説明

カウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法、カウンセリング制御プログラム

【課題】回答者が自由に自己の感情を表現でき、この集計及び解析が簡易であって、しかも回答者の主観的な感情やストレスを把握することができるカウンセリング装置を提供する。
【解決手段】第1の質問及び第1の質問に対する回答に関して想起されるイメージについての質問である第2の質問、第1の質問の回答に関する主観的な感情についての質問である第3の質問を混在させてアンケートを作成するアンケート作成部25、作成されたアンケートに対する回答を収集する通信制御部29、収集されたアンケートの回答のうちの第3の質問に対する回答結果を複数の日にわたって記録するDB21、記録された回答結果に基づいて第3の質問に対する回答結果を解析する回答解析部26、得られた解析結果を表示する表示データ生成部27及びディスプレイ28によってカウンセリング装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法、カウンセリング制御プログラムにかかり、特に構造化連想法を使ったカウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法、カウンセリング制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンピュータネットワークを介して回答者から情報を収集し、収集された情報をコンピュータによって解析するカウンセリングのシステムが実用化されている。このようなカウンセリングシステムの従来例として、例えば、特許文献1、特許文献2が挙げられる。
特許文献1に記載された発明は、商品の市場調査を目的とするマーケティングシステムである。この発明では、商品に予め商品情報を記憶させたICタグを貼付しておき、ICタグの情報と商品を購入した顧客情報と共にデータベースサーバに記憶しておく。そして、顧客がICタグから商品情報を読み取り、この情報と共に商品に対する満足度を、ネットワークを介して調査者側に送信する。
【0003】
このような特許文献1によれば、アンケート調査のため回答者にかかる負荷が小さくて、かつ広範囲、継続的に購入した商品について顧客満足度についての情報を収集することができる。
また、特許文献2に記載された発明は、ネットワークを使って世論調査をする方法に関するものである。この方法では、サーバの管理者がネットワークを使い、例示質問を、アンケートを実行する者(調査者)に送信する。調査者は、例示質問をアンケートの対象者(回答者)に応じて修正し、アンケートに利用する。
【0004】
このような特許文献2の発明によれば、調査者が予め設定されている質問の内容を任意に修正して回答者に提供できる。このため、調査者が質問を作る作業を軽減し、かつ、調査の目的やアンケートの回答者により適した質問によるアンケートをすることができる。このような特許文献2の発明によれば、アンケートに対する応答率を高め、かつ、アンケートの回答の信頼度を改善することができる。
【特許文献1】特開2007−102481号公報
【特許文献2】特開2001−195505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、社会の価値観が多様化するに伴い、各人の主観的な感情を抽出することが可能な調査が各分野で要求されている。例えば、ストレスによるうつ病の罹患者や自殺者の増加を抑止するには、各個人が自己のストレスの有無や程度を自覚して改善に努めると共に、医療機関等が個人のストレスについて把握し、適正な治療や支援を提供することが必要になる。
【0006】
また、犯罪や災害にあった回答者に対しては、各個人のストレス障害の程度やその経過を把握し、障害の程度に応じて適正な時期に適正なケアをすることが地域の復興や個人の復帰に有効である。さらに、地域開発にあたっては、開発される地域に対する住民の思い入れや感情を把握し、尊重することによって開発を円滑に進めることが可能になる。
しかしながら、従来技術として挙げた特許文献2は、問題を適宜修正できるものの、アンケートの回答者が予め設定されている質問を選択することによってアンケートに答えるものである。このような特許文献2のアンケートでは、回答者が自己の感情を適切に表すことは困難である。
【0007】
また、予め質問を設定するアンケートは、収入や資産、学歴といった客観的な情報を収集することに適しているが、人間の主観的な感情を、このような客観的な条件によって判断することは困難である。
一方、特許文献1の発明は、例えば「商品についてお気づきの点をお知らせください」のような質問を設定することができる。このため、特許文献2よりも回答者が主観的な感情を表現しやすいと考えられる。
【0008】
ただし、このような特許文献1を適用して各人の感情を調査する場合、「あなたは、今幸福ですか」といった質問を設定すると、各人の回答の自由度が大きくて集計や解析にかかる負荷が大きくなる。このため、特許文献1の発明は、多数の回答者に主観的な感情について質問するアンケートには適していないものといえる。
さらに、特許文献1の発明において、例えば「景気低迷についてどのように考えますか」といったより具体的な質問をすれば、回答者の回答も明確になって集計や解析の作業の負荷は軽減するものと考えられる。
【0009】
しかし、上記の例では、回答者にとって景気の低迷が主観的な感情に影響するものではない場合があって、回答が必ずしも回答者個人の感情を表すものとはいえない。すなわち、回答者が景気低迷を感じながらも現在の就業状態に満足している場合、回答者は景気低迷を感じると回答する。また、回答者が景気とは無関係な理由で就業に不満を持っている場合にも、アンケートに対しては景気低迷を感じないと回答する。
【0010】
このような回答を集計した場合、回答者の景気低迷に対する客観的な見解を知ることができるが、景気低迷によって各人が感じる主観的な満足度やストレスについては知ることができない。
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、回答者が自由に自己の感情を表現でき、この集計及び解析が簡易であって、しかも回答者の主観的な感情やストレスを把握することができるカウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するため、本発明の請求項1のカウンセリングシステムは、複数の質問を含むアンケートを作成し、ネットワークを介して提供すると共に、提供したアンケートに対する回答を複数の日にわたって収集して解析するカウンセリング装置と、前記カウンセリング装置によって提供されたアンケートを、前記ネットワークを介して受信し、前記アンケートに対する回答の入力を複数の日にわたって受付ける回答受付手段と、を含むカウンセリングシステムであって、前記カウンセリング装置は、第1の質問と、当該第1の質問に対する回答に関して想起されるイメージについての質問である第2の質問と、前記第1質問群に含まれる第1の質問の回答に関する主観的な感情についての質問である第3の質問とを混在させてアンケートを作成するアンケート作成手段と、前記アンケート作成手段によって作成されたアンケートに対する回答を収集する回答収集手段と、前記回答収集手段によって収集されたアンケートの回答のうち、前記第3の質問に対する回答結果を複数の日にわたって記録する回答記録手段と、前記回答記録手段によって記録された回答結果に基づいて、前記第3の質問に対する回答結果を解析する回答解析手段と、前記回答解析手段によって得られた解析結果を表示する結果表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
