説明

カウルルーバ

【課題】上方から入力があった時にフードシール部への荷重が下がるのみでなく連結板への荷重も下がり、歩行者保護性能を向上できるカウルルーバの提供。
【解決手段】カウルルーバ10は、カウルルーバ本体20と、連結板40を有する。連結板40は、平板部50と平板部50から車両左右方向に突出する山形状部52を有する。山形状部52の頂部58は平板部50からの車両左右方向突出量が山形状部52の上部54から下部56に向かって減少するように平板部50に対して傾斜している。フードシール部30への荷重F1によって山形状部52の上部54が下部56より伸長してフードシール部30が下がり、荷重F1が減少する。山形状部52の上部54が伸長すると連結板40が傾くので連結板上辺にかかる荷重F2も減少する。荷重F2は山形状部52を伸長させ、荷重F1が益々減少する。歩行者への反力が低減し歩行者保護性能が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のカウルルーバに関し、上方からの入力に対し連結板の変形荷重が低く、歩行者保護性能を向上したカウルルーバに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のウインドシールドガラスとフードパネルとの間の隙間でカウルの上方にカウルルーバが配置される。カウルルーバは車両左右方向に延びる凹部をもつカウルルーバ本体と凹部の前壁と後壁との間にわたって延びる連結板からなる。
カウルルーバには歩行者保護性能および熱風遮断性能が要求される。歩行者保護性能は、試験においてインパクタによる上方からの入力に対してカウルルーバが十分に変形し衝撃を和らげる性能であり、所定の頭部傷害基準値を満足することが求められる。熱風遮断性能は、エンジンルームからの熱風がカウルルーバ本体の凹部に回り込みそこから空調ダクトに流入するのを抑制する性能であり、連結板により達成される。
【0003】
特許文献1は、図20および図21に示すように、カウルルーバ本体2と連結板4をカウルルーバ本体2の凹部3に組み付けたカウルルーバ1を開示している。連結板4は平面視で蛇腹状であり、蛇腹の幅aは連結板4の全高にわたり一定である。凹部3は前壁5および後壁6を有し、連結板4と前壁5との結合部7および連結板4と後壁6との結合部8は、図21(A)に示すように、蛇腹の幅aの中央にある。そのため、インパクタからの荷重9がカウルルーバ本体の前端にあるフードシール部にかかって蛇腹が図21(B)に示すように車両前後方向に伸長した際にも、連結板4は図20に示すように垂直姿勢を保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−062520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1等の技術および平板状の連結板をもつ従来技術にはつぎの問題がある。
試験において、上方からのインパクタ荷重はカウルルーバ本体前端部のフードシール部と連結板の上辺に入力される。フードシール部にかかった荷重はフードシール部に下方への荷重をかけるとともに蛇腹状の連結板にモーメントをかけ連結板の上辺を下辺より多く車両前後方向に伸長させて、フードシール部を下げるので、フードシール部への荷重が下がって歩行者保護性能が向上する。
しかし、連結板の上辺への入力は、蛇腹の幅が連結板の全高にわたり一定であるため、連結板が車両左右方向に倒れ変形しにくく連結板の上辺が下がりにくい。したがって、連結板への上方からの荷重は下がりにくい。そのため、上方からの入力に対する連結板の反力が大きく、歩行者保護性能は向上しにくい。
【0006】
本発明の目的は、上方から入力があった時にフードシール部への荷重が下がるのみでなく連結板への荷重も下がり、これらの荷重の反力を低減でき歩行者保護性能を向上できるカウルルーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のカウルルーバはつぎのとおりである。
(1)本発明のカウルルーバは、車両前後方向前側から後側に順にフードシール部、上方に開いた凹部、意匠部を有し車両左右方向に延びるカウルルーバ本体と、該カウルルーバ本体の凹部に設けられ車両前後方向に延びる連結板と、を有する。
連結板は車両前後方向に平板状に延びる平板部と該平板部から車両左右方向に突出し連結板の上辺から下方に延びる山形状部とを有する。
山形状部は頂部を有し、該頂部は平板部または該平板部の延長からの車両左右方向突出量が山形状部の上部から下部に向かって減少するように平板部または該平板部の延長に対して傾斜している。
【0008】
(2)上記(1)のカウルルーバにおいて、連結板はカウルルーバ本体の車両左右方向各端部に設けられた遮熱板である。
【0009】
(3)上記(1)または(2)のカウルルーバにおいて、山形状部の頂部は平板部から車両左右方向外側に突出している。
【0010】
(4)上記(1)〜(3)の何れか1つのカウルルーバにおいて、
カウルルーバ本体の凹部は前壁、後壁、底壁を有し、連結板は凹部の底壁に連結される下辺と、凹部の前壁に連結板の上下方向の少なくとも一部で連結される前側連結部と、凹部の後壁に連結板の上下方向の少なくとも一部で連結される後側連結部とを有する。
山形状部は連結板の上辺から下方に向かって連続して形成されている。
連結板に、車両前後方向に少なくとも1つの頂部をもつ山形状部が車両前後方向に少なくとも1つ形成されている。
山形状部の頂部は、連結板の上辺と平行な面で切断して見た断面形状として、角形状、湾曲形状、平坦形状の何れか少なくとも1つの形状を有する。
【発明の効果】
【0011】
上記(1)のカウルルーバによれば、つぎの効果が得られる。なお、以下の(i)〜(vi)およびF1、F2、Fa〜Fcの符号は、図7に示した(i)〜(vi)およびF1、F2、Fa〜Fcに対応する。
【0012】
図7の(i)に示すように、インパクタまたは歩行者からの荷重がフードパネルにかかると、フードパネルからカウルルーバのフードシール部および連結板に下方に向かう荷重がかかる。
図7の(ii)に示すように、フードシール部に入力された荷重F1は、フードシール部と連結板の前端部に下方への力をかけるとともに、連結板に連結板上辺を連結板下辺より伸長させる方向のモーメントをかける。フードシール部と連結板の前端部にかかる荷重によってフードシール部が下がる。また、モーメントによって、連結板の山形状部の上部が下部より多く車両前後方向に伸長するので、さらにフードシール部が下がる。フードシール部が下がる荷重F1は、特許文献1の波形連結板の場合と同程度であり、山形状部がない平板状連結板の場合に比べて低い。
【0013】
図7の(iii) 、(iv)に示すように、フードシール部に入力された荷重F1によって連結板の上辺が車両前後方向に伸長する時、それと同時に、山形状部の頂部が鉛直面に対して車両左右方向に傾斜していることによって山形状部上辺が山形状部下辺より多く車両前後方向に伸長し、車両左右方向に山形状部の頂部と平板部が互いに近づく方向に変形し、平板部が車両左右方向にかつ頂部側に倒れる側に変形する。
フードシール部にかかる荷重F1によって連結板が倒れ変形している状態で、図7の(v)に示すように、連結板上辺に荷重F2がかかると、連結板は車両左右方向にさらに倒れ変形する。そのため、連結板上辺にかかる荷重F2は、特許文献1の波形連結板の場合、および、山形状部がない平板状連結板の場合に比べて、下がる。
【0014】
図7の(vi)に示すように、連結板上辺に荷重F2がかかって連結板が倒れる側に変形する時、荷重F2の車両左右方向分力Faによって、連結板の上辺の車両前後方向中央部か該車両前後方向中央部に近い部位の平板部は山形状部の頂部側に移動し、山形状部が偏平化する方向に車両前後方向に伸長する。この時、山形状部の上部を車両前後方向に拡げる方向の力Fbが生じ、さらに連結板の前端部および後端部の平板部を車両前後方向に拡げる方向の力をFcを生じる。これによって、連結板の上辺が下辺より多く車両前後方向に伸長し、フードシール部が下がり、フードシール部が下がる荷重F1が益々低下する。
【0015】
したがって、山形状部の頂部を鉛直面に対して車両左右方向に傾斜させたことにより、フードシール部に荷重F1がかかった時に連結板が車両左右方向に倒れて連結板上辺にかかる荷重F2が下がり、荷重F2によって連結板上部が車両前後方向に伸びてフードシール部が下がってフードシール部にかかる荷重F1が益々下がる。すなわち、荷重F1とF2が相乗的に下げ合う。その結果、荷重F1とF2の反力であるフードパネルからインパクタまたは歩行者への反力が下がり、歩行者保護性能が向上する。
