説明

オーラル・ケアのための方法および製品

【課題】本発明は、口腔組織を処置するための方法、オーラル・ケア製品およびキットを提供する。
【解決手段】具体的には、本発明は、口腔組織の炎症を軽減させ、活性酸素種(ROS)によってこのような組織に与えられる損傷を軽減させ得る特定の金属結合ペプチド、ペプチド誘導体およびペプチド2量体を含む方法、オーラル・ケア製品ならびにキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔組織を処置するための方法、オーラル・ケア製品およびキットに関する。具体的には、本発明は、口腔組織の炎症を軽減させ、活性酸素種(ROS)によってこのような組織に与えられる損傷を軽減させ得る特定の金属結合ペプチド、ペプチド誘導体およびペプチド2量体を含む方法、オーラル・ケア製品ならびにキットに関する。
【背景技術】
【0002】
活性酸素種(ROS)には、フリーラジカル(たとえば、スーパーオキシド・アニオンおよびヒドロキシル・ラジカル、ペルオキシル・ラジカル、アルコキシル・ラジカル)ならびに非ラジカル種(たとえば、一重項酸素および過酸化水素)が含まれる。ROSは、分子、細胞および組織の大規模な損傷を引き起こすことが可能であり、また、様々な疾病や状態において主要な役割を果たすと報告されている。実際、ROSは100種を超える疾病および発病状態に関連づけられており、ROSがヒトの疾病すべてに関与する共通の発病機構を構成しているかもしれないことが推測されている。非特許文献1。ROS、その形成、ROSが分子、細胞および組織の損傷を引き起こす機構、ならびに数々の疾病および疾患におけるそれらの関与について記載している総説は、非特許文献1〜6を参照されたい。
【0003】
金属イオン、主に遷移金属イオンは、ROSの生成および蓄積を引き起こし得る。具体的には、貯蔵部位から放出される銅および鉄イオンは、虚血/再灌流傷害ならびに高温、低温、外傷、過剰の運動、毒素、放射線、および感染による傷害を含めた傷害後のROS生成の主な原因の1つである。非特許文献6。銅および鉄イオン、ならびに他の遷移金属イオン(たとえば、バナジウムおよびクロムイオン)が、ROSの生成を触媒すると報告されている。たとえば、非特許文献1および非特許文献7〜9を参照。他の遷移金属イオン(たとえばカドミウム、水銀、およびニッケルイオン)ならびに他の金属イオン(たとえばヒ素および鉛イオン)は、天然の抗酸化防御系の一部の分子を枯渇させ、それによってROSの蓄積を増大させると報告されている。たとえば、非特許文献1参照。遊離銅イオンは、本質的に全てのタンパク質のアミノ基に非特異的に結合すると報告されているが(非特許文献10)、それでもなお、タンパク質に結合した銅イオンは、少なくとも該銅イオンが結合したタンパク質に損傷を与えるROSの生成を引き起こし得る。たとえば、非特許文献8〜10参照。
【0004】
ROSは、様々な理由により口腔内に存在し得る。たとえば、ROSは、タバコ製品の使用、環境要因への曝露、放射線への曝露、および活性酸素または過酸化水素を遊離する歯のホワイトニング剤からなるオーラル・ケア製品を使用した結果として、口腔内に存在する。たとえば、特許文献1〜3参照。ROSはまた、歯肉炎、歯周炎、負傷、手術、抜歯、口唇ヘルペス、口内糜爛および潰瘍を含めた炎症および/または感染に関与する疾病ならびに状態の結果として口腔内に存在し得る。たとえば、特許文献2〜3参照。最後に、唾液の通常のpHは7.2であるが、たとえば食物、特に炭水化物が分解された結果、口腔内はしばしば酸性状態になる。たとえば、特許文献4参照。酸性状態によって、銅イオンが結合しているタンパク質からの銅の放出が促進され、上述のように遊離銅イオンがROSの生成を引き起こし得る。口腔内に存在するROSは、口腔組織に損傷を与え得る。たとえば、炎症性歯周病では、ROSならびにレベルが上昇した遊離鉄イオンおよび銅イオンが歯周ポケット内に見つかっており、これは、歯周組織の破壊におけるROSの重大な役割を示唆している。たとえば、非特許文献11参照。
【0005】
アルブミンは、細胞外の抗酸化剤として特徴づけられている。たとえば、非特許文献1および非特許文献12〜14参照。アルブミンの抗酸化性質は、アルブミンの、金属(特に銅イオン)を結合する能力、脂肪酸を結合する能力、ステロイドを結合してそれを輸送する能力、ビリルビンを結合してそれを輸送する能力、HOClを捕捉(scavenge)する能力などを含めた、アルブミンの数多くの生理学的機能のいくつかに起因すると考えられている。たとえば、非特許文献12、15、1、14参照。アルブミンは、N末端の部位を含めていくつかの金属結合部位を含む。ヒト、ラットおよびウシの血清アルブミンを含めたいくつかのアルブミンのN末端金属結合部位は、Cu(II)およびNi(II)に対して高い親和性を示し、これら金属イオンの高親和性の結合に関与しているアミノ酸が同定されている。非特許文献16〜18参照。高親和性N末端部位以外の金属結合部位でアルブミンに結合している銅が、その「緩い」金属結合部位の位置によって決まる部位でアルブミンに大規模な損傷を引き起こすフリーラジカルを生成することが報告されており、これにより、アルブミンが「犠牲的抗酸化剤」として特徴づけられている。非特許文献8、7、12、9参照。
【0006】
前述にもかかわらず、脳虚血の処置としてアルブミンを使用する試みは、混在した結果を示している。アルブミンは、脳虚血の動物モデルにおいて神経保護性であるとも、そうでないとも報告されている。非特許文献19および非特許文献20を、非特許文献21および非特許文献22と比較されたい。
【0007】
切除した心臓を保存するための心停止液中にアルブミンを使用した場合も、混在した結果が得られている。非特許文献14に報告されているように、切除した心臓を保存するための標準的な心停止液にアルブミンを加えても、この溶液で24時間灌流した心臓の機能は改善されなかった。アルブミンおよび数種のエンハンサー(インスリン、ATP、コルチコステロン、およびピルビン酸)を含む心停止液で灌流した場合は、心臓で機能の改善が実証された。エンハンサーのみ、ならびにアルブミンのみでは心臓の機能は有意に改善されなかったので、これは相乗効果であった。アルブミンを含む心停止液を使用した場合に心臓機能が改善するという初期の報告も、エンハンサーとアルブミンとの間の相乗作用に起因していた。非特許文献14の最終段落およびそれに引用されている非特許文献23を参照のこと。別の研究では、アルブミンを含む心停止液で灌流した心臓では、アルブミンを含まない溶液と比較して、用量依存的な様式で再灌流傷害が増大した。スーザーら(Suzer et al.)の非特許文献24。スーザーらは、自身の研究および他の研究に基づいて、アルブミンは心臓の保護に有効でないと結論づけた。彼らはさらに、潜在的なアレルギー反応および血液製剤の使用に伴うリスクにより、心停止液中にアルブミンを使用することは安全でないかもしれないことに言及した。
【0008】
最後に、アルブミンは抗酸化剤として特徴づけられているが、小膠細胞によるスーパーオキシド・アニオンの生成を増強させるとも報告されている(非特許文献25)。この結果により、著者らは、ある種の疾患において破壊された血液脳関門から漏れるアルブミンが小膠細胞によるスーパーオキシド・アニオンの生成を増強し、この増大したスーパーオキシド・アニオンの生成が、脳の虚血/再灌流およびいくつかの神経変性病における神経損傷の病因の原因であると推測した。
【0009】
上で言及したように、いくつかのアルブミンのN末端金属結合部位は、Cu(II)およびNi(II)に高い親和性を示す。これらの部位は鋭意研究されており、一般的なアミノ末端Cu(II)−およびNi(II)−結合(ATCUN)モチーフが同定されている。たとえば、非特許文献26参照。ATCUNモチーフは、N末端に遊離−NHを有し、第3位にヒスチジン残基を有し、2つの介在ペプチドの窒素を有するタンパク質またはペプチド内に存在すると定義することが可能である。たとえば、非特許文献26参照。したがって、ATCUNモチーフは、ペプチド配列Xaa Xaa His(ただし、Xaaはプロリン以外の任意のアミノ酸である)で与えられる。たとえば、非特許文献26参照。Cu(II)およびNi(II)は、ATCUNモチーフの3つのアミノ酸によって提供される4つの窒素(遊離−NHの窒素、2つのペプチドの窒素、およびヒスチジンのイミダゾール窒素)によって結合され、若干歪んだ正方形の平面配置となっている。たとえば、非特許文献26参照。ATCUNモチーフを構成する3つのアミノ酸の側鎖は、Cu(II)およびNi(II)の結合に関与している可能性があり、これら3つのN末端アミノ酸に近接するアミノ酸も、これらの金属イオンの結合に影響を与えるかもしれない。たとえば、非特許文献26〜27参照。たとえば、ヒト血清アルブミンのN末端金属結合部位の配列はAsp Ala His Lys[配列番号1]であり、N末端Aspの遊離の側鎖カルボキシルおよびLys残基は、Asp Ala Hisにより提供される4つの窒素に加えて、Cu(II)およびNi(II)の結合に関与していると報告されている。非特許文献26、16、28参照。
【0010】
ATCUNモチーフはアルブミン以外にも天然に存在する他のタンパク質で見つかっており、またATCUNモチーフを含む天然に存在しないペプチドおよびタンパク質が合成されている。たとえば、非特許文献26、27、29参照。ATCUN含有ペプチドおよびタンパク質のCu(II)およびNi(II)の錯体は、スーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD)活性を示すと報告されている。非特許文献30、31参照。そのSOD活性が報告されているにもかかわらず、これらの錯体はそれでもDNA、タンパク質および他の生体分子に損傷を与えるフリーラジカルを生成する。非特許文献26、27、32、31、30参照。その結果、銅およびニッケルのin vivoにおける有害効果(たとえば癌および先天性異常をもたらすこと)の少なくとも一部は、傷害性フリーラジカルの生成をもたらす、Cu(II)およびNi(II)のATCUN含有タンパク質への結合に起因し得ると仮定されてきた。非特許文献26、27、30参照。Cf.非特許文献33。ATCUN含有ペプチドのCu(II)錯体とアスコルビン酸との組合せによって生じる傷害効果が、in vitroで癌細胞を死滅させるため、およびin vivoで抗腫瘍効果を生じさせるために利用されている。非特許文献26参照。
【特許文献1】米国特許第5,906,811号
【特許文献2】米国特許第6,228,347号
【特許文献3】米国特許第6,270,781号
【特許文献4】米国特許第6,177,097号
【非特許文献1】ストーズ(Stohs)、J.Basic Clin.Physiol.Pharmacol.、第6巻、205〜228ページ、1995年
【非特許文献2】マンソー(Manso)、Rev.Port.Cardiol、第11巻、997〜999ページ、1992年
【非特許文献3】フローレンス(Florence)、Aust.N Z J.Opthalmol.、第23巻、3〜7ページ、1992年
【非特許文献4】ナイト(Knight)、Ann.Clin.Lab.Sci.、第25巻、111〜121ページ、1995年
【非特許文献5】ケールら(Kerr et al.)、Heart&Lung、第25巻、200〜209ページ、1996年
【非特許文献6】ロス(Roth)、Acta Chir.Hung.、第36巻、302〜305ページ、1997年
【非特許文献7】ハリウェルら(Halliwell et al.)、「生物学及び医学におけるフリーラジカル(Free Radicals In Biology And Medicine )」、1〜19ページ、オックスフォード大学(Oxford University)、1989年
【非特許文献8】マークスら(Marx et al.)、Biochem.J.、第236巻、397〜400ページ、1985年
【非特許文献9】クインランら(Quinlan et al.)、J.Pharmaceutical Sci.、第81巻、611〜614ページ、1992年
【非特許文献10】ガターリッジら(Gutteridge et al.)、Biochim.Biophys.Acta、第759巻、38〜41ページ、1983年
【非特許文献11】ワディングトンら(Waddington et al.)、Oral Dis.、第6巻:138〜151ページ、2000年
【非特許文献12】ハリウェルおよびガターリッジ(Halliwell and Gutterridge)、Arch.Biochem.Biophys.、第280巻、1〜8ページ、1990年
【非特許文献13】ダスら(Das et al.)、Methods Enzymol.、第233巻、601〜610ページ、1994年
【非特許文献14】ダンフィーら(Dunphy et al.)、Am.J.Physiol.、第276巻、H1591〜H1598ページ、1999年
【非特許文献15】ハリウェルおよびガターリッジ(Halliwell and Gutteridge)、Arch.Biochem.Biophys.、第246巻、501〜514ページ、1986年
【非特許文献16】ローサックら(Laussac et al.)、Biochem.、第23巻、2832〜2838ページ、1984年
【非特許文献17】プレッキーら(Predki et al.)、Biochem.J.、第287巻、211〜215ページ、1992年
【非特許文献18】マスオカら(Masuoka et al.)、J.Biol.Chem.、第268巻、21533〜21537ページ、1993年
【非特許文献19】ヒューら(Huh et al.)、Brain Res.、第804巻、105〜113ページ、1998年
【非特許文献20】レマーズら(Remmers et al.)、Brain Res.、第827巻、237〜242ページ、1999年
【非特許文献21】リトルら(Little et al.)、Neurosurgery、第9巻、552〜558ページ、1981年
【非特許文献22】ボーリューら(Beaulieu et al.)、J.Cereb.Blood Flow.Metab.、第18巻、1022〜1031ページ、1998年
【非特許文献23】ヒサトミら(Hisatomi et al.)、Transplantation、第52巻、754〜755ページ、1991年
【非特許文献24】スーザーら(Suzer et al.)、Pharmacol.Res.、第37巻、97〜101ページ、1998年
【非特許文献25】サイら(Si et al.)、GLIA、第21巻、413〜418ページ、1997年
【非特許文献26】ハーフォードおよびサーカー(Harford and Sarkar)、Acc.Chem.Res.、第30巻、123〜130ページ、1997年
【非特許文献27】バルら(Bal et al.)、Chem.Res.Toxicol.、第10巻、906〜914ページ、1997年
【非特許文献28】サドラーら(Sadler et al.)、Eur.J.Biochem.、第220巻、193〜200ページ、1994年
【非特許文献29】ムリナルツら(Mlynarz,et al.)、Speciation98:要旨集、http://www.jate.u-szeged.hu/〜spec98/abstr/mlynar.html
【非特許文献30】コテールら(Cotelle et al.)、J.Inorg.Biochem.、第46巻、7〜15ページ、1992年
【非特許文献31】ウエダら(Ueda et al.)、J.Inorg.Biochem.、第55巻、123〜130ページ、1994年
【非特許文献32】ウエダら(Ueda et al.)、Free Radical Biol.Med.、第18巻、929〜933ページ、1995年
【非特許文献33】コッホら(Koch et al.)、Chem.&Biol.、第4巻、549〜60ページ、1997年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、口腔組織を処置するための方法、オーラル・ケア製品およびキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、動物の口腔組織を処置する方法を提供する。この方法は、有効量の、式P−Pを有する金属結合ペプチドまたは生理学的に許容可能なその塩を、該組織に接触させることからなる。本発明はまた、ペプチドP−Pまたは生理学的に許容可能なその塩からなるオーラル・ケア製品、およびオーラル・ケア製品からなるキットも提供する。オーラル・ケア製品は、オーラル・ケア・デバイスおよびオーラル・ケア組成物を含む。
【0013】
式P−P中、
は、Xaa Xaa HisまたはXaa Xaa His Xaaであり、かつ
は(Xaa
である。
【0014】
Xaaは、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、イソアスパラギン酸(すなわち、そのγ−カルボキシルによってXaaに結合しているAsp、本明細書中では以降「isoAsp」)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、イソグルタミン酸(すなわち、そのγ−カルボキシルによってXaaに結合しているGlu、本明細書中では以降「isoGlu」)、グルタミン(Gln)、リジン(Lys)、ヒドロキシリジン(Hylys)、ヒスチジン(His)、アルギニン(Arg)、オルニチン(Orn)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)またはα−ヒドロキシメチルセリン(HMS)である。さらに、Xaaは、別のアミノ酸またはペプチドが結合したδ−アミノ基(たとえば、Orn、Lys)からなるアミノ酸(たとえば、Gly(δ)−Orn)であり得る。Xaaは、好ましくはAsp、Glu、Arg、Thr、またはHMSである。より好ましくは、XaaはAspまたはGluである。最も好ましくは、XaaはAspである。
【0015】
Xaaは、Gly、Ala、β−Ala、Val、Leu、Ile、Ser、Thr、Asp、Asn、Glu、Gln、Lys、Hylys、His、Arg、Orn、Phe、Tyr、Trp、Cys、MetまたはHMSである。Xaaは、好ましくはGly、Ala、Val、Leu、Ile、Thr、Ser、Asn、Met、HisまたはHMSである。より好ましくは、XaaはAla、Val、Thr、Ser、Leu、またはHMSである。さらにより好ましくは、XaaはAla、Thr、Leu、またはHMSである。最も好ましくは、XaaはAlaである。
【0016】
Xaaは、Gly、Ala、Val、Lys、Arg、Orn、Asp、Glu、Asn、Gln、またはTrp、好ましくはLysである。
Xaaは任意のアミノ酸である。
【0017】
最後に、nは、0〜100、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5、最も好ましくは0である。
および/またはPの1つもしくは複数のアミノ酸は、(a)Pが金属イオンを結合する能力を変化させずに該ペプチドの親油性を増大させる置換基、(b)Pが金属イオンを結合する能力を変化させずに該ペプチドをタンパク質分解酵素から保護する置換基、または(c)ペプチドが金属イオンを結合する能力を向上させる非ペプチド性の金属結合官能基である置換基で置換され得る。
【0018】
本発明は、動物の口腔組織を処置する別の方法を提供する。この方法は、有効量の、非ペプチド性の金属結合官能基が結合した金属結合ペプチド(MBP)を、該組織に接触させることからなる。金属結合ペプチドMBPは、P−Pだけでなく任意の金属結合ペプチドであってよい。本発明はまた、非ペプチド性の金属結合官能基が結合した金属結合ペプチドMBPからなるオーラル・ケア製品、および該オーラル・ケア製品からなるキットも提供する。
【0019】
本発明は、動物の口腔組織を処置するさらに別の方法を提供する。この方法は、有効量の、式P−L−P(式中、それぞれのPは、同一でも異なっていてもよく、金属イオンを結合する能力のあるペプチドであり、Lは、2つのPペプチドをそれらのC末端アミノ酸を介して結合させる化学基である)の金属結合ペプチド2量体を、該組織に接触させることからなる。好ましい実施形態では、2つのPペプチドのうち1つまたはどちらもがPである。本発明はまた、式P−L−Pの金属結合ペプチド2量体からなるオーラル・ケア製品、および該オーラル・ケア製品からなるキットも提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
式P−Pでは、Pは、Xaa Xaa HisまたはXaa Xaa His Xaaであり、式中、Xaa、Xaa、およびXaaは上に定義した通りである。Pは、元素周期表の1b〜7b族または8族の遷移金属イオン(V、Co、Cr、Mo、Mn、Ba、Zn、Hg、Cd、Au、Ag、Co、Fe、Ni、Cuを含む)および他の金属イオン(As、Sb、Pbを含む)を結合する金属結合ペプチド配列である。Pが金属イオンに結合することによって、これらの金属イオンによるROSの生成およびROSの蓄積のうち少なくとも一方が阻害される(すなわち軽減もしくは抑制される)、かつ/または、該ペプチド自体に結合した金属イオンによって依然として生じ得るROSによって与えられる損傷が標的となる。その結果、Pが金属イオンを結合しない場合にROSによって生じ得る損傷が軽減される。具体的には、Pは高い親和性でCu(II)、Ni(II)、Co(II)、およびMn(II)を結合する。したがって、Pは、銅およびニッケルによるROSの生成および蓄積によって引き起こされる損傷を軽減させるのに特に有効であるはずである。さらに、Pによる金属イオンの結合は、炎症を阻害し(実施例10、12および13参照)、細胞による代謝およびエネルギー利用の阻害に対して保護的に作用する(実施例11参照)。
【0021】
では、Xaaは最も好ましくはAspであり、Xaaは最も好ましくはAlaであり、Xaaは最も好ましくはLysである(上記参照)。したがって、Pの好ましい配列はAsp Ala HisおよびAsp Ala His Lys[配列番号1]である。Pの最も好ましい配列はAsp Ala His Lys[配列番号1]である。Asp Ala HisはCu(II)およびNi(II)の高親和性結合に必要なヒト血清アルブミンのN末端金属結合部位の最少配列であり、Lysは、これらの金属イオンがこの部位に結合するのに寄与すると報告されている。また、質量分析によって、Asp Ala His Lys[配列番号1]がFe(II)を結合することが判明している。Pの他の好ましい配列には、Thr Leu His(ヒトα−フェトプロテインのN末端配列)、Arg Thr His(ヒト精子プロタミンHP2のN末端配列)およびHMS HMS His(銅と非常に安定な錯体を形成すると報告されている合成ペプチド;ムリナルツら(Mlynarz,et al.)、Speciation98:要旨集、http://www.jate.u-szeged.hu/spec98/abstr/mlynar.html、4/21/98参照)が含まれる。
【0022】
は(Xaaであり、式中、Xaaは任意のアミノ酸であり、nは0〜100である。nが大きい場合(n>約20)、該ペプチドは、ROSにより与えられた損傷を細胞外で軽減させる。より小さなペプチドは細胞内により入りやすく、したがって、より小さなペプチドを使用して、細胞内および細胞外のどちらにおいてもROSにより与えられた損傷を軽減させ得る。また、より小さなペプチドはタンパク質分解の対象となりにくい。したがって、Pでは、nは好ましくは0〜10であり、より好ましくはnは0〜5であり、最も好ましくはnは0である。Pは任意の配列を有していてよいが、Pは、好ましくは、(1)遷移金属を結合する配列、(2)該ペプチドが細胞膜を貫通する能力を増強させる配列、または(3)そうでなければ該ペプチドを安定させる、もしくは性能を増強させる配列からなる。PおよびPは、ヒト、ラットもしくはウシの血清アルブミンなど、銅およびニッケルに対する親和性が高いN末端金属結合部位を有するタンパク質のN末端配列であってもよい。n=100である場合、該ペプチドはこれらのアルブミンのほぼドメイン1である配列を有するであろう。
【0023】
遷移金属イオン結合部位からなる多くのペプチドの配列が知られている。たとえば、米国特許第4,022,888号、同第4,461,724号、同第4,665,054号、同第4,760,051号、同第4,767,753号、同第4,810,693号、同第4,877,770号、同第5,023,237号、同第5,059,588号、同第5,102,990号、同第5,118,665号、同第5,120,831号、同第5,135,913号、同第5,145,838号、同第5,164,367号、同第5,591,711号、同第5,177,061号、同第5,214,032号、同第5,252,559号、同第5,348,943号、同第5,443,816号、同第5,538,945号、同第5,550,183号、同第5,591,711号、同第5,690,905号、同第5,759,515号、同第5,861,139号、同第5,891,418号、同第5,928,955号、および同第6,017,888号、国際出願国際公開公報第94/26295号パンフレット、同第99/57262号パンフレットおよび同第99/67284号パンフレット、欧州特許出願第327263号、ラピンら(Lappin et al.)、Inorg.Chem.、第17巻、1630〜34ページ、1978年、ボスーら(Bossu et al.)、Inorg.Chem.、第17巻、1634〜40ページ、1978年、チャクラバルティ(Chakrabarti)、Protein Eng.、第4巻、57〜63ページ、1990年、アドマン(Adman)、Advances In Protein Chemistry、第42巻、145〜97ページ、1991年、コテールら(Cotelle et al.)、J.Inorg.Biochem.、第46巻、7〜15ページ、1992年、カンタースら(Canters et al.)、FEBS、第325巻、39〜48ページ、1993年、レーガン(Regan)、Annu.Rev.Biophys.Biomol.Struc.、第22巻、257〜281ページ、1993年、ウエダら(Ueda et al.)、J.Inorg.Biochem.、第55巻、123〜30ページ、1994年、ウエダら(Ueda et al.)、Free Radical Biol.Med.、第18巻、929〜33ページ、1995年、レーガン(Regan)、TIBS、第20巻、280〜85ページ、1995年、ウエダら(Ueda et al.)、Chem.Pharm.Bull.、第43巻、359〜61ページ、1995年、バルら(Bar et al.)、Chem.Res.Toxicol.、第10巻、906〜914ページ、1997年、バルら(Bar et al.)、Chem.Res.Toxicol.、第10巻、915〜21ページ、1997年、コッホら(Koch et al.)、Chem.Biol.、第4巻、549〜60ページ、1997年、コワリク−ヤンコフスカら(Kowalik−Jankowska et al.)、J.Inorg.Biochem.、第66巻、193〜96ページ、1997年、ハーフォードおよびサーカー(Harford and Sarkar)、Acc.Chem.Res.、第30巻、123〜130ページ、1997年、プリンスら(Prince et al.)、TIBS、第23巻、197〜98ページ、1998年、ムリナルツら(Mlynarz,et al.)、Speciation98:要旨集、http://www.jate.u-szeged.hu/~spec98/abstr/mlynar.html ならびにエイトケン(Aitken)、Molec.Biotechnol.、第12巻、241〜53ページ、1999年、ウィッタールら(Whittal et al.)、Protein Science、第9巻、332〜343ページ、2000年参照。Pは、これらのペプチドの1つまたは複数の金属結合部位の配列からなっていてよい。