このような発明では、アンケートが第1の質問、第1の質問に関してイメージする第2の質問、主観的な感情について考える第3の質問を含んでいる。このため、回答者はアンケートに回答するために右脳と左脳とを使い、右脳を使って直感的な回答をすることが期待される。このような本発明は、回答者が普段自覚していない心理をも抽出することができる。さらに、複数の日にわたって回答結果を解析することができるので、解析結果の経時的な変化をも検出することができる。
【0013】
このような本発明は、右脳を使って直感的に思考する質問に回答することによって回答者が自由に自己の感情を表現でき、第3の質問に対する回答結果だけを解析すれば足りることから集計及び解析が簡易であって、しかも右脳を使って直感的な回答をすることが期待されることから回答者の主観的な感情やストレスを把握可能なカウンセリングシステムを提供することができる。
【0014】
また、本発明の請求項2のカウンセリング装置は、複数の質問を含むアンケートを作成し、ネットワークを介して提供すると共に、提供したアンケートに対する回答を複数の日にわたって収集して解析するカウンセリング装置であって、第1の質問と、当該第1の質問に対する回答に関して想起されるイメージについての質問である第2の質問と、前記第1質問群に含まれる第1の質問の回答に関する主観的な感情についての質問である第3の質問とを混在させてアンケートを作成するアンケート作成手段と、前記アンケート作成手段によって作成されたアンケートに対する回答を収集する回答収集手段と、前記回答収集手段によって収集されたアンケートの回答のうち、前記第3の質問に対する回答結果を複数の日にわたって記録する回答記録手段と、前記回答記録手段によって記録された回答結果に基づいて、前記第3の質問に対する回答結果を解析する回答解析手段と、前記回答解析手段によって得られた解析結果を表示する結果表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
このような発明では、アンケートが第1の質問、第1の質問に関してイメージする第2の質問、主観的な感情について考える第3の質問を含んでいる。このため、回答者はアンケートに回答するために右脳と左脳とを使い、右脳を使って直感的な回答をすることが期待される。このような本発明は、回答者が普段自覚していない心理をも抽出することができる。さらに、複数の日にわたって回答結果を解析することができるので、解析結果の経時的な変化をも検出することができる。
【0016】
このような本発明は、右脳を使って直感的に思考する質問に回答することによって回答者が自由に自己の感情を表現でき、第3の質問に対する回答結果だけを解析すれば足りることから集計及び解析が簡易であって、しかも右脳を使って直感的な回答をすることが期待されることから回答者の主観的な感情やストレスを把握可能なカウンセリング装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載のカウンセリング装置は、請求項2に記載の発明において、前記第3の質問が、回答者の自己に対する主観的な感情に関する質問と、他者に対する主観的な感情についての質問とを含み、前記アンケート作成手段は、回答者の自己に対する主観的な感情に関する質問と、他者に対する主観的な感情についての質問とを前記第1の質問、前記第2の質問に混在させてアンケートを作成することを特徴とする。
このような発明によれば、第3の質問に対する回答によって回答者の自己に対する主観的な感情と、他者に対する主観的な感情とを知ることができる。このため、回答者が自己の感情を自己に対するものなのか、他者に対するものなのかを認識することができる。
【0018】
また、本発明の請求項4に記載のカウンセリング装置は、請求項2または3に記載のカウンセリング装置において、回答者の自己に対する主観的な感情に関する質問が、自己に対する評価の高低に関する質問である自己評価質問と、主観的な感情に対する自己の寄与に関する質問である自己要求質問とを含み、他者に対する主観的な感情についての質問が、主観的な感情に対する他者の寄与に関する質問である他者要求質問とを含み、前記回答解析手段は、前記自己評価質問に対する回答の評価の高低と、前記自己要求質問及び前記他者要求質問に対する回答結果と、に基づいて、前記第3の質問に対する回答結果の解析結果を得ることを特徴とする。
このような発明によれば、回答者の自己要求と他者要求とを知り、総合して回答者の自立心及び依存心の度合いを知ることができる。また、自己評価に基づいて回答者の自己肯定感及び自己否定感の程度を知ることができる。
【0019】
また、請求項5に記載のカウンセリング装置は、請求項2から4のいずれか1項に記載の発明において、前記結果表示手段が、前記第3の質問の前記解析手段による解析結果の経時的な変化を、ベクトルを使って表示し、複数の回答者による解答結果の解析結果を、前記ベクトルを合成することによって表示することを特徴とする。
このような発明によれば、複数の回答者による所定の期間における回答結果の変化を把握しやすい形で表示することができる。複数の回答者による解答結果の解析結果をベクトル合成して表示することにより、ある集団に属する複数の回答者の感情や感情の変化を総合的に判断することが可能になる。
【0020】
また、本発明の請求項6に記載のカウンセリング装置は、請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記第1の質問の少なくとも一部、前記第2の質問の少なくとも一部、前記第3質問の少なくとも一部は、回答者が任意に文字を入力することによって回答される質問であることを特徴とする。
このような発明によれば、回答者が自己の感情を任意に書き込むことができ、アンケートの過程で自己の感情を整理することができる。このため、回答者の感情が正確に反映された回答を得ることができる。また、回答する行為自体が回答者の心理状態を向上させる効果を期待することができる。
【0021】