【0016】
上記(2)のカウルルーバによれば、連結板が遮熱板であるため、遮熱板とは別に連結板を設ける必要がない。
【0017】
上記(3)のカウルルーバによれば、山形状部の頂部が平板部から車両左右方向外側に突出しているので、車両左右方向外側に連結板を倒れ変形させることができる。カウルルーバ本体の連結板より車両左右方向内側にはバッテリ着脱用の開口部を覆うカバーがカウルルーバ本体に取り付けられているが、カバーが外れて連結板の倒れ変形を阻害することは起こらない。
【0018】
上記(4)のカウルルーバによれば、つぎの効果が得られる。
連結板は凹部の前壁と後壁に連結板の上下方向の少なくとも一部で連結されているので、フードシール部に荷重がかかった時に連結板に車両前後方向に引張力をかけることができる。
また、山形状部は連結板の上辺から下方に連続して形成されているので、連結板のうち山形状部が設けられている部分の上部を下部よりも多く車両前後方向に伸長させることができる。
【0019】
連結板に、車両前後方向に少なくとも1つの頂部をもつ山形状部が車両前後方向に少なくとも1つ形成されているので、上記(1)の効果が得られる。
山形状部の頂部は、連結板の上辺と平行な面で切断して見た断面形状として、角形状、湾曲形状、平坦形状の何れか少なくとも1つの形状を有すれば、上記(1)の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例に係るカウルルーバとその近傍の構造を含む断面図である。
【図2】図1のうちカウルルーバの斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係り、山形状部が車両前後方向に複数設けられた場合の、頂部形状を角形状で示した、カウルルーバの連結板とその近傍の斜視図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】本発明の実施例に係り、連結板の前側連結部と後側連結部の少なくとも一方が凹部の壁に上下方向の一部で連結されている場合の、カウルルーバの連結板とその近傍の斜視図である。
【図6】図5の側面断面図である。
【図7】(i)は図3のうちカウルルーバの連結板とその近傍の、フードシール部に荷重F1がかかった時の連結板変形前の断面図、(ii)は(i)の連結板変形後の断面図、(iii) は(ii)のB−B断面図、(iv)は(ii)のA−A断面図、(v)は図3のうち連結板上辺に荷重F2がかかった時の連結板の変形後の側面図、(vi)は連結板の上辺に荷重F2がかかった時に連結板に発生する力Fa〜Fcを示す視図である。
【図8】本発明の実施例に係り、山形状部が1つ設けられた場合のカウルルーバの連結板とその近傍の斜視図である。
【図9】図8の平面図である。
【図10】(i)は図8のうちカウルルーバの連結板とその近傍の、フードシール部に荷重F1がかかった時の連結板変形前の断面図、(ii)は(i)の連結板変形後の断面図、(iii) は(ii)のC−C断面図、(iv)は図8のうち連結板上辺に荷重F2がかかった時の連結板の変形後の断面図、(v)は連結板の上辺に(iv)の荷重F2がかかった時に連結板に発生する力Fa〜Fcを示す斜視図である。
【図11】本発明の実施例に係り、山形状部が3以上ある場合のカウルルーバの連結板とその近傍の斜視図である。
【図12】本発明の実施例に係り、山形状部の頂部の形状が湾曲形状、たとえば波形の頂部形状である場合の、カウルルーバの連結板とその近傍の平面図である。
【図13】本発明の実施例に係り、山形状部の頂部の形状が平坦形状、たとえば矩形の頂辺形状である場合の、カウルルーバの連結板とその近傍の斜視図である。
【図14】図13の平面図である。
【図15】本発明の実施例に係り、山形状部が連結板の全高にわたって形成されている場合の、カウルルーバの連結板とその近傍の斜視図である。
【図16】図15の平面図である。
【図17】本発明の実施例に係り、少なくとも1つの山形状部が傾斜した頂部を有しその他の山形状部は傾斜しない頂部を有する場合の、斜視図である。
