説明

カイネチンを含有する乳化型化粧料

【課題】カイネチンを含有し、保存安定性に優れた乳化化粧料を提供すること。
【解決手段】
次の成分(A)、(B);
(A)カイネチン
(B)イソステアリン酸
を含有し、成分(A)と成分(B)の含有質量比(B)/(A)が45以上とする乳化型化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カイネチン、イソステアリン酸を含有する乳化型化粧料に関するものであり、さらに詳細にはカイネチンの質量比で45倍以上のイソステアリン酸を含有することを特徴とするカイネチンの保存安定性に優れる乳化型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
カイネチンは、プリンの誘導体で、6−フルフリルアミノプリンとも呼ばれるものであり、植物ホルモンの一種である。カイネチンは皮膚外用剤として利用されおり、保湿効果(例えば、特許文献1参照)、皮膚老化防止効果(例えば、特許文献2参照)、育毛効果(例えば、特許文献3参照)、美白効果(例えば、特許文献4参照)等が知られている。
【0003】
しかしながら、カイネチンは固体性状をしており、さまざまな溶媒に対しても溶解性が低いことが知られている。固体性状のまま配合することは化粧品あるいはその基材中への均一分散が困難であることにより、カイネチンの効果を十分に発現させることは期待できない。そこでカイネチンを均一に分散させる試みとして、カイネチンを微小粒子にすることで水系溶媒に均一に分散しその効果を高める技術(例えば、特許文献5参照)がある。
【0004】
一方、イソステアリン酸は皮膚外用剤として一般に用いられており、使用感のよい化粧水(例えば、特許文献6参照)やイソステアリン酸とグリセリンをエステル化し、その化合物を配合することでツヤの持続性に優れる化粧料(例えば、特許文献7参照)ことが知られている。しかしながら、カイネチンをイソステアリン酸で溶解できるということは報告はされていない。
【0005】
【特許文献1】特開昭48−39646号公報
【特許文献2】特表平10−510240号公報
【特許文献3】特開平6−211632号公報
【特許文献4】特開2001−31549号公報
【特許文献5】特開2004−285032号公報
【特許文献6】特開2001−302457号公報
【特許文献7】特開2006−69934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載された技術では、水分散製剤中に分散された状態でのカイネチンの平均粒子径は、通常0.05〜5μm、好ましくは0.1〜3μmであり、5μmを超えると分散液中で分離したり、沈殿したりするので保存安定性に欠け、使用中のなめらかさが損なわれるという懸念があった。また上記特許文献にはカイネチンを含有する乳化化粧料の例示がなされているが、いずれにおいてもカイネチンを均一に溶解させて安定配合されたものではなく、固体性状のカイネチンを含むものであった。そのため、カイネチンの効果を十分に得られない場合や、使用性(塗布時にカイネチンの結晶物を感じる)等の場合があった。以上のことからカイネチンを均一かつ安定に溶解させる技術が必要であり、さらにカイネチン含有製剤として保存安定性に優れる技術の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、カイネチンが質量比で45倍以上のイソステアリン酸に均一溶解することを見出し、さらにこれを乳化することで保存安定性に優れ使用中のなめらかさに優れた化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、次に示す成分(A)、(B);
(A)カイネチン
(B)イソステアリン酸
を含有し、成分(A)と成分(B)の含有質量比(B)/(A)が45以上であることを特徴とする乳化型化粧料に関するものである。
【0009】
また、成分(A)の含有量が0.001〜0.1質量%であることを特徴とする乳化型化粧料に関するものである。
【0010】
また、成分(B)の含有量が0.045〜5質量%あることを特徴とする乳化型化粧料に関するものである。
【0011】
更に、予め成分(A)を成分(B)に加温溶解させてなることを特徴とする乳化型化粧料に関するものである。
【0012】
更にまた、成分(C)としてHLBが9以上の親水性ノニオン界面活性剤を含有することを特徴とする乳化型化粧料に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化粧料は、カイネチンの保存安定性に優れ、使用中のなめらかさに優れた乳化型化粧料に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の成分(A)のカイネチンは、プリンの誘導体で6−フルフリルアミノプリンとも呼ばれるものである。本発明のカイネチンは、化学的に合成され、例えば、アデニンとフルフリルクロライドとの反応、6−メチルメルカプトプリンとフルフリルアミンとの反応などによって得られる。また、カイネチンは、例えば、ニシンの精子などのDNAを多量に含む天然物を高圧加熱することによっても得ることができる。このように本発明のカイネチンは、化学合成法により合成されたものやDNAを多量に含む天然物の高圧加熱物のいずれでも使用可能である。
