カウルトップカバーの取付構造
【課題】カウルトップカバーをクリップ部材に係合させるときに、クリップ部材とフロントガラスとの固定状態が外れるのを防止でき、フロントガラスの表面とカウルトップカバーの表面とを面一に配することができるカウルトップカバーの取付構造を提供する。
【解決手段】クリップ部材20の凸部21をフロントガラス下端2cの端面2eに当接させ、フロントガラス2の裏面2bに接着剤17を介して、クリップ部材20を固定する。カウルトップカバー10の舌片12に形成した係合部13を、クリップ部材20の被係合部22に係合させて、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2aとが面一に配された状態でカウルトップカバー10を取り付ける。そして、係合方向としては、フロントガラスの下端から上端に向かう長さ方向に沿った係合方向になる。
【解決手段】クリップ部材20の凸部21をフロントガラス下端2cの端面2eに当接させ、フロントガラス2の裏面2bに接着剤17を介して、クリップ部材20を固定する。カウルトップカバー10の舌片12に形成した係合部13を、クリップ部材20の被係合部22に係合させて、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2aとが面一に配された状態でカウルトップカバー10を取り付ける。そして、係合方向としては、フロントガラスの下端から上端に向かう長さ方向に沿った係合方向になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントガラスとボンネットとの間に配されるカウルトップカバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カウルトップカバーの取付構造としては、カウルトップカバーの後端部に形成したクリップ部材でフロントガラスの下端部を挟み込んで支持する取付構造が数多く採用されている。この種の取付構造では、フロントガラスの下端部をクリップによって上下方向から挟み込む構成になるので、必然的にフロントガラスの下端部とカウルトップカバーとの境界部がクリップ部材の板厚によって膨らんだ構成になる。
【0003】
そこで、フロントガラスの下端部とカウルトップカバーとの境界部における膨らみをなくし、フロントガラスの下端部とカウルトップカバーの後端部との間で、両者の表面を面一にした構成が、車両用カウルルーバ構造(特許文献1参照。)として提案されている。このように面一な配置構成をすることにより、フロントガラスとカウルトップカバーとの境界部における見栄えを向上させることができる。
【0004】
特許文献1に記載された車両用カウルルーバ構造を、本願発明における従来例として、図17には、カウルルーバ本体とウインドシールドガラスとの要部断面図を示している。図17に示すように、カウルルーバ本体50の後端部50a側には、リップ部材52が取付けられており、リップ部材52を介してカウルルーバ本体50はウインドシールドガラス51の下端側の端面に当接している。
【0005】
ウインドシールドガラス51の裏面には、フック形状の嵌合突起54を備えたクリップ53が両面テープを介して固定されている。嵌合突起54は、車両の上方向側に解放された形状に構成されており、カウルルーバ本体50の裏面から下方に立設した爪部55は、カウルルーバ本体50をクリップ53に対して上から下に向かって移動させることで、嵌合させることができる。即ち、カウルルーバ本体50を、ウインドシールドガラス51の面に対して直交する方向に移動させることになる。
【0006】
カウルルーバ本体50の爪部55をクリップ53の嵌合突起54に嵌合させた状態において、ウインドシールドガラス51の表面、リップ部材52の表面及びカウルルーバ本体50の表面を面一に配しておくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−264868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献に記載された発明では、ウインドシールドガラス51の面に対して直交する方向、即ち、上から下に向かった方向にカウルルーバ本体50を移動させることで、爪部55をクリップ53の嵌合突起54に嵌合させることができる。そのため、爪部55を嵌合突起54に押し込んで嵌合させるときには、クリップ53を固定しているウインドシールドガラス51の裏面に対して曲げ応力が作用することになる。
【0009】
ウインドシールドガラス51に作用する曲げ応力の影響によって、ウインドシールドガラ
ス51に亀裂が生じたり割れを生じたりする危険性があるので、ウインドシールドガラス51の板厚を厚く設定する必要がある。また、爪部55を嵌合突起54に押し込むときの押圧力によって、クリップ53にはウインドシールドガラス51に対して回転する方向の力が作用する。この回転力がクリップ53とウインドシールドガラス51との接合面に作用することになり、接合面に配されている両面テープを剥がしてしまう危険性があるので、粘着力が強力な接着剤を使用する必要がある。
【0010】
本願発明では、フロントガラスの表面とカウルトップカバーの表面とを面一に配することができ、また、フロントガラスに亀裂や割れを発生させることなくカウルトップカバーをフロントガラスに固定したクリップ部材に係合させることができ、しかも、カウルトップカバーをクリップ部材に係合させるときに、特別な補強をすることなくクリップ部材とフロントガラスとの固定状態が外れるのを防止できるカウルトップカバーの取付構造の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる本願発明の課題は、請求項1〜7に記載したカウルトップカバーの取付構造により達成することができる。
即ち、本願発明のカウルトップカバーの取付構造では、車体前部に配されたフロントガラスの下端部に当接し、車両のフロントコンパートメントの上部開口を覆うボンネットの後端部と前記フロントガラスの下端部との間を覆い、車幅方向に亘って延設されたカウルトップカバーにおいて、
前記カウルトップカバーと前記フロントガラスとの間に配され、前記フロントガラスの下端部側の裏面に固着されるクリップ部材と、
前記カウルトップカバーに形成された係合部と、
前記クリップ部材に形成され、前記係合部を係合させる被係合部と、を備え、
前記係合部は、前記フロントガラスの下端から上端に向かう長さ方向に沿った係合方向で、前記被係合部に係合し、前記係合部を前記被係合部に係合させたとき、前記カウルトップカバーの表面と前記フロントガラスの表面とが面一に配されていることを最も主要な特徴としている。
【0012】
また、本願発明では、前記クリップ部材は、前記フロントガラスの下端側の裏面に当接して固定される固定面と、前記固定面から上方に立設され、前記フロントガラス下端の端面に当接する凸部と、を有していることを主要な特徴としている。
【0013】
更に、本発明では、前記カウルトップカバーは、前記カウルトップカバーの裏面に形成され、車両の前後方向における断面形状が略L字状の形状を有し、前記L字状の自由端が前記フロントガラス側に向けて形成された舌片部を備え、前記舌片部に前記係合部が形成されていることを主要な特徴としている。
【0014】
更にまた、本願発明では、前記カウルトップカバーと前記フロントガラス下端の端面との間に、前記カウルトップカバーと前記フロントガラス下端の端面との間の隙間を埋める軟質部材が配設され、前記係合部と前記被係合部との係合時に、前記軟質部材の表面と前記カウルトップカバーの表面とフロントガラスの表面との間が面一に配されていることを主要な特徴としている。
また、本願発明では、前記軟質部材が、前記カウルトップカバーに取り付けられていることを主要な特徴としている。
【0015】
更に、本願発明では、前記凸部が、前記カウルトップカバーと前記フロントガラス下端の端面との間の隙間を埋める配置構成に形成され、前記カウルトップカバーと前記凸部との間で互いに対向して当接する当接面が、車両の前後方向に沿って傾斜した傾斜面を有す
る形状に形成され、
前記係合部と前記被係合部との係合時に、前記凸部の表面と前記カウルトップカバーの表面とフロントガラスの表面との間が面一に配されていることを主要な特徴としている。
更にまた、本願発明では、前記クリップ部材と前記カウルトップカバーとの間が、シールされていることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本願発明では、フロントガラスの下端部側の裏面に固着したクリップ部材の被係合部に、カウルトップカバーに形成した係合部を係合させるとき、係合方向が、フロントガラスの下端から上端に向かう長さ方向に沿った係合方向となるように構成している。
【0017】
このように構成することによって、カウルトップカバーをフロントガラスに固定したクリップ部材に係合させるときに、カウルトップカバーはフロントガラスの長さ方向に沿った方向に移動しながら係合されることになり、係合時にフロントガラスに対して曲げ応力を作用させない。
【0018】
このため、クリップ部材がフロントガラスとの固定状態から外れてしまう問題や、フロントガラスに亀裂が生じたり割れが生じたりする問題が生じない。そして、カウルトップカバーの取り付け作業を迅速にしかも短時間で行うことができる。また、カウルトップカバーとクリップ部材との係合方向が、フロントガラスの長さ方向に沿った係合方向であるので、車体パネルを補強材として構成しておかなくても、カウルトップカバーをクリップ部材に係合させることができる。
【0019】
このように、カウルトップカバーの係合時にフロントガラスに対する悪影響が生じないので、取付作業中にフロントガラスに欠損等を生じさせることがなく、新たなフロントガラスに交換することもなくなり、作業効率が高まると共にコストの削減にも貢献することができる。
【0020】
また、カウルトップカバーをクリップ部材に係合させたとき、フロントガラスの表面とカウルトップカバーの表面とを面一に構成することができるので、フロントガラスとカウルトップカバーとの境界部における外観上の見栄えを向上させることができる。
【0021】
本願発明では、クリップ部材の構成として、フロントガラスの下端側の裏面に当接して固定される固定面から上方に立設された凸部を、フロントガラス下端の端面に当接させた構成にしておくことができる。フロントガラスに固定したクリップ部材にカウルトップカバーを係合させるときには、クリップ部材とフロントガラスとの間にはせん断力が作用することになるが、フロントガラス下端の端面に凸部が当接した構成になっているので、せん断力がクリップ部材とフロントガラスとの固着部に作用するのを防止できる。これにより、クリップ部材とフロントガラスとの固定状態を強固に維持しておくことができる。
【0022】
本願発明では、カウルトップカバーの裏面に形成した略L字状の断面形状を有する舌片部に、クリップ部材の被係合部と係合する係合部を形成しておくことができる。このように構成することにより、カウルトップカバーをクリップ部材に係合させるときには、断面形状が略L字状の舌片部によって生じる弾性変形力を係合時の係合力として利用することができる。また、被係合部を略L字状の舌片によって挟み込むように係合させることができるので、係合状態を強固に維持することができる。
【0023】
本願発明では、軟質部材を用いてカウルトップカバーとフロントガラス下端の端面との間を埋めた構成にすることができる。しかも、カウルトップカバーの係合部をクリップ部材の被係合部に係合させたときに、軟質部材の表面とカウルトップカバーの表面とフロン
トガラスの表面との間が面一に配されるように構成しておくことができる。
【0024】
このように構成することにより、軟質部材によってカウルトップカバーとフロントガラスとの間に隙間が生じるのを防止でき、しかも、カウルトップカバーとフロントガラスとの当たりを柔らかくすることができる。また、軟質部材の表面とカウルトップカバーの表面とフロントガラスの表面との間を面一に構成することができるので、フロントガラスとカウルトップカバーとの境界部における外観上の見栄えを向上させることができる。
【0025】
また、軟質部材としては、カウルトップカバーに取り付けた構成にしておくことも、クリップ部材の凸部に取り付けた構成やフロントガラス下端の端面に予め取り付けた構成にしておくことができる。予めカウルトップカバーに軟質部材を取り付けた構成にしておくことにより、カウルトップカバーをクリップ部材に係合させるときに軟質部材の位置合わせを行わなくてすみ、カウルトップカバーの取り付け作業を容易に行うことができる。
【0026】
本願発明では、クリップ部材の凸部を用いて、カウルトップカバーとフロントガラス下端の端面との間の隙間を埋める配置構成に形成しておくことができる。そして、カウルトップカバーと凸部との間で互いに対向して当接する当接面の形状として、車両の前後方向に沿って傾斜した傾斜面を有した形状に形成しておくことができる。
【0027】