本発明の請求項7に記載のカウンセリング方法は、複数の質問を含むアンケートを作成し、ネットワークを介して提供すると共に、提供したアンケートに対する回答を複数の日にわたって収集して解析するカウンセリング方法であって、第1の質問と、当該第1の質問に対する回答に関して想起されるイメージについての質問である第2の質問と、前記第1の質問の回答に関する主観的な感情についての質問である第3の質問とを混在させてアンケートを作成するアンケート作成ステップと、前記アンケート作成ステップにおいて作成されたアンケートに対する回答を収集する回答収集ステップと、前記回答収集ステップにおいて収集されたアンケートの回答のうち、前記第3の質問に対する回答結果を複数の日にわたって記録する回答記録ステップと、前記回答記録ステップにおいて記録された回答結果に基づいて、前記第3の質問に対する回答結果を解析する回答解析ステップと、前記回答解析ステップにおいて得られた解析結果の経時的な変化を表示する結果表示ステップと、を含むことを特徴とする。
【0022】
このような発明では、アンケートが第1の質問、第1の質問に関してイメージする第2の質問、主観的な感情について考える第3の質問を含んでいる。このため、回答者はアンケートに回答するために右脳と左脳とを使い、右脳を使って直感的な回答をすることが期待される。このような本発明は、回答者が普段自覚していない心理をも抽出することができる。さらに、複数の日にわたって回答結果を解析することができるので、解析結果の経時的な変化をも検出することができる。
【0023】
このような本発明は、右脳を使って直感的に思考する質問に回答することによって回答者が自由に自己の感情を表現でき、第3の質問に対する回答結果だけを解析すれば足りることから集計及び解析が簡易であって、しかも右脳を使って直感的な回答をすることが期待されることから回答者の主観的な感情やストレスを把握可能なカウンセリング方法を提供することができる。
【0024】
また、請求項8に記載のカウンセリング制御プログラムは、複数の質問を含むアンケートを作成し、ネットワークを介して提供すると共に、提供したアンケートに対する回答を複数の日にわたって収集して解析するカウンセリング制御プログラムであって、コンピュータに、第1の質問と、当該第1の質問に対する回答に関して想起されるイメージについての質問である第2の質問と、前記第1の質問の回答に関する主観的な感情についての質問である第3の質問とを混在させてアンケートを作成するアンケート作成機能と、前記アンケート作成機能によって作成されたアンケートに対する回答を収集する回答収集機能と、前記回答収集機能によって収集されたアンケートの回答のうち、前記第3の質問に対する回答結果を複数の日にわたって記録する回答記録機能と、前記回答記録機能によって記録された回答結果に基づいて、前記第3の質問に対する回答結果を解析する回答解析機能と、前記回答解析機能において得られた解析結果の経時的な変化を表示する結果表示機能と、を実現させることを特徴とする。
【0025】
このような発明では、アンケートが第1の質問、第1の質問に関してイメージする第2の質問、主観的な感情について考える第3の質問を含んでいる。このため、回答者はアンケートに回答するために右脳と左脳とを使い、右脳を使って直感的な回答をすることが期待される。このような本発明は、回答者が普段自覚していない心理をも抽出することができる。さらに、複数の日にわたって回答結果を解析することができるので、解析結果の経時的な変化をも検出することができる。
【0026】
このような本発明は、右脳を使って直感的に思考する質問に回答することによって回答者が自由に自己の感情を表現でき、第3の質問に対する回答結果だけを解析すれば足りることから集計及び解析が簡易であって、しかも右脳を使って直感的な回答をすることが期待されることから回答者の主観的な感情やストレスを把握可能なカウンセリング制御プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図を参照して本発明にかかるカウンセリングシステム、カウンセリング装置、カウンセリング方法の実施形態1、実施形態2を説明する。
ここで、本発明の実施形態1、実施形態2の説明に先立って、本発明のアンケートに使用されるSAT法(構造化連想法)について説明する。SAT法とは、筑波大学の宗像教授らによって提唱されたカウンセリング技法であって、「構造化された(Structured)」問いかけによって問題解決脳である右脳を活性化し、意識下あるいは変性意識(催眠状態)での「ひらめき、連想(Association)」を用いて問題の解決法や新しい生き方の気付きを促す「技法(Technique)」である。
SAT法の自己イメージ法では、回答者が距離をおいて自己を観察し、自分自身が何をしたらいいかを自己決定させる。自己決定は、直感的なひらめきによって決定されることが望ましい。このようなSAT法は、「SAT療法(宗像恒次著:金子書房)」等の本によって周知のカウンセリングの技法である。
【0028】
(実施形態1)
(1)カウンセリングシステムの全体構成
図1は、実施形態1のカウンセリングシステムの概念を説明するための図である。図示したシステムは、複数の質問を含むアンケートを作成し、ネットワークを介して提供すると共に、提供したアンケートに対する回答を複数の日にわたって収集して解析するWEBサーバ1と、WEBサーバ1によって提供されたアンケートを、ネットワークを介して受信し、アンケートに対する回答の入力を複数の日にわたって受付けるPC(Personal Computer)4を含むカウンセリングシステムである。
【0029】
なお、実施形態1のアンケートは、SAT法によって作成された質問をし、回答者はSAT法の入力フォーム3に自由に自己の考えや感情を言語によって記述する。回答者の記述した言語の内容が言語情報としてWEBサーバ1に送られる。WEBサーバ1は、送られてきた言語情報を受付けてデータベースサーバ2に蓄積する。
【0030】
図1に示した構成では、解析プログラム101を有するWEBサーバ1及びデータベースサーバ2がカウンセリング装置、回答者が使用するPC4が回答受付手段として機能する。
図1中に示したSAT法による回答者の入力フォーム3によれば、回答者は、テーマ情報に対して想起された事象(エピソード)、エピソードを想起した原因となる背後感情、背後感情から回答者が自己または他者に対して持つ希望や期待が入力される。また、希望や期待を実現する自己に対するイメージ(自己イメージ)、イメージを実現するための目標や行動、決断を入力することができる。なお、回答者によって入力される言語情報については、後により具体的に説明する。
解析プログラム101は、入力フォーム3にしたがって入力された言語情報を解析する。解析の結果は、WEBサーバ1の管理者によって管理され、医療や保健に関する調査、あるいは政府等による調査に利用される。さらに、解析結果を回答者に送信し、回答者の自己カウンセリングに利用することもできる。
