説明

オープンカー用冷暖房システム

【課題】オープンカーをオープン状態で走行した場合に快適な空調制御を行うことができる冷暖房システムを提供する。
【解決手段】オープンカーにおける冷暖房システム100を、車速を検出する車速検出センサ(車速検出手段)1と、該車速検出センサ1により検出さ
れた車速に基づいて、空調装置(車内装備用冷暖房装置)の設定値を求める設定値演算装置(設定値演算手段)2と、該設定値演算装置2により求められた設定値に従って、車内装備用冷暖房装置の運転条件を制御する運転条件制御装置(運転条件制御手段)3と、を備えて構成し、車速に応じて、車内装備用冷暖房装置の運転条件を自動的に制御するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンカーにおける冷暖房システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、オープンカーをオープン状態(ルーフを開いた状態)で走行すると、車内に外気が入り込み、冷暖房による効果が十分に作用しにくくなるとともに、車速に応じて車内に入り込む外気の量が増減するため、走行時に安定した空調制御を行なうことが難しいという不具合があった。このため、乗員の体感温度を一定に保持することが難しく、車外温度が高い夏季には低速走行時に暑さを感じやすく、外気温度が低い冬季には高速走行時に寒さを感じやすいという問題があり、快適に乗車することが困難であった。
【0003】
そこで、特許文献1では、オープンカーのオープン状態の場合には、クローズ状態(ルーフを閉じた状態)の場合と比べて、車内の空調作用を増強させる制御を行い、オープンカーをオープン状態で走行する時に効率よく空調制御を行なうことが提案されている。
【0004】
また、特許文献2及び特許文献3では、オープン状態で走行しても寒さを感じることなく快適に高速走行できるように、ステアリングホイール、シートの背凭れ部、及びヘッドレスト等の車内装備に暖房装置を設けることが公知となっている。
【特許文献1】特開平7−266841号公報
【特許文献2】特開2003−19964号公報
【特許文献3】特開2005−349864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の空調装置では、オープンカーをオープン状態で走行した場合に車速によって体感温度が異なるため、オープン状態で走行する場合に快適な空調制御を行なうという点で更なる改善の余地があった。
【0006】
また、上述した特許文献2及び特許文献3に記載の車内装備用暖房装置では、いずれも乗員が自らスイッチを切り替えることで温度調整を行うように構成されているため、オープンカーをオープン状態で走行した場合には、車速によって変化する体感温度に応じて、乗員が適宜スイッチを切り替えて温度調整を行う必要があり、オープン状態に快適な空調制御を行なうという点で更なる改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、オープンカーをオープン状態で走行した場合に快適な空調制御を行うことができるオープンカー用冷暖房システムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、オープンカーにおける冷暖房システムであって、車速を検出する車速検出手段と、該車速検出手段により検出された車速に基づいて、車内装備用冷暖房装置の設定値を求める設定値演算手段と、該設定値演算手段により求められた設定値に従って、前記車内装備用冷暖房装置の運転条件を制御する運転条件制御手段と、を備え、車速に応じて、前記車内装備用冷暖房装置の運転条件を自動的に制御することを特徴とするオープンカー用冷暖房システムを提供する。
【0009】
ここで、本発明に係るオープンカー用冷暖房システムにおいて、ルーフの開閉を検出するルーフ開閉検出手段をさらに備え、前記ルーフ開閉検出手段により検出されたルーフの開閉に応じて、前記車速検出手段、前記設定値演算手段、及び前記運転条件制御手段による処理を自動的に制御するように構成してもよい。
【0010】
また、本発明に係るオープンカー用冷暖房システムにおいて、車外温度を検出する温度検出手段をさらに備え、前記温度検出手段により検出された車外温度と、前記車速検出手段により検出された車速に基づいて、前記設定値演算手段の設定値を求めるように構成してもよい。
【0011】
さらに、本発明に係るオープンカー用冷暖房システムにおいて、前記車内装備用冷暖房装置としては、空調装置、ステアリングホイール用ヒータ、ネックレスト用ヒータ、及びシート用ヒータから選択される少なくとも一つが挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るオープンカー用冷暖房システムによれば、車速に応じて、車内装備用冷暖房装置の運転条件を自動的に制御するようにしたことにより、オープン状態で走行した場合の空調制御を効率よく行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