【0024】
が金属結合部位からなる場合、Pは、PおよびPの金属結合部位が潜在的に、協同的に金属イオンを結合し得るように(2:1のペプチド:金属の錯体に類似;実施例8参照)、PとPの金属結合部位との間に短いスペーサー配列を含む配列を有することが好ましい。好ましくは、スペーサー配列は、1〜5個、好ましくは1〜3個の中性アミノ酸から構成される。したがって、スペーサー配列はGly、Gly Gly、Gly Ala Gly、Pro、Gly Pro Glyなどであってよい。
【0025】
具体的には、Pが金属結合部位からなる場合、Pは、好ましくは以下の配列:(Xaa Xaa Xaa His Xaaまたは(Xaa Xaa Xaa Hisの1つからなる。Xaa、XaaおよびXaaは上に定義されており、mは0〜5、好ましくは1〜3である。存在する場合は、1または複数のXaaアミノ酸は、PおよびPの金属結合部位が協同的に金属イオンを結合し得るように、PとPの金属結合部位との間に短いスペーサー配列を形成し、かつXaaは、好ましくは中性アミノ酸である(前段落を参照)。Xaaは、δ−アミノ基を有し、該δ−アミノ基によって1または複数のXaaアミノ酸(存在する場合)またはPが結合されているアミノ酸(好ましくはOrnまたはLys、より好ましくはOrn)である。ハーフォードおよびサーカー(Harford and Sarkar)、Acc.Chem.Res.、第30巻、123〜130ページ、1997年ならびにシュレンバーガーら(Shullenberger et al.)、J.Am.Chem.Soc.、第115巻、11038〜11039ページ、1993年(この結合手段によって、Xaaのα−アミノ基は依然としてATCUNモチーフによる金属の結合に関与し得る)参照。したがって、たとえば、P−PはAsp Ala His Gly Gly (δ)−Orn Ala His[配列番号2]であり得る。
【0026】
さらに、Pは以下の配列:[(Xaa Xaa Xaa His Xaa、[(Xaa Xaa Xaa His]、[(Xaa Xaa Xaa His Xaa (Xaa Xaa Xaa His]、および[(Xaa Xaa Xaa His (Xaa Xaa Xaa His Xaa(配列中、Xaa、Xaa、Xaa、Xaaおよびmは上に定義かつ記載されており、rは2〜100である)の1つからなっていてもよい。この方法で、金属結合ポリマーを形成し得る。
【0027】
別の好ましい実施形態では、Pは、Cu(I)を結合し得るペプチド配列からなる。以下に詳細に議論するように、Cu(II)はアスコルビン酸または他の還元剤の存在下でCu(I)に変換され、このCu(I)は酸素と反応してROSを生じる(実施例8および9の等式を参照)。PはCu(II)を密接に結合することが可能であり、単独で、銅によるROSの生成を阻害するのに非常に有効である(実施例参照)。しかし、実施例8および9の等式から見受けられ得るように、Cu(I)を結合することが可能なPも使用することが望ましいであろう。
【0028】
Cu(I)を結合し得るペプチド配列は、当分野で知られている。たとえば、ピッカリングら(Pickering et al.)、J.Am.Chem.Soc.、第115巻、9498〜9505ページ、1993年;ウィングら(Winge et al.)、「銅の生物無機化学(Bioinorganic Chemistry Of Copper)」、110〜123ページ(カーリンおよびタイクラー(Karlin and Tyeklar)編、チャップマン・アンド・ホール(Chapman&Hall)、米国ニューヨーク州ニューヨーク所在、1993年);コッホら(Koch et al.)、Chem&Biol.、第4巻、549〜560ページ、1997年;コバインら(Cobine et al.)、「銅の輸送とその障害(Copper Transport And Its Disorders)」、153〜164ページ(レオーネおよびメルサー(Leone and Mercer)編、クルワー・アカデミック/プレナム出版(Kluwer Academic/Plenum Publishers)、米国ニューヨーク州ニューヨーク所在、1999年)参照。これらの配列には、
Met Xaa Met、
Met Xaa Xaa Met、
Cys Cys、
Cys Xaa Cys、
Cys Xaa Xaa Cys、
Met Xaa Cys Xaa Xaa Cys、
Gly Met Xaa Cys Xaa Xaa Cys[配列番号7]、
Gly Met Thr Cys Xaa Xaa Cys[配列番号8]、および
Gly Met Thr Cys Ala Asn Cys[配列番号9]
(配列中、Xaaは上に定義されている)が含まれる。グルタチオン(γ−Glu Cys Gly)が、Cu(I)を結合することも知られている。さらなるCu(I)結合ペプチド配列は、たとえば国際出願国際公開公報第00/36136号パンフレットに記載のように、メタロペプチド・コンビナトリアル・ライブラリを使用して同定し得る。好ましくは、Cu(I)結合ペプチドは、配列Cys Xaa Xaa Cys(たとえば、Gly Met Xaa Cys Xaa Xaa Cys[配列番号7]、より好ましくはGly Met Thr Cys Xaa Xaa Cys[配列番号8]、最も好ましくはGly Met Thr Cys Ala Asn Cys[配列番号9])の配列からなる。
【0029】
−Pペプチドが細胞膜を貫通する能力を増強させるために、Pは、疎水性であるか、またはアルギニン・オリゴマーであることが好ましい(ルーヒ(Rouhi)、Chem.&Eng.News、49〜50ページ(2001年1月15日)参照)。Pが疎水性である場合、Pは1〜3個の疎水性アミノ酸(たとえば、Gly Gly)、好ましくはD−アミノ酸を含むことが好ましい。アルギニン・オリゴマーは、好ましくは6〜9個のArg残基、最も好ましくは6〜9個のD−Arg残基を含む(ルーヒ(Rouhi)、Chem.&Eng.News.、49〜50ページ(2001年1月15日)参照。P−Pを局所投与する場合は、アルギニン・オリゴマーであるPの使用が特に望ましいかもしれない。
【0030】
ペプチドのアミノ酸は、L−アミノ酸、D−アミノ酸、またはそれらの組合せであってよい。β−Ala(存在する場合)を除いて、Pのアミノ酸の少なくとも1つがD−アミノ酸であることが好ましい(好ましくはXaaおよび/またはHis)。最も好ましくは、β−Ala(存在する場合)を除いて、Pのすべてのアミノ酸がD−アミノ酸である。また、Pのアミノ酸の約50%がD−アミノ酸であることが好ましく、Pのアミノ酸のすべてがD−アミノ酸であることが最も好ましい。D−アミノ酸が好ましい理由は、D−アミノ酸を含むペプチドが、タンパク質分解酵素、たとえば動物(ヒトを含む)の口腔内で遭遇するであろうタンパク質分解酵素に耐性があるからである。また、D−アミノ酸を使用しても、ペプチドが高い親和性で銅を結合する能力を含めた、ペプチドが金属イオンを結合する能力は変化しない。
【0031】
本発明のペプチドは、当分野で周知の方法によって作製し得る。たとえば、L−アミノ酸、D−アミノ酸、またはL−およびD−アミノ酸の組合せのいずれを含むペプチドも、標準の固相ペプチド合成方法によって合成し得る。適切な技法が当分野で周知であり、メリフィールド(Merrifield)、「ポリペプチド化学(Chem. Polypeptides)」、335〜61ページ(カツォヤニスおよびパナヨティス(Katsoyannis and Panayotis)編、1973年);メリフィールド(Merrifield)、J.Am.Chem.Soc.、第85巻、2149ページ、1963年;デイビスら(Davis et al.)、Biochem.Int’l、第10巻、394〜414ページ、1985年;ステュワートおよびヤング(Stewart and Young)、「固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis )」、1969年;米国特許第3,941,763号および同第5,786,335号;フィンら(Finn et al.)、「タンパク質(The Proteins)」、第3版、第2巻、105〜253ページ、1976年;ならびにエリックソンら(Erickson et al.)、「タンパク質(The Proteins)」、第3版、第2巻、257〜527ページ、1976年に記載のものが含まれる。また、ポーランド国特許第315474号(HMS含有ペプチドの合成)およびシュレンバーガーら(Shullenberger et al.)、J.Am.Chem.Soc.、第115巻、1103811039、1993年((δ)−Orn含有ペプチドの合成)も参照されたい。あるいは、ペプチドがL−アミノ酸のみを含む場合は、組換えDNA技法によって合成してもよい。組換DNA方法ならびにそれに使用する適切な宿主細胞、ベクターおよび他の試薬は、当分野で周知である。たとえば、マニアティスら(Maniatis et al.)、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual )」、米国ニューヨーク所在のコールドスプリングハーバー(Cold Spring Horbor)、1982年、サムブルックら(Sambrook et al.)、「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual )」、米国ニューヨーク所在のコールドスプリングハーバー、1989年を参照されたい。
【0032】
本発明はさらに、L−アミノ酸、D−アミノ酸、またはL−およびD−アミノ酸の組合せのいずれで構成されるものであれ、タンパク質分解酵素により耐性が高いか、より脂質に溶解しやすいか(ペプチドが細胞膜にさらに貫通しやすくさせるため)、またはその両方であるペプチドP−Pの誘導体からなる。図1Aに例示したように、Pの金属結合機能を変化させずに矢印で示した領域でPの改変を行い得る。具体的には、Pは、炭素1または2をRで置換可能であり、Pの末端−COOHは保護基Rで置換可能である(図1B〜D)。Pにタンパク質分解酵素へのさらなる耐性を持たせるため、脂質溶解性を高めるため、またはその両方を目的として、Pについて記載した方法と類似の方法でPを改変し得る。
【0033】
は1〜16個の炭素原子を含む直鎖または分枝状のアルキルでありうるが、用語「アルキル」にはRおよびS異性体が含まれる。Rはまた、1個もしくは2個の環を含むアリールまたはヘテロアリールでもあり得る。用語「アリール」とは、少なくとも1つの芳香環(たとえばフェニル、ナフチル、およびジフェニル)を含む化合物を意味する。用語「ヘテロアリール」とは、環の少なくとも1つが1個もしくは複数のS、NまたはO原子を含むアリールを意味する。このような置換は、Pが金属イオンを結合する能力を実質的に低下させない。特に、Pが高い親和性で銅を結合する能力は、このような置換によって低下しない。たとえば、炭素2に結合しているn−ブチル(図1C参照、Rはn−ブチルである)など一部の置換基は、アルキル基の誘起効果によって銅などの金属イオンに対するペプチドの親和性を増大させるはずである。アリール、ヘテロアリール、または長鎖アルキル(約6〜16個の炭素原子)を用いた炭素2の置換(図1C)は、脂質膜を横切るペプチド輸送を増強させるはずである。
【0034】
上で言及したように、固相合成によるペプチドの合成方法は周知である。これらの方法は、図1B〜Cの誘導体を調製するために改変し得る。たとえば、図1Cに例示したPの誘導体(Rはオクチル)は、図2Aに例示したように調製し得る。図2Aでは、楕円形の要素はポリマー樹脂を表し、Rは標準のカルボキシ保護基である。図2Aに例示したように、オクタン酸(新たに蒸留したもの)を乾燥臭素、次いで三塩化リンで処理する。混合物を約100℃まで加熱し、この温度で4時間維持する。蒸留後、α−ブロモオクタン酸が無色液体として得られる。ブロモ酸のアミノ化は、この酸とアンモニア溶液とを40〜50℃で30時間静置することによって成される。アミノ酸のオクチル誘導体は、メタノール洗浄で臭化アンモニウムを除去することによって得られる。標準的な分割方法によって、所望の光学的に純粋なD−型が得られる。Rがアルキル、アリールまたはヘテロアリールである他の誘導体は、図2Aに例示した方法で調製し得る。
【0035】
さらに、図1Bに例示したPの誘導体(Rはフェニル)は、図2Bに例示したように調製し得る。図2Bでは、ポリマーは樹脂であり、t−Buはt−ブチルであり、Bzはベンジルである。Rがアルキル、アリールまたはヘテロアリールである他の誘導体は、図2Bに例示した方法で調製し得る。
【0036】
は、−NH、−NHR、−N(R、−OR、またはRでありうるが(図1D参照)、Rは上に定義されている。これらの誘導体は、当分野で周知の方法によって樹脂からペプチドを取り外す前の、固相ペプチド合成の最終工程として調製し得る。Rでの置換は、Pが金属イオンを結合する能力を実質的に低下させない。
【0037】
さらに、PおよびPは、金属イオンを結合する非ペプチド性の官能基で置換し得る。これらの金属結合官能基を、ペプチドの1つまたは複数の側基に結合することが可能であり、生じるペプチド誘導体は、Pにより提供される結合部位および場合によってはPにより提供される結合部位に加えて、金属イオンを結合しうる1つまたは複数の部位を有することとなる。その結果、このようなペプチド誘導体が金属イオンを結合する能力は、対応する非改変ペプチドと比較して改善される。たとえば、該ペプチド誘導体が1つではなく2つの同種の金属イオン(たとえば2つのCu(II))を結合し得るか、該ペプチド誘導体が1種の金属イオンではなく2種の異なる金属イオン(たとえば1つのCu(II)と1つのFe(III))を結合し得るか、またはペプチド誘導体が対応する非改変ペプチドよりも良好に(たとえばより高い親和性で)1つの金属イオンを結合し得る。
【0038】
金属結合官能基にはポリアミン(たとえばジアミン、トリアミンなど)が含まれる。適切なジアミンには、1,2−アルキルジアミン、好ましくは、アルキルが2〜10個の炭素原子を含むアルキルジアミン(たとえば、HN−(CH−NH、式中n=2〜10)が含まれる。適切なジアミンにはまた、1,2−アリールジアミン、好ましくはベンゼンジアミン(たとえば、1,2−ジアミノベンゼン)も含まれる。適切なジアミンにはさらに、1,2−環状アルカンジアミンが含まれる。「環状アルカン」とは、それぞれ5〜7個の炭素原子を含む1〜3個の環を含む化合物である。環状アルカンジアミンは1,2−ジアミノシクロヘキサン(シクロヘキサンジアミン)であることが好ましい。
【0039】
特に好ましいジアミンは、1,2−ジアミノシクロヘキサンである(図3A〜B)。ラオ&ピー ウィリアムズ(Rao&P.Williams)が実施した以前の研究(J.Chromatography A、第693巻、633ページ、1995年)により、シクロヘキサンジアミン誘導体(図3A、式中PYRはピリジンである)が様々な金属イオンを結合することが示されている。生じた金属キレート剤を使用してアミノ酸とペプチドとを分離することに成功し、この分子がα−アミノ酸に対して非常に高い親和性を有し、多くの観点から独特である非常に安定な配位錯体を形成することが示された。1,2−ジアミノシクロヘキサンは、本発明のペプチドが結合し得る反応性アミノ官能基を有する。図3B(Mは金属イオンであり、少なくとも1つのRが−アルキル−CO−ペプチド、−アリール−CO−ペプチド、−アリール−アルキル−CO−ペプチド、または−アルキル−アリール−CO−ペプチドである)を参照されたい(図3C〜Dも参照)。他のRは、同じであってもよいし、または−アルキル−COOH、−アリール−COOH、−アリール−アルキル−COOH、もしくはアルキル−アリール−COOHであってよい。図3Bに示す種類の誘導体はいくつかの金属結合部位を有することになり、したがって、非置換のペプチドより容易に金属イオンを結合し得ると期待できる。さらに、シクロヘキサン官能基の存在により、この化合物は自身が脂質膜を横切って輸送されるのを補助する脂質様の特徴を有するであろう。
【0040】
本発明のペプチドのシクロヘキサンジアミン誘導体は、2つの異なる経路によって調製可能である。第1経路は、最初にアルデヒドとの縮合、次いで還元を要する(図3C参照;図3Cでは、Bzはベンジルである)。いくつかのアルデヒド(アルキルおよびアリール)がシクロヘキサンジアミンと室温で容易に反応し、オキシムが形成される。オキシムを、無酸素条件下、水素化ホウ素ナトリウムで還元して2酸誘導体を得ることが可能である。その後、カルボキシル部分を、カルボキシで保護されたP中に存在する遊離アミノ基と反応させて、ペプチドのシクロヘキサンジアミン誘導体を得る。第2経路は、図3Dに例示した直接アルキル化する方法である。たとえば、シクロヘキサンジアミンをブロモ酢酸で処理して2酢酸誘導体を得る。その後、カルボキシル部分を、カルボキシで保護されたP中に存在する遊離アミノ基と反応させて誘導体を得る。図3Dでは、RはHまたは別のペプチドである。RがHである場合、当分野で周知の方法によって誘導体をさらに反応させて、エステルなどの典型的なカルボン酸誘導体を生成し得る。金属結合実験により、この基の有無は分子全体の金属結合能力に関係しないことが示された。しかし、これらの基は、置換基次第で分子を疎水性にも親水性にもするので、このことが、膜を横切る分子の送達に影響を与えるかもしれない。これら2つの合成経路は、上述の他のジアミンを使用したジアミンペプチド誘導体の合成に使えるであろう。
【0041】
さらなる適切なポリアミンおよびポリアミン誘導体、ならびにこれらをペプチドに結合させる方法は、その開示の全体を本願明細書に援用する米国特許第5,101,041号および同第5,650,134号に記載されている。ペプチドへの結合に適した他のポリアミンキレート剤が知られている。たとえば、米国特許第5,422,096号、同第5,527,522号、同第5,628,982号、同第5,874,573号、および同第5,906,996、ならびに国際出願国際公開公報第97/44313号パンフレット、同第97/49409号パンフレット、および同第99/39706号パンフレット参照。
【0042】
近接する2酸は金属イオンを結合し、銅に対する親和性が特に高いことは周知である。したがって、近接する2酸官能基を有するペプチドが、金属結合において非常に有効であることが予想される。適切な近接する2酸には、2酢酸(コハク酸)など任意の1,2−アルキル2酸、および任意の1,2−アリール2酸が含まれる。
【0043】
ペプチドのアミノ基を2酢酸と反応させて2酸誘導体を生成し得る(図4参照)。これは、樹脂に結合したペプチドのアミノ基を、ハロゲン化した酢酸(たとえば、ブロモ酢酸やクロロ酢酸)またはハロゲン化した酢酸誘導体(たとえば、ベンジルオキシエステル)と反応させることによって、便利に成し得る。固相合成手法であるため、溶媒で洗浄することによって未反応の物質を除去することが可能である。最終生成物は、加水分解切断によって樹脂から放出される。本発明のペプチドの他の2酸誘導体を、同じ様式で作製し得る。
【0044】
ポリアミノポリカルボン酸は、銅や鉄などの金属を結合することで知られている。本発明のペプチドの誘導体を作製するために適したポリアミノポリカルボン酸、ならびにこれらをペプチドに結合させる方法は、その開示の全体を本願明細書に援用する米国特許第5,807,535号および同第5,650,134号、ならびに国際出願国際公開公報第93/23425号パンフレットに記載されている。また、米国特許第5,739,395号も参照されたい。
【0045】
近接するポリヒドロキシル誘導体も、本発明に含まれる。適切な近接するポリヒドロキシルには、単糖類および多糖類(すなわち、2糖類、3糖類など)が含まれる。本発明で好ましいのは単糖類である。図7参照。単糖類は2つの主要な分類、すなわちフラノースおよびピラノースに分けられる。フラノース環系の主要な例の1つはグルコースである。グルコースのヒドロキシル基を、ベンジル官能基または不安定なt−ブチルオキシ官能基として保護し、一方で、アルデヒドをテトラペプチドのアミン基(たとえばリジンのアミノ基)と反応するために遊離させておくことが可能である。穏やかな還元/加水分解により、単糖ペプチド誘導体が生じる。他の単糖ペプチド誘導体をこの方法で調製し得る。
【0046】
ビスピリジルエチルアミン誘導体は、2価金属イオンと強力な錯体を形成することが知られている。ペプチドに結合させた場合、この官能基は、銅を含めた金属イオンの追加のキレート化部位を提供するであろう。テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]のビスピリジルエチル誘導体を図5に示す。このテトラペプチド誘導体の金属結合能力は、誘導体化していないペプチドに比べて少なくとも3倍増大されることが期待される。このビスピリジルエチルアミン誘導体の調製は、2酸誘導体の合成と一部類似性を共有する。テトラペプチドの2つのアミノ基(一方はAsp、他方はLysのもの)を2−ブロモエチルピリジンと反応させて、テトラ置換のペプチド誘導体を得る。この反応は、樹脂結合のテトラペプチドとブロモエチルピリジンとを反応させ、次いで、樹脂から生成物を切断することによって達成される。
【0047】
フェナントロリンは、2価金属イオンを結合する能力を有する別の複素環化合物である。ペプチドのフェナントロリン誘導体は、ビスピリジルエチルアミン誘導体と同じ方法で合成し得る。
【0048】
ポルフィリンは、すべての生物に見出される化合物群であり、金属を結合する能力を有するテトラピロール系大環状構造を含む。この種類の化合物の主要例は、ヘム、クロロフィルおよびコリンであり、それぞれ鉄、マグネシウムおよびコバルトを含む。メソポルフィリンIX(図6A〜B、Mは金属イオンである)はヘムから誘導され、銅に対する特異的な親和性を有することが観察されている。本発明のペプチドにこの構造を付加することにより、銅を結合するためのいくつかの部位を有するポルフィリン−ペプチド誘導体が生じるであろう(図6C参照)。金属結合におけるその役割に加えて、図6Cに示すテトラペプチドの3位および3’位のイミダゾール残基は、銅以外の金属の結合部位を提供することによりポルフィリン−金属錯体を安定化する可能性がある。具体的には、シアノコバラミン(ビタミンB−12)は、ポルフィリン核中の金属としてコバルトを含み、錯体はイミダゾール基によって安定化されている。このアナロジーに基づいて、ポルフィリン−テトラペプチド誘導体が、通常の生理的条件下で、ポルフィリン核内にコバルト(または他の金属)を結合し、かつこの錯体がHisイミダゾール基によって安定化されることが期待される。
【0049】
図6Cに示したポルフィリン−ペプチド誘導体を調製するために、メソポルフィリンIXのカルボキシル基を活性化させ、標準の固相ペプチド合成を使用してペプチドのアミノ基と結合させ得る。通常、樹脂に結合したペプチドのリジン残基の遊離アミノ基を、カルボキシを活性化したポルフィリン核と結合させ得る。標準的な方法を使用して、縮合生成物を樹脂から切断して外し得る。この方法は、本発明のペプチドの他のポルフィリン誘導体を合成するために使用し得る。
【0050】
他の適切なポルフィリンおよび大環状キレート剤ならびにこれらをペプチドに結合させる方法は、その開示の全体を本願明細書に援用する米国特許第5,994,339号および同第5,087,696号に記載されている。ペプチドに結合させ得る他のポルフィリンおよび大環状キレート剤が知られている。たとえば、米国特許第5,422,096号、同第5,527,522号、同第5,628,982号、同第5,637,311号、同第5,874,573号、および同第6,004,953号、国際出願国際公開公報第97/44313号パンフレットおよび同第99/39706号パンフレット参照。
【0051】
様々なさらなる金属キレート剤およびこれらをタンパク質に結合させる方法は、その開示の全体を本願明細書に援用する米国特許第5,683,907号に記載されている。
ジチオカルバメートは、鉄を含めた金属を結合することが知られている。本発明のペプチドの誘導体を作製するための適切なジチオカルバメートは、その開示の全体を本願明細書に援用する米国特許第5,380,747号および同第5,922,761号に記載されている。
【0052】
ヒドロキシピリドンが鉄キレート剤であることも知られている。本発明のペプチドの誘導体を作製するための適切なヒドロキシピリドンは、その開示の全体を本願明細書に援用する、米国特許第4,912,118号および同第5,104,865号ならびに国際出願国際公開公報第98/54138号パンフレットに記載されている。
【0053】
さらなる非ペプチド性の金属キレート剤が、当分野で知られているか、今後開発されるであろう。タンパク質およびペプチドに化学物質を結合させる方法は当分野で周知であり、本発明のペプチドに非ペプチド性の金属キレート剤を結合させることは、当分野の範囲内にある。たとえば、このような結合方法を記載している、上に引用した特許文献を参照されたい。
【0054】
非ペプチド性の金属結合官能基を、ペプチドP−Pに結合させるのと同じ方法で別の金属結合ペプチド(MBP)に結合させることが可能なことは理解されよう。生じるペプチド誘導体は、MBPの金属結合部位に加えて1つまたは複数の金属結合官能基を含む。好ましくは、MBPは2〜10個、より好ましくは3〜5個のアミノ酸を含む。好ましくは、MBPは1つまたは複数のD−アミノ酸を含み、最も好ましくはMBPのアミノ酸のすべてがD−アミノ酸である。上述のように、多くの金属結合ペプチドの配列が知られている。これらのペプチドおよび同ペプチドの金属結合部位からなるペプチドは、ペプチドP−Pについて上に記載した方法と同じ方法で調製し得る。1つまたは複数の金属結合官能基がペプチドに結合したこれらペプチドの誘導体は、ペプチドP−Pの誘導体について上に記載した方法と同じ方法で調製し得る。
