが切り抜かれている壁部の2つの側面間の遮られていない開口部として維持される。
【0019】
この実施形態の有利な変形例では、窓部の縁部は、特に多方向応力の場合でも効果的な固定を保証することによって、プラスチック材料と金属クロスピースとの機械的固定を向上させるように、波を打った形状、フラクタル(fractal)タイプの形状、ギリシアキー(Greek key)パターンの形状、またはジグソーパズル片間の接合部のような形状の切り抜き部を有する。
【0020】
別の有利な変形例では、窓が、プラスチック材料を金属クロスピースに固定するために、窓部の縁部を被覆する前記プラスチック材料に加えて、プラスチック材料が被覆可能である形状を任意に構成するバッテン(batten)を備える。
【0021】
バッテンは、窓部の存在が前記クロスピースを過度に弱めることを防ぐよう、クロスピースの剛性の維持に特に有用である。
【0022】
有利には、バッテン間の交差部は、2つまたは3つのみの分岐部を有し、そのためこれらバッテンは、単にL字またはT字形状を形成して、クロスピースの剛性を向上させる。窓部が4つの分岐部を有する場合は、4つの分岐部が同じ点に集まらないように、対向するバッテンがずらされる。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、1つまたはそれ以上の窓部は、クロスピースの一方側に注入されるプラスチック材料が、クロスピースの他方側へ通過し、かつ補強リブおよびエネルギー吸収部を構成する追加リブを形成することを可能にするように、寸法決めされかつクロスピースに配置される。
【0024】
連続する試験によって、加えて衝撃ビームの形状を考慮することにより、射出成形によって、補強リブがクロスピースの一方側に形成され、かつエネルギー吸収部がクロスピースの他方側に形成されることをもたらすように、窓部を配置および寸法決めすることは、当業者であれば可能である。
【0025】
クロスピースのいずれの側にも補強リブを有するが、プラスチック材料が型キャビティの一方側だけに供給される型でオーバーモールドされることにより得られるビームのこの実施形態は、型のコストを低く保つことを可能にし、したがって部品のコストが大幅に低減することを可能にする。
【0026】
さらに、追加リブがエネルギー吸収部を形成するため、エネルギー吸収部および金属クロスピースが、共に1つの部品となり、これによりこれらを自動車に取り付けることが容易になる。
【0027】
本発明の衝撃ビームは、エネルギー吸収ボックスを含んでいてもよい。
【0028】
好ましくは、エネルギー吸収ボックスは、鋼、アルミニウム、およびプラスチックから選択される材料からなる。
【0029】
好ましくは、クロスピースは、鋼板、アルミニウム板、およびツインテックス(Twintex)(商標)織布から選択される材料からなる。
【0030】
最後に、有利な方法で、補強リブは、タルクで充填される熱可塑性材料、ガラスファイバで充填される熱可塑性材料、もしくは充填されない熱可塑性材料、熱硬化性材料、およびハイブリッド熱可塑性複合(HTPC)材料から選択される材料からなる。
【0031】
本発明は、単に一例として挙げられる以下の説明を、添付の図面とともに参照することによって、さらに深く理解することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
全体的に参照符号10で示される図1の衝撃ビームは、第1に、2つのフランジを有する底壁により構成されるU字形断面の、「インサート」とも呼ばれる金属クロスピース12を、第2に、一連の内側リブ14および一連の外側リブ16を備える。
【0033】
一連の内側リブ14の機能は、最適な慣性モーメントを保証するU字形断面を維持することによって、金属クロスピース12を安定化させることである。
【0034】
クロスピース12の断面二次モーメントを維持するためには、一連の内側リブ14の存在だけではなく、前記一連の内側リブ14をクロスピース12に固定するための優れた機械的固定部も必要であり、これは、以下に説明するように窓部の縁18を覆うリブによって達成される。
【0035】
一連の内側リブ14のいずれかの端部で、ビーム10を車両のレール(図示せず)に固定するためのプレート20が、一連の内側リブ14のリブと一体的に成形される。
【0036】
内側リブ14は、完全にインサート12の断面内にあり、一方、プレート20は、車両の内側へ向かって、すなわち図1では後方へ突出する。
【0037】