【0015】
本発明の成分(A)の含有量は、特に限定されないが、カイネチンの効果及び、含有する成分(B)のイソステアリン酸への溶解性の点から0.001〜0.1質量%(以下、単に「%」と略す)が好ましく、0.01〜0.08%がより好ましい。この範囲であれば、保存安定性に優れる乳化型化粧料を得ることができる。
【0016】
イソステアリン酸は、炭素数18の飽和側鎖脂肪酸であり、例えば、ガーベット法にて得られる2−ヘプチルウンデカン酸、アルドール縮合法にて得られる2−イソヘプチルイソウンデカン酸、ダイマー酸製造時に副生する炭素数18の側鎖脂肪酸を精製することによって得られる。
【0017】
本発明の成分(B)の含有量は、特に限定されないが、カイネチンの効果及び、含有する成分(B)のイソステアリン酸への溶解性の点から0.045〜5%が好ましく、0.05〜4.5%がより好ましい。この範囲であれば、保存安定性に優れる乳化型化粧料を得ることができる。
【0018】
本発明の成分(B)のイソステアリン酸は、成分(A)のカイネチンに対しその含有質量比を45倍以上とすることで、カイネチンを溶解することが可能となる。さらに50倍以上とすれば、さらに溶解性が向上し、保存安定性に優れる乳化化粧料とすることができる。含有質量比が45倍未満であるとカイネチンのイソステアリン酸への溶解性が著しく低下することから、カイネチンの保存安定性に優れた乳化化粧料とすることが困難となり、使用性においても優れないものとなる。
【0019】
本発明の成分(A)は予め成分(B)と均一に混合溶解して用いるが、好ましくはさらに加熱をすることによりカイネチンの溶解性が向上するために好ましい。加熱温度は65℃以上が好ましく、さらに70℃以上にするとより好ましい。また混合溶解する際に、成分(B)以外の油を含んでいてもかまわない。
【0020】
成分(A)の成分(B)への溶解確認は、目視及び偏光顕微鏡(オリンパス社製:BX70)を用いて観察することが可能である。成分(B)が成分(A)の45倍質量未満では、成分(A)の未溶解物が存在し、状態としては未溶解物による沈殿が発生し、溶液としては半透明状態であるが、成分(B)が成分(A)の45倍質量以上とすることで、透明に溶解した状態となる。またあわせて成分(A)の未溶解物が存在する場合は、偏光顕微鏡観察において結晶物特有の偏光が確認でき、これらから溶解性確認の指標とした。
【0021】
本発明に配合される成分(C)のHLB9以上の親水性ノニオン界面活性剤は、成分(A)を溶解した成分(B)を含む油剤を乳化するために含有されるものであり、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。
【0022】
HLB9以上のノニオン系界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸POE(6)ソルビット(HLB:15.5)、テトラステアリン酸POE(60)ソルビット(HLB:13)、テトラオレイン酸POE(30)ソルビット(HLB:11.5)、テトラオレイン酸POE(40)ソルビット(HLB:12.5)、テトラオレイン酸POE(60)ソルビット(HLB:14)、モノラウリン酸ヘキサグリセリル(HLB:9)、モノラウリン酸デカグリセリル(HLB:15.5)、モノステアリン酸POE(5)グリセリル(HLB:9.5)、モノステアリン酸POE(15)グリセリル(HLB:13.5)、モノオレイン酸POE(5)グリセリル(HLB:9.5)、モノオレイン酸POE(15)グリセリル(HLB:14.5)、モノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン(HLB:16.9)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(HLB:15.6)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(HLB:14.9)、モノステアリン酸POE(6)ソルビタン(HLB:9.5)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(HLB:15)、モノオレイン酸POE(6)ソルビタン(HLB:10)、トリオレイン酸POE(20)ソルビタン(HLB:11)、モノラウリン酸POE(6)ソルビット(HLB:15.5)、テトラステアリン酸POE(60)ソルビット(HLB:13)、テトラオレイン酸POE(40)ソルビット(HLB:12.5)、POEラノリン(HLB:12)、POE(10)ラノリンアルコール(HLB:15.5)