説明

オールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法

【課題】オールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法の提供。
【解決手段】紡糸スラリーの調製、湿式紡糸と後処理の三つの工程を有する。前記紡糸スラリーの調製工程は以下の通りであり、(1)3,3-ジアミノジフェニルスルホンを有機極性溶媒の中に溶解させ、−20〜20℃まで冷却する、(2)更に3,3-ジアミノジフェニルスルホンと等モルの塩化イソフタロイルを添加し、重合反応を行う、(3)次に3,3-ジアミノジフェニルスルホンと等モルの無機塩基を添加し、前記重合反応で生成した塩化水素と中和反応を行うことによって、重合体の固体含有量が10%〜20%である紡糸スラリーを得る。本発明の方法で得られた繊維は、その巻縮性能が通常の芳香族ポリスルホンアミド繊維より大きく改善され、破断伸長も著しく向上され、糸形成の可紡性を高めている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学繊維の製造方法に関する。より詳しくは、オールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリスルホンアミド(polysulfonamide)は、耐熱性と耐火炎性及び高温での電
気的絶縁性能に優れているので、耐火耐火炎性材料と高い使用温度での絶縁材料、例えば繊維などの製造に用いられている。
【0003】
また、中国特許CN1176256Cには、5%〜50%の3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS、diaminodiphenyl sulfone)と50%〜95%の4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)を混合した後、塩化テレフタロイル(
TPC、terephthaloyl chloride)の低温溶液と重合させ、湿式紡糸により得られる芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法が開示されている。該繊維の分子構造において、メタ型芳香族アミド結合の含有量が5%〜50%であり、パラ型芳香族アミド結合の含有量が50%〜95%である。
【0004】
当該方法で得られた芳香族ポリスルホンアミド繊維は、強度が高く、熱収縮性が少ないという利点を持つが、破断伸長性が小さく、巻縮性能が良くない欠点を持っているので、糸形成工程における繊維の可紡性に影響を与え、糸の脆性を増やし、糸形成の強度を低下させる。
【特許文献1】中国特許CN1176256C
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、オールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法を提供することを目的としている。具体的には、一定の重合、紡糸と後処理工程によりオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維を製造し、重合体マクロ分子の分子構造を調整することにより、繊維の巻縮性能を改善し、破断伸長性を高め、糸形成の可紡性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の紡糸スラリーの調製工程、湿式紡糸工程と後処理工程の三つの工程を有するオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法から得られるオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維は、繊維の巻縮性能を改善し、破断伸長性を高め、糸形成の可紡性を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下に記載した事項により特定される。
〔1〕 紡糸スラリーの調製工程、湿式紡糸工程と後処理工程の三つの工程を有するオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法であって、前記紡糸スラリーの調製工程は、
(1)3,3’-ジアミノジフェニルスルホンを有機極性溶媒の中に溶解させ、−20
〜20℃まで冷却する;
(2)更に3,3’-ジアミノジフェニルスルホンと等モルの塩化イソフタロイルを添
加し、重合反応を行う;
(3)次に3,3’-ジアミノジフェニルスルホンと等モルの無機塩基を添加し、前記
重合反応で生成した塩化水素と中和反応を行うことによって、重合体の固体含有量が10%〜20%である紡糸スラリーを得る、
という工程からなることを特徴とするオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法。
【0008】
〔2〕 前記有機極性溶媒は、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミドおよびN,N-ジメチルホルムアミドから選ばれる1種であることを特徴とする〔1〕に記
載のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法。
【0009】
〔3〕 前記無機塩基は、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、カルシウムの酸化物、リチウムの酸化物およびマグネシウムの酸化物から選ばれる1種であることを特徴とする〔1〕に記載のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法。
