オープンシールド工法による既設水路の改修方法およびオープンシールド機
【課題】既設水路の水をオープンシールド機を通して後方に送ることで、既設水路の改修作業中でも別途排水ルートを確保する必要が無く、更に、既設水路の外幅がシールド機フロント部の内幅より大きい場合であっても、既設水路の改修に伴う周辺地山の洗掘や緩みなどの周辺への影響を抑えることができるオープンシールド工法による既設水路の改修方法およびオープンシールド機を提供することを目的とする。
【解決手段】外開きの観音開き式扉14を備える水路幅方向の閉鎖壁13をオープンシールド機1のフロント部1d前方に配置し、閉鎖壁13とフロント部1d内とによる囲繞空間内を掘削排土する工程と、既設水路40の側壁42を1区分撤去するのに対応して閉鎖壁13の扉14を開く工程と、その状態で既設水路40の底床板41を1区分撤去する工程と、閉鎖壁13を撤去してオープンシールド機1を前進させる工程とを繰り返す。
【解決手段】外開きの観音開き式扉14を備える水路幅方向の閉鎖壁13をオープンシールド機1のフロント部1d前方に配置し、閉鎖壁13とフロント部1d内とによる囲繞空間内を掘削排土する工程と、既設水路40の側壁42を1区分撤去するのに対応して閉鎖壁13の扉14を開く工程と、その状態で既設水路40の底床板41を1区分撤去する工程と、閉鎖壁13を撤去してオープンシールド機1を前進させる工程とを繰り返す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道、共同溝、電信・電話などの付設地下道や、乗用車専用道路等の地下構造物を構築するためのオープンシールド工法により、既設水路の改修を行う方法、およびそれに適したオープンシールド機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上下水道、共同溝、電信・電話などの付設地下道等の地下構造物を市街地などに施工する工法として、オープンシールド工法が広く用いられている。オープンシールド工法は開削工法(オープンカット工法)とシールド工法の長所を活かした合理性に富む工法である。
【0003】
このオープンシールド工法で使用するオープンシールド機1の概略は図11に示すように左右の側壁板1aと、これら側壁板1aに連結する底板1bとからなる前面、後面および上面を開口した断面U字形のもので、前記側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成し、また側壁板1aの中央または後端近くに推進ジャッキ2を後方に向け上下に並べて配設する。図中3は隔壁を示す。
【0004】
かかるオープンシールド機1を使用して施工するオープンシールド工法は、図示は省略するが、発進坑内にこのオープンシールド機1を設置して、オープンシールド機1の推進ジャッキ2を伸長して発進坑内の反力壁に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体4を上方から吊り降ろし、オープンシールド機1のテール部1c内で縮めた推進ジャッキ2の後方にセットする。推進ジャッキ2と反力壁との間にはストラットを配設して適宜間隔調整をする。
【0005】
また、発進坑は土留壁で構成し、オープンシールド機1を発進させるにはこの土留壁を一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入などで発進坑の前方部分に地盤改良を施しておくこともある。
【0006】
ショベル等の掘削機9でオープンシールド機1の前面または上面から土砂を掘削しかつ排土する。この排土工程と同時またはその後に推進ジャッキ2を伸長してオープンシールド機1を前進させる。この前進工程の場合、コンクリート函体4の前にはボックス鋼材または型鋼を用いた枠体よりなるプレスバー8を配設し、オープンシールド機1は後方にセットされたコンクリート函体4から反力をとる。
【0007】
そして第1番目のコンクリート函体4の前に第2番目のコンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1c内で吊り降ろす。以下、同様の排土工程、前進工程、コンクリート函体の4のセット工程を適宜繰り返して、順次コンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、さらにこのコンクリート函体4の上面に埋戻土5を入れる。
【0008】
なお、コンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1c内に吊り降ろす際には、コンクリートブロック等による高さ調整材7をコンクリート函体4下に配設し、このテール部1c内でコンクリート函体4の左右および下部の空隙にグラウト材6を充填する。
【0009】
このようにして、オープンシールド機1が到達坑まで達したならばこれを撤去して工事を完了する。
【0010】
このようなオープンシールド工法では、前記のごとくコンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、コンクリート函体4は、オープンシールド機1のテール部1c内に吊り降ろされ、オープンシールド機1の前進とともに該テール部1cから出て地中に残されていくものであり、オープンシールド機1はこのように地中に残置したコンクリート函体4に反力をとって前進する。
【0011】
オープンシールド機としてはこの他、図12に示すように機体を前後方向で複数に分割し、テール部1cとしての後方の機体の前端を、断面積を僅かに縮小し、これをフロント部1dとしての前方の機体の後端に嵌入し、相互の嵌合部としての中折れ部1eで屈曲可能としてカーブ施工を可能としたり、方向修正を行えるようにしたものもある。
【0012】
これは、フロント部1dとしての前方の機体の前端と上面を開放面としてあり、機体内で後部に後方へ向けて中折ジャッキ30を左右によせて、また上下複数段に配設している。これに対してテール部1cは、機体内で前部に後方へ向けて推進ジャッキ2を左右によせて、また上下複数段に配設している。図中50はフロント部1dの前端に設けた可動分割刃口、51はテール部1cの後端に設けた後部土留板、34はストラット、8はプレスバー(押角)である。
【0013】
前記いずれのシールド機においても、使用するコンクリート函体4は鉄筋コンクリート製で、図13に示すように左側板4a、右側板4bと上床板4cと下床板4dとからなる一体のもので、前後面が開口10として開放されている。
【0014】
ところでオープンシールド工法で水路の改修工事を行うことがある。それまで地上に出ていた既設水路を地下に配置変更するため、既設水路を土嚢やブロックにより途中で堰き止め、その部分を取り込むようにこの堰き止めた水無し水路に沿って掘削し、新たな水路としての地中構造物を施工するものである。
【0015】
その施工法は、既設水路の後方にオープンシールド機を対向させ、既設水路を後方より区分毎に撤去し、その後撤去した分だけ推進ジャッキを伸長してコンクリート函体を反力にしてシールド機を前進させ、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たなコンクリート函体をセットする。これを適宜繰り返して順次コンクリート函体を縦列に埋設するというものである。
【0016】
しかし、既設水路の水を工期中塞き止め続けるため、その間は既設水路に代わって排水するルートを確保しなければならず、そのために多くの労力が必要となってしまう。また、工期中に集中豪雨などがあると、堰き止めた水無し水路に流れ込んだ水が流水となって改修途中の既設水路後端から溢れだし、その水によって周辺地山が洗掘されてしまい、周辺に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0017】
更に、既設水路からの水がオープンシールド機1に流れ込み、さらに隔壁3で阻止されて、これがオープンシールド機1の前部に溜まり、かつ、溢れ出して作業員が非常に危険な状態にさらされるおそれがあった。
【0018】
そこで、既設水路からの水をオープンシールド機を通して後方の改修済み水路に送ることで、別途排水ルートを確保しなくても済み、集中豪雨時などにオープンシールド機に流れ込む水が溢れることによる危険を回避できる技術として、以下の特許文献が存在する。
【特許文献1】特開平6−158993号公報
【0019】
これは図14に示すように、隔壁3は下部を蝶番21による結合として、前方に傾倒自在とし、通常施工時にはこの隔壁3は起立させておき、前方からオープンシールド機1に流水がある場合は、隔壁3を傾倒させて左右側壁板1aと該隔壁3で樋を構成し、流水をオープンシールド機1内を通し、後方に送るものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、既設水路の外幅がオープンシールド機1のフロント部の内幅よりも小さい場合には、既設水路の後端をオープンシールド機1のフロント部内に収めた状態で隔壁3を傾倒させて既設水路より放流すれば、水はこれより外に漏れることなくオープンシールド機1の後方に送ることができるが、周辺環境の事情により、既設水路と同程度の幅のオープンシールド機しか導入できない場合もあり、この場合には既設水路の外幅がオープンシールド機1の内幅より大きいものとなる。
【0021】