このように構成することで、カウルトップカバーと凸部とは傾斜面で互いに当接することになる。そのため、カウルトップカバーやクリップ部材の加工誤差等の原因によって、カウルトップカバーと凸部との間に隙間が形成されたとしても、カウルトップカバーと凸部の上方から隙間は、斜めに傾斜した隙間になる。そして、隙間を通して可視できる奥行きは浅くなり、カウルトップカバーと凸部との境界部における見栄えの低下を抑えることができる。
【0028】
また、凸部の表面とカウルトップカバーの表面とフロントガラスの表面との間を面一に構成することができるので、フロントガラスとカウルトップカバーとの境界部における見栄えを向上させることができる。
【0029】
本願発明では、クリップ部材とカウルトップカバーとの間をシールしておくことができる。このように構成することにより、隙間の発生やフロントコンパートメント内などで発生した異音が外部に漏出するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】車両の前面側を示す斜視図である。(実施例)
【図2】図1のII−II断面図である。(実施例1)
【図3】カウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例1)
【図4】カウルトップカバーの要部斜視図である。(実施例1)
【図5】別のカウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例2)
【図6】他のカウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例2)
【図7】軟質部材を用いたカウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例2)
【図8】カウルトップカバーを用いた図1のVIII−VIII断面図である。(実施例3)
【図9】カウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例3)
【図10】カウルトップカバーの要部斜視図である。(実施例3)
【図11】別のカウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例4)
【図12】他のカウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例4)
【図13】軟質部材を用いたカウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例4)
【図14】凸部でカウルトップカバーとフロントガラスとの間を埋めた要部断面図である。(実施例5)
【図15】凸部でカウルトップカバーとフロントガラスとの間を埋めた他の要部断面図である。(実施例5)
【図16】凸部でカウルトップカバーとフロントガラスとの間を埋めた別の要部断面図である。(実施例5)
【図17】カウルルーバ本体とウインドシールドガラスとの要部断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0031】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わるカウルトップカバーの取付構造としては、以下で説明する形状、構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、構成であれば、それらの形状、構成を採用することができるものである。このため、本願発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【0032】
本願発明では、車両の前進方向を前方側、前面側または前端側とし、後進方向を後方側、後面または後端側としている。また、車両の上下方向において、路面側を下方側または下端側あるいは裏面側とし、天井側を上方側または上端側あるいは表面側としている。
【実施例1】
【0033】
実施例1では、クリップ部材に形成した段差部をカウルトップカバーに係合する被係合部とした構成例について、図2〜図4を用いて説明する。最初に、図1を用いて車両1におけるカウルトップカバー10の配置構成について説明する。
【0034】
図1には、車両1を斜め前方から見た斜視図を示している。尚、ワイパー等の図示は、省略している。車両1の車室前方側には、フロントガラス2が配設されており、フロントガラス2は、フロントガラス2の下端2cから車体上方側である上端2dに向けてフロントガラス2の表面2aが車両後方側に傾斜した状態に配されている。そして、フロントガラス2の下端部とフロントコンパートメントの上部開口を覆うボンネット3の後端部3aとの間は、カウルトップカバー10によって覆われている。カウルトップカバー10は、車幅方向に亘って延設された配置構成になっている。
【0035】
図1のII−II断面である図2に示すように、カウルトップカバー10の前端側は、車体パネルに固定されたカウル本体5に取り付けられており、後端部10a側は、フロントガラス下端2cの裏面2bに固定したクリップ部材20に係合している。カウル本体5は、板金によって構成されており、フロントガラス2の下端側において車幅方向に沿って配設されている。
【0036】
カウル本体5の上端部は、フロントガラス2の下端側の裏面2bに固着した固定シール6を介して固定されている。カウル本体5には、図示を省略しているが、排水用の流路を形成する樋部や、空気導入用のダクト開口部が形成されている。
【0037】
ボンネット3を閉じた状態において、ボンネット3の裏面側は、カウルトップカバー10の前方側に設けたフードシール4に圧接している。そして、フードシール4によって、雨水等が、フロントコンパートメント内に浸入するのが防止されている。
【0038】
図2及び図2の要部拡大図である図3に示すように、フロントガラス2の下端側における裏面2bとクリップ部材20の固定面20aとの間には接着剤17が配されており、クリップ部材20は、接着剤17によってフロントガラス2の裏面2bに固定されている。クリップ部材20には固定面20aから上方に立設した凸部21が形成されており、接着剤17を介してクリップ部材20をフロントガラス2の下端に固定したとき、凸部21はフロントガラス下端2cの端面2eに当接した状態に配されている。接着剤17としては、ゲル状や液状の接着液や両面テープ等を使用することができる。
【0039】
カウルトップカバー10は、合成樹脂材を用いた成形加工により成形されており、例えば、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド系合成樹脂などの熱可塑性樹脂を用いて射出成形し、弾性的に変形可能な一体形成の長尺な樹脂成型品として形成されている。
【0040】
クリップ部材20は、合成樹脂やゴム材を用いた成形加工により成形されており、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニール(PVC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド系合成樹脂などの熱可塑性樹脂やゴム材などを用いて射出成形し、弾性的に変形可能な一体形成の樹脂成型品として形成されている。
【0041】
クリップ部材20の前端側には、凸部21とは逆向きで下向きに形成した段差部22aが形成されている。段差部22aによって、クリップ部材20における被係合部22を構成している。クリップ部材20の被係合部22には、カウルトップカバー10の係合部13を係合させることができる。
【0042】
図2、図3に示すように、カウルトップカバー10は、フロントガラス2側に延設された接合部14と、裏面11bに形成された舌片12と、を有する構成になっている。接合部14は、カウルトップカバー10の後端部10a側でフロントガラス2側に向けて延設されており、舌片12は、車両1の前後方向における断面形状が略L字状の形状を有し、L字状の自由端側がフロントガラス2側に向けて形成されている。
【0043】
カウルトップカバー10の後端部10a側を裏面11b側から見た要部斜視図である図4に示すように、舌片12は、カウルトップカバー10の裏面11bから下方に向けて立設した縦壁12aと縦壁12aの下端から屈曲してカウルトップカバー10の後方側に延設した屈曲片12bとを有する構成に形成されている。
【0044】
縦壁12aと屈曲片12bとによって略L字状の形状が構成され、屈曲片12bはL字状の自由端を有する形状になっており、自由端側がフロントガラス2側に向いた形状に形成されている。図4に示した構成例では、縦壁12aを車幅方向に沿って連続した構成とし、屈曲片12bを車幅方向に対して所定間隔で離間した配置構成になっている。しかし、舌片12の構成としては、縦壁12aと屈曲片12bとを一体的に構成して車幅方向に対して所定間隔で離間した配置構成にしておくこともできる。あるいは、屈曲片12bを縦壁12aと同様に車幅方向に沿って連続した構成にしておくこともできる。
【0045】
図2〜図4に示すように、カウルトップカバー10の裏面11bと縦壁12aの上端との接合部には、くびれ12dが形成されている。くびれ12dを形成しておくことにより、縦壁12aを形成しているカウルトップカバー10の表面部位において射出成形後にひけなどの外観不良が発生するのを防止しておくことができる。また、縦壁12aの強度を高めるため、縦壁12aとカウルトップカバー10の裏面11bとの間には、リブ12cが形成されている。リブ12cは、カウルトップカバー10の車幅方向に所定間隔で形成された屈曲片12bの形成部位に対応して形成されている。
【0046】
リブ12cとしては、縦壁12aの前面側及び後面側の両面に形成しておくことも、縦壁12aの前面側または後面側の一方に形成しておくこともできる。また、縦壁12aの前面側に形成したリブ12cの車幅方向における位置と、縦壁12aの後面側に形成したリブ12cの車幅方向における位置と、を車幅方向において同じ位置となるように形成することも異なる位置となるように形成することもできる。
【0047】
屈曲片12bの自由端には、上方に突出した突出部13aが形成されており、カウルトップカバー10をクリップ部材20の被係合部22に係合させるときの係合部13として構成されている。カウルトップカバー10をフロントガラス2の長さ方向に沿って移動させながら、突出部13aを被係合部22である段差部22aに係合させることにより、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けることができる。
【0048】
このとき、屈曲片12bは弾性変形を行いながら、屈曲片12bの自由端に形成した突出部13aを段差部22aの斜面上を滑り、段差部22aとの係合状態に至ることができる。突出部13aが段差部22aの斜面上を滑りながら、係合位置に移動しているとき、クリップ部材20に対して図3の矢印A方向の力を作用させることになる。
【0049】
しかし、凸部21がフロントガラス下端の端面2eに当接しているので、クリップ部材20に対して作用する上記A方向の力は凸部21によって抑えられ、接着剤17にせん断応力が作用するのを防止できる。そして、接着剤17が剥がれるのを防止できる。そのため、クリップ部材20をフロントガラス2に対して強固に固定しておくことができ、フロントガラス2に対するカウルトップカバー10の取り付け作業を円滑に行うことができる。
【0050】
また、カウルトップカバー10とクリップ部材20との係合方向が、フロントガラス2の長さ方向に沿った係合方向となるので、車体パネルを補強材として構成しておかなくても、カウルトップカバー10をクリップ部材20に係合させることができる。
【0051】
カウルトップカバー10の突出部13aとクリップ部材20の段差部22aとが係合すると、後方側に延設されたカウルトップカバー10の後端面14aは、フロントガラス下端の端面2eに当接した状態になる。しかも、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2aとは、面一状態に配されることになり、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間には隙間が無い状態になる。そして、カウルトップカバー10とフロントガラス2との境界部における見栄えの向上を図ることができる。
【実施例2】
【0052】
実施例2は、実施例1と同様にクリップ部材に形成した段差部にカウルトップカバーの係合部を係合させている構成であるが、その変形例に関するものであり、図5〜図7を用いてその説明をする。
図5に示す構成例では、クリップ部材20における被係合部22が、上方に突出した段差部22bとして形成されており、段差部22bに係合するカウルトップカバー10の係合部13が、カウルトップカバー10の接合部14の後端において下向き形状で形成されている。また、カウルトップカバー10がクリップ部材20に係合したとき、舌片12の屈曲片12bは、クリップ部材20の前端側の底面を上方に押圧して、係合部13との間でクリップ部材20を挟持することになる。他の構成は、実施例1における構成と同様の構成を有しており、同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることでその部材の説明を省略する。