【図18】本発明の実施例に係り、複数の頂部をもつ山形状部が連結板に1つ以上(図では1つ)形成されている場合の、斜視図である。
【図19】図18の平面図である。
【図20】特許文献1に開示されているような傾斜しない頂部をもつ波形形状のカウルルーバの連結板とその近傍の斜視図である。
【図21】(A)は図20の連結板の変形前の平面図であり、(B)は図20の連結板の変形後の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施例に係るカウルルーバを、図1〜図19を参照して、説明する。図1〜図7は連結板が複数の山形状部をもつカウルルーバの実施例を示し、図8〜図10は連結板が1つの山形状部をもつカウルルーバの実施例を示し、図11〜図19は連結板に形成される山形状部の種々の形状を示す。本発明の全実施例にわたって共通する構造部分には、全実施例にわたって同じ符号を付してある。
図中、FRは車両前後方向の前方を示し、UPは上方を示し、OUTは車両前後方向の外側をす。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施例に係るカウルルーバ10は、車両のウインドシールドガラス76とフードパネル70との間の隙間でカウル80の上方に配置される。
カウルルーバ10は樹脂製で、カウルルーバ本体20と連結板40を有する。連結板40はカウルルーバ本体20に一体成形されてもよいし、カウルルーバ本体20と別体に形成されてカウルルーバ本体20に固定されてもよい。
【0023】
カウルルーバ本体20は、車両左右方向にウインドシールドガラス76の下端部に沿ってウインドシールドガラス76のほぼ全幅にわたって延びる。カウルルーバ本体20は、車両前後方向にフードパネル70の後端部下方からウインドシールドガラス76の下端部前面まで延びる。カウルルーバ本体20は、カウルルーバ本体20の前端から後端に向かって順に、フードシール部30、凹部22、意匠部32を有する。
【0024】
凹部22は、フードシール部30の後端から折れ曲がって後方斜め下方に延びる前壁24と、前壁24の下端から後方に延びる底壁26と、底壁26の後端から折れ曲がって上方に延びる後壁28を有し、車両左右方向にカウルルーバ本体20のほぼ全長にわたって延びる。後壁28は上下方向の途中で折れ曲がっていてもよい。前壁28と後壁25と底壁26は上方に開放する空間を形成する。
フードシール部24は、凹部22の前壁24の上端から折れ曲がって前方に延びる。
意匠部22は、凹部後壁28から折れ曲がって後方に延び、上方に向かってなだらかに凹状となっており、外部に露出している。
【0025】
フードシール部30には車両左右方向に延びる弾性部材からなる、たとえばゴム製の、シール部材78が装着される。フードシール部30には車両左右方向複数箇所に孔が形成され、該孔にシール部材78の脚78aが嵌め込まれることにより、シール部材78がフードシール部30に取り付けられる。フードパネル70はインナパネル72とアウタパネル74を有する。シール部材78はインナパネル72によって押されて変形し、インナパネル72とフードシール部30との間をエンジンコンパートメントからの熱風が凹部22に入らないようにシールしている。
【0026】
図2に示すように、意匠部32および凹部22の後壁28の少なくとも一方には空調用の外気導入口34が設けられている。図1に示すように、カウルルーバ10の下側には金属製または樹脂製のカウル80が配置されており、カウルルーバ10は底壁26の前後方向中央部26aでカウル80に連結されカウル80によって下方から支持されている。カウル80の後壁には開口部84が設けられ、開口部84には樹脂製の外気導入ダクト82が接続している。カウルルーバ本体20の外気導入口34からカウル80内に導入された外気(図2のc)は、外気導入ダクト84を通って空調装置に流れ(図2のd)、さらに車室に流れる。カウルルーバ本体20の外気導入口34からカウル80内に浸入した雨水は雨樋として機能するカウル80内を車両左右方向に流れ、カウル80の車両左右方向両端かまたは端部近傍にある図示しない開口から下方へ流れて排出される。
【0027】