そしてこのような場合には、既設水路の後端をフロント部内に取り込むことができず、既設水路は常にオープンシールド機の前方外側に位置することから、そのまま既設水路から放流すると、シールド機のフロント部前端と既設水路後端との間から多量の水が漏れて周辺地山を洗掘してしまう。
【0022】
また、周辺の地盤が緩く崩壊し易い場合、既設水路の外幅がオープンシールド機1の内幅より小さければ、既設水路の後端をシールド機のフロント部内に取り込み、フロント部の側壁板により土留めされた状態で、フロント部内の既設水路を撤去することで、周辺地山の崩壊を防止することができるが、既設水路の外幅がオープンシールド機の内幅より大きい場合にはそれは不可能であるため、既設水路の改修作業中に側部地山が崩れてしまうおそれがある。
【0023】
例えば、図15のような左右の側壁42と底床板41とを備える既設水路40を撤去し、これを新たなコンクリート函体による水路に置き替える改修を行う場合、既設水路40を撤去しながらフロント部1d内およびその前方の掘削排土とオープンシールド機1の推進を行うことになるが、側壁42を撤去した段階で、側壁42による土留が解除される。
【0024】
このため、周辺地山が崩壊し易い土壌である場合には、側壁42の撤去時からオープンシールド機1を推進させるまでの間のタイムラグにより、撤去した水路周辺の地山が図中矢印で示すように、フロント部1d内方向に崩れて緩み、地盤が陥没するなど、周辺へ影響を及ぼしてしまう。
【0025】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、既設水路の水をオープンシールド機を通して後方に送ることで、既設水路の改修作業中でも別途排水ルートを確保する必要が無く、更に、既設水路の外幅がシールド機フロント部の内幅より大きい場合であっても、既設水路の改修に伴う周辺地山の洗掘や緩みなどの周辺への影響を抑えることができるオープンシールド工法による既設水路の改修方法およびオープンシールド機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記目的を達成するため、本発明のオープンシールド工法による既設水路の改修方法は第1に、側壁と底床板とを備える既設水路の後方に断面U字形のオープンシールド機を対向させ、既設水路を後方より区分毎に撤去する工程と、撤去した分だけ推進ジャッキを伸長してコンクリート函体を反力にしてシールド機を前進させる工程と、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たなコンクリート函体をセットする工程とを適宜繰り返して順次コンクリート函体を縦列に埋設するオープンシールド工法による既設水路の改修方法において、外開きの観音開き式扉を備える水路幅方向の閉鎖壁をシールド機のフロント部前方に配置し、この閉鎖壁とフロント部内とによる囲繞空間内を掘削排土する工程と、既設水路の側壁を1区分撤去するのに対応して前記閉鎖壁の扉を開く工程と、その状態で既設水路の底床板を1区分撤去する工程と、前記閉鎖壁を撤去してシールド機を前進させる工程とを繰り返すことを要旨とするものである。
【0027】
そしてそれに加えて第2に、既設水路より放流する時には、オープンシールド機内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする隔壁を開くこと、または、オープンシールド機内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする上下2段の隔壁の下段高さを既設水路の底面高さに合わせつつ、当該隔壁の上段のみを開くことを要旨とするものである。
【0028】
また、本発明のオープンシールド機としては第1に、既設水路の後方に断面U字形のオープンシールド機を対向させ、既設水路を後方より区分毎に撤去する工程と、撤去した分だけ推進ジャッキを伸長してコンクリート函体を反力にしてシールド機を前進させる工程と、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たなコンクリート函体をセットする工程とを適宜繰り返して順次コンクリート函体を縦列に埋設するオープンシールド工法による既設水路の改修方法で使用するオープンシールド機において、外開きの観音開き式扉を備える水路幅方向の閉鎖壁をシールド機のフロント部前方に着脱自在に配設することを要旨とするものである。
【0029】
そしてそれに加えて第2に、オープンシールド機の左右側壁板間に配設し、機体内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする隔壁を開閉自在とすることを要旨とする。
【0030】
または、オープンシールド機の左右側壁板間に配設し、機体内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする隔壁を上下2段に構成するとともに、下段の隔壁を既設水路の底面に合わせて高さ調節自在とし、上段の隔壁を開閉自在とすることを要旨とする。この場合、それに加えて更に第3に、下段の隔壁の高さ調節は上下にスライドさせて行うことを要旨とするものである。
【0031】
請求項1記載の本発明によれば、閉鎖壁の扉を開いて既設水路よりオープンシールド機内へ水を導き、これを後方の改修済み水路へ適宜流すことで、水路の改修作業中でも放流が可能となり、別途排水ルートを確保せずに済む。
【0032】
そして、既設水路の外幅がオープンシールド機のフロント部の内幅より大きくフロント部内に取り込めない場合であっても、閉鎖壁の一部である外開きの観音開き式扉を開くことにより、フロント部とその前方の既設水路との間にできる隙間の側部が塞がれた状態で既設水路の水をオープンシールド機へと導くことができるから、フロント部と既設水路との間から多量の水が漏れて周辺地山を洗掘してしまうことがない。
【0033】
また、更に既設水路の周辺地山が崩壊し易い地質であっても、オープンシールド機のフロント部前方に閉鎖壁を配置した閉鎖状態でフロント部内を掘削排土するから、その間にオープンシールド機前方の地山が崩れてフロント部内になだれ込み、周辺地山が緩んでしまうことがない。
【0034】
そして、既設水路の側壁を撤去するのに対応させて、フロント部前方の閉鎖壁の扉を外側に開くから、この扉により側部地山が土留めされ、側壁を撤去しても周辺地山が緩んでしまうことがない。
【0035】
そしてこのように閉鎖壁の扉により側部地山が土留めされた状態で、既設水路の底床板の撤去作業を行うから、その間に周辺地山が緩むこともない。また、オープンシールド機を推進させるまでの間、フロント部前方より閉鎖壁を撤去するのは、底床板の撤去後の僅かな間だけであるから、既設水路の側部地山の土留めが解除される時間は短く、周辺地山の緩みが進むことはない。
【0036】
請求項2記載の本発明によれば、前記に加えて更に、オープンシールド機内の空間を前後に区画する隔壁により、普段はフロント部内の土砂が後方に移動するのを規制して、テール部でのコンクリート函体設置作業に支障をきたさないようにするとともに、オープンシールド機の前進時に土砂を圧密して、掘削機での掘削・排土を容易としつつ、既設水路より放流する際にはこの隔壁を開くことで、既設水路からの水をシールド機内を通して後方の改修済み水路に排水することができる。
【0037】
請求項3記載の本発明によれば、普段は閉じた隔壁によりフロント部の土留め及び土圧調整を行い、既設水路より放流する際には隔壁を開いてシールド機内に水の通り道を確保する点では前記請求項2と同様であるが、この隔壁を上下2段とし、開閉するのは上段の隔壁のみとし、下段の隔壁の高さを既設水路の底面高さに合わせることで、オープンシールド機の底面と既設水路の底面とに高低差がある場合であっても、高低差分の土砂を下段の隔壁によって土留めしつつ、上段の隔壁を開いて既設水路からの水をシールド機内を通して後方に送ることができる。
【0038】
請求項4から請求項6記載の本発明によれば、請求項1から請求項3の本発明と同様の作用が得られるが、閉鎖壁をオープンシールド機の構成要素の一部とした上で、これを着脱自在としたものである。
【0039】
請求項7記載の本発明によれば、下段の隔壁を上下にスライドさせることで、高さ調節を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0040】
以上述べたように本発明のオープンシールド工法による既設水路の改修方法およびオープンシールド機は、既設水路の水をオープンシールド機を通して後方に送ることで、既設水路の改修作業中でも別途排水ルートを確保する必要が無く、更に、既設水路の外幅がシールド機フロント部の内幅より大きい場合であっても、既設水路の改修に伴う周辺地山の洗掘や緩みなどの周辺への影響を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のオープンシールド機の第1実施形態のフロント部を示す平面図である。本発明のオープンシールド機を使用するオープンシールド工法は前記従来例と同様であるから、ここでの詳細な説明は省略する。また、前記従来例と同一の構成要素については、同一の符号を付す。
【0042】
本発明のオープンシールド機1も図12の前記従来例と同様に、左右の側壁板1aと底板1bとにより断面U字形に形成し、機体を前後複数に分割して、フロント部1dとしての前方の機体の後端に後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部としての中折れ部1eで屈曲可能としたものである。