【0055】
本発明はまた、式:
−L−P
の金属結合ペプチド2量体も提供する。
【0056】
は、金属イオンを結合する能力を有する任意のペプチドであり、それぞれのPは同一であっても異なっていてもよい。各Pは、好ましくは2〜10個、より好ましくは3〜5個のアミノ酸を含む。上述のように、金属結合ペプチドが知られており、各Pはこれらペプチドの1つまたは複数の金属結合部位の配列からなっていてよい。各Pは非ペプチド性の金属結合官能基による置換を含めてPおよびPについて上に記載したように置換されていてもよいが、いずれのPペプチドも置換されていないことが好ましい。Pはまた、Pの金属結合能力を提供するために、上述のように非ペプチド性の金属結合官能基で置換された任意のアミノ酸配列からなっていてもよい。好ましくは、各Pは非置換の金属結合ペプチド(すなわち、金属イオンを結合するペプチド配列からなる非置換のペプチド)である。最も好ましくは、P基のうち1つまたは両方がPである(すなわち、該2量体が配列P−L−P、P−L−P、または最も好ましくはP−L−Pを有する)。Pは上に定義されている。
【0057】
Lは、各PのC末端アミノ酸に結合しているリンカーである。Lは、2つのPペプチドを、それらのC末端アミノ酸を介して連結させることが可能な任意の生理学的に許容可能な化学基であってよい。「生理的に許容可能」とは、リンカーLをペプチド2量体に含めた結果、リンカーLを含むペプチド2量体が、該ペプチド2量体を投与される動物(ヒトを含む)または器官に対して毒性がないことを意味する。Lは、2つのP基を、これらが協同的に金属イオンを結合し得るように連結させる(2:1のペプチド:金属の錯体に類似;実施例8参照)ことが好ましい。また、Lは中性であることが好ましい。最も好ましくは、Lは、1〜18個、好ましくは2〜8個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖状のアルカンまたはアルケン残基(たとえば−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CHCH−など)、あるいは3〜8個、好ましくは5〜6個の炭素原子を含む環状アルカンまたはアルケン残基であり(図12A、化合物D参照)、アミド結合によってPに結合していることが好ましい。このようなリンカーは、ペプチド2量体に疎水性を与えるので特に好ましい。別の好ましい実施形態では、Lは窒素含有複素環状アルカン残基(図12A、化合物D、DおよびD参照)、好ましくはピペラジド(図12A、化合物D参照)である。別の好ましい実施形態では、Lはグリセリルエステルである(図12A、化合物D参照;式D中では、Rは、好ましくは1〜6個の炭素原子を含む、含むアルキルまたはアリールである)。最後に、Lは金属結合ポルフィリンであり得る(図6C参照)。これらの好ましいリンカーLにより、2つのペプチドPが協同的に金属イオンを結合し、かつ生体適合性であることが可能になるであろうし、これら好ましいリンカーを含むペプチド2量体は、容易に大量作製し得る。「生体適合性」とは、リンカーLを含むペプチド2量体が、ペプチド2量体を投与された動物(ヒトを含む)において、リンカーLに起因する望ましくない副作用を全く生じないことを意味する。
【0058】
ペプチド2量体を合成する方法を図12B〜Dに例示する。一般に、2つのP基のC末端アミノ酸(当分野で周知の方法および保護基によって保護されている)がLに結合され、生じたアミノ酸2量体を使用して標準のペプチド合成方法でペプチド2量体を作製する。
【0059】
たとえば、各ペプチドが配列Asp Ala His Lys[配列番号1]を有するペプチド2量体は、保護されたリジンを、酸塩化物として、またはペプチド合成で使用される標準のカップリング剤を使用することによって、遊離ジアミン官能基にカップリングさせることで合成し得る(図12B〜C参照)。多くの適切なジアミンが市販されており、あるいは、適切なジアミンは当分野で知られている方法によって容易に合成することが可能である。
【0060】
たとえば、リジン2量体「2」(図12B)は、以下のように調製し得る。乾燥ジメチルホルムアミド(DMF;100mL;乾燥アルゴンでフラッシュしたもの)中の、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)とt−ベンジルオキシカルボニル(Boc)とで保護したD−Lys(Fmoc−D−Lys(Boc)−OH)(20ミリモル)の攪拌溶液に、ブタン−1,4−ジアミン「1」および2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,2,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸(TBTU;0.5ミリモル)を加える。溶液を室温で36時間攪拌する。シリカによるフラッシュ・クロマトグラフィーで、酢酸エチル/メタノールの混合液で溶出させて、ビス保護されたリジン「2」を単離する。その後、標準的なペプチド合成方法を使用して、保護されたリジン2量体「2」からペプチド2量体「3」を調製する(図12B参照)。
【0061】
各ペプチドが配列Asp Ala His Lys[配列番号1]を有する別のペプチド2量体は、以下のように合成し得る。まず、ピペラジン「5」の2つのアミノ中心をアシル化することによって、別の保護されたリジン2量体「4」を合成する(図12C参照;シャンブリアーら(Chambrier et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.、第96巻、10824〜10829ページ、1999年も参照)。その後、標準のペプチド合成方法を使用して残りのアミノ酸残基を付加し、ペプチド2量体「6」を得る(図12C参照)。
【0062】
各ペプチドが配列Asp Ala His Lys[配列番号1]を有し、Lがグリセリルエステルであるペプチド2量体は、以下のように合成し得る。Rがアルキルまたはアリールである、図12Dの式7の3−置換型プロパン−1,2−ジオールは、市販されている。Rがメチルであるリジンジエステル「8」は、以下のように調製し得る(図12D参照)。乾燥トルエン(100mL;乾燥アルゴンでフラッシュしたもの)中の、Fmoc−D−Lys(Boc)−OH(20ミリモル)の攪拌溶液に、3−メトキシプロパン−1,2−ジオール(200ミリモル)およびイミダゾール(15ミリモル)を加える。溶液を室温で36時間攪拌する。溶媒を減圧下で除去し、残渣を酢酸エチルに溶かす。この溶液を、クエン酸溶液(2%)、水、0.5NのNaHCO溶液、そして再度水で洗浄し、その後、有機層を硫酸マグネシウムで完全に脱水する(溶媒の除去により淡黄色の残渣が得られる)。シリカによるフラッシュ・クロマトグラフィーで、酢酸エチル/メタノールの混合液で溶出させて、ビス保護されたリジン「8」を単離する。その後、標準的なペプチド合成方法を使用して、保護されたリジン2量体「8」からペプチド2量体「9」を調製する(図12D参照)。
【0063】
金属結合化合物の生理学的に許容可能な塩も、本発明に含まれる。生理学的に許容可能な塩には、無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など)、有機酸(酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸など)または塩基(製薬上許容可能な金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩もしくは炭酸水素塩など)由来の塩等、慣用の無毒性の塩が含まれる。塩は、従来の方法、たとえば、遊離塩基型の化合物を酸で中和することにより調製する。
【0064】
本発明はまた、本発明の1つまたは複数の金属結合化合物からなるオーラル・ケア製品も提供する。オーラル・ケア製品には、オーラル・ケア組成物およびオーラル・ケア・デバイスが含まれる。
【0065】
本発明のオーラル・ケア組成物には、洗浄剤、洗口剤、うがい薬、液剤、ドロップ、乳濁液、懸濁液、リキッド剤、ペースト、ゲル、軟膏、クリーム、スプレー、散剤、錠剤、ガム、ロゼンジ、ミント、フィルム、パッチ、および歯のホワイトニング組成物が含まれる。本発明のオーラル・ケア組成物には、消費者および患者による使用を意図する組成物、ならびに歯科の専門家(たとえば歯科衛生士、歯科医および口腔外科医)による使用を意図する組成物が含まれる。
【0066】
本発明のオーラル・ケア組成物は、本発明の1つまたは複数の金属結合化合物を活性成分として、1つまたは複数の製薬上許容可能な担体との混合物として含むであろう。本発明のオーラル・ケア組成物は一般に、約0.001重量%〜約20重量%の本発明の金属結合化合物または金属結合化合物の組合せからなる。本発明のオーラル・ケア組成物はまた、オーラル・ケア組成物中で従来使用されている他の活性化合物および/または他の成分を含めた1種または複数種の他の許容可能な成分からなっていてもよい。各担体および成分は、配合物の他の成分と適合性があり、動物に有害でないという点で「許容可能」でなければならない。
【0067】
オーラル・ケア組成物中で使用するための、製薬上許容可能な担体を含めた適切な成分、およびオーラル・ケア組成物を作製かつ使用する方法は、当分野で周知である。たとえば、すべての開示の全体を本願明細書に援用する、米国特許第4,847,283号、同第5,032,384号、同第5,043,183号、同第5,180,578号、同第5,198,220号、同第5,242,910号、同第5,286,479号、同第5,298,237号、同第5,328,682号、同第5,407,664号、同第5,466,437号、同第5,707,610号、同第5,709,873号、同第5,738,840号、同第5,817,295号、同第5,858,408号、同第5,876,701号、同第5,906,811号、同第5,932,193号、同第5,932,191号、同第5,951,966号、同第5,976,507号、同第6,045,780号、同第6,197,331号、同第6,228,347号、同第6,251,372号、および同第6,350,438号、国際出願国際公開公報第95/32707号パンフレット、同第96/08232号パンフレットおよび同第02/13775号パンフレット、ならびに欧州特許出願第471,396号参照。オーラル・ケア組成物中で使用されている慣用の成分には、水、アルコール、湿潤剤、界面活性剤、増粘剤、研磨剤、香味剤、甘味剤、抗微生物剤、抗う蝕剤、抗歯垢剤、抗歯石剤、pH調節剤、および多くの他のものが含まれる。
【0068】
オーラル・ケア組成物中で使用される水は、好ましくは低イオン含量であるべきである。またその水は、有機不純物も含まないべきである。
アルコールは無毒性でなければならない。好ましくは、アルコールはエタノールである。エタノールは溶媒であり、抗菌剤および収斂剤としても作用する。
【0069】
オーラル・ケア組成物中での使用に適した湿潤剤には、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、ブチレン・グリコール、ポリエチレン・グリコール、プロピレン・グリコール、マンニトール、およびラクチトールなどの食用の多価アルコールが含まれる。湿潤剤は、ペーストなどのオーラル・ケア組成物が空気に曝された際に硬化するのを防ぐのに役立ち、オーラル・ケア組成物に口腔において湿った感触を与え、また望ましい甘味を与えることもできる。
【0070】
界面活性剤には、陰イオン性、非イオン性、両性(amphoteric)、双イオン性、および陽イオン性の合成洗剤が含まれる。陰イオン性界面活性剤には、アルキル基に8〜20個の炭素原子を有する硫酸アルキルの水溶性塩(硫酸アルキルナトリウムなど)、8〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のスルホン化モノグリセリドの水溶性塩(ラウリル硫酸ナトリウムおよびココナツモノグリセリド硫酸ナトリウムなど)、ザルコシン酸塩(ラウロイルザルコシン酸、ミリストイルザルコシン酸、パルミトイルザルコシン酸、ステアロイルザルコシン酸、オレオイルザルコシン酸のナトリウム塩およびカリウム塩など)、タウリン酸塩、高級アルキルスルホ酢酸塩(ラウリルスルホ酢酸ナトリウムなど)、イセチオン酸塩(ラウロイルイセチオン酸ナトリウム)、ラウレスカルボン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ならびに前述のものの混合物が含まれる。ザルコシン酸塩は、口腔内において炭水化物の分解による酸の形成を阻害するので、好ましい。非イオン性界面活性剤には、ポロキサマー(Pluronic(登録商標)として販売されている)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tweenの名称の下で販売されている)、脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェノールの酸化ポリオキシエチレン縮合物、酸化エチレンと脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アミド、多価アルコール、およびポリプロピレンオキシドとの縮合由来の生成物、脂肪族アルコールの酸化エチレン縮合物、長鎖第3級酸化アミン、長鎖第3級酸化ホスフィン、長鎖ジアルキルスルホキシド、ならびにこのような物質の混合物が含まれる。両性界面活性剤には、ベタイン(コカミドプロピルベタインなど)、脂肪族基が直鎖または分枝鎖状であり得るとともに脂肪族置換基の1つが約8〜18個の炭素原子を含み、1つが陰イオン性水溶性化基(カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基など)である脂肪族第2級および第3級アミンの誘導体、ならびにこのような物質の混合物が含まれる。双イオン性界面活性剤には、脂肪族基が直鎖または分枝状であり得るとともに脂肪族置換基の1つが約8〜18個の炭素原子を含み、1つが陰イオン性水溶性化基(カルボキシ、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基など)を含む、脂肪族第4級アンモニウム、ホスホニウムおよびスルホニウム化合物の誘導体が含まれる。陽イオン性界面活性剤には、約8〜18個の炭素原子を含む1つのアルキル長鎖を有する脂肪族第4級アンモニウム化合物(塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ジイソブチルフェノキシエチルジメチルベンジルアンモニウム、亜硝酸ココナツアルキルトリメチルアンモニウム、フッ化セチルピリジニウムなど)が含まれる。ある種の陽イオン性界面活性剤は抗微生物剤としても作用し得る。
【0071】
増粘剤には、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、カラゲナン、セルロース誘導体(たとえば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース)、ラポナイト、セルロースエーテルの水溶性塩(カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースナトリウムなど)、天然ガム(カラヤ・ガム、キサンタン・ガム、アラビア・ガム、トラガカント・ガムなど)、ポリエーテル化合物のポリマー(ポリ酸化エチレンおよびポリ酸化プロピレンなど)、ペンタエリスリトールのアルキルエーテルと架橋結合したアクリル酸のホモポリマー、ショ糖のアルキルエーテル、カルボマー(Carbopol(登録商標)として販売されている)、デンプン、ラクチドとグリコライドモノマーとのコポリマー(平均分子量約1,000〜120,000を有するコポリマー)、コロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムおよび細かく分割されたシリカが含まれる。増粘剤は、オーラル・ケア組成物に所望の稠度を与えるのに十分な量を加える。
【0072】
研磨剤には、シリカ(ゲルおよび沈殿物を含む)、アルミナ、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸ジカルシウム、リン酸トリカルシウム、ヒドロキシアパタイト、ピロリン酸カルシウム、トリメタリン酸塩、不溶性ポリメタリン酸塩(不溶性のポリメタリン酸ナトリウムおよびポリメタリン酸塩カルシウムなど)、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、樹脂性研磨剤物質(尿素とホルムアルデヒドとの粒子状縮合生成物など)、粒子状熱硬化性ポリマー樹脂(適切な樹脂には、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン−尿素樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−尿素−ホルムアルデヒド樹脂、架橋結合したエポキシドおよび架橋結合したポリエステルが含まれる)、ならびに前述のものの組合せが含まれる。シリカ研磨剤は、歯のエナメル質または象牙質を過度に磨耗させずに優れた歯の清掃および磨き性能をもたらすので、好ましい。
【0073】
香味剤には、ペパーミント油、スペアミント油、ウィンターグリーン油、クローブ、メンソール、ジヒドロアネトール、エストラゴール、サリチル酸メチル、ユーカリプトール、カッシア、酢酸1−メンチル、セージ、ユージノール、パセリ油、メントン、オキサノン、α−イリソン、α−イオノン、アニス、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグアエトール、シナモン、バニリン、エチルバニリン、チモール、リナロール、リモネン、イソアミル酢酸、ベンズアルデヒド、酪酸エチル、フェニルエチルアルコール、レンタカンバ(sweet birch)、ケイ皮アルデヒド、ケイ皮アルデヒドグリセロールアセタール(CGAとして知られる)、および前述のものの混合物が含まれる。
【0074】
甘味剤には、ショ糖、グルコース、サッカリン、デキストロース、レブロース、乳糖、マンニトール、ソルビトール、フルクトース、マルトース、キシリトール、サッカリン塩、タウマチン、アスパルテーム、D−トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、シクラミン酸塩、および前述のものの混合物が含まれる。
【0075】
香味剤および甘味剤に加えて、オーラル・ケア組成物は、任意選択の成分として冷却剤、唾液分泌促進剤(salivating agent)、加温剤および局部麻酔剤(numbing agent)を含んでいてもよい。冷却剤には、カルボキサミド、メンソール、パラメンタンカルボキサミド、イソプロピルブタンアミド、ケタール、ジオール、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、メントングリセロールアセタール、乳酸メンチル、およびこれらの混合物が含まれる。唾液分泌促進剤には、Jambu(登録商標)(タカサゴ(Takasago)社により製造されている)が含まれる。加温剤には、トウガラシおよびニコチン酸エステル(ニコチン酸ベンジルなど)が含まれる。局部麻酔剤には、ベンゾカイン、リドカイン、クローブ芽油およびエタノールが含まれる。
【0076】
抗菌剤および抗歯垢剤には、トリクロサン、サンギナリンおよびサンギナリア、第4級アンモニウム化合物、塩化セチルピリジニウム、塩化テトラデシルピリジニウムおよびN−テトラデシル−4−エチルピリジニウム塩化物、塩化ベンズアルコニウム、ビスクアニド(bisquanide)、クロルヘキシジン、ジグルコン酸クロルヘキシジン、ヘキセチジン、オクテニジン、アレキシジン、ハロゲン化したビスフェノール化合物、2,2’−メチレンビス−(4−クロロ−6−ブロモフェノール)、5−クロロ−2−(2,4−ジクロロフェノキシ)−フェノール、サリチルアニリド、臭化ドミフェン、デルモピノール(delmopinol)、オクタピノール(octapinol)、その他のピペラジノ誘導体、ナイシン、亜鉛スズ・イオン剤、抗生物質(オーグメンチン、アモキシシリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、およびメトロニダゾールなど)、前述のものの類似体および塩、ならびに前述のものの混合物が含まれる。
【0077】
抗う蝕剤には、フッ化ナトリウム、フッ化スズ、フッ化カリウム、フッ化アミン、フッ化インジウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、ストロンチウム塩、およびポリアクリル酸ストロンチウムが含まれる。
【0078】
抗歯石剤には、二アルカリ金属(dialkali metal)のピロリン酸塩および四アルカリ金属(tetraalkali metal)のピロリン酸塩(たとえば、水和形および無水形のピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム)などのピロリン酸塩が含まれる。ピロリン酸塩の代わりに、またはそれに加えて使用し得る他の抗歯石剤には、合成陰イオン性ポリマー(ポリアクリレートおよび無水マレイン酸またはマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーなど)、スルホン酸ポリアミノプロパン、クエン酸亜鉛三水和物、ポリリン酸(トリポリリン酸およびヘキサメタリン酸など)、ポリホスホネート(エタン−1−ヒドロキシ−1,1−二リン酸二ナトリウム(EHDP)、メタン二ホスホン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸など)、ならびにポリペプチド(ポリアスパラギン酸およびポリグルタミン酸など)が含まれる。
【0079】
本発明の口腔組成物のpHは酸性であってはならない。というのも、酸性条件によって本発明の金属結合化合物の有効性が低減されるからである。したがって、本発明のオーラル・ケア組成物のpHは約6.5より高く、好ましくは約7.0〜約8.5、より好ましくは約7.2〜約7.6であるべきである。したがって、1または複数のpH調節剤および/もしくは緩衝剤をオーラル・ケア組成物中に含める必要があるかもしれない。pH調節剤は、所望のpHをもたらす任意の化合物または化合物の混合物であってよい。適切なpH調節剤には、安息香酸、クエン酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど、有機および無機の酸および塩基が含まれる。所望のpHをもたらし維持するために必要なものとして、緩衝剤には、酢酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、重炭酸塩(たとえば、重炭酸ナトリウム(重曹としても知られている)などのアルカリ金属重炭酸塩)、グルコン酸塩、酒石酸塩、硫酸塩、クエン酸塩(クエン酸ナトリウムなど)、安息香酸塩、硝酸塩(硝酸ナトリウムおよび硝酸カリウムなど)、リン酸塩(リン酸カリウムおよびリン酸ナトリウムなど)、ならびに前述のものの組合せが含まれる。
【0080】
本発明のオーラル・ケア組成物は、本発明の金属結合化合物(上述のように、これらは金属イオンを結合することに加えて、抗炎症性であり、ROSによって与えられた損傷を軽減させる)に加えて、1種もしくは複数種の抗酸化剤、抗炎症化合物、および/または金属結合化合物をさらに含んでいてもよい。
【0081】
適切な抗炎症剤には、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、アスピリン、ケルトロラック(kertorolac)、ナプロキセン、インドメタシン、ピロキシカム、メクロフェナム酸、ステロイド、および前述のものの混合物が含まれる。
【0082】
適切な抗酸化剤には、スーパーオキシド・ジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、エブセレン、グルタチオン、システイン、N−アセチルシステイン、ペニシラミン、アロプリノール、オキシプリノール、アスコルビン酸、α−トコフェロール、Trolox(登録商標)(水溶性α−トコフェロール)、ビタミンA、β−カロテン、脂肪酸結合タンパク質、フェノザン(fenozan)、プロブコール、シアニダノール−3(cyanidanol−3)、ジメルカプトプロパノール、インダパミド、エモキシピン(emoxipine)、ジメチルスルホキシドなどが含まれる。たとえば、ダスら(Das et al.)、Methods Enzymol.、第233巻、601〜610ページ、1994年;ストーズ(Stohs)、J.Basic Clin.Physiol.Pharmacol.、第6巻、205〜228ページ、1995年参照。
【0083】
適切な金属結合化合物には、金属結合ペプチドおよび/または非ペプチド性のキレート剤が含まれる。金属結合ペプチドおよび非ペプチド性キレート剤は上に記載されており、当分野で他のものも知られている。たとえば、Cu(II)を密接に結合するペプチドP(すなわち、Pの式中n=0であるペプチドP−P)は、Cu(I)を結合するのに適した別個のペプチドと組み合わせて与え得る(適切なCu(I)結合ペプチドは上に記載されている)。別の例として、ペプチドPは、鉄を結合する能力を有する別のペプチドまたは非ペプチド性キレート剤と組み合わせて与え得る。適切な鉄結合ペプチドおよび非ペプチド性キレート剤は上に記載されており、当分野で他のものも知られている(たとえばメシル酸デフェロキサミン)。
【0084】
本発明のオーラル・ケア組成物は、本発明の金属結合化合物の分解を阻止するため、かつ/または追加の治療効果のためにプロテアーゼ阻害剤を有利に含んでいてもよい(ある種のプロテアーゼは炎症プロセスに関与しており、また他のプロテアーゼは口腔内の組織崩壊に関連づけられている)。適切なプロテアーゼ阻害剤には、その開示の全体を本願明細書に援用する、米国特許第6,403,633号、同第6,350,438号、同第6,066,673号、同第5,622,984号および同第4,454,338号に記載されているものなど、メタロプロテアーゼおよびセリンプロテアーゼ阻害剤が含まれる。
【0085】
