説明

カウルルーバー

【課題】カウルルーバー本体とカバーとをほとんど同時に樹脂成形して個々の冷却を待たずに組付けても、これらに変形が生じることを解消し、組付け作業のサイクルタイムを短縮する。
【解決手段】樹脂製のカウルルーバー本体10と、このカウルルーバー本体に設けられているメンテナンス用の開口部を被う樹脂製のカバー20とを備えたカウルルーバーであって、カウルルーバー本体10にカバー20を組付けた状態において、これらのカウルルーバー本体とカバーとの相互の係合部14に隙間S1,S2が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のカウルルーバー本体と、このカウルルーバー本体のメンテナンス用の開口部を被う樹脂製のカバーとを備えたカウルルーバーに関する。
【背景技術】
【0002】
カウルルーバー本体のメンテナンス用の開口部を被うカバーは、このカウルルーバー本体に組付けられた状態で保持する必要がある。そのためにカウルルーバー本体とカバーとは互いに係合可能に構成されており、その構造は例えば特許文献1に開示された技術が既に知られている。この技術では、カウルルーバー本体における開口部の近くに係合孔が設けられ、カバーに係合爪が設けられている。この係合爪は、樹脂の弾性によって撓むことができる「V」字形状をしている。そこで、係合爪をカウルルーバー本体の表面側から係合孔に挿入すると、押し撓められた係合爪が係合孔の縁の裏面に係合し、カバーが組付け状態に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−205913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においてカウルルーバー本体にカバーを組付けた状態では、これら相互の間に負荷が生じた状態になる。このため、仮にカウルルーバー本体とカバーとを樹脂成形した後、充分に冷却しないまま相互を組付けると、これらが変形してしまう。このような変形を避けるには、成形後のカウルルーバー本体およびカバーを組付ける前に冷却時間を充分にとる必要があり、そのことが組付け作業のサイクルタイムを長くしている。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、カウルルーバー本体とカバーとをほとんど同時に樹脂成形して個々の冷却を待たずに組付けても、これらに変形が生じることを解消し、組付け作業のサイクルタイムを短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
樹脂製のカウルルーバー本体と、このカウルルーバー本体に設けられているメンテナンス用の開口部を被う樹脂製のカバーとを備えたカウルルーバーであって、カウルルーバー本体にカバーを組付けた状態において、これらのカウルルーバー本体とカバーとの相互の係合部に隙間が設定されている。
【0007】
好ましくは、カウルルーバー本体とカバーとの係合部が、カウルルーバー本体の操作部に成形された係合爪を、カバーの端部に成形された係合片に表面側から係合させる構成になっていることである。
【0008】
より好ましくは、カウルルーバー本体の係合爪を備えた操作部が補強部材により補強され、係合爪をカバーの係合片から外すために操作部を押したとき、カウルルーバー本体のエンジンフードの内側に位置する側の全体が撓むように設定されることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、カウルルーバー本体とカバーとの相互の係合部に隙間が設定されていることにより、カウルルーバー本体にカバーを組付けた状態においてもカウルルーバー本体とカバーとの間に負荷がかかるのを避けることができる。このため、カウルルーバー本体とカバーとをほとんど同時に樹脂成形し、個々の冷却を待たずに組付けても、これらに変形が生じるおそれがなく、組付け作業のサイクルタイムを短縮することができる。
【0010】
また、カウルルーバー本体とカバーとの係合部が、カウルルーバー本体の係合爪をカバーの縁に表面側から係合させる構成とした場合、カウルルーバー本体の表面側からカバーの組付け状態を容易に確認することができる。
【0011】