【0053】
カウルトップカバー10がクリップ部材20に係合したときには、カウルトップカバー10の後端面14aは、フロントガラス2の端面2eに当接するとともに、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2aとを面一の状態に配されている。
【0054】
図6に示す構成例では、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間に軟質部材18が介在されており、クリップ部材20には、強度を向上させるために補強用芯材40が設けられている。また、クリップ部材20には、屈曲片12bの後端面を規制するストッパー22cが形成されている。他の構成は、実施例1における構成と同様の構成を有しており、同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることでその部材の説明を省略する。
【0055】
軟質部材18は、ゴム等の弾性力を有する材料から構成されており、前端側には係合凹部18bが形成されており、後端側には中空部18cが形成されている。係合凹部18bをカウルトップカバー10に形成した係合突起部10bに係合させることで、軟質部材18をカウルトップカバー10に取り付けることができる。
【0056】
補強用芯材40は、クリップ部材20を成形するときに合成樹脂材とともに一体的に成形されている。補強用芯材40としては、アルミニウム材や鋼材からなる帯材を用いることができ、帯材としての肉厚は、所望の弾性力が得られる肉厚として構成しておくことができる。
【0057】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたときに、軟質部材18を介してカウルトップカバー10をフロントガラス2の端面2eに当接させることができる。このとき、中空部18cが変形してカウルトップカバー10とフロントガラス2との間での密着性を大いに高めることができる。
【0058】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けるときには、カウルトップカバー10はフロントガラス2の長さ方向に沿って移動しながら係合することになる。しかし、軟質部材18がカウルトップカバー10の移動方向に配されているので、軟質部材18によってカウルトップカバー10の取付け時に生じるフロントガラス2に対する衝撃を緩和させることができる。また、軟質部材18は、弾性的にフロントガラス2に当接するので、隙間の発生や車両の走行時に発生した異音が外部に露出するのを防止できる。
尚、軟質部材18の構成として、中空部18cを有する形状について説明を行うが、柔軟性を有した軟質部材18を用いたときには、中空部18cを形成しない中実の構成としておくこともできる。
【0059】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けるときに、屈曲片12bに形成した突出部13aは、クリップ部材20の段差部22aの斜面上を滑りながら、係合位置に移動する。そして、突出部13aがクリップ部材20の段差部22aを乗り越した後において係合状態になる。突出部13aが段差部22aを乗り越えて係合状態になると、突出部13aの後端面は、クリップ部材20から下方に向かって立設されたストッパー22cに当接する。突出部13aがストッパー22cに当接することにより、カウルトップカバー10は、それ以上の移動が規制されることになる。
また、突出部13aが段差部22aとストッパー22cとの間に挟持されることになると、カウルトップカバー10の取り付け状態を強固に維持しておくことができる。
【0060】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたときには、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2a及び軟質部材18の表面18aは、面一の状態に配されている。そして、軟質部材18の裏面とクリップ部材20の表面とが当接した状態になっており、軟質部材18は、クリップ部材20との間でのシール機能を奏している。
【0061】
図6では、軟質部材18の裏面とクリップ部材20の表面とが当接した状態を示しているが、軟質部材18の裏面とクリップ部材20の表面との間に隙間を形成するように構成しておくこともできる。
【0062】
図7に示す構成例では、クリップ部材20とカウルトップカバー10との間にシール部41が配設された構成になっている。他の構成は、実施例1における構成と同様の構成を有しており、同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることでその部材の説明を省略する。
【0063】
シール部41は、クリップ部材20の前端側の端部を薄肉形状に形成することで構成されており、薄肉形状に形成した部分を弾性変形させることで、クリップ部材20とカウルトップカバー10の裏面11bとの間をシールしている。図7では、クリップ部材20の凸部21とカウルトップカバー10の裏面11bとが当接した状態を示しているが、凸部21とカウルトップカバー10の裏面11bとの間に隙間を形成するように構成しておくこともできる。
そして、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたときには、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2aは、面一の状態に配されている。
【実施例3】
【0064】
実施例3では、クリップ部材に形成した被係合部でカウルトップカバーに形成した係合部を挟持する構成になっており、この構成例について、図8〜図10を用いて説明する。実施例3では、クリップ部材に形成した被係合部でカウルトップカバーに形成した係合部を挟持する構成と、挟持力を得るためにクリップ部材に補強用芯材を設けた構成に形成されている。そして、カウルトップカバーにおける係合部の構成としては、被係合部によって挟持される構成になっており、これらの点での構成が実施例1における構成と異なっている。
他の構成は、実施例1における構成と同様の構成を有しており、同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることでその部材の説明を省略する。
【0065】
図1のVIII−VIII断面である図8及び図8の要部拡大図である図9に示すように、フロントガラス下端2cの裏面2bとクリップ部材25の固定面20aとの間に配した接着剤17によって、クリップ部材25はフロントガラス2に固定されている。そして、クリップ部材25の裏面側には、車両1の前後方向における断面形状が略コ字状に形成された被係合部27が形成されている。被係合部27は、クリップ部材25から下方に延設され、自由端側を車両の前方側に向けて屈曲した構成になっている。
【0066】
被係合部27を構成する略コ字状の断面形状によって、カウルトップカバー10に形成した係合部13を挟持することができる。即ち、略コ字状の断面形状によって、カウルトップカバー10の突出部13bを挟持して収納する係合凹部27bと突出部13bに係合する突起部27aとが構成されている。そして、被係合部27における挟持力を高めるため、クリップ部材25内には、略コ字状の断面形状に沿った補強用芯材40が設けられている。
【0067】
図10に示すように、カウルトップカバー10の裏面には、舌片12が形成されており、舌片12は、車幅方向に延設された縦壁12aと縦壁12aの下端から車両後方側に屈曲して延設された屈曲片12bとを備えた構成になっている。屈曲片12bの裏面側には、車幅方向に所定間隔で突出部13bが形成されている。突出部13bは、屈曲片12bの裏面から下方に突出した形状に構成されており、カウルトップカバー10における係合部13を構成している。
【0068】
被係合部27の係合凹部27bによって、突出部13bを挟持して係合するとき、クリップ部材25の被係合部27は、係合凹部27bの開放端側を拡開するように変形させられる。突出部13bを係合凹部27b内に収納した後は、弾性変形した被係合部27は弾性復帰して、係合凹部27bの開放端側を狭める。この一連の被係合部の動きを助成するため、クリップ部材25には一体的に成形された補強用芯材40が設けられている。
【0069】
係合部13を形成する舌片12を車幅方向に連続した形状で構成した場合について説明を行
ったが、舌片12を構成する縦壁12aや屈曲片12bを車幅方向に所定の間隔で離間した配置構成にしておくこともできる。
【0070】
カウルトップカバー10がフロントガラス2に取り付けられた状態において、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2aとは面一の状態に配されることになる。
【実施例4】
【0071】
実施例4は、実施例3と同様にクリップ部材に形成した段差部にカウルトップカバーの係合部を係合させている構成であるが、その変形例に関するものであり、図11〜図13を用いて説明する。
図11は、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間に軟質部材18を用いた構成例を示しているものであり、図12、図13は、クリップ部材25とカウルトップカバー10との間にシール部41を配設した構成例を示している。実施例4において、実施例1〜実施例3と同様な構成については、同じ部材符号を用いることでその部材についての説明を省略する。
【0072】
図11に示す構成例では、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間に軟質部材18が介在されており、クリップ部材25には、強度を向上させるために補強用芯材40が設けられている。軟質部材18は、ゴム等の弾性力を有する材料から構成されており、前端側には係合凹部18bが形成されており、後端側には中空部18cが形成されている。係合凹部18bをカウルトップカバー10に形成した係合突起部10bに係合させることで、軟質部材18をカウルトップカバー10に取り付けることができる。補強用芯材40は、クリップ部材25を成形するときに合成樹脂材とともに一体的に成形されている。
【0073】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたときに、軟質部材18を介してカウルトップカバー10はフロントガラス2の端面2eに当接することができる。そしてこのとき、軟質部材18によってカウルトップカバー10とフロントガラス2との間での密着性を大いに高めることができる。また、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けるときには、カウルトップカバーはフロントガラス2の長さ方向に沿って移動しながら係合することになるが、軟質部材18の中空部18cが変形することによってフロントガラス2への衝撃を緩和させることができる。
【0074】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けるときに、屈曲片12bに形成した突出部13bは、略コ字状の被係合部27の前端に形成した突起部27aに対して摺接しながら、同時に係合凹部27bの開放端側を弾性変形させながら拡開させる。そして、突出部13bが係合凹部27b内に収納されると、係合凹部27bの開放端側は弾性復帰して元の状態に狭められることになる。図示例では、突起部27aとクリップ部材25の裏面側との間で、舌片12の屈曲片12bを挟持している。
【0075】
また、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたときには、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2a及び軟質部材18の表面18aは、面一の状態に配されている。そして、軟質部材18の裏面とクリップ部材25の表面とが当接した状態になっており、軟質部材18は、クリップ部材25との間でのシール機能を奏している。
【0076】
図11では、軟質部材18の裏面とクリップ部材25の表面とが当接した状態を示しているが、軟質部材18の裏面とクリップ部材25の表面との間に隙間を形成するように構成しておくこともできる。
【0077】
図12、図13に示す構成例では、クリップ部材25とカウルトップカバー10との間にシール部41が配設された構成になっている。図12では、シール部41が舌片12の縦壁12aに
密着した構成例を示しており、図13では、シール部41がカウルトップカバー10の裏面11bに密着した構成例を示している。
【0078】