オーラル・ケア組成物中に組み込んでもよい多くの他の成分が知られている。これらには、懸濁剤(多糖類、米国特許第5,466,437号参照)、活性成分の送達を増強し得るポリマー化合物(ポリビニルメチルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマーならびにドイツ連邦共和国第942,643号および米国特許第5,466,437号に記載されている送達を増強させるポリマーなど)、オーラル・ケア組成物が口腔組織に強力かつ継続的に接着することを可能し、それにより持続的な局所的治療効果をもたらす物質(天然ガム、植物抽出物、動物抽出物(たとえばゼラチン)、天然および合成ポリマー、ならびにデンプン誘導体など;たとえば、米国特許第5,032,384号、同第5,298,237号、および同第5,466,437号参照)、油、ワックス、シリコン、着色料(FD&C色素など)、色換え系、保存料(メチルパラベン、プロピルパラベン、および安息香酸ナトリウムなど)、乳化剤(二酸化チタンなど)、植物抽出物、可溶化剤(プロピレン・グリコールなど;たとえば米国特許第5,466,437号参照)、酵素(デキストラナーゼおよび/またはミュータナーゼ(mutanase)、アミログルコシダーゼ、グルコースオキシダーゼとラクトペルオキシダーゼ、およびノイラミニダーゼ)、合成および天然ポリマー、歯のホワイトニング剤(約0.1重量%〜約10重量%の過酸素化合物など;歯のホワイトニング組成物についての以下のさらなる論述参照)、アルカリ金属重炭酸塩(重炭酸ナトリウム(重曹としても知られている)、一般に約0.01重量%〜約30重量%とする)、減感剤(カリウム塩(たとえば、硝酸カリウム、クエン酸カリウム、塩化カリウム、酒石酸カリウム、重炭酸カリウム、シュウ酸カリウム)、およびストロンチウム塩など)、鎮痛剤(リドカインまたはベンゾカインなど)、抗真菌剤、抗ウイルス剤などが含まれる。
【0086】
大量の銅および鉄の塩が存在するのを避けるのが好ましい。オーラル・ケア組成物中に大量の銅および鉄イオンが存在することにより、本発明の金属結合化合物が口腔内で見つかる銅および鉄イオンを結合する能力が低減される可能性がある。
【0087】
上述の成分および当分野で知られているまたは今後開発されるであろう他の成分を利用して、広範囲の様々なオーラル・ケア組成物を調製し得ることを理解されたい。適切な成分および成分の組合せを選択し、あるオーラル・ケア組成物中に含める有効量の1または複数の本発明の金属結合化合物を決定することは、当分野の知識および本明細書中に提供する指針を前提とすれば、当分野の技術範囲内にある。
【0088】
以下に、本発明の金属結合化合物または金属結合化合物の組合せを組み込み得るオーラル・ケア組成物の数例を示す。当業者には、さらなる種類のオーラル・ケア組成物、ならびに異なる成分および異なる量の成分を有するさらなるオーラル・ケア組成物は、当分野の知識および本明細書中に提供する指針を利用して調製し得ることが、理解されよう。
【0089】
歯磨剤には、練り歯磨き、歯磨きジェル、歯磨き粉および液体歯磨剤が含まれる。練り歯磨きおよび歯磨きジェルは一般に、歯科用研磨剤、界面活性剤、増粘剤、湿潤剤、香味剤、甘味剤、着色料および水を含む。また、練り歯磨きおよび歯磨きジェルは、乳白剤、抗う蝕剤、抗歯石剤、歯のホワイトニング剤、および他の任意選択の成分を含んでいてもよい。典型的には、練り歯磨きまたは歯磨きジェルは、約5%〜約70%、好ましくは約10%〜約50%の研磨剤、約0.5%〜約10%の界面活性剤、約0.1%〜約10%の増粘剤、約10%〜約80%の湿潤剤、約0.04%〜約2%の香味剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、約0.01%〜約0.5%の着色料、約0.05%〜約0.3%の抗う蝕剤、約0.1%〜約13%の抗歯石剤、および約2%〜約45%の水を含む。もちろん、歯磨き粉は実質的にすべての液体でない成分を含み、典型的には約70%〜約99%の研磨剤を含む。液体歯磨剤は、水、エタノール、湿潤剤、界面活性剤、増粘剤、研磨剤(研磨剤が含まれる場合は、懸濁剤(たとえば、高分子量多糖)を含めなければならない;米国特許第5,466,437号参照)、抗菌剤、抗う蝕剤、香味剤および甘味剤からなり得る。代表的な液体歯磨剤は、約50%〜約85%の水、約0.5%〜約20%のエタノール、約10%〜約40%の湿潤剤、約0.5%〜約5%の界面活性剤、約0.1%〜約10%の増粘剤を含むものとなり、約10%〜約20%の研磨剤、約0.3%〜約2%の懸濁剤、約0.05%〜約4%の抗菌剤、約0.0005%〜約3%の抗う蝕剤、約0.1%〜約5%の香味剤、および約0.1%〜約5%の甘味剤を含んでいてもよい。
【0090】
ゲルには、歯磨剤ゲル(上記説明参照)、非研磨剤ゲルおよび歯肉縁下用ゲルが含まれる。非研磨剤ゲルおよび歯肉縁下用ゲルは一般に、増粘剤、湿潤剤、香味剤、甘味剤、着色料、および水を含む。また、このようなゲルは、1種もしくは複数種の抗う蝕剤および/または抗歯石剤を含んでいてもよい。典型的には、このようなゲルは、約0.1%〜約20%の増粘剤、約10%〜約55%の湿潤剤、約0.04%〜約2%の香味剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、約0.01%〜約0.5%の着色料、およびバランス用の水を含む。また、このようなゲルは、約0.05%〜約0.3%の抗う蝕剤および約0.1%〜約13%の抗歯石剤も含んでいてよい。
【0091】
一般に、クリームは増粘剤、湿潤剤および界面活性剤を含み、香味剤、甘味剤、着色料を含んでいてもよい。典型的には、クリームは、約0.1%〜約30%の増粘剤、約0%〜約80%の湿潤剤、約0.1%〜約5%の界面活性剤、約0.04%〜約2%の香味剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、約0.01%〜約0.5%の着色料、および約2%〜約45%の水を含む。
【0092】
口腔での使用に適した軟膏は、たとえば、その開示の全体を本願明細書に援用する米国特許第4,847,283号、同第5,855,872号、および同第5,858,408号に記載されている。一般に、軟膏は以下の1つまたは複数を含む:脂肪、油、ワックス、パラフィン、シリコン、プラスチベース、アルコール、水、湿潤剤、界面活性剤、増粘剤、タルク、ベントナイト、酸化亜鉛、アルミニウム化合物、保存料、抗ウイルス化合物、および他の成分。たとえば、軟膏は、約80%〜約90%のペトロラタムおよび約10%〜約20%のエタノールまたはプロピレン・グリコールからなり得る。別の例として、軟膏は、約10%のペトロラタム、約9%のラノリン、約8%のタルク、約32%のタラ肝油、および約40%の酸化亜鉛からなり得る。第3の例として、軟膏は、約30%〜約45%の水、約10%〜約30%の油(たとえばペトロラタムまたは鉱物油)、約0.1%〜約10%の乳化剤(たとえば、ワックスNF)、約2%〜約20%の湿潤剤(たとえばプロピレン・グリコール)、約0.05%〜約2%の保存料(たとえばメチルパラベンおよびプロピルパラベン)、および約10%〜約40%のステロールアルコールからなり得る。
【0093】
口腔洗浄剤、洗口剤、うがい薬およびスプレーは、一般に、水、エタノール、および/または湿潤剤を含み、好ましくは、界面活性剤、香味剤、甘味剤、および着色料も含み、増粘剤ならびに1種または複数種の抗う蝕剤および/または抗歯石剤を含んでいてもよい。典型的な組成物は、約0%〜約80%の湿潤剤、約0.01%〜約7%の界面活性剤、約0.03%〜約2%の香味剤、約0.005%〜約3%の甘味剤、約0.001%〜約0.5%の着色料を含み、バランスは水である。別の典型的な組成物は、約5%〜約60%、好ましくは約5%〜約20%のエタノール、約0%〜約30%、好ましくは約5%〜約20%の湿潤剤、約0%〜約2%乳化剤、約0%〜約0.5%の甘味剤、約0%〜約0.3%の香味剤、およびバランス用の水を含む。さらなる典型的な組成物は、約45%〜約95%の水、約0%〜約25%のエタノール、約0%〜約50%の湿潤剤、約0.1%〜約7%の界面活性剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、約0.4%〜約2%の香味剤、および約0.001%〜約0.5%の着色料を含む。また、これらの組成物は、約0.05%〜約0.3%の抗う蝕剤および約0.1%〜約3%の抗歯石剤も含みうる。
【0094】
液剤は一般に、水、保存料、香味剤、および甘味剤を含み、増粘剤および/または界面活性剤を含んでいてよい。典型的には、液剤は、約85%〜約99%の水、約0.01%〜約0.5%の保存料、約0%〜約5%の増粘剤、約0.04%〜約2%の香味剤、約0.1%〜約3%の甘味剤、および約0%〜約5%の界面活性剤を含む。使用し得る別の単純な液剤は、任意選択で保存料、増粘剤および/もしくは界面活性剤を含む、生理食塩水、緩衝溶液、または緩衝生理食塩水である。
【0095】
一般に、ロゼンジおよびミントは、基剤、香味剤および甘味剤を含む。基剤は、キャンディ・ベース(硬い砂糖菓子)、グリセリン・ゼラチンまたは、形状を与えるのに十分な粘質を有する糖の組合せであってよい。米国特許第6,350,438号およびレミングトン(Remington)、「調剤の科学と実践(The Science And Practice Of pharmacy)、第19版、1995年参照。ロゼンジ組成物も、通常1種または複数種の充填剤(たとえば圧縮糖(compressilble sugar))および潤滑剤を含む。
【0096】
チューインガム、咀嚼錠および咀嚼ロゼンジは、その開示の全体を本願明細書に援用する、米国特許第6,471,991号、同第6,296,868号、同第6,146,661号、同第6,060,078号、同第5,869,095号、同第5,709,873号、同第5,476,647号、および同第5,312,626号、国際出願国際公開公報第84/04453号パンフレットおよび第99/02137号パンフレット、ならびにリーバーマンら(Lieberman et al.)、「医薬の投与形態(Pharmaceutical Dosage Forms )、第2版、1990年に記載されている。
【0097】
1例として、圧縮咀嚼錠は、水で崩壊しない圧縮可能な炭水化物(マンニトール、ソルビトール、マルチトール、デキストロース、ショ糖、キシリトール、乳糖およびそれらの混合物など)、結合剤(セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、デンプン、加工デンプンおよびそれらの混合物など)、ならびに任意選択で潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、およびワックスなど)、甘味剤、着色剤および香味剤、界面活性剤、保存料、および他の成分からなる。本発明の1または複数の金属結合化合物を含めたすべての成分を、乾式混合して錠剤に圧縮する。
【0098】
別の例として、咀嚼錠は、外層に覆われて囲まれたコアからなっていてよい。このコアは、本発明の1または複数の金属結合化合物と、任意選択でゼリー基剤または咀嚼性基剤中の他の活性成分からなっていてもよい。外層は咀嚼性基剤であってよい。ゼリー基剤は、ペクチン、ソルビトール、マルチトール、イソマルト、液状ブドウ糖、糖、クエン酸および/または香味剤からなっていてよい。コアまたは外層の咀嚼性基剤は、ガム、ソフト・キャンディ、ヌガー、キャラメルまたはハード・キャンディであってよい。錠剤は、コアおよび外層を押出し形成してロープ状物を形成し、次いで該ロープ状物を錠剤に切断することによって形成される。
【0099】
チューインガム組成物は一般に、ガム基剤(ガムベース)、香味剤および甘味剤を含む。適切なガム基剤には、望ましくは従来の可塑剤または軟化剤と一緒に、ジェルトン、ゴム、ラテックス、チクル、およびビニライト樹脂が含まれる。可塑剤には、トリアセチン、クエン酸アセチルトリブチル、セバシン酸ジエチル、クエン酸トリエチル、セバシン酸ジブチル、コハク酸ジブチル、フタル酸ジエチルおよびアセチル化モノグリセリドが含まれる。通常、チューインガム組成物は、約50%〜約99%ガム基剤、約0.4%〜約2%の香味剤および約0.01%〜約20%の甘味剤を含む。本発明の1または複数の金属結合化合物および他の活性成分を、たとえばこれらを暖かいガム基剤中に撹拌することによって、またはガム基剤の外表面上にコーティングすることによって、ガム基剤に取り込ませてよい。
【0100】
ラクチド/グリコライド・コポリマーから作製される、フィルムおよびシート、ならびに口腔内で固体を形成するゲルが、米国特許第5,198,220号、同第5,242,910号および同第6,350,438号に記載されている。口腔内での使用に適した別のポリマー・フィルムが、国際出願国際公開公報第95/32707号パンフレットに記載されている。歯および義歯などの硬い歯性表面に接着し、口腔内で分解するパッチは、米国特許第6,197,331号に記載されている。これらの物はすべて、それに含まれている活性要素を口腔内に徐放する。活性剤の徐放をもたらす他の組成物(ペースト、ゲル、軟膏、リキッド剤およびフィルムを含む)も知られている。たとえば、米国特許第5,032,384号、同第5,298,237号、同第5,466,437号、同第5,709,873号、および同第6,270,781号参照。
【0101】
歯のホワイトニング組成物は、歯のホワイトニング剤からなる。歯のホワイトニング剤には、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の過酸化物、過炭酸塩および過ホウ酸物、または過酸化水素を含む複合化合物が含まれる。歯のホワイトニング剤はまた、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の過酸化塩も含む。最も一般的に使用されている歯のホワイトニング剤は過酸化カルバミドである。他の一般的に使用されている歯のホワイトニング剤は、過酸化水素、ペルオキシ酢酸および過ホウ酸ナトリウムである。これらの歯のホワイトニング剤は、活性酸素および過酸化水素を遊離する。歯のホワイトニング剤は、約0.1%〜約90%の濃度で歯のホワイトニング組成物中に存在し得る。通常、歯のホワイトニング組成物中の過酸化カルバミドの濃度は約10%〜約25%である。
【0102】
多くの歯のホワイトニング組成物が当分野で知られており、水溶液、ゲル、ペースト、リキッド剤、フィルム、ストリップ、1部構成システム、2部構成システム、歯のホワイトニング剤の活性化を必要とする組成物(たとえば、実質的に共役炭化水素などの、照射された際に脱色剤を活性化させる放射エネルギーまたは熱エネルギー吸収物質を含めることによる)などが含まれる。たとえば、その開示の全体を本願明細書に援用する、米国特許第5,302,375号、同第5,785,887号、同第5,858,332号、同第5,891,453号、同第5,922,307号、同第6,322,773号、同第6,419,906号、ならびに国際出願国際公開公報第99/37236号、第01/89463号および第02/07695号参照。また、多くの他のオーラル・ケア組成物(たとえば、練り歯磨き)およびデバイス(たとえば、デンタル・フロス)が歯のホワイトニング剤を含む。
【0103】
歯のホワイトニング組成物、または歯のホワイトニング剤を含む多くのオーラル・ケア組成物およびデバイスのうち1つを使用することにより、ROSの生成がもたらされ、口腔組織の炎症を引き起こし得る。本発明の1または複数の金属結合化合物を歯のホワイトニング組成物または歯のホワイトニング剤を含む他のオーラル・ケア組成物およびデバイスに組み込むことにより、炎症および/またはROSの生成が軽減される。また、本発明の1または複数の金属結合化合物をこのような組成物に組み込むことで、より効果的なホワイトニングがもたらされるかもしれない。というのも、過酸化水素型のホワイトニング剤による歯の白色化を司っている過酸化水素がヒドロキシル・ラジカルに変換されず(実施例8および9参照)、したがって、より長く活性が保たれるからである。あるいは、本発明の1または複数の金属結合化合物からなるオーラル・ケア組成物またはデバイスを、歯のホワイトニング組成物または歯のホワイトニング剤からなるオーラル・ケア組成物もしくはデバイスの前あるいは後で使用して炎症および/またはROSの生成を軽減または阻止することができる。
【0104】
たとえば、一般的に、歯科用のトレイまたはトラフ(trough)を用いて歯のホワイトニング組成物を歯に施用することによって、歯をホワイトニングする。本発明の1または複数の金属結合化合物を、該トレイまたはトラフ内で使用する歯のホワイトニング組成物に組み込ませることができよう。代替方法では、歯のホワイトニング組成物の施用が完了した後、本発明の1または複数の金属結合化合物からなる別の組成物を、清浄にしたまたは別のトレイもしくはトラフ内で歯に施用することができよう。さらなる代替方法では、本発明の1または複数の金属結合化合物からなる洗浄剤または洗口剤を使用して、歯のホワイトニング組成物を施用する前および/または後に口腔をすすぐこともできよう。
【0105】
最近開発された、歯のホワイトニング組成物を歯に施用するための製品は、可撓性のストリップである。たとえば、米国特許第5,891,453号および同第6,419,906号参照。本発明の1または複数の金属結合化合物をこのようなストリップに組み込ませることもできよう。たとえば、1または複数の金属結合化合物を歯のホワイトニング組成物に取り込ませておいてこれをストリップに塗布することもできるし、ストリップの製造中または患者が使用する直前に、1または複数の金属結合化合物からなる溶液、ゲルまたは他の組成物を個別にストリップに塗布することもできる。さらに別の代替方法では、歯のホワイトニング組成物からなるストリップおよび1または複数の金属結合化合物からなるストリップのいずれも患者に供給してこれらが順次使用されてもよい。
【0106】
本発明のオーラル・ケア組成物は、単一または複数の相からなりうる。複数の相は、たとえば一部の成分が不適合性である場合、一部の成分が不安定である場合、または使用時に成分を混合することが最もよい場合に用いられよう。したがって、相の1つが一部の成分を含み、残りの成分は1つまたは複数の追加相に含まれることになる。複数の相は複数の個別の組成物であってよく、この場合は複数の相を複数の個別の容器または単一容器の複数の区画内に提供し、使用時に複数の相を混合することになる。代替方法として、一部の成分を被包することによって複数の相を形成してもよく、この場合は複数の相をすべて単一容器に含めてもよい。複数相のオーラル・ケア組成物は、たとえば、米国特許第5,302,375号、同第5,906,811号、同第5,976,507号、同第6,228,347号および同第6,350,438号ならびに国際出願国際公開公報第99/37236号パンフレットに記載されている。
【0107】
本発明はまた、1または複数の金属結合化合物からなるオーラル・ケア・デバイスも提供する。本発明のオーラル・ケア・デバイスには、消費者および患者による使用が意図されるデバイスならびに歯科の専門家(たとえば、歯科衛生士、歯科医および口腔外科医)による使用が意図されるデバイスが含まれる。
【0108】
本発明のオーラル・ケア・デバイスには、本発明の1または複数の金属結合化合物を接着、吸収、結合、付着、混入、コーティング、または他の方法で取り込ませた、外科材料(縫合糸およびスポンジなど)、フロス、テープ、チップ、ストリップ、繊維、爪楊枝またはラバー・チップ、人工歯根ならびにデンタル器具(歯および任意選択で歯周組織の上に装着されてそれらを覆うトレイおよびトラフなど)が含まれる。たとえば、このようなオーラル・ケア・デバイスおよび同デバイスに化合物を取り込ませる方法を記載している、米国特許第5,709,873号、同第5,863,202号、同第5,891,453号、同第5,967,155号、同第5,972,366号、同第5,980,249号、同第6,026,829号、同第6,080,481号、同第6,102,050号、同第6,350,438号、同第6,419,906号、国際出願国際公開公報第02/13775号パンフレット、および欧州特許出願第752833号(これらの特許すべての開示の全体を本願明細書に援用する)参照。たとえば、本発明の1または複数の金属結合化合物を結合剤(たとえばワックスもしくはポリマー)に取り込ませてデンタル・フロスにコーティングすることが可能であり、デンタル・フロスを本発明の1または複数の金属結合化合物を含む液体の槽に浸してフロスに該化合物を含浸またはコーティングすることが可能であり、固体(たとえば凍結乾燥)形態の本発明の1または複数の金属結合化合物を歯への施用に適したポリマー・フィルムに取り込ませることが可能であり、溶液またはゲル状の本発明の1または複数の金属結合化合物を歯への施用に適した可撓性のストリップに塗布することが可能であり、あるいは、縫合糸または他の外科材料を、本発明の1または複数の金属結合化合物を含む溶液に浸し、次いで該化合物が縫合糸または外科材料と会合(結合、混入、コーティングされるなど)するように溶媒を除去することが可能である。たとえば、米国特許第5,891,453号、同第5,967,155号、同第5,972,366号、同第6,026,829号、同第6,080,481号、同第6,102,050号、および同第6,419,906号参照。
【0109】
食品、咀嚼製品、および玩具などの動物用のオーラル・ケア製品も本発明の範囲内に含まれる。適切な製品は米国特許第6,350,438号に記載されている。
動物の口腔組織を処置するために、本発明の1または複数の金属結合化合物を使用し得る。本明細書中で使用する「口腔」とは、外部境界が口唇であり、内部境界が舌、歯茎および歯を囲む咽頭である腔を意味する。したがって、口腔組織には、口唇、舌、歯茎、頬側組織、口蓋および歯が含まれる。単一の組織、複数の組織、1つもしくは複数の組織の一部分、すべてもしくは実質的にすべての口腔組織、または前述の組合せを、本発明によって処置し得る。本明細書中で使用する「処置」およびその変形は、疾病もしくは状態、またはその症状もしくは作用の少なくとも一部を治療、寛解、緩和、阻害、阻止し、起こり得る可能性を軽減し、あるいは重篤度を軽減させることを意味する。
【0110】
口腔組織を処置するために、組織を本発明の1または複数の金属結合化合物と接触させる。たとえば、組織を該金属結合化合物からなるオーラル・ケア組成物と接触させてもよい。口腔組織をオーラル・ケア組成物と接触させる方法は当分野で周知である。適切な方法には、組織を液剤(たとえば口腔洗浄剤、洗口剤、スプレー、液体歯磨剤、または他の液剤)ですすぐこと、歯を歯磨剤(たとえば練り歯磨き、歯磨きジェル、または散剤)でブラッシングすること、非研磨剤溶液、ゲル、ペースト、クリームまたは軟膏を(施用具を使用して、または使用せずに)組織に直接塗布すること、ガムを噛むこと、ロゼンジ、ミントまたは錠剤を咀嚼もしくは舐めること、ならびに多くの他の局所施用手段が含まれる。液剤、ゲル、ペースト、クリームおよび軟膏などのオーラル・ケア組成物を組織に施用するのに適した施用具には、スワブ、スティック、プラスチック製パドル、点滴器、注射器、ストリップ(米国特許第5,891,453号および同第6,419,906号に記載されているものなど)、指、あるいは、たとえばゲルまたは溶液中で、歯および任意選択で歯周組織の浸漬を可能にするデンタル・トレイもしくは器具(米国特許第5,863,202号および同第5,980,249号ならびに欧州特許出願第752833号に示されているものなど)が含まれる。さらに、口腔組織を処置するために、組織を該金属結合化合物からなるオーラル・ケア・デバイスと接触させてよい。口腔組織をオーラル・ケア・デバイスと接触させる方法は当分野で周知である。たとえば、外科的創傷または抜歯により生じる創傷を閉じるために縫合糸を使用することが可能であり、歯をフロスするためにデンタル・フロスを使用することが可能である。
【0111】
組織の処置は、予防的処置であり得る。たとえば、予防的オーラル・ケア療法の一部として組織を処置してもよい。このような療法で使用され、好ましくは少なくとも1日1回、より好ましくは1日2回もしくは3回使用されることになるオーラル・ケア組成物もしくはデバイス(練り歯磨き、歯磨きジェル、口腔洗浄剤もしくは洗口剤、またはデンタル・フロスなど)に、本発明の1または複数の金属結合化合物を取り込ませることが可能である。別の代替方法では、本発明の1または複数の金属結合化合物を、予防的オーラル・ケア療法で使用する他の組成物およびデバイスとは別に使用する別のオーラル・ケア組成物もしくはデバイス中に含めてもよい。たとえば、本発明の1または複数の金属結合化合物を、好ましくは少なくとも1日1回、より好ましくは少なくとも1日2回もしくは3回使用される口腔洗浄剤または洗口剤、ガム、ロゼンジあるいは咀嚼錠に取り込ませることが可能である。タバコ製品を利用する患者については、そのような製品によって口腔組織に与えられた損傷の寛解を試みるために、本発明の1または複数の金属結合化合物を予防的オーラル・ケア療法の一部として用いることが特に有益であるかもしれない。
【0112】
練り歯磨きおよび他のオーラル・ケア組成物に、一般に抗菌剤、抗歯垢剤、抗う蝕剤、および抗歯肉炎剤として金属塩、特に銅の塩を含めることが知られている。たとえば、米国特許第5,286,479号、同第5,298,237号、および同第6,355,706号、欧州特許出願第658,565号、国際出願国際公開公報第92/08441パンフレット、日本特許出願特開昭41‐59211号公報(Japanese application 41 59211)、ワールハーグら(Waerhaug et al.)、J.Clin.Periodontol.、第11巻:176〜180ページ、1984年参照。遊離銅イオンはROSの形成を触媒するので、銅の塩を含むオーラル・ケア組成物の使用は、口腔組織に有害である可能性がある。したがって、銅含有組成物を使用した後の適切な時間(すなわち、銅の塩がその活性を発揮するのに十分な時間)に本発明のオーラル・ケア組成物を使用することは、これらの製品を使用した結果口腔内に存在する銅イオンにより生じるROSによって与えられる損傷を軽減させるのに非常に有益であり得る。たとえば、該金属結合化合物を、銅含有組成物を使用した後に咀嚼または舐めるガム、ロゼンジ、もしくは咀嚼錠中に、便利に供給し得る。
【0113】
また、組織を、手術および抜歯を含めた様々な歯科的措置に関連して予防的に処置してもよい。たとえば、手術が行われている1または複数の組織、手術が行われている領域の近辺の組織、または、処置を容易にするために全口腔組織もしくは実質的にすべての口腔組織を、手術前、手術中、手術後、またはこれらの組合せで処置し得る。同様に抜歯についても、抜くべき歯の周辺の1または複数の組織、隣接する組織、または、処置を容易にするために全口腔組織もしくは実質的にすべての口腔組織を、抜歯前、抜歯中、抜歯後、またはこれらの組合せで処置し得る。たとえば、手術または抜歯の前に口腔を1または複数の金属結合化合物からなる溶液ですすぐことが可能であり、手術または抜歯により生じた1または複数の創傷を、1または複数の金属結合化合物を取り込ませた縫合糸で閉じることが可能であり、ならびに/あるいは、手術もしくは抜歯の直後、またはその後の一定間隔のうち少なくともいずれかの時期に、口腔を1または複数の金属結合化合物からなる溶液ですすぐことが可能である。