【0031】
(2)WEBサーバ及びデータベースサーバ
図2は、WEBサーバ1及びデータベースサーバ2を説明するための図である。図示したWEBサーバ1は、アンケートを作成するアンケート作成部25を備えている。アンケート作成部25は、第1の質問、第2の質問、第3の質問を混在させてアンケートを作成する。
第1の質問とは、回答者が論理的な思考をして回答すると考えられる質問であって、回答者が左脳を使って思考することを期待して設定されている。また、第2の質問は、第1の質問に対する回答に関して想起されるイメージについての質問であって、回答者が直感的に回答すると考えられる質問である。第2の質問は、回答者が右脳を使うことを期待して設定されている。
【0032】
さらに、第3の質問は、第1の質問の回答に関する主観的な感情についての質問である。第3の質問も回答者が直感的に答える質問である。実施形態1のカウンセリングシステムでは、第3の質問に対する回答を使って回答者の主観的な自己に対するプラスイメージとマイナスイメージのバランス及び自己要求傾向と他者要求傾向とを抽出している。
このようにすることにより、実施形態1のカウンセリングシステムは、具体的な質問のテーマを設定することなく、アンケートによって回答者の主観を抽出することができる。
【0033】
また、WEBサーバ1は、第1の質問を複数記憶するDB(データベース)22、第2の質問を複数記憶するDB23を有している。実施形態1では、第3の質問もDB23に保存しておき、アンケート作成部25が、DB22とDB23とから第1の質問、第2の質問、第3の質問を取り出してアンケートを作成する。実施形態1では、第1の質問等の左脳を使って答えられると思われる質問と第2の質問、第3の質問の左脳を使って答えられると思われる質問とを概ね交互に設定してアンケートを作成する。
【0034】
第1の質問と第2の質問、第3の質問とを交互に繰り返すことにより、実施形態1は、右脳と左脳とが交互に機能し、右脳による直感的な回答を適正に導き出すことができる。
また、WEBサーバ1は、アンケート作成部25によって作成されたアンケートに対する回答を収集する通信制御部29を備えている。実施形態1では、通信制御部29によって複数の日にわたって収集された回答がデータベースサーバ2のDB21に記録される。回答解析部26は、DB21に記録された回答を抽出して解析する。解析の結果、第3の質問に対する回答結果が得られる。表示データ生成部27は、回答結果の経時的な変化を表示する表示データを作成する。表示データは、ディスプレイ28や、PC4のディスプレイに表示される。
【0035】
以上の構成において、アンケート作成部25はアンケートを作成手段、通信制御部29はアンケート作成手回答収集手段、DB21が回答記録手段、回答解析部26は回答解析手段、表示データ生成部27及びディスプレイ28は結果表示手段として機能する。なお、アンケート作成部25、回答解析部26、表示データ生成部27は、解析プログラム101に含まれているものとする。
【0036】
・解析プログラム
次に、WEBサーバ1の解析プログラムについて説明する。
I アンケート作成部
図3ないし図7は、アンケート作成部25によって作成されるアンケートを説明するための図である。実施形態1のアンケート作成部25は、Q1からQ7までの7つの質問によってアンケートを作成する。アンケートのうち、Q1、Q3、Q5は第1の質問、Q2、Q7は第2の質問、Q4及びQ6が第3の質問である。作成されたアンケートは、WEBサーバからPC4に送信され、PC4のディスプレイ4aに表示される。
【0037】
実施形態1のアンケートは、回答者に対し、自己イメージ法により、回答者が居住する地域や生活に対してすべきことを気付かせるために行われるアンケートに実施形態1のカウンセリング装置によって実行されるアンケートを含ませたものである。
図3(a)、(b)、(c)は、実施形態1のQ1、Q2、Q3を示すための図である。実施形態1のQ1は、「今、あなたのお住まいの地域やあなた自身の生活にどんなことを感じていますか」の質問を回答者にするものである(a)。実施形態1では、Q1において居住地域や生活といった広い範囲から回答者自身のエピソードを選択させ、回答者はQ1に答えることによって現在関心があるエピソードを選択することができる。
【0038】
なお、「このエピソードの場所を記録」のボタンを設けている。回答者がこのボタンをクリックすると、図示しない地図がディスプレイ4aに表示される。回答者が書き込まれたエピソードと関係すると主観的に思う場所を地図上で選択する。
このような実施形態1のカウンセリング装置は、いわゆる名所、旧跡ではないが、回答者が主観的に意味を感じる場所を記録してデータ化することができる。このようなデータは、地域の開発や都市計画等に使用できるものと考えられる。
【0039】
また、Q1中の「そのことは、以下の例と照らし合わせてどちらに近いと思いますか」の質問は、回答者にとってのエピソードの意味付けや重要性の参考にするための回答を得る目的で設定されたものであって、実施形態1の構成に直接関係するものではない。
Q2は、「Q1のように考えたとき、頭の中にはどんな色が浮かびましたか」という質問である。この質問には、回答者は直感的になんらかの色を回答し、回答の際に右脳が機能することが期待される。Q2は、右脳を機能させることを目的とするものであって、回答の内容は実施形態1のカウンセリング装置による解析の結果になんら影響するものではない。
【0040】
Q3は、「Q2で頭の中に浮かんだ色や気持ちを感情に直すとどれになりますか」の質問である。Q3に対し、回答者は、直感的に浮かんだ色に結びつく感情を選択肢の中から選ぶ。この際、回答者は、現在関心を持っているエピソードと結びつく感情を選択することができる。
図4は、Q4を説明するための図である。第3の質問であるQ4は、回答者の自己に対する主観的な感情に関する質問と、他者に対する主観的な感情についての質問とにあたる。
【0041】
さらに、Q4は、回答者の自己に対する主観的な感情に関する質問として、主観的な感情に対する自己の寄与に関する質問である自己要求質問を含む。また他者に対する主観的な感情についての質問が、主観的な感情に対する他者の寄与に関する質問である他者要求質問を含む。なお、自己要求とは、Q1で答えたエピソードに関する感情を、回答者自身が改善しようとする意識をいう。また、他者要求とは、このエピソードに関する感情を、被験者が他者の支援によって改善しようとする意識をいう。
【0042】
図4(a)は、Q3において回答者が喜び・嬉しさを選択した場合の質問である。(b)は、Q3において回答者が不安・恐れを選択した場合の質問であって、(c)はQ3において回答者が怒り・不満を選択した場合の質問である。Q4では、いずれの質問においても、「どんな自分かを下に書き込んでくださいの」質問が自己要求質問であり、「どんな他人かを下に書き込んでください」の質問が他者要求質問である。
