説明

カウンタウェイトの取付け構造およびこれを備えた建設機械

【課題】車体の外部へ漏れるエンジン音等の騒音を低減して、遮音性の高い建設機械を提供することが可能なカウンタウェイトの取付け構造およびこれを備えた建設機械を提供する。
【解決手段】カウンタウェイト5の取付け構造20は、油圧ショベル1の旋回台3を構成するフレーム構造21と、その上に載置されるカウンタウェイト5と、カウンタウェイト5とフレーム構造21との間に生じる隙間Sを塞ぐカバー部31,32と、カバー部31,32におけるカウンタウェイト5と当接する側の面に貼り付けられた通気遮蔽部33,34と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、油圧ショベル等のような建設機械において、エンジン等の重量物が搭載されるメインフレーム上に取り付けられるカウンタウェイトの取付け構造およびこれを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自走可能な走行体に旋回可能な状態で取り付けられた旋回台に、オペレータが乗降する運転室を含むキャブ、キャブの前方あるいは側方に取り付けられたブーム、アーム、バケット等の作業機、旋回台のバランスを取るためのカウンタウェイト等を搭載した油圧ショベルが用いられている。
例えば、特許文献1には、上部旋回台上に載置された原動機(エンジン)、熱交換器、冷却ファン等を覆う建屋カバーにおけるカウンタウェイトと対向する後面板に、2つの熱交換器の間の空間に冷却風を供給するための追加流入口を設けた油圧ショベルが開示されている。
【特許文献1】特開2006−224812号公報(平成18年8月31日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の建設機械では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された建設機械では、断面がI型のセンタービーム上にカウンタウェイトを搭載しているが、カウンタウェイトの重量が大きいことから、搭載時における作業性を考慮して、カウンタウェイトとカウンタウェイトが載せられるセンタービームとの接合部分にはクリアランスが設けられている。このため、カウンタウェイトをセンタービームに載せた状態では、このクリアランスはカウンタウェイトとセンタービームとの間に生じる隙間S(図10参照)となって現れる。一方、センタービームには、一般的にエンジン等の重量物が載置された状態で取り付けられている。このため、上記隙間の近傍にエンジンやエンジンに取付けられたファン等の騒音源となるものが取り付けられている場合には、この隙間からエンジン音等の騒音が漏れてしまうおそれがある。
【0004】
本発明の課題は、車体の外部へ漏れるエンジン音等の騒音を低減して、遮音性の高い建設機械を提供することが可能なカウンタウェイトの取付け構造およびこれを備えた建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係るカウンタウェイトの取付け構造は、カウンタウェイトと、フレーム部材と、支持部と、シール材と、を備えている。カウンタウェイトは、建設機械の上部旋回台上に搭載される。フレーム部材は、カウンタウェイトが搭載される上部旋回台を構成する。支持部は、カウンタウェイトがフレーム部材に搭載された際に、カウンタウェイトとフレーム部材との間に生じる隙間部分を塞ぐようにフレーム部材に取り付けられている。シール材は、支持部におけるカウンタウェイトに対して当接する側の面に取り付けられており、弾性を有する。
【0006】
ここでは、カウンタウェイトとフレーム部材との間に形成された隙間を覆うように、支持部を設けている。そして、この支持部におけるカウンタウェイトとの当接面には、弾性を有するシール材が取り付けられている。
なお、上記フレーム部材には、旋回台上においてエンジンやカウンタウェイト等の重量物を支持する、例えば、断面形状がI型やH型の鋼材等が含まれる。また、シール部材には、表面に弾性を有する、例えば、ウレタン等の発泡樹脂等が含まれる。さらに、上記建設機械には、上部旋回体上に作業機やカウンタウェイトを搭載した、例えば、油圧ショベルや油圧クレーン等が含まれる。
【0007】
通常、旋回台を構成するフレーム部材上にカウンタウェイトを取り付ける際には、カウンタウェイトの重量が大きいために作業性を考慮して、カウンタウェイトとフレーム部材との接合部分にクリアランスを設けている。このようなクリアランスは、カウンタウェイトをフレーム部材に取り付けた状態では、隙間となって現れ、この隙間からエンジン音やファンの回転音等の騒音が車体の外部へ漏れる要因となる場合がある。
