説明

オールドファッションドーナツの製造法

【課題】生地の無駄もなく生産効率がよく、包装後も長時間その良好な食感を維持することができる、片面に独特のクラックを有する良好な形状・外観のオールドファッションドーナツの大量生産方法を提供すること。
【解決手段】小麦粉を主体とした原料に、小麦粉100質量部に対して15〜40質量部の水を加えて混捏して生地を得、この生地を押出し機に入れて、1本の突起が孔内に突出したダイス孔(図1参照)から押し出して、片面の長手方向に1本の切れ目の入ったひも状の生地を得、このひも状の生地の両端を結着させてリング状の成形生地とし、次いでこのリング状の成形生地をフライすることにより、オールドファッションドーナツを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なオールドファッションドーナツ製造法、詳しくは片面に独特のクラック(フライした上面の円周状の割れ)を有する良好な形状のオールドファッションドーナツの製造法や、円周方向の上部に切れ目が設けられたオールドファッションドーナツ製造用のリング状の成形生地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小麦粉100質量部に対して45〜65質量部の水を加えた加水量の多い流動性のある生地を、デポジッターを装着した器械により連続的にリング状に型抜きし、型抜きしたリング状に形成した生地を直接高温の油中に落としてフライするオールドファッションドーナツの製造法が知られているが、この製造法で得られるオールドファッションドーナツは包装後の食感がべたついて、フライ直後の良好な食感が維持できないという問題があった。
【0003】
また、小麦粉100質量部に対して20〜40質量部の水を加えた加水量の少ない硬い生地を手成型でシート状に延ばし、抜き型を用いて成形後フライするベンチカット法によるオールドファッションドーナツの製造法も知られているが、この製造法で得られるオールドファッションドーナツは、オールドファッション独特のクラックが安定しにくく、大量生産に向かず、型抜き後の生地に無駄な部分が生じ、生産効率が悪いという問題があった。
【0004】
さらに、小麦粉100質量部に対して15〜40質量部の水を加えた加水量の少ない硬い生地をリング状に成形し、形成した生地の中央部の厚さを周縁部の厚さより大きくしたオールドファッションドーナツ用の冷凍生地を、先づ底面を上にしてフライするオールドファッションドーナツの製造法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。この製造法では、オールドファッションドーナツ独特のクラックがきれいにできるが、加水量の少ない硬い生地を用いる上記ベンチカット法によるオールドファッションドーナツの製造法に近いため、作業性が悪く大量生産に向かず、型抜き後の生地に無駄な部分が生じる上、再度成形の必要があり、さらに生産効率が悪いばかりか、包装後の食感が劣り、フライ直後の良好な食感が維持できないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平8−252061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、生地の無駄もなく生産効率がよく、包装後も長時間その良好な食感を維持することができる、片面に独特のクラックを有する良好な形状・外観のオールドファッションドーナツの大量生産方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、加水量の少ない硬い生地を押出し機に入れて、1本の突起が孔内に突出したダイス孔から押し出して、片面の長手方向に1本の切れ目の入ったひも状の生地を調製し、このひも状の生地の両端を結着させてリング状に成形し、次いでフライすると、包装後も長時間その良好な食感を維持することができる、片面に独特のクラックを有する良好な形状・外観のオールドファッションドーナツを効率よく大量に生産できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、(1)小麦粉を主体とした原料に、小麦粉100質量部に対して15〜40質量部の水を加えて混捏して生地を得、この生地を押出し機に入れて、1本の突起が孔内に突出したダイス孔から押し出して、片面の長手方向に1本の切れ目の入ったひも状の生地を得、このひも状の生地の両端を結着させてリング状の成形生地とし、次いでこのリング状の成形生地をフライすることを特徴とするオールドファッションドーナツの製造法や、(2)小麦粉を主体とした原料に、小麦粉100質量部に対して15〜40質量部の水を加えて混捏して生地を得、この生地を押出し機に入れて、1本の突起が孔内に突出したダイス孔から押し出して、片面の長手方向に1本の切れ目の入ったひも状の生地を得、このひも状の生地の両端を結着させることにより得られる、円周方向の上部に切れ目が設けられたオールドファッションドーナツ製造用のリング状の成形生地に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のオールドファッションドーナツの製造法によると、片面に独特のクラックを有する良好な形状・外観のオールドファッションドーナツの大量生産が可能となり、生地の無駄もなく生産効率がよく、良好な形状・外観のドーナツを安定して生産することができる。