【0043】
また、フロント部1dの側壁板1a間の後方寄りに配置してオープンシールド機1の前後を仕切る隔壁3とを備え、前面、後面および上面を開口したものである。
【0044】
そして、前記側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成する。なお、中折れ部1eおよびテール部以降の構成は前期従来例と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0045】
そしてフロント部1dの前方を覆うように、金属板による閉鎖壁13を幅方向に配設し、左右側壁板1aの先端に外側から被せるように、その両端を後方に折り曲げる。閉鎖壁13は蝶番15により外開きとする観音開き式扉14を備え、扉14部分の横幅は、改修する既設水路40の内幅(左右の側壁42内面間の幅)と同じか、それよりもやや小さめに設定する。
【0046】
フロント部1d内に配設する隔壁3は開閉式のものであり、上下スライド式(図3)、シャッター式(図4)、前方傾倒式(図5)、後方観音開き式(図6)、折り戸式(図7)、前方観音開き式(図8)など、各種方式が採用可能である。
【0047】
また、中折れ部1eにおいて、前後の機体の嵌着部分における左右の隙間を、ゴムなどの柔軟性に富むシール材により止水しておく。
【0048】
次に、このように構成するオープンシールド機1を使用した本発明のオープンシールド工法による水路の改修方法の1実施形態について説明する。なお、本実施例において使用するオープンシールド工法の基本構成は従来と同様であるからここでの詳細な説明は省略する。
【0049】
まず、左右の側壁42および底床板41からなる既設水路40の水を施工箇所より上流において一時的に塞き止め、既設水路40の後端に対向させてオープンシールド機1を配置した上で、第1工程として図1に示すように、フロント部1dの前方に閉鎖壁13を配置する。
【0050】
そして扉14を閉じた状態で、フロント部1d内の土砂をバックホウなどの掘削機により掘削排土する。このとき、例え既設水路40の周辺地山が崩壊し易い地質であっても、フロント部1d前方は閉鎖壁13により覆われているから、フロント部1d内を掘削している間にオープンシールド機1前方の地山が崩れてフロント部1d内になだれ込み、周辺地山が緩んでしまうということがない。
【0051】
そしてフロント部1d内を掘削後、第2工程として、既設水路40の側壁42を1区分撤去するのに対応させて、閉鎖壁13の扉14を開く。すなわち、扉14を開いた状態で側壁42を撤去するか、若しくは、側壁42を撤去してすぐに扉14を開く。
【0052】
この開いた扉14により側部地山が土留めされるから、側壁42を撤去しても周辺地山が緩んでしまうことがない。そして第3工程として、底床板41を1区分撤去する。その間も側部地山は扉14により土留めされており、撤去作業中に地山が崩壊することはない。
【0053】
そして第4工程として、閉鎖壁13を撤去してフロント部1d前方を開き、すぐに推進ジャッキを伸長させて後方のコンクリート函体を反力としてオープンシールド機1を前進させ、フロント部1dを既設水路40の新たな後端に対向させる。このとき、オープンシールド機1の前進に伴って隔壁3によりフロント部1d内の土砂が圧密されて、その後の掘削機によるフロント部1d内の掘削排土を容易とすることができる。
【0054】
そして前進が終わったら、すぐにフロント部1dの前方に閉鎖壁13を配置して、推進ジャッキを縮めてテール部に新たなコンクリート函体を吊り降ろし、前記第1工程に戻る。
【0055】
このとき、閉鎖壁13と既設水路40の後端との間の隙間が大きくならない程度に、オープンシールド機1を既設水路40の後端に近接させて対向させる。この状態で閉鎖壁13は水路幅方向に配置され、既設水路40の後端を止めるから、既設水路40の後端以降の空間に向かって周辺地山が崩れてしまうことがない。
【0056】
このように、フロント部1d前方より閉鎖壁13を撤去するのは、底床板41の撤去後の僅かな間だけであるから、既設水路40の側部地山の土留めが解除される時間は短く、周辺地山の緩みが進むことはない。
【0057】
以上の第1工程から第4工程を繰り返すことにより、既設水路40を区分毎に撤去し、水路を改修する。
【0058】
ところで、1日の改修作業が終わった後、または、大雨などにより既設水路40内に流水があり、既設水路40の水を放流する必要がある場合には、図2に示すように閉鎖壁13をフロント部1d前方に配置して扉14を開くとともに、開閉式の隔壁3を開いてオープンシールド機1内に水の通り道を形成する。
【0059】
そして、既設水路40より放流すれば、水はオープンシールド機1内を通り、後方の改修済みの新設水路を通って排水される。このように、閉鎖壁13の扉14を開いて既設水路40よりオープンシールド機1内へ水を導き、これを後方の改修済み水路へ適宜流すことで、水路の改修作業中でも放流が可能となり、別途排水ルートを確保せずに済む。
【0060】
また、既設水路40の外幅がオープンシールド機1のフロント部1dの内幅より大きくフロント部1d内に取り込めないため、フロント部1d先端と既設水路40後端との間に若干の距離がある場合であっても、閉鎖壁13およびその扉14によってこの隙間の側部が塞がれるから、放流時にフロント部1dと既設水路40との間から多量の水が漏れて周辺地山を洗掘してしまうことがない。
【0061】
なお、扉14の横幅は既設水路40の内幅と同じかやや小さめであるから、開いた扉14の先端が既設水路40の側壁42の内面に当接し、これにより、扉14先端と側壁42との隙間から水が漏れて周辺地山を洗掘してしまうこともない。
【0062】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9は本発明のオープンシールド機の第2実施形態の縦断側面図である。本実施例のオープンシールド機1も前記第1実施形態と同様に、機体を前後に分割して屈曲自在としたものであり、左右の側壁板1aおよび底板1bを備えて断面U字形とし、フロント部1dの側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成するとともに、フロント部1dの後方寄りに隔壁3を設ける。
【0063】
そして前記第1実施形態と同様に、フロント部1dの前方を覆うように、外開きの観音開き式扉14を備える金属板による閉鎖壁13を幅方向に配設し、左右側壁板1aの先端に外側から被せるように、その両端を後方に折り曲げる。
【0064】
また、扉14部分の横幅は、改修する既設水路40の内幅(左右の側壁41内面間の幅)と同じか、それよりもやや小さめに設定するが、扉14の上下位置を既設水路40の底床板41表面よりも上の部分に対応させて設ける。
【0065】
フロント部1d内に配設する隔壁3は上下2段に構成する。そして下段の隔壁37の位置に対応させて、フロント部1dの底板1bの上面より垂直下向きに戸袋39を形成するとともに、左右の側壁板1aの内側に上下方向のスライド溝(付図示)を形成し、下段の隔壁37の下端を戸袋39に収めて、上下にスライド自在とする。
【0066】
また、下段の隔壁37のスライド範囲は、オープンシールド機1に対して既設水路40の底面がとり得る高さの範囲に設定し、下段の隔壁37の高さを既設水路40の底面の高さに合わせて調節できるようにする。
【0067】
一方、上段の隔壁38は開閉式のものであり、その開閉方式は前記実施例と同様に各種の方式を採用可能であるが、スライド式(図3)やシャッター式(図4)など、下端の高さ調節が可能な方式を採用する場合には、最も下げた状態の下段の隔壁37の上端と同じ高さまで、上段の隔壁38の下端を下げられるように設定する。
【0068】
また、下端の高さ調節が不可能な方式を採用する場合には、下端の位置を、最も下げた状態の下段の隔壁37の上端と同じ高さにするとともに、下段の隔壁37との前後位置関係については、下段の隔壁37に対して上段の隔壁38を、開閉方向と同方向に配設する。
【0069】
次に、このように構成するオープンシールド機1を使用した本発明のオープンシールド工法による水路の改修方法の1実施形態について説明する。なお、本実施例において使用するオープンシールド工法の基本構成は従来と同様であるからここでの詳細な説明は省略する。
【0070】
前記第1実施例と同様に、左右の側壁42および底床板41からなる既設水路40の水を施工箇所より上流において一時的に塞き止め、既設水路40の後端に対向させてオープンシールド機1を配置した上で、第1工程としてフロント部1dの前方に閉鎖壁13を配置する。
【0071】
そして扉14を閉じた状態で、フロント部1d内の土砂をバックホウなどの掘削機により掘削排土する。このとき、例え既設水路40の周辺地山が崩壊し易い地質であっても、フロント部1d前方は閉鎖壁13により覆われているから、フロント部1d内を掘削している間にオープンシールド機1前方の地山が崩れてフロント部1d内になだれ込み、周辺地山が緩んでしまうということがない。
【0072】
そしてフロント部1d内を掘削後、第2工程として、既設水路40の側壁42を1区分撤去するのに対応させて、閉鎖壁13の扉14を開く。すなわち、扉14を開いた状態で側壁42を撤去するか、若しくは、側壁42を撤去してすぐに扉14を開く。
