カウルトップカバー構造
【課題】通常時におけるカウルトップカバーの機能・性能を犠牲にせずに、ボンネット上に加わった衝撃力を吸収するカウルトップカバー構造を提供する。
【解決手段】カウルトップカバー10の前部縦壁12に形成した複数個の開口孔13にそれぞれ取り付ける蓋20には、傾斜辺22aを有する複数のリブ21aと取り付け用の爪部23aと、開口孔13の下辺15に引掛ける引掛け部24とを形成する。ボンネット3上に衝突物32が乗り上げられると、前部縦壁12は上から押し潰されるように変形し、開口孔13の上辺14は、傾斜辺22a上を摺動しながら下方に変位する。そして、蓋20に対して、引掛け部24を回動中心とした回転モーメントを作用させ、蓋20を開口孔13から排出させる。開口孔13を支えていた蓋20が外れると、前部縦壁12は更に容易に変形することができるようになり、カウルトップカバーにおける衝撃吸収性能を向上できる。
【解決手段】カウルトップカバー10の前部縦壁12に形成した複数個の開口孔13にそれぞれ取り付ける蓋20には、傾斜辺22aを有する複数のリブ21aと取り付け用の爪部23aと、開口孔13の下辺15に引掛ける引掛け部24とを形成する。ボンネット3上に衝突物32が乗り上げられると、前部縦壁12は上から押し潰されるように変形し、開口孔13の上辺14は、傾斜辺22a上を摺動しながら下方に変位する。そして、蓋20に対して、引掛け部24を回動中心とした回転モーメントを作用させ、蓋20を開口孔13から排出させる。開口孔13を支えていた蓋20が外れると、前部縦壁12は更に容易に変形することができるようになり、カウルトップカバーにおける衝撃吸収性能を向上できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者保護性能に優れた自動車における衝撃吸収構造を備えたカウルトップカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行時に障害物などが衝突した拍子に、ボンネット上に衝突物などが乗り上げると、衝突物からの衝撃によってボンネットは下方に撓むことになる。このとき、ボンネットの下方に剛性の高い車両搭載部品等が配置されていると、衝突物はボンネットを撓ませながら車両搭載部品等に強く衝突してしまうことになる。これを防止するため、衝突物からの衝撃力を緩和できる衝撃吸収構造を、カウルパネルやカウルトップカバーに構成しておくことが求められている。
【0003】
衝撃吸収構造を備えたカウルトップカバーの構成としては、特許文献1に記載された自動車の衝撃吸収構造や特許文献2に記載された車体前部構造などが提案されている。特許文献1に記載された衝撃吸収構造を、本願発明における従来例1として、図11には、カウルトップカバーの前部付近の断面図を示している。また、特許文献2に記載された車体前部構造を、本願発明における従来例2として、図12には、カウルトップカバーの前部付近の断面図を示している。
【0004】
図11に示すように、特許文献1に記載された衝撃吸収構造では、水平方向に配設されるカウルグリル上部50(本願発明では、カウルトップカバーに相当。)と垂直方向に配設されるカウルグリル前部51とは、別体にて構成されている。また、カウルグリル前部51における高さ方向の途中には、衝撃に対して弱部となるV字状の切欠部54が車幅方向に形成されている。
【0005】
そして、上方からの衝撃がボンネット上に加わったときには、ボンネットの裏面側に取り付けたボンネットレインインフォースメント53が、図11の二点鎖線の仮想線で示す下方の位置に変形することで、ボンネット上に加わった衝撃を吸収できる構成となっている。そして、衝撃を吸収する構成として、上方からの衝撃がボンネット上に加わったときには、図11に示すように、カウルグリル前部51の重合部52が、重ね合わされていたカウルグリル上部50から外れるとともに、カウルグリル前部51が切欠部54に沿って屈曲変形する構成となっている。
【0006】
これにより、カウルグリル上部50は下側に向かって自由に変位することができるようになり、ボンネットの変形は促進されて、ボンネットに加わった衝撃を吸収することができるとされている。即ち、例えば、歩行者がボンネット上に乗り上げられたとしても、ボンネットは、カウルグリル上部50に支持されながらの変形が促進されることになるので、歩行者への衝撃吸収を緩和することができる旨の説明がされている。
【0007】
また、本願明細書では図示を省略しているが、特許文献1に記載された別の実施例に係わる衝撃吸収構造では、カウルグリル上部50の前端部を屈曲させて形成した補強部を設け、この補強部に係合孔が形成されている構成例も記載されている。
【0008】
この構成例では、補強部とは別体に構成しているカウルグリル前部51の裏面に係合フックを形成しておき、この係合フックを補強部に形成した係合孔の下側における下辺に係合させることで、カウルグリル前部51をカウルグリル上部50に固定できる構成となっている。そして、カウルグリル上部50に対して衝撃荷重が作用したときには、係合フックの付け根部分が破断して、カウルグリル前部51が下側へ自由に変位できるとしている。
【0009】
図12に示すように、特許文献2に記載された車体前部構造では、カウルカバー61の車両前方側端縁部61a(本願発明では、カウルトップカバーの前縁部に相当。)が、車両上下方向への変位が可能となるように、カウルカバー61を車体60に取り付けた構成となっている。そして、車両前方に配置されたフード62(本願発明では、ボンネットに相当。)とカウルカバー61との間には、両者の間をシールするシールラバー63が設けられている。
【0010】
カウルパネル65とカウルパネル66とを結合しているフランジ67と、カウルカバー61との間には、空間Bが形成されており、空間Bには、フード62を閉じた状態で弾性変形してカウルカバー61を車両上方に付勢する弾性体64が設けられている。
【0011】
図12に示すように、フード62の上部から衝撃力Fが加わったときには、フード62は、片持ち支持されたカウルカバー61を撓ませ、シールラバー63を変形させると共に、弾性体64を屈曲変形させることになる。そして、カウルカバー61の変形、シールラバー63の変形、及び弾性体64の変形によって、フード62に加わった衝撃力Fを吸収する構成となっている。弾性体64は、衝撃力Fによって弾性変形を行って屈曲した形状に変形することができ、衝撃力が除かれたときには、元の形状に戻ることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−106366号公報(図4、段落[0026]、[0033]〜[0037])
【特許文献2】特開2007−22202号公報(図1、図6、段落[0032])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載された発明では、ボンネット上に衝撃力が加わったときに、カウルグリル上部50に重ね合わせた重合部52が、本願の図11の仮想線で示されるように、カウルグリル上部50から外れた状態になれることに関して、その説明は行われていない。実際には、重合部52は、カウルグリル上部50との接触面間に発生する静止の摩擦や重合部52がカウルグリル上部50上を滑るときの滑りの摩擦等に打ち勝って、カウルグリル上部50上を滑って、カウルグリル上部50上から外れなければならない。
【0014】
しかし、特許文献1に示されている構造からみると、上述した摩擦等に打ち勝って重合部52がカウルグリル上部50上を滑っていくことは難しく、本願の図11の仮想線で示されるように、重合部52がカウルグリル上部50から外れた状態になることは難しいものと考えられる。
【0015】
また、特許文献1における別の実施例では、係合フックの付け根部分が破断する旨の説明がある。しかし、特許文献1に示されている構造からみると、係合フックの付け根部分のみを都合良く破断させることは困難であり、係合フックの付け根部分のみを破断させることに対する確実性には欠けたものとなっている。
【0016】
仮に、係合フックの付け根が都合よく破断できたとしても、その後、カウルグリル前部51を車両前方側に導くための構造が備えられていないため、本願の図11のように、カウルグリル前部を都合よく車両前方側へ回転移動させることは考え難い構成となっている。カウルグリル前部51としては、シール部材55を乗せている面と共にそのまま下側へ押し潰されていく可能性が高い構成となっている。
【0017】
特許文献2に記載された発明では、フード62の上部から加わった衝撃力Fを、片持ち支持されたカウルカバー61の変形、シールラバー63の変形、及び弾性体64の変形によって、吸収する構成となっている。また、特許文献2の段落[0032]には、「フード7(本願の図12では、符号62)が弾性体9(同じく、本願の図12では、符号64)が設置された空間Bの分だけよけいに撓むことができ、」と記載されている。この記載から、上部からフード62に衝撃力が加わった場合でも、フード62が撓むことができるのは、シールラバー63の空間Aと空間Bとによって得られる距離であることが分かる。
【0018】
このように、空間Aと空間Bとによって得られる短い距離で、フード62の上部から加わった衝撃力Fを吸収する構成となっているので、衝撃力Fに対する反発力は、強いものとして構成されていることが分かる。従って、フード62は、剛性の高いカウルカバー61によって支持されていることになる。このため、例えば、歩行者がボンネット上に乗り上げたとしても、歩行者に対する衝撃力を緩和するのには、硬い衝撃吸収構造となっている。
【0019】
本願発明は、上述したような従来の問題点を解決することができ、通常時におけるカウルトップカバーの機能・性能を犠牲にすることなく、ボンネット上に衝撃力が加わったときのカウルトップカバーにおける衝撃吸収性能を、簡単に、しかも確実に向上させることのできるカウルトップカバー構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
かかる本願発明の課題は、請求項1〜4に記載したカウルトップカバー構造により達成することができる。
即ち、本願発明のカウルトップカバー構造では、車体前部に配されたフロントガラスの下端部に沿って、車幅方向に延設されたカウルパネルの上部を覆い、車両のフロントコンパートメントの上部開口を覆うボンネットの下方に配設されるカウルトップカバーにおいて、
前記カウルトップカバーは、前記カウルトップカバーの前縁部から下方に延設された前部縦壁と、前記前部縦壁に適宜数形成された開口孔と、前記開口孔を覆い、前記開口孔に取り付けられた蓋と、を有し、
前記前部縦壁の下端部は、車体パネルによって支持され、前記カウルトップカバーの前縁部近傍に設けたシール部材によって、前記ボンネットと前記カウルトップカバーとの間がシールされ、前記開口孔の上辺及び/又は下辺と前記蓋との合わせ部には、水平線に対して傾斜した傾斜辺が、車幅方向に対して少なくとも一ケ所以上、前記カウルトップカバー又は前記蓋に形成されてなることを最も主要な特徴となしている。
【0021】
また、本願発明のカウルトップカバー構造では、前記蓋は、前記開口孔に対して爪嵌合してなることを主要な特徴となしている。
更に、本願発明のカウルトップカバー構造では、前記傾斜辺が、前記蓋の裏面に形成されてなること、又は、前記開口孔の上辺に形成されてなることを主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0022】
カウルトップカバーの車両前方側における前部縦壁には、カウルトップカバーの下方に配置されている電装系部品等のメンテナンスや車台番号を確認するための作業孔が設けられている場合が多い。一般的に、これらの孔は、カウルトップカバーとは別体に成形された蓋で塞がれている構造となっている。また、前部縦壁と蓋とは、エンジンルームと外気導入部との隔壁部にあたるため、車両の走行時に振動などの影響によって、蓋が前部縦壁の孔から容易に外れないように、クリップや爪嵌合などによってしっかりと前部縦壁の孔に固定されている。
【0023】
そのため、例えば、歩行者に衝突して、ボンネット上に歩行者による衝撃力が加わり、上方からカウルトップカバーを押し潰す負荷が、カウルトップカバーに作用したときでも、蓋は、カウルトップカバーから容易に離脱せずに、カウルトップカバーと一緒に押し潰されていく構成となっている。