また、通常オールドファッションはクッキーのようなハードでサックリとした食感が好まれるが、大量に流通するものは包装の必要があり、従来の製造方法では揚げたてのサックリした食感を維持することが難しいが、本発明のオールドファッションドーナツの製造法で得られるドーナツは、包装後も長時間その良好な食感を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のオールドファッションドーナツの製造法としては、小麦粉を主体とした原料に、小麦粉100質量部に対して15〜40質量部の水を加えて混捏して生地を得、この生地を押出し機に入れて、1本の突起が孔内に突出したダイス孔から押し出して、片面の長手方向に1本の切れ目の入ったひも状の生地を得、このひも状の生地の両端を結着させて円周方向の上部に切れ目が設けられたリング状の成形生地とし、次いでこのリング状の成形生地をフライする方法であれば特に制限されず、上記加水量としては、小麦粉100質量部に対して20〜35質量部が好ましい。加水量が小麦粉100質量部に対して15質量部より少ないと生地が硬すぎてまとまりが悪いため、作業性が悪く、安定した形状のドーナツが得られず好ましくない。一方、加水量が小麦粉100質量部に対して40質量部より多いと、生地が柔らか過ぎてべた付くため、作業性が悪い上、製品の食感は好ましいハードなものが得られず、包装後の製品はさらに食感の品質低下が進むので好ましくない。なお、原料に添加する水分としては、水に全部または一部代えて牛乳、果汁等を用いてもよく、また生卵(全卵または卵黄)を用いる場合は、含まれる水分を換算して、加水量を調整すればよい。
【0011】
上記小麦粉を主体とした原料としては、通常のオールドファッションドーナツの製造に使用される小麦粉を主体とした原料であれば特に制限されないが、薄力小麦粉等の小麦粉、砂糖等の糖類、ベーキングパウダー、ショートニングの他、脱脂粉乳、食塩、卵、香料、着色料、ガム類等を例示することができ、好ましい原料配合としては、例えば、薄力小麦粉100質量部、砂糖20〜60質量部、脱脂粉乳0〜10質量部、ベーキングパウダー0.5〜3質量部、ショートニング5〜15質量部、全卵粉又は卵黄粉0〜10質量部、食塩0〜4質量部を挙げることができる。また、生地の調製は、常法に従って行えばよく、例えば水以外の材料を予め混合した粉末ミックスを用いてもよいが、全材料と水を混合して調製してもよい。
【0012】
調製されたドーナツ生地は、ダイスを有する押出し機のダイス孔から押し出されるが、1本の突起が孔内に突出したダイス孔、すなわち、1本の突起がダイスのダイス孔周縁部付近又はダイス孔内周面部からダイス孔内に立設された当該ダイス孔を介して、片面の長手方向に1本の切れ目の入ったひも状の生地として押し出し、このひも状の生地の両端を結着させてリング状に成形する点が、本発明のオールドファッションドーナツの製造法の大きな特徴の一つである。
【0013】
上記1本の突起が孔内に突出状態で設けられたダイス孔としては、通常のオールドファッションドーナツの縦断面形状、例えば円形、楕円形または略半短楕円形を挙げることができ、好ましくは略半短楕円形である。ダイス孔の大きさは、例えば円形の場合には直径が10〜25mm、楕円形の場合には長径10〜25mm、短径8〜20mm、略半短楕円形の場合にはドーナツの底面に相当する平坦部分10〜25mm、高さ8〜20mmとすることができる。
また、ダイス孔に設けられた1本の突起の形状としては、ひも状の生地の片面の長手方向に1本の切れ目を入れることができる突起であれば特に制限されず、断面が鋭角なV字状、鋭角な円錐状、三角柱状、ブレード状等を挙げることができ、その突起の高さはダイス孔の大きさにより変更されるが、例えば1〜6mmの範囲であり、好ましくは1.5〜4mmである。
ダイス孔のドーナツ底面に相当する部分を平坦とすることで、押し出したドーナツ生地が安定な成形生地となりその後の作業性がよくなる。また、突起の位置としてはダイス孔が円形の場合はいずれの位置でもよく、楕円形または略半短楕円形の場合にはドーナツ生地のほぼ上面に相当する位置であれば特に限定されず、突起の位置を変えることによってクラックの位置が異なるオールドファッションドーナツを得ることができるが、リング状の成形生地の上部中心側(内面側)寄りに相当する位置に設けることが好ましい。
【0014】
ダイスを有する押出し機のダイス孔から押し出された、片面の長手方向に1本の切れ目の入ったひも状の生地の長さは、リング状の成形生地にすることができる長さであれば特に制限されないが、通常長さ100〜250mmとすることが好ましい。ひも状生地の両端を結着させてリング状に成形する方法としては特に制限されないが、手作業で行う方法が簡便で好ましい。リング状に成形することにより、本発明の円周方向の上部に切れ目が設けられたオールドファッションドーナツ製造用のリング状の成形生地を得ることができる。
【0015】
本発明の円周方向の上部、好ましくは内面側上部に切れ目が設けられたリング状の成形生地を、次いでフライすることによりオールドファッションドーナツ製品を得ることができるが、上記フライとしては潜行式、反転式のいずれでもよく、またフライの条件としては、油温度165℃〜190℃、フライ時間120秒〜240秒間を好適に例示することができる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【0017】