【0010】
〔4〕 前記塩化イソフタロイルの添加速度を重合温度が−10〜30℃の範囲内になるように制御することを特徴とする〔1〕に記載のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法。
【0011】
〔5〕 全部の塩化イソフタロイルを添加した後、−10〜30℃の条件で30分以上反応を続けることを特徴とする〔4〕に記載のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法。
【0012】
〔6〕 中和反応温度を20〜80℃に制御し、中和反応時間を全部の無機塩基を入れた後から1〜24時間に制御することを特徴とする〔1〕に記載のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法から得られるオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維は、優れた耐熱性や難燃性を持ちつつ、その巻縮性能が通常の芳香族ポリスルホンアミド繊維より大きく改善され、破断伸長性も著しく改善されることにより、糸形成の可紡性を高めている。よって、塵除フィルターなどの工業材料の用途に適し、その他にも耐熱性作業服や消防服などの防護服、電気絶縁材料などに用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法は、紡糸スラリーの調製工程、湿式紡糸工程と後処理工程の三つの工程を有する。
原料として3,3’-ジアミノジフェニルスルホンと塩化イソフタロイル(IPC、isophthaloyl chloride)を用い、それらを有機極性溶媒の中に溶解させた。これらの有機極性溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。低温溶液の重合法を採用し、前記溶液で重合
を行い、重合が終わった後、無機塩基を加えて、反応で生成した塩化水素に中和を行った。該無機塩基は、通常水酸化カルシウムを使用するが、水酸化リチウム又は水酸化マグネシウムを使用してもよいし、またカルシウム、リチウム又はマグネシウムの酸化物を使用してもよい。得られた紡糸スラリーの中には、重合体の固体含有量が10%〜20%である。得られた該紡糸スラリーに対して湿式紡糸を行う。この湿式紡糸における凝固浴は、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等
の有機極性溶媒、水、およびカルシウム、リチウム、マグネシウムの塩化物中の1種からなることである。凝固された後の繊維に対して仮延伸、水洗と乾燥を行うことにより、初生糸条(nascent filament)を得た。該糸条に高温熱延伸、熱固定、オイル塗り、乾燥、
巻縮などの後処理工程を経て、完成品としてのオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維を得た。
【0015】
紡糸スラリーの調製工程は、以下の通りである。
3,3’-DDSを有機極性溶媒、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)の中に溶かし、−20〜20℃まで冷却した後、更に3,3’-DDSと等モルのIPC
を添加した。なお、IPCを添加する際に、重合温度を−10〜30℃の範囲内になるようにその添加速度を制御しなければならない。全部のIPCを添加した後、−10〜30℃で30分以上反応を続け、次に3,3’-DDSと等モルの無機塩基を添加し、重合反
応で生成した塩化水素を中和させた。なお、中和反応温度は20〜80℃に制御され、また中和反応時間は、全部の無機塩基を入れた後から1〜24時間に制御される。さらに、中和して生成したアルカリ塩化物と水をスラリーの中に溶解させることによって、重合体の固体含有量が10%〜20%である紡糸スラリーを得た。
【0016】
湿式紡糸工程は、以下の通りである。
通常の直向式又は転向式湿式紡糸設備において、計量ポンプにより前記紡糸スラリーを計量し、フィルターでろ過し、口金から凝固浴槽の中に吹き込んだ。該口金の紡糸孔の数は500〜30000孔、紡糸の孔径は通常0.05〜0.15mm、紡糸の速度は3〜
30m/minである。その凝固浴の構成は、15〜60%の有機極性溶媒(例えば、DMAc)と0〜60%の金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム)であり、水を100%(全て質量%)まで添加した。なお、凝固浴の温度は0〜90℃に制御され、凝固して糸に形成された後、仮延伸槽に入れた。その延伸浴の構成は、10〜50%の有機極性溶媒(例えば、DMAc)と0〜20%の金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム)であり、水を100%(全て質量%)まで添加した。なお、延伸浴の温度を30〜100℃に制御し、仮延伸比を1〜5倍に制御することが好ましく、より好ましくは1.5〜3倍で
ある。その後40〜80℃の純水の中で水洗を行い、更に100〜260℃の条件で乾燥処理して初生糸条を得た。
【0017】
後処理工程は、以下の通りである。
初生糸条を250〜450℃の熱管の中で延伸させた。延伸倍率は、1〜3倍であることが好ましく、より好ましくは1.5〜2倍である。更に250〜450℃の熱固定機に
より延伸糸の安定化処理を行った。その処理時間は、0.5〜5分間が好ましく、より好