【0024】
このように構成されているので、ボンネット上に乗り上げた歩行者に及ぼす衝撃値としては、前部縦壁における蓋が取り付けられている部分の衝撃値が、蓋を取り付ける孔が形成されていない部分の衝撃値に対して、同等かそれ以上のものとなっている。
【0025】
本願発明は、カウルトップカバーの前部縦壁に形成されている開口孔と、この開口孔に取り付けられる蓋との関係に着目して、カウルトップカバー構造を改良した発明である。そのため、本願発明では、ボンネットに衝撃力が加わっていない通常の使用時においては、蓋を前部縦壁の開口孔にしっかりと取り付けておくことができる構成となっている。そして、上方からの衝撃力によってカウルトップカバーが、押し潰されるような変形が生じたときには、その押し潰されていく変形の動きを阻害することが無いように、蓋が前部縦壁の開口孔から容易に、しかも確実に外れるように構成している。
【0026】
尚、本願発明における開口孔は、上述した作業孔に限定されるものではなく、カウルトップカバーの前部縦壁に形成された孔であって、同孔を蓋によって塞ぐことができる孔であればよい。そして、前部縦壁に形成する開口孔の形成部位としては、以下で説明する衝撃吸収が必要な部位に必要数配設しておくことができる。
【0027】
本願発明では、カウルトップカバーの前部縦壁における下端部は、車体パネルによって支持されている構成となっている。この構成によって、カウルトップカバーに対して、上から押し潰されるような衝撃力が作用したときには、カウルトップカバーの前部縦壁における下端部は、車体パネルによって下方に変位しない構成となっているので、カウルトップカバーの前部縦壁は、座屈しながら上から押し潰されていくことになる。
【0028】
尚、カウルトップカバーの前部縦壁における下端部を、図2に示したように、通常時において車体パネルに当接させた配置構成としておくこともできる。あるいは、後述する図5に示すように、カウルトップカバーが多少下方に変位したときに、前部縦壁の下端部が車体パネルに当接するように、前部縦壁の下端部と車体パネルとの間に多少の隙間が形成されている配置構成とすることもできる。
【0029】
そして、本願請求項1に記載した発明における「前部縦壁における下端部は、車体パネルによって支持されている構成」は、上述した、前部縦壁の下端部が常に車体パネルに当接している構成も、前部縦壁の下端部と車体パネルとの間に多少の隙間が形成されている構成も、包含しているものである。
【0030】
本願発明では、前部縦壁における開口孔の上辺及び/又は下辺と蓋との合わせ部には、水平線に対して傾斜した傾斜辺が、車幅方向に対して少なくとも一ケ所以上形成されており、しかも、この傾斜辺は、カウルトップカバー又は蓋に形成されている。
【0031】
ボンネット上に衝撃力が加わったときには、カウルトップカバーの前部縦壁は、下方に変形しながら押し潰されていくことになる。このとき、本願発明では、上述した構成によって、例えば、開口孔の上辺に対向している蓋の裏面側に傾斜辺を有するリブが形成されている場合について、説明を行えば、開口孔の上辺は、前記リブの傾斜辺上を摺動しながら下方に変位することになる。
【0032】
そして、開口孔の上辺とリブの傾斜辺との間における傾斜角による楔作用によって、蓋には、開口孔に対して車両前方側に回動する回転モーメントが作用することになる。蓋の回動によって、蓋は、開口孔から車両前方側に向かって強制的に排出されることになる。
【0033】
このとき、蓋は、開口孔に対して爪嵌合している構成であったとしても、カウルトップカバーの前部縦壁が下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に、爪嵌合が耐え切れなくなり、開口孔との爪嵌合状態は解除されることになる。そして、蓋が外れた後の前部縦壁は、開口孔を支えていた蓋がなくなるため、上からの荷重に対して容易に変形することができ、開口孔の上方に位置するボンネットの更なる下方への変位が可能となる。
その結果、例えば、歩行者に衝突して、ボンネット上に乗り上げた歩行者に及ぼす衝撃値を最大限吸収することができるようになる。
【0034】
このように、本願発明では、カウルトップカバーの前部縦壁が、座屈しながら上から押し潰されていくときに、前部縦壁の開口孔に取り付けられていた蓋を強制的に、開口孔から外すことができる構成を備えていることを特徴としている。この構成によって、カウルトップカバーの前部縦壁が、座屈しながら上から押し潰されていくまでは、蓋は開口孔に取り付けられている状態を維持することができる。そして、カウルトップカバーの前部縦壁における強度を保つことができるとともに、カウルトップカバーとしての機能、例えば、エンジンルームとの遮蔽機能等を奏させることができる。
【0035】
また、カウルトップカバーの前部縦壁が、座屈しながら上から押し潰されていくときには、本願発明に係わる傾斜辺の作用によって、蓋を開口孔から容易に外すことができ、開口孔における強度を低下させて、カウルトップカバーの前部縦壁が、座屈しながら上から押し潰され易くすることができる。このように、本願発明によって、カウルトップカバーにおける衝撃吸収性能を容易に向上させることができる。
【0036】
本願発明のカウルトップカバー構造では、蓋を開口孔に取り付けるときの取り付け構造として、クリップによる取り付け構造を用いることも、爪嵌合による取り付け構造を用いることも、両面テープで取り付ける構造を用いることも、着脱が不要な部位に蓋を取り付ける場合には、溶着等の取り付け構造等を用いることができる。
【0037】
爪嵌合による取り付け構造を採用しておくことにより、蓋を開口孔に対して着脱自在に構成しておくことができ、通常は蓋が開口孔から外れ難くしておくことができる。そして、上からの衝撃力が加わったときには、爪嵌合に対して捩れ力が作用することになるので、爪嵌合の構成としては、引張力等に対しては、蓋が開口孔から外れない程度の強度を持たせておき、捩れ力に対しては、破断等が生じ易いような構成にしておくことで、蓋を開口孔から外れ易くさせることができる。そのため、蓋を開口孔に取り付ける取り付け構造としては、爪嵌合による取り付け構造が好ましい取り付け構造となる。
【0038】
本願発明のカウルトップカバー構造では、傾斜辺を蓋の裏面に形成しておくことも、開口孔の上辺に形成しておくこともできる。蓋の裏面に傾斜辺を形成しておくときには、蓋の裏面側にリブを立設し、リブの側面に傾斜辺を形成しておくことができる。傾斜辺としては、開口孔の上辺に対向する蓋の裏面側における部位や、開口孔の下辺に対向する蓋の裏面側における部位、あるいは、開口孔の上下両辺に対向する蓋の裏面側におけるそれぞれの部位に形成しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、車体前部のボンネットを開いた状態を示す斜視図である。(実施例1)
【図2】図2は、図1のII−II断面図である。(実施例1)
【図3】図3は、蓋の要部断面図である。(実施例1)
【図4】図4は、図2の状態からボンネット上に衝撃力が加わったときの作動を示す断面図である。(実施例1)
【図5】図5は、蓋及びカウルトップカバーの要部断面図である。(実施例2)
【図6】図6は、蓋及びカウルトップカバーの要部断面図である。(実施例3)
【図7】図7は、蓋及びカウルトップカバーの要部断面図である。(実施例4)
【図8】図8は、蓋及びカウルトップカバーの要部断面図である。(実施例5)
【図9】図9は、蓋及びカウルトップカバーの要部断面図である。(実施例6)
【図10】図10は、蓋及びカウルトップカバーの要部断面図である。(実施例7)
【図11】図11は、ボンネット上に衝撃力が加わったときの作動を示す断面図である。(従来例1)
【図12】図12は、フード上に衝撃力が加わったときの作動を示す断面図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0040】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わるカウルトップカバー構造としては、以下で説明する形状、構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、構成であれば、それらの形状、構成を採用することができるものである。このため、本願発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0041】
図1には、車体前部のボンネット3を開いた状態の斜視図を示している。また、図2には、図1のII−II断面図を示している。フロントガラス2の下縁部は、カウルパネル5によって支持されており、フロントガラス2の下縁部の上面部は、カウルパネル5の上部を覆うカウルトップカバー10によって覆われている。カウルトップカバー10の車体1に対する取り付け構造は、本願発明における特徴部を構成するものではなく、従来から公知の取り付け構造を採用することができる。
【0042】
カウルパネル5及びカウルトップカバー10は、樹脂材料あるいは金属材料によって構成しておくことができる。エンジン等を収納するフロントコンパートメント4の上部は、ボンネット3により覆われており、ボンネット3の後端部側あるいは前端部側が開口できるように、フロントコンパートメント4の前端部あるいは後端部において、ボンネット3は回動可能に支承されている。
【0043】
ボンネット3の裏面側には、ボンネットレインフォースメント3aが取付けられており、ボンネット3を閉じた状態において、ボンネットレインフォースメント3aは、カウルトップカバー10の前縁部11に設けたシール部材6に圧接している。そして、シール部材6によって、雨水等が、フロントコンパートメント4内に浸入するのが防止されている。
【0044】
カウルトップカバー10の前縁部11には下方に延設した前部縦壁12が形成されており、前部縦壁12の下端部12aは、車体パネル8に支持された構成となっている。前部縦壁12の下端部12aには、更に屈曲部12bが形成されており、屈曲部12bは、車体パネル8の逆L字状に屈曲した屈曲部8a上に支持された配置構成となっている。
【0045】
前部縦壁12の下端部12aにおける屈曲部12bを、車体パネル8の屈曲部8a上に当接させておく構成の代わりに、前部縦壁12の下端部12aにおける屈曲部12bと車体パネル8の屈曲部8aとの間に隙間を形成した配置関係としておくこともできる。このように構成しておいた場合には、後述するようにカウルトップカバー10に衝撃力が加わって、前部縦壁12が下方向に変位したときには、前部縦壁12の下端部12aにおける屈曲部12bが車体パネル8の屈曲部8aに当接する配置構成としておくことができる。
【0046】
カウルトップカバー10の前縁部11から下方に延設した前部縦壁12には、図1に示すように前部縦壁12の複数個所において開口孔13が形成されている。図示例では、前部縦壁12の左右及び中央の3か所に、それぞれ開口孔13を形成した構成例を示しているが、本願発明は、この構成例に限定されるものではなく、以下で説明する開口孔13を利用した衝撃吸収を行わせるのに必要な部位に必要な個数だけ、開口孔13を形成しておくことができる。
【0047】
開口孔13としては、カウルトップカバー10の下方に配置されている電装系部品等の車両搭載部品33に対して行うメンテナンスや、車台番号を確認するための作業孔を利用することもできる。
【0048】
各開口孔13には、それぞれの開口孔13を塞ぐ蓋20が取り付けられており、各蓋20の裏面における左右両端部には、開口孔13と爪嵌合する爪部23aが形成されている。爪部23aは、蓋20の裏面から立設して先端部にフック状の頭部を有した形状に構成されている。
【0049】
蓋20の裏面に形成した引掛け部24を開口孔13の下辺15に係合させた後、引掛け部24を中心として蓋20を開口孔13に向かって回動させて、左右の爪部23aを開口孔13内に挿入すると、フック状の頭部に形成された傾斜面に開口孔13における左右の側縁が摺接して、それぞれのフック状の頭部は、左右の爪部23a間が近接する方向に弾性変形する。
【0050】