【0014】
図1は、本発明に係るオープンカー用冷暖房システムの一例を示すブロック図である。
本実施形態に係る冷暖房システム100は、開閉自在なルーフを有するオープンカーに適用され、図1に示すように、車速を検出する車速検出センサ(車速検出手段)1と、この車速検出センサ1により検出された車速に基づいて、空調装置(車内装備用冷暖房装置)の吹き出し口から送り出される送風量及び送風温度の設定値を決定する送風演算装置(設定値演算手段)2と、この送風演算装置2により求められた設定値に応じて、空調装置の運転条件を制御する運転条件制御装置(運転条件制御手段)3と、を備え、車速に応じて、空調装置の運転条件が自動的に制御されるように構成されている。
【0015】
この冷暖房システム100は、車内に設けられた空調操作切換スイッチをオンにすることにより、車速とは無関係に送風量及び送風温度を手動又は自動で操作可能な通常の冷暖房モードから切り替えることができる構成となっている。
【0016】
車速検出センサ1は、ミッションに取り付けるパルスジェネレータの回転に応じて発生した誘導電流を検出し、所定の波形修正回路を経て求めることにより、車速を検出するように構成されている。
【0017】
送風演算装置2は、車速検出センサ1により検出された車速に基づいて、送風量及び送風温度の設定値を決定するように構成されている。ここで、送風量及び送風温度の設定値を決定する演算は、図2及び図3に示すように、予めROМ等に書き込まれたプログラムにより行なわれる。
【0018】
ここで、空調装置を暖房として使用する場合には、図2に示すように、車速が速くなるにつれて、暖房作用が増強するように、送風量及び送風温度の設定値を決定する指令がプログラムとして書き込まれている。
【0019】
一方、空調装置を冷房として使用する場合には、図3に示すように、車速が遅くなるにつれて、冷房作用が増強するように、送風量及び送風温度の設定値を決定する指令がプログラムとして書き込まれている。
【0020】
この時、車速に応じて、送風量及び送風温度の設定値をバランスよく調整するようにしてもよいし、送風量及び送風温度の少なくとも一方の設定値を所定範囲に固定し、他方の設定値のみを車速に応じて調整するようにしてもよい。
【0021】
また、図4及び図5に示すように、複数パターンのプログラムを予めROМ等に書き込んでおき、手動又は自動でパターン選択を行って、選ばれたパターンに基づき演算が行われ、送風量及び送風温度の設定値が決定されるようにすることも可能である。
【0022】
運転条件制御装置3は、送風演算装置2により求められた設定値に応じて、送風量をブロアファンの回転数により制御するとともに、送風温度をエアミックスダンパの開度により制御するように構成されている。
【0023】
次に、上述した冷暖房システム100の一動作例について、図面を参照しながら説明する。
図6は、第1実施形態に係るオープンカー用冷暖房システムの動作状況を示すフローチャートである。
【0024】
この冷暖房システム100は、オープンカーのルーフを開放し、冷暖房システム100の作動・停止を指令する空調操作切替スイッチをオンにすることで開始する。なお、オープンカーのルーフを閉鎖した状態の場合には、空調操作切替スイッチをオフにして、通常の冷暖房モードに切り替え、車速とは無関係に空調装置の運転条件を自動又は手動で制御することが好ましい。
【0025】
次に、車速検出センサ1により車速が検出される(ステップS1)。
次に、車速検出センサ1により検出された車速のデータが、送風演算装置2に送られ、送風演算装置2において、図2及び図3に示す演算方法により、車速に基づいて、送風量及び送風温度の設定値が決定される(ステップS2)。
【0026】
そして、送風演算装置2により求められた設定値に応じて、運転条件制御装置3により空調装置の運転条件が自動的に制御され、空調装置の吹き出し口から送り出される送風量及び送風温度が自動的に制御される(ステップS3)。
【0027】
なお、上述したステップS1〜S3における処理は、冷暖房システム100の作動・停止を指令する空調操作スイッチをオフにするまで連続して行なわれる。
【0028】
本実施形態におけるオープンカー用冷暖房システム100によれば、車速検出センサ1と、送風演算装置2と、運転条件制御装置3と、を備え、車速に応じて、空調装置の運転条件を自動的に制御するように構成したことにより、車外温度が高い夏季には低速走行時に冷房作用が増強し、車外温度が低い冬季には高速走行時に暖房作用が増強するように空調装置の運転条件を自動的に制御することが可能となる。よって、このオープンカー用冷暖房システム100によれば、オープンカーをオープン状態で走行した場合の空調制御を効率よく行なうことができるため、快適に乗車することができる。