図12の構成例では、クリップ部材25の前端側に中空部41aを有するシール部41として構成されており、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたとき、シール部41の中空部41aが弾性変形することにより、クリップ部材25とカウルトップカバー10との間でのシールを行っている。そして、シール部41の中空部41aが弾性変形するのを補助する構成として、補強用芯材40が設けられている。そして、補強用芯材40は、シール部41の後方側を支持するように凸部26内まで延設されている。
【0079】
図13の構成例では、シール部41は、クリップ部材25の前端側の端部を薄肉形状に構成することで形成されている。薄肉形状に形成した部分を弾性変形させることで、クリップ部材25とカウルトップカバー10の裏面11bとの間をシールしている。そして、シール部41の基端部側を補強する構成として、補強用芯材40がシール部41の基端部側まで延設されている。
【0080】
図13では、クリップ部材25をフロントガラス2に固定する接着剤17が、固定面20a以外にも凸部26とフロントガラス下端の端面2eとの間に配されている構成を示している。接着剤17としては、実施例1〜実施例3において図示してきたように固定面20aとフロントガラス2の裏面2bとの間に設けておくことも、図13で示したように凸部26とフロントガラス下端の端面2eとの間にも配した構成にしておくことができる。そのため、本願発明におけるクリップ部材の固定としては、上述した適宜の固定方法を採用することができる。
【0081】
図12、図13で示しているように、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けた状態では、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2aは、面一の状態に配されることになる。
【実施例5】
【0082】
実施例5では、クリップ部材の凸部を上方に延設させて、カウルトップカバーとフロントガラスとの間に露呈させた構成にしている。そして、凸部によって、カウルトップカバーとフロントガラス下端の端面との間の隙間を埋める配置構成になっている。この構成において、上述した実施例1〜実施例4の構成とは異なる構成になっているが、他の構成は、実施例1〜実施例4に示した構成と同様の構成を備えており、実施例1〜実施例4に示した構成と同様の構成については、実施例1〜4で用いた部材符号を用いることでその部材についての説明を省略する。
【0083】
実施例5の構成について、図14〜図16を用いて説明する。
図14に示す構成は、実施例1と同様に段差部32aを有するクリップ部材30を用いた構成になっている。クリップ部材30における凸部31は、フロントガラス下端の端面2eに当接すると共に、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間に露呈している。
【0084】
そして、凸部31の表面31aは、カウルトップカバー10を取り付けたときに、カウルトップカバー10の表面11a、凸部31の表面31a及びフロントガラス2の表面2aが面一の構成になっている。この構成によって、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間を凸部31で埋める構成になっている。
【0085】
カウルトップカバー10やクリップ部材30の製造誤差や取り付け誤差等によって、カウルトップカバー10とクリップ部材30との間に隙間が形成された場合に対処するため、凸部31とカウルトップカバー10との間で互いに対向して当接するそれぞれの当接面33及び当接面15の形状を、車両の前後方向に沿って傾斜した傾斜面33b、15aを有した形状に形成してい
る。
【0086】
即ち、凸部31の前面側におけるカウルトップカバー10との当接面33には、前方側に開口した切り込み33aが、車幅方向に沿って形成されている。そして、カウルトップカバー10の接合部14における後端面14aを、凸部31の当接面33との当接面として構成している。そのうえで、カウルトップカバー10の後端面14a形状が、切り込み33aに形成した傾斜面33bと対向するように傾斜面として構成されている。
【0087】
このように構成することによって、接合部14の後端面14aの一部を、凸部31の切り込み33a内に挿入することができる。カウルトップカバー10やクリップ部材30の製造誤差や取り付け誤差等が生じていないときには、接合部14の後端面14aの一部は切り込み33a内に嵌入されることになる。
【0088】
製造誤差や取り付け誤差等が生じているときには、接合部14の後端面14aと切り込み33a内の傾斜面33bとの間に隙間が生じることになるが、この隙間は傾斜面33b及び後端面14aの傾斜面に沿った斜めに傾斜した隙間になる。そのため、上方からこの隙間を見ると、奥行きが浅い隙間として視認されることになる。これにより、カウルトップカバー10と凸部31との境界部における外観からの見栄えが低下するのを抑えておくことができる。
【0089】
図15に示す構成は、上述した図14の構成と同様の構成を備えているが、クリップ部材35の構成が、図14に示したような段差部32aを有する構成の代わりに、クリップ部材35に形成した被係合部37でカウルトップカバー10に形成した係合部13を挟持する構成になっている。他の構成は、図14に示した構成と同様の構成を備えているので、同様の構成については、図14で用いた部材符号と同じ部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0090】
クリップ部材35の裏面側に形成された被係合部37は、車両1の前後方向における断面形状が略コ字状に形成されている。被係合部37は、クリップ部材35から下方に延設され、自由端側を車両の前方側に向けて屈曲した構成になっている。クリップ部材35の固定面20aは、接着剤17によってフロントガラス下端2cの裏面2bに固定されている。
【0091】
被係合部27を構成する略コ字状の断面形状によって、カウルトップカバー10の係合部13を構成する突出部13bを挟持して収納する係合凹部37bと突出部13bに係合する係合突起部37aとが構成されている。図示例では、補強用芯材が用いられていない構成を示しているが、図11などで示しているように、被係合部37における挟持力を高めるため、クリップ部材35内に補強用芯材を設けておくこともできる。
【0092】
被係合部37の係合突起部37a及び係合凹部37bによって、カウルトップカバー10の舌片12に形成した突出部13bを挟持して係合すると、接合部14の後端面14aの一部を、凸部31の切り込み33a内に挿入することができる。そして、カウルトップカバー10やクリップ部材30の製造誤差や取り付け誤差等が生じていないときには、接合部14の後端面14aの一部は切り込み33a内に嵌入されることになる。
【0093】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けると、カウルトップカバー10の表面11a、凸部31の表面31a及びフロントガラス2の表面2aを面一な状態に構成することができる。またこのとき、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間が、凸部31によって埋められた構成になる。
【0094】
図16に示す構成は、上述した図15で示した被係合部37の構成と同様の構成を備えているが、クリップ部材35には切り込みが形成されておらず、代わりに、クリップ部材35の
前端面側が傾斜面に形成されており、この傾斜面を当接面38として構成されている。また、カウルトップカバー10には、当接面38と対向するように当接面15が形成されている。
【0095】
図16では、図14、図15に示した接合部14が形成されておらず、カウルトップカバー2の表面2aから舌片12が直接形成された構成になっている。そして、カウルトップカバー2の表面2aから舌片12への屈曲部に当接面15が形成されている。
【0096】
尚、図16に示す構成において、図14、図15に示したようにカウルトップカバー10に接合部14を延設させた構成にし、接合部14における後端面14aを当接面15として構成することもできる。
【0097】
カウルトップカバー10の係合部13をクリップ部材35の被係合部37に係合させると、カウルトップカバー10の当接面15がクリップ部材35の当接面38に当接し、カウルトップカバー10とクリップ部材35との間に隙間を生じさせないで、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けることができる。
【0098】
しかし、カウルトップカバー10やクリップ部材30の製造誤差や取り付け誤差等が生じているときには、図16で示すように、カウルトップカバー10の当接面15とクリップ部材35の当接面38との間に隙間が生じてしまうことがある。このような場合であっても、当接面15と当接面38との間の隙間は、傾斜面15に沿った斜めに傾斜した隙間になる。そのため、上方からこの隙間を見ると、奥行きが浅い隙間として視認されることになるので、カウルトップカバー10と凸部31との境界部における外観からの見栄えが低下するのを抑えることができる。
【0099】
また、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたときには、カウルトップカバー10の表面11a、凸部31の表面31a及びフロントガラス2の表面2aは互いに面一な構成にすることができる。そして、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間が、凸部31によって埋められた構成にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本願発明は、カウルトップカバーの取付構造として、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
10・・・カウルトップカバー、11a・・・表面、11b・・・裏面、12・・・舌片、12b・・・屈曲片、13・・・係合部、13a・・・突出部、13b・・・突出部、15・・・当接面、18・・・軟質部材、20・・・クリップ部材、21・・・凸部、22・・・被係合部、22a・・・段差部、22b・・・段差部、25・・・クリップ部材、26・・・凸部、27・・・被係合部、30・・・クリップ部材、31・・・凸部、32・・・被係合部、33・・・当接面、35・・・クリップ部材、36・・・凸部、37・・・被係合部、38・・・当接面、41・・・シール部、50・・・カウルルーバ本体、51・・・ウインドシールドガラス、52・・・リップ部、53・・・クリップ、54・・・嵌合突起、55・・・爪部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロントガラスとボンネットとの間に配されるカウルトップカバーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カウルトップカバーの取付構造としては、カウルトップカバーの後端部に形成したクリップ部材でフロントガラスの下端部を挟み込んで支持する取付構造が数多く採用されている。この種の取付構造では、フロントガラスの下端部をクリップによって上下方向から挟み込む構成になるので、必然的にフロントガラスの下端部とカウルトップカバーとの境界部がクリップ部材の板厚によって膨らんだ構成になる。
【0003】
そこで、フロントガラスの下端部とカウルトップカバーとの境界部における膨らみをなくし、フロントガラスの下端部とカウルトップカバーの後端部との間で、両者の表面を面一にした構成が、車両用カウルルーバ構造(特許文献1参照。)として提案されている。このように面一な配置構成をすることにより、フロントガラスとカウルトップカバーとの境界部における見栄えを向上させることができる。
【0004】
特許文献1に記載された車両用カウルルーバ構造を、本願発明における従来例として、図17には、カウルルーバ本体とウインドシールドガラスとの要部断面図を示している。図17に示すように、カウルルーバ本体50の後端部50a側には、リップ部材52が取付けられており、リップ部材52を介してカウルルーバ本体50はウインドシールドガラス51の下端側の端面に当接している。
【0005】
ウインドシールドガラス51の裏面には、フック形状の嵌合突起54を備えたクリップ53が両面テープを介して固定されている。嵌合突起54は、車両の上方向側に解放された形状に構成されており、カウルルーバ本体50の裏面から下方に立設した爪部55は、カウルルーバ本体50をクリップ53に対して上から下に向かって移動させることで、嵌合させることができる。即ち、カウルルーバ本体50を、ウインドシールドガラス51の面に対して直交する方向に移動させることになる。
【0006】