そして、フック状の頭部を、開口孔13内に挿入させることができる。フック状の頭部が開口孔13内に挿入されると、弾性変形していたフック状の頭部は元の状態に復元して、開口孔13と爪嵌合することができる。これにより、蓋20を開口孔13に取り付けることができる。
【0051】
開口孔13の上辺14との合わせ部における蓋20の裏面側の部位には、図3に示すように、水平線に対して角度θ傾斜し、蓋20の裏面側から下り勾配となった傾斜辺21aを有するリブ21aが形成されている。リブ21aは、蓋20の左右方向に対して少なくとも一ケ所以上形成しておくことができる。
【0052】
尚、上述した傾斜辺21aの傾斜角度θとしては、約30°〜約60°の傾斜角度としておくことができる。傾斜角度θとしては、開口孔13の上辺14と傾斜辺21aとの間での楔作用によって、蓋20が開口孔13から取り外れ易い角度となるのであれば、上述した傾斜角度に限定されるものではなく、適宜の傾斜角度として形成しておくことができる。
【0053】
図2に示しているような、開口孔13に蓋20を取り付けた状態において、例えば、図4に示すように、車両に衝突した歩行者が、ボンネット3上に乗り上げられると、衝突物32である歩行者によってボンネット3に対して上からの衝撃力Nが加わる。このとき、ボンネット3は、ボンネットレインフォースメント3aとの間の空間を狭めると共に、シール部材6を圧縮してカウルトップカバー10の前縁端11側を、二点差線で示す状態から実線で示す状態となるように下方向に向かって変位させる。
【0054】
これにより、カウルトップカバー10の前縁端11から下方に延設された前部縦壁12も、下方向に変位しようとする。しかし、前部縦壁12の下端部12aは、車体パネル8に当接した状態で下方への変位が規制されているので、前部縦壁12は座屈によって上から押し潰されるような変形が生じる。
【0055】
そして、開口孔13の上辺14は、リブ21aの傾斜辺22a上を摺動しながら下方に変位することになる。このとき、上辺14とリブ21aの傾斜辺22aとの間における傾斜角による楔作用によって、蓋20には上辺14によって車両前方側へ押し出される力が作用し、蓋20に対しては、開口孔13の下辺15に係合した引掛け部24を回動中心として、車両前方側に回動させる回転モーメントが作用する。この回転モーメントの作用によって、蓋20には引掛け部24を中心とした回動が生じることになる。
【0056】
また、蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部23aは、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、前記回転モーメントによる捩れ力が爪部23aに作用して、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0057】
そして、蓋20は、図4で示しているように、開口孔13から車両前方側に向かって容易に且つ確実に外れることになる。蓋20が外れた後の前部縦壁12では、開口孔13を支える構造物である蓋20がなくなるため、上からの衝撃力Nに対して容易に変形することができるようになり、開口孔13の上方に位置するボンネット3の更なる下方への変位を可能とする。
【0058】
その結果、例えば、歩行者に衝突して、ボンネット上に歩行者が乗り上げた場合でも、歩行者に及ぼす衝撃値を、ボンネット3が下方に変位することによって消費されるエネルギーと前部縦壁12の開口孔13から蓋20を取り外すときに消費されるエネルギーと前部縦壁12を座屈させるときに消費されるエネルギー等とによって、最大限吸収することができる。このように、本願発明では、カウルトップカバーにおける衝撃吸収性能を容易に向上させることができる。
【0059】
尚、蓋20に設けたリブ21aの傾斜辺22aは、前部縦壁12は座屈によって上から押し潰されるような変形を生じたときに、開口孔13から蓋20を強制的に排出するための機能について説明を行ったが、リブ21aの傾斜辺22aにおける機能としては、蓋20を開口孔13に取り付ける際のガイド部材としての機能も有している。
【実施例2】
【0060】
本願発明に係わる実施例2の構成を、図5に示す蓋20及びカウルトップカバー10の要部断面図を用いて説明する。実施例2では、傾斜辺22bが、内側に屈曲した蓋20の面によって形成されている。また、内側に屈曲した蓋20に強度を持たせるため、蓋20の表面側にはリブ25が形成されている。
【0061】
更に、シール部材6がカウルトップカバー10の前縁部側に立設した突起部に嵌合する構成となっている。なお、シール部材6の取り付け構成としては、実施例1に記載したような構成としておくこともできる。
【0062】
実施例2における上述した構成以外の他の構成は、実施例1の場合と同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0063】
実施例2では、ボンネット3に衝撃力が加わっていない通常の使用状態において、カウルトップカバー10の前部縦壁12に形成した開口孔13の上辺14が、蓋20の傾斜辺22bと当接していない構成とした例を示している。しかし、通常の使用状態において、開口孔13の上辺14が、蓋20の傾斜辺22bと当接している配置構成としておくこともできる。
【0064】
実施例2では、図示せぬボンネットから下方に向かって作用する衝撃力が加わったときには、その衝撃力によってカウルトップカバー10の前部縦壁12が下方に変位し、開口孔13の上辺14は、蓋20の傾斜辺22bに当接する。更に、前部縦壁12の開口孔13が下方に変位すると、実施例1と同様に、上辺14と蓋20の傾斜辺22bとの楔作用によって、蓋20は開口孔13から車両の前方側に排出されるように押し出される。
【0065】
このとき、実施例1と同様に、開口孔13の下辺に係合する引掛け部が、蓋20に設けられている場合には、開口孔13の下辺に係合している引掛け部を中心として、蓋20は開口孔13から外れる方向に回動することになる。
【0066】
蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部(不図示)は、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、蓋20に作用する回転モーメントによる捩れ力によって、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0067】
このようにして、蓋20が開口孔13から取り外されると、開口孔13における強度が低下して、前部縦壁12は座屈しながら下方に押し潰されていくことができる。そして、ボンネットに対して衝撃力を加えた、衝突物に及ぼす衝撃値を、最大限吸収することができる。
【実施例3】
【0068】
本願発明に係わる実施例3の構成を、図6に示す蓋20及びカウルトップカバー10の要部断面図を用いて説明する。実施例3では、傾斜辺22bが、蓋20の内側に突出した突出部材26に形成されている。また、カウルトップカバー10の前縁部に形成した前部縦壁12は、斜め前方側に向かって傾斜した傾斜面として構成されている。そして、蓋20も前部縦壁12と平行な取り付け状態となるように、斜め前方側に向かって傾斜した状態で開口孔13に取り付けられている。
【0069】
また、シール部材6は、カウルトップカバー10の前縁部側から立設した状態に配されている構成となっている。なお、シール部材6の取り付け構成としては、実施例1、2に記載したような構成としておくこともできる。
【0070】
実施例3における上述した構成以外の他の構成は、実施例1の場合と同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0071】
蓋20の内側に突出した突出部材26の付け根部分には、脆弱部26aが形成されており、図示例では、脆弱部26aとして、突出部材26の付け根部分に切欠きが形成されている。脆弱部26aを形成しておくことにより、上からの衝撃力によってカウルトップカバー10の前部縦壁12が下方に変位したときに、所定の押圧力によって開口孔13の上辺14が当接している脆弱部26aが下方に押し潰されるように変形する。
【0072】
突出部材26が下方に押し潰されるように変形することによって、実施例1の図3に示した傾斜角度θが大きくなる。そして、突出部材26の傾斜辺22cに対する開口孔13の上辺14の滑りがより滑らかとなることができ、蓋20を開口孔13から車両前方側に向かって容易に且つ確実に外れ易くすることができる。
【0073】
実施例3では実施例2と同様に、ボンネット3に衝撃力が加わっていない通常の使用状態において、カウルトップカバー10の前部縦壁12に形成した開口孔13の上辺14が、蓋20の傾斜辺22cと当接していない配置構成とした例を示しているが、通常の使用状態において、開口孔13の上辺14が、蓋20の傾斜辺22cに当接している配置構成としておくこともできる。
【0074】
実施例3においても、図示せぬボンネットから下方に向かって作用する衝撃力が加わったときには、その衝撃力によってカウルトップカバー10の前部縦壁12が下方に変位し、開口孔13の上辺14は、蓋20の傾斜辺22bに当接する。更に、前部縦壁12が下方に変位すると、突出部材26を下方に押し潰しながら変形させて、上辺14と蓋20の傾斜辺22cとの楔作用によって、蓋20は開口孔13から外れる方向に押し出されることになる。
【0075】
このとき、実施例1と同様に、開口孔13の下辺に係合する引掛け部が、蓋20に設けられている場合には、開口孔13の下辺に係合している引掛け部を中心として、蓋20は開口孔13から外れる方向に回動することになる。
【0076】
蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部(不図示)は、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、蓋20に作用する回転モーメントによる捩れ力によって、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0077】
このようにして、蓋20が開口孔13から取り外されると、開口孔13における強度が低下して、前部縦壁12は座屈しながら下方に押し潰されていくことができる。そして、ボンネットに対して衝撃力を加えた、衝突物に及ぼす衝撃値を、最大限吸収することができる。
【実施例4】
【0078】
本願発明に係わる実施例4の構成を、図7に示す蓋20及びカウルトップカバー10の要部断面図を用いて説明する。実施例4では、傾斜辺22bが、カウルトップカバー10の内面に形成したリブ16の端面に傾斜辺16aを形成した構成となっており、傾斜辺16aには、蓋20の裏面に形成したフランジ27が当接する構成となっている。蓋20の裏面に形成したフランジ27は、リブ27aによって支持固定されている。
【0079】
また、カウルトップカバー10の前縁部に形成した前部縦壁12は、斜め前方側に向かって傾斜した傾斜面として構成されている。そして、蓋20も前部縦壁12と平行な取り付け状態となるように、斜め前方側に向かって傾斜した状態で開口孔13に取り付けられている。
【0080】
また、シール部材6は、カウルトップカバー10の前縁部側に立設した一対の突起間に嵌合される構成となっている。尚、シール部材6の取り付け構成としては、実施例1〜3に記載したような構成としておくこともできる。
【0081】
実施例4における上述した構成以外の他の構成は、実施例1の場合と同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0082】
実施例4では、ボンネット3に衝撃力が加わっていない通常の使用状態において、カウルトップカバー10の前部縦壁12内面に形成したリブ16の傾斜辺16a(この傾斜辺16aは、開口孔13の上辺14でもある。)が、蓋20の裏面に形成したフランジ27と当接している配置構成とした例を示しているが、通常の使用状態において、カウルトップカバー10側の傾斜辺16aと蓋20のフランジ27とが、当接していない配置構成としておくこともできる。
【0083】
実施例4においても、図示せぬボンネットから下方に向かって作用する衝撃力が加わったときには、その衝撃力によってカウルトップカバー10の前部縦壁12が下方に変位し、カウルトップカバー10側の傾斜辺16aと蓋20のフランジ27との楔作用によって、蓋20は開口孔13から外れる方向に押し出されることになる。