【0008】
本発明のカウンタウェイトの取付け構造では、取付け時の作業性を考慮して設けられた接合部分のクリアランスによって、カウンタウェイトとフレーム部材との間に生じる隙間を塞ぐように、カウンタウェイト側の当接面にシール材を設けた支持部をフレーム部材に設けている。
これにより、弾性を有するシール材を支持部によって支持しながら、カウンタウェイトに対して支持部のシール材側を当接させて、上記隙間を塞ぐことができる。この結果、車体内におけるカウンタウェイトの近傍に配置されたエンジン等から発せられる騒音を効果的に低減することで、遮音性に優れた建設機械を得ることができる。
【0009】
第2の発明に係るカウンタウェイトの取付け構造は、第1の発明に係るカウンタウェイトの取付け構造であって、フレーム部材上におけるカウンタウェイトに近接する位置には、エンジンが搭載されている。
ここでは、騒音を発生させるエンジンを、旋回台を構成するフレーム部材における上記カウンタウェイトに近接する位置に配置している。
このため、従来の構成では、カウンタウェイトに対して近接配置されたエンジンの騒音やファンの回転音等が、カウンタウェイトと支持部材との間から外部へ漏れてしまっていた。
本発明では、上述したように、カウンタウェイトとフレーム部材との間に生じる隙間を、シール材を表面に貼り付けた支持部によって覆われている。
【0010】
これにより、カウンタウェイトに対してエンジンが近接配置されている場合でも、外部へエンジンの騒音やファンの回転音等が漏れることを防止して、遮音性の高い建設機械を提供することができる。
【0011】
第3の発明に係るカウンタウェイトの取付け構造は、第1または第2の発明に係るカウンタウェイトの取付け構造であって、支持部は、分割可能な状態でフレーム部材に対して取り付けられている。
【0012】
ここでは、カウンタウェイトとフレーム部材との間に生じた隙間を、分割可能な支持部によって覆っている。
これにより、フレーム部材として、例えば、断面がI型のフレームを使用する場合でも、フレーム部材の断面形状に合わせて支持部を分割構造とすることで、フレーム部材に対して隙間なく支持部を取り付けることができる。
【0013】
第4の発明に係るカウンタウェイトの取付け構造は、第3の発明に係るカウンタウェイトの取付け構造であって、シール材は、分割可能な状態で支持部に対して取り付けられている。
ここでは、フレーム材に取り付けられる支持部が分割可能な場合において、支持部の表面に取り付けられたシール材も支持部の分割形状に合わせて分割可能となっている。
これにより、例えば、断面がI型のフレームを使用する場合でも、フレーム部材の断面形状に合わせて支持部およびシール材を分割構造とすることで、フレーム部材に対して隙間なく支持部およびシール材を容易に取り付けることができる。
【0014】
第5の発明に係るカウンタウェイトの取付け構造は、第1から第4の発明のいずれか1つに係るカウンタウェイトの取付け構造であって、支持部およびシール材は、フレーム部材の断面形状に合わせた形状を有している。
ここでは、支持部およびシール材を、フレーム部材の断面形状に合わせた形状になるように形成している。
これにより、フレーム部材に対して取り付けられる支持部およびシール材によって、カウンタウェイトとフレーム部材との間に生じた隙間を効果的に塞ぐことができる。
【0015】
第6の発明に係るカウンタウェイトの取付け構造は、第1から第5の発明のいずれか1つに係るカウンタウェイトの取付け構造であって、フレーム部材は、左右一対のフレームを含むように構成されている。そして、一対のフレームに対してそれぞれ取り付けられた一対の支持部およびシール材の間における、カウンタウェイトとフレーム部材との間に生じた隙間を覆うように設けられた追加シール材をさらに備えている。
【0016】
ここでは、例えば、フレーム部材に含まれる2本のフレームが略平行に配置されている場合には、これに取り付けられる支持部およびシール材の間において、カウンタウェイトとフレーム部材との間に隙間が生じる場合がある。
このため、この隙間を追加シール材によって塞ぐことにより、カウンタウェイトとフレーム部材との間から漏れるエンジン等の騒音を、より効果的に遮蔽することができる。
【0017】
第7の発明に係るカウンタウェイトの取付け構造は、第1から第6の発明のいずれか1つに係るカウンタウェイトの取付け構造であって、支持部は、鋼材によって構成されている。
ここでは、カウンタウェイトとフレーム部材との間に生じた隙間を塞ぐために、フレーム部材に対して取り付けられた支持部を、鋼材によって形成している。
【0018】
