説明

カウルルーバ構造

【課題】通常使用時におけるカウルルーバの剛性を確保すると共に、衝突体がカウルルーバの車両上方から衝突した際における衝撃吸収性を確保することを目的とする。
【解決手段】カウルルーバ10の前壁部10F及び後壁部10Rに、車両前後方向の断面変形を抑制するリブ12(変形抑制手段)が連結されているので、通常使用時において、前壁部10Fと後壁部10Rとの間が車両前後方向に開閉するような断面変形は抑制される。またリブ12において前壁部10F及び後壁部10Rに対する連結部12A,12B以外の部位に、該前壁部10Fの上縁に対して車両上方から衝突荷重が入力された際に、リブ12の車両上下方向の変形を促す切込み14(変形促進手段)が設けられているので、衝突体がカウルルーバ10に対して車両上方から衝突した際には、前壁部10Fが後壁部10Rに対して車両下方に相対変形して、その衝撃を吸収できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウルルーバ構造に係り、特に車両のウインドシールドガラスとフロントフードとの間に設けられるカウルルーバ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カウルトップカバー(カウルルーバ)の前側の凹形状のカバー前側部に、該カウルトップカバーの前壁部と後壁部とを連結する複数のリブを設け、該前壁部とリブとを連結する前部連結部の上方に切欠部を形成して構成され、ボンネットフード(フロントフード)に上方から障害物が衝突した場合に、前壁部がリブから剥がれるように前部連結部が破断して衝撃エネルギーを吸収する構造が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−289237号公報
【特許文献2】特開2005−280628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例では、衝突体がフロントフードの後端部に衝突した際に、その衝突位置がリブの位置に対して車幅方向にずれていると、前部連結部に入力される荷重が小さくなり、該前部連結部の破断が生じ難くなると考えられる。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、通常使用時におけるカウルルーバの剛性を確保すると共に、衝突体がカウルルーバの車両上方から衝突した際における衝撃吸収性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車両のウインドシールドガラスと該ウインドシールドガラスの車両前方に位置するフードとの間を覆うように設けられ、車体側に固定される前側固定部の車両後方側から車両上方に延びる前壁部と前記ウインドシールドガラスの下縁部の車両前方側に位置する一般面の前端から車両上方に延びて前記前壁部の上縁に連なる後壁部とを有するカウルルーバと、前記前壁部及び前記後壁部に連結され、該前壁部と該後壁部との間での車両前後方向の断面変形を抑制する変形抑制手段と、該変形抑制手段において前記前壁部及び前記後壁部に対する連結部以外の部位に設けられ、該前壁部の前記上縁に対して車両上方から衝突荷重が入力された際に、該後壁部に対する前記前壁部の相対変形が生じ易くなるように前記変形抑制手段の車両上下方向の変形を促す変形促進手段と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載のカウルルーバ構造では、カウルルーバの前壁部及び後壁部に、該前壁部と該後壁部との間での車両前後方向の断面変形を抑制する変形抑制手段が連結されているので、通常使用時において、前壁部と後壁部との間が車両前後方向に開いたり閉じたりするような断面変形は抑制される。このため、通常使用時におけるカウルルーバの剛性を確保することが可能である。
【0007】