また、Q4では、自己として自分個人、自分を含む家族といった例を表示し、他者として家族、隣人といった例を表示しておく。このようにすれば、回答者は自己要求と他者要求とを明確に区別して回答することを支援することができる。
【0043】
図5は、Q5を説明するための図である。Q5は、Q4で直感的に自己要求、他者要求を判断した回答者の思考を、左脳を使用する思考に戻すことを目的とする質問である。Q5(a)は、Q3において回答者が喜び・嬉しさを選択した場合の質問である。(b)は、Q3において回答者が不安・恐れを選択した場合の質問であって、(c)はQ3において回答者が怒り・不満を選択した場合の質問である。
Q5は、回答者に自己の感情を論理的に整理させ、次の質問Q6に対して直感的に回答させることができる。なお、Q5の「もし、あなたが回答している途中で「このエピソードは”喜び、嬉しさ”ではないな」と感じたら、当てはまる感情ボタンをクリックしてください」のメッセージは、回答者が回答を誤った場合に戻るために設定されたものである。
【0044】
図6及び図7はQ6を説明するための図であって、図6は、Q6のうちのQ4における自己要求に関連する質問を示している。また、図7は、Q4における他者要求に関連する質問を示している。図6、図7のいずれにおいても、(a)は、Q3において回答者が喜び・嬉しさを選択した場合の質問である。(b)は、Q3において回答者が不安・恐れを選択した場合の質問であって、(c)はQ3において回答者が怒り・不満を選択した場合の質問である。
【0045】
図6に示した質問によれば、直感的に回答者は自己要求を感じている自己を外部から見ている状態をイメージすることができる。また、図7に示した質問によれば、直感的に回答者は他者要求を感じている自己を外部から見ている状態をイメージすることができる。
Q6の「そういうあなたを自己観察すると、どんな自分に見えてきますか」の質問は、回答者がこのような自己に対する評価の高低に関する質問である自己評価質問である。実施形態1では、自己評価質問に対して自己イメージを「+」、「−」によって回答することができるよう設定されている。
【0046】
Q4で自己要求、他者要求の両方を書き込んだ場合であっても、Q6では、両者を総合して自己評価をする。自己要求、他者要求に関する感情が相反する場合、回答者は葛藤しているので、葛藤している自己の自己イメージを「+」または「−」で評価する。なお、「+」、「−」を設定するための具体的な操作については後述するものとする。
図8は、Q7を説明するための図である。Q7は、Q1で質問した内容について自己イメージ法を使い、自己のすべきことを直感的に答えさせる質問である。Q7は、実施形態1のアンケートが、回答者にすべきことを気付かせるために行われるアンケートとして機能するために最も重要な質問である。
【0047】
II 回答解析部
図9は、前記したアンケートに対する回答例を示した図である。図9に示した回答のデータは、PC4からWEBサーバ1を介してデータベースサーバ2のDB21に保存される。図9(a)は、前記したアンケートに対する回答者Bさんの4回目の入力結果を示している。(b)は、回答者Bさんの12回目の入力結果を示し、(c)は25回目の入力結果を示している。
【0048】
アンケートのうち、Q1、Q3、Q5は第1の質問であって、Q2は第2の質問、Q4、Q6、Q7は第3の質問である。実施形態1では、図示したように、Q1〜Q7の全てが、回答者が任意に文字を入力することによって回答される質問である。なお、実施形態1は、このような構成に限定されるものでなく、第1の質問の少なくとも一部、第2の質問の少なくとも一部、第3質問の少なくとも一部が、回答者が任意に文字を入力することによって回答される質問であればよい。
【0049】
このように構成することにより、実施形態1は、回答者がアンケートに回答するうちに右脳と左脳とを概ね交互に機能させ、右脳の思考によって得られる直感的な回答を適正に得ることができる。
また、実施形態1では、Q6の解答欄にボタン71を設けている。ボタン71は、例えば、クリックされるたびに「+」、「−」が切替わるよう構成される。回答者は、Q6で答えた自己のイメージが肯定的なイメージ(プラスイメージ)であった場合にはボタンを「+」にし、否定的なイメージ(マイナスイメージ)であった場合にはボタンを「−」に切替える。なお、ボタン71の「+」、「−」の区別は文書として書き込まれた内容とは無関係に回答者が決定するものであってよい。
【0050】
回答解析部26は、Q4の回答において自己要求質問に対する回答が書き込まれている場合には自己要求のカウントを+1とする。また、他者要求質問に対する回答が書き込まれている場合には他者要求のカウントを+1とし、自己要求質問及び他者要求質問に対する回答が書き込まれている場合には自己要求、他者要求ともカウントを0とする。
また、回答解析部26は、Q6において、ボタン71が「+」である場合、自己評価のカウントを+1、「−」である場合には自己評価のカウントを−1とする。さらに、一方を自己要求の度合い、他方を他者要求の度合いを示す軸と、自己評価を示す軸とを定める。そして、2つの軸上にカウント値を記録することによってカウント値によって決定される座標を順次記録する。
このような処理により、回答解析部26は、自己評価質問に対する回答の評価の高低と、自己要求質問及び前記他者要求質問に対する回答結果と、に基づいて、第3の質問であるQ4、Q6に対する回答結果の経時的な変化を得ることができる。
【0051】
III 表示データ生成部
図10は、表示データ生成部27によって作成された表示データを説明するための図であって、表示データによって表示された画像を示している。表示データでは、所定の基準点を定め、基準点を原点として回答解析部26によって記録された座標にプロットが表示される。また、次回入力があった場合、直前の入力回に表示された座標を原点として次回の入力の座標にプロットが表示される。このようにして順次表示されたプロットを全て表示すると、図10のように、プロットの経時的な移動(変化)が表示できる。
【0052】
図10に示した画像では、縦軸が自己要求と他者要求の程度を示していて、プロットが画像中の上に位置するほど自己要求が大きいことを示している。反対に、プロットが画像中の下に位置するほど他者要求が大きいことを示している。
また、図10に示した画像では、横軸が自己評価の程度を表していて、プロットが画像中の右に位置するほど自己評価が高いことを示している。反対に、プロットが画像中の左に位置するほど自己評価が低いことを示している。
【0053】
したがって、プロットが図中に示した矢印Aの方向に向かうほど、回答者の自己否定感、自己嫌悪の感情が強いことを示す。また、プロットが図中に示した矢印Bの方向に向かうほど、回答者の自己肯定感及び自立心が強いことを示す。さらに、プロットは、図中に示した矢印Cの方向に向かうほど回答者の依存心が強いことを示し、矢印Dの方向に向かうほど、回答者の依存心が強く、自己否定感が強いことを示す。