【0073】
このとき、既設水路40の底床板41とオープンシールド機1の底板1bとの間に高低差があっても、閉鎖壁13の扉14は既設水路40の底面より上の部分で開くから、底床板41が扉14を開く上で妨げとなることはない。
【0074】
そして、この開いた扉14により側部地山が土留めされるから、側壁42を撤去しても周辺地山が緩んでしまうことがない。次の第3工程以降は前記第1実施例と同様であり、第1工程から第4工程を繰り返すことにより、周辺地山の緩みを抑えつつ、既設水路40を区分毎に撤去して水路を改修することができる。
【0075】
ところで、1日の改修作業が終わった後、または、大雨などにより既設水路40内に流水があり、既設水路40の水を放流する必要がある場合には、閉鎖壁13をフロント部1d前方に配置して扉14を開くとともに、下段の隔壁37を上下にスライドさせてその高さを既設水路40の底面の高さに合わせ、上段の隔壁38を開いてオープンシールド機1内に水の通り道を形成する。
【0076】
なお、下段の隔壁37を上下にスライドさせた際の位置決め固定は、側壁板1aに対して下段の隔壁37を適宜ボルト締めするなどして行う。
【0077】
そして、既設水路40より放流すれば、水はオープンシールド機1内を通り、後方の改修済みの新設水路を通って排水される。このとき、既設水路40の底面より下の部分の土砂がフロント部1d内に残っていても、これを下段の隔壁37によって土留めするから、フロント部1d内の土砂が水とともに後方に押し流されてテール部1dに溜まりコンクリート函体4の設置作業を阻害したり、改修済みの既設水路内に溜まって水路の内部空間を狭めたりしてしまうことがない。
【0078】
このように、隔壁3を上下2段とすることで、オープンシールド機1の底面と既設水路40の底面とに高低差がある場合であっても、高低差分の土砂を下段の隔壁37によって土留めしつつ、上段の隔壁38を開いて既設水路40からの水をオープンシールド機1内を通して後方に送ることができる。
【0079】
また、水路の改修作業中でも放流が可能となり、別途排水ルートを確保せずに済むこと、及び、放流時にフロント部1dと既設水路40との間から多量の水が漏れて周辺地山を洗掘してしまうことがない点については、前記第1実施例と同様である。
【0080】
なお、下段の隔壁37は上下にスライド自在とすることで容易に高さ調節を行うことができるが、高さ調節の方法はこれに限らず、例えば下段の隔壁37を更に上下複数に分割し、配設する板の数によって調節することもできる。
【0081】
ところで、扉14を開いた際に、その先端が既設水路40の側壁42内面に当接するようにするため、前記実施例においてはいずれも閉鎖壁13の扉14部分の横幅を既設水路40の内幅と同じかやや小さめに設定したが、これにより左右各々の扉の幅が既設水路40の1区分の長さより小さくなる場合には、図10に示すように、扉14の先端に蝶番16を介して延長扉17を設けるようにしても良い。
【0082】
これにより、扉14を開いた際にその先端を延長させることができ、既設水路40の側壁42を1区分撤去した後でも、その前方の未撤去の側壁42後端とオープンシールド機1のフロント部1d先端との隙間の側部を扉14および延長扉17によって塞いで土留めすることができる。
【0083】
この他、閉鎖壁13の扉14を上下複数に分割して設けることも可能である。これにより、既設水路40の底面より上の部分の扉14のみを開いて使用して、底面の高さが異なる複数の既設水路40の改修工事に適用可能とすることができる。
【0084】
また、閉鎖壁13左右両端の折り曲げ部分の内側と、フロント部1dの側壁板1a先端外側とに、互いに嵌合するガイド溝を設けても良い。これにより、閉鎖壁13をフロント部1dの上下にスライドさせて着脱自在とするとともに、閉鎖壁13を配設した状態で閉鎖壁13がフロント部1d前方に傾倒しないようにすることができる。
【0085】
また、閉鎖壁13はフロント部1dの前方に被せるように配設するのみならず、フロント部1d内において、左右側壁板1a間の前方位置に着脱自在に配設することも可能である。ただし、閉鎖壁13および左右側壁板1aによるフロント部1d内の囲繞空間を最大限確保するとともに、閉鎖壁13と既設水路40後端との距離を最小限に抑えるためには、前記実施例のごとく、フロント部1dの先端に被せるように閉鎖壁13を配設することが好ましい。
【0086】
以上、前記実施例のオープンシールド工法による水路の改修方法はいずれも、フロント部1dに対して着脱自在の閉鎖壁13を備えるオープンシールド機1を使用して行うようにしたが、これに限らず、閉鎖壁13を備えない既存のオープンシールド機に別途閉鎖壁13を組み合わせて使用して行うこともできる。
【0087】
また、機体を前後に複数分割した屈曲可能なオープンシールド機のみならず、図11のような全体が一体型のオープンシールド機にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明のオープンシールド機の第1実施形態のフロント部を示す平面図である。
【図2】閉鎖壁の扉を開いた状態のフロント部を示す平面図である。
【図3】隔壁の開閉方式の第1例を示す側面図である。
【図4】隔壁の開閉方式の第2例を示す側面図である。
【図5】隔壁の開閉方式の第3例を示す側面図である。
【図6】隔壁の開閉方式の第4例を示す側面図である。
【図7】隔壁の開閉方式の第5例を示す側面図である。
【図8】隔壁の開閉方式の第6例を示す側面図である。
【図9】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す全体側面図である。
【図10】閉鎖壁の他の例を示す平面図である。
【図11】オープンシールド工法の概略を示す縦断側面図である。
【図12】従来の機体を前後に分割したオープンシールド機を示す縦断側面図である。
【図13】従来のコンクリート函体の斜視図である。
【図14】従来のオープンシールド機の1例を示す縦断側面図である。
【図15】従来のオープンシールド工法による水路の改修方法で使用するオープンシールド機のフロント部の平面図である。
【符号の説明】
【0089】
1 オープンシールド機 1a 側壁板
1b 底板 1c テール部
1d フロント部 1e 中折れ部
2 推進ジャッキ
3 隔壁 4 コンクリート函体
4a 左側板 4b 右側板
4c 上床板 4d 下床板
5 埋戻土
6 グラウト材 7 高さ調整材
8 プレスバー 9 掘削機
10 開口 11 刃口
13 閉鎖壁 14 扉
15、16 蝶番 17 延長扉
21 蝶番
30 中折れジャッキ 34 ストラット
37 下段の隔壁 38 上段の隔壁
39 戸袋 40 既設水路
41 底床板 42 側壁
50 可動分割刃口 51 後部土留板
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道、共同溝、電信・電話などの付設地下道や、乗用車専用道路等の地下構造物を構築するためのオープンシールド工法により、既設水路の改修を行う方法、およびそれに適したオープンシールド機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上下水道、共同溝、電信・電話などの付設地下道等の地下構造物を市街地などに施工する工法として、オープンシールド工法が広く用いられている。オープンシールド工法は開削工法(オープンカット工法)とシールド工法の長所を活かした合理性に富む工法である。
【0003】
このオープンシールド工法で使用するオープンシールド機1の概略は図11に示すように左右の側壁板1aと、これら側壁板1aに連結する底板1bとからなる前面、後面および上面を開口した断面U字形のもので、前記側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成し、また側壁板1aの中央または後端近くに推進ジャッキ2を後方に向け上下に並べて配設する。図中3は隔壁を示す。
【0004】
かかるオープンシールド機1を使用して施工するオープンシールド工法は、図示は省略するが、発進坑内にこのオープンシールド機1を設置して、オープンシールド機1の推進ジャッキ2を伸長して発進坑内の反力壁に反力をとってオープンシールド機1を前進させ、地下構造物を形成する第1番目のコンクリート函体4を上方から吊り降ろし、オープンシールド機1のテール部1c内で縮めた推進ジャッキ2の後方にセットする。推進ジャッキ2と反力壁との間にはストラットを配設して適宜間隔調整をする。
【0005】
また、発進坑は土留壁で構成し、オープンシールド機1を発進させるにはこの土留壁を一部鏡切りするが、必要に応じて薬液注入などで発進坑の前方部分に地盤改良を施しておくこともある。
【0006】
ショベル等の掘削機9でオープンシールド機1の前面または上面から土砂を掘削しかつ排土する。この排土工程と同時またはその後に推進ジャッキ2を伸長してオープンシールド機1を前進させる。この前進工程の場合、コンクリート函体4の前にはボックス鋼材または型鋼を用いた枠体よりなるプレスバー8を配設し、オープンシールド機1は後方にセットされたコンクリート函体4から反力をとる。
【0007】
