説明

カウルカバー構造

【課題】 従来では、衝撃吸収時、突出部が底開き変形するので、カウルカバーが車両前後に伸張するが、突出部の底開き変形が抑制され、衝撃吸収特性が悪化する場合があり、カウルカバーの隣接部品とは常時一定のクリアランスを設定する必要があるが、このクリアランスは衝撃吸収時以外は、無駄なスペースになってしまう。
【解決手段】 自動車のフロントウインドパネルの下端部と、ボンネットの後端部と、ダッシュパネルの上端部との間に配置されてなるカウルカバー1であって、カウルカバー1は、ボンネットの後端部をシール材を介して支持するシール乗せ部2と、シール乗せ部2の下側に形成される縦壁部12と、ダッシュパネルの上端部に支持されるパネル乗せ部3とより形成されており、縦壁部12の車幅方向外方部に弱部10が形成されているカウルカバー構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用カウル構造、特にフロントウインドパネルの下端部と、ボンネットと、ダッシュパネルとの間に跨って配置される自動車用カウルカバー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に乗用車等の車両には、動力用エンジンが搭載されたエンジン室が車体前部に設置されていて、このエンジン室は、左右側面がフェンダパネルにより、また上面開口部が開閉自在なフードにより覆われた構造となっており、エンジン室の後部上方のカウルトップパネルには、外気を導入するための吸気口を有するカウルトップカバーが設けられている。
従来技術としては、車室内に外気を導入する吸気口が開口された前壁と、前記前壁に連設された後壁とにより車幅方向に延在突出する突出部を形成し、且つ、前記突出部の端部開口を端板により閉塞することによりカウルトップカバー本体を構成する車両用カウルトップカバーであって、前記突出部の端部開口と前記端板との間に分離状態部を設けて、前記突出部を底開き変形可能に構成したことを特徴とする車両用カウルトップカバー(例えば、特許文献1参照)が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−152991号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び図1〜図11を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術である特許文献1は、車体形成への追従性を持たせ、且つエネルギー吸収構造とするカウルトップカバーであって、車室内に外気を導入する吸気口9が開口された前壁8bと、前壁8bに連設された後壁8cとによりほぼ山形に形成された突出部8aが車幅方向に突設されたカウルトップカバー本体8を、エンジン室2の後部上方に設置した場合、突出部8aの両端部開口8eと端板10との連設部10dにスリット状の隙間による分離状態部10cを設けることによって、突出部8aを底開き変形可能にする構成としている。
しかしながら、前記従来技術では、カウルトップの基本断面が側面視において、く字状(山形)に形成されている。
そのため、衝撃吸収時は、突出部8aが底開き変形するので、結果としてカウルトップカバー自体が車両前後に伸張することになる。近年の車両のエンジン収納室は、乗員搭乗スペースを拡大するため、隣接部品とのクリアランスが小さい部位が存在している。すると、前記突出部8aの底開き変形が抑制され、衝撃吸収特性が悪化する場合があるので、カウルトップカバーの隣接部品とは常時一定のクリアランスを設定する必要がある。しかし、このクリアランスは衝撃吸収時以外は、無駄なスペースになってしまう。
また、上記従来技術では、軟質別体部品を形成しているため、コストアップにつながっている。
そこで、本発明は、上記の課題である無駄なスペースの削減とコストダウンにつながるカウルカバー構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決することができる本発明の第1発明は、請求項1に記載された通りのカウルカバー構造であり、次のようなものである。
自動車のフロントウインドパネルの下端部と、ボンネットの後端部と、ダッシュパネルの上端部との間に配置されてなるカウルカバーであって、前記カウルカバーは、少なくとも、前記ボンネットの後端部をシール材を介して支持するシール乗せ部と、該シール乗せ部の下側に形成される縦壁部と、前記ダッシュパネルの上端部に支持されるパネル乗せ部とより形成されており、前記縦壁部の車幅方向外方部に弱部が形成されている構成である。
【0006】