【0054】
また、図10に示した画像では、プロットが画像の上に位置するほど回答者の自己要求が強く、自分自身で問題を解決しようとするため、回答者の感情が内省化、内在化する傾向がある。一方、プロットが画像の下に位置するほど回答者の他者要求が強く、他者に依存して問題を解決しようとするため、回答者の感情が外在化する傾向がある。
図10に示した画像は、ディスプレイ28に表示してシステム管理者がカウンセリングや調査に利用することができる。また、PC4のディスプレイ4aに送って回答者が画像を見て自己の精神状態を把握することに利用することもできる。
【0055】
つまり、実施形態1のカウンセリングシステムは、「通常ならこの程度のストレスなら耐えられる」、「1年間も経てば立ち直る」といった一般的、客観的な基準ではなく、各回答者が実際に感じている主観的な感情である「思い」を判断することができる。なお、ここでいう「思い」とは、客観的に把握できる事実を指す情報ではなく、回答者が主観的に感じた情動を伴う情報であって、イメージ情報あるいは主観情報とも呼ばれる。イメージ情報には、感情の情報と感知された事柄の情報とが含まれる。このような実施形態1では、回答者の思いをより正確に判断し、様々な分野に有効な情報を得ることができる。
【0056】
例えば、実施形態1のカウンセリングシステムを、ストレスによる精神疾患等の治療に使用すれば、患者が主観的に感じるストレスや感情を正確に抽出し、指導に役立てることができる。
また、災害や事件等によって心的外傷を負った患者に対し、心的外傷の治癒の程度の指標を得ることができる。さらに、実施形態1のカウンセリングシステムを、食事や運動といった生活習慣に起因する糖尿病等の患者に使用すれば、食事制限や運動の義務付けに対する患者の主観的なストレスの程度を外部から把握して適切な指導をすることができる。
【0057】
例えば、従来のアンケートを心的外傷のカウンセリングに使用する場合、「心的外傷の原因(例えば戦争とする)についてどう思いますか」といった質問をすることになる。このような場合、多くの回答者が心的外傷の治癒の程度とは無関係に「二度とあってはならない」、「決して忘れられない」等の否定的な回答をすると考えられる。従来技術では、このような回答に基づいて、戦争は未だに経験者にとって辛い体験となっているとの結果が得られると考えられる。
【0058】
しかし、実施形態1のカウンセリング装置を使って同様のアンケートを実施した場合、回答者はQ1の回答として現在関心のあるエピソードを書き込む。そして、以降、このエピソードについてのイメージや感情について順次回答していくことになる。このような場合、例えば、回答者の自己肯定感や自立心の向上が見られれば、回答者にとって戦争は辛い体験であったことには違いないが、回答者が心的外傷から立ち直る傾向にある、あるいは充分回復しているといった結果を得ることができる。
【0059】
また、回答者の自己否定感や他者依存心が依然高い場合、回答者は未だ戦争や戦争に関連して生じた環境の変化等から立ち直れずにいるため、充分なケアを必要としているといった結果を得ることが可能である。
さらに、犯罪等によって矯正中の者にアンケートを提供してカウンセリングすれば、回答者が感じる主観的な意識の変化や刑罰に対して感じるストレスの指標を得ることができる。このような指標は、矯正を適正に行うために有効な情報であるといえる。
【0060】
また、本実施形態のカウンセリングシステムでは、プロットの位置と共に、プロットが示す解析結果の経時的な変化が重要なデータとなる。すなわち、実施形態1では、入力日順にプロット間に線分をひいてベクトルとする。ベクトルの向きの変化は、直接回答者の感情の変化を表している。このことから、ベクトルの方向が変化した時期と患者等に起こったエピソード及びその時期とを対照し、患者の自覚、無自覚とは無関係に、患者の精神状態に影響している事柄を容易に知ることができる。
【0061】
(3)カウンセリング方法及びカウンセリング制御プログラム
図11は、実施形態1のカウンセリング方法及びカウンセリング制御プログラムを説明するためのフローチャートである。図示したように、実施形態1のカウンセリング方法は、複数の質問を含むアンケートを作成し、ネットワークを介して提供すると共に、提供したアンケートに対する回答を複数の日にわたって収集して解析するカウンセリング方法である。
【0062】
より具体的には、前記したように、解析プログラム101のアンケート作成部25が、第1の質問と第2の質問と第3の質問とを混在させてアンケートのデータを作成する(S111)。通信制御部29は、ステップS111において作成されたアンケートデータをPC4に提供する(S112)。提供されたアンケートデータは、PC4のディスプレイ4aに表示される。
回答者は、PC4を使って複数の日にわたり、アンケートを実施する。実施されたアンケートの回答は通信制御部29によってWEBサーバ1に収集され(S113)、データベースサーバ2のDB21に蓄積される。この結果、アンケートに対する回答結果が複数の日にわたって記録される。
【0063】
回答解析部26は、DB21に蓄積された回答を抽出して解析する。より具体的には、回答解析部26は、回答のうちのQ4に自己要求の記入があるか否か判断する(S114)。自己要求の記入があれば(S114:Yes)、Q4の回答に他者要求があるか否か判断する(S115)。他者要求の記入があれば(S115:Yes)、自己要求カウント、他者要求カウントを共にカウントしない(S116)。
【0064】
一方、回答解析部26は、ステップ114において自己要求が記入されていないと判断した場合(S114:No)、自己要求カウントを0にする(S123)。続いて他者要求の記入があるか否か判断し(S124)、他者要求の記入がある場合には(S124:Yes)、他者要求カウントを1カウントアップする(S125)。また、他者要求の記入もない場合(S124:No)、自己要求カウント、他者要求カウントを共にカウントしない(S116)。
【0065】
また、回答解析部26は、ステップ114において自己要求が記入されていて(S114:Yes)、かつ、他者要求が記入されていないと判断した場合(S115:No)、自己要求カウントを1カウントアップする(S122)。
次に、回答解析部26は、Q6の自己評価が「+」に設定されているか否か判断する(S117)。この結果、自己評価が「+」に設定されている場合には(S117:Yes)、自己評価カウントを1カウントアップする(S118)。一方、ステップS117において自己評価が「+」に設定されていない場合(S117:No)、自己評価が「−」に設定されているから、自己評価カウントを1カウントダウンする(S121)。
【0066】