図1および図2に示すように、凹部22の車両左右方向両端部またはその近傍には連結板40が設けられる。図2に示すように、連結板40はエンジンコンパートメントからの熱風がカウルルーバ10の車両左右方向両端部へ流れ(図2のa)両端部から凹部22内にまわり込んで流れる(図2のb)ことを防止または抑制するための遮熱板である。連結板40はカウルルーバ本体20の凹部22の車両左右方向両端部を、隙間62(図5、図6に示す)がある場合はその隙間62を除いて、遮断するように設けられる。
【0028】
連結板40は、カウルルーバ本体20の凹部22の前壁24および後壁28に連結板40の上下方向の少なくとも一部で連結されており、凹部22の底壁26と連結されている。連結板40と凹部壁24、26、28との連結は、連結板40の端部を連結板40と直交する凹部壁24、26、28に直接連結してもよいし、あるいは連結板40の端部に連結板40と直交する方向に短く延びる凹部壁24、26、28の一部となる部分を一体に形成しておき該凹部壁24、26、28の一部となる部分をそれと平行に延びる凹部壁24、26、28に連結してもよい。連結板40と凹部22の前壁24との連結部が前側連結部46であり、連結板40と凹部22の後壁28との連結部が後側連結部48である。連結板40は下辺44で凹部22の底壁26と連結される。
【0029】
図3および図4に示すように、連結板40は前側連結部46と後側連結部48で連結板40の全高にわたって凹部22の前壁24および後壁28に連結されてもよい。あるいは、図5および図6に示すように、連結板40は前側連結部46と後側連結部48の何れか少なくとも一方で、前側連結部46と後側連結部48の高さの一部のみで凹部22の前壁24および後壁28に連結されてもよい。図5および図6は連結板40が連結板40の後側連結部48の高さの一部のみで凹部22の後壁28に連結された場合を示すが、連結板40は前側連結部46の高さの一部のみで凹部22の前壁24に連結されてもよいし、または、前側連結部46と後側連結部48の各々の高さの一部のみで前壁24と後壁28に連結されてもよい。連結されていない部位では、図5、図6に示すように、連結板40に切欠部60が形成され、連結板40と凹部22の前壁24および後壁28との間には隙間62が形成される。
【0030】
連結板40は、鉛直面内で車両前後方向に平板状に延びる平板部50と、平板部50から山形状に車両左右方向に突出し連結板40の上辺42から下方に連続して延びる山形状部52とを有する。
山形状部52は頂部58を有する。頂部58は、平板部50または該平板部50の延長面からの車両左右方向突出量が山形状部52の上部54から山形状部52の下部56に向かって減少するように、鉛直面内にある平板部50または該平板部50の延長面に対して傾斜している。頂部58は連結板の上辺42から山形下部56まで上下方向に連続している。望ましくは、傾斜頂部58の平板部50からの傾斜角度は山形状部上部54から山形状部下部56までにわたって一定で直線状である。
【0031】
山形状部52は連結板40の上辺42から連結板高さ(車両前後方向に山形状部52の頂部58位置での連結板40の高さ)の一部だけ隔たった位置かそれより下方までの領域にわたって連続して形成されている。すなわち、図1〜図7に示すように、頂部58は連結板40の上下方向の途中で消失してそこから下方は平板部50であってもよいし、図8に示すように、頂部58は下辺44まで延びていてもよい。
頂部58が下辺44まで延びる場合、頂部58と平板部50または該平板部50の延長面との交差部は、丁度、連結板40の下辺44上にあってもよいし、あるいは連結板40の下辺44より下方にあってもよい。
頂部58と平板部50または該平板部50の延長面との交差部が連結板40の下辺44より下方にある場合、山形状部52の上部54の平板部50からの車両左右方向突出量は山形状部52の下部56の平板部50からの車両左右方向突出量より大である。
【0032】
連結板40には、車両前後方向に少なくとも1つの傾斜頂部58をもつ山形状部52が車両前後方向に少なくとも1つ形成されている。山形状部52は以下のような種々の形状をとることができる。
たとえば、図1〜図7および図12〜図16は車両前後方向に1つの傾斜頂部58をもつ山形状部52が車両前後方向に2つ形成された場合を示す。
図8〜図10は車両前後方向に1つの傾斜頂部58をもつ山形状部52が車両前後方向に1つ形成された場合を示す。
【0033】
図11は車両前後方向に1つの傾斜頂部58をもつ山形状部52が車両前後方向に3つ形成された場合を示す。図11に示すように、車両前後方向に複数の山形状部52が形成される場合、一部の山形状部52の平板部50からの突出方向が残りの山形状部52の平板部50からの突出方向と異なってもよい。ただし、平板部50から車両左右方向に突出する全山形状部52の図心が平板部50またはその延長面から車両左右方向にオフセットしていなければならない。図20、図21の山形状は全山形状の図心が車両左右方向にオフセットしていないので、本発明には含まれない。
【0034】
図17は、車両前後方向に1つの傾斜頂部58をもつ山形状部52が車両前後方向に1つ形成され車両前後方向に1つの非傾斜の頂部58Nをもつ山形状部52Nが車両前後方向に1つ形成された場合を示す。傾斜頂部58をもつ山形状部52は非傾斜の頂部58Nをもつ山形状部52Nを含まない。
【0035】
図18および図19は山形状部52が車両前後方向に1つ形成され、該1つの山形状部52が車両前後方向に2つの傾斜頂部58をもつ場合を示す。図18および図19では、2つの傾斜頂部58の間の谷部は平板部50または平板部50の延長面より傾斜頂部58側にオフセットしている。
【0036】
望ましくは、山形状部52の頂部58は、連結板40の上辺42と平行な面で切断して見た断面形状として、三角形以上の多角形の折れ曲がり部などの角(かど)をもつ形状である角(かど)形状、湾曲形状、平坦形状、の何れか少なくとも1つの形状を有する。
たとえば、図1〜図11および図15〜図19は、山形状部52の頂部58が角形状58aを有する場合を示し、図12は山形状部52の頂部58が湾曲形状58bを有する場合を示し、図13および図14は山形状部52の頂部58が平坦形状58cを有する場合を示す。山形状部52の頂部58が角形状58aまたは湾曲形状58bを有する場合は頂部58は山の稜線をもつ。山形状部52の頂部58が平坦形状58cを有する場合は最突出部は稜線ではなく平面になる。
複数の頂部58がある場合、複数の頂部58のうちの一部の頂部の形状と他の頂部の形状とが互いに異なってもよい。たとえば2つの頂部58のうちの一方が角形状を有し他方が湾曲形状または平坦形状を有するといった具合である。
【0037】
望ましくは、山形状部52の傾斜頂部58は鉛直面内に延びる平板部50から車両左右方向外側に突出して傾いている。ただし、山形状部52の傾斜頂部58が平板部50から車両左右方向内側に突出して傾いていてもよい。
【0038】
つぎに、本発明の実施例のカウルルーバ10の作用、効果を図7および図10を参照して説明する。図7は連結板40に複数の山形状部52が形成されている場合を示し、図10は連結板40に1つの山形状部52が形成されている場合を示している。
【0039】
図7の(i)および図10の(i)において、試験で用いるインパクタまたは歩行者からの荷重がフードパネル70にかかると、フードパネル70からカウルルーバ10のフードシール部30および連結板40に下方に向かう荷重がかかる。フードシール部30にかかる荷重をF1とし、連結板40にかかる荷重をF2とする。
【0040】
カウルルーバ10が凹部22の底壁26でカウル80によって下方から支持されているので、フードシール部30に入力された荷重F1は、凹部22の前端部と連結板40の前端部に下方への力と山形状部上部54を山形状部下部56より伸長させる方向の車両前後方向モーメントをかける。これによって、図7の(ii)および図10の(ii)に示すように、連結板40の山形状部52の上部54が下部56より多く車両前後方向前方に伸長して連結板40は扇が開くような変形をし、フードシール部30が下がる。フードシール部30が下がる荷重F1は、山形状部がない平板状連結板の場合に比べて低く、特許文献1の波形連結板の場合と同程度である。
【0041】
フードシール部30に入力された荷重F1によって連結板40の上辺42が車両前後方向に伸長する時、それと同時に、山形状部52の頂部58が傾斜していることによって、山形状部52の上部54が下部56より多く車両前後方向に伸長し、山形状部52の上部54の屈曲量が少なくなる側、すなわち偏平になる側に変形し、平板部50が車両左右方向にかつ頂部58に倒れる側に変形する。図7の(iii) 、(iv)および図10の(iii) は連結板40の倒れ変形を示す。
【0042】
図7の(v)および図10の(iv)に示すように、フードシール部30にかかる荷重F1によって連結板40が倒れ変形している状態で、連結板40の上辺42に荷重F2がかかると、連結板40は車両左右方向に容易に益々倒れ変形する。そのため、連結板上辺42にかかる荷重F2は、特許文献1の波形連結板の場合、および、山形状部がない平板状連結板の場合に比べて、下がる。特許文献1の波形連結板の場合、および、山形状部がない平板状連結板の場合は連結板が倒れないか、または倒れにくいので荷重F2は下がらない。
【0043】
連結板上辺42に荷重F2がかかって連結板40が倒れる側に変形する時、荷重F2の車両左右方向分力Faによって、図7の(vi)および図10の(v)に示すように、連結板40の上辺42の車両前後方向中央部か該車両前後方向中央部に近い部位の平板部50が山形状部52の頂部58側に移動し、山形状部52の屈曲量を小さくし山形状部52を偏平化させる。山形状部52が偏平化する時山形状部52が車両前後方向に延びるので、山形状部52の上部54を車両前後方向に拡げる方向の力Fbが山形状部52に生じ、さらに連結板40の前端部および後端部の平板部50を車両前後方向に拡げる方向の力Fcが連結板40の前端部および後端部に生じ、山形状部52の上部54が下部56より多く車両前後方向に伸長する。これによって、フードシール部30が下がり、フードシール部30にかかる荷重F1が益々下がる。
【0044】
したがって、山形状部52の頂部58を傾斜させたことにより、フードシール部30に荷重F1がかかった時に連結板40が車両左右方向に倒れる側に変形して連結板上辺42にかかる荷重F2が下がり、荷重F2によって山形状部上部54が車両前後方向に伸びてフードシール部30にかかる荷重F1が益々下がる。すなわち、荷重F1とF2が相乗的に下げ合う。その結果、荷重F1とF2の反力であるフードパネル70から試験治具のインパクタへの反力が下がる。これは、歩行者がフードパネル70上に倒れ込みあるいは衝突した時にフードパネル70から歩行者への反力が下がり、歩行者保護性能が向上することを意味している。
【0045】
従来からも設けられている遮熱板が連結板40として用いられるので、遮熱板とは別に連結板40を設ける必要がなく、本質的に部品点数増やコストアップを伴わない。従来の遮熱板では、歩行者衝突時に遮熱板を倒れやすくするために遮熱板と凹部の前後壁との間に一部隙間を設けるなどの対策をとっていたが、本発明では連結板40に山形状部52が設けられて歩行者衝突時に連結板40が倒れ変形するので、連結板40と凹部22の前後壁24、28との間にとくに隙間を設ける必要がないか、または図5、図6に示すように隙間62を設けても隙間62の高さ、幅を小さくすることができる。隙間の除去または隙間を小さくすることにより、従来と同程度以上に熱風の回り込みを抑制できる。
【0046】
山形状部52の頂部58が平板部50から車両左右方向外側に突出しているので、車両左右方向外側に連結板40を倒れ変形させることができる。連結板40より車両左右方向内側にはバッテリ着脱用の開口部を覆うカバー(図示略)がカウルルーバ本体20に取り付けられているが、車両左右方向外側に連結板40が倒れ変形するので、歩行者衝突時にカバーが外れて連結板40の倒れ変形を阻害することは起こらない。また、連結板40より車両左右方向外側は内側より固い構造となっているため、歩行者衝突時に連結板40の倒れ変形が他の構造部または部品の変形などによって阻害されるおそれがない。
【0047】
連結板40は凹部の前壁24と後壁28に連結板40の上下方向の少なくとも一部で連結されているので、フードシール部30に荷重がかかった時に連結板40に車両前後方向に伸び力を確実にかけることができる。
また、山形状部52は連結板40の上辺42から下方に連続して形成されているので、連結板40のうち山形状部52が設けられている部分の上部を下部よりも多く車両前後方向に伸長させることができる。連結板40の少なくとも上辺42に山形状部52が形成されていないと、上辺42が車両前後方向に伸長することはできず、本発明の効果は得られない。また、山形状部52が上下方向に断続して形成されている場合も本発明の効果は十分には得られない。
【0048】
連結板40に、車両前後方向に1つの頂部58をもつ山形状部52が車両前後方向に1つ、または車両前後方向に1つの頂部58をもつ山形状部52が車両前後方向に互いに間隔をおいて複数、または車両前後方向に互いに離れた複数の頂部58を有し頂部間部分が平板部50または該平板部の延長面から車両左右方向に頂部58側に離れている山形状部52が車両前後方向に1つ、または車両前後方向に互いに離れた複数の頂部58を有し頂部間部分が平板部50または該平板部の延長面から車両左右方向に頂部58側に離れている山形状部52が車両前後方向に互いに間隔をおいて複数、形成されていれば、上述の荷重F1とF2の相乗下げ効果が得られる。なお、2つの山形状部52が設けられていることと1つの山形状部52が2つの頂部58をもつこととの相違は、2つの山形状部52が設けられている場合には2つの山形状部52の間の部分が平板部50をもつか平板部50を横切るが、1つの山形状部52が2つの頂部58をもつ場合には2つの頂部58の間の部分が平板部50をもたないし平板部50を横切らないことである。
【0049】
山形状部52の頂部58が、連結板40の上辺42と平行な面で切断して見た断面形状として、角形状、湾曲形状、平坦形状、の何れか少なくとも1つの形状を有すれば、上述の荷重F1とF2の相乗下げ効果が得られる。
【符号の説明】
【0050】
10 カウルルーバ
20 カウルルーバ本体
22 凹部
24 前壁
26 底壁
28 後壁
30 フードシール部
32 意匠部
40 連結板
42 連結板の上辺
44 連結板の下辺
46 前側連結部
48 後側連結部
50 平板部
52 山形状部
54 山形状部の上部
56 山形状部の下部
58 頂部
58a 角形状
58b 湾曲形状
58c 平坦形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向前側から後側に順にフードシール部、上方に開いた凹部、意匠部を有し車両左右方向に延びるカウルルーバ本体と、
該カウルルーバ本体の前記凹部に設けられ車両前後方向に延びる連結板と、
を有するカウルルーバであって、
前記連結板は車両前後方向に平板状に延びる平板部と該平板部から車両左右方向に突出し前記連結板の上辺から下方に延びる山形状部とを有し、
前記山形状部は頂部を有し、該頂部は前記平板部または該平板部の延長面からの車両左右方向突出量が前記山形状部の上部から下部に向かって減少するように前記平板部または該平板部の延長面に対して傾斜している、カウルルーバ。
【請求項2】
前記連結板はカウルルーバ本体の車両左右方向各端部に設けられた遮熱板である請求項1記載のカウルルーバ。
【請求項3】
前記山形状部の頂部は、前記平板部から車両左右方向外側に突出している、請求項1または請求項2記載のカウルルーバ。
【請求項4】
前記カウルルーバ本体の前記凹部は前壁、後壁、底壁を有し、前記連結板は前記凹部の底壁に連結される下辺と、前記凹部の前壁に前記連結板の上下方向の少なくとも一部で連結される前側連結部と、前記凹部の後壁に前記連結板の上下方向の少なくとも一部で連結される後側連結部とを有し、
前記山形状部は前記連結板の上辺から下方に向かって連続して形成されており、
前記連結板に、車両前後方向に少なくとも1つの頂部をもつ山形状部が車両前後方向に少なくとも1つ形成されており、
前記山形状部の前記頂部は、前記連結板の上辺と平行な面で切断して見た断面形状として、角形状、湾曲形状、平坦形状の何れか少なくとも1つの形状を有する、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のカウルルーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−60120(P2013−60120A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200126(P2011−200126)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】