【0084】
このとき、実施例1と同様に、開口孔13の下辺に係合する引掛け部が、蓋20に設けられている場合には、開口孔13の下辺に係合している引掛け部を中心として、蓋20は開口孔13から外れる方向に回動することになる。
【0085】
蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部(不図示)は、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、蓋20に作用する回転モーメントによる捩れ力によって、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0086】
このようにして、蓋20が開口孔13から取り外されると、開口孔13における強度が低下して、前部縦壁12は座屈しながら下方に押し潰されていくことができる。そして、ボンネットに対して衝撃力を加えた、衝突物に及ぼす衝撃値を、最大限吸収することができる。
【実施例5】
【0087】
本願発明に係わる実施例5の構成を、図8に示す蓋20及びカウルトップカバー10の要部断面図を用いて説明する。実施例5では、カウルトップカバー10の前部縦壁12における下端部が屈曲部17として形成されており、蓋20の内面に形成したリブ21aの傾斜辺22bと屈曲部17との接触面積を大きく構成している。尚、前部縦壁12の下端部における屈曲部17は、開口孔13における上辺でもある。
【0088】
また、カウルトップカバー10の前縁部に形成した前部縦壁12は、斜め前方側に向かって傾斜した傾斜面として構成されている。そして、蓋20も前部縦壁12と平行な取り付け状態となるように、斜め前方側に向かって傾斜した状態で開口孔13に取り付けられている。
【0089】
更に、シール部材6は、カウルトップカバー10の前縁部側に直接取り付けられた構成となっている。なお、シール部材6の取り付け構成としては、実施例1〜4に記載したような構成としておくこともできる。
【0090】
実施例5における上述した構成以外の他の構成は、実施例1の場合と同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0091】
実施例5では実施例1と同様に、ボンネット3に衝撃力が加わっていない通常の使用状態において、前部縦壁12の下端部に形成した屈曲部17が、蓋20の傾斜辺22aと当接している配置構成とした例を示しているが、通常の使用状態において、屈曲部17が、蓋20の傾斜辺22aと当接していない配置構成としておくこともできる。
【0092】
実施例5においても、図示せぬボンネットから下方に向かって作用する衝撃力が加わったときには、その衝撃力によってカウルトップカバー10の前部縦壁12が下方に変位し、前部縦壁12の下端部に形成した屈曲部17とリブ21aに形成した傾斜辺22aとの楔作用によって、蓋20は開口孔13から外れる方向に押し出されることになる。
【0093】
このとき、実施例1と同様に、開口孔13の下辺に係合する引掛け部が、蓋20に設けられている場合には、開口孔13の下辺に係合している引掛け部を中心として、蓋20は開口孔13から外れる方向に回動することになる。
【0094】
蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部(不図示)は、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、蓋20に作用する回転モーメントによる捩れ力によって、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0095】
このようにして、蓋20が開口孔13から取り外されると、開口孔13における強度が低下して、前部縦壁12は座屈しながら下方に押し潰されていくことができる。そして、ボンネットに対して衝撃力を加えた、衝突物に及ぼす衝撃値を、最大限吸収することができる。
【実施例6】
【0096】
本願発明に係わる実施例6の構成を、図9に示す蓋20及びカウルトップカバー10の要部断面図を用いて説明する。実施例6では、蓋20の内面に設けたリブ21bの上下両端部に、傾斜辺22a、22dが形成されている構成となっている。そして、カウルトップカバー10の前部縦壁12に形成した開口孔13の上辺14及び下辺15が、それぞれリブ21bの上下両端部に形成した傾斜辺22a及び傾斜辺22dに当接する配置構成となっている。
【0097】
また、カウルトップカバー10の前縁部に形成した前部縦壁12は、開口孔13の上下辺の中間部にかけて斜め後方側に向かって傾斜した傾斜面として構成されており、開口孔13の上下辺の中間部から前部縦壁12の下端部にかけては、略鉛直な面として形成されている。そして、蓋20の中央部は、凹部状に屈曲した屈曲部28として形成されている。
【0098】
蓋20の中央部から蓋20の上端部にかけての面部は、斜め後方側に向かって傾斜した前部縦壁12の傾斜面と略平行な配置構成となっている。また、蓋20の中央部から蓋20の下端部にかけての面部は、前部縦壁12における略鉛直な面と略平行な配置構成となっている。
【0099】
図9では、シール部材6の構成を図示していないが、シール部材6の取り付け構成としては、実施例1〜5に記載したような構成としておくこともできる。
【0100】
実施例6における上述した構成以外の他の構成は、実施例1の場合と同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0101】
実施例6では実施例1と同様に、ボンネット3に衝撃力が加わっていない通常の使用状態において、前部縦壁12の開口孔13の上辺14及び下辺15が、それぞれ蓋20の傾斜辺22a及び傾斜辺22dとに当接している配置構成例を示しているが、通常の使用状態において、開口孔13の上辺14及び下辺15が、それぞれ蓋20の傾斜辺22a及び傾斜辺22dとに当接していない配置構成としておくこともできる。
【0102】
実施例6では、蓋20の中央部に屈曲部28を形成しておくとともに、蓋20の中央部から蓋20の上端部にかけての面部を斜め後方側に向かって傾斜した前部縦壁12の傾斜面と略平行に配設し、蓋20の中央部から蓋20の下端部にかけての面部を前部縦壁12における略鉛直な面と略平行に配設した構成となっているので、開口孔13の上辺14と下辺15とによって、傾斜辺22aと傾斜辺22dとを挟み込もうとする押圧力を、開口孔13から蓋20を排出させるのに有効な力として作用させることができる。
【0103】
即ち、傾斜辺22aと傾斜辺22dとを挟み込もうとする押圧力は、蓋20に対して、屈曲部28の曲げを更に大きくする力として作用するとともに、蓋20を開口孔13から離れる方向に押す力として作用させることができる。
【0104】
蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部(不図示)は、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、蓋20に作用する回転モーメントによる捩れ力によって、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0105】
このようにして、蓋20が開口孔13から取り外されると、開口孔13における強度が低下して、前部縦壁12は座屈しながら下方に押し潰されていくことができる。そして、ボンネットに対して衝撃力を加えた、衝突物に及ぼす衝撃値を、最大限吸収することができる。
【実施例7】
【0106】
本願発明に係わる実施例7の構成を、図10に示す蓋20及びカウルトップカバー10の要部断面図を用いて説明する。実施例7では、蓋20の内面に設けたリブ21bの上端部に、カウルトップカバー10の前部縦壁12に形成した開口孔13の上辺14に係合する爪部29bが形成されている。また、蓋20の内面に設けたリブ21bの下端部に形成した傾斜辺22dは、開口孔13の下辺15に当接する構成となっている。そして、蓋20の中央部には、段差部29が形成されている。
【0107】
図10では、シール部材6の構成を図示していないが、シール部材6の取り付け構成としては、実施例1〜5に記載したような構成としておくこともできる。
【0108】
実施例7における上述した構成以外の他の構成は、実施例1の場合と同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0109】
実施例7では実施例1と同様に、ボンネット3に衝撃力が加わっていない通常の使用状態において、前部縦壁12の開口孔13の下辺15が、蓋20の傾斜辺22dに当接している配置構成例を示しているが、通常の使用状態において、開口孔13の下辺15が、蓋20の傾斜辺22dとに当接していない配置構成としておくこともできる。
【0110】
実施例7では、蓋20の中央部に形成した段差部29によって、開口孔13の下辺15から傾斜辺22dに作用する押圧力を、開口孔13から蓋20を排出させるのに有効な力として作用させることができる。
【0111】
即ち、爪部23bに作用する開口孔13の上辺14からの押圧力と、傾斜辺22dに作用する開口孔13の下辺15からの押圧力とによって、蓋20は段差部29で折れ曲がる方向に屈曲し易くなるとともに、開口孔13の下辺15と傾斜辺22dとの楔作用によって、蓋20を開口孔13から離れる方向に押す力を作用させることができる。
【0112】
蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部(不図示)は、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、蓋20に作用する回転モーメントによる捩れ力によって、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0113】
このようにして、蓋20が開口孔13から取り外されると、開口孔13における強度が低下して、前部縦壁12は座屈しながら下方に押し潰されていくことができる。そして、ボンネットに対して衝撃力を加えた、衝突物に及ぼす衝撃値を、最大限吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本願発明は、ブロー成形において凹部を形成するものに対して、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
3・・・ボンネット、5・・・カウルパネル、6・・・シール部材、8・・・車体パネル、10・・・カウルトップカバー、11・・・前縁部、12・・・前部縦壁、13・・・開口孔、14・・・上辺、15・・・下辺、16・・・リブ、16a・・・傾斜辺、17・・・屈曲部、20・・・蓋、21a、21b・・・リブ、22a、22b、22c、22d・・・傾斜辺、26・・・突出部材、27・・・フランジ、32・・・衝突物、50・・・カウルグリル上部、51・・・カウルグリル前部、52・・・重合部、53・・・ボンネットレインインフォースメント、54・・・切欠部、55・・・シール部材、60・・・車体、61・・・カウルカバー、61a・・・前方側端縁部、62・・・フード、63・・・シールラバー、64・・・弾性体、N・・・衝撃力。
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者保護性能に優れた自動車における衝撃吸収構造を備えたカウルトップカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行時に障害物などが衝突した拍子に、ボンネット上に衝突物などが乗り上げると、衝突物からの衝撃によってボンネットは下方に撓むことになる。このとき、ボンネットの下方に剛性の高い車両搭載部品等が配置されていると、衝突物はボンネットを撓ませながら車両搭載部品等に強く衝突してしまうことになる。これを防止するため、衝突物からの衝撃力を緩和できる衝撃吸収構造を、カウルパネルやカウルトップカバーに構成しておくことが求められている。
【0003】