これにより、カウンタウェイトをフレーム部材に取り付ける際に、カウンタウェイトが支持部に衝突した場合でも、支持部の変形を最小限に留めつつ、シール材が倒れないように支持することができる。さらに、支持部とフレーム部材とをともに鋼材によって形成することで、溶接によって支持部をフレーム部材に対して固定することができる。
【0019】
第8の発明に係るカウンタウェイトの取付け構造は、第1から第7の発明のいずれか1つに係るカウンタウェイトの取付け構造であって、シール材は、ウレタン系樹脂によって構成されている。
ここでは、支持部におけるカウンタウェイト側の当接面に貼り付けられたシール材として、ウレタン系の樹脂を用いている。
これにより、例えば、発泡倍率等を調整することで、所望の弾性力を保持したシール材を容易に形成することができる。
【0020】
第9の発明に係る建設機械は、第1から第8の発明のいずれか1つに係るカウンタウェイトの取付け構造を備えている。
これにより、車体内におけるカウンタウェイトの近傍に配置されたエンジン等から発せられる騒音を効果的に低減することで、遮音性に優れた建設機械を得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るカウンタウェイトの取付け構造によれば、車体内におけるカウンタウェイトの近傍に配置されたエンジン等から発せられる騒音を効果的に低減することで、遮音性に優れた建設機械を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係るカウンタウェイトの取付け構造20を採用した油圧ショベル(建設機械)1について、図1〜図10を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下の説明で使用する「前後」、「左右」方向については、油圧ショベル1のキャブ10内のシートに着座したオペレータから見た方向を意味するものとする。
[油圧ショベル1全体の構成]
本実施形態に係る油圧ショベル1は、図1に示すように、下部走行体2と、旋回台3と、作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン6と、機器室9と、キャブ10と、を備えている。
【0023】
下部走行体2は、進行方向左右両端部分に巻き掛けられた履帯Pを回転させることで、油圧ショベル1を前進、後進させるとともに、上面側に旋回台3を旋回可能な状態で搭載している。
旋回台3は、下部走行体2上において、任意の方向に旋回可能であって、上面に作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン6と、キャブ10とを搭載している。
【0024】
作業機4は、ブーム11と、ブーム11の先端に取り付けられたアーム12と、アーム12の先端に取り付けられたバケット13とを含むように構成されている。そして、作業機4は、図示しない油圧回路に含まれる各油圧シリンダ11a,12a,13a等によって、ブーム11やアーム12、バケット13等を上下に移動させながら、土木工事の現場において土砂や砂礫等の掘削作業を行う。
【0025】
カウンタウェイト5は、例えば、鋼板を組み立てて形成した箱の中に屑鉄やコンクリート等を入れて固めたものであって、採掘時等において車体のバランスをとるために旋回台3の後部におけるフレーム構造(フレーム部材)21(メインフレーム21a,21b)(図2〜図4参照)上に設けられている。なお、このカウンタウェイト5の取付け構造20については、後段にて詳述する。
【0026】
エンジン6は、下部走行体2や作業機4を駆動するための駆動源であって、後述するメインフレーム21a,21b上におけるカウンタウェイト5に隣接する位置に配置されている。
機器室9は、作業機4の後方に配置されており、図示しない燃料タンク、作動油タンクおよび操作弁等を収容する。
【0027】
キャブ10は、油圧ショベル1のオペレータが乗降する運転室であって、作業機4の先端部を見通せるように、旋回台3上における作業機4の側方となる左側前部に配置されている。
[カウンタウェイト5の取付け構造20]
本実施形態に係る油圧ショベル1では、旋回台3の後方に配置されたカウンタウェイト5の取付け方として、図2〜図4に示すように、取付け構造20を採用している。
【0028】
すなわち、取付け構造20は、カウンタウェイト5と、フレーム構造21(メインフレーム21a,21b)と、カバー部(支持部)31,32と、通気遮蔽部33,34と、追加通気遮蔽シート35と、を備えている。