また請求項1に記載のカウルルーバ構造では、変形抑制手段において前壁部及び後壁部に対する連結部以外の部位に、該前壁部の上縁に対して車両上方から衝突荷重が入力された際に、該後壁部に対する前壁部の相対変形が生じ易くなるように、変形抑制手段の車両上下方向の変形を促す変形促進手段が設けられているので、衝突体がカウルルーバにおける前壁部の上縁に対して車両上方から衝突した際には、前壁部が後壁部に対して車両下方に相対変形することで、その衝撃を吸収する。このため、衝突体がカウルルーバの車両上方から衝突した際における衝撃吸収性を確保することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のカウルルーバ構造において、前記変形抑制手段は、リブであることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載のカウルルーバ構造では、変形抑制手段がリブであり、該リブによりカウルルーバの前壁部と後壁部とが車両前後方向に連結されているので、通常使用時において、該前壁部と後壁部との間が車両前後方向に開くような断面変形は、リブの車両前後方向の引張り剛性により抑制され、また前壁部と後壁部との間が車両前後方向に閉じるような断面変形は、リブの車両前後方向の圧縮剛性により抑制される。このように、変形抑制手段としてリブを用いるという簡易な構成により、通常使用時におけるカウルルーバの剛性を確保することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のカウルルーバ構造において、前記変形促進手段は、前記変形抑制手段による前記前壁部と前記後壁部との連結方向に沿って設けられていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載のカウルルーバ構造では、変形促進手段が、変形抑制手段による前壁部と後壁部との連結方向に沿って設けられているので、該連結方向における変形抑制手段の引張り剛性及び圧縮剛性の低下を抑制しつつ、衝突体がカウルルーバの車両上方から衝突した際には、変形促進手段により変形抑制手段の車両上下方向の変形を促すことができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のカウルルーバ構造において、前記変形促進手段は、切込みであることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載のカウルルーバ構造では、変形促進手段が切込みであるので、該切込みの形状や本数、寸法等の設定により、変形抑制手段が車両上下方向に変形する変形荷重を任意にコントロールすることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のカウルルーバ構造によれば、通常使用時におけるカウルルーバの剛性を確保すると共に、衝突体がカウルルーバの車両上方から衝突した際における衝撃吸収性を確保することができる、という優れた効果が得られる。
【0015】
請求項2に記載のカウルルーバ構造によれば、変形抑制手段としてリブを用いるという簡易な構成により、通常使用時におけるカウルルーバの剛性を確保することができる、という優れた効果が得られる。
【0016】
請求項3に記載のカウルルーバ構造によれば、変形抑制手段の引張り剛性及び圧縮剛性の低下を抑制しつつ、衝突体がカウルルーバの車両上方から衝突した際には、変形促進手段により変形抑制手段の車両上下方向の変形を促すことができる、という優れた効果が得られる。
【0017】
請求項4に記載のカウルルーバ構造によれば、切込みの形状や本数、寸法等の設定により、変形抑制手段が車両上下方向に変形する変形荷重を任意にコントロールすることができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図2において、本実施の形態に係るカウルルーバ構造Sは、カウルルーバ10と、変形抑制手段の一例たるリブ12と、変形促進手段の一例たる切込み14とを有している。
【0019】
図1に示されるように、カウルルーバ10は、車両16のウインドシールドガラス18と該ウインドシールドガラス18の車両前方に位置するフード20との間を覆うように設けられた、例えば合成樹脂製の外装部材である。図2,図3に示されるように、このカウルルーバ10は、車体側に固定された前側固定部10Aの車両後方側から車両上方に延びる前壁部10Fと、ウインドシールドガラス18の下縁部18Aの車両前方側に位置する一般面10Bの前端から車両上方に延びて前壁部10Fの上縁に連なる後壁部10Rとを有している。
【0020】
ウインドシールドガラス18の下縁部18Aは、カウルロア22の後側上部から車両前方に延設されたカウルアッパ24に、例えば接着剤(図示せず)を用いて固定されている(固定状態について図示せず)。このカウルアッパ24には、車両前方に向かって延びるフランジ24Aが形成されており、該フランジ24Aと、カウルロア22の前側上部に設けられたフランジ22Aとの間に、カウルルーバ10が架設されている。
【0021】