、POE(20)ラノリンアルコール(HLB:16)、POE(40)ラノリンアルコール(HLB:17)、POE(20)ソルビットミツロウ(HLB:9.5)、POE(30)硬化ヒマシ油(HLB:11)、POE(40)硬化ヒマシ油(HLB:12.5)、POE(50)硬化ヒマシ油(HLB:13.5)、POE(60)硬化ヒマシ油(HLB:14)、POE(100)硬化ヒマシ油(HLB:14)、POE(10)フィトステロール(HLB:12.5)、POE(20)フィトステロール(HLB:15.5)、POE(30)フィトステロール(HLB:18)、POE(25)フィトスタノール(HLB:14.5)、POE(30)コレスタノール(HLB:17)、POE(2)ラウリルエーテル(HLB:9.5)、POE(9)ラウリルエーテル(HLB:14.5)、POE(21)ラウリルエーテル(HLB:12.5)、POE(10)セチルエーテル(HLB:13.5)、POE(20)セチルエーテル(HLB:17)、POE(30)セチルエーテル(HLB:19.5)、POE(4)ステアリルエーテル(HLB:9)、POE(20)ステアリルエーテル(HLB:18)、POE(7)オレイルエーテル(HLB:10.5)、POE(10)オレイルエーテル(HLB:14.5)、POE(20)オレイルエーテル(HLB:17)、POE(50)オレイルエーテル(HLB:18)、POE(10)ベヘニルエーテル(HLB:10)、POE(20)ベヘニルエーテル(HLB:16.5)、POE(30)ベヘニルエーテル(HLB:18)、POE(1)POP(4)セチルエーテル(HLB:9.5)、POE(10)POP(4)セチルエーテル(HLB:10.5)、POE(20)POP(4)セチルエーテル(HLB:16.5)、POE(1)POP(8)セチルエーテル(HLB:9.5)、POE(20)POP(8)セチルエーテル(HLB:12.5)、POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル(HLB:11)、POE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテル(HLB:12)、モノラウリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)(HLB:12.5)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)(HLB:11)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)(HLB:15)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)(HLB:17.5)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)(HLB:18)、モノオレイン酸ポリエチレングリコール(10E.O.)(HLB:11)、ジステアリン酸ポリエチレングリコール(HLB:16.5)、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール(HLB:9.5)等があげられるが、より好ましくはPOE(40)硬化ヒマシ油(HLB:12.5)、POE(50)硬化ヒマシ油(HLB:13.5)、POE(60)硬化ヒマシ油(HLB:14)であり、保存安定性に優れる乳化型化粧料を得ることができる。
【0023】
本発明の成分(C)の含有量は、乳化化粧料全体に含有する油の量により適宜選ばれるが、0.01〜20%が好ましく、0.1〜10%がより好ましい。この範囲であれば、保存安定性に優れた乳化型化粧料を得ることができる
【0024】
本発明に用いられる成分(B)以外の油として、通常の化粧料に使用されるものであれば、特に限定されず、固形、ペースト、液状のいずれの形状であっても使用することができる。例えば、液状の油剤としては、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、キョウニン油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、大豆油、トウモロコシ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、綿実油、ヤシ油、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、アジピン酸2−ヘキシルデシル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸グリセライド、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセライド、モノステアリン酸グリセライド、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、エチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、エチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヒマシ油等が挙げられ、例えばペースト油としては、カカオ脂、シアバター、硬化ヒマシ油、硬化ヤシ油、ラノリン、ワセリン、モノステアリン酸硬化ヒマシ油、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリトリット12−ヒドロキシステアリン酸エステル、ジペンタエリトリットステアリン酸エステル、ジペンタエリトリットロジンエステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、マカデマナッツ油脂肪酸フィトステリル等が挙げられ、例えば固形油としては、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ミツロウ、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ステアリン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、パルミチン酸セチル、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、トリベヘン酸グリセリル、ステアリル変性ポリシロキサン等が挙げられ、イソステアリン酸がカイネチンの45倍以上を含有していれば、これら任意の油剤を含有しても本発明の効果を損なうことはない。
【0025】
本発明に用いられる成分(C)以外にも通常の化粧料に使用される界面活性剤を用いることは可能であり、またこれらは特に限定されず、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることが出来る。
【0026】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩およびモノアルキルリン酸塩等があり、塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム等がある。
【0027】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、HLBが9未満のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアルカノールアミドおよびアルキルポリグルコシド等がある。
【0028】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムおよび塩化ベンザルコニウム塩等がある。
【0029】
両性界面活性剤としては、例えば、レシチン、ホスフアチジルエタノールアミン、ホスフアチジン酸、ホスフアチジルイノシトール、ホスフアチジルセリン、ホスフアチジルコリン、ホスフアチジルグリセロール、スフインゴミエリン、カルジオリピン、水素添加リン脂質、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイドおよびアルキルアミドプロピルベタイン等がある。
【0030】
本発明の乳化型化粧料には、本発明の効果を妨げない範囲で通常の化粧料に含有される任意成分、すなわち、乳化助剤、アルコール類、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、樹脂、保湿剤、美泊剤、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤等を含有することができる。
【0031】
本発明の乳化型化粧料は、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤等、種々の剤型で提供することができる。また、化粧水、乳液、クリーム、美容液、パック等の皮膚化粧料、メイクアップベースローション、メイクアップベースクリーム等の下地化粧料、乳液状のファンデーション、アイカラー等のメイクアップ化粧料、クレンジングクリーム、クレンジングローション、クレンジングフォーム、ボディシャンプー等の皮膚洗浄料、ヘアーシャンプー、ヘアーリンス、ヘアートリートメント等の毛髪用化粧料等としても提供することができる。またその使用法は、手や指で使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。さらにこれらは水中油型乳化化粧料、油中水型乳化化粧料、水中油中水型乳化化粧料、油中水中油型乳化化粧料等で提供することができる。
【0032】
本発明の乳化型化粧料は、ホモミキサー、ディスパーミキサーなどを用いて分散乳化、転相乳化、ゲル乳化、液晶乳化、D相乳化、PIT乳化などの一般に知られた手法にて調製可能である。
【実施例1】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0034】