衝撃吸収構造を備えたカウルトップカバーの構成としては、特許文献1に記載された自動車の衝撃吸収構造や特許文献2に記載された車体前部構造などが提案されている。特許文献1に記載された衝撃吸収構造を、本願発明における従来例1として、図11には、カウルトップカバーの前部付近の断面図を示している。また、特許文献2に記載された車体前部構造を、本願発明における従来例2として、図12には、カウルトップカバーの前部付近の断面図を示している。
【0004】
図11に示すように、特許文献1に記載された衝撃吸収構造では、水平方向に配設されるカウルグリル上部50(本願発明では、カウルトップカバーに相当。)と垂直方向に配設されるカウルグリル前部51とは、別体にて構成されている。また、カウルグリル前部51における高さ方向の途中には、衝撃に対して弱部となるV字状の切欠部54が車幅方向に形成されている。
【0005】
そして、上方からの衝撃がボンネット上に加わったときには、ボンネットの裏面側に取り付けたボンネットレインインフォースメント53が、図11の二点鎖線の仮想線で示す下方の位置に変形することで、ボンネット上に加わった衝撃を吸収できる構成となっている。そして、衝撃を吸収する構成として、上方からの衝撃がボンネット上に加わったときには、図11に示すように、カウルグリル前部51の重合部52が、重ね合わされていたカウルグリル上部50から外れるとともに、カウルグリル前部51が切欠部54に沿って屈曲変形する構成となっている。
【0006】
これにより、カウルグリル上部50は下側に向かって自由に変位することができるようになり、ボンネットの変形は促進されて、ボンネットに加わった衝撃を吸収することができるとされている。即ち、例えば、歩行者がボンネット上に乗り上げられたとしても、ボンネットは、カウルグリル上部50に支持されながらの変形が促進されることになるので、歩行者への衝撃吸収を緩和することができる旨の説明がされている。
【0007】
また、本願明細書では図示を省略しているが、特許文献1に記載された別の実施例に係わる衝撃吸収構造では、カウルグリル上部50の前端部を屈曲させて形成した補強部を設け、この補強部に係合孔が形成されている構成例も記載されている。
【0008】
この構成例では、補強部とは別体に構成しているカウルグリル前部51の裏面に係合フックを形成しておき、この係合フックを補強部に形成した係合孔の下側における下辺に係合させることで、カウルグリル前部51をカウルグリル上部50に固定できる構成となっている。そして、カウルグリル上部50に対して衝撃荷重が作用したときには、係合フックの付け根部分が破断して、カウルグリル前部51が下側へ自由に変位できるとしている。
【0009】
図12に示すように、特許文献2に記載された車体前部構造では、カウルカバー61の車両前方側端縁部61a(本願発明では、カウルトップカバーの前縁部に相当。)が、車両上下方向への変位が可能となるように、カウルカバー61を車体60に取り付けた構成となっている。そして、車両前方に配置されたフード62(本願発明では、ボンネットに相当。)とカウルカバー61との間には、両者の間をシールするシールラバー63が設けられている。
【0010】
カウルパネル65とカウルパネル66とを結合しているフランジ67と、カウルカバー61との間には、空間Bが形成されており、空間Bには、フード62を閉じた状態で弾性変形してカウルカバー61を車両上方に付勢する弾性体64が設けられている。
【0011】
図12に示すように、フード62の上部から衝撃力Fが加わったときには、フード62は、片持ち支持されたカウルカバー61を撓ませ、シールラバー63を変形させると共に、弾性体64を屈曲変形させることになる。そして、カウルカバー61の変形、シールラバー63の変形、及び弾性体64の変形によって、フード62に加わった衝撃力Fを吸収する構成となっている。弾性体64は、衝撃力Fによって弾性変形を行って屈曲した形状に変形することができ、衝撃力が除かれたときには、元の形状に戻ることができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−106366号公報(図4、段落[0026]、[0033]〜[0037])
【特許文献2】特開2007−22202号公報(図1、図6、段落[0032])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載された発明では、ボンネット上に衝撃力が加わったときに、カウルグリル上部50に重ね合わせた重合部52が、本願の図11の仮想線で示されるように、カウルグリル上部50から外れた状態になれることに関して、その説明は行われていない。実際には、重合部52は、カウルグリル上部50との接触面間に発生する静止の摩擦や重合部52がカウルグリル上部50上を滑るときの滑りの摩擦等に打ち勝って、カウルグリル上部50上を滑って、カウルグリル上部50上から外れなければならない。
【0014】
しかし、特許文献1に示されている構造からみると、上述した摩擦等に打ち勝って重合部52がカウルグリル上部50上を滑っていくことは難しく、本願の図11の仮想線で示されるように、重合部52がカウルグリル上部50から外れた状態になることは難しいものと考えられる。
【0015】
また、特許文献1における別の実施例では、係合フックの付け根部分が破断する旨の説明がある。しかし、特許文献1に示されている構造からみると、係合フックの付け根部分のみを都合良く破断させることは困難であり、係合フックの付け根部分のみを破断させることに対する確実性には欠けたものとなっている。
【0016】
仮に、係合フックの付け根が都合よく破断できたとしても、その後、カウルグリル前部51を車両前方側に導くための構造が備えられていないため、本願の図11のように、カウルグリル前部を都合よく車両前方側へ回転移動させることは考え難い構成となっている。カウルグリル前部51としては、シール部材55を乗せている面と共にそのまま下側へ押し潰されていく可能性が高い構成となっている。
【0017】
特許文献2に記載された発明では、フード62の上部から加わった衝撃力Fを、片持ち支持されたカウルカバー61の変形、シールラバー63の変形、及び弾性体64の変形によって、吸収する構成となっている。また、特許文献2の段落[0032]には、「フード7(本願の図12では、符号62)が弾性体9(同じく、本願の図12では、符号64)が設置された空間Bの分だけよけいに撓むことができ、」と記載されている。この記載から、上部からフード62に衝撃力が加わった場合でも、フード62が撓むことができるのは、シールラバー63の空間Aと空間Bとによって得られる距離であることが分かる。
【0018】
このように、空間Aと空間Bとによって得られる短い距離で、フード62の上部から加わった衝撃力Fを吸収する構成となっているので、衝撃力Fに対する反発力は、強いものとして構成されていることが分かる。従って、フード62は、剛性の高いカウルカバー61によって支持されていることになる。このため、例えば、歩行者がボンネット上に乗り上げたとしても、歩行者に対する衝撃力を緩和するのには、硬い衝撃吸収構造となっている。
【0019】
本願発明は、上述したような従来の問題点を解決することができ、通常時におけるカウルトップカバーの機能・性能を犠牲にすることなく、ボンネット上に衝撃力が加わったときのカウルトップカバーにおける衝撃吸収性能を、簡単に、しかも確実に向上させることのできるカウルトップカバー構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
かかる本願発明の課題は、請求項1〜4に記載したカウルトップカバー構造により達成することができる。
即ち、本願発明のカウルトップカバー構造では、車体前部に配されたフロントガラスの下端部に沿って、車幅方向に延設されたカウルパネルの上部を覆い、車両のフロントコンパートメントの上部開口を覆うボンネットの下方に配設されるカウルトップカバーにおいて、
前記カウルトップカバーは、前記カウルトップカバーの前縁部から下方に延設された前部縦壁と、前記前部縦壁に適宜数形成された開口孔と、前記開口孔を覆い、前記開口孔に取り付けられた蓋と、を有し、
前記前部縦壁の下端部は、車体パネルによって支持され、前記カウルトップカバーの前縁部近傍に設けたシール部材によって、前記ボンネットと前記カウルトップカバーとの間がシールされ、前記開口孔の上辺及び/又は下辺と前記蓋との合わせ部には、水平線に対して傾斜した傾斜辺が、車幅方向に対して少なくとも一ケ所以上、前記カウルトップカバー又は前記蓋に形成されてなることを最も主要な特徴となしている。
【0021】
また、本願発明のカウルトップカバー構造では、前記蓋は、前記開口孔に対して爪嵌合してなることを主要な特徴となしている。
更に、本願発明のカウルトップカバー構造では、前記傾斜辺が、前記蓋の裏面に形成されてなること、又は、前記開口孔の上辺に形成されてなることを主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0022】
カウルトップカバーの車両前方側における前部縦壁には、カウルトップカバーの下方に配置されている電装系部品等のメンテナンスや車台番号を確認するための作業孔が設けられている場合が多い。一般的に、これらの孔は、カウルトップカバーとは別体に成形された蓋で塞がれている構造となっている。また、前部縦壁と蓋とは、エンジンルームと外気導入部との隔壁部にあたるため、車両の走行時に振動などの影響によって、蓋が前部縦壁の孔から容易に外れないように、クリップや爪嵌合などによってしっかりと前部縦壁の孔に固定されている。
【0023】
そのため、例えば、歩行者に衝突して、ボンネット上に歩行者による衝撃力が加わり、上方からカウルトップカバーを押し潰す負荷が、カウルトップカバーに作用したときでも、蓋は、カウルトップカバーから容易に離脱せずに、カウルトップカバーと一緒に押し潰されていく構成となっている。
【0024】
このように構成されているので、ボンネット上に乗り上げた歩行者に及ぼす衝撃値としては、前部縦壁における蓋が取り付けられている部分の衝撃値が、蓋を取り付ける孔が形成されていない部分の衝撃値に対して、同等かそれ以上のものとなっている。
【0025】
本願発明は、カウルトップカバーの前部縦壁に形成されている開口孔と、この開口孔に取り付けられる蓋との関係に着目して、カウルトップカバー構造を改良した発明である。そのため、本願発明では、ボンネットに衝撃力が加わっていない通常の使用時においては、蓋を前部縦壁の開口孔にしっかりと取り付けておくことができる構成となっている。そして、上方からの衝撃力によってカウルトップカバーが、押し潰されるような変形が生じたときには、その押し潰されていく変形の動きを阻害することが無いように、蓋が前部縦壁の開口孔から容易に、しかも確実に外れるように構成している。
【0026】
尚、本願発明における開口孔は、上述した作業孔に限定されるものではなく、カウルトップカバーの前部縦壁に形成された孔であって、同孔を蓋によって塞ぐことができる孔であればよい。そして、前部縦壁に形成する開口孔の形成部位としては、以下で説明する衝撃吸収が必要な部位に必要数配設しておくことができる。
【0027】
本願発明では、カウルトップカバーの前部縦壁における下端部は、車体パネルによって支持されている構成となっている。この構成によって、カウルトップカバーに対して、上から押し潰されるような衝撃力が作用したときには、カウルトップカバーの前部縦壁における下端部は、車体パネルによって下方に変位しない構成となっているので、カウルトップカバーの前部縦壁は、座屈しながら上から押し潰されていくことになる。
【0028】
尚、カウルトップカバーの前部縦壁における下端部を、図2に示したように、通常時において車体パネルに当接させた配置構成としておくこともできる。あるいは、後述する図5に示すように、カウルトップカバーが多少下方に変位したときに、前部縦壁の下端部が車体パネルに当接するように、前部縦壁の下端部と車体パネルとの間に多少の隙間が形成されている配置構成とすることもできる。
【0029】
そして、本願請求項1に記載した発明における「前部縦壁における下端部は、車体パネルによって支持されている構成」は、上述した、前部縦壁の下端部が常に車体パネルに当接している構成も、前部縦壁の下端部と車体パネルとの間に多少の隙間が形成されている構成も、包含しているものである。