さらに、カウルルーバー本体の操作部が補強部材により補強され、カウルルーバー本体のエンジンフードの内側に位置する側の全体が撓むようにしたことで、操作部を押したときに係合爪に近い幅の狭い箇所が撓んでそこに応力が集中し、樹脂が変色したり破損したりするのを解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態におけるカウルルーバーの一部を表した平面図。
【図2】図1のカウルルーバーのメンテナンス用開口部とカバーとを表した斜視図。
【図3】図2のメンテナンス用開口部にカバーが組付けられた状態を表した斜視図。
【図4】図3のA−A矢視方向の断面図。
【図5】実施の形態2におけるカウルルーバーを表した断面図。
【図6】図5のカウルルーバーにおけるメンテナンス用開口部の一部を表した斜視図。
【図7】図6のB−B矢視方向の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
まず、本発明の実施の形態1を図1〜図4によって説明する。
これらの図面で示すカウルルーバー本体10は、樹脂材料による一体成形品である。このカウルルーバー本体10は、自動車におけるフロントガラスとエンジンフード(いずれも図示省略)との境において、車体側およびフロントガラスの下部に結合された状態で組付けられる。カウルルーバー本体10の全体形状は、所定の幅を有し、かつ、フロントガラス下部の形状に倣って車幅方向(図1の左右方向)へ長く延びている。
【0014】
カウルルーバー本体10は、自動車に組付けられた状態においてエンジンフードから露出しているフロントガラス寄りの部分10Aと、エンジンフードの内側に位置する部分10Bとに区分することができる。そして、エンジンフードから露出している部分10Aには格子状に並んだ多数の小孔からなる通気孔11やワイパー軸を通す孔13などが設けられている(図1)。
【0015】
カウルルーバー本体10は、エンジンフードの内側に位置する部分10Bにおいて前方側が開放されたメンテナンス用の開口部12を備えている。この開口部12は、エンジンルーム内に位置するブレーキフルードのリザーブタンク等(図示省略)にアクセスするためのものであり、通常はカバー20で被われている。開口部12における開放側の左右両側には、カウルルーバー本体10にカバー20を組付けた状態に保持する係合部26がそれぞれ位置している。これらの係合部26は、カウルルーバー本体10とカバー20との相互によって構成されている。
【0016】
ここで、係合部26の具体的な構成について説明すると、カウルルーバー本体10の開口部12における開放側の左右両側には、前方へ突出した操作部14がそれぞれカウルルーバー本体10と一体に成形されている。これらの操作部14には、個々の先端側(車体のフロント側)から後向きに突出した係合爪14aがそれぞれ設けられている。これらの係合爪14aは、カバー20の前端部に設けられた左右一対の係合片24に、表面側からそれぞれ係合することが可能であり(図4)、それによってカウルルーバー本体10にカバー20を組付けた状態に保持することができる。
【0017】
両係合爪14aの前側は押圧部分14bになっており、この押圧部分14bに図4の矢印方向へ力を加えて操作部14を撓ませることにより、カバー20の両係合片24に対する両係合爪14aの係合を外すことができる。なお、両操作部14は上下に貫通する孔14dをそれぞれ有するが、これらの貫通孔14cは個々の係合爪14aを成形する金型を抜き取るためのものであって、係合部26の機能には直接関係がない。
カバー20についてもカウルルーバー10と同様に樹脂材料による成形品であるが、その形状はシンプルであり、成形金型も単純な構造で済むことになる。
【0018】
カウルルーバー本体10に対して開口部12を被うようにカバー20が組付けられた状態においては、カウルルーバー本体10の上面の接合面16とカバー20の下面の接合面22とが互いに接触している(図4)。そして、例えば接合面16に開けられた基準孔(図示省略)に接合面22に設けられた位置決め用のピン(図示省略)を差し込むことにより、カウルルーバー本体10に対するカバー20の前後左右方向の位置を決めることができる。
【0019】
このように、カウルルーバー本体10に対してカバー20が位置決めされた状態において、係合部26を構成するカウルルーバー本体10の係合爪14aとカバー20の係合片24との間には、上下方向の隙間S1および前後方向の隙間S2がそれぞれ設定されている(図4)。これらの隙間S1,S2により、カウルルーバー本体10にカバー20を組付けた状態でも、これらの相互間に引っ張り力や押付け力などの負荷がかかるのを防止することができる。このため、仮にカウルルーバー本体10とカバー20とをほとんど同時に成形した後、冷却を待たずに直ぐ組付けても、これらに変形が生じるおそれはない。この結果、カウルルーバー本体10に対するカバー20の組付け作業におけるサイクルタイムが短縮される。