【0029】
<第2実施形態>
図7は、第2実施形態に係るオープンカー用冷暖房システムを示すブロック図である。
【0030】
本実施形態に係る冷暖房システム100Aは、図7に示すように、上述した第1実施形態で示したオープンカー用冷暖房システム100に、ルーフの開閉を検出するルーフ開閉検出センサ(ルーフ開閉検出手段)4と、車外温度を検出する温度検出センサ(温度検出手段)5とをさらに備えた構成としている。
【0031】
ルーフ開閉検出センサ4は、車体の天井部に設けられたスイッチにより、ルーフが開放状態であるか、閉鎖状態であるかを検出できるように構成されている。
【0032】
温度検出センサ5は、車外に取り付けられたセンサにより、車外温度を検出できるように構成されている。
【0033】
本実施形態の送風演算装置2は、車速検出センサ1で検出された車速と、温度検出センサ5で検出された車外温度とに基づいて、送風量及び送風温度の設定値を決定するように構成されている。
【0034】
ここで、送風量及び送風温度の設定値を決定する演算は、まず、上述した図2及び図3に示すプログラムにより、あるいは上述した図4及び図5に示すプログラムにより、車速に基づいて送風量及び送風温度の設定値を算出した後、算出された設定値を車外温度に基づいて補正することで行なわれる。
【0035】
この時、車速に基づいて算出された送風量及び送風温度の設定値の補正は、車外温度が所定値よりも高い場合には冷房作用がさらに増強するように、車外温度が所定値よりも低い場合には暖房作用がさらに増強するように、予めROM等に書き込まれたプログラムにより行なわれる。
【0036】
すなわち、本実施形態に係る冷暖房システム100Aにおいては、ルーフ開閉検出センサ4でルーフが開放状態であると検出された場合には、空調操作切換スイッチが自動的にオンになり、車速に基づいて空調装置の運転条件が自動的に制御される自動制御モードに切り替わるように構成されている。
【0037】
また、本実施形態に係る冷暖房システム100Aにおいては、ルーフ開閉検出センサ4でルーフが閉鎖状態であると検出された場合には、空調操作切替スイッチが自動的にオフになり、車速とは無関係に空調装置の運転条件を自動又は手動で制御可能な通常の冷暖房モードに切り替わるように構成されている。
【0038】
次に、上述した冷暖房システム100Aの一動作例について、図面を参照しながら説明する。
図8は、第2実施形態に係る冷暖房システム100Aの動作状況を示すフローチャートである。
【0039】
この冷暖房システム100Aは、まず、ルーフ開閉検出センサ4により、オープンカーのルーフが開閉しているか否かの判断がなされる(ステップS10)。このステップS10における判断が「YES」の場合には、本実施形態における冷暖房システム100Aの空調操作切替スイッチが自動的に自動制御モードに切り替わり、冷暖房システム100Aの作動が開始する。
【0040】
一方、ステップS10における判断が「NO」の場合には、空調操作切替スイッチが自動的に通常の冷暖房モードに切り替わり、冷暖房システム100Aの作動が停止する。
【0041】
次に、上述した第1実施形態と同様の手順で、車速検出センサ1により車速が検出される(ステップS11)とともに、温度検出センサ5により車外温度が検出される(ステップS12)。
【0042】
次に、車速検出センサ1により検出された車速のデータと、温度検出センサ5により検出された車外温度のデータが、送風演算装置2に送られる。そして、送風演算装置2において、車速に基づいて、上述した第1実施形態と同様の手順で、送風量及び送風温度の設定値が算出された後、算出された設定値が車外温度に基づいて補正され、送風量及び送風温度の設定値が決定される(ステップS13)。
【0043】
そして、上述した第1実施形態と同様に、送風演算装置2により求められた設定値に応じて、運転条件制御装置3により、空調装置の運転条件が自動的に制御され、空調装置の吹き出し口から送り出される送風量及び送風温度が自動的に制御される(ステップS14)。
【0044】
なお、上述したステップS11〜S14における処理は、ルーフが閉鎖されて、空調操作切換スイッチが自動的にオフになり、車速とは無関係に空調装置の運転条件が制御される通常の冷暖房モードに切り替わるまで連続して行なわれる。
【0045】
本実施形態における冷暖房システム100Aによれば、ルーフの開閉状態を検出し、ルーフが開放された状態の時には、空調装置における運転条件の自動制御を自動的に開始するように構成したことにより、さらに効率よく空調制御を行なうことができる。
【0046】
また、本実施形態における冷暖房システム100Aによれば、送風量及び送風温度の設定値の演算を、車速に加えて、車外気温に応じて決定することにより、さらに効率よく空調制御を行なうことができる。