【0030】
本願発明では、前部縦壁における開口孔の上辺及び/又は下辺と蓋との合わせ部には、水平線に対して傾斜した傾斜辺が、車幅方向に対して少なくとも一ケ所以上形成されており、しかも、この傾斜辺は、カウルトップカバー又は蓋に形成されている。
【0031】
ボンネット上に衝撃力が加わったときには、カウルトップカバーの前部縦壁は、下方に変形しながら押し潰されていくことになる。このとき、本願発明では、上述した構成によって、例えば、開口孔の上辺に対向している蓋の裏面側に傾斜辺を有するリブが形成されている場合について、説明を行えば、開口孔の上辺は、前記リブの傾斜辺上を摺動しながら下方に変位することになる。
【0032】
そして、開口孔の上辺とリブの傾斜辺との間における傾斜角による楔作用によって、蓋には、開口孔に対して車両前方側に回動する回転モーメントが作用することになる。蓋の回動によって、蓋は、開口孔から車両前方側に向かって強制的に排出されることになる。
【0033】
このとき、蓋は、開口孔に対して爪嵌合している構成であったとしても、カウルトップカバーの前部縦壁が下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に、爪嵌合が耐え切れなくなり、開口孔との爪嵌合状態は解除されることになる。そして、蓋が外れた後の前部縦壁は、開口孔を支えていた蓋がなくなるため、上からの荷重に対して容易に変形することができ、開口孔の上方に位置するボンネットの更なる下方への変位が可能となる。
その結果、例えば、歩行者に衝突して、ボンネット上に乗り上げた歩行者に及ぼす衝撃値を最大限吸収することができるようになる。
【0034】
このように、本願発明では、カウルトップカバーの前部縦壁が、座屈しながら上から押し潰されていくときに、前部縦壁の開口孔に取り付けられていた蓋を強制的に、開口孔から外すことができる構成を備えていることを特徴としている。この構成によって、カウルトップカバーの前部縦壁が、座屈しながら上から押し潰されていくまでは、蓋は開口孔に取り付けられている状態を維持することができる。そして、カウルトップカバーの前部縦壁における強度を保つことができるとともに、カウルトップカバーとしての機能、例えば、エンジンルームとの遮蔽機能等を奏させることができる。
【0035】
また、カウルトップカバーの前部縦壁が、座屈しながら上から押し潰されていくときには、本願発明に係わる傾斜辺の作用によって、蓋を開口孔から容易に外すことができ、開口孔における強度を低下させて、カウルトップカバーの前部縦壁が、座屈しながら上から押し潰され易くすることができる。このように、本願発明によって、カウルトップカバーにおける衝撃吸収性能を容易に向上させることができる。
【0036】
本願発明のカウルトップカバー構造では、蓋を開口孔に取り付けるときの取り付け構造として、クリップによる取り付け構造を用いることも、爪嵌合による取り付け構造を用いることも、両面テープで取り付ける構造を用いることも、着脱が不要な部位に蓋を取り付ける場合には、溶着等の取り付け構造等を用いることができる。
【0037】
爪嵌合による取り付け構造を採用しておくことにより、蓋を開口孔に対して着脱自在に構成しておくことができ、通常は蓋が開口孔から外れ難くしておくことができる。そして、上からの衝撃力が加わったときには、爪嵌合に対して捩れ力が作用することになるので、爪嵌合の構成としては、引張力等に対しては、蓋が開口孔から外れない程度の強度を持たせておき、捩れ力に対しては、破断等が生じ易いような構成にしておくことで、蓋を開口孔から外れ易くさせることができる。そのため、蓋を開口孔に取り付ける取り付け構造としては、爪嵌合による取り付け構造が好ましい取り付け構造となる。
【0038】
本願発明のカウルトップカバー構造では、傾斜辺を蓋の裏面に形成しておくことも、開口孔の上辺に形成しておくこともできる。蓋の裏面に傾斜辺を形成しておくときには、蓋の裏面側にリブを立設し、リブの側面に傾斜辺を形成しておくことができる。傾斜辺としては、開口孔の上辺に対向する蓋の裏面側における部位や、開口孔の下辺に対向する蓋の裏面側における部位、あるいは、開口孔の上下両辺に対向する蓋の裏面側におけるそれぞれの部位に形成しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、車体前部のボンネットを開いた状態を示す斜視図である。(実施例1)
【図2】図2は、図1のII−II断面図である。(実施例1)
【図3】図3は、蓋の要部断面図である。(実施例1)
【図4】図4は、図2の状態からボンネット上に衝撃力が加わったときの作動を示す断面図である。(実施例1)
【図5】図5は、蓋及びカウルトップカバーの要部断面図である。(実施例2)
【図6】図6は、蓋及びカウルトップカバーの要部断面図である。(実施例3)
【図7】図7は、蓋及びカウルトップカバーの要部断面図である。(実施例4)
【図8】図8は、蓋及びカウルトップカバーの要部断面図である。(実施例5)
【図9】図9は、蓋及びカウルトップカバーの要部断面図である。(実施例6)
【図10】図10は、蓋及びカウルトップカバーの要部断面図である。(実施例7)
【図11】図11は、ボンネット上に衝撃力が加わったときの作動を示す断面図である。(従来例1)
【図12】図12は、フード上に衝撃力が加わったときの作動を示す断面図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0040】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わるカウルトップカバー構造としては、以下で説明する形状、構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、構成であれば、それらの形状、構成を採用することができるものである。このため、本願発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例1】
【0041】
図1には、車体前部のボンネット3を開いた状態の斜視図を示している。また、図2には、図1のII−II断面図を示している。フロントガラス2の下縁部は、カウルパネル5によって支持されており、フロントガラス2の下縁部の上面部は、カウルパネル5の上部を覆うカウルトップカバー10によって覆われている。カウルトップカバー10の車体1に対する取り付け構造は、本願発明における特徴部を構成するものではなく、従来から公知の取り付け構造を採用することができる。
【0042】
カウルパネル5及びカウルトップカバー10は、樹脂材料あるいは金属材料によって構成しておくことができる。エンジン等を収納するフロントコンパートメント4の上部は、ボンネット3により覆われており、ボンネット3の後端部側あるいは前端部側が開口できるように、フロントコンパートメント4の前端部あるいは後端部において、ボンネット3は回動可能に支承されている。
【0043】
ボンネット3の裏面側には、ボンネットレインフォースメント3aが取付けられており、ボンネット3を閉じた状態において、ボンネットレインフォースメント3aは、カウルトップカバー10の前縁部11に設けたシール部材6に圧接している。そして、シール部材6によって、雨水等が、フロントコンパートメント4内に浸入するのが防止されている。
【0044】
カウルトップカバー10の前縁部11には下方に延設した前部縦壁12が形成されており、前部縦壁12の下端部12aは、車体パネル8に支持された構成となっている。前部縦壁12の下端部12aには、更に屈曲部12bが形成されており、屈曲部12bは、車体パネル8の逆L字状に屈曲した屈曲部8a上に支持された配置構成となっている。
【0045】
前部縦壁12の下端部12aにおける屈曲部12bを、車体パネル8の屈曲部8a上に当接させておく構成の代わりに、前部縦壁12の下端部12aにおける屈曲部12bと車体パネル8の屈曲部8aとの間に隙間を形成した配置関係としておくこともできる。このように構成しておいた場合には、後述するようにカウルトップカバー10に衝撃力が加わって、前部縦壁12が下方向に変位したときには、前部縦壁12の下端部12aにおける屈曲部12bが車体パネル8の屈曲部8aに当接する配置構成としておくことができる。
【0046】
カウルトップカバー10の前縁部11から下方に延設した前部縦壁12には、図1に示すように前部縦壁12の複数個所において開口孔13が形成されている。図示例では、前部縦壁12の左右及び中央の3か所に、それぞれ開口孔13を形成した構成例を示しているが、本願発明は、この構成例に限定されるものではなく、以下で説明する開口孔13を利用した衝撃吸収を行わせるのに必要な部位に必要な個数だけ、開口孔13を形成しておくことができる。
【0047】
開口孔13としては、カウルトップカバー10の下方に配置されている電装系部品等の車両搭載部品33に対して行うメンテナンスや、車台番号を確認するための作業孔を利用することもできる。
【0048】
各開口孔13には、それぞれの開口孔13を塞ぐ蓋20が取り付けられており、各蓋20の裏面における左右両端部には、開口孔13と爪嵌合する爪部23aが形成されている。爪部23aは、蓋20の裏面から立設して先端部にフック状の頭部を有した形状に構成されている。
【0049】
蓋20の裏面に形成した引掛け部24を開口孔13の下辺15に係合させた後、引掛け部24を中心として蓋20を開口孔13に向かって回動させて、左右の爪部23aを開口孔13内に挿入すると、フック状の頭部に形成された傾斜面に開口孔13における左右の側縁が摺接して、それぞれのフック状の頭部は、左右の爪部23a間が近接する方向に弾性変形する。
【0050】
そして、フック状の頭部を、開口孔13内に挿入させることができる。フック状の頭部が開口孔13内に挿入されると、弾性変形していたフック状の頭部は元の状態に復元して、開口孔13と爪嵌合することができる。これにより、蓋20を開口孔13に取り付けることができる。
【0051】
開口孔13の上辺14との合わせ部における蓋20の裏面側の部位には、図3に示すように、水平線に対して角度θ傾斜し、蓋20の裏面側から下り勾配となった傾斜辺21aを有するリブ21aが形成されている。リブ21aは、蓋20の左右方向に対して少なくとも一ケ所以上形成しておくことができる。
【0052】
尚、上述した傾斜辺21aの傾斜角度θとしては、約30°〜約60°の傾斜角度としておくことができる。傾斜角度θとしては、開口孔13の上辺14と傾斜辺21aとの間での楔作用によって、蓋20が開口孔13から取り外れ易い角度となるのであれば、上述した傾斜角度に限定されるものではなく、適宜の傾斜角度として形成しておくことができる。
【0053】
図2に示しているような、開口孔13に蓋20を取り付けた状態において、例えば、図4に示すように、車両に衝突した歩行者が、ボンネット3上に乗り上げられると、衝突物32である歩行者によってボンネット3に対して上からの衝撃力Nが加わる。このとき、ボンネット3は、ボンネットレインフォースメント3aとの間の空間を狭めると共に、シール部材6を圧縮してカウルトップカバー10の前縁端11側を、二点差線で示す状態から実線で示す状態となるように下方向に向かって変位させる。
【0054】
これにより、カウルトップカバー10の前縁端11から下方に延設された前部縦壁12も、下方向に変位しようとする。しかし、前部縦壁12の下端部12aは、車体パネル8に当接した状態で下方への変位が規制されているので、前部縦壁12は座屈によって上から押し潰されるような変形が生じる。
【0055】
そして、開口孔13の上辺14は、リブ21aの傾斜辺22a上を摺動しながら下方に変位することになる。このとき、上辺14とリブ21aの傾斜辺22aとの間における傾斜角による楔作用によって、蓋20には上辺14によって車両前方側へ押し出される力が作用し、蓋20に対しては、開口孔13の下辺15に係合した引掛け部24を回動中心として、車両前方側に回動させる回転モーメントが作用する。この回転モーメントの作用によって、蓋20には引掛け部24を中心とした回動が生じることになる。
【0056】