回答解析部26は、以上のようにしてカウントされたカウント値に基づいてプロットの座標を決定する(S119)。すなわち、自己評価カウントが1カウントアップされていれば、横軸の座標は、図10に示した自己イメージ(+)側に1つ移動する。また、自己要求カウントが1カウントアップされていれば、縦軸の座標は、自己要求の方向(図中では上)に1つ移動することになる。
表示データ生成部27は、回答解析部26によって決定された座標に順次プロットを記して図10に示した画像を表示するための表示データを生成し、ディスプレイ28等に表示する(S120)。画像中のプロット同士を線で接続することにより、画像は、解析結果を示すプロットの経時的な変化を示すことができる。
【0067】
なお、以上述べた実施形態1のカウンセリング方法は、コンピュータプログラムであるカウンセリング制御プログラムによって実行することができる。実施形態1のカウンセリング制御プログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フロッピー(登録商標)ディスク(FD)、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。また、本実施形態のカウンセリング方法をコンピュータに実行させるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。
また、実施形態1のカウンセリング制御プログラムは、コンピュータで読み取り可能なROM、フラッシュメモリ、メモリカード、USB接続型フラッシュメモリ等のメモリデバイスに記録されて提供されるものであってもよい。
【0068】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態2のカウンセリングシステム及びカウンセリング装置は、図1ないし図10によって説明される構成は実施形態1と同様である。このため、図示及び説明を略し、実施形態2に特有の構成についてのみ説明する。
実施形態2のカウンセリング装置は、通信制御部29がアンケートに対する回答を複数の回答者について収集し、DB21に蓄積する。
回答解析部26は、蓄積された回答を解析して座標を決定し、座標にプロットを記す。表示データ生成部27は、図10に示したように、プロットの経時的変化をベクトルで表すことによって第3の質問に対する回答結果の経時的な変化を、ベクトルを使って表示する。さらに、実施形態2では、表示データ生成部27が、複数の回答者による解答結果の経時的な変化をベクトル合成して表示する。
【0069】
回答解析部26は、DB21に蓄積されている複数の回答者の回答を順次解析し、座標を表示データ生成部27に送る。表示データ生成部27は、解析結果を受け取り、座標同士を接続してベクトルを求める。そして、複数の回答者の回答結果から得られるベクトルを合成し、1方向のベクトルを得る。図12に、一ヶ月間に入力されたデータをプロットして示した表示データを例示する。
【0070】
図13は、本発明の実施形態2のカウンセリングシステムの表示データを例示した図であって、合成されたベクトルを説明している。例えば、図12に示したプロット同士を結ぶベクトルを合成して1つのベクトルとした場合、合成されたベクトルの方向は、図示したベクトルA〜Iのいずれかに一致する。ベクトルA〜Iは、実施形態1の図10で説明したように、回答者の自己イメージの高低と自己要求及び他者要求によって決定し、回答者の自己肯定感や自立心の度合いを示すことになる。
【0071】
実施形態2では、例えば、図12に示したプロットを線でつないだベクトルを合成して1つのベクトルとする。そして、このベクトルを複数の回答者について合成し、合成の結果得られた1つの合成ベクトルをベクトルA〜Iのように表示する。
つまり、実施形態2では、例えば、1月中に入力された回答に基づく合成ベクトルがベクトルAの方向に一致する場合、合成ベクトルがベクトルAの方向のベクトルとして表示される。また、2月中に入力された回答に基づく合成ベクトルと5月中に入力された回答に基づく合成ベクトルとが共にベクトルBの方向に一致する場合、2つの合成ベクトルを合成した長さを有するベクトルが、ベクトルBとして表示される。
【0072】
以上のようにして、数ヶ月にわたって一ヶ月ごとの入力結果に基づいてベクトルを合成すれば、図12のように、様々な長さのベクトルA〜Iを得ることができる。このような実施形態2によれば、所定の組織や団体の構成員の意識傾向、各意識傾向を持つ構成員の数、各月による意識傾向の変化を把握することができる。
すなわち、ある団体の構成員に1年間アンケートを実施して各月ごとに合成ベクトルを求め、1年間に集積されたベクトルAの長さが最も長いという結果が得られた場合、この団体は、概ね、自己要求、自己探求的な傾向にある構成員が多く存在するという状態であったということができる。また、同時にベクトルFも得られた場合、この団体では、構成員の自己イメージが悪化して、自己肯定感が減少する心的状態(見捨てられ不安的な心情)にあった時期もあったという結果が得られる。さらに、合成ベクトルAが2月と5月とに得られた場合、2月と5月には、団体の構成員が自己要求、自己探求的な状態にあったということができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態1のカウンセリングシステムの概念を説明するための図である。
【図2】図1に示したWEBサーバ及びデータベースサーバを説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態1のQ1、Q2、Q3を示すための図である。
【図4】本発明の実施形態1のQ4を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態1のQ5を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態1のQ6のうちのQ4における自己要求に関連する質問を示すための図である。
【図7】本発明の実施形態1のQ6のうちのQ4における他者要求に関連する質問を示すための図である。
【図8】本発明の実施形態1のQ7を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態1のアンケートに対する回答例を示した図である。
【図10】図2に示した表示データ生成部によって作成された表示データを説明するための図である。
【図11】本発明の実施形態1のカウンセリング方法及びカウンセリング制御プログラムを説明するためのフローチャートである。
【図12】一ヶ月間の入力結果に基づいて生成された表示データを説明するための図である。
【図13】本発明の実施形態2のカウンセリングシステムの表示データを例示した図である。
【符号の説明】
【0074】
1 WEBサーバ
2 データベースサーバ
3 入力フォーム