カウンタウェイト5は、上述したように、図2に示すように、旋回台3を構成するフレーム構造21に含まれるメインフレーム21a,21b上に、エンジン6とともに載置される。また、カウンタウェイト5におけるエンジン6側の面には、吸音材5a〜5cが貼り付けられている。
【0029】
フレーム構造21は、主として、互いに略平行に配置された左右一対の2本のメインフレーム21a,21bを含むように構成されており、旋回台3の中央部付近において長手方向が前後方向に沿って配置されている。そして、メインフレーム21a,21bには、カウンタウェイト5やエンジン6等のような重量物が載置される。なお、メインフレーム21a,21bは、断面が略I型の形状を有する鋼材である。
【0030】
カバー部31,32は、図3および図4に示すように、取付け時の作業性を考慮して設定されたクリアランスに起因して、カウンタウェイト5がメインフレーム21a,21b上に載置された際にカウンタウェイト5とメインフレーム21a,21bとの間に生じる隙間S部分(図10参照)を、略鉛直方向に延びる面によって覆うためにそれぞれ設けられた鋼板である。そして、カバー部31,32は、断面が略I型のメインフレーム21a,21bの形状に合わせた形状を有しており、カウンタウェイト5が載置される際には予めメインフレーム21a,21bに対して固定されている。なお、このカバー部31,32の構成については、後段にて詳述する。
【0031】
通気遮蔽部33,34は、図3および図4に示すように、ウレタン系の樹脂によって形成された発泡樹脂シートであって、カバー部31,32におけるカウンタウェイト5に対して当接する側の面に貼り付けられている。このため、カウンタウェイト5がメインフレーム21a,21b上に取り付けられる際には、カバー部31,32とカウンタウェイト5の面との間に、この通気遮蔽部33,34が挟み込まれた状態となる。なお、この通気遮蔽部33,34についても、後段にて詳述する。
【0032】
追加通気遮蔽シート35は、図4に示すように、左右一対の通気遮蔽部33,34の間における、略左右方向に延びるカウンタウェイト5とフレーム構造21との間の隙間Sを覆うために設けられている。なお、追加通気遮蔽シート35は、通気遮蔽部33,34と同様に、ウレタン系樹脂の発泡樹脂シートによって形成されている。
(カバー部31,32および通気遮蔽部33,34)
カバー部31,32は、図3および図4に示すように、重量が大きいカウンタウェイト5をメインフレーム21a,21b上に取り付ける際の作業性を考慮して両者の取付部分に設けられたクリアランスによって、カウンタウェイト5とメインフレーム21a,21bとの間に生じた隙間Sを覆うために、それぞれ分割可能な複数のカバー部材(支持部)31a,31b,32a,32bによって構成されている。
【0033】
カバー部材31aは、図3に示すように、その上部がカバー部材31bと略左右対称な形状を有しており、カバー部材31bとともにメインフレーム21aの断面I型の上部T型部分に対して取り付けられる。そして、カバー部材31aは、図5(a)および図5(b)に示すように、下端部付近にボルト37が貫通するボルト穴37aを有しており、2つのボルト37によって、フレーム構造21に対して固定される。さらに、カバー部材31aは、カウンタウェイト5との当接面側に、通気遮蔽部33のうちカバー部材31aの形状に合わせて分割された一方の通気遮蔽シート33aが貼り付けられている。これにより、発泡樹脂シートによって形成された弾性を有する通気遮蔽シート33aを、鋼板であるカバー部材31aによって支持することができる。
【0034】
カバー部材31bは、上述のように、上記カバー部材31aとともに、メインフレーム21aに対して取り付けられる。そして、カバー部材31bは、図6(a)および図6(b)に示すように、カバー部材31aと同様に、下端部付近にボルト37が貫通するボルト穴37aを有しており、2つのボルト37によって、フレーム構造21に対して固定される。さらに、カバー部材31bは、カウンタウェイト5との当接面側に、通気遮蔽部33のうちカバー部材31bの形状に合わせて分割された他方の通気遮蔽シート33bが貼り付けられている。これにより、発泡樹脂シートによって形成された弾性を有する通気遮蔽シート33bを、鋼板であるカバー部材31bによって支持することができる。
【0035】