また、蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部23aは、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、前記回転モーメントによる捩れ力が爪部23aに作用して、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0057】
そして、蓋20は、図4で示しているように、開口孔13から車両前方側に向かって容易に且つ確実に外れることになる。蓋20が外れた後の前部縦壁12では、開口孔13を支える構造物である蓋20がなくなるため、上からの衝撃力Nに対して容易に変形することができるようになり、開口孔13の上方に位置するボンネット3の更なる下方への変位を可能とする。
【0058】
その結果、例えば、歩行者に衝突して、ボンネット上に歩行者が乗り上げた場合でも、歩行者に及ぼす衝撃値を、ボンネット3が下方に変位することによって消費されるエネルギーと前部縦壁12の開口孔13から蓋20を取り外すときに消費されるエネルギーと前部縦壁12を座屈させるときに消費されるエネルギー等とによって、最大限吸収することができる。このように、本願発明では、カウルトップカバーにおける衝撃吸収性能を容易に向上させることができる。
【0059】
尚、蓋20に設けたリブ21aの傾斜辺22aは、前部縦壁12は座屈によって上から押し潰されるような変形を生じたときに、開口孔13から蓋20を強制的に排出するための機能について説明を行ったが、リブ21aの傾斜辺22aにおける機能としては、蓋20を開口孔13に取り付ける際のガイド部材としての機能も有している。
【実施例2】
【0060】
本願発明に係わる実施例2の構成を、図5に示す蓋20及びカウルトップカバー10の要部断面図を用いて説明する。実施例2では、傾斜辺22bが、内側に屈曲した蓋20の面によって形成されている。また、内側に屈曲した蓋20に強度を持たせるため、蓋20の表面側にはリブ25が形成されている。
【0061】
更に、シール部材6がカウルトップカバー10の前縁部側に立設した突起部に嵌合する構成となっている。なお、シール部材6の取り付け構成としては、実施例1に記載したような構成としておくこともできる。
【0062】
実施例2における上述した構成以外の他の構成は、実施例1の場合と同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0063】
実施例2では、ボンネット3に衝撃力が加わっていない通常の使用状態において、カウルトップカバー10の前部縦壁12に形成した開口孔13の上辺14が、蓋20の傾斜辺22bと当接していない構成とした例を示している。しかし、通常の使用状態において、開口孔13の上辺14が、蓋20の傾斜辺22bと当接している配置構成としておくこともできる。
【0064】
実施例2では、図示せぬボンネットから下方に向かって作用する衝撃力が加わったときには、その衝撃力によってカウルトップカバー10の前部縦壁12が下方に変位し、開口孔13の上辺14は、蓋20の傾斜辺22bに当接する。更に、前部縦壁12の開口孔13が下方に変位すると、実施例1と同様に、上辺14と蓋20の傾斜辺22bとの楔作用によって、蓋20は開口孔13から車両の前方側に排出されるように押し出される。
【0065】
このとき、実施例1と同様に、開口孔13の下辺に係合する引掛け部が、蓋20に設けられている場合には、開口孔13の下辺に係合している引掛け部を中心として、蓋20は開口孔13から外れる方向に回動することになる。
【0066】
蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部(不図示)は、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、蓋20に作用する回転モーメントによる捩れ力によって、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0067】
このようにして、蓋20が開口孔13から取り外されると、開口孔13における強度が低下して、前部縦壁12は座屈しながら下方に押し潰されていくことができる。そして、ボンネットに対して衝撃力を加えた、衝突物に及ぼす衝撃値を、最大限吸収することができる。
【実施例3】
【0068】
本願発明に係わる実施例3の構成を、図6に示す蓋20及びカウルトップカバー10の要部断面図を用いて説明する。実施例3では、傾斜辺22bが、蓋20の内側に突出した突出部材26に形成されている。また、カウルトップカバー10の前縁部に形成した前部縦壁12は、斜め前方側に向かって傾斜した傾斜面として構成されている。そして、蓋20も前部縦壁12と平行な取り付け状態となるように、斜め前方側に向かって傾斜した状態で開口孔13に取り付けられている。
【0069】
また、シール部材6は、カウルトップカバー10の前縁部側から立設した状態に配されている構成となっている。なお、シール部材6の取り付け構成としては、実施例1、2に記載したような構成としておくこともできる。
【0070】
実施例3における上述した構成以外の他の構成は、実施例1の場合と同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0071】
蓋20の内側に突出した突出部材26の付け根部分には、脆弱部26aが形成されており、図示例では、脆弱部26aとして、突出部材26の付け根部分に切欠きが形成されている。脆弱部26aを形成しておくことにより、上からの衝撃力によってカウルトップカバー10の前部縦壁12が下方に変位したときに、所定の押圧力によって開口孔13の上辺14が当接している脆弱部26aが下方に押し潰されるように変形する。
【0072】
突出部材26が下方に押し潰されるように変形することによって、実施例1の図3に示した傾斜角度θが大きくなる。そして、突出部材26の傾斜辺22cに対する開口孔13の上辺14の滑りがより滑らかとなることができ、蓋20を開口孔13から車両前方側に向かって容易に且つ確実に外れ易くすることができる。
【0073】
実施例3では実施例2と同様に、ボンネット3に衝撃力が加わっていない通常の使用状態において、カウルトップカバー10の前部縦壁12に形成した開口孔13の上辺14が、蓋20の傾斜辺22cと当接していない配置構成とした例を示しているが、通常の使用状態において、開口孔13の上辺14が、蓋20の傾斜辺22cに当接している配置構成としておくこともできる。
【0074】
実施例3においても、図示せぬボンネットから下方に向かって作用する衝撃力が加わったときには、その衝撃力によってカウルトップカバー10の前部縦壁12が下方に変位し、開口孔13の上辺14は、蓋20の傾斜辺22bに当接する。更に、前部縦壁12が下方に変位すると、突出部材26を下方に押し潰しながら変形させて、上辺14と蓋20の傾斜辺22cとの楔作用によって、蓋20は開口孔13から外れる方向に押し出されることになる。
【0075】
このとき、実施例1と同様に、開口孔13の下辺に係合する引掛け部が、蓋20に設けられている場合には、開口孔13の下辺に係合している引掛け部を中心として、蓋20は開口孔13から外れる方向に回動することになる。
【0076】
蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部(不図示)は、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、蓋20に作用する回転モーメントによる捩れ力によって、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0077】
このようにして、蓋20が開口孔13から取り外されると、開口孔13における強度が低下して、前部縦壁12は座屈しながら下方に押し潰されていくことができる。そして、ボンネットに対して衝撃力を加えた、衝突物に及ぼす衝撃値を、最大限吸収することができる。
【実施例4】
【0078】
本願発明に係わる実施例4の構成を、図7に示す蓋20及びカウルトップカバー10の要部断面図を用いて説明する。実施例4では、傾斜辺22bが、カウルトップカバー10の内面に形成したリブ16の端面に傾斜辺16aを形成した構成となっており、傾斜辺16aには、蓋20の裏面に形成したフランジ27が当接する構成となっている。蓋20の裏面に形成したフランジ27は、リブ27aによって支持固定されている。
【0079】
また、カウルトップカバー10の前縁部に形成した前部縦壁12は、斜め前方側に向かって傾斜した傾斜面として構成されている。そして、蓋20も前部縦壁12と平行な取り付け状態となるように、斜め前方側に向かって傾斜した状態で開口孔13に取り付けられている。
【0080】
また、シール部材6は、カウルトップカバー10の前縁部側に立設した一対の突起間に嵌合される構成となっている。尚、シール部材6の取り付け構成としては、実施例1〜3に記載したような構成としておくこともできる。
【0081】
実施例4における上述した構成以外の他の構成は、実施例1の場合と同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0082】
実施例4では、ボンネット3に衝撃力が加わっていない通常の使用状態において、カウルトップカバー10の前部縦壁12内面に形成したリブ16の傾斜辺16a(この傾斜辺16aは、開口孔13の上辺14でもある。)が、蓋20の裏面に形成したフランジ27と当接している配置構成とした例を示しているが、通常の使用状態において、カウルトップカバー10側の傾斜辺16aと蓋20のフランジ27とが、当接していない配置構成としておくこともできる。
【0083】
実施例4においても、図示せぬボンネットから下方に向かって作用する衝撃力が加わったときには、その衝撃力によってカウルトップカバー10の前部縦壁12が下方に変位し、カウルトップカバー10側の傾斜辺16aと蓋20のフランジ27との楔作用によって、蓋20は開口孔13から外れる方向に押し出されることになる。
【0084】
このとき、実施例1と同様に、開口孔13の下辺に係合する引掛け部が、蓋20に設けられている場合には、開口孔13の下辺に係合している引掛け部を中心として、蓋20は開口孔13から外れる方向に回動することになる。
【0085】
蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部(不図示)は、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、蓋20に作用する回転モーメントによる捩れ力によって、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0086】
このようにして、蓋20が開口孔13から取り外されると、開口孔13における強度が低下して、前部縦壁12は座屈しながら下方に押し潰されていくことができる。そして、ボンネットに対して衝撃力を加えた、衝突物に及ぼす衝撃値を、最大限吸収することができる。
【実施例5】
【0087】
本願発明に係わる実施例5の構成を、図8に示す蓋20及びカウルトップカバー10の要部断面図を用いて説明する。実施例5では、カウルトップカバー10の前部縦壁12における下端部が屈曲部17として形成されており、蓋20の内面に形成したリブ21aの傾斜辺22bと屈曲部17との接触面積を大きく構成している。尚、前部縦壁12の下端部における屈曲部17は、開口孔13における上辺でもある。
【0088】
また、カウルトップカバー10の前縁部に形成した前部縦壁12は、斜め前方側に向かって傾斜した傾斜面として構成されている。そして、蓋20も前部縦壁12と平行な取り付け状態となるように、斜め前方側に向かって傾斜した状態で開口孔13に取り付けられている。
【0089】
更に、シール部材6は、カウルトップカバー10の前縁部側に直接取り付けられた構成となっている。なお、シール部材6の取り付け構成としては、実施例1〜4に記載したような構成としておくこともできる。
【0090】
実施例5における上述した構成以外の他の構成は、実施例1の場合と同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0091】