【0114】
また、組織を、歯科用X線などの放射線に関連して予防的に処置し得る。最後に、上述のように、動物の歯のホワイトニングに関連して組織を予防的に処置してもよい。
本発明の1または複数の金属結合化合物は、動物の口腔組織の疾病または状態を処置するために使用し得る。本発明によって処置可能な疾病および状態には、感染症(細菌感染、ウイルス感染および真菌感染)、任意の原因による炎症、ならびに金属イオンおよび/またはROSに関与するもしくはこれらにより引き起こされた任意の疾病または状態が含まれる。本発明によって処置可能な特定の疾病および状態には、歯肉炎および歯周炎など歯周組織の疾病、潰瘍、口唇ヘルペス、口内糜爛、他のウイルス感染、細菌感染ならびに酵母菌および真菌の感染が含まれる。
【0115】
当業者には、動物の口腔組織を処置するために必要な本発明の1または複数の金属結合化合物の用量が、使用する特定の金属結合化合物、処置が予防的であるか疾病または状態の処置のためか、処置する疾病または状態が何であるか、疾病または状態の重篤度、使用するオーラル・ケア組成物の種類、処置期間、該動物に投与する他の薬物があればそれが何であるか、動物の年齢、大きさおよび種、ならびに医学および獣医学分野で知られている同様の因子に応じて変動することが理解されよう。一般に、本発明の化合物の適切な1日用量は、治療効果を生じるのに有効な最も低い用量の化合物量である。上で言及したように、約0.001%〜約20%の本発明の1または複数の金属結合化合物からなるオーラル・ケア組成物を1日1回または複数回使用することにより、有効な1日用量がもたらされることが予想される。しかし、使用する実際の1日用量、1日あたりの処置回数、および処置の期間は、正しい医療判断に沿って主治医または獣医によって決定されるであろう。
【0116】
本発明はまた、本発明によるオーラル・ケア製品からなるキットも提供する。オーラル・ケア製品がオーラル・ケア組成物である場合、キットには、オーラル・ケア組成物を動物の口腔組織に施用するための施用具、たとえばスワブ、スティック、プラスチック製パドル、点滴器、注射器、ストリップ(米国特許第5,891,453号および同第6,419,906号に記載されているものなど)または、ゲルもしくは溶液中で、歯および任意選択で歯周組織の浸漬を可能にするデンタル・トレイもしくは器具(米国特許第5,863,202号および同第5,980,249号ならびに欧州特許出願第752833号に示されているものなど)なども含んでいてよい。キットはまた、意図する使用に必要な本発明のオーラル・ケア組成物の量を分注かつ/または測るためのカップ、バイアルあるいは他のデバイスも含み得る。もちろん、キットは、本発明のオーラル・ケア組成物およびオーラル・ケア・デバイスの両方を含み得る。本発明のオーラル・ケア組成物および/またはデバイスに加えて、キットは、歯のホワイトニング組成物、歯のホワイトニング剤からなるストリップ、オーラル・ケア組成物を施用するための施用具など、別の種類のオーラル・ケア組成物またはデバイスも含み得る。また、本発明によるキットは、本発明のキットおよび/またはオーラル・ケア製品を使用するための指示書も含むであろうし、任意の他の所望される物品を含んでいてよい。
【0117】
あるものについては、1つまたは複数のものを指すことに注意されたい。たとえば、「細胞」とは、1つまたは複数の細胞を指す。
本願明細書は、参照により2002年6月27日出願の米国特許出願第10/186,168号;2002年2月13日出願の米国特許出願10/076,071号;2001年2月13日出願の米国特許仮出願第60/268,558号;2001年3月22日出願の米国特許仮出願_____(以前は第09/816,679号);2001年4月4日出願の米国特許仮出願第60/281,648号;2001年4月11日出願の米国特許仮出願第60/283,507号;2000年9月29日出願の米国特許出願第09/678,202号;1999年10月1日出願の米国特許仮出願第60/157,404号;2000年6月13日出願の米国特許仮出願第60/211,078号;2001年11月19日出願の米国特許仮出願第60/331,665号;および2002年2月27日出願の米国特許仮出願第60/360,736号を援用する。
【実施例1】
【0118】
(テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]の合成)
本実施例では、標準の固相合成技法を使用した、すべてL−アミノ酸から構成されるテトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]の合成について述べる。まず、Wang樹脂(0.6ミリモル;ノババイオケム(Nova Biochem))上の9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)で保護されたAsp(ν COO−エステル;トルスルホニル(Tolsulfonyl))を、ピペリジン/ジメチルホルムアミド(DMF)(40%v/v;3ml)の溶液中で30分間、時々攪拌しながら懸濁させた。この期間の後、溶媒を排出し、樹脂を順次DMFおよびジクロロメタン(DCM;5×3ml)で洗浄した。ニンヒドリン試験を用いて反応をモニターした。樹脂をDMF(〜1ml)で膨潤させた。DMF中の、アラニンとCが保護されたt−ベンジルオキシカルボニル(Boc)とのエステルを加え、次いで、ジイソプロピルアミン(8当量)および2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,2,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸(TBTU−)(4当量)の混合物を加えた。樹脂を約24時間振盪し、ニンヒドリン試験によって反応をモニターした。この期間の後、DMFを排出し、樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。溶液を排出し、ビーズをDCM(3×2ml)で洗浄した。ジペプチド−樹脂の保護基を除去し、ビーズをDMFに懸濁させた。ヒスチジン(4ミリモル)のアミノ保護(ベンジルオキシ)誘導体を加え、次いでジイソプロピルアミン(8当量)とTBTU−(4当量)との混合物を加えた。樹脂を約24時間振盪し、ニンヒドリン試験によって反応をモニターした。この期間の後、DMFを排出し、樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。トリペプチド−樹脂を穏やかな窒素流で簡単に乾燥させ、窒素飽和のDMFに懸濁させた。保護されたリジンを加え、次いでジイソプロピルアミン(8当量)とTBTU−(4当量)との混合物を加えた。樹脂を約24時間振盪し、ニンヒドリン試験によって反応をモニターした。この期間の後、DMFを排出し、樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。Boc保護基を丁寧に除去して、樹脂に結合したテトラペプチド(標準的な積載量は5ミリモル/g)を得た。樹脂に結合したテトラペプチド(0.25グラム;5mM)をトリフルオロ酢酸(TFA)で処理し、24時間振盪した。この期間の後、ニンヒドリン試験によって青色が示されたが、これは樹脂からのテトラペプチドの放出を示している。一部の状況では、5%(V/V)のDMFをTFAに加えることによって、樹脂からのペプチドの放出速度が加速された。減圧下でTFAを除去することにより、テトラペプチド(すべてD)がTFA塩として得られ、これを真空下、5℃で24時間乾燥させた。残渣は白色粉末であり、これを分光分析法によって特徴づけた。
【0119】
この様式で、テトラペプチドのいくつかの鏡像異性体を調製し得る。たとえば、ペプチド合成にD−アミノ酸を使用することにより、すべてD−アミノ酸を含むテトラペプチドが形成される。また、L−アミノ酸とD−アミノ酸の組合せも使用し得る。
【実施例2】
【0120】
(Asp Ala His Lys[配列番号1]のシクロヘキサンジアミン誘導体の調製)
シス/トランス1,2−ジアミノシクロヘキサン(アルドリッチ−シグマ(Aldrich−Sigma))を酒石酸塩として分割することによって、トランス−ジアミノシクロヘキサンを調製した。R−トランス異性体は75℃で融解し、S−トランス異性体は43〜45℃で融解する(ピー ディー ニューマン(P.D.Newman)、博士号論文、ユニバーシティー・カレッジ・カーディフ(University College,Cardiff)、英国、1994年)。その後、トランス−ジアミノシクロヘキサン(10gm)を無水トルエン(30mL)に懸濁させ、氷浴中で5℃まで冷却し、トルエン(25mL)中のブロモ酢酸(8グラム)を滴下した。加え終わった後、反応温度を30℃まで上昇させ、この温度でさらに5時間維持した。トルエンを蒸発させ、R−トランス1,2−ジアミノシクロヘキサン二酢酸をヘキサン/トルエンから結晶化させて白色固体を得た(収率70%)。該生成物を分光分析法によって特徴づけた。
【0121】
実施例1で調製した樹脂結合のテトラペプチド(20mg)をDMF(5mL)に懸濁させ、R−トランス1,2−ジアミノシクロヘキサン二酢酸(20mg)で処理し、次いでジイソプロピルアミン(8当量)とTBTU−(4当量)の混合物を加えた。ローラー上で樹脂を約24時間振盪した。その後、樹脂をDMF、次いでDCM(5×3mL)で洗浄し、部分的に乾燥させた。樹脂との連結の加水分解は、樹脂に結合した反応生成物をTFA(5mL;5時間)で処理することによって行った。樹脂を分離し、DCMで洗浄した。洗浄液をTFAと合わせ、真空下で濃縮した。残渣(シクロヘキサンジアミン・テトラペプチド;式は図3Dに示す、ただしRはHである)を、分光分析法によって特徴づけた。
【実施例3】
【0122】
(テトラペプチド四酢酸の調製)
実施例1で調製した樹脂結合のテトラペプチド(20mg)をDMF(5mL)に懸濁させ、過剰(10倍)のクロロ酢酸で処理した。樹脂を室温で48時間振盪し、次いでさらに1時間60℃まで加熱した。濾過によりDMFを除去し、樹脂をDMF、次いでDCM(5×3mL)で洗浄した。部分的に乾燥させた樹脂は、さらに処理せずに次の段階で使用した。樹脂との連結の加水分解は、樹脂に結合した反応生成物をTFA(5mL;5時間)で処理することによって行った。樹脂を分離し、DCMで洗浄した。洗浄液をTFAと合わせ、真空下で濃縮した(収率30%)。生成物(式は図4に示す)を、分光分析法によって特徴づけた。
【実施例4】
【0123】
(メソポルフィリンIXテトラペプチドの調製)
実施例1で調製した樹脂結合のテトラペプチド(20mg)をDMF(5mL)に懸濁させ、メソポルフィリンIXジカルボン酸(10μモル;式は図6Aに示す)で処理し、次いで、ジイソプロピルアミン(8当量)とTBTU−(4当量)の混合物を加えた。暗室に置いたローラー上で樹脂を約24時間振盪した。樹脂をDMF、次いでDCM(5×3mL)で洗浄し、部分的に乾燥させた。樹脂との連結の加水分解は、樹脂に結合した反応生成物をTFA(5mL;5時間)で処理することによって行った。樹脂を分離し、DCM/TFAの混合物(1:1.5mL)で洗浄した。洗浄液を合わせ、真空下で濃縮した。ポルフィリンテトラペプチド(式は図6Cに示す)を、準分取HPLCによって精製した(収率60%)。構造を分光分析法によって確認した。
【0124】
この手順は、メソポルフィリンIおよび関連分子など他のポルフィリン−ペプチドの合成に使用し得る。
【実施例5】
【0125】
(テトラビスピリジルエチル・テトラペプチドの調製)
実施例1で調製した樹脂結合のテトラペプチド(20mg)をDMF(5mL)に懸濁させ、ブロモエチルピリジン(20μmol)で処理した。次いで、ピリジン(0.5mL)を加えた。ローラー上で樹脂を約48時間振盪した。すべての未反応モノマーを除去するために、樹脂をDMF、次いでDCM(5×3mL)で洗浄し、その後、真空下で30分間乾燥させた。樹脂との連結の加水分解は、樹脂に結合した反応生成物をTFA(5mL;5時間)で処理することによって行った。樹脂を分離し、DCM/TFAの混合物(1:1.5mL)で洗浄した。洗浄液を合わせ、真空下で濃縮した。ピリジルエチル・テトラペプチド誘導体(式は図5に示す)を、準分取HPLCによって精製した(収率50%)。構造を分光分析法によって確認した。
【0126】
この手順は、フェナントロリンおよび関連分子など他の複素環にも使用し得る。
【実施例6】
【0127】
(Asp Ala His Lys[配列番号1]のアリール誘導体の調製)
図1Bに示す式(式中、Rはフェニルである)を有する誘導体を調製した。無水エタノール(100mL)中のアセトアミドマロン酸ジエチル(10g)を、エタノール中のナトリウムエトキシド(5g;50mL)のスラリーに加え、30分間加熱還流させた。生成物を冷却し(10℃)、α−ブロモフェニル酢酸エチル(5g)と反応させた。反応が完了するまで進行させ(24時間)、希酸を用いて過剰のナトリウムエトキシドを中和した。トリエステルを酢酸エチル中に抽出し、溶媒を除去した後、粘性のある液体が得られた。該粗生成物を塩酸(100mL)で加水分解し、脱炭酸を行って、フェニル置換のアスパラギン酸(10g)を得た。標準の一連の反応を使用して、N−ベンゾイルオキシt−ブチル誘導体を調製した。DMF中の、実施例1に記載のように調製した樹脂結合のペプチド(Lys His Ala)(20mg)に、N−ベンゾイルオキシ−t−ブチルアスパラギン酸誘導体を加え、次いで、ジイソプロピルアミン(8当量)とTBTU−(4当量)の混合物を加えた。樹脂を約24時間振盪し、ニンヒドリン試験によって反応をモニターした。この期間の後、DMFを排出し、樹脂をDMFおよびDCMで洗浄した。溶液を排出し、ビーズをDCM(3×2ml)で洗浄した。丁寧な加水分解によってテトラペプチド誘導体を単離した。テトラペプチドの立体異性体を、分取スケールのHPLCによって分離した。
【実施例7】
【0128】
(テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]によるROSの発生の阻害)
配列L−Asp L−Ala L−His L−Lys[配列番号1]を有するテトラペプチド(L−テトラペプチド)は、アンシンス・サービス(Ansynth Services)、キュー・シー・ビー(QCB)、ジェノシス(Genosys)およびボウマン・リサーチ(Bowman Research)を含めた、ペプチドカスタム合成を提供する1つまたは複数の企業から得た。ペプチドは標準の固相合成方法によって調製されたものである(実施例1も参照されたい)。
【0129】
L−テトラペプチドがROSの発生を阻害する能力は、ガターリッジおよびウィルキンス(Gutteridge and Wilkins)、Biochim.Biophys.Acta、第759巻、38〜41ページ、1983年ならびにチーズマンら(Cheeseman et al.)、Biochem.J.、第252巻、649〜653ページ、1988年に記載されているように試験した。手短に述べると、Cu(II)およびHを混合し、フェントン型反応におけるヒドロキシル・ラジカルの発生を引き起こした。ヒドロキシル・ラジカルは、糖2−デオキシ−D−リボース(DNAの糖残基)を攻撃して断片を生じさせる。この断片を低pHで加熱することにより、2−チオバルビツール酸を加えると532nmでの分光光度測定で測定し得るピンク色の色素原を生じるマロンアルデヒドが生じる。したがって、532nmでの吸光度は、2−デオキシ−D−リボースに対する損傷の尺度である。
【0130】
アッセイは、L−テトラペプチドを用いるアッセイと用いないアッセイを行った。結果を表1に要約した。表1から見受けられ得るように、Cu(II):テトラペプチドの比を1:1.2および1:2としてL−テトラペプチドが存在する場合、2−デオキシ−D−リボースの分解はそれぞれ38%および73%阻害された。明らかに、L−テトラペプチドは、ヒドロキシル・ラジカルによる2−デオキシ−D−リボースの分解を阻害した。
【0131】
【表1】

すべてがD−アミノ酸から構成される配列Asp Ala His Lysを有するテトラペプチド(D−テトラペプチド)を使用して、類似のアッセイを行った。D−テトラペプチドは、アンシンス・サービス(Ansynth Services)およびキュー・シー・ビー(QCB)を含めた、ペプチドカスタム合成を提供している1つまたは複数の企業から得た。該ペプチドは標準の固相合成方法(実施例1参照)によって調製されたものである。
【0132】
D−テトラペプチドがROSの発生を阻害する能力は、チャオおよびユング(Zhao and Jung)、Free Radic Res、第23巻(3)、229〜43ページ、1995年に記載されているように試験した。手短に述べると、Cu(II)およびアスコルビン酸を混合し、フェントン型反応におけるヒドロキシル・ラジカルの発生を引き起こした。過酸化水素の代わりにアスコルビン酸を使用する利点は、アスコルビン酸が他のアッセイ(たとえばLDHアッセイ)を妨害しないことである(同アッセイは過酸化物では妨害される)。ヒドロキシル・ラジカルは、糖2−デオキシ−D−リボースを攻撃して断片を生じさせる。この断片を低pHで加熱することにより、2−チオバルビツール酸を加えると532nmでの分光光度測定で測定し得るピンク色の色素原が得られるマロンアルデヒドが生じる。したがって、532nmでの吸光度は、2−デオキシ−D−リボースに対する損傷の尺度である。
【0133】
最適なCu(II)およびアスコルビン酸の濃度の確立は、本プロトコルを開発するにあたって最初の工程であった。まず、一定のCu(II)濃度(10μM)を使用したが、この濃度は、このレベルが身体に見出される生理的な濃度(結合型および非結合型Cu(II))であることに基づいている。直線範囲を確立するためにアスコルビン酸濃度を変化させた。選択したアスコルビン酸の濃度は500μMであったが、これは、532nmでの吸光度がこの濃度で最も高く、かつ直線範囲内に収まっていたからである。興味深いことに、500μMより高いアスコルビン酸濃度ではヒドロキシル・ラジカルが着実に減少したが、これは、アスコルビン酸が低濃度ではヒドロキシル・ラジカル発生剤として、高濃度では抗酸化剤として2重の効果を示すことが原因であると推定される。
【0134】
前述のCu(II)およびアスコルビン酸濃度を使用して、D−テトラペプチドについて滴定曲線を確立した。手短に述べると、D−テトラペプチドをCu(II)と共に15分間室温でプレインキュベーションしてからアスコルビン酸を加えた。これは、D−テトラペプチドをCu(II)と結合させ、それによりROSの発生を阻害させるために行った。表から見受けられ得るように、Cu(II):D−テトラペプチドの比が4:1〜4:7の場合、ヒドロキシル・ラジカルの発生はほとんど、または全く阻害されなかった。比が1:2以上の場合は、ヒドロキシル・ラジカルの生成は全体的に阻害された。
【0135】
【表2】

【実施例8】
【0136】
(ROSの発生の阻害)
テトラペプチドL−Asp L−Ala L−His L−Lys[配列番号1]ならびに他のペプチドおよび化合物がROSの生成を阻害する能力を試験した。試験した他のペプチドは、L−Asp L−Ala L−His L−Lys L−Ser L−Glu L−Val L−Ala L−His L−Arg L−Phe L−Lys[配列番号3];L−Ala L−His L−Lys L−Ser L−Glu L−Val L−Ala L−His L−Arg L−Phe L−Lys[配列番号4];L−His L−Lys L−Ser L−Glu L−Val L−Ala L−His L−Arg L−Phe L−Lys[配列番号5];およびアセチル化L−Asp L−Ala L−His L−Lys L−Ser L−Glu L−Val L−Ala L−His L−Arg L−Phe L−Lys[配列番号6]であった。ペプチドは、アンシンス・サービス(Ansynth Services)、キュー・シー・ビー(QCB)、ジェノシス(Genosys)およびボウマン・リサーチ(Bowman Research)を含めた、ペプチドカスタム合成を提供している1つまたは複数の企業から得た。試験した他の化合物は、ヒスチジン(シグマ・ケミカルズ社(Sigma Chemical Co.))、カタラーゼ(シグマ・ケミカルズ社)、およびスーパーオキシド・ジスムターゼ(シグマ・ケミカルズ社)であった。
【0137】
1.ヒドロキシル・ラジカル生成の阻害
ヒドロキシル・ラジカルはおそらく、最も反応性の高い酸素由来の分子種である。ヒドロキシル・フリーラジカルはエネルギー性が非常に高く、短命で、有毒である。
【0138】
一部の研究者は、過酸化水素およびスーパーオキシド・ラジカルの毒性は、これらがヒドロキシル・フリーラジカルに変換されることが原因であろうと示唆している。スーパーオキシド・ラジカルは、ハーバー−ワイス反応によって直接ヒドロキシル・ラジカルに変換され得る。あるいは、これが過酸化水素に変換され、ひいてはフェントン反応によってヒドロキシル・ラジカルに変換され得る。どちらの経路でも銅などの遷移金属が必要とされる(アックワースおよびベイリー(Acworth and Bailey)、The Handbook Of Oxidative Metabolism、(イー・エス・エー社(ESA,Inc.)、1997))。
【0139】
銅がアスコルビン酸の存在下でヒドロキシル・ラジカルを生じさせることも知られている。以下の反応スキーム、
アスコルビン酸+2Cu2+→2Cu+デヒドロアスコルビン酸+2H(等式1)
Cu+O→O・−+Cu2+ (等式2)
Cu+O・−+2H→Cu2++H (等式3)
Cu+H→OH+OH+Cu2+ (等式4)
が提唱されている(バイアグロウら(Biaglow et al.)、Free Radic.Biol.Med.、第22巻(7):1129〜1138ページ、1997年。
【0140】
上記に列挙した化合物がヒドロキシル・ラジカルの発生を阻害する能力は、ガターリッジおよびウィルキンス(Gutteridge and Wilkins)、Biochim.Biophys.Acta、第759巻:38〜41ページ、1983年に記載されているように試験した。手短に述べると、Cu(II)およびアスコルビン酸を混合し、ヒドロキシル・ラジカルの発生を引き起こした。次いでデオキシリボースを加えるが、ヒドロキシル・ラジカルが存在する場合はこれがデオキシリボースを攻撃して断片を生じさせた。この断片を低pHで加熱することにより、2−チオバルビツール酸(TBA)を加えると532nmでの分光光度測定で測定されるピンク色の色素原が得られるマロンアルデヒドが生じる。したがって、532nmでの吸光度は、デオキシリボースに対する損傷および、従ってヒドロキシル・ラジカル形成の尺度である。
【0141】
アッセイを行うために、緩衝液(20mM KHPO緩衝液、pH7.4)中のCuClと、緩衝液中のいずれか1種の試験化合物または緩衝液のみとを試験管に加えた(CuClの最終濃度は10μM)。試験管を室温で15分間インキュベーションした。その後、緩衝液中の0.5mMのアスコルビン酸および緩衝液中の1.9mMの2−デオキシ−D−リボースを各試験管に加え、試験管を37℃で1時間インキュベーションした。最後に、50mMのNaOH中の1%(w/v)TBA 1mlおよび1mlの濃酢酸を各試験管に加え、試験管を沸騰水中で15分間インキュベーションした。試験管を15分間冷却した後、532nmでの吸光度を読み取った。
【0142】
このアッセイにおいて、テトラペプチド/銅の比が2:1以上のとき、テトラペプチドL−Asp L−Ala L−His L−Lys[配列番号1]によりヒドロキシル・ラジカルの形成が完全に阻害されることが判明した。テトラペプチド/銅の比が2:1未満では有効でなかった。
【0143】
経時変化の結果を図8Aに示す。図8Aに見られるように、銅およびアスコルビン酸(ペプチド非添加)では迅速にTBA反応性物質を生じ、30分で最大値に達した。テトラペプチド/銅の比が2:1のときのテトラペプチドは、TBA反応性物質の形成を完全に阻止した。興味深いことに、テトラペプチド/銅の比が1:1のときのテトラペプチドは、TBA反応性物質の生成を遅延させた。これらのデータは、テトラペプチド/銅の比が1:1のときのテトラペプチドが、テトラペプチドに対する部位特異的なヒドロキシルの攻撃をもたらす銅を結合することによって、ヒドロキシル・ラジカルからのある程度の保護を提供することを示唆している。十分なテトラペプチドがひとたび破壊されると、銅が放出され、これによりデオキシリボースを攻撃するヒドロキシル・ラジカルが生成される。
【0144】
テトラペプチド/銅の比が2:1のテトラペプチドをより長い時間インキュベートした場合は、TBA反応性物質の形成を阻止する能力がゆっくりと消滅した。図8B参照。図8Bに見られるように、TBA反応性物質の生成は、インキュベーションの最初の4時間の間は95%阻害された。24時間までに阻害のレベルは50%まで低下し、48時間までに阻害のレベルは20%まで低下した。これらのデータは、テトラペプチドの存在下でも依然としてTBA反応性物質が生成されていることを示唆している。これらのデータはまた、実験の経時変化の間にテトラペプチドが分解されていることを示唆している。この分解は、銅の放出を伴ってテトラペプチドを攻撃かつ分解するフリーラジカルがテトラペプチド/銅の錯体の近傍で形成することが原因である可能性が高い。ヒドロキシル・ラジカルなどのフリーラジカルは反応性が非常に高いので、最初に接触する電子に富んだ分子を攻撃するが、この場合、その分子はテトラペプチドとなる。
【0145】
テトラペプチドによるヒドロキシル・ラジカル形成の阻害に対するpHの効果を、テトラペプチド/銅の比を2:1として試験した。この比では、テトラペプチドはpH7.0〜8.5で、TBA反応性分子種の形成を>95%阻害した。これらは生理的なpHレベルであり、虚血時に予想されるpHレベルである(虚血性組織内でアシドーシスが起こる)。pH6.0では、テトラペプチドはTBA反応性分子種の形成の阻止に有効でなく、これは、ヒスチジンの銅を結合する能力が低下することが原因である可能性がある。ヒスチジンのイミダゾール環上の窒素原子は、pKa6.0で銅の結合に関与する。したがって、pH6.0では、ヒスチジンは銅の50%しか結合することができない。銅の残りの50%は結合されていないか、または他のアミノ酸によってテトラペプチドに緩く結合しており、したがって、TBA反応性分子種の生成に関与することが可能となる。
【0146】
ヒスチジンおよび様々な位置にヒスチジンを有するいくつかのペプチドを、そのヒドロキシ・ラジカル生成を阻害する能力について、ペプチド:銅の比を1:1および2:1として試験した。また、N末端アミノ酸としてアセチル化アスパラギン酸(Ac−Asp)を有するペプチドも試験した。結果を表3に示した。表3において阻害(%)とは、緩衝液のみの場合の吸光度で割ることにより緩衝液のみの場合と比較した吸光度の減少率(%)である。