カウルルーバ本体50の爪部55をクリップ53の嵌合突起54に嵌合させた状態において、ウインドシールドガラス51の表面、リップ部材52の表面及びカウルルーバ本体50の表面を面一に配しておくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−264868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献に記載された発明では、ウインドシールドガラス51の面に対して直交する方向、即ち、上から下に向かった方向にカウルルーバ本体50を移動させることで、爪部55をクリップ53の嵌合突起54に嵌合させることができる。そのため、爪部55を嵌合突起54に押し込んで嵌合させるときには、クリップ53を固定しているウインドシールドガラス51の裏面に対して曲げ応力が作用することになる。
【0009】
ウインドシールドガラス51に作用する曲げ応力の影響によって、ウインドシールドガラ
ス51に亀裂が生じたり割れを生じたりする危険性があるので、ウインドシールドガラス51の板厚を厚く設定する必要がある。また、爪部55を嵌合突起54に押し込むときの押圧力によって、クリップ53にはウインドシールドガラス51に対して回転する方向の力が作用する。この回転力がクリップ53とウインドシールドガラス51との接合面に作用することになり、接合面に配されている両面テープを剥がしてしまう危険性があるので、粘着力が強力な接着剤を使用する必要がある。
【0010】
本願発明では、フロントガラスの表面とカウルトップカバーの表面とを面一に配することができ、また、フロントガラスに亀裂や割れを発生させることなくカウルトップカバーをフロントガラスに固定したクリップ部材に係合させることができ、しかも、カウルトップカバーをクリップ部材に係合させるときに、特別な補強をすることなくクリップ部材とフロントガラスとの固定状態が外れるのを防止できるカウルトップカバーの取付構造の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる本願発明の課題は、請求項1〜7に記載したカウルトップカバーの取付構造により達成することができる。
即ち、本願発明のカウルトップカバーの取付構造では、車体前部に配されたフロントガラスの下端部に当接し、車両のフロントコンパートメントの上部開口を覆うボンネットの後端部と前記フロントガラスの下端部との間を覆い、車幅方向に亘って延設されたカウルトップカバーにおいて、
前記カウルトップカバーと前記フロントガラスとの間に配され、前記フロントガラスの下端部側の裏面に固着されるクリップ部材と、
前記カウルトップカバーに形成された係合部と、
前記クリップ部材に形成され、前記係合部を係合させる被係合部と、を備え、
前記係合部は、前記フロントガラスの下端から上端に向かう長さ方向に沿った係合方向で、前記被係合部に係合し、前記係合部を前記被係合部に係合させたとき、前記カウルトップカバーの表面と前記フロントガラスの表面とが面一に配されていることを最も主要な特徴としている。
【0012】
また、本願発明では、前記クリップ部材は、前記フロントガラスの下端側の裏面に当接して固定される固定面と、前記固定面から上方に立設され、前記フロントガラス下端の端面に当接する凸部と、を有していることを主要な特徴としている。
【0013】
更に、本発明では、前記カウルトップカバーは、前記カウルトップカバーの裏面に形成され、車両の前後方向における断面形状が略L字状の形状を有し、前記L字状の自由端が前記フロントガラス側に向けて形成された舌片部を備え、前記舌片部に前記係合部が形成されていることを主要な特徴としている。
【0014】
更にまた、本願発明では、前記カウルトップカバーと前記フロントガラス下端の端面との間に、前記カウルトップカバーと前記フロントガラス下端の端面との間の隙間を埋める軟質部材が配設され、前記係合部と前記被係合部との係合時に、前記軟質部材の表面と前記カウルトップカバーの表面とフロントガラスの表面との間が面一に配されていることを主要な特徴としている。
また、本願発明では、前記軟質部材が、前記カウルトップカバーに取り付けられていることを主要な特徴としている。
【0015】
更に、本願発明では、前記凸部が、前記カウルトップカバーと前記フロントガラス下端の端面との間の隙間を埋める配置構成に形成され、前記カウルトップカバーと前記凸部との間で互いに対向して当接する当接面が、車両の前後方向に沿って傾斜した傾斜面を有す
る形状に形成され、
前記係合部と前記被係合部との係合時に、前記凸部の表面と前記カウルトップカバーの表面とフロントガラスの表面との間が面一に配されていることを主要な特徴としている。
更にまた、本願発明では、前記クリップ部材と前記カウルトップカバーとの間が、シールされていることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本願発明では、フロントガラスの下端部側の裏面に固着したクリップ部材の被係合部に、カウルトップカバーに形成した係合部を係合させるとき、係合方向が、フロントガラスの下端から上端に向かう長さ方向に沿った係合方向となるように構成している。
【0017】
このように構成することによって、カウルトップカバーをフロントガラスに固定したクリップ部材に係合させるときに、カウルトップカバーはフロントガラスの長さ方向に沿った方向に移動しながら係合されることになり、係合時にフロントガラスに対して曲げ応力を作用させない。
【0018】
このため、クリップ部材がフロントガラスとの固定状態から外れてしまう問題や、フロントガラスに亀裂が生じたり割れが生じたりする問題が生じない。そして、カウルトップカバーの取り付け作業を迅速にしかも短時間で行うことができる。また、カウルトップカバーとクリップ部材との係合方向が、フロントガラスの長さ方向に沿った係合方向であるので、車体パネルを補強材として構成しておかなくても、カウルトップカバーをクリップ部材に係合させることができる。
【0019】
このように、カウルトップカバーの係合時にフロントガラスに対する悪影響が生じないので、取付作業中にフロントガラスに欠損等を生じさせることがなく、新たなフロントガラスに交換することもなくなり、作業効率が高まると共にコストの削減にも貢献することができる。
【0020】
また、カウルトップカバーをクリップ部材に係合させたとき、フロントガラスの表面とカウルトップカバーの表面とを面一に構成することができるので、フロントガラスとカウルトップカバーとの境界部における外観上の見栄えを向上させることができる。
【0021】
本願発明では、クリップ部材の構成として、フロントガラスの下端側の裏面に当接して固定される固定面から上方に立設された凸部を、フロントガラス下端の端面に当接させた構成にしておくことができる。フロントガラスに固定したクリップ部材にカウルトップカバーを係合させるときには、クリップ部材とフロントガラスとの間にはせん断力が作用することになるが、フロントガラス下端の端面に凸部が当接した構成になっているので、せん断力がクリップ部材とフロントガラスとの固着部に作用するのを防止できる。これにより、クリップ部材とフロントガラスとの固定状態を強固に維持しておくことができる。
【0022】
本願発明では、カウルトップカバーの裏面に形成した略L字状の断面形状を有する舌片部に、クリップ部材の被係合部と係合する係合部を形成しておくことができる。このように構成することにより、カウルトップカバーをクリップ部材に係合させるときには、断面形状が略L字状の舌片部によって生じる弾性変形力を係合時の係合力として利用することができる。また、被係合部を略L字状の舌片によって挟み込むように係合させることができるので、係合状態を強固に維持することができる。
【0023】
本願発明では、軟質部材を用いてカウルトップカバーとフロントガラス下端の端面との間を埋めた構成にすることができる。しかも、カウルトップカバーの係合部をクリップ部材の被係合部に係合させたときに、軟質部材の表面とカウルトップカバーの表面とフロン
トガラスの表面との間が面一に配されるように構成しておくことができる。
【0024】
このように構成することにより、軟質部材によってカウルトップカバーとフロントガラスとの間に隙間が生じるのを防止でき、しかも、カウルトップカバーとフロントガラスとの当たりを柔らかくすることができる。また、軟質部材の表面とカウルトップカバーの表面とフロントガラスの表面との間を面一に構成することができるので、フロントガラスとカウルトップカバーとの境界部における外観上の見栄えを向上させることができる。
【0025】
また、軟質部材としては、カウルトップカバーに取り付けた構成にしておくことも、クリップ部材の凸部に取り付けた構成やフロントガラス下端の端面に予め取り付けた構成にしておくことができる。予めカウルトップカバーに軟質部材を取り付けた構成にしておくことにより、カウルトップカバーをクリップ部材に係合させるときに軟質部材の位置合わせを行わなくてすみ、カウルトップカバーの取り付け作業を容易に行うことができる。
【0026】
本願発明では、クリップ部材の凸部を用いて、カウルトップカバーとフロントガラス下端の端面との間の隙間を埋める配置構成に形成しておくことができる。そして、カウルトップカバーと凸部との間で互いに対向して当接する当接面の形状として、車両の前後方向に沿って傾斜した傾斜面を有した形状に形成しておくことができる。
【0027】
このように構成することで、カウルトップカバーと凸部とは傾斜面で互いに当接することになる。そのため、カウルトップカバーやクリップ部材の加工誤差等の原因によって、カウルトップカバーと凸部との間に隙間が形成されたとしても、カウルトップカバーと凸部の上方から隙間は、斜めに傾斜した隙間になる。そして、隙間を通して可視できる奥行きは浅くなり、カウルトップカバーと凸部との境界部における見栄えの低下を抑えることができる。
【0028】
また、凸部の表面とカウルトップカバーの表面とフロントガラスの表面との間を面一に構成することができるので、フロントガラスとカウルトップカバーとの境界部における見栄えを向上させることができる。
【0029】
本願発明では、クリップ部材とカウルトップカバーとの間をシールしておくことができる。このように構成することにより、隙間の発生やフロントコンパートメント内などで発生した異音が外部に漏出するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】車両の前面側を示す斜視図である。(実施例)
【図2】図1のII−II断面図である。(実施例1)
【図3】カウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例1)
【図4】カウルトップカバーの要部斜視図である。(実施例1)
【図5】別のカウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例2)
【図6】他のカウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例2)
【図7】軟質部材を用いたカウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例2)
【図8】カウルトップカバーを用いた図1のVIII−VIII断面図である。(実施例3)
【図9】カウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例3)
【図10】カウルトップカバーの要部斜視図である。(実施例3)
【図11】別のカウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例4)
【図12】他のカウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例4)
【図13】軟質部材を用いたカウルトップカバーとフロントガラスとの要部断面図である。(実施例4)
【図14】凸部でカウルトップカバーとフロントガラスとの間を埋めた要部断面図である。(実施例5)
【図15】凸部でカウルトップカバーとフロントガラスとの間を埋めた他の要部断面図である。(実施例5)
【図16】凸部でカウルトップカバーとフロントガラスとの間を埋めた別の要部断面図である。(実施例5)
【図17】カウルルーバ本体とウインドシールドガラスとの要部断面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0031】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わるカウルトップカバーの取付構造としては、以下で説明する形状、構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、構成であれば、それらの形状、構成を採用することができるものである。このため、本願発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【0032】
本願発明では、車両の前進方向を前方側、前面側または前端側とし、後進方向を後方側、後面または後端側としている。また、車両の上下方向において、路面側を下方側または下端側あるいは裏面側とし、天井側を上方側または上端側あるいは表面側としている。
【実施例1】
【0033】