カウルルーバ10の前側固定部10Aは、例えばカウルロア22のフランジ22Aに嵌め込まれると共に、図示しない複数のクリップ等の取付け部材によって、該フランジ22Aに固定されている。一方、カウルルーバ10の後側固定部10Cは、図示を省略した複数のクリップ等の取付け部材によって、ウインドシールドガラス18の下縁部18Aに取り付けられている。
【0022】
カウルルーバ10の前側固定部10Aには、例えば車両上方へ延びる脚部10Dが形成されており、該脚部10Dのうち、例えば一般面10Bの車両前方側の延長線上には、車両後方へ延びる延出部10Eが形成されている。カウルルーバ10の前壁部10Fは、この延出部10Eの後縁から車両上方に延びている。一方、カウルルーバ10の一般面10Bは、後側固定部10Cから例えばウインドシールドガラス18の面方向に沿って車両前方側に延び、後壁部10Rの裾野部に連なっている。
【0023】
後壁部10Rの上縁には、例えば車両前後方向において小幅の平坦部10Hが設けられており、該平坦部10Hが前壁部10Fの上縁に連なっている。この平坦部10Hの高さ位置は、例えばフード20の後端部20Rの高さ位置と同等に設定されている。
【0024】
図3に示されるように、前壁部10F及び後壁部10Rは、例えば夫々車両前方側に傾斜して形成されている。またこの前壁部10Fと後壁部10Rとは、各々の上縁から車両下方に向かうに従って、互いの間隔が広がるように形成されており、これに伴って、前壁部10Fの傾斜角度よりも後壁部10Rの傾斜角度の方が大きくなっている。図2に示されるように、前壁部10F、平坦部10H及び後壁部10Rは、車幅方向に延設されている。
【0025】
カウルルーバ10における例えば前壁部10Fの下部からは、車両前方に向かって延びるシール部26が設けられており、該シール部26の前端部26Aと、フード20の後部に形成された閉断面28の底部20Aとの間には、カウルシールゴム30が配置されている。このシール部26の後端部26Rは、例えばカウルルーバ10の脚部10Dに支持されている。なお、フード20の後端部26Bは、前壁部10Fと車両上下方向に重ならないように、該前壁部10Fの上縁より車両前方側に配置されている。なお、カウルルーバ10とシール部26とは、一体的に構成されていてもよい。
【0026】
図2から図4において、リブ12は、カウルルーバ10の前壁部10F及び後壁部10Rに連結され、該前壁部10Fと後壁部10Rとの間での車両前後方向の断面変形を抑制する、例えば合成樹脂製の補強部材である。このリブ12は、前後の両端に設けられた連結部12A,12Bにおいて、例えば前壁部10Fの下部及び後壁部10Rの下部に夫々例えば溶着されている。図2に示されるように、カウルルーバ構造Sでは、複数のリブ12が、車幅方向に沿って所定間隔で設けられている。
【0027】
切込み14は、リブ12において前壁部10F及び後壁部10Rに対する連結部12A,12B以外の部位に設けられ、該前壁部10Fの上縁に対して車両上方から衝突荷重が入力された際に、該後壁部10Rに対する前壁部10Fの相対変形が生じ易くなるようにリブ12の車両上下方向の変形を促す部位である。リブ12における車両上下方向の強度は、この切込み14により低減され、これにより該リブ12が車両上下方向に変形する変形荷重が低減されるようになっている。
【0028】
この切込み14は、リブ12による前壁部10Fと後壁部10Rとの連結方向に沿って設けられている。言い換えれば、切込み14は、前壁部10Fの下部と後壁部10Rの下部とを結ぶ方向、即ちリブ12の長手方向に沿って設けられている。またこの切込み14は、リブ12の幅方向に所定間隔で複数本設けられており、該リブ12の長手方向と夫々平行に形成されている。この切込み14により、リブ12がその幅方向に細分化されている。
【0029】
図4に示されるように、切込み14は、リブ12の長手方向に沿って設けられているが、連結部12A,12Bの何れにも至ることなく終端している。これにより、切込み14の端部と連結部12A,12Bとの間には、切込み14のない一般部12Cが形成されている。
【0030】
カウルルーバ構造Sでは、この切込み14の本数により、リブ12の長手方向(車両前後方向)の引張り剛性及び圧縮剛性を維持しつつ、該リブ12が車両上下方向に変形する変形荷重を任意にコントロールすることができるようになっている。具体的には、図5(A)に示されるように、リブ12のうち切込み14により細分化された部分の幅W1は、該切込み14の本数に応じて小さくなる。従って、切込み14の本数を多くした場合、それに応じてリブ12における車両上下方向の強度が低下するので、該リブ12が車両上下方向に変形する変形荷重を小さく設定することができる。