上記の課題を解決することができる本発明の第2発明は、請求項2に記載された通りのカウルカバー構造であり、次のようなものである。
請求項1に記載の発明に加えて、該シール乗せ部の後端部を始点として形成される縦壁部と、前記ダッシュパネルの上端部に支持されるパネル乗せ部とより形成されており、前記縦壁部は、前記シール乗せ部の後端部を始点として垂線を基準に後部側に所定角度になるように形成されている第1斜面部と、該第1斜面部の前側に折り曲げ形成される第2斜面部により構成されている構成である。
【0007】
上記の課題を解決することができる本発明の第3発明は、請求項3に記載された通りのカウルカバー構造であり、次のようなものである。
請求項1、または請求項2に記載の発明に加えて、前記弱部は、前記シール乗せ部から延設した凹面に亘って形成された弱部によって構成されている構成である。
【0008】
上記の課題を解決することができる本発明の第4発明は、請求項4に記載された通りのカウルカバー構造であり、次のようなものである。
請求項1、または請求項2に記載の発明に加えて、前記弱部は、前記シール乗せ部から延設した凹面に形成された開口部によって構成されている構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るカウルカバー構造は、上記説明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
(1)車体フードに衝撃が作用したとき、第1斜面部の前側に折り曲げ形成されてなる第2斜面部及び弱部は、カウルカバーの前後方向の寸法内で屈曲及び圧壊するので、無駄なスペースを設定することなく、衝撃に対する過大な反力の発生を防止することができる。
(2)部品点数の削減ができ、原価・重量の低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のカウルカバー構造の一実施例を示す部分斜視図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】本発明のカウルカバー構造の一実施例を示す部分斜視図である。
【図5】従来のカウルカバー構造の斜視図である。
【図6】本発明のカウルカバー構造の他の実施例を示す部分斜視図である。
【図7】本発明のカウルカバー構造の他の実施例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
自動車のフロントウインドパネルの下端部と、ボンネットの後端部と、ダッシュパネルの上端部との間に配置されてなるカウルカバーであって、前記カウルカバーは、少なくとも、前記ボンネットの後端部をシール材を介して支持するシール乗せ部と、該シール乗せ部の後端部を始点として形成される縦壁部と、前記ダッシュパネルの上端部に支持されるパネル乗せ部とより形成されており、前記縦壁部は、前記シール乗せ部の後端部を始点とした垂線を基準に後部側に所定角度になるように形成されている第1斜面部と、該第1斜面部の前側に折り曲げ形成される第2斜面部により構成され、且つ、前記縦壁部の車幅方向外方部に弱部が形成されているカウルカバー構造である。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の一実施例を添付図面で詳細に説明する。
図1は本発明のカウルカバー構造の一実施例を示す部分斜視図であり、カウルカバー1にはシール乗せ部2とパネル乗せ部3の間に第1斜面部4と第2斜面部5があり、車両後方側に向かって、略くの字状を形成している。
このくの字の折れ部6には、裏側に肉抜き部7が設けられており、車体への上部からの衝撃等による荷重に対して前記肉抜き部7が弱部となり、第1斜面部4と第2斜面部5が肉抜き部7を中心に折れ曲がり、衝撃を吸収する。(図2参照)
また、カウルカバー1の両サイドには、凹面8が形成されており、フードヒンジ24から幅方向でクリアランスを設けた位置に、もどし面9が形成されている。前記第1斜面部4と第2斜面部5は、この戻し面9まで設けられている。(図1、図4参照)
また、凹面8の高さは、折れ部6とほぼ同じ高さ、若しくは低く設定されている。
【0013】
さらに、図1、図2からも理解できるように、第1斜面部4と第2斜面部5とにより構成される縦壁部12の車両後方側に弱部であるスリット10を設けている。
このことにより、車体への上部からの衝撃によって、シール乗せ部2と第1斜面部4が、より変形し(割れ)、易くなり、衝撃を効率よく吸収することができる。
なお、凹面8を設けることによって、肉抜き部7とスリット10の距離bを短くすることができ、弱部同士が近づくことによって、衝撃が加わった際に肉抜き部7とスリット10がきっかけとなり、変形し易くなるものである。図面上に示されている20は車体パネル、21はフードシールである。