一方、カバー部材32aは、図3に示すように、その上部がカバー部材32bと略左右対称な形状を有しており、カバー部材32bとともにメインフレーム21bの断面I型の上部T型部分に対して取り付けられる。そして、カバー部材32aは、図7(a)および図7(b)に示すように、カウンタウェイト5との当接面側に、通気遮蔽部34のうちカバー部材32aの形状に合わせて分割された一方の通気遮蔽シート34aが貼り付けられている。これにより、発泡樹脂シートによって形成された弾性を有する通気遮蔽シート34aを、鋼板であるカバー部材32aによって支持することができる。なお、カバー部材32aについても、下端部付近にボルト37が貫通するボルト穴37aを有しており、2つのボルト37によってフレーム構造21に対して固定される点については、他のカバー部材31a,31bと同様である。
【0036】
カバー部材32bについても同様に、図8(a)および図8(b)に示すように、カウンタウェイト5との当接面側に、通気遮蔽部34のうちカバー部材32bの形状に合わせて分割された一方の通気遮蔽シート34bが貼り付けられている。これにより、発泡樹脂シートによって形成された弾性を有する通気遮蔽シート34bを、鋼板であるカバー部材32aによって支持することができる。なお、カバー部材32aについても、下端部付近にボルト37が貫通するボルト穴37aを有しており、2つのボルト37によってフレーム構造21に対して固定される点については、他のカバー部材31a,31b,32aと同様である。
【0037】
各通気遮蔽シート33a,33b,34a,34bは、上述のように、それぞれのカバー部材31a,31b,32a,32bにおけるカウンタウェイト5との当接面側に設けられている。そして、通気遮蔽シート33a,33b,34a,34bは、カウンタウェイト5をメインフレーム21a,21bに対して搭載する前に、予め左右のメインフレーム21a,21bに対してボルト37で固定されるカバー部材31a,31b,32a,32bとともに、メインフレーム21a,21bに対して取り付けられる。
【0038】
本実施形態のカウンタウェイト5の取付け構造20では、以上のように、カウンタウェイト5をメインフレーム21a,21b上に取り付けた際に両者の間に生じる隙間Sを、メインフレーム21a,21bにそれぞれ立設されたカバー部31,32および通気遮蔽部33,34によって覆っている。
これにより、上記隙間Sからエンジン6の騒音やエンジン6に取り付けられた図示しないファンの回転音等の騒音が、油圧ショベル1の車体の外部へと漏れてしまうことを防止して、遮音性の高い油圧ショベル1を提供することができる。
【0039】
具体的には、本実施形態に係るカウンタウェイト5の取付け構造20による遮音性能の向上を示す実験を行った結果、図9に示すように、特定の周波数における騒音レベルが91.9dB(A)(従来)から82.9dB(A)(改善後)へと低下したことが分かった。これにより、本実施形態のカウンタウェイト5の取付け構造20により、約9dB(A)程度遮音性能を向上させることができた。
【0040】
[本カウンタウェイト5の取付け構造20の特徴]
(1)
本実施形態のカウンタウェイト5の取付け構造20は、図2〜図4に示すように、油圧ショベル1の旋回台3を構成するフレーム構造21と、その上に載置されるカウンタウェイト5と、カウンタウェイト5とフレーム構造21との間に生じる隙間S(図10参照)を塞ぐカバー部31,32(カバー部材31a,31b,32a,32b)と、カバー部31,32におけるカウンタウェイト5と当接する側の面に貼り付けられた通気遮蔽部33,34(通気遮蔽シート33a,33b,34a,34b)と、を備えている。
【0041】
これにより、通常、重量が大きいカウンタウェイト5をフレーム構造21上に取り付ける際における作業性を考慮して設定された両者間のクリアランスに起因して生じたカウンタウェイト5とフレーム構造21との間の隙間Sから車体外部へと漏れる騒音を、効果的に低減することができる。この結果、遮音性に優れた油圧ショベル1を提供することができる。
【0042】
(2)
本実施形態のカウンタウェイト5の取付け構造20では、図2に示すように、フレーム構造21のメインフレーム21a,21b上におけるカウンタウェイト5が載置される近傍には、エンジン6が搭載されている。
これにより、従来の構成では騒音源となるエンジン6やエンジン6に取り付けられたファン等のすぐ近傍に車体外部へとつながる開口(隙間S)が設けられることになり遮音性が低下してしまうおそれがあったが、本実施形態では、この隙間Sをカバー部31,32および通気遮蔽部33,34によって覆っているため、遮音性の低下を回避することができる。
【0043】
(3)
本実施形態のカウンタウェイト5の取付け構造20では、図3に示すように、カバー部31がカバー部材31a,31bに、カバー部32がカバー部材32a,32bに、それぞれ分割可能となっている。