実施例1では、クリップ部材に形成した段差部をカウルトップカバーに係合する被係合部とした構成例について、図2〜図4を用いて説明する。最初に、図1を用いて車両1におけるカウルトップカバー10の配置構成について説明する。
【0034】
図1には、車両1を斜め前方から見た斜視図を示している。尚、ワイパー等の図示は、省略している。車両1の車室前方側には、フロントガラス2が配設されており、フロントガラス2は、フロントガラス2の下端2cから車体上方側である上端2dに向けてフロントガラス2の表面2aが車両後方側に傾斜した状態に配されている。そして、フロントガラス2の下端部とフロントコンパートメントの上部開口を覆うボンネット3の後端部3aとの間は、カウルトップカバー10によって覆われている。カウルトップカバー10は、車幅方向に亘って延設された配置構成になっている。
【0035】
図1のII−II断面である図2に示すように、カウルトップカバー10の前端側は、車体パネルに固定されたカウル本体5に取り付けられており、後端部10a側は、フロントガラス下端2cの裏面2bに固定したクリップ部材20に係合している。カウル本体5は、板金によって構成されており、フロントガラス2の下端側において車幅方向に沿って配設されている。
【0036】
カウル本体5の上端部は、フロントガラス2の下端側の裏面2bに固着した固定シール6を介して固定されている。カウル本体5には、図示を省略しているが、排水用の流路を形成する樋部や、空気導入用のダクト開口部が形成されている。
【0037】
ボンネット3を閉じた状態において、ボンネット3の裏面側は、カウルトップカバー10の前方側に設けたフードシール4に圧接している。そして、フードシール4によって、雨水等が、フロントコンパートメント内に浸入するのが防止されている。
【0038】
図2及び図2の要部拡大図である図3に示すように、フロントガラス2の下端側における裏面2bとクリップ部材20の固定面20aとの間には接着剤17が配されており、クリップ部材20は、接着剤17によってフロントガラス2の裏面2bに固定されている。クリップ部材20には固定面20aから上方に立設した凸部21が形成されており、接着剤17を介してクリップ部材20をフロントガラス2の下端に固定したとき、凸部21はフロントガラス下端2cの端面2eに当接した状態に配されている。接着剤17としては、ゲル状や液状の接着液や両面テープ等を使用することができる。
【0039】
カウルトップカバー10は、合成樹脂材を用いた成形加工により成形されており、例えば、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド系合成樹脂などの熱可塑性樹脂を用いて射出成形し、弾性的に変形可能な一体形成の長尺な樹脂成型品として形成されている。
【0040】
クリップ部材20は、合成樹脂やゴム材を用いた成形加工により成形されており、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニール(PVC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリアミド系合成樹脂などの熱可塑性樹脂やゴム材などを用いて射出成形し、弾性的に変形可能な一体形成の樹脂成型品として形成されている。
【0041】
クリップ部材20の前端側には、凸部21とは逆向きで下向きに形成した段差部22aが形成されている。段差部22aによって、クリップ部材20における被係合部22を構成している。クリップ部材20の被係合部22には、カウルトップカバー10の係合部13を係合させることができる。
【0042】
図2、図3に示すように、カウルトップカバー10は、フロントガラス2側に延設された接合部14と、裏面11bに形成された舌片12と、を有する構成になっている。接合部14は、カウルトップカバー10の後端部10a側でフロントガラス2側に向けて延設されており、舌片12は、車両1の前後方向における断面形状が略L字状の形状を有し、L字状の自由端側がフロントガラス2側に向けて形成されている。
【0043】
カウルトップカバー10の後端部10a側を裏面11b側から見た要部斜視図である図4に示すように、舌片12は、カウルトップカバー10の裏面11bから下方に向けて立設した縦壁12aと縦壁12aの下端から屈曲してカウルトップカバー10の後方側に延設した屈曲片12bとを有する構成に形成されている。
【0044】
縦壁12aと屈曲片12bとによって略L字状の形状が構成され、屈曲片12bはL字状の自由端を有する形状になっており、自由端側がフロントガラス2側に向いた形状に形成されている。図4に示した構成例では、縦壁12aを車幅方向に沿って連続した構成とし、屈曲片12bを車幅方向に対して所定間隔で離間した配置構成になっている。しかし、舌片12の構成としては、縦壁12aと屈曲片12bとを一体的に構成して車幅方向に対して所定間隔で離間した配置構成にしておくこともできる。あるいは、屈曲片12bを縦壁12aと同様に車幅方向に沿って連続した構成にしておくこともできる。
【0045】
図2〜図4に示すように、カウルトップカバー10の裏面11bと縦壁12aの上端との接合部には、くびれ12dが形成されている。くびれ12dを形成しておくことにより、縦壁12aを形成しているカウルトップカバー10の表面部位において射出成形後にひけなどの外観不良が発生するのを防止しておくことができる。また、縦壁12aの強度を高めるため、縦壁12aとカウルトップカバー10の裏面11bとの間には、リブ12cが形成されている。リブ12cは、カウルトップカバー10の車幅方向に所定間隔で形成された屈曲片12bの形成部位に対応して形成されている。
【0046】
リブ12cとしては、縦壁12aの前面側及び後面側の両面に形成しておくことも、縦壁12aの前面側または後面側の一方に形成しておくこともできる。また、縦壁12aの前面側に形成したリブ12cの車幅方向における位置と、縦壁12aの後面側に形成したリブ12cの車幅方向における位置と、を車幅方向において同じ位置となるように形成することも異なる位置となるように形成することもできる。
【0047】
屈曲片12bの自由端には、上方に突出した突出部13aが形成されており、カウルトップカバー10をクリップ部材20の被係合部22に係合させるときの係合部13として構成されている。カウルトップカバー10をフロントガラス2の長さ方向に沿って移動させながら、突出部13aを被係合部22である段差部22aに係合させることにより、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けることができる。
【0048】
このとき、屈曲片12bは弾性変形を行いながら、屈曲片12bの自由端に形成した突出部13aを段差部22aの斜面上を滑り、段差部22aとの係合状態に至ることができる。突出部13aが段差部22aの斜面上を滑りながら、係合位置に移動しているとき、クリップ部材20に対して図3の矢印A方向の力を作用させることになる。
【0049】
しかし、凸部21がフロントガラス下端の端面2eに当接しているので、クリップ部材20に対して作用する上記A方向の力は凸部21によって抑えられ、接着剤17にせん断応力が作用するのを防止できる。そして、接着剤17が剥がれるのを防止できる。そのため、クリップ部材20をフロントガラス2に対して強固に固定しておくことができ、フロントガラス2に対するカウルトップカバー10の取り付け作業を円滑に行うことができる。
【0050】
また、カウルトップカバー10とクリップ部材20との係合方向が、フロントガラス2の長さ方向に沿った係合方向となるので、車体パネルを補強材として構成しておかなくても、カウルトップカバー10をクリップ部材20に係合させることができる。
【0051】
カウルトップカバー10の突出部13aとクリップ部材20の段差部22aとが係合すると、後方側に延設されたカウルトップカバー10の後端面14aは、フロントガラス下端の端面2eに当接した状態になる。しかも、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2aとは、面一状態に配されることになり、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間には隙間が無い状態になる。そして、カウルトップカバー10とフロントガラス2との境界部における見栄えの向上を図ることができる。
【実施例2】
【0052】
実施例2は、実施例1と同様にクリップ部材に形成した段差部にカウルトップカバーの係合部を係合させている構成であるが、その変形例に関するものであり、図5〜図7を用いてその説明をする。
図5に示す構成例では、クリップ部材20における被係合部22が、上方に突出した段差部22bとして形成されており、段差部22bに係合するカウルトップカバー10の係合部13が、カウルトップカバー10の接合部14の後端において下向き形状で形成されている。また、カウルトップカバー10がクリップ部材20に係合したとき、舌片12の屈曲片12bは、クリップ部材20の前端側の底面を上方に押圧して、係合部13との間でクリップ部材20を挟持することになる。他の構成は、実施例1における構成と同様の構成を有しており、同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることでその部材の説明を省略する。
【0053】
カウルトップカバー10がクリップ部材20に係合したときには、カウルトップカバー10の後端面14aは、フロントガラス2の端面2eに当接するとともに、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2aとを面一の状態に配されている。
【0054】
図6に示す構成例では、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間に軟質部材18が介在されており、クリップ部材20には、強度を向上させるために補強用芯材40が設けられている。また、クリップ部材20には、屈曲片12bの後端面を規制するストッパー22cが形成されている。他の構成は、実施例1における構成と同様の構成を有しており、同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることでその部材の説明を省略する。
【0055】
軟質部材18は、ゴム等の弾性力を有する材料から構成されており、前端側には係合凹部18bが形成されており、後端側には中空部18cが形成されている。係合凹部18bをカウルトップカバー10に形成した係合突起部10bに係合させることで、軟質部材18をカウルトップカバー10に取り付けることができる。
【0056】
補強用芯材40は、クリップ部材20を成形するときに合成樹脂材とともに一体的に成形されている。補強用芯材40としては、アルミニウム材や鋼材からなる帯材を用いることができ、帯材としての肉厚は、所望の弾性力が得られる肉厚として構成しておくことができる。
【0057】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたときに、軟質部材18を介してカウルトップカバー10をフロントガラス2の端面2eに当接させることができる。このとき、中空部18cが変形してカウルトップカバー10とフロントガラス2との間での密着性を大いに高めることができる。
【0058】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けるときには、カウルトップカバー10はフロントガラス2の長さ方向に沿って移動しながら係合することになる。しかし、軟質部材18がカウルトップカバー10の移動方向に配されているので、軟質部材18によってカウルトップカバー10の取付け時に生じるフロントガラス2に対する衝撃を緩和させることができる。また、軟質部材18は、弾性的にフロントガラス2に当接するので、隙間の発生や車両の走行時に発生した異音が外部に露出するのを防止できる。
尚、軟質部材18の構成として、中空部18cを有する形状について説明を行うが、柔軟性を有した軟質部材18を用いたときには、中空部18cを形成しない中実の構成としておくこともできる。
【0059】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けるときに、屈曲片12bに形成した突出部13aは、クリップ部材20の段差部22aの斜面上を滑りながら、係合位置に移動する。そして、突出部13aがクリップ部材20の段差部22aを乗り越した後において係合状態になる。突出部13aが段差部22aを乗り越えて係合状態になると、突出部13aの後端面は、クリップ部材20から下方に向かって立設されたストッパー22cに当接する。突出部13aがストッパー22cに当接することにより、カウルトップカバー10は、それ以上の移動が規制されることになる。
また、突出部13aが段差部22aとストッパー22cとの間に挟持されることになると、カウルトップカバー10の取り付け状態を強固に維持しておくことができる。