【0047】
なお、本実施形態におけるオープンカー用冷暖房装置100,100Aでは、車内装備として、空調装置に適用した場合について説明したが、これに限らず、例えば、ステアリングホイール用暖房装置、ヘッドレスト用暖房装置、ネックレスト用暖房装置、及びシート用暖房装置から選択される少なくとも一つの車内装備に適用しても構わない。これらの暖房装置に適用する場合には、車速が速くなるにつれて、暖房装置の設定温度が高くなるように、暖房装置の設定温度を自動的に制御するように構成すればよい。
【0048】
また、本実施形態における冷暖房システム100,100Aは、車内装備として、空調装置から放出される送風がステアリングホイール内部を通過するように構成したステアリングホイール用冷房装置に適用しても構わない。このようなステアリングホイール用冷房装置に適用する場合には、直射熱等によりステアリングホイールの温度が高くなった時に、空調装置から放出される送風量及び送風温度を冷房作用が増強するように制御して、ステアリングホイールの温度を運転者が把持可能な温度に自動的に制御するように構成すればよい。
【0049】
なお、本実施形態における冷暖房システム100,100Aは、ルーフが開閉自在のオープンカーに適用した場合について説明したが、これに限らず、ルーフが存在しないオープンカーに適用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1実施形態におけるオープンカー用冷暖房システムを示すブロック図である。
【図2】車速と空調装置の暖房作用との関係を示すグラフである。
【図3】車速と空調装置の冷房作用との関係を示すグラフである。
【図4】車速と空調装置の暖房作用との関係を示すグラフである。
【図5】車速と空調装置の冷房作用との関係を示すグラフである。
【図6】第2実施形態におけるオープンカー用冷暖房システムを示すブロック図である。
【図7】第2実施形態におけるオープンカー用冷暖房システムを示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る冷暖房システムの動作状況を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 車速検出センサ(車速検出手段)
2 送風演算装置(送風演算手段)
3 運手条件制御装置(運動条件制御手段)
4 ルーフ開閉検出センサ(ルーフ開閉検出手段)
5 温度検出センサ(温度検出手段)
100,100A オープンカー用冷暖房システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンカーにおける冷暖房システムであって、
車速を検出する車速検出手段と、該車速検出手段により検出された車速に基づいて、車内装備用冷暖房装置の設定値を求める設定値演算手段と、該設定値演算手段により求められた設定値に従って、前記車内装備用冷暖房装置の運転条件を制御する運転条件制御手段と、を備え、車速に応じて、前記車内装備用冷暖房装置の運転条件を自動的に制御することを特徴とするオープンカー用冷暖房システム。
【請求項2】
ルーフの開閉を検出するルーフ開閉検出手段をさらに備え、
前記ルーフ開閉検出手段により検出されたルーフの開閉に応じて、前記車速検出手段、前記設定値演算手段、及び前記運転条件制御手段による処理を自動的に制御することを特徴とする請求項1に記載のオープンカー用冷暖房システム。
【請求項3】
車外温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記温度検出手段により検出された車外温度と、前記車速検出手段により検出された車速に基づいて、前記設定値演算手段の設定値を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載のオープンカー用冷暖房システム。
【請求項4】
前記車内装備用冷暖房装置は、空調装置、ステアリングホイール用ヒータ、ヘッドレスト用ヒータ、ネックレスト用ヒータ、及びシート用ヒータから選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のオープンカー用冷暖房システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−331738(P2007−331738A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2006−251871(P2006−251871)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(505009508)有限会社ジロウコレクション (4)
【Fターム(参考)】