これにより、例えば、カバー部31,32を取り付けるメインフレーム21a,21bが異形断面を有している場合でも、この異形断面の形状に合わせて分割可能とすることで、カバー部31,32のメインフレーム21a,21bに対する取付け性を向上させることができる。この結果、メインフレーム21a,21bに対して、隙間なく容易にカバー部31,32を取り付けることができる。
【0044】
(4)
本実施形態のカウンタウェイト5の取付け構造20では、図3および図5(a)〜図8(b)に示すように、各カバー部材31a,31b,32a,32bにおけるカウンタウェイト5との当接面側に取り付けられた通気遮蔽部33,34が、それぞれ通気遮蔽シート33a,33bおよび通気遮蔽シート34a,34bに分割可能となっている。
【0045】
これにより、例えば、異形断面を有するメインフレーム21a,21bの断面形状に合わせてカバー部材31a,31b,32a,32bを分割した場合でも、それぞれの面に貼り付けられた通気遮蔽シート33a,33b,34a,34bについても、それぞれ分割することができる。この結果、メインフレーム21a,21bに対して、隙間なく容易にカバー部31,32とともに通気遮蔽部33,34も取り付けることができる。
【0046】
(5)
本実施形態のカウンタウェイト5の取付け構造20では、図3および図5(a)〜図8(b)に示すように、カバー部31,32が、取付け先であるメインフレーム21a,21bの略I型の断面形状に合わせた形状を有している。
これにより、メインフレーム21a,21bとカウンタウェイト5との間に生じた隙間Sを効率よく覆って、遮音性能を向上させることができる。
【0047】
(6)
本実施形態のカウンタウェイト5の取付け構造20では、図2〜図4に示すように、フレーム構造21として左右一対のメインフレーム21a,21bを有しており、この2本のメインフレーム21a,21bの間における、カウンタウェイト5とフレーム構造21との間に生じた隙間を覆う追加通気遮蔽シート35をさらに備えている。
【0048】
これにより、カウンタウェイト5とメインフレーム21a,21bとの接合部分だけでなく、フレーム構造21全体とカウンタウェイト5との間の隙間も追加通気遮蔽シート35によって覆うことで、油圧ショベル1の遮音性をより効果的に低減することができる。
(7)
本実施形態のカウンタウェイト5の取付け構造20では、図5(a)〜図8(b)に示すように、カバー部材31a,31b,32a,32bが、それぞれ鋼材によって構成されている。
【0049】
これにより、弾性を有する通気遮蔽シート33a,33b,34a,34bにこしが無い場合でも、これらを支持しながら略鉛直方向に沿ってメインフレーム21a,21b上にカバー部材31a,31b,32a,32bを立設させることができる。
(8)
本実施形態のカウンタウェイト5の取付け構造20では、図5(a)〜図8(b)に示すように、通気遮蔽シート33a,33b,34a,34b,35は、ウレタン系の発泡樹脂シートによって構成されている。
【0050】
これにより、弾性を有する通気遮蔽シート33a,33b,34a,34b,35を、カバー部31,32とともにカウンタウェイト5とフレーム構造21との間に挟み込むことで、カウンタウェイト5とフレーム構造21との間に生じた隙間Sを効果的に塞いで遮音性能を向上させることができる。
また、通気遮蔽シート33a,33b,34a,34bの弾性によって、カウンタウェイト5をメインフレーム21a,21b上に載置した際の衝撃を低減して、カウンタウェイト5取付け時における作業性を向上させることができる。
【0051】
(9)
本実施形態のカウンタウェイト5の取付け構造20は、図1に示すように、油圧ショベル1に対して搭載されている。
これにより、油圧ショベル1に搭載された旋回台3の後方部分に取り付けられるカウンタウェイト5の取付けを容易に行うとともに、遮音性能が高い建設機械を提供することができる。
【0052】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、支持部に相当するカバー部31,32と通気遮蔽部33,34とを、その上部が略左右対称になるようにメインフレーム21a,21b上において分割した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
例えば、図11に示すように、カバー部(支持部)131,132および通気遮蔽部(シール材)133,134の上部を左右非対称な分割構造とし、ボルト137によって互いに接合するようにしてもよい。
(B)
上記実施形態では、カバー部31,32および通気遮蔽部33,34を、複数のカバー部材31a,31bおよびカバー部材32a,32bに分割可能となるように構成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