【0060】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたときには、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2a及び軟質部材18の表面18aは、面一の状態に配されている。そして、軟質部材18の裏面とクリップ部材20の表面とが当接した状態になっており、軟質部材18は、クリップ部材20との間でのシール機能を奏している。
【0061】
図6では、軟質部材18の裏面とクリップ部材20の表面とが当接した状態を示しているが、軟質部材18の裏面とクリップ部材20の表面との間に隙間を形成するように構成しておくこともできる。
【0062】
図7に示す構成例では、クリップ部材20とカウルトップカバー10との間にシール部41が配設された構成になっている。他の構成は、実施例1における構成と同様の構成を有しており、同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることでその部材の説明を省略する。
【0063】
シール部41は、クリップ部材20の前端側の端部を薄肉形状に形成することで構成されており、薄肉形状に形成した部分を弾性変形させることで、クリップ部材20とカウルトップカバー10の裏面11bとの間をシールしている。図7では、クリップ部材20の凸部21とカウルトップカバー10の裏面11bとが当接した状態を示しているが、凸部21とカウルトップカバー10の裏面11bとの間に隙間を形成するように構成しておくこともできる。
そして、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたときには、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2aは、面一の状態に配されている。
【実施例3】
【0064】
実施例3では、クリップ部材に形成した被係合部でカウルトップカバーに形成した係合部を挟持する構成になっており、この構成例について、図8〜図10を用いて説明する。実施例3では、クリップ部材に形成した被係合部でカウルトップカバーに形成した係合部を挟持する構成と、挟持力を得るためにクリップ部材に補強用芯材を設けた構成に形成されている。そして、カウルトップカバーにおける係合部の構成としては、被係合部によって挟持される構成になっており、これらの点での構成が実施例1における構成と異なっている。
他の構成は、実施例1における構成と同様の構成を有しており、同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることでその部材の説明を省略する。
【0065】
図1のVIII−VIII断面である図8及び図8の要部拡大図である図9に示すように、フロントガラス下端2cの裏面2bとクリップ部材25の固定面20aとの間に配した接着剤17によって、クリップ部材25はフロントガラス2に固定されている。そして、クリップ部材25の裏面側には、車両1の前後方向における断面形状が略コ字状に形成された被係合部27が形成されている。被係合部27は、クリップ部材25から下方に延設され、自由端側を車両の前方側に向けて屈曲した構成になっている。
【0066】
被係合部27を構成する略コ字状の断面形状によって、カウルトップカバー10に形成した係合部13を挟持することができる。即ち、略コ字状の断面形状によって、カウルトップカバー10の突出部13bを挟持して収納する係合凹部27bと突出部13bに係合する突起部27aとが構成されている。そして、被係合部27における挟持力を高めるため、クリップ部材25内には、略コ字状の断面形状に沿った補強用芯材40が設けられている。
【0067】
図10に示すように、カウルトップカバー10の裏面には、舌片12が形成されており、舌片12は、車幅方向に延設された縦壁12aと縦壁12aの下端から車両後方側に屈曲して延設された屈曲片12bとを備えた構成になっている。屈曲片12bの裏面側には、車幅方向に所定間隔で突出部13bが形成されている。突出部13bは、屈曲片12bの裏面から下方に突出した形状に構成されており、カウルトップカバー10における係合部13を構成している。
【0068】
被係合部27の係合凹部27bによって、突出部13bを挟持して係合するとき、クリップ部材25の被係合部27は、係合凹部27bの開放端側を拡開するように変形させられる。突出部13bを係合凹部27b内に収納した後は、弾性変形した被係合部27は弾性復帰して、係合凹部27bの開放端側を狭める。この一連の被係合部の動きを助成するため、クリップ部材25には一体的に成形された補強用芯材40が設けられている。
【0069】
係合部13を形成する舌片12を車幅方向に連続した形状で構成した場合について説明を行
ったが、舌片12を構成する縦壁12aや屈曲片12bを車幅方向に所定の間隔で離間した配置構成にしておくこともできる。
【0070】
カウルトップカバー10がフロントガラス2に取り付けられた状態において、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2aとは面一の状態に配されることになる。
【実施例4】
【0071】
実施例4は、実施例3と同様にクリップ部材に形成した段差部にカウルトップカバーの係合部を係合させている構成であるが、その変形例に関するものであり、図11〜図13を用いて説明する。
図11は、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間に軟質部材18を用いた構成例を示しているものであり、図12、図13は、クリップ部材25とカウルトップカバー10との間にシール部41を配設した構成例を示している。実施例4において、実施例1〜実施例3と同様な構成については、同じ部材符号を用いることでその部材についての説明を省略する。
【0072】
図11に示す構成例では、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間に軟質部材18が介在されており、クリップ部材25には、強度を向上させるために補強用芯材40が設けられている。軟質部材18は、ゴム等の弾性力を有する材料から構成されており、前端側には係合凹部18bが形成されており、後端側には中空部18cが形成されている。係合凹部18bをカウルトップカバー10に形成した係合突起部10bに係合させることで、軟質部材18をカウルトップカバー10に取り付けることができる。補強用芯材40は、クリップ部材25を成形するときに合成樹脂材とともに一体的に成形されている。
【0073】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたときに、軟質部材18を介してカウルトップカバー10はフロントガラス2の端面2eに当接することができる。そしてこのとき、軟質部材18によってカウルトップカバー10とフロントガラス2との間での密着性を大いに高めることができる。また、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けるときには、カウルトップカバーはフロントガラス2の長さ方向に沿って移動しながら係合することになるが、軟質部材18の中空部18cが変形することによってフロントガラス2への衝撃を緩和させることができる。
【0074】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けるときに、屈曲片12bに形成した突出部13bは、略コ字状の被係合部27の前端に形成した突起部27aに対して摺接しながら、同時に係合凹部27bの開放端側を弾性変形させながら拡開させる。そして、突出部13bが係合凹部27b内に収納されると、係合凹部27bの開放端側は弾性復帰して元の状態に狭められることになる。図示例では、突起部27aとクリップ部材25の裏面側との間で、舌片12の屈曲片12bを挟持している。
【0075】
また、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたときには、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2a及び軟質部材18の表面18aは、面一の状態に配されている。そして、軟質部材18の裏面とクリップ部材25の表面とが当接した状態になっており、軟質部材18は、クリップ部材25との間でのシール機能を奏している。
【0076】
図11では、軟質部材18の裏面とクリップ部材25の表面とが当接した状態を示しているが、軟質部材18の裏面とクリップ部材25の表面との間に隙間を形成するように構成しておくこともできる。
【0077】
図12、図13に示す構成例では、クリップ部材25とカウルトップカバー10との間にシール部41が配設された構成になっている。図12では、シール部41が舌片12の縦壁12aに
密着した構成例を示しており、図13では、シール部41がカウルトップカバー10の裏面11bに密着した構成例を示している。
【0078】
図12の構成例では、クリップ部材25の前端側に中空部41aを有するシール部41として構成されており、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたとき、シール部41の中空部41aが弾性変形することにより、クリップ部材25とカウルトップカバー10との間でのシールを行っている。そして、シール部41の中空部41aが弾性変形するのを補助する構成として、補強用芯材40が設けられている。そして、補強用芯材40は、シール部41の後方側を支持するように凸部26内まで延設されている。
【0079】
図13の構成例では、シール部41は、クリップ部材25の前端側の端部を薄肉形状に構成することで形成されている。薄肉形状に形成した部分を弾性変形させることで、クリップ部材25とカウルトップカバー10の裏面11bとの間をシールしている。そして、シール部41の基端部側を補強する構成として、補強用芯材40がシール部41の基端部側まで延設されている。
【0080】
図13では、クリップ部材25をフロントガラス2に固定する接着剤17が、固定面20a以外にも凸部26とフロントガラス下端の端面2eとの間に配されている構成を示している。接着剤17としては、実施例1〜実施例3において図示してきたように固定面20aとフロントガラス2の裏面2bとの間に設けておくことも、図13で示したように凸部26とフロントガラス下端の端面2eとの間にも配した構成にしておくことができる。そのため、本願発明におけるクリップ部材の固定としては、上述した適宜の固定方法を採用することができる。
【0081】
図12、図13で示しているように、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けた状態では、カウルトップカバー10の表面11aとフロントガラス2の表面2aは、面一の状態に配されることになる。
【実施例5】
【0082】
実施例5では、クリップ部材の凸部を上方に延設させて、カウルトップカバーとフロントガラスとの間に露呈させた構成にしている。そして、凸部によって、カウルトップカバーとフロントガラス下端の端面との間の隙間を埋める配置構成になっている。この構成において、上述した実施例1〜実施例4の構成とは異なる構成になっているが、他の構成は、実施例1〜実施例4に示した構成と同様の構成を備えており、実施例1〜実施例4に示した構成と同様の構成については、実施例1〜4で用いた部材符号を用いることでその部材についての説明を省略する。
【0083】
実施例5の構成について、図14〜図16を用いて説明する。
図14に示す構成は、実施例1と同様に段差部32aを有するクリップ部材30を用いた構成になっている。クリップ部材30における凸部31は、フロントガラス下端の端面2eに当接すると共に、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間に露呈している。
【0084】
そして、凸部31の表面31aは、カウルトップカバー10を取り付けたときに、カウルトップカバー10の表面11a、凸部31の表面31a及びフロントガラス2の表面2aが面一の構成になっている。この構成によって、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間を凸部31で埋める構成になっている。
【0085】
カウルトップカバー10やクリップ部材30の製造誤差や取り付け誤差等によって、カウルトップカバー10とクリップ部材30との間に隙間が形成された場合に対処するため、凸部31とカウルトップカバー10との間で互いに対向して当接するそれぞれの当接面33及び当接面15の形状を、車両の前後方向に沿って傾斜した傾斜面33b、15aを有した形状に形成してい
る。
【0086】
即ち、凸部31の前面側におけるカウルトップカバー10との当接面33には、前方側に開口した切り込み33aが、車幅方向に沿って形成されている。そして、カウルトップカバー10の接合部14における後端面14aを、凸部31の当接面33との当接面として構成している。そのうえで、カウルトップカバー10の後端面14a形状が、切り込み33aに形成した傾斜面33bと対向するように傾斜面として構成されている。