そして第1番目のコンクリート函体4の前に第2番目のコンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1c内で吊り降ろす。以下、同様の排土工程、前進工程、コンクリート函体の4のセット工程を適宜繰り返して、順次コンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、さらにこのコンクリート函体4の上面に埋戻土5を入れる。
【0008】
なお、コンクリート函体4をオープンシールド機1のテール部1c内に吊り降ろす際には、コンクリートブロック等による高さ調整材7をコンクリート函体4下に配設し、このテール部1c内でコンクリート函体4の左右および下部の空隙にグラウト材6を充填する。
【0009】
このようにして、オープンシールド機1が到達坑まで達したならばこれを撤去して工事を完了する。
【0010】
このようなオープンシールド工法では、前記のごとくコンクリート函体4をオープンシールド機1の前進に伴い縦列に地中に残置し、コンクリート函体4は、オープンシールド機1のテール部1c内に吊り降ろされ、オープンシールド機1の前進とともに該テール部1cから出て地中に残されていくものであり、オープンシールド機1はこのように地中に残置したコンクリート函体4に反力をとって前進する。
【0011】
オープンシールド機としてはこの他、図12に示すように機体を前後方向で複数に分割し、テール部1cとしての後方の機体の前端を、断面積を僅かに縮小し、これをフロント部1dとしての前方の機体の後端に嵌入し、相互の嵌合部としての中折れ部1eで屈曲可能としてカーブ施工を可能としたり、方向修正を行えるようにしたものもある。
【0012】
これは、フロント部1dとしての前方の機体の前端と上面を開放面としてあり、機体内で後部に後方へ向けて中折ジャッキ30を左右によせて、また上下複数段に配設している。これに対してテール部1cは、機体内で前部に後方へ向けて推進ジャッキ2を左右によせて、また上下複数段に配設している。図中50はフロント部1dの前端に設けた可動分割刃口、51はテール部1cの後端に設けた後部土留板、34はストラット、8はプレスバー(押角)である。
【0013】
前記いずれのシールド機においても、使用するコンクリート函体4は鉄筋コンクリート製で、図13に示すように左側板4a、右側板4bと上床板4cと下床板4dとからなる一体のもので、前後面が開口10として開放されている。
【0014】
ところでオープンシールド工法で水路の改修工事を行うことがある。それまで地上に出ていた既設水路を地下に配置変更するため、既設水路を土嚢やブロックにより途中で堰き止め、その部分を取り込むようにこの堰き止めた水無し水路に沿って掘削し、新たな水路としての地中構造物を施工するものである。
【0015】
その施工法は、既設水路の後方にオープンシールド機を対向させ、既設水路を後方より区分毎に撤去し、その後撤去した分だけ推進ジャッキを伸長してコンクリート函体を反力にしてシールド機を前進させ、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たなコンクリート函体をセットする。これを適宜繰り返して順次コンクリート函体を縦列に埋設するというものである。
【0016】
しかし、既設水路の水を工期中塞き止め続けるため、その間は既設水路に代わって排水するルートを確保しなければならず、そのために多くの労力が必要となってしまう。また、工期中に集中豪雨などがあると、堰き止めた水無し水路に流れ込んだ水が流水となって改修途中の既設水路後端から溢れだし、その水によって周辺地山が洗掘されてしまい、周辺に悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0017】
更に、既設水路からの水がオープンシールド機1に流れ込み、さらに隔壁3で阻止されて、これがオープンシールド機1の前部に溜まり、かつ、溢れ出して作業員が非常に危険な状態にさらされるおそれがあった。
【0018】
そこで、既設水路からの水をオープンシールド機を通して後方の改修済み水路に送ることで、別途排水ルートを確保しなくても済み、集中豪雨時などにオープンシールド機に流れ込む水が溢れることによる危険を回避できる技術として、以下の特許文献が存在する。
【特許文献1】特開平6−158993号公報
【0019】
これは図14に示すように、隔壁3は下部を蝶番21による結合として、前方に傾倒自在とし、通常施工時にはこの隔壁3は起立させておき、前方からオープンシールド機1に流水がある場合は、隔壁3を傾倒させて左右側壁板1aと該隔壁3で樋を構成し、流水をオープンシールド機1内を通し、後方に送るものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、既設水路の外幅がオープンシールド機1のフロント部の内幅よりも小さい場合には、既設水路の後端をオープンシールド機1のフロント部内に収めた状態で隔壁3を傾倒させて既設水路より放流すれば、水はこれより外に漏れることなくオープンシールド機1の後方に送ることができるが、周辺環境の事情により、既設水路と同程度の幅のオープンシールド機しか導入できない場合もあり、この場合には既設水路の外幅がオープンシールド機1の内幅より大きいものとなる。
【0021】
そしてこのような場合には、既設水路の後端をフロント部内に取り込むことができず、既設水路は常にオープンシールド機の前方外側に位置することから、そのまま既設水路から放流すると、シールド機のフロント部前端と既設水路後端との間から多量の水が漏れて周辺地山を洗掘してしまう。
【0022】
また、周辺の地盤が緩く崩壊し易い場合、既設水路の外幅がオープンシールド機1の内幅より小さければ、既設水路の後端をシールド機のフロント部内に取り込み、フロント部の側壁板により土留めされた状態で、フロント部内の既設水路を撤去することで、周辺地山の崩壊を防止することができるが、既設水路の外幅がオープンシールド機の内幅より大きい場合にはそれは不可能であるため、既設水路の改修作業中に側部地山が崩れてしまうおそれがある。
【0023】
例えば、図15のような左右の側壁42と底床板41とを備える既設水路40を撤去し、これを新たなコンクリート函体による水路に置き替える改修を行う場合、既設水路40を撤去しながらフロント部1d内およびその前方の掘削排土とオープンシールド機1の推進を行うことになるが、側壁42を撤去した段階で、側壁42による土留が解除される。
【0024】
このため、周辺地山が崩壊し易い土壌である場合には、側壁42の撤去時からオープンシールド機1を推進させるまでの間のタイムラグにより、撤去した水路周辺の地山が図中矢印で示すように、フロント部1d内方向に崩れて緩み、地盤が陥没するなど、周辺へ影響を及ぼしてしまう。
【0025】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、既設水路の水をオープンシールド機を通して後方に送ることで、既設水路の改修作業中でも別途排水ルートを確保する必要が無く、更に、既設水路の外幅がシールド機フロント部の内幅より大きい場合であっても、既設水路の改修に伴う周辺地山の洗掘や緩みなどの周辺への影響を抑えることができるオープンシールド工法による既設水路の改修方法およびオープンシールド機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記目的を達成するため、本発明のオープンシールド工法による既設水路の改修方法は第1に、側壁と底床板とを備える既設水路の後方に断面U字形のオープンシールド機を対向させ、既設水路を後方より区分毎に撤去する工程と、撤去した分だけ推進ジャッキを伸長してコンクリート函体を反力にしてシールド機を前進させる工程と、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たなコンクリート函体をセットする工程とを適宜繰り返して順次コンクリート函体を縦列に埋設するオープンシールド工法による既設水路の改修方法において、外開きの観音開き式扉を備える水路幅方向の閉鎖壁をシールド機のフロント部前方に配置し、この閉鎖壁とフロント部内とによる囲繞空間内を掘削排土する工程と、既設水路の側壁を1区分撤去するのに対応して前記閉鎖壁の扉を開く工程と、その状態で既設水路の底床板を1区分撤去する工程と、前記閉鎖壁を撤去してシールド機を前進させる工程とを繰り返すことを要旨とするものである。
【0027】
そしてそれに加えて第2に、既設水路より放流する時には、オープンシールド機内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする隔壁を開くこと、または、オープンシールド機内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする上下2段の隔壁の下段高さを既設水路の底面高さに合わせつつ、当該隔壁の上段のみを開くことを要旨とするものである。
【0028】
また、本発明のオープンシールド機としては第1に、既設水路の後方に断面U字形のオープンシールド機を対向させ、既設水路を後方より区分毎に撤去する工程と、撤去した分だけ推進ジャッキを伸長してコンクリート函体を反力にしてシールド機を前進させる工程と、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たなコンクリート函体をセットする工程とを適宜繰り返して順次コンクリート函体を縦列に埋設するオープンシールド工法による既設水路の改修方法で使用するオープンシールド機において、外開きの観音開き式扉を備える水路幅方向の閉鎖壁をシールド機のフロント部前方に着脱自在に配設することを要旨とするものである。