〔カイネチンの油剤への溶解性試験〕:溶解試験品1〜14
はじめにカイネチンの各種油剤に対しての溶解性を検討した。試験方法としては、カイネチン1gをガラスビーカーに採取し、表1及び表2の各種油剤を添加し、70℃恒温下にてマグネチックスターラーを用いて15分間混合攪拌したものを試料とした。溶解性の確認については、70℃で15分間混合攪拌したものを(1)目視確認、(2)偏光顕微鏡(オリンパス社製:BX70)を用いて、結晶の有無の指標とし、溶解性の評価を以下の基準より行った。なお、偏光顕微鏡観察は、加温プレートをセットし、70℃恒温下にて観察を行った。結果をあわせて表1及び表2に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
(溶解性評価基準) :(判定)
均一に溶解しており、偏光顕微鏡でも結晶は観察されない : ◎
偏光顕微鏡にて結晶がわずかに観察される(目視では観察されない) : ○
目視で結晶が観察される : ×
【0038】
表1及び表2の結果、溶解試験品2〜4、14から成分(A)は成分(A)の45倍質量以上の成分(B)を含有する場合において溶解した。また溶解試験品5〜9から成分(B)以外の油においては、成分(A)は溶解することができず、溶解試験品10〜14から成分(B)と成分(B)以外の油を含有させた場合や、成分(B)が成分(A)の45倍質量以上でない溶解試験品1の場合は、成分(A)は溶解しないことが明らかとなった。
【0039】
本発明品1〜12及び比較品1〜3:化粧水
前記試験例にて評価した試験結果に基づき本発明の乳化型化粧料である化粧水をつくり評価した。表3及び表4に示す組成および下記製法にて化粧水を調製した。化粧水の(1)保存安定性としては、室温にて、1ヶ月放置し、カイネチンの析出について目視および偏光顕微鏡による観察を行うことにより評価を行い結果を併せて表3及び表4に示した。
【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
(製造方法)
A:成分(1)〜(12)を70℃に加熱する。
B:成分(13)〜(15)を70℃で加熱溶解する。
C:BにAを添加し、ディスパーミキサーにて混合攪拌する
D:Cを室温まで冷却し、化粧水を得た。
【0043】
(評価方法:保存安定性)
各試料を30℃恒温下にて、1ヶ月間放置し、カイネチンの溶解性について目視および偏光顕微鏡下で観察し、下記の3段階絶対判定基準で判定した。
【0044】
3段階絶対判定基準
(変化の度合い) :(判定)
変化なし : ◎
偏光顕微鏡下で結晶がわずかに観察される(目視では観察できない) : ○
結晶が目視でも観察される(偏光顕微鏡でも観察できる) : ×
【0045】
表3、表4の結果から明らかなように、本発明品1〜12の化粧水は、保存安定性に優れるものであった。それに対して、成分(b)/成分(a)が45未満である比較品1、比較品2、比較品3ではいずれの場合においても、カイネチンが溶解せず析出が見られ保存安定性が損なわれたものであった。
【実施例2】
【0046】
美容液(水中油型乳化化粧料)
(成分) (%)
1.カイネチン 0.05
2.イソステアリン酸 3.0
3.ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油 1.0
4.オレイン酸エチル 0.1
5.トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.3
6.香料 0.02
7.ジプロピレングリコール 10.0
8.グリセリン 5.0
9.防腐剤 適量
10.精製水 残量
11.キサンタンガム 0.02
12.エタノール 5.0
【0047】
(製造方法)
A:成分1〜6を80℃で溶解混合する。
B:成分7〜11を80℃に加熱し、Aに添加し乳化する。
C:Bを冷却後に成分12を添加し混合し美容液を得た。
【0048】
実施例2の美容液は、保存安定性に優れるものであった。
【実施例3】
【0049】
乳液(水中油型乳化化粧料)
(成分) (%)
1.カイネチン 0.07
2.イソステアリン酸 4.0
3.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 2.0
4.リノール酸トコフェロール 1.0
5.流動パラフィン 3.0
6.マカデミアナッツ油 2.0
7.1,2−ペンタンジオール 2.0
8.グリセリン 5.0
9.アクリル酸−メタクリル酸アルキル共重合体(注1) 0.2
10.防腐剤 適量
11.トリエタノールアミン 0.2
12.エデト酸二ナトリウム 0.02
13.精製水 残量
14.香料 適量
(注1)ペミュレンTR−1(NOVEON社製)
【0050】
(製造方法)
A:成分1〜6を70℃にて加熱溶解する。
B:成分7〜13を70℃にて加熱後、Aに添加し乳化する。
C:Bを室温まで冷却後する。
D:Cに成分14を添加し、乳液を得た。
【0051】