【0087】
このように構成することによって、接合部14の後端面14aの一部を、凸部31の切り込み33a内に挿入することができる。カウルトップカバー10やクリップ部材30の製造誤差や取り付け誤差等が生じていないときには、接合部14の後端面14aの一部は切り込み33a内に嵌入されることになる。
【0088】
製造誤差や取り付け誤差等が生じているときには、接合部14の後端面14aと切り込み33a内の傾斜面33bとの間に隙間が生じることになるが、この隙間は傾斜面33b及び後端面14aの傾斜面に沿った斜めに傾斜した隙間になる。そのため、上方からこの隙間を見ると、奥行きが浅い隙間として視認されることになる。これにより、カウルトップカバー10と凸部31との境界部における外観からの見栄えが低下するのを抑えておくことができる。
【0089】
図15に示す構成は、上述した図14の構成と同様の構成を備えているが、クリップ部材35の構成が、図14に示したような段差部32aを有する構成の代わりに、クリップ部材35に形成した被係合部37でカウルトップカバー10に形成した係合部13を挟持する構成になっている。他の構成は、図14に示した構成と同様の構成を備えているので、同様の構成については、図14で用いた部材符号と同じ部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0090】
クリップ部材35の裏面側に形成された被係合部37は、車両1の前後方向における断面形状が略コ字状に形成されている。被係合部37は、クリップ部材35から下方に延設され、自由端側を車両の前方側に向けて屈曲した構成になっている。クリップ部材35の固定面20aは、接着剤17によってフロントガラス下端2cの裏面2bに固定されている。
【0091】
被係合部27を構成する略コ字状の断面形状によって、カウルトップカバー10の係合部13を構成する突出部13bを挟持して収納する係合凹部37bと突出部13bに係合する係合突起部37aとが構成されている。図示例では、補強用芯材が用いられていない構成を示しているが、図11などで示しているように、被係合部37における挟持力を高めるため、クリップ部材35内に補強用芯材を設けておくこともできる。
【0092】
被係合部37の係合突起部37a及び係合凹部37bによって、カウルトップカバー10の舌片12に形成した突出部13bを挟持して係合すると、接合部14の後端面14aの一部を、凸部31の切り込み33a内に挿入することができる。そして、カウルトップカバー10やクリップ部材30の製造誤差や取り付け誤差等が生じていないときには、接合部14の後端面14aの一部は切り込み33a内に嵌入されることになる。
【0093】
カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けると、カウルトップカバー10の表面11a、凸部31の表面31a及びフロントガラス2の表面2aを面一な状態に構成することができる。またこのとき、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間が、凸部31によって埋められた構成になる。
【0094】
図16に示す構成は、上述した図15で示した被係合部37の構成と同様の構成を備えているが、クリップ部材35には切り込みが形成されておらず、代わりに、クリップ部材35の
前端面側が傾斜面に形成されており、この傾斜面を当接面38として構成されている。また、カウルトップカバー10には、当接面38と対向するように当接面15が形成されている。
【0095】
図16では、図14、図15に示した接合部14が形成されておらず、カウルトップカバー2の表面2aから舌片12が直接形成された構成になっている。そして、カウルトップカバー2の表面2aから舌片12への屈曲部に当接面15が形成されている。
【0096】
尚、図16に示す構成において、図14、図15に示したようにカウルトップカバー10に接合部14を延設させた構成にし、接合部14における後端面14aを当接面15として構成することもできる。
【0097】
カウルトップカバー10の係合部13をクリップ部材35の被係合部37に係合させると、カウルトップカバー10の当接面15がクリップ部材35の当接面38に当接し、カウルトップカバー10とクリップ部材35との間に隙間を生じさせないで、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けることができる。
【0098】
しかし、カウルトップカバー10やクリップ部材30の製造誤差や取り付け誤差等が生じているときには、図16で示すように、カウルトップカバー10の当接面15とクリップ部材35の当接面38との間に隙間が生じてしまうことがある。このような場合であっても、当接面15と当接面38との間の隙間は、傾斜面15に沿った斜めに傾斜した隙間になる。そのため、上方からこの隙間を見ると、奥行きが浅い隙間として視認されることになるので、カウルトップカバー10と凸部31との境界部における外観からの見栄えが低下するのを抑えることができる。
【0099】
また、カウルトップカバー10をフロントガラス2に取り付けたときには、カウルトップカバー10の表面11a、凸部31の表面31a及びフロントガラス2の表面2aは互いに面一な構成にすることができる。そして、カウルトップカバー10とフロントガラス2との間が、凸部31によって埋められた構成にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本願発明は、カウルトップカバーの取付構造として、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
10・・・カウルトップカバー、11a・・・表面、11b・・・裏面、12・・・舌片、12b・・・屈曲片、13・・・係合部、13a・・・突出部、13b・・・突出部、15・・・当接面、18・・・軟質部材、20・・・クリップ部材、21・・・凸部、22・・・被係合部、22a・・・段差部、22b・・・段差部、25・・・クリップ部材、26・・・凸部、27・・・被係合部、30・・・クリップ部材、31・・・凸部、32・・・被係合部、33・・・当接面、35・・・クリップ部材、36・・・凸部、37・・・被係合部、38・・・当接面、41・・・シール部、50・・・カウルルーバ本体、51・・・ウインドシールドガラス、52・・・リップ部、53・・・クリップ、54・・・嵌合突起、55・・・爪部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に配されたフロントガラスの下端部に当接し、車両のフロントコンパートメントの上部開口を覆うボンネットの後端部と前記フロントガラスの下端部との間を覆い、車幅方向に亘って延設されたカウルトップカバーにおいて、
前記カウルトップカバーと前記フロントガラスとの間に配され、前記フロントガラスの下端部側の裏面に固着されるクリップ部材と、
前記カウルトップカバーに形成された係合部と、
前記クリップ部材に形成され、前記係合部を係合させる被係合部と、を備え
前記係合部は、前記フロントガラスの下端から上端に向かう長さ方向に沿った係合方向で、前記被係合部に係合し、
前記係合部を前記被係合部に係合させたとき、前記カウルトップカバーの表面と前記フロントガラスの表面とが面一に配されていることを特徴とするカウルトップカバーの取付構造。
【請求項2】
前記クリップ部材は、前記フロントガラスの下端側の裏面に当接して固定される固定面と、前記固定面から上方に立設され、前記フロントガラス下端の端面に当接する凸部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載のカウルカバーの取付構造。
【請求項3】
前記カウルトップカバーは、前記カウルトップカバーの裏面に形成され、車両の前後方向における断面形状が略L字状の形状を有し、前記L字状の自由端が前記フロントガラス側に向けて形成された舌片部を備え、
前記舌片部に前記係合部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項4】
前記カウルトップカバーと前記フロントガラス下端の端面との間に、前記カウルトップカバーと前記フロントガラス下端の端面との間の隙間を埋める軟質部材が配設され、
前記係合部と前記被係合部との係合時に、前記軟質部材の表面と前記カウルトップカバーの表面とフロントガラスの表面との間が面一に配されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項5】
前記軟質部材が、前記カウルトップカバーに取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項6】
前記凸部が、前記カウルトップカバーと前記フロントガラス下端の端面との間の隙間を埋める配置構成に形成され、
前記カウルトップカバーと前記凸部との間で互いに対向して当接する当接面が、車両の前後方向に沿って傾斜した傾斜面を有する形状に形成され、
前記係合部と前記被係合部との係合時に、前記凸部の表面と前記カウルトップカバーの表面とフロントガラスの表面との間が面一に配されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項7】
前記クリップ部材と前記カウルトップカバーとの間が、シールされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項1】
車体前部に配されたフロントガラスの下端部に当接し、車両のフロントコンパートメントの上部開口を覆うボンネットの後端部と前記フロントガラスの下端部との間を覆い、車幅方向に亘って延設されたカウルトップカバーにおいて、
前記カウルトップカバーと前記フロントガラスとの間に配され、前記フロントガラスの下端部側の裏面に固着されるクリップ部材と、
前記カウルトップカバーに形成された係合部と、
前記クリップ部材に形成され、前記係合部を係合させる被係合部と、を備え
前記係合部は、前記フロントガラスの下端から上端に向かう長さ方向に沿った係合方向で、前記被係合部に係合し、
前記係合部を前記被係合部に係合させたとき、前記カウルトップカバーの表面と前記フロントガラスの表面とが面一に配されていることを特徴とするカウルトップカバーの取付構造。
【請求項2】
前記クリップ部材は、前記フロントガラスの下端側の裏面に当接して固定される固定面と、前記固定面から上方に立設され、前記フロントガラス下端の端面に当接する凸部と、を有していることを特徴とする請求項1に記載のカウルカバーの取付構造。
【請求項3】
前記カウルトップカバーは、前記カウルトップカバーの裏面に形成され、車両の前後方向における断面形状が略L字状の形状を有し、前記L字状の自由端が前記フロントガラス側に向けて形成された舌片部を備え、
前記舌片部に前記係合部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項4】
前記カウルトップカバーと前記フロントガラス下端の端面との間に、前記カウルトップカバーと前記フロントガラス下端の端面との間の隙間を埋める軟質部材が配設され、
前記係合部と前記被係合部との係合時に、前記軟質部材の表面と前記カウルトップカバーの表面とフロントガラスの表面との間が面一に配されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項5】
前記軟質部材が、前記カウルトップカバーに取り付けられていることを特徴とする請求項4に記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項6】
前記凸部が、前記カウルトップカバーと前記フロントガラス下端の端面との間の隙間を埋める配置構成に形成され、
前記カウルトップカバーと前記凸部との間で互いに対向して当接する当接面が、車両の前後方向に沿って傾斜した傾斜面を有する形状に形成され、
前記係合部と前記被係合部との係合時に、前記凸部の表面と前記カウルトップカバーの表面とフロントガラスの表面との間が面一に配されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカウルトップカバーの取付構造。
【請求項7】
前記クリップ部材と前記カウルトップカバーとの間が、シールされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のカウルトップカバーの取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−32083(P2013−32083A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168661(P2011−168661)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
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