【0029】
そしてそれに加えて第2に、オープンシールド機の左右側壁板間に配設し、機体内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする隔壁を開閉自在とすることを要旨とする。
【0030】
または、オープンシールド機の左右側壁板間に配設し、機体内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする隔壁を上下2段に構成するとともに、下段の隔壁を既設水路の底面に合わせて高さ調節自在とし、上段の隔壁を開閉自在とすることを要旨とする。この場合、それに加えて更に第3に、下段の隔壁の高さ調節は上下にスライドさせて行うことを要旨とするものである。
【0031】
請求項1記載の本発明によれば、閉鎖壁の扉を開いて既設水路よりオープンシールド機内へ水を導き、これを後方の改修済み水路へ適宜流すことで、水路の改修作業中でも放流が可能となり、別途排水ルートを確保せずに済む。
【0032】
そして、既設水路の外幅がオープンシールド機のフロント部の内幅より大きくフロント部内に取り込めない場合であっても、閉鎖壁の一部である外開きの観音開き式扉を開くことにより、フロント部とその前方の既設水路との間にできる隙間の側部が塞がれた状態で既設水路の水をオープンシールド機へと導くことができるから、フロント部と既設水路との間から多量の水が漏れて周辺地山を洗掘してしまうことがない。
【0033】
また、更に既設水路の周辺地山が崩壊し易い地質であっても、オープンシールド機のフロント部前方に閉鎖壁を配置した閉鎖状態でフロント部内を掘削排土するから、その間にオープンシールド機前方の地山が崩れてフロント部内になだれ込み、周辺地山が緩んでしまうことがない。
【0034】
そして、既設水路の側壁を撤去するのに対応させて、フロント部前方の閉鎖壁の扉を外側に開くから、この扉により側部地山が土留めされ、側壁を撤去しても周辺地山が緩んでしまうことがない。
【0035】
そしてこのように閉鎖壁の扉により側部地山が土留めされた状態で、既設水路の底床板の撤去作業を行うから、その間に周辺地山が緩むこともない。また、オープンシールド機を推進させるまでの間、フロント部前方より閉鎖壁を撤去するのは、底床板の撤去後の僅かな間だけであるから、既設水路の側部地山の土留めが解除される時間は短く、周辺地山の緩みが進むことはない。
【0036】
請求項2記載の本発明によれば、前記に加えて更に、オープンシールド機内の空間を前後に区画する隔壁により、普段はフロント部内の土砂が後方に移動するのを規制して、テール部でのコンクリート函体設置作業に支障をきたさないようにするとともに、オープンシールド機の前進時に土砂を圧密して、掘削機での掘削・排土を容易としつつ、既設水路より放流する際にはこの隔壁を開くことで、既設水路からの水をシールド機内を通して後方の改修済み水路に排水することができる。
【0037】
請求項3記載の本発明によれば、普段は閉じた隔壁によりフロント部の土留め及び土圧調整を行い、既設水路より放流する際には隔壁を開いてシールド機内に水の通り道を確保する点では前記請求項2と同様であるが、この隔壁を上下2段とし、開閉するのは上段の隔壁のみとし、下段の隔壁の高さを既設水路の底面高さに合わせることで、オープンシールド機の底面と既設水路の底面とに高低差がある場合であっても、高低差分の土砂を下段の隔壁によって土留めしつつ、上段の隔壁を開いて既設水路からの水をシールド機内を通して後方に送ることができる。
【0038】
請求項4から請求項6記載の本発明によれば、請求項1から請求項3の本発明と同様の作用が得られるが、閉鎖壁をオープンシールド機の構成要素の一部とした上で、これを着脱自在としたものである。
【0039】
請求項7記載の本発明によれば、下段の隔壁を上下にスライドさせることで、高さ調節を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0040】
以上述べたように本発明のオープンシールド工法による既設水路の改修方法およびオープンシールド機は、既設水路の水をオープンシールド機を通して後方に送ることで、既設水路の改修作業中でも別途排水ルートを確保する必要が無く、更に、既設水路の外幅がシールド機フロント部の内幅より大きい場合であっても、既設水路の改修に伴う周辺地山の洗掘や緩みなどの周辺への影響を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明のオープンシールド機の第1実施形態のフロント部を示す平面図である。本発明のオープンシールド機を使用するオープンシールド工法は前記従来例と同様であるから、ここでの詳細な説明は省略する。また、前記従来例と同一の構成要素については、同一の符号を付す。
【0042】
本発明のオープンシールド機1も図12の前記従来例と同様に、左右の側壁板1aと底板1bとにより断面U字形に形成し、機体を前後複数に分割して、フロント部1dとしての前方の機体の後端に後方の機体の前端が嵌入して、相互の嵌合部としての中折れ部1eで屈曲可能としたものである。
【0043】
また、フロント部1dの側壁板1a間の後方寄りに配置してオープンシールド機1の前後を仕切る隔壁3とを備え、前面、後面および上面を開口したものである。
【0044】
そして、前記側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成する。なお、中折れ部1eおよびテール部以降の構成は前期従来例と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0045】
そしてフロント部1dの前方を覆うように、金属板による閉鎖壁13を幅方向に配設し、左右側壁板1aの先端に外側から被せるように、その両端を後方に折り曲げる。閉鎖壁13は蝶番15により外開きとする観音開き式扉14を備え、扉14部分の横幅は、改修する既設水路40の内幅(左右の側壁42内面間の幅)と同じか、それよりもやや小さめに設定する。
【0046】
フロント部1d内に配設する隔壁3は開閉式のものであり、上下スライド式(図3)、シャッター式(図4)、前方傾倒式(図5)、後方観音開き式(図6)、折り戸式(図7)、前方観音開き式(図8)など、各種方式が採用可能である。
【0047】
また、中折れ部1eにおいて、前後の機体の嵌着部分における左右の隙間を、ゴムなどの柔軟性に富むシール材により止水しておく。
【0048】
次に、このように構成するオープンシールド機1を使用した本発明のオープンシールド工法による水路の改修方法の1実施形態について説明する。なお、本実施例において使用するオープンシールド工法の基本構成は従来と同様であるからここでの詳細な説明は省略する。
【0049】
まず、左右の側壁42および底床板41からなる既設水路40の水を施工箇所より上流において一時的に塞き止め、既設水路40の後端に対向させてオープンシールド機1を配置した上で、第1工程として図1に示すように、フロント部1dの前方に閉鎖壁13を配置する。
【0050】
そして扉14を閉じた状態で、フロント部1d内の土砂をバックホウなどの掘削機により掘削排土する。このとき、例え既設水路40の周辺地山が崩壊し易い地質であっても、フロント部1d前方は閉鎖壁13により覆われているから、フロント部1d内を掘削している間にオープンシールド機1前方の地山が崩れてフロント部1d内になだれ込み、周辺地山が緩んでしまうということがない。
【0051】
そしてフロント部1d内を掘削後、第2工程として、既設水路40の側壁42を1区分撤去するのに対応させて、閉鎖壁13の扉14を開く。すなわち、扉14を開いた状態で側壁42を撤去するか、若しくは、側壁42を撤去してすぐに扉14を開く。
【0052】
この開いた扉14により側部地山が土留めされるから、側壁42を撤去しても周辺地山が緩んでしまうことがない。そして第3工程として、底床板41を1区分撤去する。その間も側部地山は扉14により土留めされており、撤去作業中に地山が崩壊することはない。
【0053】
そして第4工程として、閉鎖壁13を撤去してフロント部1d前方を開き、すぐに推進ジャッキを伸長させて後方のコンクリート函体を反力としてオープンシールド機1を前進させ、フロント部1dを既設水路40の新たな後端に対向させる。このとき、オープンシールド機1の前進に伴って隔壁3によりフロント部1d内の土砂が圧密されて、その後の掘削機によるフロント部1d内の掘削排土を容易とすることができる。
【0054】
そして前進が終わったら、すぐにフロント部1dの前方に閉鎖壁13を配置して、推進ジャッキを縮めてテール部に新たなコンクリート函体を吊り降ろし、前記第1工程に戻る。
【0055】
このとき、閉鎖壁13と既設水路40の後端との間の隙間が大きくならない程度に、オープンシールド機1を既設水路40の後端に近接させて対向させる。この状態で閉鎖壁13は水路幅方向に配置され、既設水路40の後端を止めるから、既設水路40の後端以降の空間に向かって周辺地山が崩れてしまうことがない。
【0056】
このように、フロント部1d前方より閉鎖壁13を撤去するのは、底床板41の撤去後の僅かな間だけであるから、既設水路40の側部地山の土留めが解除される時間は短く、周辺地山の緩みが進むことはない。