[実施例1]
薄力小麦粉100質量部、砂糖50質量部、脱脂粉乳10質量部、卵黄粉5質量部、ベーキングパウダー1.5質量部、食塩2質量部からなる粉末材料を竪型ミキサーに入れて低速で10分間混合し、次いでショートニング10質量部を加えてさらに10分間混合して、均一な粉末ミックスとした。この粉末ミックスに水25質量部を加えて低速で5分間混合し、ドーナツ用生地を得た。最終生地温は25℃になるように調節した。この生地を円筒状のデポジッターに入れ、V字状の鋭角な1本の突起(高さ2.5mm)がダイス孔に向かって設けられた略半短楕円形のダイス孔(幅16mm、高さ13mm;図1参照)から生地を押し出し、片面の長手方向に1本の切れ目がリング中心側に寄るように入った17cm長のひも状の生地(図2参照)を得、平らな面が下になるようにして両端を結着させてリング状に成形した(図3参照)。このリング状の成形生地を平らな面が上になるように金網の上に載せ、180℃の油に入れ、生地が油面から出ないよう、別の金網で上から抑えながら潜行式で2分20秒間フライし、本発明のオールドファッションドーナツ(図4参照)を得た。
【0018】
[比較例1]
水の配合量を45質量部に変えた以外は実施例1と同様に行い、比較例1のオールドファッションドーナツを得た。
【0019】
[比較例2]
水の配合量を10質量部に変えた以外は実施例1と同様に行い、比較例2のオールドファッションドーナツを得た。
【0020】
[比較例3]
特開平8−252061号公報の実施例1に準じて生地の調製を行った。すなわち、薄力小麦粉100質量部、砂糖50質量部、脱脂粉乳10質量部、ベーキングパウダー3質量部、卵黄粉5質量部、食塩2質量部からなる粉末材料を竪型ミキサーに入れて低速で10分間混合し、次いでショートニング10質量部を加えてさらに10分間混合して、均一な粉末ミックスとした。この粉末ミックスに水25質量部を加えて低速で5分混合し、ドーナツ用生地を得た。最終生地温は20℃になるように調節した。
【0021】
この生地をリバースシーターで厚さ15mmに延ばしリング型の抜き型で抜いた後、椀状の押し型で押して成形生地40gを得た。この成形生地を−30℃の冷凍庫に60分入れて凍結させ、ポリ袋に入れて−18℃で保存した。この生地を1ヶ月後に取り出し、径の大きい面(底面)が上になるように金網に載せ、180℃の油に入れて1分30秒フライし、ついで反転してさらに1分30秒フライし、比較例3のオールドファッションドーナツを得た。
【0022】
[試験例]
実施例1及び比較例1〜3のそれぞれのオールドファッションドーナツについて、生地の状態及びドーナツの外観を比較し、並びに、フライ直後のドーナツの食感及びドーナツを包装して5日間経過後の食感について、表1に示す評価基準表に基き、10人のパネラーにより評価を行った。その平均結果を表2に示す。これらの結果から、実施例1のオールドファッションドーナツは、比較例1や比較例3のオールドファッションドーナツに比べて、生地の状態及びドーナツの外観、並びに、フライ直後のドーナツの食感及び包装して5日間経過後のドーナツの食感のすべての項目において優れており、比較例2のオールドファッションドーナツに比べて、生地の状態及びドーナツの外観において優れていることがわかった。
【0023】
【表1】

【0024】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のオールドファッションドーナツの製造法における生地成形時に用いられるダイス孔を示す図である。
【図2】本発明のオールドファッションドーナツの製造過程におけるひも状の押し出し生地の写真を示す図である。
【図3】本発明のオールドファッションドーナツの製造過程におけるリング状の成形生地の写真を示す図である。
【図4】本発明のオールドファッションドーナツの製造法により得られるオールドファッションドーナツ製品の写真を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉を主体とした原料に、小麦粉100質量部に対して15〜40質量部の水を加えて混捏して生地を得、この生地を押出し機に入れて、1本の突起が孔内に突出したダイス孔から押し出して、片面の長手方向に1本の切れ目の入ったひも状の生地を得、このひも状の生地の両端を結着させてリング状の成形生地とし、次いでこのリング状の成形生地をフライすることを特徴とするオールドファッションドーナツの製造法。
【請求項2】
小麦粉を主体とした原料に、小麦粉100質量部に対して15〜40質量部の水を加えて混捏して生地を得、この生地を押出し機に入れて、1本の突起が孔内に突出したダイス孔から押し出して、片面の長手方向に1本の切れ目の入ったひも状の生地を得、このひも状の生地の両端を結着させることにより得られる、円周方向の上部に切れ目が設けられたオールドファッションドーナツ製造用のリング状の成形生地。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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