【0147】
表3の結果から見受けられ得るように、第2位および第3位にヒスチジンを有するペプチドでは、ペプチド:銅の比2:1で>95%の阻害が示されたが、ペプチド:銅の比1:1の同ペプチドは有効でなかった。興味深いことに、ペプチド:銅の比2:1では、第1位にヒスチジンを有するペプチドおよびアセチル化アスパラギン酸をN末端アミノ酸として有するペプチドが、ある程度の保護をもたらしたが(それぞれ約47%および約28%阻害)、この保護は、これらペプチドのそれぞれ第7位および第9位のヒスチジンに起因しているかもしれない。ヒスチジン単独でヒスチジン:銅の比が2:1の場合、ある程度の保護がもたらされた(約20%阻害)。
【0148】
カタラーゼがヒドロキシル・ラジカル形成を阻止することが示されている。ガターリッジおよびウィルキンス(Gutteridge and Wilkins)、Biochim.Biophys.Acta、第759巻:38〜41ページ、1983年;ファッチネッティーら(Facchinetti et al.)、Cell.Molec.Neurobiol.、第18巻(6):667〜682ページ、1998年;サムニら(Samuni et al.)、Eur.J.Biochem.、第137巻:119〜124ページ、1983年。したがって、カタラーゼ(0〜80nM)を本アッセイで試験し、これがピンク色の色素原の形成を阻止することが判明した(データ示さず)。この発見は、本アッセイで過酸化水素が形成されることを示唆している。というのも、カタラーゼは過酸化水素を水へと分解し、このことは上記の等式3および4と一致しているからである。カタラーゼはまた、L−Asp L−Ala L−His L−Lys[配列番号1]のテトラペプチドがテトラペプチド/銅の比1:1で存在する場合に、ピンク色の色素原の形成も阻止する(データ示さず)。上に示すように、この比では銅は依然として酸化還元反応に関与してヒドロキシル・ラジカルを生じる。これらの実験は、過酸化水素がヒドロキシル・ラジカルの形成における重要な前駆物質であることを示している。
【0149】
【表3】

B.スーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD)活性のアッセイ
スーパーオキシド・ジスムターゼ(SOD)という酵素は、体内におけるスーパーオキシドから過酸化水素への分解(等式3に類似)を司っている天然に存在する酵素である。その後、過酸化水素はカタラーゼによって解毒され得る。
【0150】
前のセクションで記載したアッセイにおいてSOD活性をアッセイしたところ、同活性は見出されなかった(データ示さず)。SODは事実スーパーオキシド・ラジカルを過酸化水素へと変換するのであるから、この結果は予想通りである。その後、過酸化水素は還元された銅によってヒドロキシル・ラジカルに変換され得る。
【0151】
銅錯体がSOD活性を有するという報告が文献にある。アタールら(Athar et al.)、Biochem.Mol.Biol.Int.、第39巻(4):813〜821ページ、1996年;チウフィーら(Ciuffi et al.)、Pharmacol Res.、第38巻(4):279〜287ページ、1998年;ポグニら(Pogni et al.)、J.Inorg Biochem.、第73巻:157〜165ページ、1999年;ウィリンガムおよびソレンソン(Willingham and Sorenson)、Biochem.Biophys.Res.Commun.、第150巻(1):252〜258ページ、1988年;コンスタンチノヴァら(Konstantinova et al.)、Free Rad.Res.Comms.、12〜13:215〜220ページ、1991年;ゴールドスタインら(Goldstein et al.)、J.Am.Chem.Soc.、第112巻:6489〜6492ページ、1990年。SOD自体がその活性部位に銅を有するので、この結果は予想通りである。
【0152】
テトラペプチドL−Asp L−Ala L−His L−Lys[配列番号1]の銅錯体のSOD活性をアッセイした。ボーシャンプおよびフリドビッチ(Beauchamp and Fridovich)、Anal.Biochem.、第44巻:276〜287ページ、1971年のキサンチン・オキシダーゼ・アッセイを使用してスーパーオキシド・ラジカルを生成させた。キサンチン・オキシダーゼはキサンチンを尿酸に変換し、その際、酸素が電子受容体として働く。これにより、スーパーオキシド・ラジカルの生成が引き起こされる。スーパーオキシド・ラジカルは、ニトロ・ブルー・テトラゾリウム(NBT)を還元することが可能である。還元されたNBTは560nmのλmax(最大吸収波長)を有する。銅がキサンチン・オキシダーゼ活性を阻害することが知られているので(コンスタンチノヴァら(Konstantinova et al.)、Free Rad.Res.Comms.、12〜13:215〜220ページ、1991年)、銅を含むすべての実験に、周知の銅キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)も含めた。EDTA−銅の錯体についてSOD活性を試験し、SOD活性を全く有さないことが示された(データ示さず)。
【0153】
SOD活性についてのアッセイを行うために、0.1mMのキサンチン(シグマ・ケミカルズ社(Sigma Chemical Co.))、25μMのNBT(シグマ・ケミカルズ社)、50mMの炭酸ナトリウム、および1.2μMのEDTA(シグマ・ケミカルズ社)をキュベット中で混合した(すべて最終濃度を示し、最終pHは10.2である)。反応は、様々な量のテトラペプチド−銅の錯体(テトラペプチド/銅の比は1:1および2:1)および20nMのキサンチン・オキシダーゼ(シグマ・ケミカルズ社)を加えることによって開始させた。テトラペプチド−銅の錯体は、テトラペプチドと銅(CuClとして)とを混合し、キュベットに加える直前に該混合物を室温で15分間インキュベーションすることによって調製した。試料を時間0および60秒間毎に5分間、560nmで読み取った。
【0154】
1:1の比のテトラペプチドと銅との錯体は、NBT還元の阻害から証明されるように、SOD活性を有することが示された(図9参照)。しかし、本アッセイにおけるIC50値(50%阻害する量)に基づくと、この錯体はSOD自体と比較して約500倍有効性が低かった。2:1の比のテトラペプチドと銅との錯体は、SOD活性を全く有さないことが示された(データ示さず)。
【0155】
1:1のテトラペプチド−銅の錯体がキサンチン・オキシダーゼ活性を妨害しなかったことを確認するために、尿酸の生成を295nmで測定した。アタールら(Athar et al.)、Biochem.Mol.Biol.Int.、第39巻(4):813〜821ページ、1996年;チウフィーら(Ciuffi et al.)、Pharmacol Res.、第38巻(4):279〜287ページ、1998年。このアッセイはSODアッセイに類似しているが、ただしNBTは存在しない。代わりに、尿酸を295nmで60秒間毎に5分間アッセイする。1:1のテトラペプチド−銅の錯体は、600nMの濃度で尿酸の生成を11%しか阻害しないことが判明した(データ示さず)。したがって、1:1のテトラペプチド−銅の錯体は真のSOD活性を有する。この錯体によってスーパーオキシドは過酸化水素へと変換されるので、このことは、該錯体がヒドロキシル・ラジカルの生成を阻止するのに有効でない理由を説明する手助けになるかもしれない。
【0156】
1:1または2:1のテトラペプチド−銅の錯体を含む溶液中でスーパーオキシド・ラジカルの生成を測定した。このアッセイでは、TBAアッセイおよびキサンチン・オキシダーゼ・アッセイの技法を組み合わせた。スーパーオキシド・ラジカルによるNBTの還元を定量するために、NBTをすべての試験管に加えた。試料にはアスコルビン酸および銅も含め、37℃でインキュベーションした。5、15、30および60分で試料をインキュベータから取り出し、560nmで読み取った。結果を図10に示す。2:1のテトラペプチド−銅の錯体を含む試料では、NBTの還元が経時的に増加し、30分で最大に達した。1:1のテトラペプチド−銅の錯体を含む試料でもNBTの還元が経時的に増加し、60分で低い最大値に達した。これらのデータは、2:1のテトラペプチド−銅の錯体を含む試料ではスーパーオキシドが蓄積するのに対し、1:1のテトラペプチド−銅の錯体はスーパーオキシド・ジスムターゼを模倣することを示唆している。
【0157】
ヒドロキシル・ラジカル生成において起こる可能性の高い一連の現象は以下の
O→O2・−→H→OH (等式5)
である。1:1のテトラペプチド−銅の錯体がスーパーオキシド・ラジカル(O・−)を過酸化水素(H)へと変換し得ることは既に示されている。これは、同錯体のSOD活性である。テトラペプチドの分子2つが銅の6つの配位結合を埋めるので、2:1のテトラペプチド−銅の錯体はこの変換を促進し得ない。これは、還元された銅と反応してフェントン反応によってヒドロキシル・ラジカルを生じ得る過酸化水素の形成を阻害することで、2:1のテトラペプチド−銅の錯体が何故これほど有効であるかを説明するものである。1:1のテトラペプチド−銅の錯体も、スーパーオキシド・ラジカルを排除することによって価値ある役割を果たす。該錯体は過酸化水素を生成させるとはいえ、ヒトの身体のほとんどの区画は、過酸化水素を排除し得る酵素カタラーゼを十分な量有している。しかし、脳内では、カタラーゼ活性が最も低いと報告されている。ハリウェルら(Halliwell et al.)、Methods in Enzymol.、第186巻:1〜85ページ、1990年。したがって、虚血に付随して起こるアシドーシスによって銅が放出されるので、虚血の間中、脳は特に脆弱な器官である。
【0158】
C.DNAの保護
アサウミら(Asaumi et al.)、Biochem.Mol.Biol.Int.、第39巻(1):77〜86ページ、1996年の方法に従って、DNA鎖の切断(break)を測定した。手短に述べると、17μg/mlのプラスミドpBR322 DNAを、室温で15分間、50μMのCuClおよび0〜200μMの濃度のテトラペプチドと共にプレインキュベーションした。その後、2.5mMのアスコルビン酸を各反応物に加え、混合物を37℃で1時間インキュベーションした。混合物の総体積は16μLとした。次に、0.25%(w/v)のブロモフェノール・ブルー、0.25%(w/v)のキシレンシアノールFF、および40%(w/v)のショ糖を水に溶解したローディング緩衝液3μLを加えた。0.8%のアガロースゲルを用いて90分間、70ボルトで電気泳動することによって、試料を分離した。2μg/mlの臭化エチジウムを含む1×TBE(トリス−ホウ酸−EDTA緩衝液)で30分間ゲルを染色した。その後、ゲルを写真撮影する前にゲルを1×TBEで5分間脱染した。
【0159】
結果は、テトラペプチドがDNA鎖の切断の形成を阻止するのに非常に有効であることを示した。図11参照。最適の保護テトラペプチド:銅の比は2:1以上であった。というのも、これらの比では超らせん環状DNAが依然としてゲル上に見えたからである。1:1以下のテトラペプチド:銅の比では、ニックの入った環状DNA、直鎖状のDNA、およびさらに破損したDNA(スメア)が見えた。
【実施例9】
【0160】
(ROSによってDNAに与えられる損傷の低減)
ROSは、鎖の切断、塩基の改変、点変異、メチル化パターンの変更、およびDNA−タンパク質の架橋結合を引き起こすことによってDNAに損傷を与える(マーネット(Marnett)、Carcinogenesis、第21巻:361〜370ページ、2000年;セルダら(Cerda et al.)、Mutat.Res.、第386巻:141〜152ページ、1997年)。還元剤の存在下において、銅、鉄、および他の遷移金属は、ハーバー−ワイス反応およびフェントン反応のいずれをも介して、スーパーオキシド(O・)、過酸化水素(H)およびヒドロキシル・ラジカル(OH・)などのROSの生成を触媒する(ストーウェら(Stoewe et al.)、Free Radic.Biol.Med.、第3巻:97〜105ページ、1987年)。OH・は、最も反応性が高く最も障害を与えるROSであるとみなされており、上記のDNA傷害のすべてを引き起こすことが可能である(マーネット(Marnett)、Carcinogenesis、第21巻:361〜370ページ、2000年)。以前の調査により、OH・が、in vitroにおける部位特異的な銅イオン反応ならびにin vivoにおける過剰な銅への曝露の際に、1本鎖および2本鎖DNAの切断を誘発させたことが報告されている(チウら(Chiu et al.)、Biochemistry;第34巻:2653〜2661ページ、1995年;キムら(Kim et al.)、Free Radic.Res.、第33巻:81〜89ページ、2000年;ハヤシら(Hayashi et al.)、Biochem.Biophys.Res.Comm.、第276巻:174〜178ページ、doi:10.1006/bbrc.2000.3454、2000年)。
【0161】
ヘキサヌクレオチドTTAGGGの反復であるテロメアがDNAの末端に存在して、分解、染色体再編成に対する「保護キャップ」を形成し、遺伝情報を損失しないDNA複製を可能にする(レッデル(Reddel)、Carcinogenesis、第21巻:477〜484ページ、2000年)。細胞の加齢または老化の古典的な理論は、テロメア末端の複製問題に関与している(オロフニコフ(Olovnikov)、J.Theor.Biol.、第41巻:181〜190ページ、1973年)。DNAポリメラーゼはDNAの複製中にラギング鎖の終末末端を複製することができないので、30〜500塩基対の損失が生じる(ハーレーら(Harley et al.)、Nature、第345巻:458〜460ページ、1990年;フォン・ズグリニッキら(von Zglinicki et al.)、Exp.Cell Res.、第220巻:186〜193ページ、doi:10.1006/excr.1995.1305、1995年)。体細胞はこれらの失われたテロメア反復を取り替えることができないので、細胞が生きて複製する間に漸進的なテロメアの短縮がもたらされる。テロメアの長さが臨界の閾値に達すると、老化が現れる(レッデル(Reddel)、Carcinogenesis、第21巻:477〜484ページ、2000年)。酸化的ストレスに曝されたヒト線維芽細胞における早期老化が立証されている(チェンら(Chen et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第91巻:4130〜4134ページ、1994年)。高い酸化的ストレス条件下において線維芽細胞群を数回倍化した後に該細胞のテロメア長を観察することにより、通常の条件下における老化に類似したテロメア長の短縮が明らかとなる(フォン・ズグリニッキら(von Zglinicki et al.)、Exp.Cell Res.、第220巻:186〜193ページ、doi:10.1006/excr.1995.1305、1995年)。これらのデータは、ROSに誘発されたテロメア配列内のDNA損傷が、テロメアの短縮において重要な役割を果たすかもしれないことを示唆している。
【0162】
本研究では、Asp Ala His Lys[配列番号1]が、アスコルビン酸とカップリングした銅により誘発されるROS損傷からDNAおよびテロメアを保護する能力を調査した。
【0163】
A.材料および方法
試薬: Asp Ala His Lysの合成D−類似体(D−Asp Ala His Lys)は、ボウマン・リサーチ社(Bowman Research Ltd.)[英国ウェールズ、ニューポート(Newport)所在]から入手した。Telo TAGGテロメア長アッセイ(Telo TAGG Telomere Length Assay)およびX線フィルムは、ロシュ・モレキュラー・バイオケミカルズ(Roche Molecular Biochemicals)[ドイツ連邦共和国マンハイム(Mannheim)所在]から購入した。DNeasy(登録商標)ゲノム単離キットは、キアゲン(Qiagen)[米国カリフォルニア州バレンシア(Valencia)所在]から購入した。Hybond(登録商標)−N+ナイロン膜は、アマシャム・ファルマシア・バイオテック(Amersham Pharmacia Biotech)[米国ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway)所在]に注文した。他の化学薬品はすべて、シグマ(Sigma)[米国モンタナ州セント・ルイス(St.Louis)所在]から得た。
【0164】
DNAの処理: 修正したアサウミの方法を使用して、DNA鎖の切断を測定した(アサウミら(Asaumi et al.)、Biochem.Mol.Biol.Int.、第39巻:77〜86ページ、1996年)。バーキットリンパ腫由来の細胞系であるRaji細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)[米国メリーランド州ロックビル(Rockville)所在]より入手、登録番号CCL−86)を、10%のウシ胎児血清(FCS)を含むイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)中、10%のCOおよび37℃で増殖させた。DNeasy(登録商標)スピン・カラム(キアゲン)を使用して、製造者のプロトコルに従ってゲノムDNAを単離した。その後、1反応あたり1μgのゲノムDNAを、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.4中で、CuCl、アスコルビン酸、および/またはテトラペプチドと共にインキュベートした。最終濃度は、CuCl=10μM、25μM、および50μM;アスコルビン酸=25μM、50μM、および100μM;D−Asp Ala His Lys=50μM、100μM、および200μMであった。0.2mlのPCRチューブ中の反応全体積20μlを、37℃で2時間インキュベートした。インキュベーションの後、すぐに5μlのローディング色素[0.25%(w/v)のブロモフェノール・ブルーおよび40%(w/v)のショ糖]を加え、0.5%のトリス酢酸EDTA(TAE)アガロースゲルに載せることによって、鎖の切断を可視化した。その後、70Vで90分間ゲルを流し、2μg/mlの臭化エチジウムを30分間使用して染色した。写真撮影の前に、ゲルをTAEで10分間洗浄した。
【0165】
細胞の処理: Raji細胞をPBS(10mMのリン酸緩衝生理食塩水;138mMのNaCl;2.7mMのKCl、pH7.4)で洗浄した。その後、1.5×10個の細胞を、CuCl、アスコルビン酸、および/またはD−Asp Ala His Lysを含む5mlのPBS中に入れた。最終濃度は、CuCl=10μM、25μM、および50μM;アスコルビン酸=100μM、250μM、および500μM;D−Asp Ala His Lys=50μM、100μM、および200μMであった。その後、細胞を37℃で2時間インキュベートした。インキュベーションの後、DNeasy(登録商標)カラムを使用してゲノムDNAを単離した。0.5%のTAEアガロースゲル電気泳動によってDNAの損傷を可視化した。
【0166】
テロメア長アッセイ: テロメアの損傷を調査するために、Telo TAGGテロメア長アッセイ(ロシュ(Roche))を製造者の推奨に従って、すなわち1反応あたり1μgのゲノムDNAをHinf IおよびRSA Iで消化して使用した。その後、試料を0.8%のTAEアガロースゲルで、70Vで2時間泳動した。サザン・ブロットを行い、ジゴキシゲニン(DIG)で標識したテロメア特異的オリゴヌクレオチドを用いて探査した。細胞処理試料では、ゲノムDNAを上述のように使用した。DNA処理試料では、上記のように反応を準備し、PBSで200μlにし、制限消化の前にDNeasy(登録商標)カラムを用いて単離した。
【0167】
B.結果および考察
クロマチンの重要な部分である銅イオン(ダイクウェルら(Dijkwel et al.)、J.Cell Sci.、第84巻:53〜67ページ、1986年)は、DNA中に存在し(ワッカーら(Wacker et al.)、J.Biol.Chem.、第234巻:3257〜3262ページ、1959年)、酸化的DNA損傷に関与する可能性がある(チウら(Chiu et al.)、Biochemistry、第34巻:2653〜2661ページ、1995年;ハヤシら(Hayashi et al.)、Biochem.Biophys.Res.Comm.、第276巻:174〜178ページ、doi:10.1006/bbrc.2000.3454、2000年;カガワら(Kagawa et al.)、J.Biol.Chem.、第266巻:20175〜20184ページ、1991年)。アスコルビン酸または他の還元剤の存在下では、銅は、以下の反応:
1)2Cu2++アスコルビン酸→2Cu+デヒドロアスコルビン酸+2H
2)Cu+O→O+Cu2+
3)Cu+O+2H→Cu2++H
4)Cu+H→OH+OH・+Cu2+
を触媒することによってROSの生成をもたらし得る(バイアグロウら(Biaglow et al.)、Free Radic.Biol.Med.、第22巻:1129〜1138ページ、1997年)。生理的には鉄がより高い濃度で見つかっているが、銅およびHによる酸化は鉄に比べて50倍速い(ストーウェら(Stoewe et al.)、Free Radic.Biol.Med.、第3巻:97〜105ページ、1987年;ハリウェル(Halliwell)、J.Neurochem.、第59巻:1609〜1623ページ、1992年)。糖リン酸主鎖の陰性電荷により、陽イオンはDNAに緩く結合し得る。塩基対内における銅イオンの部位特異的結合は、DNAの生合成の調節に重要であるかもしれない(ミンチェンコヴァら(Minchenkova et al.)、Biopolymers、第5巻:615〜625ページ、1967年)。鉄に触媒される反応とは異なり、OH・捕捉剤は銅に媒介される酸化的損傷を阻止せず、このことは酸化的DNA損傷が銅イオンの近傍で起こることを示唆している(オイカワら(Oikawa et al.)、Biochim.Biophys.Acta、第1399巻:19〜30ページ、1998年)。OH・の反応性は非常に高いので、おそらくOH・の相互作用がOH・の生成部位またはその近くでのみ起こるのであろう(マーネット(Marnett)、Carcinogenesis、第21巻、361〜370ページ、2000年)。オイカワら(Oikawa et al.)(オイカワら、Biochim.Biophys.Acta.、第1399巻:19〜30ページ、1998年)は、以下の銅に媒介されるROS反応:
Cu+H→CuOOH+H
も起こり、その結果生じるDNA−銅−過酸化物の錯体がOH・よりもさらにDNAに損傷を与えることを示している。
【0168】
予想通り、上述の実験の結果から、銅およびアスコルビン酸は単独では鎖の切断を引き起こすことが不可能であることが示された。CuClとアスコルビン酸を組み合わせた場合は、2本鎖の切断の結果である、低分子量DNA断片の用量依存的な蓄積が見られた。これらの2本鎖の切断は、D−Asp Ala His Lysによって用量依存的な様式で軽減された(図13)。1:1(50μMの銅に対して50μMのD−Asp Ala His Lys)および1:2のモル比では、ある程度の鎖の切断が見られた。比を1:4まで上げると、鎖の切断は全く検出されなかった。銅およびアスコルビン酸で処理したRaji細胞でも同様の結果が観察された(図14)。より低い1:2(銅対D−Asp Ala His Lys)の比で、細胞試料中におけるDNAの完全な保護がもたらされた。DNA試料では、銅獲得のためDNAと競合することや近傍のOH・による攻撃が原因で、より高いD−Asp Ala His Lysレベルが必要であろうと予想するのが妥当である。D−Asp Ala His Lysの増加の必要が余儀なくされるこれらの試料においては、DNAと銅との分離が重要である。細胞試料では、損傷はHに起因するであろう。Hは自由に拡散可能であり、核まで貫通可能であり、線維芽細胞中でDNAに損傷を与えることが示されている(チェンら(Chen et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第91巻:4130〜4134ページ、1994年;フォン・ズグリニッキら(von Zglinicki et al.)、Free Radic.Biol.Med.、第28巻:64〜74ページ、2000年)。細胞中にHが入ることにより、DNA過酸化物と天然金属との錯体の形成、または封鎖された貯蔵金属の放出のいずれかがもたらされる可能性があり、貯蔵金属の放出が内在性還元剤(還元型グルタチオン(GSH)、還元ニコチンアミド・ジヌクレオチド(NADH)、およびアスコルビン酸)と組み合わさるとOH・の生成が駆動されるであろう。D−Asp Ala His Lysの保護機構の1つの可能性は、銅イオンのキレート化であり、このキレート化によりOH・およびHの生成が阻止されるのであろう。別の保護様式はD−Asp Ala His Lys−過酸化銅の錯体の形成であり、この錯体がDNAの代わりにOH・の損傷を吸収し、過酸化物を「掃除」し、かつおそらく細胞試料中ではHを細胞外に維持するのであろう。
【0169】
以前の報告により、酸化的DNA損傷は、テロメアを含めたG−Cに富んだ領域を対象としているかもしれないことが示唆されている。ロドリゲスら(Rodriguez,et al.)は、銅誘発性のROS損傷は主にDNAのグアニンを標的とすると報告している(ロドリゲスら(Rodriguez et al.)、Cancer Res.、第57巻:2394〜2403ページ、1997年)。Cu(II)のG−C対への強力かつ優先的な結合は、グアニン塩基のN−7およびO−6ならびにシトシン塩基のN−3について報告されている(カガワら(Kagawa et al.)、J.Biol.Chem.、第266巻:20175〜20184ページ、1991年)。これらの位置で形成されたDNA過酸化物の錯体は、OH・攻撃を隣接塩基へ向けると考えられている(オイカワら(Oikawa et al.)、Biochim.Biophys.Acta、第1399巻:19〜30ページ、1998年)。さらに、テロメアDNA中のGGGは、銅に媒介されるROS損傷に感受性があることが示されている(オイカワら(Oikawa et al.)、FEBS Lett.、第453巻:365〜368ページ、1999年)。
【0170】
