説明

オーバーラミネート用フィルム

【課題】フッ素樹脂を用いずにフッ素樹脂と同等の耐候性、耐溶剤性、耐汚染性を有するオーバーラミネート用フィルムを提供すること。
【解決手段】基材フィルムの裏面側に粘着層を設け、表面側に表面保護層を設けてなるオーバーラミネート用フィルムにおいて、前記基材フィルムがポリオレフィン系樹脂からなり、前記表面保護層がトリアジン系紫外線吸収剤を含有したアクリルウレタン系樹脂からなり、前記表面保護層の層厚が固形分塗布量で5g/m以上10g/m以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物等の表面保護を目的としたオーバーラミネートに用いるフィルムに関し、特にはフッ素系樹脂を用いないで耐候性に優れたオーバーラミネート用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記用途に用いる樹脂としてはフッ素系樹脂フィルムが好適であるが、非常に価格が高く、焼却時にはフッ化水素ガスが発生し、環境に対する影響が問題視されるようになってきた。
【0003】
また、アクリル系樹脂フィルムも用いられていたが、耐溶剤性に劣っているものであり、ポリプロピレン系樹脂フィルムも耐溶剤性に劣っているという問題点がそれぞれあった。ポリプロピレン樹脂中に紫外線吸収剤等を添加することで印刷面を保護することはできるようになるが、紫外線を直接受けるポリプロピレン樹脂そのものが劣化してしまう。
【0004】
また、フッ素樹脂フィルムとしては、粘着加工を行うためポリフッ化ビニル樹脂が用いられることが多く、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体といったフィルムほどの耐汚染性を有していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−325537号公報
【特許文献2】特開2001−11401号公報
【特許文献3】特開2002−226813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、フッ素樹脂を用いずにフッ素樹脂と同等の耐候性、耐溶剤性、耐汚染性を有するオーバーラミネート用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、基材フィルムの裏面側に粘着層を設け、表面側に表面保護層を設けてなるオーバーラミネート用フィルムにおいて、前記基材フィルムがポリオレフィン系樹脂からなり、前記表面保護層がトリアジン系紫外線吸収剤を含有したアクリルウレタン系樹脂からなり、前記表面保護層の層厚が固形分塗布量で5g/m以上10g/m以下であることを特徴とするオーバーラミネート用フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は表面保護層としてアクリルウレタン系樹脂を用い、これと相溶性の良好なトリアジン系紫外線吸収剤を用い、さらに固形分塗布量を5g/m以上にすることにより、紫外線遮蔽力の優れ、経時でも紫外線遮蔽力の低下しない塗膜を形成することを可能とした。また、固形分塗布量を10g/m以下にすることにより、凹凸部分へのラミネート時においても、表面保護層の割れの無い塗膜を形成することを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のオーバーラミネート用フィルムの一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明のオーバーラミネート用フィルムの一実施例の断面の構造を示す。基材フィルム1の裏面側に粘着層2を設け、表面側に表面保護層3を設けてなる。また、粘着層の表面に剥離可能にセパレーター(図示せず)を適宜設けてもよい。
【0011】
本発明における基材フィルム1は、ポリオレフィン系樹脂からなるものが用いられる。基材フィルム1には下地の印刷物を保護する目的であることが多いことから透明性が求められるが、半透明なものや着色したものなども用途に応じて選定することが可能である。そしてポリオレフィン系樹脂を使用することにより、フッ素系樹脂と異なり、焼却処理しても問題の無いものとなる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレンまたはそれらの変性樹脂が一般的に用いられるが、表面の硬度や耐熱性等も考慮するとポリプロピレン系樹脂が好適である。ポリプロピレン系樹脂としてはランダム共重合、ホモ系の2種類があるが、いずれも用途に応じて使用可能である。
【0012】
また基材フィルム1には耐候性の処方として紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系など)を添加しても良い。添加量は所望の耐候性に応じて添加すればよいが、樹脂固形分に対して0.1%〜10%、好ましくは1%〜5%である。紫外線吸収剤の中でも、ベンゾトリアゾール系としては、2−(2−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール,2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール,2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール,2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が挙げられる。また、トリアジン系としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジンなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が挙げられる。さらに、ベンゾフェノン系としては、オクタベンゾンや変性物、重合物、誘導体が挙げられる。
【0013】
また、樹脂自体の光・熱・水などによる劣化を防止するため、ヒンダードアミン系光安定剤を添加しても良い。添加部数は所望の耐候性に応じて添加すればよいが、樹脂固形分に対して0.1〜10重量%、好ましくは1%〜5%である。ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ポペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体などが挙げられる。
【0014】
これらの配合を適宜行い、押出成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法などでフィルム状に成形して得ることができる。フィルムの総厚は粘着貼り合わせ加工のしやすさや、耐候性、透明性などを考慮すると30〜120μm程度が適切である。
【0015】
本発明における粘着層2に用いる粘着剤としては、アクリル系粘着剤がもっとも一般的であるが、他にスチレン−ブタジエンゴム系粘着剤、クロロプレンゴム系粘着剤、オレフィンゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを使用することができる。耐候性の面ではアクリル系粘着剤が優位である。粘着層にも紫外線吸収剤、光安定剤などを添加しても良い。粘着層の厚みは5〜50μm程度が一般的である。
【0016】
本発明における表面保護層3としては、アクリルポリオールに、イソシアネートを添加して硬化するアクリルウレタン系樹脂を用いる。表面保護層3の層厚は5〜10g/mとする。さらに好ましくは6〜9g/mである。これにより塗工性・保管等の汎用性が高いものとなる。
【0017】