ましくは1〜2分間である。次にそれを陽イオン型油剤で浸透させ、そのオイル浸透率は0.3〜0.9%である。オイル塗り糸を100〜150℃の熱風乾燥機の中で、乾燥後の糸条の含水率が4〜20%になるように乾燥させた。その後、蒸気給湿の条件で巻縮させた。その巻縮温度は、100〜260℃に制御することが好ましく、より好ましくは150〜200℃である。最後に冷却固定した後、通常の切断機で切断し、オールメタ型芳香族ポリスルホンアミドの完成品繊維を得た。
【0018】
本発明は、3,3’-DDSとIPCを単体として用い、低温溶液の重合によりオール
メタ型芳香族ポリスルホンアミド分子を得て、マクロ分子の構造では、オールメタ型の芳香族アミド分子結合とスルホン基を含んでいる。それと通常の芳香族ポリスルホンアミド分子構造との区別は、通常の芳香族ポリスルホンアミド分子構造におけるメタとパラの混和型芳香族アミド分子結合の形式を変えたことである。本発明に係るこのような分子構造を持つ重合体を用い、湿式紡糸によりオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維を得ることで、この繊維は、破断伸長性が大きく、巻縮性能に優れる利点を有している。
【0019】
本発明の方法で得られた繊維は、優れた耐熱性や難燃性を持ちつつ、その巻縮性能が通常の芳香族ポリスルホンアミド繊維より大きく改善され、破断伸長性も著しく改善されることにより、糸形成の可紡性を高めている。よって、塵除フィルターなどの工業材料の用
途に適し、その他にも耐熱性作業服や消防服などの防護服、電気絶縁材料などに用いることができる。
【0020】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。
【0021】
〔実施例1〕
乾燥した170質量部の3,3’-DDSを、新しく蒸留して乾燥した1080質量部
のDMAcの中に溶解させ、-15℃まで冷却し、140質量部の顆粒状の精製IPCを
添加し、重合温度を-15〜0℃の範囲内に制御しながら、全部のIPCを入れた後、5
〜15℃で90分間反応を続けた。次に水酸化カルシウム51.5質量部を添加して中和
を行い、中和反応温度を60±5℃、反応時間を10時間に制御することにより、重合体の固体含有量が18%である紡糸スラリーを得た。前記紡糸スラリーを計量ポンプにより計量し、フィルターでろ過し、口金から凝固浴槽の中に吹き込んだ。該口金の紡糸孔の数は3000孔、紡糸の孔径は0.06mm、紡糸の速度は5.5m/minであった。な
お、凝固浴の構成は、DMAc 60%、塩化カルシウム3.5%、水36.5%(全て質
量%)であり、凝固浴の温度は10℃であった。凝固して糸に形成した後、仮延伸槽に入れた。なお、延伸浴の構成は、DMAc 20%、塩化カルシウム1%、水79%(全て
質量%)であり、延伸浴の温度は50℃、仮延伸比は2.5倍であった。その後、80℃
の純水で水洗を行い、更に105℃の条件下で乾燥処理して初生糸条を得た。初生糸条を300℃の熱管の中で、延伸倍率が1.5倍になるように延伸させた。その後、250℃の熱固定機により1分間安定化処理を行い、次にオイル浸透率が0.5%になるように陽
イオン型油剤で浸透させた。オイル塗り糸を110℃の熱風乾燥機の中で乾燥させ、乾燥後の糸条の含水率を5%になるようにした。次に蒸気給湿の条件で110℃の巻縮温度で巻縮させた。最後に冷却固定した後、通常の切断機を使用し、繊維の繊度1.66dtex、
長さ38mmに切断して、棉型のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維を得た。
【0022】
〔実施例2〕
乾燥した105.9質量部の3,3’-DDSを、新しく蒸留して乾燥した1080質量部のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)の中に溶解させ、0℃まで冷却し、87.2質量部の顆粒状精製IPCを添加し、重合温度を0〜10℃の範囲内に制御しながら、全部のIPCを入れた後、5〜20℃で60分間反応を続けた。次に、酸化カルシウム24.3質量部を添加して、50±5℃の中和反応温度で20時間中和反応を行い、重合体の
固体含有量が13%である紡糸スラリーを得た。前記紡糸スラリーを計量ポンプにより計量し、フィルターでろ過し、口金から凝固浴槽の中に吹き込んだ。該口金の紡糸孔の数は3000孔、紡糸の孔径は0.06mm、紡糸の速度は6.5m/minであった。なお、凝固浴の構成は、DMF 50%、塩化カルシウム4.0%、水46%(全て質量%)であり、凝固浴の温度は0℃であった。凝固して糸に形成された後仮延伸槽に入れた。なお、延伸浴の構成は、DMF 25%、塩化カルシウム0%、水75%(全て質量%)であり
、延伸浴の温度は40℃であり、仮延伸比は2.2倍である。その後、80℃純水の中で
水洗を行い、更に105℃の条件下で乾燥処理して初生糸条を得た。初生糸条を285℃の熱管の中で、延伸倍率が1.5倍になるように延伸させた。その後、220℃の熱固定
機により1分間安定化処理を行い、次に陽イオン型油剤で浸透させた。そのオイル浸透率は、0.5%であった。オイル塗り糸を110℃熱風乾燥機の中で乾燥させ、乾燥後の糸
条の含水率を5%に制御した。次に蒸気給湿の条件で、110℃の巻縮温度で巻縮させた。最後に冷却固定して、通常の切断機を使用し、繊維の繊度1.66dtex、長さ38mm
に切断して、棉型のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維を得た。
【0023】
〔実施例3〕
乾燥した170質量部の3,3’-DDSを、新しく蒸留して乾燥した1080質量部
のDMAcの中で溶解させ、15℃まで冷却し、140質量部の顆粒状の精製IPCを添加し、重合温度を15〜30℃の範囲内で制御しながら、全部のIPCを入れた後、15〜30℃で45分間反応を続けた。次に水酸化リチウム33.3質量部を添加して70±