実施例3の乳液は、保存安定性に優れるものであった。
【実施例4】
【0052】
乳液(油中水中油型乳化化粧料)
(成分) (%)
1.水素添加大豆リン脂質 4.0
2.グリセリン 7.0
3.1,3−ブチレングリコール 10.0
4.イソステアリン酸 3.0
5.コレステロール 1.0
6.カイネチン 0.05
7.精製水 残量
8.エタノール 5.0
9.メチルパラベン 0.3
10.塩化ナトリウム 1.0
11.PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン 4.0
12.デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0
13.ジメチルポリシロキサン 5.0
14.香料 適量
【0053】
(製造方法)
A:成分1〜6を均一に混合する。(70℃ )
B:成分7〜10を均一に混合する。(70℃ )
C:AにBを添加し乳化する。(水中油型乳化組成物を得る)
D:Cを室温まで冷却する。
E:Dに成分11〜14を均一に混合する。
F:EにDを分散する。
G:Fを容器に充填して乳液を得た。(油中水中油型乳化化粧料)
【0054】
実施例4の乳液は保存安定性に優れるものであった。
【実施例5】
【0055】
アイクリーム(水中油型乳化化粧料)
(成分) (%)
1.カイネチン 0.1
2.イソステアリン酸 5.0
3.リン脂質 2.0
4.オレイン酸エチル 2.0
5.2−エチルヘキサン酸セチル 10.0
6.ヒドロキシステアリン酸コレステロール 1.5
7.ジメチルポリシロキサン 0.5
8.セタノール 5.0
9.プロピレングリコール 10.0
10.グリセリン 15.0
11.ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
12.防腐剤 適量
13.N−ステアロイル−L−グルタミン酸ナトリウム 0.5
14.精製水 残量
15.香料 0.1
【0056】
(製造方法)
A:成分1〜8を80℃で加熱溶解する。
B:成分9〜14を80℃で加熱溶解する。
C:BにAを添加し乳化する。
D:Cを冷却して、成分15を添加しアイクリームを得た。
【0057】
実施例5のアイクリームは、保存安定性に優れるものであった。
【実施例6】
【0058】
シート状化粧料(水中油型乳化化粧料を不織布含浸)
(成分) (%)
1.カイネチン 0.08
2.イソステアリン酸 5.0
3.コレステロール 0.5
4.モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.5
5.ビタミンE 1.0
6.セスキオレイン酸ソルビタン 2.0
7.α−オレフィンオリゴマー 2.0
8.香料 0.05
9.ジグリセリン 5.0
10.ジプロピレングリコール 10.0
11.1,2−ペンタンジオール 1.0
12.精製水 残量
13.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
14.エタノール 5.0
15.アスコルビン酸グルコシド 3.0
16.ピロリドンカルボン酸ナトリウム 2.0
17.ヒアルロン酸ナトリウム 0.2
18.水酸化ナトリウム 0.13
【0059】
(製法)
A:成分1〜8を80℃で加熱溶解する。
B:成分9〜12を80℃に加熱し、Aを添加し、乳化する。
C:Bを冷却後、成分13〜18を添加し、これを不織布に含浸させる。
D:Cをアルミラミネートの袋状容器に密封充填し、シート状化粧料を得た。
【0060】
実施例6のシート状化粧料は、保存安定性に優れるものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、次に示す成分(A)、(B);
(A)カイネチン
(B)イソステアリン酸
を含有し、成分(A)と成分(B)の含有質量比(B)/(A)が45以上であることを特徴とする乳化型化粧料。
【請求項2】
成分(A)の含有量が0.001〜0.1質量%であることを特徴とする請求項1記載の乳化型化粧料。
【請求項3】
成分(B)の含有量が0.045〜5質量%あることを特徴とする請求項1または2記載の乳化型化粧料。
【請求項4】
予め成分(A)を成分(B)に加温溶解させて含有させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項記載の乳化型化粧料。
【請求項5】
さらに成分(C)としてHLB9以上の親水性ノニオン界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項記載の乳化型化粧料。

【公開番号】特開2009−263346(P2009−263346A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75245(P2009−75245)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】