図2は、クロスピース12の底壁を通過し、その長さ全体にわたって分配される8つの窓部18を示す。
【0038】
特に図6に示すように、内側リブ14を形成するためにクロスピース12にオーバーモールドされるプラスチック材料は、各窓部18の縁部を越えて縁部を覆うことによって、クロスピース12の底壁を通過し、その対向する面へ出る。こうして窓部18の縁部を覆うことによって、一連の内側リブ14がクロスピース12に固定される。
【0039】
このような窓部18の縁部を覆うことによって達成される機械的な固定は、変形の量が大きい場合にも、プラスチック材料が金属クロスピース12に堅固に保持されることを可能にすることに留意されたい。
【0040】
さらに、プラスチック材料は、固定のために窓部18の周囲に完全に延在するため、結果として生じる衝撃ビーム10には、弱い箇所が全くなく、部品の長さ全体にわたり実質的に均一の剛性を有する。したがって、衝撃ビーム10のどの領域に衝撃が加わるかに関係なく、衝撃ビーム10によって衝撃は同じように取り扱われる。
【0041】
当然、その他の機械的固定手段が、独自に、または上述のように縁部を覆う方法と合わせて実施されてもよい。
【0042】
クロスピース12の外側長手方向縁部も、プラスチック材料をクロスピース12に固定することに加えて、特に前記長手方向縁部を腐食から保護する目的のために、好ましくはプラスチック材料に覆われる。
【0043】
本発明の特定の実施形態では、窓部18は、覆われる縁部を提供するだけではない。窓部は、プラスチック材料がクロスピース12の他方側へ通過し、エネルギー吸収部を構成する一連の外側リブ16のリブを形成するために、前方へ広がることも可能にする。
【0044】
一変形例では、プラスチック材料が、窓部18を通過し一連の内側リブ14を形成するように、一連の外側リブ16のリブを先に成形することが好ましいことがある。
【0045】
この結果生じる衝撃ビーム10の窓部18の断面を図3に示す。
【0046】
両方の場合に、プラスチック材料は、妨げられずにインサート12を通り延在する。エネルギー吸収部16は、クロスピース12に対して固定的に保持される。
【0047】
また、エネルギー吸収部16は、このようにクロスピース12に対して保持されるので、従来のエネルギー吸収部より効果的であることに留意されたい。実際に、このエネルギー吸収部16は、圧縮されると従来のエネルギー吸収部より優れている。その理由は、このようなエネルギー吸収部は、衝撃の間に前記クロスピースと接触し、特にクロスピースに対して摺動可能であるためである。したがって、吸収部16がより効果的であるため、これを形成するための材料の量を低減することが可能であり、これにより衝撃ビーム10の重量を低減することが可能になる。
【0048】
窓部18の寸法決めおよびそれらの分配は、窓部18を通過するプラスチック材料の流れが十分であるように、衝撃ビーム19の全体の形状に応じて当業者によって決められるべきである。
【0049】
窓部18を通過するプラスチック材料の流れは、図4に示される。
【0050】
図5から図8では、先の図面の要素と類似の要素は、同じ参照符号で示される。
【0051】
図5は、内側リブ14および外側リブ16に加えて、クロスピース12を覆う、リブ14、16の組と同様に一体的に成形されるエネルギー吸収ボックスも有する、別の衝撃ビーム10を示す。
【0052】
図7は、縁部がジグソーパズル片の接合部のような形状の窓部18の特定の構成を示す。この窓部18の特殊な縁部の形状によって、窓部18の縁部を覆うプラスチック材料は、多方向応力の場合にも、より効果的にクロスピース12に固定される。
【0053】
図8に示す実施形態では、各窓部18が、窓部18の中央領域を横断しクロスワーク片を形成する、4つのバッテン24を有する。バッテン24の機能は、窓部18があるにもかかわらず、クロスピース12を強化することである。この強化効果をさらに向上させるために、4つのバッテン4が窓部18において1点で交差しないよう、対向する2つのバッテン24が、相互にずらされている。反対に、交差は、3つまたは2つの分岐部をそれぞれ備えるT字接合部またはL字接合部を形成するように、バッテン24が一対で交わるように制限される。
【0054】
上述のように、窓部18の縁部を覆うことによって、リブ14をクロスピース12に機械的に固定されるが、バッテン24自体が、固定部を強化するためにプラスチック材料によって被覆されてもよい。このような固定は、多方向応力の場合にも効果的であることに留意されたい。
【0055】