【0057】
以上の第1工程から第4工程を繰り返すことにより、既設水路40を区分毎に撤去し、水路を改修する。
【0058】
ところで、1日の改修作業が終わった後、または、大雨などにより既設水路40内に流水があり、既設水路40の水を放流する必要がある場合には、図2に示すように閉鎖壁13をフロント部1d前方に配置して扉14を開くとともに、開閉式の隔壁3を開いてオープンシールド機1内に水の通り道を形成する。
【0059】
そして、既設水路40より放流すれば、水はオープンシールド機1内を通り、後方の改修済みの新設水路を通って排水される。このように、閉鎖壁13の扉14を開いて既設水路40よりオープンシールド機1内へ水を導き、これを後方の改修済み水路へ適宜流すことで、水路の改修作業中でも放流が可能となり、別途排水ルートを確保せずに済む。
【0060】
また、既設水路40の外幅がオープンシールド機1のフロント部1dの内幅より大きくフロント部1d内に取り込めないため、フロント部1d先端と既設水路40後端との間に若干の距離がある場合であっても、閉鎖壁13およびその扉14によってこの隙間の側部が塞がれるから、放流時にフロント部1dと既設水路40との間から多量の水が漏れて周辺地山を洗掘してしまうことがない。
【0061】
なお、扉14の横幅は既設水路40の内幅と同じかやや小さめであるから、開いた扉14の先端が既設水路40の側壁42の内面に当接し、これにより、扉14先端と側壁42との隙間から水が漏れて周辺地山を洗掘してしまうこともない。
【0062】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図9は本発明のオープンシールド機の第2実施形態の縦断側面図である。本実施例のオープンシールド機1も前記第1実施形態と同様に、機体を前後に分割して屈曲自在としたものであり、左右の側壁板1aおよび底板1bを備えて断面U字形とし、フロント部1dの側壁板1aと底板1bの先端を刃口11として形成するとともに、フロント部1dの後方寄りに隔壁3を設ける。
【0063】
そして前記第1実施形態と同様に、フロント部1dの前方を覆うように、外開きの観音開き式扉14を備える金属板による閉鎖壁13を幅方向に配設し、左右側壁板1aの先端に外側から被せるように、その両端を後方に折り曲げる。
【0064】
また、扉14部分の横幅は、改修する既設水路40の内幅(左右の側壁41内面間の幅)と同じか、それよりもやや小さめに設定するが、扉14の上下位置を既設水路40の底床板41表面よりも上の部分に対応させて設ける。
【0065】
フロント部1d内に配設する隔壁3は上下2段に構成する。そして下段の隔壁37の位置に対応させて、フロント部1dの底板1bの上面より垂直下向きに戸袋39を形成するとともに、左右の側壁板1aの内側に上下方向のスライド溝(付図示)を形成し、下段の隔壁37の下端を戸袋39に収めて、上下にスライド自在とする。
【0066】
また、下段の隔壁37のスライド範囲は、オープンシールド機1に対して既設水路40の底面がとり得る高さの範囲に設定し、下段の隔壁37の高さを既設水路40の底面の高さに合わせて調節できるようにする。
【0067】
一方、上段の隔壁38は開閉式のものであり、その開閉方式は前記実施例と同様に各種の方式を採用可能であるが、スライド式(図3)やシャッター式(図4)など、下端の高さ調節が可能な方式を採用する場合には、最も下げた状態の下段の隔壁37の上端と同じ高さまで、上段の隔壁38の下端を下げられるように設定する。
【0068】
また、下端の高さ調節が不可能な方式を採用する場合には、下端の位置を、最も下げた状態の下段の隔壁37の上端と同じ高さにするとともに、下段の隔壁37との前後位置関係については、下段の隔壁37に対して上段の隔壁38を、開閉方向と同方向に配設する。
【0069】
次に、このように構成するオープンシールド機1を使用した本発明のオープンシールド工法による水路の改修方法の1実施形態について説明する。なお、本実施例において使用するオープンシールド工法の基本構成は従来と同様であるからここでの詳細な説明は省略する。
【0070】
前記第1実施例と同様に、左右の側壁42および底床板41からなる既設水路40の水を施工箇所より上流において一時的に塞き止め、既設水路40の後端に対向させてオープンシールド機1を配置した上で、第1工程としてフロント部1dの前方に閉鎖壁13を配置する。
【0071】
そして扉14を閉じた状態で、フロント部1d内の土砂をバックホウなどの掘削機により掘削排土する。このとき、例え既設水路40の周辺地山が崩壊し易い地質であっても、フロント部1d前方は閉鎖壁13により覆われているから、フロント部1d内を掘削している間にオープンシールド機1前方の地山が崩れてフロント部1d内になだれ込み、周辺地山が緩んでしまうということがない。
【0072】
そしてフロント部1d内を掘削後、第2工程として、既設水路40の側壁42を1区分撤去するのに対応させて、閉鎖壁13の扉14を開く。すなわち、扉14を開いた状態で側壁42を撤去するか、若しくは、側壁42を撤去してすぐに扉14を開く。
【0073】
このとき、既設水路40の底床板41とオープンシールド機1の底板1bとの間に高低差があっても、閉鎖壁13の扉14は既設水路40の底面より上の部分で開くから、底床板41が扉14を開く上で妨げとなることはない。
【0074】
そして、この開いた扉14により側部地山が土留めされるから、側壁42を撤去しても周辺地山が緩んでしまうことがない。次の第3工程以降は前記第1実施例と同様であり、第1工程から第4工程を繰り返すことにより、周辺地山の緩みを抑えつつ、既設水路40を区分毎に撤去して水路を改修することができる。
【0075】
ところで、1日の改修作業が終わった後、または、大雨などにより既設水路40内に流水があり、既設水路40の水を放流する必要がある場合には、閉鎖壁13をフロント部1d前方に配置して扉14を開くとともに、下段の隔壁37を上下にスライドさせてその高さを既設水路40の底面の高さに合わせ、上段の隔壁38を開いてオープンシールド機1内に水の通り道を形成する。
【0076】
なお、下段の隔壁37を上下にスライドさせた際の位置決め固定は、側壁板1aに対して下段の隔壁37を適宜ボルト締めするなどして行う。
【0077】
そして、既設水路40より放流すれば、水はオープンシールド機1内を通り、後方の改修済みの新設水路を通って排水される。このとき、既設水路40の底面より下の部分の土砂がフロント部1d内に残っていても、これを下段の隔壁37によって土留めするから、フロント部1d内の土砂が水とともに後方に押し流されてテール部1dに溜まりコンクリート函体4の設置作業を阻害したり、改修済みの既設水路内に溜まって水路の内部空間を狭めたりしてしまうことがない。
【0078】
このように、隔壁3を上下2段とすることで、オープンシールド機1の底面と既設水路40の底面とに高低差がある場合であっても、高低差分の土砂を下段の隔壁37によって土留めしつつ、上段の隔壁38を開いて既設水路40からの水をオープンシールド機1内を通して後方に送ることができる。
【0079】
また、水路の改修作業中でも放流が可能となり、別途排水ルートを確保せずに済むこと、及び、放流時にフロント部1dと既設水路40との間から多量の水が漏れて周辺地山を洗掘してしまうことがない点については、前記第1実施例と同様である。
【0080】
なお、下段の隔壁37は上下にスライド自在とすることで容易に高さ調節を行うことができるが、高さ調節の方法はこれに限らず、例えば下段の隔壁37を更に上下複数に分割し、配設する板の数によって調節することもできる。
【0081】
ところで、扉14を開いた際に、その先端が既設水路40の側壁42内面に当接するようにするため、前記実施例においてはいずれも閉鎖壁13の扉14部分の横幅を既設水路40の内幅と同じかやや小さめに設定したが、これにより左右各々の扉の幅が既設水路40の1区分の長さより小さくなる場合には、図10に示すように、扉14の先端に蝶番16を介して延長扉17を設けるようにしても良い。
【0082】
これにより、扉14を開いた際にその先端を延長させることができ、既設水路40の側壁42を1区分撤去した後でも、その前方の未撤去の側壁42後端とオープンシールド機1のフロント部1d先端との隙間の側部を扉14および延長扉17によって塞いで土留めすることができる。
【0083】
この他、閉鎖壁13の扉14を上下複数に分割して設けることも可能である。これにより、既設水路40の底面より上の部分の扉14のみを開いて使用して、底面の高さが異なる複数の既設水路40の改修工事に適用可能とすることができる。
【0084】
また、閉鎖壁13左右両端の折り曲げ部分の内側と、フロント部1dの側壁板1a先端外側とに、互いに嵌合するガイド溝を設けても良い。これにより、閉鎖壁13をフロント部1dの上下にスライドさせて着脱自在とするとともに、閉鎖壁13を配設した状態で閉鎖壁13がフロント部1d前方に傾倒しないようにすることができる。
【0085】
また、閉鎖壁13はフロント部1dの前方に被せるように配設するのみならず、フロント部1d内において、左右側壁板1a間の前方位置に着脱自在に配設することも可能である。ただし、閉鎖壁13および左右側壁板1aによるフロント部1d内の囲繞空間を最大限確保するとともに、閉鎖壁13と既設水路40後端との距離を最小限に抑えるためには、前記実施例のごとく、フロント部1dの先端に被せるように閉鎖壁13を配設することが好ましい。