【0031】
一方、図5(B)に示されるように、同じ幅Wを有するリブ12に対して、切込み14の本数を少なくした場合、該切込み14により細分化された部分の幅W2は、同図(A)における幅W1よりも大きくなる。これにより、リブ12における車両上下方向の強度が同図(A)の場合よりも向上するので、リブ12が車両上下方向に変形する変形荷重を比較的大きく設定することができる。
【0032】
また、リブ12の幅Wを大きくすることにより、リブ12の長手方向(車両前後方向)の引張り剛性及び圧縮剛性を高めることが可能である。例えば図6に示されるように、カウルルーバ10の前壁部10F及び後壁部10Rの上縁までリブ12を設けるようにしてもよい。この場合、リブ12とカウルルーバ10とを一体成形することもできる。
【0033】
図4に示されるリブ12においては、切込み14の幅はごく狭く設定され、該切込み14の部分にほとんど隙間ができないように設定されている。この切込み14については、種々の態様が考えられる。図7(A)に示される例では、切込み14がリブ12の厚さ方向(車幅方向)に貫通した状態となっている。また図7(B)に示される例では、切込み14がリブ12の厚さ方向の一方の面から形成されているが、他方の面へ貫通する前の位置で終端しており、該他方の面側に非切込み領域12Dが形成されている。そして図7(C)に示される例では、切込み14がリブ12の厚さ方向の両側から中心に向かって形成され、かつ該中心に至る前の位置で夫々終端しており、該中心に非切込み領域12Dが形成されている。
【0034】
なお、図8,図9に示されるように、切込み14を、比較的幅の広いスリット状に形成し、該切込み14の部分に夫々隙間が形成されるように設定してもよい。図8に示される例では、図10(A)に示されるように、切込み14がリブ12の厚さ方向に貫通した状態となっている。また図9に示される例では、切込み14がリブ12の厚さ方向に貫通せずに終端しており、その断面としては、例えば図10(B),(C)に示される態様が考えられる。図10(B)に示される態様では、切込み14がリブ12の厚さ方向の一方の面から形成されているが、他方の面へ貫通する前の位置で終端しており、該他方の面側に非切込み領域12Dが形成されている。また図10(C)に示される態様では、切込み14がリブ12の厚さ方向の両側から中心に向かって形成され、かつ該中心に至る前の位置で夫々終端しており、該中心に非切込み領域12Dが形成されている。
【0035】
なお、切込み14の構成については、図示の例には限られるものではなく、他にも種々の態様を用いることが可能である。例えば切込み14をリブ12の長手方向に沿って断続的に形成してもよいし、切込み14を曲線状や折れ線状に形成してもよい。またリブ12の厚さ方向における切込み14の入れ方についても、図示の例には限られない。
【0036】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図3において、本実施形態に係るカウルルーバ構造Sでは、カウルルーバ10の前壁部10F及び後壁部10Rに、該前壁部10Fと該後壁部10Rとの間での車両前後方向の断面変形を抑制する変形抑制手段の一例たるリブ12が連結されているので、通常使用時において、該前壁部10Fと後壁部10Rとの間が車両前後方向に開くような断面変形は、リブ12の車両前後方向の引張り剛性により抑制され、また前壁部10Fと後壁部10Rとの間が車両前後方向に閉じるような断面変形は、リブ12の車両前後方向の圧縮剛性により抑制される。このリブ12の長手方向(車両前後方向)の引張り剛性及び圧縮剛性は、該リブ12の幅Wや、厚さを大きくすることにより高めることが可能である。このように、変形抑制手段としてリブ12を用いるという簡易な構成により、通常使用時におけるカウルルーバ10の剛性を確保することができる。
【0037】
また、図11に示されるように、本実施形態に係るカウルルーバ構造Sでは、リブ12においてカウルルーバ10の前壁部10F及び後壁部10Rに対する連結部12A,12B以外の部位に、該前壁部10Fの上縁に対して車両上方から衝突荷重Fが入力された際に、該後壁部10Rに対する前壁部10Fの相対変形が生じ易くなるように、リブ12の車両上下方向の変形を促す変形促進手段の一例たる切込み14が設けられているので、衝突体32がカウルルーバ10における前壁部10Fの上縁に対して車両上方から衝突した際には、前壁部10Fが後壁部10Rに対して車両下方に相対変形することで、その衝撃が吸収される。