前記アクリルポリオールとしては、メタクリル酸、メタクリル酸エステルまたはアクリル酸、アクリル酸エステルなどのモノマーなどから、複数のモノマーが重合されることが多い。詳しくは、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレートやこれらの変性物等が挙げられる。アクリル樹脂は、メタクリル酸、メタクリル酸エステルまたはアクリル酸、アクリル酸エステルなどのモノマーなどから、複数のモノマーが重合されることが多い。詳しくは、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレートやこれらの変性物である。モノマーの段階で水酸基が導入された、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどを、前記モノマーとともに適宜重合時に添加していくことで、水酸基を有したアクリル樹脂を形成することができる。詳しくは、4−ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)などやこれらの変性物、重合物、誘導体などが挙げられる。
【0018】
本発明の表面保護層3には、耐候性の処方を行うため、トリアジン系紫外線吸収剤を添加する。添加部数は所望の耐候性に応じて添加すればよいが、樹脂固形分に対して0.1%〜50%、好ましくは1%〜30%である。トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジンなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が挙げられる。また、イソシアネート添加による架橋によって、樹脂成分と結合を望めるため、紫外線吸収剤は水酸基を有したものが適している。
【0019】
ここで前記表面保護層3に添加する紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系は選択できない。トリアジン系紫外線吸収剤は表面保護層3に用いるアクリルウレタン系樹脂と相溶性が良好であるので、経時による紫外線吸収剤の析出が抑制され紫外線遮蔽性能の効果が継続する。
【0020】
表面保護層3には、その他の添加剤として樹脂自体の光・熱・水などによる劣化を防止するため、ヒンダードアミン系光安定剤を適宜添加しても良い。添加部数は所望の耐候性に応じて添加すればよいが、樹脂固形分に対して0.1〜50重量%、好ましくは1%〜30%である。ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ポペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体などが挙げられる。
【0021】
水酸基を有した紫外線吸収剤を用いた場合、重合されたアクリル樹脂ではポリエステル系樹脂フィルム、特に延伸された結晶性の高いポリエステル系フィルムとは密着性が不十分であり、これを補強するために、イソシアネートを添加することが好適である。イソシアネート化合物としては、耐候性を考慮し、脂肪族系が好ましい。芳香族系は黄変する場合があり、使用される用途によって適宜選択する。脂肪族系としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが代表的である。
【0022】
適宜設けるセパレーター(図示せず)は、保護フィルムを対象に貼りあわせる場合、セパレーターを除いて行う。セパレーターとしては紙製やフィルム製などあるが、用途に応じて使用すればよい。
【実施例1】
【0023】
ランダム共重合体であるポリオレフィン系軟質樹脂(E2910:出光石油化学(株)製)100重量部に耐候性の処方として、紫外線吸収剤ベンゾトリアゾール系樹脂(TINUVIN234:チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)を0.5重量部、ヒンダートアミン系光安定剤(TINUVIN123:チバ・スペシャルティケミカルズ(株)製)を0.5重量部それぞれ添加し、ペレットを得た。得られたペレットをTダイより230℃押出し、冷却ロールにて固化させつつ80μmとなるように製膜した。さらに表面をコロナ放電処理にて、40dyne/cm以上とし、基材フィルム1を得た。
【0024】
主剤としてモノマーである分子量約5000程度のアクリルポリオール(URV:東京インキ製造(株)製)100重量部に対し、耐候性の処方として、紫外線吸収剤であるトリアジン系樹脂(TINUVIN400,TINUVIN479:BASF(株)製)を11重量部およびヒンダートアミン系光安定剤(TINUVIN292:BASF(株)製)6重量部をそれぞれアクリルポリオール樹脂A100重量部に添加し、塗工液Aを得た。塗工液A100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート(UR130B:東洋インキ製造(株)製)硬化剤を10重量部添加し、適宜溶剤を用いて希釈し、固形分で6g/mとなるように前記基材フィルムの表面側に塗工し、表面保護層3とした。
【0025】
また、基材フィルムの裏面側にアクリル系粘着剤(オリバインBPS:東洋インキ製造(株)製)で30g/mの塗布量にて粘着加工を行って粘着層2とし、本発明のオーバーラミネート用フィルムを得た。
【0026】
<比較例1(表面保護層 固形分3g/m)>
表面保護層3を固形分で3g/mとなるように塗工した以外は実施例1と同様にしてオーバーラミネート用フィルムを得た。
【0027】
<比較例2(表面保護層 固形分11g/m)>
表面保護層3を固形分で11g/mとなるように前記基材フィルムの塗工をした以外は実施例と同様にしてオーバーラミネート用フィルムを得た。
【0028】
<比較例3(表面保護層 紫外線吸収剤ベンゾトリアゾール系)>
表面保護層3に添加する紫外線吸収剤であるトリアジン系樹脂(TINUVIN400,TINUVIN479:BASF(株)製)のかわりにベンゾトリアゾール系樹脂(TINUVIN329,TINUVIN1130:BASF(株)製)を用い11重量部添加した以外は実施例と同様にしてオーバーラミネート用フィルムを得た。
【0029】
それぞれを耐候性試験および曲げ加工試験を行った。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のオーバーラミネート用フィルムは、耐候性と耐汚染性に優れたオーバーラミネート用フィルムとして、印刷物などの表面保護層として利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…基材フィルム
2…粘着層
3…表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの裏面側に粘着層を設け、表面側に表面保護層を設けてなるオーバーラミネート用フィルムにおいて、前記基材フィルムがポリオレフィン系樹脂からなり、前記表面保護層がトリアジン系紫外線吸収剤を含有したアクリルウレタン系樹脂からなり、前記表面保護層の層厚が固形分塗布量で5g/m以上10g/m以下であることを特徴とするオーバーラミネート用フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−22906(P2013−22906A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161837(P2011−161837)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】