本研究におけるゲノムDNA試料中のテロメアの調査により、酸化的ストレスに応答した2本鎖の切断が示された。サザン・ブロットによって調査したDNA試料により、ひどく消耗され短くなったテロメア配列が示された(図15)。細胞を処理した場合には、使用した最も高い銅およびアスコルビン酸のレベルでも配列がある程度保存されたテロメア損傷が示されたが(図16)、このことは、DNAが核内で守られ、ROSの生成が細胞外で行われることに起因しているかもしれない。D−Asp Ala His Lysは、これらの試料中でテロメアを銅に媒介される損傷から保護した。
【0171】
実験で検出された2本鎖の切断に加えて、他のDNA傷害がROSの疾病プロセスに関与しているかもしれない。リン酸主鎖に緩く結合している、銅を含めた一部の陽イオンは、鎖の切断に関わっており、一方で、ヘリックス中に配位している陽イオンは塩基の変化を引き起こす(マーネット(Marnett)、Carcinogenesis、第21巻:361〜370ページ、2000年;ロドリゲス(Rodriguez et al.)、Cancer Res.、第57巻:2394〜2403ページ、1997年)。銅の増加および酸化的ストレスという事象により、DNAの損傷がG−Cに富んだ領域に向けられるかもしれない。テロメアに加えて、G−Cに富んだ領域は多くの遺伝子の5’末端に存在しており(バード(Bird)、Nature、第321巻:209〜213ページ、1986年)、遺伝子調節に関与する酸化的損傷の部位を暗示している。8−オキソ−デオキシグアノシン(8−oxo−dG)は、変異発癌遺伝子で広く見られるG→Tの点変異をもたらし得る、ROSによって生成される一般的なDNA付加体である(マーネット(Marnett)、Carcinogenesis、第21巻:361〜370ページ、2000年)。心筋虚血の際のアシドーシスまたはセルロプラスミンの変化などの状態が遊離銅を移動させて、組織およびDNAの局所的で酸化的な損傷を起動させることが示されている(キムら(Kim et al.)、Free Radic.Res.、第33巻:81〜89ページ、2000年;シェビオンら(Chevion et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、第90巻:1102〜1106ページ、1993年)。8−oxo−dGのレベルは、虚血性のラットの心臓のDNAでは対照と比べて3〜4倍高いと報告されている(ユーら(You et al.)、J.Mol.Cell Cardiol.、第32巻:1053〜1059ページ、doi:10.1006/jmcc.2000.1142、2000年)。さらに、慢性炎症は局所的な酸化的損傷の領域を生じ得る。マクロファージや好中球などの炎症性細胞はROSを放出するが、このROSは近隣細胞のDNAに損傷を与えることが示されている(シャクターら(Shacter et al.)、Carcinogenesis、第9巻:2297〜2304ページ、1988年)。活性白血球から放出される一酸化窒素およびスーパーオキシドは過酸化亜硝酸の生成をもたらし得るが、この過酸化亜硝酸は未改変の塩基よりも8−oxo−dGとの反応性が高く、損傷を悪化させる可能性がある(マーネット(Marnett)、Carcinogenesis、第21巻:361〜370ページ、2000年)。
【0172】
C.要約
DNAおよびテロメア配列のいずれも、銅に媒介されるROS損傷、特にヒドロキシル・ラジカルに起因する損傷を受けやすい。本研究では、ROS誘発性のDNA2本鎖の切断およびテロメアの短縮が、銅およびアスコルビン酸への曝露によって生じた。ヒト・アルブミンのN末端の銅をキレートするテトラペプチドのD類似体であるD−Asp−Ala−His−Lysが、用量依存的な様式でDNA鎖の切断を軽減させた。該D−テトラペプチドは、4:1(ペプチド:Cu)の比では単離DNAの完全な保護をもたらし、2:1(ペプチド:Cu)の比では、銅/アスコルビン酸に曝されたRajiバーキット細胞のDNAを完全に保護した。銅/アスコルビン酸で処理したDNAのサザン・ブロットでは、テロメア配列がある程度保存された、テロメアの激しい消耗および短縮が示された。D−テトラペプチドは、2:1(ペプチド:Cu)の比で完全なテロメア長の保護をもたらした。ROSのDNA損傷の正確な機構はまだ完全に解明されていないが、D−Asp Ala His Lysは、ゲノムDNAおよびテロメア配列のどちらについても、ROSによる銅誘発性のDNA2本鎖の切断を阻害した。
【実施例10】
【0173】
(IL−8の放出の阻害)
インターロイキン8(IL−8)は炎症誘発性のサイトカインであり、好中球の強力な化学誘引物質かつ活性化物質である。IL−8はまた、Tリンパ球および好酸球の化学誘引物質および活性化物質であるとも報告されている。IL−8は、免疫細胞(リンパ球、好中球、単球およびマクロファージを含む)、線維芽細胞および上皮細胞によって産生される。報告により、IL−8が、呼吸性ウイルス感染症、喘息、気管支炎、肺気腫、嚢胞性繊維症、急性呼吸窮迫症候群、敗血症、多臓器不全症候群、および他の炎症性疾患の病因に重要な役割を果たしていることが示されている。
【0174】
銅およびアスコルビン酸に曝露(ROSを生成するため‐実施例7、8および9参照)したジャーカット(Jurkat)細胞(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)[米国メリーランド州ロックビル(Rockville)所在])によって放出されたIL−8を調査した。これを行うために、1×10個のジャーカット細胞を37℃、5%のCOで、インスリン・トランスフェリン亜セレン酸溶液(ITSS;シグマ(Sigma))を含む0.5mlのIMDM培地(ATCC)(血清含まず)中で、以下の添加剤と共に24時間インキュベートした。
【0175】
実験1:
a.なし(対照);
b.Asp Ala His Lys[配列番号1](「DAHK」)−200μMおよびアスコルビン酸−500μM;
c.CuCl−10μMおよびアスコルビン酸−500μM;
d.CuCl−25μMおよびアスコルビン酸−500μM;
e.CuCl−50μMおよびアスコルビン酸−500μM;
f.CuCl−100μMおよびアスコルビン酸−500μM;
g.CuCl−50μMおよびDAHK−50μMおよびアスコルビン酸−500μM;
h.CuCl−50μMおよびDAHK−100μMおよびアスコルビン酸−500μM;ならびに
i.CuCl−50μMおよびDAHK−200μMおよびアスコルビン酸−500μM。
【0176】
実験2:
a.なし(対照);
b.CuCl−100μM;
c.DAHK−200μMおよびアスコルビン酸−500μM;
d.CuCl−25μMおよびアスコルビン酸−500μM;
e.CuCl−50μMおよびアスコルビン酸−500μM;
f.CuCl−100μMおよびアスコルビン酸−500μM;
g.CuCl−50μMおよびDAHK−50μMおよびアスコルビン酸−500μM;
h.CuCl−50μMおよびDAHK−100μMおよびアスコルビン酸−500μM;ならびに
i.CuCl−50μMおよびDAHK−200μMおよびアスコルビン酸−500μM。
【0177】
実験3:
a.なし(対照);
b.CuCl−100μM;
c.DAHK−400μMおよびアスコルビン酸−250μM;
d.CuCl−25μMおよびアスコルビン酸−250μM;
e.CuCl−50μMおよびアスコルビン酸−250μM;
f.CuCl−100μMおよびアスコルビン酸−250μM;
h.CuCl−100μMおよびDAHK−200μMおよびアスコルビン酸−250μM;ならびに
i.CuCl−100μMおよびDAHK−400μMおよびアスコルビン酸−250μM。
【0178】
24時間のインキュベーションの後、上清を採取し、各上清中のIL−8の濃度を、ヒトIL−8用に適合したペア抗体(エンドゲン(Endogen)[米国マサチューセッツ州ケンブリッジ(Cambridge)所在])を用いたELISAによって決定した。ELISAは、エンドゲン(Endogen)[米国マサチューセッツ州ケンブリッジ(Cambridge)所在]のELISAキットを使用して、次の例外:(1)抗体を1μg/mlでコーティング(2)検出抗体30ng/ml;ストレプトアビジンHPRは1:32,000に希釈:以外は製造者の指示に従って行った。
【0179】
結果を図17A(実験1)、図17B(実験2)、および図17C(実験3)に示す。銅およびアスコルビン酸が、用量依存的な様式で細胞からのIL−8の放出を引き起こしたことが見受けられ得る。また、DAHKがIL−8の放出を阻害し、最も良好な結果が8:1のDAHK:Cu比で得られたことも見受けられ得る。
【実施例11】
【0180】
(CoAの酸化の阻害)
補酵素A(CoA)は、体内におけるアセチル化反応に必須であり、その結果、炭水化物および脂肪酸の代謝において重大な役割を果たしている。CoAは、アセチル化反応に関与し得ないジスルフィドへと酸化され得る。その結果、代謝およびエネルギーの利用が阻害される。
【0181】
本実施例では、Cu(II)がCoAを酸化可能かどうか、また、もし酸化可能な場合は、テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1](ボウマン・リサーチ社(Bowman Research,Inc.)[英国所在])がCu(II)による酸化からCoA(シグマ(Sigma))を保護可能かどうか調査した。実験条件および結果を以下の表4に示した。すべての成分を同時に加え、15分間のインキュベーションの後、412nmでの吸光度(A412)を測定した。DTNBを使用して遊離チオール基を測定した。DTNBとは、ジチオニトロ安息香酸(シグマ(Sigma))である。
【0182】
表4から見受けられ得るように、Cu(II)はCoAを酸化した。また、1:1のテトラペプチド:Cu(II)の比のテトラペプチドはある程度のCoAの保護を提供し、2:1のテトラペプチド:Cu(II)の比のテトラペプチドは100%の保護を提供したことも見受けられ得る。
【0183】
【表4】

【実施例12】
【0184】
(d−DAHKによるIL−8の分泌の阻害)
全身性炎症反応症候群(SIRS)は、重篤な外傷、敗血症、または大きな手術の後に起こる可能性があり、多くの場合、手術の集中治療室における最も多い死因である多臓器不全症に進行する。血管の内側を覆っている血管内皮細胞は、多臓器不全症および重篤な外傷後の死亡のリスク増加に関連している強力な炎症誘発性のサイトカインであるインターロイキン−8(IL−8)を過剰量分泌することによって、初期のSIRSに不利に寄与することが示されている。ミクギルら(McGill et al.)、World J.Surg、第22巻、171ページ、1998年;パトリックら(Patrick et al.)、Am.J.Surg.、第172巻、425ページ、1996年。興味深いことに、内在性の銅は、虚血再灌流後の傷害において中心的な役割を果たすと報告されており(パウエルら(Powell et al.)、Am.J.Physiol.、第277巻(3Pt2)、H956、1999年)、虚血再灌流後の傷害は、高レベルのIL−8および内皮機能不全にも関連している。しかし、ヒト内皮細胞からのIL−8分泌を活性化させる銅の役割はこれまでに同定されておらず、SIRSおよび多臓器不全症の病因において重要であるかもしれない。
【0185】
この実施例は、内皮細胞が、生理学的に適切な濃度の銅に曝された後に、著しく高いレベルのIL−8を分泌することを示すデータを初めて提示する。さらに、高い親和性でCu(II)を結合するペプチドを加えることにより、内皮細胞からの銅誘発性のIL−8分泌が有意に阻害される。
【0186】
銅は、恒常性維持の状態および正常なpHにおいて、セルロプラスミンおよびアルブミンなどの血漿タンパク質によって綿密に調節されている必須のヒト微量元素である。大きな外傷または敗血症により、組織が必要とする酸素の増大、酸素抽出の障害、血流の不均等分布、およびエネルギー貯蔵の減少が原因でpHが低下し、微小血管および組織のアシドーシスが生じ得る。ミゾックら(Mizock et al.)、Crit.Care Med.、第20巻、80ページ、1992年。その後、酸性の環境によりCu(II)イオンが担体タンパク質から放出可能となり(ラムら(Lamb et al.)、FEBS Lett.、338、122、1994年)、酸化的ストレス、活性化プロテインCの不活性化、内皮の一酸化窒素合成酵素の阻害など様々な生化学的経路に自由に関与できるようになる。バール−オアら(Bar−Or,et al.)、Biochem.Biophys.Res.Commun.、第290巻、1388ページ、2002年;ビアンチニら(Bianchini et al.)、J.Biol.Chem.、第274巻、20265ページ、1999年。
【0187】
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(5.0×10個の細胞)を、無血清でアスコルビン酸を含まずITSを添加した内皮細胞基本培地2(EGM)の培地(バイオウィッタカー(BioWhittaker))中で、(i)銅、(ii)ヒト・アルブミンのN末端の高親和性Cu(II)結合部位のテトラペプチド類似体(D−Asp D−Ala D−His D−Lysすなわちd−DAHK)、または(iii)これらの両方と共にインキュベートした(n=3、2連)。IL−8は、ELISAによって測定した(実施例10参照)。25μMのCuClと共に24時間インキュベートしたHUVECは、水と共にインキュベートした対照と比較して5.5倍よりも高いIL−8の分泌を示した(P<0.007、t検定)(図25)。1:1および2:1のモル比(d−DAHK:銅)のテトラペプチドd−DAHKは、24時間のインキュベーション後に、IL−8の分泌をそれぞれ86.1%(P=0.007)および102.4%(P=0.002)阻害した(図18)。24時間のインキュベーション後の、100μMのd−DAHK単独によるIL−8の分泌の減少は対照と比較して有意ではなかった(P=0.16)(図18)。視覚的調査では、24時間ではすべての細胞が生存しているように見えた。ヒト肺微小血管内皮細胞およびヒト腸骨動脈内皮細胞をいずれも用いた予備実験では、銅およびd−DAHKへの曝露後に類似の結果が実証された。さらなるHUVECのデータでは、銅に3時間曝露した後に、銅に誘発された腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、プロスタグランジンEまたはプロスタサイクリンの分泌、およびIL−8レベルの上昇は全く示されなかった(データ示さず)。後者の結果は、銅に誘発されるIL−8の増加が、既存の貯蔵部位からのIL−8の放出ではなく、IL−8の合成により生じることを示している。
【0188】
細胞を含めず、銅およびd−DAHKに単独または一緒に曝露させた培地の分析により、主にCu(II)および<7%のCu(I)が検出された。これは、以下のように測定した。塩化第二銅(II)(10〜50μM)およびd−DAHK(6.25〜100μM)を、単独または一緒にEGM培地中で24時間、5%のCOでインキュベートし、その後濾過して400μMのビシンコニン酸と共に1時間合わせた(すべて37℃)。Cu(I)が優性であることを保証するために、塩化第一銅(I)標準物質(0.5〜50μM)を、20mMのアスコルビン酸を含む1mMのCuClストックから水で作製した。Cu(I)を562nmで2連で読み取った(島津(Shimadzu)分光光度計、モデルUV160U)。
【0189】
Cu(I)イオンは活性酸素分子種の発生を触媒する結果、他の細胞種からのIL−8分泌をもたらす。しかし、本明細書中に提示する結果は、Cu(II)イオンが酸化的ストレスに依存せずにヒト内皮細胞からのIL−8の分泌を刺激する証拠を提供する。さらに、高い親和性でCu(II)を結合する化合物が、銅誘発性の内皮細胞のIL−8分泌を有意に阻害する。これらのデータは、結合していないCu(II)イオンの封鎖が、ヒトの治療における潜在性を有し得ることを示唆している。
【0190】
Cu(II)に誘発されて内皮がIL−8を分泌する機構の可能性としては、ヒト線維芽細胞において報告されている、セリン−スレオニン・キナーゼAkt(プロテインキナーゼB)の活性化がありうる。オストラコヴィッチら(Ostrakhovitch et al.)、Arch.Biochem.Biophys.、第397巻、232ページ、2002年。類似の経路がin vivoでヒト内皮細胞において刺激された場合、銅は、核因子κB(NF−κB)を活性化することにより全身性炎症の発生に主として貢献する可能性がある。NF−κBとは、血管性および細胞性の炎症反応を有意に増強する高レベルのサイトカインを刺激することでよく知られている炎症性転写因子である。さらに、虚血再灌流後の傷害の持続または再発、および最初の負傷後の時間におけるアシドーシスが、持続的なCu(II)誘発性のIL−8分泌をもたらす可能性がある。
【0191】
Asp Ala His Lys[配列番号1]がin vivoで分解されてAsp
Alaジケトピペラジン(DA−DKP)を生じる証拠があることにも注意されたい(データ示さず)。DA−DKPは抗炎症性であることが示されており(その開示の全体を本願明細書に援用する、2001年8月2日出願の米国特許出願第09/922,234号、および国際出願国際公開公報第02/11676号パンフレット参照)、Asp Ala His Lys[配列番号1]が分解されてDA−DKPを生じた結果、さらなる抗炎症性効果を引き起こすかもしれない。
【実施例13】
【0192】
(歯肉溝滲出液における、Asp Ala His LysによるIL−8の阻害)
歯肉溝滲出液(CGF)を、正常な対照者(11人)ならびに歯肉炎患者(7人)および歯周炎患者(9人)から得た。
【0193】
Crest Whitestrips(商標)を、パッケージの指示に従って正常対照者のうち5人の歯に施用した。以下に示すように、Crest Whitestrip(商標)を歯に施用した後の様々な時間にCGF試料を得た。
【0194】
別の実験では、4mM溶液のテトラペプチドL−Asp L−Ala L−His L−Lys[配列番号1](本明細書中ではDAHK−1199と呼ぶ)をリン酸緩衝生理食塩水(0.1Mのリン酸ナトリウムおよび0.15Mの塩化ナトリウム、pH7.2)で調製し、pHを7.4に調整した。その後、0.1mlのこのDAHK溶液を各Crest Whitestrip(商標)の表面上に均一に塗布した。その後、このCrest Whitestrip(商標)を、パッケージの指示に従って正常対照者のうち3人の歯に施用した。DAHK−1199を塗布したCrest Whitestrip(商標)を歯に施用する前、および以下に示すようにその後の様々な時間にCGF試料を得た。
【0195】
CGFは、歯科用のウィック(wick)(シグマ(Sigma)[米国モンタナ州セント・ルイス(St.Louis)所在])を使用して採取した。CGFを含む歯科用ウィックを、150μlの貯蔵緩衝液(4%のウシ血清アルブミン(シグマ[米国モンタナ州セント・ルイス所在])、0.1mg/mlのフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF;シグマ[米国モンタナ州セント・ルイス所在])、および0.1mg/mlのアプロチニン(シグマ[米国モンタナ州セント・ルイス所在]を含むリン酸緩衝生理食塩水(0.1Mのリン酸ナトリウムおよび0.15Mの塩化ナトリウム、pH7.2))に入れ、使用時まで−20℃で凍結した。
【0196】
凍結したCGF試料を氷上で解凍し、4℃に維持した。その後、インターロイキン8(IL−8)、腫瘍壊死因子−α(TNFα)、および可溶性腫瘍壊死因子−α受容体(sTNFR75)の量を決定するためにELISAアッセイを行った。すべての試料ですべてのELISAアッセイを行うのに十分なCGFは得られていなかった;アッセイした試料の数を後述する。
【0197】
IL−8のELISAを以下のように実施した。抗ヒトIL−8抗体(ピアース・エンドゲン(Pierce Endogen)[米国イリノイ州ロックフォード(Rockford)所在];カタログ番号M801−E、ロット番号CK41959)を、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2〜7.4)で1μg/mlに希釈し、100μlの希釈抗体をヌンク(Nunc)のMaxisorb(登録商標)ELISAストリップ・プレートの各ウェルに加えた。プレートを室温で終夜インキュベートした。ウェルから液体を吸引し、ペーパー・タオル上でプレートから液体を吸い取らせた。その後、200μlのアッセイ緩衝液(4%のウシ血清アルブミン(シグマ(Sigma)[米国モンタナ州セント・ルイス(St.Louis)所在];ELISグレード=低脂肪酸および低IgG)を含むリン酸緩衝生理食塩水、pH7.2〜7.4)を各ウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。液体をウェルから吸引し、ウェルを洗浄緩衝液(50mMのトリス、0.2%のTween−20、pH7.9〜8.1)で3回洗浄し、ついでペーパー・タオル上で液体を吸い取らせた。標準物質およびCGF試料(50μl/ウェル;標準物質は貯蔵緩衝液で希釈した)をウェルに加え、プレートを室温で1時間、穏やかに振盪しながらインキュベートした。液体を吸引し、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄し、その後、ペーパー・タオル上でプレートから液体を吸い取らせた。次に、アッセイ緩衝液で60ng/mlに希釈した100μlのビオチン標識抗ヒトIL−8(ピアース・エンドゲン(Pierce Endogen)[米国イリノイ州ロックフォード(Rockford)所在];カタログ番号M802−E、ロット番号CE49513)を各ウェルに加えた。プレートを室温で1時間インキュベートし、液体を吸引し、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄し、ペーパー・タオル上でプレートから液体を吸い取らせた。その後、アッセイ緩衝液中の、100μlのHRPにコンジュゲートしたストレプトアビジン(ピアース・エンドゲン(Pierce Endogen)[米国イリノイ州ロックフォード(Rockford)所在];カタログ番号N100)を各ウェルに加えた。プレートを室温で30分間インキュベートし、液体を吸引し、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄し、ペーパー・タオル上でプレートから液体を吸い取らせた。最後に、100μlのTMB基質溶液(ピアース・エンドゲン(Pierce Endogen)[米国イリノイ州ロックフォード(Rockford)所在];カタログ番号N301)を各ウェルに加えた。プレートを室温で30分間インキュベートした。100μl/ウェルの0.18MのHSOを加えることによって反応を停止させた。450nmおよび530nmにおける光学密度をELISAプレート・リーダーで読み取り、差(OD450−OD530)を計算した。
【0198】
TNFα ELISAを以下のように実施した。抗ヒトTNFα抗体(ピアース・エンドゲン(Pierce Endogen)[米国イリノイ州ロックフォード(Rockford)所在];カタログ番号M303−E、ロット番号018334)を、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2〜7.4)で2μg/mlに希釈し、100μlの希釈抗体をヌンク(Nunc)のMaxisorb(登録商標)ELISAストリップ・プレートの各ウェルに加えた。プレートを室温で終夜インキュベートした。ウェルから液体を吸引し、ペーパー・タオル上でプレートから液体を吸い取らせた。その後、200μlのアッセイ緩衝液を各ウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。ウェルから液体を吸引し、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄し、その後、ペーパー・タオル上でプレートから液体を吸い取らせた。標準物質およびCGF試料(50μl/ウェル;標準物質は貯蔵緩衝液で希釈した)をウェルに加え、プレートを室温で1時間、穏やかに振盪しながらインキュベートした。液体を吸引し、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄し、その後、ペーパー・タオル上でプレートから液体を吸い取らせた。次に、アッセイ緩衝液で250ng/mlに希釈した100μlのビオチン標識抗ヒトTNFα(ピアース・エンドゲン(Pierce Endogen)[米国イリノイ州ロックフォード(Rockford)所在];カタログ番号M302−E、ロット番号017005)を各ウェルに加えた。プレートを室温で1時間インキュベートし、液体を吸引し、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄し、ペーパー・タオル上でプレートから液体を吸い取らせた。その後、アッセイ緩衝液中のHRPにコンジュゲートしたストレプトアビジン100μlを各ウェルに加えた。プレートを室温で30分間インキュベートし、液体を吸引し、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄し、ペーパー・タオル上でプレートから液体を吸い取らせた。最後に、100μlのTMB基質溶液を各ウェルに加えた。プレートを室温で30分間インキュベートした。100μl/ウェルの0.18MのHSOを加えることによって反応を停止させた。450nmおよび530nmにおける光学密度をELISAプレート・リーダーで読み取り、差(OD450−OD530)を計算した。
【0199】
sTNFR75 ELISAアッセイは、Quantikine(登録商標)sTNFR75 ELISAキット(アール・アンド・ディー・システムス(R&D Systems)[米国ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis)所在])を使用して、製造者の指示に従って実施した。手短に述べると、各標準物質および各CGF試料50μlを、抗sTNFR75抗体でコーティングしたプレートのウェルに加え、このプレートを室温で2時間インキュベートした。その後、各ウェルから液体を吸引し、ウェルを400μl/ウェルの供給された洗浄緩衝液で3回洗浄した。次に、200μlのsTNFR75コンジュゲート溶液を各ウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。再度、各ウェルから液体を吸引し、ウェルを400μl/ウェルの供給された洗浄緩衝液で3回洗浄した。洗浄が完了した後、200μlの供給された基質溶液を各ウェルに加え、プレートを室温で20分間インキュベートした。最後に、50μlの停止溶液を各ウェルに加え、450nmでの光学密度から530nmでの光学密度を減算した値を決定した。