【0038】
ここで、切込み14は、リブ12による前壁部10Fと後壁部10Rとの連結方向(リブ12の長手方向)に沿って、該リブ12の幅方向に所定間隔で複数本設けられており、リブ12が幅方向に細分化されているので、該リブ12における車両上下方向の強度が低減されており、これにより該リブ12が車両上下方向に変形する変形荷重が、切込み14のない場合と比較して低減されている。このため、衝突体32がカウルルーバ10の車両上方から衝突した際に、リブ12の車両上下方向の変形を促すことができ、これによってカウルルーバ10の前壁部10Fが後壁部10Rに対して車両下方に相対変形することを促すことができる。また上記のように、切込み14が、リブ12による前壁部10Fと後壁部10Rとの連結方向(リブ12の長手方向)に沿って設けられているので、該連結方向におけるリブ12の引張り剛性及び圧縮剛性の低下を抑制することができる。
【0039】
なお、リブ12には、切込み14のない一般部12Cが形成されているので、前壁部10Fと連結部12Aとの境界や、後壁部10Rと連結部12Bとの境界において破断が生じ難く、切込み14により細分化された部分において変形が促進される。
【0040】
一方、カウルルーバ構造Sにおいては、切込み14の形状や本数、寸法等の設定により、リブ12が車両上下方向に変形する変形荷重を任意にコントロールすることが可能である。具体的には、図5(A)に示されるように、リブ12に設ける切込み14の本数を及び多くして、該切込み14により細分化された部分の幅W1を小さく設定することで、変形荷重を小さく設定することができる。また図5(B)に示されるように、リブ12に設ける切込み14の本数を少なくして、該切込み14により細分化された部分の幅W2の幅を大きく設定することで、変形荷重を大きく設定することができる。図7(A),(B),(C)に示されるように、切込み14の入れ方を変えることによっても、リブ12の変形荷重をコントロールすることが可能である。
【0041】
前壁部10Fが車両下方に変形するとき、脚部10Dを介して、カウルロア22の前側上部のフランジ22Aにも荷重が伝達されるので、該カウルロア22も車両下方に変形する。これに伴い、シール部26も車両下方に移動するので、フード20の後端部20Rにおける変形ストロークも確保することができ、衝突体32が該フード20の後端部20Rにも衝突した場合にも、衝撃を吸収することが可能である。なお、図11に示されるように、カウルルーバ10の前側固定部10Aがカウルロア22のフランジ22Aから脱落するように構成してもよい。この場合でも、カウルルーバ10の変形ストロークを確保することが可能である。
【0042】
衝突荷重Fが比較的小さいときには、リブ12の車両後方側の連結部12Bの位置はあまり変化せず、前壁部10Fの車両下方への変形に伴って連結部12Bより車両上方の後壁部10Rが変形する。連結部12Bの位置があまり変化しない程度の衝突荷重Fが作用した場合、後壁部10Rに対する前壁部10Fの相対変形量は、例えば車両下方に約20〜30mmである。一方、衝突荷重Fが比較的大きいときには、後壁部10Rが一般面10Bとの境界付近を中心として車両下方に変形することで、連結部12Bの位置も車両下方へ移動するので、カウルルーバ10の変形ストロークを更に確保することが可能である。
【0043】
このように、カウルルーバ構造Sでは、通常使用時におけるカウルルーバ10の剛性を確保すると共に、衝突体32がカウルルーバ10の車両上方から衝突した際における衝撃吸収性を確保することができる。仮に衝突体32の衝突位置が、リブ12の位置に対して車幅方向にずれていても、リブ12が車両上下方向に変形し易いため、カウルルーバ10における衝撃吸収性を確保することができる。
【0044】
なお、本実施形態においては、変形抑制手段の一例として、リブ12を挙げて説明したが、変形抑制手段はこれに限られるものではなく、リブ12における前壁部10Fと後壁部10Rとの間での車両前後方向の断面変形を抑制できれば、どのような手段を用いてもよい。
【0045】
また変形促進手段の一例として、切込み14を挙げて説明したが、変形促進手段はこれに限られるものではなく、変形抑制手段の車両上下方向の変形を促すことができれば、どのような手段を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】カウルルーバ構造を備えた車両を斜め前方から見た状態を示す斜視図である。