【0086】
以上、前記実施例のオープンシールド工法による水路の改修方法はいずれも、フロント部1dに対して着脱自在の閉鎖壁13を備えるオープンシールド機1を使用して行うようにしたが、これに限らず、閉鎖壁13を備えない既存のオープンシールド機に別途閉鎖壁13を組み合わせて使用して行うこともできる。
【0087】
また、機体を前後に複数分割した屈曲可能なオープンシールド機のみならず、図11のような全体が一体型のオープンシールド機にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明のオープンシールド機の第1実施形態のフロント部を示す平面図である。
【図2】閉鎖壁の扉を開いた状態のフロント部を示す平面図である。
【図3】隔壁の開閉方式の第1例を示す側面図である。
【図4】隔壁の開閉方式の第2例を示す側面図である。
【図5】隔壁の開閉方式の第3例を示す側面図である。
【図6】隔壁の開閉方式の第4例を示す側面図である。
【図7】隔壁の開閉方式の第5例を示す側面図である。
【図8】隔壁の開閉方式の第6例を示す側面図である。
【図9】本発明のオープンシールド機の第2実施形態を示す全体側面図である。
【図10】閉鎖壁の他の例を示す平面図である。
【図11】オープンシールド工法の概略を示す縦断側面図である。
【図12】従来の機体を前後に分割したオープンシールド機を示す縦断側面図である。
【図13】従来のコンクリート函体の斜視図である。
【図14】従来のオープンシールド機の1例を示す縦断側面図である。
【図15】従来のオープンシールド工法による水路の改修方法で使用するオープンシールド機のフロント部の平面図である。
【符号の説明】
【0089】
1 オープンシールド機 1a 側壁板
1b 底板 1c テール部
1d フロント部 1e 中折れ部
2 推進ジャッキ
3 隔壁 4 コンクリート函体
4a 左側板 4b 右側板
4c 上床板 4d 下床板
5 埋戻土
6 グラウト材 7 高さ調整材
8 プレスバー 9 掘削機
10 開口 11 刃口
13 閉鎖壁 14 扉
15、16 蝶番 17 延長扉
21 蝶番
30 中折れジャッキ 34 ストラット
37 下段の隔壁 38 上段の隔壁
39 戸袋 40 既設水路
41 底床板 42 側壁
50 可動分割刃口 51 後部土留板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁と底床板とを備える既設水路の後方に断面U字形のオープンシールド機を対向させ、既設水路を後方より区分毎に撤去する工程と、撤去した分だけ推進ジャッキを伸長してコンクリート函体を反力にしてシールド機を前進させる工程と、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たなコンクリート函体をセットする工程とを適宜繰り返して順次コンクリート函体を縦列に埋設するオープンシールド工法による既設水路の改修方法において、外開きの観音開き式扉を備える水路幅方向の閉鎖壁をシールド機のフロント部前方に配置し、この閉鎖壁とフロント部内とによる囲繞空間内を掘削排土する工程と、既設水路の側壁を1区分撤去するのに対応して前記閉鎖壁の扉を開く工程と、その状態で既設水路の底床板を1区分撤去する工程と、前記閉鎖壁を撤去してシールド機を前進させる工程とを繰り返すことを特徴とするオープンシールド工法による既設水路の改修方法。
【請求項2】
既設水路より放流する時には、オープンシールド機内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする隔壁を開く請求項1記載のオープンシールド工法による既設水路の改修方法。
【請求項3】
既設水路より放流する時には、オープンシールド機内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする上下2段の隔壁の下段高さを既設水路の底面高さに合わせつつ、当該隔壁の上段のみを開く請求項1または請求項2記載のオープンシールド工法による既設水路の改修方法。
【請求項4】
既設水路の後方に断面U字形のオープンシールド機を対向させ、既設水路を後方より区分毎に撤去する工程と、撤去した分だけ推進ジャッキを伸長してコンクリート函体を反力にしてシールド機を前進させる工程と、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たなコンクリート函体をセットする工程とを適宜繰り返して順次コンクリート函体を縦列に埋設するオープンシールド工法による既設水路の改修方法で使用するオープンシールド機において、外開きの観音開き式扉を備える水路幅方向の閉鎖壁をシールド機のフロント部前方に着脱自在に配設することを特徴とするオープンシールド機。
【請求項5】
オープンシールド機の左右側壁板間に配設し、機体内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする隔壁を開閉自在とする請求項4記載のオープンシールド機。
【請求項6】
オープンシールド機の左右側壁板間に配設し、機体内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする隔壁を上下2段に構成するとともに、下段の隔壁を既設水路の底面に合わせて高さ調節自在とし、上段の隔壁を開閉自在とする請求項4記載のオープンシールド機。
【請求項7】
下段の隔壁の高さ調節は上下にスライドさせて行う請求項6記載のオープンシールド機。
【請求項1】
側壁と底床板とを備える既設水路の後方に断面U字形のオープンシールド機を対向させ、既設水路を後方より区分毎に撤去する工程と、撤去した分だけ推進ジャッキを伸長してコンクリート函体を反力にしてシールド機を前進させる工程と、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たなコンクリート函体をセットする工程とを適宜繰り返して順次コンクリート函体を縦列に埋設するオープンシールド工法による既設水路の改修方法において、外開きの観音開き式扉を備える水路幅方向の閉鎖壁をシールド機のフロント部前方に配置し、この閉鎖壁とフロント部内とによる囲繞空間内を掘削排土する工程と、既設水路の側壁を1区分撤去するのに対応して前記閉鎖壁の扉を開く工程と、その状態で既設水路の底床板を1区分撤去する工程と、前記閉鎖壁を撤去してシールド機を前進させる工程とを繰り返すことを特徴とするオープンシールド工法による既設水路の改修方法。
【請求項2】
既設水路より放流する時には、オープンシールド機内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする隔壁を開く請求項1記載のオープンシールド工法による既設水路の改修方法。
【請求項3】
既設水路より放流する時には、オープンシールド機内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする上下2段の隔壁の下段高さを既設水路の底面高さに合わせつつ、当該隔壁の上段のみを開く請求項1または請求項2記載のオープンシールド工法による既設水路の改修方法。
【請求項4】
既設水路の後方に断面U字形のオープンシールド機を対向させ、既設水路を後方より区分毎に撤去する工程と、撤去した分だけ推進ジャッキを伸長してコンクリート函体を反力にしてシールド機を前進させる工程と、シールド機のテール部内で縮めた推進ジャッキの後方に新たなコンクリート函体をセットする工程とを適宜繰り返して順次コンクリート函体を縦列に埋設するオープンシールド工法による既設水路の改修方法で使用するオープンシールド機において、外開きの観音開き式扉を備える水路幅方向の閉鎖壁をシールド機のフロント部前方に着脱自在に配設することを特徴とするオープンシールド機。
【請求項5】
オープンシールド機の左右側壁板間に配設し、機体内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする隔壁を開閉自在とする請求項4記載のオープンシールド機。
【請求項6】
オープンシールド機の左右側壁板間に配設し、機体内の空間を前後に区画してフロント部を土留めする隔壁を上下2段に構成するとともに、下段の隔壁を既設水路の底面に合わせて高さ調節自在とし、上段の隔壁を開閉自在とする請求項4記載のオープンシールド機。
【請求項7】
下段の隔壁の高さ調節は上下にスライドさせて行う請求項6記載のオープンシールド機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−114641(P2009−114641A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285852(P2007−285852)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000189903)
【出願人】(501200491)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000189903)
【出願人】(501200491)
【Fターム(参考)】
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