【0200】
Crest Whitestrip(商標)を施用せずに採取したCGF試料に関しては、IL−8 ELISAをすべての試料について実施し(11人の正常対照者、9人の歯周炎患者および7人の歯肉炎患者からの試料)、TNFα ELISAを正常対照者のうち2人、歯周炎患者のうち1人、および歯肉炎患者のうち3人からのCGF試料について実施し、sTNFR75 ELISAを1人の正常対照者、5人の歯周炎患者、および3人の歯肉炎患者からのCGF試料について実施した。IL−8 ELISAは、Crest Whitestrip(商標)を歯に施用した5人の正常対照者から採取したCGF試料すべて、およびDAHK 1199を塗布したCrest Whitestrip(商標)を歯に施用した3人の正常対照者から採取したCGF試料すべてについて実施した。全試料を2連でアッセイした。
【0201】
結果を図19A〜Eに示した。図19A〜Cで見られ得るように、正常対照者と比較して、歯肉炎および歯周炎の患者ではIL−8およびsTNFR75が上昇し、TNFαが減少した。Crest Whitestrip(商標)を用いた処置により、処置の6時間後までには、正常対照者のCGF中のIL−8量が増加した(図19D参照)。DAHK−1199を塗布したCrest Whitestrip(商標)を用いた処置により、DAHK−1199を塗布しなかったCrest Whitestrip(商標)と比較して、6時間後における正常対照者のCGF中のIL−8量が減少した(図19Eを図19Dと比較されたい)。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1A】可能な置換位置を示す、テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]の式。
【図1B】可能な置換位置を示す、テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]の式。
【図1C】可能な置換位置を示す、テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]の式。
【図1D】可能な置換位置を示す、テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]の式。
【図2A】テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]の、図1Cの式の範囲に入る誘導体の合成の概略図。
【図2B】テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]の、図1Bの式の範囲に入る誘導体の合成の概略図。
【図3A】シクロヘキサンジアミン誘導体の式。
【図3B】シクロヘキサンジアミン誘導体の式。
【図3C】テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]の、シクロヘキサンジアミン誘導体の合成の概略図。
【図3D】テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]の、シクロヘキサンジアミン誘導体の合成の概略図。
【図4】テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]の四酢酸誘導体の式。
【図5】テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]のビスピリジルエチルアミン誘導体の式。
【図6A】金属イオンMが結合していないメソポルフィリンIXの式。
【図6B】金属イオンMが結合したメソポルフィリンIXの式。
【図6C】テトラペプチドAsp Ala His Lys[配列番号1]のメソポルフィリンIX誘導体の式。
【図7】単糖類の式。
【図8A】ヒドロキシル・ラジカル生成のアッセイにおける、インキュベーション時間に対する532nmでの吸光度(A532)のグラフ。図中、(黒塗りの四角)=アスコルビン酸のみ、(黒塗りの菱形)=銅およびアスコルビン酸、(黒塗りの三角)=テトラペプチド(L−Asp L−Ala L−His L−Lys[配列番号1])、銅およびアスコルビン酸(テトラペプチド/銅の比は1:1)、×=テトラペプチド、銅およびアスコルビン酸(テトラペプチド/銅の比は2:1)である。
【図8B】ヒドロキシル・ラジカル生成のアッセイにおける、インキュベーション時間に対する532nmでの吸光度(A532)のグラフ。図中、(黒塗りの菱形)=銅およびアスコルビン酸、(黒塗りの四角)=テトラペプチド、銅およびアスコルビン酸(テトラペプチド/銅の比は2:1)である。
【図9】スーパーオキシド・ジスムターゼ活性に関するキサンチン・オキシダーゼ・アッセイにおける、テトラペプチド/銅の比が1:1のテトラペプチド(L−Asp L−Ala L−His L−Lys[配列番号1])−銅の錯体の濃度に対する阻害(%)のグラフ。
【図10】スーパーオキシド・ラジカル生成のアッセイにおける、時間に対する560nmでの吸光度(A560)のグラフ。図中、(黒塗りの四角)=アスコルビン酸のみ、(黒塗りの菱形)=銅およびアスコルビン酸、(白抜きの三角)=テトラペプチド(L−Asp L−Ala L−His L−Lys[配列番号1])、銅およびアスコルビン酸(テトラペプチド/銅の比は1:1)、×=テトラペプチド、銅およびアスコルビン酸(テトラペプチド/銅の比は2:1)である。
【図11】様々な方法で処理したDNAを電気泳動した後のゲルの写真。レーン1‐ 17μg/mlのプラスミドDNA(無処理対照);レーン2‐ 17μg/mlのプラスミドDNAおよび50μMのCuCl;レーン3‐ 17μg/mlのプラスミドDNAおよび2.5mMのアスコルビン酸;レーン4‐ 17μg/mlのプラスミドDNA、2.5mMのアスコルビン酸、50μMのCuCl、および200μMのテトラペプチド(L−Asp L−Ala L−His L−Lys[配列番号1])(テトラペプチド/銅の比は4:1);レーン5‐ 17μg/mlのプラスミドDNA、2.5mMのアスコルビン酸、50μMのCuCl、および100μMのテトラペプチド(テトラペプチド/銅の比は2:1);レーン6‐ 17μg/mlのプラスミドDNA、2.5mMのアスコルビン酸、50μMのCuCl、および50μMのテトラペプチド(テトラペプチド/銅の比は1:1);レーン7‐ 17μg/mlのプラスミドDNA、2.5mMのアスコルビン酸、50μMのCuCl、および25μMのテトラペプチド(テトラペプチド/銅の比は1:2);レーン8‐ 17μg/mlのプラスミドDNA、2.5mMのアスコルビン酸、50μMのCuCl、および12.5μMのテトラペプチド(テトラペプチド/銅の比は1:4);レーン9‐ 17μg/mlのプラスミドDNA、2.5mMのアスコルビン酸、および50μMのCuCl(陽性対照);ならびにレーン10‐ DNAラダー。
【図12A】本発明によるペプチド2量体の式。
【図12B】本発明によるペプチド2量体の合成を例示する図。
【図12C】本発明によるペプチド2量体の合成を例示した図。
【図12D】本発明によるペプチド2量体の合成を例示した図。
【図13】D−Asp Ala His Lysによる、ROS誘発性のゲノムDNA中のDNA2本鎖切断の軽減を示す、臭化エチジウムで可視化したTAE(トリス 酢酸 EDTA(エチレンジアミン四酢酸))アガロースゲルの写真。レーン1‐ 無処理;レーン2‐ CuCl、50μM;レーン3‐ アスコルビン酸、100μM;レーン4‐ D−Asp Ala His Lys、200μM;レーン5‐ CuCl、10μM+アスコルビン酸、50μM;レーン6‐ CuCl、25μM+アスコルビン酸、50μM;レーン7‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、50μM;レーン8‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、25μM;レーン9‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、100μM;レーン10‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、100μM+D−Asp Ala His Lys、50μM;レーン11‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、100μM+D−Asp Ala His Lys、100μM;レーン12‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、100μM+D−Asp Ala His Lys、200μM。
【図14】D−Asp Ala His Lysによる、ROS誘発性のゲノムDNA中のDNA2本鎖切断の軽減を示す、臭化エチジウムで可視化したTAEアガロースゲルの写真。レーン1‐ 無処理;レーン2‐ CuCl、50μM;レーン3‐ アスコルビン酸、500μM;レーン4‐ D−Asp Ala His Lys、200μM;レーン5‐ CuCl、10μM+アスコルビン酸、500μM;レーン6‐ CuCl、25μM+アスコルビン酸、500μM;レーン7‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、500μM;レーン8‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、100μM;レーン9‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、250μM;レーン10‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、500μM+D−Asp Ala His Lys、50μM;レーン11‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、500μM+D−Asp Ala His Lys、100μM;レーン12‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、500μM+D−Asp Ala His Lys、200μM。
【図15】D−Asp Ala His Lysによる、ROS誘発性のテロメアDNA中のDNA2本鎖切断の軽減を示すサザン・ブロット。レーン1‐ 無処理;レーン2‐ CuCl、50μM;レーン3‐ アスコルビン酸、100μM、レーン4‐ D−Asp Ala His Lys、200μM;レーン5‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、100μM;レーン6‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、100μM+D−Asp Ala His Lys、200μM。
【図16】D−Asp Ala His Lysによる、ROS誘発性のテロメアDNA中のDNA2本鎖切断の軽減を示すサザン・ブロット。レーン1‐ 無処理;レーン2‐ CuCl、50μM;レーン3‐ アスコルビン酸、500μM;レーン4‐ D−Asp Ala His Lys、200μM;レーン5‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、100μM;レーン6‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、250μM;レーン7‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、500μM;レーン8‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、500μM+D−Asp Ala His Lys、50μM;レーン9‐ CuCl、50μM+アスコルビン酸、500μM+D−Asp Ala His Lys、100μM。
【図17】ジャーカット細胞の様々な処理(「なし」および「銅のみ」の処理を除くすべての処理には、グラフに示す他の添加剤に加えてアスコルビン酸を含めた)に対する、インターロイキン−8(IL−8)の濃度を示すグラフ。
【図18】ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)からのインターロイキン8(IL−8)の分泌に対する、銅およびD−Asp D−Ala D−His D−Lys(d−DAHK)(それぞれ単独または組み合わせて使用)の効果を示すグラフ。CTL=対照。値は、平均値±標準誤差である。
【図19A】正常な対照者ならびに歯肉炎患者および歯周炎患者についてのIL−8濃度を示す棒グラフ。
【図19B】正常な対照者ならびに歯肉炎患者および歯周炎患者についての腫瘍壊死因子−α(TNFα)濃度を示す棒グラフ。
【図19C】正常な対照者ならびに歯肉炎患者および歯周炎患者についての可溶性腫瘍壊死因子−α受容体(sTNFR75)濃度を示す棒グラフ。
【図19D】5人の正常な対照者(患者D、O、H、KおよびY)の歯にCrest Whitestrip(商標)を施用する前(白抜きの棒)、0.5時間後(灰色の棒)、6時間後(黒塗りの棒)、24時間後(横線の入った棒)、および72時間後(斜線の入った棒)のIL−8濃度を示す棒グラフ。
【図19E】3人の正常な対照(患者R、BMおよびW)の歯に、テトラペプチドL−Asp L−Ala L−His L−Lys[配列番号1](DAHK−1199とも呼ばれる)を塗布してあるCrest Whitestrip(商標)を施用する前(白抜きの棒)、0.5時間後(灰色の棒)および6時間後(黒塗りの棒)のIL−8濃度を示す棒グラフ。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ペプチド性の金属結合官能基が結合した金属結合ペプチドからなるオーラル・ケア製品。
【請求項2】
前記ペプチドが2〜10個のアミノ酸を含む、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記ペプチドが3〜5個のアミノ酸を含む、請求項2に記載の製品。
【請求項4】
前記ペプチドの前記アミノ酸がD−アミノ酸である、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
第2の金属結合化合物からさらになる、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製品からなるキット。
【請求項7】
動物の口腔組織を処置するためのオーラル・ケア製品を製造する方法であって、非ペプチド性の金属結合官能基が結合した金属結合ペプチドを少なくとも1つの製薬上許容可能な担体と混合することからなる方法。
【請求項8】
式P−L−P
[式中、
各Pは、同一でも異なっていてよく、金属イオンを結合する能力を有し、
Lは、該2つのPペプチドをそれらのC末端アミノ酸を介して接続する化学基である]
の金属結合ペプチド2量体からなるオーラル・ケア製品。
【請求項9】
各Pが2〜10個のアミノ酸を含む、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
少なくとも1つのPがPであって、Pが、
Xaa Xaa His、または
Xaa Xaa His Xaaであり、
Xaaは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、イソアスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、イソグルタミン酸、グルタミン、リジン、ヒドロキシリジン、ヒスチジン、アルギニン、オルニチン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、メチオニン、またはα−ヒドロキシメチルセリンであり、
Xaaは、グリシン、アラニン、β−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、リジン、ヒドロキシリジン、ヒスチジン、アルギニン、オルニチン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、メチオニン、またはα−ヒドロキシメチルセリンであり、
Xaaは、グリシン、アラニン、バリン、リジン、アルギニン、オルニチン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミンまたはトリプトファンである、
請求項8に記載の製品。
【請求項11】
Xaaがアスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、スレオニン、またはα−ヒドロキシメチルセリンである、請求項10に記載の製品。
【請求項12】
Xaaがグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、セリン、アスパラギン、メチオニン、ヒスチジンまたはα−ヒドロキシメチルセリンである、請求項10に記載の製品。
【請求項13】
Xaaがリジンである、請求項10に記載の製品。
【請求項14】
Xaaがアスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、スレオニン、またはα−ヒドロキシメチルセリンであり、Xaaがグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、セリン、アスパラギン、メチオニン、ヒスチジンまたはα−ヒドロキシメチルセリンであり、Xaaがリジンである、請求項10に記載の製品。
【請求項15】
Xaaがアスパラギン酸またはグルタミン酸であり、Xaaがアラニン、グリシン、バリン、スレオニン、セリン、ロイシン、またはα−ヒドロキシメチルセリンである、請求項14に記載の製品。
【請求項16】
Xaaがアラニン、スレオニン、ロイシン、またはα−ヒドロキシメチルセリンである、請求項15に記載の製品。
【請求項17】
Xaaがアスパラギン酸であり、Xaaがアラニンである、請求項16に記載の製品。
【請求項18】
のβ−アラニン(存在する場合)以外の少なくとも1つのアミノ酸がD−アミノ酸である、請求項10に記載の製品。
【請求項19】
のβ−アラニン(存在する場合)以外の前記アミノ酸のすべてがD−アミノ酸である、請求項18に記載の製品。
【請求項20】
いずれのPペプチドもPである、請求項10に記載の製品。
【請求項21】
の少なくとも1つのアミノ酸が、(a)Pが金属イオンを結合する能力を変化させずに前記ペプチド2量体の親油性を増大させる置換基、(b)Pが金属イオンを結合する能力を変化させずに前記ペプチド2量体をタンパク質分解酵素から保護する置換基、または(c)前記ペプチド2量体が金属イオンを結合する前記能力を向上させる非ペプチド性の金属結合官能基である置換基、で置換されている、請求項8に記載の製品。
【請求項22】
が、Pの金属結合能力を提供するために、非ペプチド性の金属結合官能基で置換されたアミノ酸からなる、請求項8に記載の製品。
【請求項23】
Lが中性である、請求項8に記載の製品。
【請求項24】
Lが1〜18個の炭素原子を含む直鎖もしくは分枝鎖状のアルカンまたはアルケン残基である、請求項8に記載の製品。
【請求項25】
Lが2〜8個の炭素原子を含む、請求項24に記載の製品。
【請求項26】
Lが2〜8個の炭素原子を含む環状アルカン残基である、請求項8に記載の製品。
【請求項27】
Lが3〜5個の炭素原子を含む、請求項26に記載の製品。
【請求項28】
Lが窒素含有複素環状アルカン残基である、請求項8に記載の製品。
【請求項29】
Lがピペラジドである、請求項28に記載の製品。
【請求項30】
Lがグリセリルエステルである、請求項8に記載の製品。
【請求項31】
オーラル・ケア・デバイスである、請求項8〜30のいずれか1項に記載の製品。
【請求項32】
オーラル・ケア組成物である、請求項8〜30のいずれか1項に記載の製品。
【請求項33】
請求項8〜32のいずれか1項に記載の製品からなるキット。
【請求項34】
前記製品がオーラル・ケア・デバイスである、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
前記製品がオーラル・ケア組成物である、請求項33に記載のキット。
【請求項36】
前記デバイスがストリップである、請求項33に記載のキット。
【請求項37】
前記ストリップが歯のホワイトニング剤からさらになる、請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記キットが歯のホワイトニング組成物からさらになる、請求項36に記載のキット。
【請求項39】
前記キットが第2のストリップからさらになり、前記第2ストリップが歯のホワイトニング剤からなる、請求項36に記載のキット。
【請求項40】
前記組成物が歯のホワイトニング組成物である、請求項35に記載のキット。
【請求項41】
前記キットが、歯のホワイトニング剤からなるストリップからさらになる、請求項35に記載のキット。
【請求項42】
動物の口腔組織を処置するためのオーラル・ケア製品を製造する方法であって、
式P−L−P
[式中、
各Pは、同一でも異なっていてよく、金属イオンを結合する能力を有し、
Lは、該2つのPペプチドをそれらのC末端アミノ酸を介して接続する化学基である]
の金属結合ペプチド2量体を少なくとも1つの製薬上許容可能な担体と混合することからなる方法。
【請求項43】
前記組織が予防的に処置される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
予防的オーラル療法の一部として前記組織が処置される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
手術前、手術中、手術後、またはこれらの組合せで前記組織が処置される、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
抜歯前、抜歯中、抜歯後、またはこれらの組合せで前記組織が処置される、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記組織がすべてまたは実質的にすべての口腔組織である、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
動物の口腔組織の疾病または状態を処置するためのオーラル・ケア製品を製造する方法であって、
式P−L−P
[式中、
各Pは、同一でも異なっていてよく、金属イオンを結合する能力を有し、
Lは、該2つのPペプチドをそれらのC末端アミノ酸を介して接続する化学基である]
の金属結合ペプチド2量体を少なくとも1つの製薬上許容可能な担体と混合することからなる方法。
【請求項49】
前記疾病または状態が歯周組織の疾病または状態である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記疾病または状態が歯肉炎または歯周炎である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記疾病または状態が感染症である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
動物の口腔組織の炎症を処置するためのオーラル・ケア製品を製造する方法であって、
式P−L−P
[式中、
各Pは、同一でも異なっていてよく、金属イオンを結合する能力を有し、
Lは、該2つのPペプチドをそれらのC末端アミノ酸を介して接続する化学基である]
の金属結合ペプチド2量体を少なくとも1つの製薬上許容可能な担体と混合することからなる方法。
【請求項53】
前記炎症が歯周組織の炎症である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
動物の口腔組織と接触させて該動物の1つまたは複数の歯をホワイトニングするためのオーラル・ケア製品を製造する方法であって、
式P−L−P
[式中、
各Pは、同一でも異なっていてよく、金属イオンを結合する能力を有し、
Lは、該2つのPペプチドをそれらのC末端アミノ酸を介して接続する化学基である]
の金属結合ペプチド2量体を少なくとも1つの製薬上許容可能な担体と混合することからなる方法。
【請求項55】
前記組織がすべてまたは実質的にすべての口腔組織である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記歯のホワイトニング前、前記歯のホワイトニング中、前記歯のホワイトニング後、またはこれらの組合せで前記組織を前記製品と接触させる、請求項54または55に記載の方法。
【請求項57】
活性酸素種によって動物の口腔組織に与えられる損傷を軽減させるためのオーラル・ケア製品を製造する方法であって、
式P−L−P
[式中、
各Pは、同一でも異なっていてよく、金属イオンを結合する能力を有し、
Lは、該2つのPペプチドをそれらのC末端アミノ酸を介して接続する化学基である]
の金属結合ペプチド2量体を少なくとも1つの製薬上許容可能な担体と混合することからなる方法。
【請求項58】
動物の口腔組織中または該組織上の金属の濃度を低減させるためのオーラル・ケア製品を製造する方法であって、
式P−L−P
[式中、
各Pは、同一でも異なっていてよく、金属イオンを結合する能力を有し、
Lは、該2つのPペプチドをそれらのC末端アミノ酸を介して接続する化学基である]
の金属結合ペプチド2量体を少なくとも1つの製薬上許容可能な担体と混合することからなる方法。

【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図19E】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−101024(P2008−101024A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335135(P2007−335135)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【分割の表示】特願2003−545202(P2003−545202)の分割
【原出願日】平成14年11月19日(2002.11.19)
【出願人】(502113644)ディーエムアイ バイオサイエンシズ インコーポレイテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】DMI BIOSCIENCES,INC.
【Fターム(参考)】