【図2】カウルルーバ構造を示す部分破断拡大斜視図である。
【図3】通常使用時におけるカウルルーバ構造を示す、図1における3−3矢視拡大断面図である。
【図4】カウルルーバの前壁部及び後壁部、リブを示す、拡大断面図である。
【図5】(A)切込みにより細分化された部分の幅が比較的小さく設定されたリブの後部、及びカウルルーバの後壁部を示す拡大断面図である。(B)切込みにより細分化された部分の幅が比較的大きく設定されたリブの後部、及びカウルルーバの後壁部を示す拡大断面図である。
【図6】カウルルーバ構造において、リブが前壁部及び後壁部の上縁まで設けられた例を示す拡大断面図である。
【図7】(A)切込みがリブの厚さ方向に貫通している例を示す、図4における7A−7A矢視拡大断面図である。(B)切込みがリブの厚さ方向の一方の面から形成され、他方の面に貫通する前の位置で終端している例を示す、図4における7B−7B矢視断面図である。(C)切込みがリブの厚さ方向の両側から中心に向かって形成され、かつ該中心に至る前の位置で終端している例を示す、図4における7C−7C矢視拡大断面図である。
【図8】カウルルーバ構造において、切込みが比較的幅の広いスリット状に形成され、かつリブを貫通している例を示す拡大断面図である。
【図9】カウルルーバ構造において、切込みが比較的幅の広いスリット状に形成され、かつリブを貫通せずに終端している例を示す拡大断面図である。
【図10】(A)切込みがリブの厚さ方向に貫通している例を示す、図8における10A−10A矢視拡大断面図である。(B)切込みがリブの厚さ方向の一方の面から形成され、他方の面に貫通する前の位置で終端している例を示す、図9における10B−10B矢視断面図である。(C)切込みがリブの厚さ方向の両側から中心に向かって形成され、かつ該中心に至る前の位置で終端している例を示す、図9における10C−10C矢視拡大断面図である。
【図11】衝突体がカウルルーバの上下から衝突した際に、該カウルルーバの前壁部が後壁部に対して車両下方に相対変形することで、衝撃を吸収している状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0047】
10 カウルルーバ
10A 前側固定部
10B 一般面
10F 前壁部
10R 後壁部
12 リブ(変形抑制手段)
12A 連結部
12B 連結部
14 切込み(変形促進手段)
16 車両
18 ウインドシールドガラス
18A 下縁部
20 フード
32 衝突体
F 衝突荷重
S カウルルーバ構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウインドシールドガラスと該ウインドシールドガラスの車両前方に位置するフードとの間を覆うように設けられ、車体側に固定される前側固定部の車両後方側から車両上方に延びる前壁部と前記ウインドシールドガラスの下縁部の車両前方側に位置する一般面の前端から車両上方に延びて前記前壁部の上縁に連なる後壁部とを有するカウルルーバと、
前記前壁部及び前記後壁部に連結され、該前壁部と該後壁部との間での車両前後方向の断面変形を抑制する変形抑制手段と、
該変形抑制手段において前記前壁部及び前記後壁部に対する連結部以外の部位に設けられ、該前壁部の前記上縁に対して車両上方から衝突荷重が入力された際に、該後壁部に対する前記前壁部の相対変形が生じ易くなるように前記変形抑制手段の車両上下方向の変形を促す変形促進手段と、
を有することを特徴とするカウルルーバ構造。
【請求項2】
前記変形抑制手段は、リブであることを特徴とする請求項1に記載のカウルルーバ構造。
【請求項3】
前記変形促進手段は、前記変形抑制手段による前記前壁部と前記後壁部との連結方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカウルルーバ構造。
【請求項4】
前記変形促進手段は、切込みであることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のカウルルーバ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−302883(P2008−302883A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153805(P2007−153805)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】