【0020】
また、カウルルーバー本体10にカバー20を組付ける際は単にカバー20を下方向へ押付けることで、該カバー20の係合片24がカウルルーバー本体10の係合爪14aを通過して確実に相互を係合させることができる。そして、係合爪14aはカバー20の係合片24に対して表面側から係合するので、係合部26が係合したことを作業者側から容易に確認することができる。
【0021】
カウルルーバー本体10が自動車に搭載された状態でのカバー20は、図4で示すシール部材30を通じてエンジンフード(図示省略)からカウルルーバー本体10側に押付ける力を受けている。したがって、係合部26に隙間S1,S2があってもカバー20にガタツキが生じることはない。
なお、カバー20を取外すには、エンジンフードを開けた状態で、前述のように両係合爪14aの押圧部分14bに力を加えてカバー20の係合片24に対する係合爪14aの係合を外し、かつ接合面16,22の基準孔からピンを抜き取る。これによって、カウルルーバー本体10の開口部12が開放され、エンジンルーム内のメンテナンスが可能となる。
【0022】
つぎに、本発明の実施の形態2を図5〜図7によって説明する。
この実施の形態2においても、カウルルーバー本体10にカバー20を組付けた状態に保持する係合部26は、カウルルーバー本体10の操作部14から後向きに突出した係合爪14aとカバー20の係合片24とによって構成されている。本実施の形態2においては、操作部14の内側において該操作部14の押圧部分14bから基部にかけて補強部材18が一体に成形されている。この補強部材18は、図面で示すような複数枚のリブやビードで構成され、それによって操作部14を補強している。このため、図7において操作部14の押圧部分14bに図4の矢印と同方向へ力を加えても、操作部14がポイントP1の付近を支点として撓むことが防止される。
【0023】
実施の形態2において、操作部14の係合爪14aをカバー20の係合片24から外すために操作部14の押圧部分14bが押されると、カウルルーバー本体10は図5で示す車体側パネル40と接触している部分のポイントP2を支点として仮想線のように撓む。すなわち、操作部14の押圧部分14bが押されたときのカウルルーバー本体10は、エンジンフードの内側に位置する部分10Bの側全体が撓むこととなる。
これにより、カバー20を外す度に操作部14の押圧部分14bが押され、その都度、操作部14が図7のポイントP1で撓み、そこに応力集中が繰り返される、といった不具合を防止できる。なお、操作部14のポイントP1付近は、貫通孔14cなどがあることから幅の狭い箇所であり、応力集中が繰り返されると樹脂が変色し、極端な場合には破損を招くことになるが、このような事態をエンジンフードの内側に位置する部分10Bの全体が撓むことで解消できる。
【符号の説明】
【0024】
10 カウルルーバー本体
12 メンテナンス用の開口部
20 カバー
24 係合片
26 係合部
S1,S2 隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のカウルルーバー本体と、このカウルルーバー本体に設けられているメンテナンス用の開口部を被う樹脂製のカバーとを備えたカウルルーバーであって、
カウルルーバー本体にカバーを組付けた状態において、これらのカウルルーバー本体とカバーとの相互の係合部に隙間が設定されているカウルルーバー。
【請求項2】
請求項1に記載されたカウルルーバーであって、
カウルルーバー本体とカバーとの係合部が、カウルルーバー本体の操作部に成形された係合爪を、カバーの端部に成形された係合片に表面側から係合させる構成になっているカウルルーバー。
【請求項3】
請求項1に記載されたカウルルーバーであって、
カウルルーバー本体の係合爪を備えた操作部が補強部材により補強されており、係合爪をカバーの係合片から外すために操作部を押したとき、カウルルーバー本体のエンジンフードの内側に位置する側の全体が撓むように設定されているカウルルーバー。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate