説明

カウル部構造

【課題】衝撃吸収を十分に行い、歩行者保護性能を向上できるカウル部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかるカウル部構造100は、車両のフロントフード102とウインドシールドガラス104との間に配置されたカウルトップパネル108と、車幅方向に延びていてカウルトップパネルを覆うカウルトップガーニッシュ106とを備えたカウル部構造において、カウルトップガーニッシュは、カウルトップパネルに沿った上面部114と、フロントフードの下方に配置されフロントフードに向かって先端が前方斜め上に傾斜している前端部116と、上面部から前方に延びて前端部の後端に接続されることにより前端部の位置を上面部から前方に離している延長部118とを備え、前端部の先端に固定されていて、フロントフードに接するフードリアシール112をさらに備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントフードとウインドシールドガラスとの間に配置され、車幅方向に延びるカウルトップガーニッシュを備えたカウル部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、フロントフードの後端付近からウインドシールドガラスとの間で、車幅方向に延びるカウルトップガーニッシュが配置されている。
【0003】
近年、歩行者保護への関心が高まり、歩行者保護性能を重要視する車両が増えている。このため、歩行者などの被衝突体がフロントフードに上方から衝突した場合であっても、衝撃吸収を十分に行い、歩行者保護性能を向上させたカウル部構造が求められている。
【0004】
特許文献1には、カウルトップガーニッシュを備えたカウル部構造が記載されている。このカウル部構造では、カウルトップガーニッシュが、車両前方側の端部に至る途中で、フロントフードに向けて傾斜していて、この端部がフロントフードとほぼ平行となっている。また、カウルトップガーニッシュの端部とフロントフードとの間には、シール部材が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−137534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のカウル部構造では、カウルトップガーニッシュの端部がフロントフードとほぼ平行となっているので、この端部が上方からの衝突荷重を受けると、衝突荷重が端部により分散されてしまい、容易には変形しない場合があり得る。
【0007】
この場合には、フロントフードに上方から衝突した被衝突体が、カウルトップガーニッシュから反力を受けてしまう。つまり、特許文献1に記載のカウル部構造では、被衝突体がフロントフードに上方から衝突した場合での歩行者保護性能については十分な対策が講じられていない。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、衝撃吸収を十分に行い、歩行者保護性能を向上できるカウル部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるカウル部構造の代表的な構成は、車両のフロントフードとウインドシールドガラスとの間に配置されたカウルトップパネルと、車幅方向に延びていてカウルトップパネルを覆うカウルトップガーニッシュとを備えたカウル部構造において、カウルトップガーニッシュは、カウルトップパネルに沿った上面部と、フロントフードの下方に配置されフロントフードに向かって先端が前方斜め上に傾斜している前端部と、上面部から前方に延びて前端部の後端に接続されることにより前端部の位置を上面部から前方に離している延長部とを備え、前端部の先端に固定されていてフロントフードに接するシール部材をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、歩行者などの被衝突体によりフロントフードが下方への過荷重を受けた場合には、被衝突体のエネルギーがシール部材を介して、カウルトップガーニッシュの前端部に伝達される。前端部は、斜め前方に傾斜していて、その位置が延長部により前方に延長されている。このため、前端部および延長部は、被衝突体のエネルギーにより変形し易く、エネルギーを吸収する。よって、衝撃吸収を十分に行い、歩行者保護性能を向上できる。
【0011】
延長部は、上面部から連続して前方斜め上に延びる傾斜面と、傾斜面から前方に延びる水平面とを有するとよい。これにより、前端部の傾斜を保持し、その上で、前端部の位置を前方に延長できる。
【0012】
延長部は、上面部と傾斜面との角部、および、傾斜面と水平面との角部に切欠形状を有するとよい。これにより、被衝突体のエネルギーを延長部が受けたとき、切欠形状を起点にして延長部が変形する。このように、切欠形状を設定することで、エネルギーの吸収特性を調整できる。
【0013】
カウルトップガーニッシュは、上面部の後端から上方に延びる縦壁部と、上面部と縦壁部とをそれらの成す角部の内角にわたって接続するリブとをさらに備えるとよい。これにより、上面部がリブにより補強されるので、被衝突体のエネルギーを受けたとき、上面部ではなく延長部が変形する。このように、リブを設定することで、エネルギーの吸収特性を調整できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、衝撃吸収を十分に行い、歩行者保護性能を向上できるカウル部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態におけるカウル部構造が適用される車両を示す図である。
【図2】図1のカウル部構造の分解斜視図である。
【図3】図1のカウル部構造の断面を示す図である。
【図4】比較例のカウル部構造を示す図である。
【図5】他のカウル部構造の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
図1は、本実施形態におけるカウル部構造が適用される車両を示す図である。図2は、図1のカウル部構造の分解斜視図である。カウル部構造100は、例えば、このフロントフード102とウインドシールドガラス104との間に配置されていて、車幅方向に延びているカウルトップガーニッシュ106を備えている。カウルトップガーニッシュ106は、図2に示すように、カウルトップパネル108を上方から覆うように配置されていて、複数(ここでは、3つ)のクリップ110で固定されている。
【0018】
カウルトップガーニッシュ106は、例えば樹脂製であり、その前端部116(図3にて後述する)には、フロントフード102に接するゴム製のフードリアシール(シール部材)112が固定されている。
【0019】
図3は、図1のカウル部構造100の断面を示す図である。図3(a)は、図1のカウル部構造100のA−A線に沿った断面を示している。フロントフード102は、外側パネル102aと内側パネル102bとを有していて、内側パネル102bには図示のように、上記フードリアシール112が斜めに接している。フードリアシール112は、エンジンルーム内の電装部品への被水防止、およびエンジンの熱に起因するウインドシールドガラス104の曇り防止のために用いられる。このため、フードリアシール112とフロントフード102の内側パネル102bが接していることで、シール性が確保されている。
【0020】
カウルトップガーニッシュ106は、カウルトップパネル108の前端108aに沿った上面部114と、先端にフードリアシール112が挟み込まれ固定された前端部116と、上面部114と前端部116とを接続する延長部118とを備えている。
【0021】
前端部116は、図示のように、フロントフード102の下方に配置され、フロントフード102に向かって先端が前方斜め上に傾斜している。なお、フードリアシール112は、車幅方向に延びる溝部112aを有していて、この溝部112aに、カウルトップガーニッシュ106の前端部116の先端が差し込まれ固定されている。
【0022】
延長部118は、例えば、上面部114から連続して前方斜め上に延びる傾斜面118aと、傾斜面118aから前方に延びる水平面118bとを有している。延長部118は、図示のように、上面部114から前方に延びて、前端部116の後端に接続されることにより、前端部116の位置を上面部114から前方に離している。つまり、延長部118は、前端部116の傾斜を保持した状態で前端部116の位置を前方に延長している。
【0023】
また、カウルトップガーニッシュ106は、縦壁部120と三角リブ122とを備えている。縦壁部120は、上面部114の後端から上方に延びている。三角リブ122は、上面部114と縦壁部120とをそれらの成す角部の内角にわたって接続する。
【0024】
次に、図3(b)を参照して、歩行者などの被衝突体によりフロントフード102が下方への過荷重を受けた場合でのカウル部構造100の状態について説明する。図3(b)は、被衝突体がフロントフード102に上方から衝突した際のカウル部構造100の状態を示す図である。図中、矢印Bは上方からの過荷重を示している。また、図中、この過荷重を受ける前のカウル部構造100の状態を鎖線で示し、さらに、過荷重を受けた後のカウル部構造100の状態を実線で示している。
【0025】
まず、被衝突体によりフロントフード102が下方への過荷重を受けると、被衝突体のエネルギーがフードリアシール112を介して、カウルトップガーニッシュ106の前端部116に伝達される。前端部116は、斜め前方に傾斜していて、その位置が延長部118により前方に延長されている。
【0026】
このため、前端部116には、図中矢印Cで示す方向に回転させるモーメントが作用する。さらに、上面部114が三角リブ122により補強されている。このため、被衝突体のエネルギーは、上面部114ではなく延長部118が主に受けることになり、例えば、上面部114と傾斜面118aとの境界、あるいは傾斜面118aと水平面118bとの境界が変形して折れることになる。
【0027】
つまり、延長部118は、被衝突体のエネルギーにより変形し易く、エネルギーを吸収できる。また、三角リブ122を設定することで、エネルギーの吸収特性を調整することもできる。なお、吸収特性の調整とは、例えば、カウルトップガーニッシュ106の前端部116の回転や延長部118の折れの程度を調整することを想定している。よって、衝撃吸収を十分に行い、歩行者保護性能を向上できる。
【0028】
図4は、比較例のカウル部構造100Aを示す図である。なお、図中では、上記実施形態のカウル部構造100に示す部材と同一部材には同一符号を付し、説明を適宜省略する。
【0029】
カウル部構造100Aは、カウルトップガーニッシュ106Aに上記延長部118が存在せず、上面部114と前端部116Aとが接続されている点、上面部114と縦壁部120との間に上記三角リブ122が形成されていない点で、上記カウル部構造100と異なる。
【0030】
このため、カウル部構造100Aでは、カウルトップガーニッシュ106Aの前端部116Aに差し込まれて固定されたフードリアシール112が上面部114から直接、フロントフード102の内側パネル102bに向けて斜め前方に傾斜して突出している。
【0031】
このようなカウル部構造100Aでは、被衝突体によりフロントフード102が下方への過荷重(図中、矢印B)を受けると、カウルトップガーニッシュ106Aの前端部116Aが折れずに座屈を起こしてしまう可能性がある。この場合には、カウル部構造100Aでは、図中、矢印Dに示すような大きな反力が発生してしまい、衝撃吸収が行われ難くなり、十分な歩行者保護性能を確保できない。
【0032】
これに対して、本実施形態におけるカウル部構造100では、被衝突体によりフロントフード102が下方への過荷重を受けた場合には、被衝突体のエネルギーがフードリアシール112を介して、カウルトップガーニッシュ106の前端部116から延長部118に伝達される。延長部118は、被衝突体のエネルギーにより変形し易い。よって、カウル部構造100では、衝撃吸収を十分に行い、歩行者保護性能を向上できる。
【0033】
また、上面部114を補強する三角リブ122を形成しているので、延長部118がより変形し易くなり、被衝突体のエネルギーの吸収特性を調整することもできる。
【0034】
さらに、フードリアシール112が溝部112aを有しているので、別部品を用いることなく、カウルトップガーニッシュ106の前端部116の先端にフードリアシール112を差し込んで固定できる。
【0035】
図5は、他のカウル部構造100Bの断面を示す図である。カウル部構造100Bは、カウルトップガーニッシュ106Bの延長部118に切欠形状124a、124bが形成されている点で、上記カウル部構造100と異なる。
【0036】
切欠形状124a、124bは、延長部118の上面部114と傾斜面118aとの角部、および、傾斜面118aと水平面118bとの角部に形成されている。
【0037】
このようなカウル部構造100Bでは、被衝突体のエネルギーを延長部118が受けたとき、切欠形状124a、124bを起点にして延長部118が変形することになる。このように、切欠形状124a、124bを設定することで、エネルギーの吸収特性を調整できる。なお、切欠形状124a、124bを設定して吸収特性を調整することは、例えば、レイアウト上の制限が大きく、マイナーチェンジ等の小規模な変更を実施する場合に特に有効である。
【0038】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、フロントフードとウインドシールドガラスとの間に配置され、車幅方向に延びるカウルトップガーニッシュを備えたカウル部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
100、100B…カウル部構造、102…フロントフード、102a…外側パネル、102b…内側パネル、104…ウインドシールドガラス、106、106B…カウルトップガーニッシュ、108…カウルトップパネル、108a…前端、110…クリップ、112…フードリアシール、112a…溝部、114…上面部、116…前端部、118…延長部、118a…傾斜面、118b…水平面、120…縦壁部、122…三角リブ、124a、124b…切欠形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントフードとウインドシールドガラスとの間に配置されたカウルトップパネルと、車幅方向に延びていて該カウルトップパネルを覆うカウルトップガーニッシュとを備えたカウル部構造において、
前記カウルトップガーニッシュは、
前記カウルトップパネルに沿った上面部と、
前記フロントフードの下方に配置され該フロントフードに向かって先端が前方斜め上に傾斜している前端部と、
前記上面部から前方に延びて前記前端部の後端に接続されることにより該前端部の位置を該上面部から前方に離している延長部とを備え、
前記前端部の先端に固定されていて前記フロントフードに接するシール部材をさらに備えることを特徴とするカウル部構造。
【請求項2】
前記延長部は、前記上面部から連続して前方斜め上に延びる傾斜面と、該傾斜面から前方に延びる水平面とを有することを特徴とする請求項1に記載のカウル部構造。
【請求項3】
前記延長部は、前記上面部と前記傾斜面との角部、および、前記傾斜面と前記水平面との角部に切欠形状を有することを特徴とする請求項2に記載のカウル部構造。
【請求項4】
前記カウルトップガーニッシュは、前記上面部の後端から上方に延びる縦壁部と、
前記上面部と前記縦壁部とをそれらの成す角部の内角にわたって接続するリブとをさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカウル部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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