5℃の中和反応温度で2時間中和反応を行い、重合体の固体含有量が18%である紡糸スラリーを得た。前記紡糸スラリーを計量ポンプにより計量し、フィルターでろ過し、口金から凝固浴槽の中に吹き込んだ。該口金の紡糸孔の数は3000孔、紡糸の孔径は0.0
75mm、紡糸の速度は6.0m/minであった。なお、凝固浴の構成は、DMAc 60%、塩化リチウム5.0%、水35%(全て質量%)であり、凝固浴の温度は10℃で
あった。凝固して糸に形成された後、仮延伸槽に入れた。なお、延伸浴の構成は、DMAc 30%、塩化リチウム1%、水69%(全て質量%とする)であり、延伸浴の温度は
50℃、仮延伸比は2.5倍であった。その後、80℃の純水の中で水洗を行い、更に1
05℃の条件下で乾燥処理して初生糸条を得た。初生糸条を300℃熱管の中で、延伸倍率が1.5倍になるように延伸させた。その後、250℃の熱固定機により1分間安定化
処理を行った。次に陽イオン型油剤で浸透させた。そのオイル浸透率は、0.5%であっ
た。オイル塗り糸を110℃の熱風乾燥機の中に乾燥させ、乾燥後の糸条の含水率を7%に制御した。次に蒸気給湿の条件で、110℃の巻縮温度で巻縮させた。最後に冷却固定して、通常の切断機を使用し、繊維の繊度2.22dtex、長さ51mmに切断して、中長
型のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維を得た。
【0024】
〔比較例1〕
前記中国特許CN1176256Cで開示された方法により、繊維分子構造におけるメタ型芳香族アミド結合の含有量が25%、パラ型芳香族アミド結合の含有量が75%、繊度が1.66dtexであり、且つ切断長さが38mmである棉型の芳香族ポリスルホンアミ
ド繊維を製造した。
【0025】
〔比較例2〕
前記中国特許CN1176256Cで開示された方法により、繊維分子構造におけるメタ型芳香族アミド結合の含有量が25%、パラ型芳香族アミド結合の含有量が75%、繊度が2.22dtexであり、且つ切断長さが51mmである中長型の芳香族ポリスルホンア
ミド繊維を製造した。
【0026】
本発明の実施例と、前記中国特許CN1176256Cで開示された方法により得られた芳香族ポリスルホンアミド繊維の性能を比較し、その具体的な結果を以下の表1に示した。
【0027】
【表1】

前記の表1より、本発明の方法で得られた繊維は、前記中国特許CN1176256Cで開示された方法で得られた芳香族ポリスルホンアミド繊維と比べ、その巻縮性能が大きく改善され、破断伸長も著しく向上されたことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸スラリーの調製工程、湿式紡糸工程と後処理工程の三つの工程を有するオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法であって、
前記紡糸スラリーの調製工程は、
(1)3,3’-ジアミノジフェニルスルホンを有機極性溶媒の中に溶解させ、−20
〜20℃まで冷却する;
(2)更に3,3’-ジアミノジフェニルスルホンと等モルの塩化イソフタロイルを添
加し、重合反応を行う;
(3)次に3,3’-ジアミノジフェニルスルホンと等モルの無機塩基を添加し、前記
重合反応で生成した塩化水素と中和反応を行うことによって、重合体の固体含有量が10%〜20%である紡糸スラリーを得る、
という工程からなることを特徴とするオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法。
【請求項2】
前記有機極性溶媒は、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミドおよびN,N-ジメチルホルムアミドから選ばれる1種であることを特徴とする請求項1に記載のオ
ールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法。
【請求項3】
前記無機塩基は、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、カルシウムの酸化物、リチウムの酸化物およびマグネシウムの酸化物から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1に記載のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法。
【請求項4】
前記塩化イソフタロイルの添加速度を重合温度が−10〜30℃の範囲内になるように制御することを特徴とする請求項1に記載のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法。
【請求項5】
全部の塩化イソフタロイルを添加した後、−10〜30℃の条件で30分以上反応を続けることを特徴とする請求項4に記載のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法。
【請求項6】
中和反応温度を20〜80℃に制御し、中和反応時間を全部の無機塩基を入れた後から1〜24時間に制御することを特徴とする請求項1に記載のオールメタ型芳香族ポリスルホンアミド繊維の製造方法。

【公開番号】特開2008−240222(P2008−240222A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295367(P2007−295367)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(507376624)上海特安倫繊維有限公司 (1)
【Fターム(参考)】