4 PC
4a,28 ディスプレイ
25 アンケート作成部
26 回答解析部
27 表示データ生成部
29 通信制御部
71 ボタン
101 解析プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の質問を含むアンケートを作成し、ネットワークを介して提供すると共に、提供したアンケートに対する回答を複数の日にわたって収集して解析するカウンセリング装置と、
前記カウンセリング装置によって提供されたアンケートを前記ネットワークを介して受信し、前記アンケートに対する回答の入力を複数の日にわたって受付ける回答受付手段と、
を含むカウンセリングシステムであって、
前記カウンセリング装置は、
第1の質問と、当該第1の質問に対する回答に関して想起されるイメージについての質問である第2の質問と、前記第1質問群に含まれる第1の質問の回答に関する主観的な感情についての質問である第3の質問とを混在させてアンケートを作成するアンケート作成手段と、
前記アンケート作成手段によって作成されたアンケートに対する回答を収集する回答収集手段と、
前記回答収集手段によって収集されたアンケートの回答のうち、前記第3の質問に対する回答結果を複数の日にわたって記録する回答記録手段と、
前記回答記録手段によって記録された回答結果に基づいて、前記第3の質問に対する回答結果を解析する回答解析手段と、
前記回答解析手段によって得られた解析結果を表示する結果表示手段と、
を備えることを特徴とするカウンセリングシステム。
【請求項2】
複数の質問を含むアンケートを作成し、ネットワークを介して提供すると共に、提供したアンケートに対する回答を複数の日にわたって収集して解析するカウンセリング装置であって、
第1の質問と、当該第1の質問に対する回答に関して想起されるイメージについての質問である第2の質問と、前記第1質問群に含まれる第1の質問の回答に関する主観的な感情についての質問である第3の質問とを混在させてアンケートを作成するアンケート作成手段と、
前記アンケート作成手段によって作成されたアンケートに対する回答を収集する回答収集手段と、
前記回答収集手段によって収集されたアンケートの回答のうち、前記第3の質問に対する回答結果を複数の日にわたって記録する回答記録手段と、
前記回答記録手段によって記録された回答結果に基づいて、前記第3の質問に対する回答結果を解析する回答解析手段と、
前記回答解析手段によって得られた解析結果を表示する結果表示手段と、
を備えることを特徴とするカウンセリング装置。
【請求項3】
前記第3の質問が、回答者の自己に対する主観的な感情に関する質問と、他者に対する主観的な感情についての質問とを含み、
前記アンケート作成手段は、回答者の自己に対する主観的な感情に関する質問と、他者に対する主観的な感情についての質問と、を前記第1の質問、前記第2の質問に混在させてアンケートを作成することを特徴とする請求項2に記載のカウンセリング装置。
【請求項4】
回答者の自己に対する主観的な感情に関する質問が、自己に対する評価の高低に関する質問である自己評価質問と、主観的な感情に対する自己の寄与に関する質問である自己要求質問とを含み、他者に対する主観的な感情についての質問が、主観的な感情に対する他者の寄与に関する質問である他者要求質問とを含み、
前記回答解析手段は、
前記自己評価質問に対する回答の評価の高低と、前記自己要求質問及び前記他者要求質問に対する回答結果と、に基づいて、前記第3の質問に対する回答結果を解析することを特徴とする請求項2または3に記載のカウンセリング装置。
【請求項5】
前記結果表示手段は、
前記第3の質問の前記解析手段による解析結果の経時的な変化を、ベクトルを使って表示し、複数の回答者による解答結果の解析結果を、前記ベクトルを合成することによって表示することを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のカウンセリング装置。
【請求項6】
前記第1の質問の少なくとも一部、前記第2の質問の少なくとも一部、前記第3質問の少なくとも一部は、回答者が任意に文字を入力することによって回答される質問であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載のカウンセリング装置。
【請求項7】
複数の質問を含むアンケートを作成し、ネットワークを介して提供すると共に、提供したアンケートに対する回答を複数の日にわたって収集して解析するカウンセリング方法であって、
第1の質問と、当該第1の質問に対する回答に関して想起されるイメージについての質問である第2の質問と、前記第1の質問の回答に関する主観的な感情についての質問である第3の質問とを混在させてアンケートを作成するアンケート作成ステップと、
前記アンケート作成ステップにおいて作成されたアンケートに対する回答を収集する回答収集ステップと、
前記回答収集ステップにおいて収集されたアンケートの回答のうち、前記第3の質問に対する回答結果を複数の日にわたって記録する回答記録ステップと、
前記回答記録ステップにおいて記録された回答結果に基づいて、前記第3の質問に対する回答結果を解析する回答解析ステップと、
前記回答解析ステップにおいて得られた解析結果を表示する結果表示ステップと、
を含むことを特徴とするカウンセリング方法。
【請求項8】
複数の質問を含むアンケートを作成し、ネットワークを介して提供すると共に、提供したアンケートに対する回答を複数の日にわたって収集して解析するカウンセリング制御プログラムであって、
コンピュータに、
第1の質問と、当該第1の質問に対する回答に関して想起されるイメージについての質問である第2の質問と、前記第1の質問の回答に関する主観的な感情についての質問である第3の質問とを混在させてアンケートを作成するアンケート作成機能と、
前記アンケート作成機能によって作成されたアンケートに対する回答を収集する回答収集機能と、
前記回答収集機能によって収集されたアンケートの回答のうち、前記第3の質問に対する回答結果を複数の日にわたって記録する回答記録機能と、
前記回答記録機能によって記録された回答結果に基づいて、前記第3の質問に対する回答結果を解析する回答解析機能と、
前記回答解析機能において得られた解析結果を表示する結果表示機能と、
を実現させることを特徴とするカウンセリング制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−293369(P2008−293369A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139586(P2007−139586)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(591091087)株式会社建設技術研究所 (18)
【出願人】(507172336)
【Fターム(参考)】