実施例5では実施例1と同様に、ボンネット3に衝撃力が加わっていない通常の使用状態において、前部縦壁12の下端部に形成した屈曲部17が、蓋20の傾斜辺22aと当接している配置構成とした例を示しているが、通常の使用状態において、屈曲部17が、蓋20の傾斜辺22aと当接していない配置構成としておくこともできる。
【0092】
実施例5においても、図示せぬボンネットから下方に向かって作用する衝撃力が加わったときには、その衝撃力によってカウルトップカバー10の前部縦壁12が下方に変位し、前部縦壁12の下端部に形成した屈曲部17とリブ21aに形成した傾斜辺22aとの楔作用によって、蓋20は開口孔13から外れる方向に押し出されることになる。
【0093】
このとき、実施例1と同様に、開口孔13の下辺に係合する引掛け部が、蓋20に設けられている場合には、開口孔13の下辺に係合している引掛け部を中心として、蓋20は開口孔13から外れる方向に回動することになる。
【0094】
蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部(不図示)は、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、蓋20に作用する回転モーメントによる捩れ力によって、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0095】
このようにして、蓋20が開口孔13から取り外されると、開口孔13における強度が低下して、前部縦壁12は座屈しながら下方に押し潰されていくことができる。そして、ボンネットに対して衝撃力を加えた、衝突物に及ぼす衝撃値を、最大限吸収することができる。
【実施例6】
【0096】
本願発明に係わる実施例6の構成を、図9に示す蓋20及びカウルトップカバー10の要部断面図を用いて説明する。実施例6では、蓋20の内面に設けたリブ21bの上下両端部に、傾斜辺22a、22dが形成されている構成となっている。そして、カウルトップカバー10の前部縦壁12に形成した開口孔13の上辺14及び下辺15が、それぞれリブ21bの上下両端部に形成した傾斜辺22a及び傾斜辺22dに当接する配置構成となっている。
【0097】
また、カウルトップカバー10の前縁部に形成した前部縦壁12は、開口孔13の上下辺の中間部にかけて斜め後方側に向かって傾斜した傾斜面として構成されており、開口孔13の上下辺の中間部から前部縦壁12の下端部にかけては、略鉛直な面として形成されている。そして、蓋20の中央部は、凹部状に屈曲した屈曲部28として形成されている。
【0098】
蓋20の中央部から蓋20の上端部にかけての面部は、斜め後方側に向かって傾斜した前部縦壁12の傾斜面と略平行な配置構成となっている。また、蓋20の中央部から蓋20の下端部にかけての面部は、前部縦壁12における略鉛直な面と略平行な配置構成となっている。
【0099】
図9では、シール部材6の構成を図示していないが、シール部材6の取り付け構成としては、実施例1〜5に記載したような構成としておくこともできる。
【0100】
実施例6における上述した構成以外の他の構成は、実施例1の場合と同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0101】
実施例6では実施例1と同様に、ボンネット3に衝撃力が加わっていない通常の使用状態において、前部縦壁12の開口孔13の上辺14及び下辺15が、それぞれ蓋20の傾斜辺22a及び傾斜辺22dとに当接している配置構成例を示しているが、通常の使用状態において、開口孔13の上辺14及び下辺15が、それぞれ蓋20の傾斜辺22a及び傾斜辺22dとに当接していない配置構成としておくこともできる。
【0102】
実施例6では、蓋20の中央部に屈曲部28を形成しておくとともに、蓋20の中央部から蓋20の上端部にかけての面部を斜め後方側に向かって傾斜した前部縦壁12の傾斜面と略平行に配設し、蓋20の中央部から蓋20の下端部にかけての面部を前部縦壁12における略鉛直な面と略平行に配設した構成となっているので、開口孔13の上辺14と下辺15とによって、傾斜辺22aと傾斜辺22dとを挟み込もうとする押圧力を、開口孔13から蓋20を排出させるのに有効な力として作用させることができる。
【0103】
即ち、傾斜辺22aと傾斜辺22dとを挟み込もうとする押圧力は、蓋20に対して、屈曲部28の曲げを更に大きくする力として作用するとともに、蓋20を開口孔13から離れる方向に押す力として作用させることができる。
【0104】
蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部(不図示)は、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、蓋20に作用する回転モーメントによる捩れ力によって、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0105】
このようにして、蓋20が開口孔13から取り外されると、開口孔13における強度が低下して、前部縦壁12は座屈しながら下方に押し潰されていくことができる。そして、ボンネットに対して衝撃力を加えた、衝突物に及ぼす衝撃値を、最大限吸収することができる。
【実施例7】
【0106】
本願発明に係わる実施例7の構成を、図10に示す蓋20及びカウルトップカバー10の要部断面図を用いて説明する。実施例7では、蓋20の内面に設けたリブ21bの上端部に、カウルトップカバー10の前部縦壁12に形成した開口孔13の上辺14に係合する爪部29bが形成されている。また、蓋20の内面に設けたリブ21bの下端部に形成した傾斜辺22dは、開口孔13の下辺15に当接する構成となっている。そして、蓋20の中央部には、段差部29が形成されている。
【0107】
図10では、シール部材6の構成を図示していないが、シール部材6の取り付け構成としては、実施例1〜5に記載したような構成としておくこともできる。
【0108】
実施例7における上述した構成以外の他の構成は、実施例1の場合と同様の構成となっている。そのため、実施例1と同様の構成については、実施例1で用いた部材符号を用いることで、その部材についての説明を省略する。
【0109】
実施例7では実施例1と同様に、ボンネット3に衝撃力が加わっていない通常の使用状態において、前部縦壁12の開口孔13の下辺15が、蓋20の傾斜辺22dに当接している配置構成例を示しているが、通常の使用状態において、開口孔13の下辺15が、蓋20の傾斜辺22dとに当接していない配置構成としておくこともできる。
【0110】
実施例7では、蓋20の中央部に形成した段差部29によって、開口孔13の下辺15から傾斜辺22dに作用する押圧力を、開口孔13から蓋20を排出させるのに有効な力として作用させることができる。
【0111】
即ち、爪部23bに作用する開口孔13の上辺14からの押圧力と、傾斜辺22dに作用する開口孔13の下辺15からの押圧力とによって、蓋20は段差部29で折れ曲がる方向に屈曲し易くなるとともに、開口孔13の下辺15と傾斜辺22dとの楔作用によって、蓋20を開口孔13から離れる方向に押す力を作用させることができる。
【0112】
蓋20を開口孔13に取り付けていた爪部(不図示)は、前部縦壁12が座屈しながら下方に押し潰されていく衝撃によって発生する力に耐え切れなくなり、更には、蓋20に作用する回転モーメントによる捩れ力によって、蓋20と開口孔13との爪嵌合状態は解除されることになる。
【0113】
このようにして、蓋20が開口孔13から取り外されると、開口孔13における強度が低下して、前部縦壁12は座屈しながら下方に押し潰されていくことができる。そして、ボンネットに対して衝撃力を加えた、衝突物に及ぼす衝撃値を、最大限吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本願発明は、ブロー成形において凹部を形成するものに対して、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
3・・・ボンネット、5・・・カウルパネル、6・・・シール部材、8・・・車体パネル、10・・・カウルトップカバー、11・・・前縁部、12・・・前部縦壁、13・・・開口孔、14・・・上辺、15・・・下辺、16・・・リブ、16a・・・傾斜辺、17・・・屈曲部、20・・・蓋、21a、21b・・・リブ、22a、22b、22c、22d・・・傾斜辺、26・・・突出部材、27・・・フランジ、32・・・衝突物、50・・・カウルグリル上部、51・・・カウルグリル前部、52・・・重合部、53・・・ボンネットレインインフォースメント、54・・・切欠部、55・・・シール部材、60・・・車体、61・・・カウルカバー、61a・・・前方側端縁部、62・・・フード、63・・・シールラバー、64・・・弾性体、N・・・衝撃力。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に配されたフロントガラスの下端部に沿って、車幅方向に延設されたカウルパネルの上部を覆い、車両のフロントコンパートメントの上部開口を覆うボンネットの下方に配設されたカウルトップカバーにおいて、
前記カウルトップカバーは、前記カウルトップカバーの前縁部から下方に延設された前部縦壁と、前記前部縦壁に適宜数形成された開口孔と、前記開口孔を覆い、前記開口孔に取り付けられた蓋と、を有し、
前記前部縦壁の下端部は、車体パネルによって支持され、
前記カウルトップカバーの前縁部近傍に設けたシール部材によって、前記ボンネットと前記カウルトップカバーとの間がシールされ、
前記開口孔の上辺及び/又は下辺と前記蓋との合わせ部には、水平線に対して傾斜した傾斜辺が、車幅方向に対して少なくとも一ケ所以上、前記カウルトップカバー又は前記蓋に形成されてなることを特徴とするカウルトップカバー構造。
【請求項2】
前記蓋は、前記開口孔に対して爪嵌合してなることを特徴とする請求項1記載のカウルトップカバー構造。
【請求項3】
前記傾斜辺が、前記蓋の裏面に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のカウルトップカバー構造。
【請求項4】
前記傾斜辺が、前記開口孔の上辺に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のカウルトップカバー構造。
【請求項1】
車体前部に配されたフロントガラスの下端部に沿って、車幅方向に延設されたカウルパネルの上部を覆い、車両のフロントコンパートメントの上部開口を覆うボンネットの下方に配設されたカウルトップカバーにおいて、
前記カウルトップカバーは、前記カウルトップカバーの前縁部から下方に延設された前部縦壁と、前記前部縦壁に適宜数形成された開口孔と、前記開口孔を覆い、前記開口孔に取り付けられた蓋と、を有し、
前記前部縦壁の下端部は、車体パネルによって支持され、
前記カウルトップカバーの前縁部近傍に設けたシール部材によって、前記ボンネットと前記カウルトップカバーとの間がシールされ、
前記開口孔の上辺及び/又は下辺と前記蓋との合わせ部には、水平線に対して傾斜した傾斜辺が、車幅方向に対して少なくとも一ケ所以上、前記カウルトップカバー又は前記蓋に形成されてなることを特徴とするカウルトップカバー構造。
【請求項2】
前記蓋は、前記開口孔に対して爪嵌合してなることを特徴とする請求項1記載のカウルトップカバー構造。
【請求項3】
前記傾斜辺が、前記蓋の裏面に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のカウルトップカバー構造。
【請求項4】
前記傾斜辺が、前記開口孔の上辺に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載のカウルトップカバー構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−5988(P2011−5988A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152365(P2009−152365)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】
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