【0014】
図3は、図1のB−B線断面図を示したものである。
カウルカバー1の両サイドは、フード22にフードヒンジ24が取り付けられることもあり、剛性が高い。
そのため、車体上部からの衝撃の吸収力が他の部分に比べて弱くなってしまう。
そこで、本発明では、凹面8を設けることによって、フード22と凹面8の距離を長くすることによって、フード22が車体上部からの荷重に対してフード22が撓むストローク距離aを大きくして、衝撃を吸収できるように凹面8を設けた。
また、必要に応じて、エンジンルームとの臭気等を遮断するシール材11をカウルカバー1とフードヒンジ24との間に設けることも可能である(図3、図4参照)。
【0015】
ここで、本発明のカウルカバー構造と、従来のカウルカバー構造を比較してみると、図5の従来のカウルカバー構造を示した斜視図でも理解できるように、従来のカウルカバー1´では、端末部12´が壁で覆われている。また、端末は斜面のくの字が十分な角度で設定されていないため、車体の上からの荷重に対して、本発明に比べて十分に衝撃を吸収することができない。
【0016】
次に、図6、図7に基づいて本発明のカウルカバー構造の他の実施例について説明する。
図6は、上記実施例では、弱部としてスリット10を採用していたが、スリット10の代わりに蓋13構造にした例を示したもので、本体に穴部14を開けることでスリット10の代用することもでき、ストラットボルトの作業確認等、他の作業を行う上でも有効である。
図7は、縦壁部12を形成している第1斜面部4と第2斜面部5をくの字にはせず、肉抜き部7のような弱部のみを設けた例を示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0017】
全ての種類の車両のカウルカバー構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1・・・・カウルカバー
2・・・・シール乗せ部
3・・・・パネル乗せ部
4・・・・第1斜面部
5・・・・第2斜面部
6・・・・折れ部
7・・・・肉抜き部
8・・・・凹面
9・・・・もどし面
10・・・・スリット
11・・・・シール材
12・・・・縦壁部
13・・・・蓋
14・・・・穴部
20・・・・車体パネル
21・・・・フードシール
22・・・・フード
23・・・・フロントガラス
24・・・・フードヒンジ
a・・・・ストローク距離
b・・・・距離
1´・・・・カウルカバー
12´・・・・縦壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントウインドパネルの下端部と、ボンネットの後端部と、ダッシュパネルの上端部との間に配置されてなるカウルカバーであって、前記カウルカバーは、少なくとも、前記ボンネットの後端部をシール材を介して支持するシール乗せ部と、該シール乗せ部の下側に形成される縦壁部と、前記ダッシュパネルの上端部に支持されるパネル乗せ部とより形成されており、前記縦壁部の車幅方向外方部に弱部が形成されていることを特徴とするカウルカバー構造。
【請求項2】
該シール乗せ部の後端部を始点として形成される縦壁部と、前記ダッシュパネルの上端部に支持されるパネル乗せ部とより形成されており、前記縦壁部は、前記シール乗せ部の後端部を始点として垂線を基準に後部側に所定角度になるように形成されている第1斜面部と、該第1斜面部の前側に折り曲げ形成される第2斜面部により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカウルカバー構造。
【請求項3】
前記弱部は、前記シール乗せ部から延設した凹面に亘って形成された弱部によって構成されていることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のカウルカバー構造。
【請求項4】
前記弱部は、前記シール乗せ部から延設した凹面に形成された開口部によって構成されていることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載のカウルカバー構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−66687(P2012−66687A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212880(P2010−212880)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】