上述の実施形態に限定されることなく、本発明の範囲を逸脱せずに、この実施形態にあらゆる望ましい修正を加えることが可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の衝撃ビームの一実施形態の斜視図である。
【図2】図1の衝撃ビームの金属クロスピースの斜視図である。
【図3】図1のIII−IIIにおける断面図である。
【図4】図2のクロスピースを示す、矢印IVの方向で見た拡大図である。
【図5】本発明の衝撃ビームの別の実施形態の斜視図である。
【図6】本発明の衝撃ビームの別の実施形態を示す、図3と類似の図である。
【図7】別の衝撃ビームのクロスピースの一部分の拡大図である。
【図8】別の衝撃ビームの別のクロスピースの正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属クロスピース(12)を備える衝撃ビーム(10)であって、前記衝撃ビームは、プラスチック材料から形成されかつ金属クロスピース(12)にオーバーモールドされる補強リブ(14)をさらに備えることを特徴とする、衝撃ビーム(10)。
【請求項2】
金属クロスピース(12)が、縁部によって画定される少なくとも1つの窓部(18)を備え、補強リブ(14)を形成するために金属クロスピース(12)にオーバーモールドされるプラスチック材料が、前記縁部を少なくとも部分的に覆い、補強リブ(14)が作られるプラスチック材料が、金属クロスピース(12)に機械的に固定される、請求項1に記載の衝撃ビーム(10)。
【請求項3】
窓部(18)の縁部が、金属クロスピース(12)に対するプラスチック材料の機械的固定を向上させるように、波打った形状、フラクタルタイプの形状、またはギリシアキーパターン形状、またはジグソーパズル片間の接合部のような形状の切り抜き部を有する、請求項2に記載の衝撃ビーム(10)。
【請求項4】
窓部(18)が、プラスチック材料を金属クロスピース(12)に固定するために、窓部(18)の縁部を被覆する前記プラスチック材料に加えて、プラスチック材料が被覆可能である形状を任意に構成するバッテン(24)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の衝撃ビーム(10)。
【請求項5】
バッテン(24)間の交差部が、2つまたは3つのみの分岐部を有し、バッテンが、L字またはT字形状のみを形成する、請求項4に記載の衝撃ビーム(10)。
【請求項6】
1つまたは複数の窓部(18)は、金属クロスピース(12)の一方側に注入されるプラスチック材料が、金属クロスピース(12)の他方側へ通過し、かつ補強リブ(14)およびエネルギー吸収部を構成する追加リブ(16)の両方を形成することが可能であるように、寸法決めされかつ金属クロスピース(12)に配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の衝撃ビーム(10)。
【請求項7】
エネルギー吸収ボックス(22)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の衝撃ビーム(10)。
【請求項8】
エネルギー吸収ボックス(22)が、鋼、アルミニウム、およびプラスチックから選択される材料からなる、請求項7に記載の衝撃ビーム(10)。
【請求項9】
クロスピース(12)が、鋼板、アルミニウム板、およびツインテックス(Twintex)(商標)織布から選択される材料からなる、請求項1から8のいずれか一項に記載の衝撃ビーム(10)。
【請求項10】
補強リブ(14、16)が、タルクで充填される熱可塑性材料、ガラスファイバで充填される熱可塑性材料、もしくは充填されない熱可塑性材料、熱硬化性材料、およびハイブリッド熱可塑性複合材料から選択される材料からなる、請求項1から9のいずれか一項に記載の衝撃ビーム(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−533545(P2007−533545A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508943(P2007−508943)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001006
【国際公開番号】WO2005/105554
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(504037391)コンパニ・プラステイツク・オムニウム (11)