例えば、カバー部および通気遮蔽部を左右それぞれ1つの部材として構成してもよい。
ただし、カバー部等が取付けられるメインフレームの断面形状が、略I型等の異形断面を有する場合には、カウンタウェイトとメインフレームとの間に生じる隙間を覆うためには、上記実施形態のように、カバー部および通気遮蔽部をそれぞれ分割構造とすることがより好ましい。
【0055】
(C)
上記実施形態では、遮音材としての通気遮蔽シート33a,33b,34a,34bを、カバー部材31a,31b,32a,32bにおけるカウンタウェイト5との当接面側に取り付けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、カバー部材におけるカウンタウェイトとは反対側の面、あるいはカバー部材における両面に、通気遮蔽シートを設けた構成であってもよい。
【0056】
ただし、弾性を有する通気遮蔽シートをカウンタウェイトとメインフレームとの間の隙間を埋めるシール材として機能させるという点では、上記実施形態のように、少なくともカウンタウェイトとの当接面側には遮音材としての通気遮蔽シートが設けられていることがより好ましい。
(D)
上記実施形態では、メインフレーム21a,21bに対して、カバー部31,32をボルト37によって固定した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
例えば、メインフレームに対して、カバー部31,32を溶接によって取り付けてもよい。
(E)
上記実施形態では、メインフレーム21a,21b上におけるカウンタウェイト5の近傍に、騒音源となるエンジン6が配置されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
例えば、エンジンは必ずしもカウンタウェイトに近接して配置されている必要はなく、メインフレーム上におけるより前方寄りに配置されていてもよい。
ただし、上記実施形態のように、騒音源となるエンジンがカウンタウェイトに対して近接配置されている場合には、本発明の適用によって、上述したカウンタウェイトとメインフレームとの間の隙間から外部へ漏れる騒音を特に効果的に低減できる。
【0059】
(F)
上記実施形態では、カバー部31,32が取り付けられるメインフレーム21a,21bの断面形状が略I型である例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、メインフレームの断面形状としては、略四角形や略H型であってもよい。
【0060】
(G)
上記実施形態では、本発明に係るカウンタウェイト5の取付け構造20を、油圧ショベル1に対して適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、油圧ショベル以外にも、油圧クレーンやトラクタ、ホイルローダ等の他の建設機械に対しても同様に本発明の適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のカウンタウェイトの取付け構造は、車体の外部へ漏れるエンジン音等の騒音を低減して、遮音性の高い建設機械を提供することができるという効果を奏することから、カウンタウェイト等の重量物を搭載した各種建設機械に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係るカウンタウェイトの取付け構造を採用した油圧ショベルの構成を示す斜視図。
【図2】図1の油圧ショベルに搭載されたカウンタウェイトの取付け部分の構成を示す分解図。
【図3】図2のカウンタウェイトの取付け部分の構造を、車体中心側から見た拡大図。
【図4】図3のカウンタウェイトの取付け部分の構造を、カウンタウェイト側から見た拡大図。
【図5】(a),(b)は、図3および図4のカウンタウェイトの取付け構造を構成するカバー部材と通気遮蔽シートを示す正面図および側面図。
【図6】(a),(b)は、図3および図4のカウンタウェイトの取付け構造を構成するカバー部材と通気遮蔽シートを示す正面図および側面図。
【図7】(a),(b)は、図3および図4のカウンタウェイトの取付け構造を構成するカバー部材と通気遮蔽シートを示す正面図および側面図。
【図8】(a),(b)は、図3および図4のカウンタウェイトの取付け構造を構成するカバー部材と通気遮蔽シートを示す正面図および側面図。
【図9】本実施形態に係るカウンタウェイトの取付け構造による遮音性能の向上を示す実験結果を示すグラフ。
【図10】図5(a)等に示すカバー部材によって塞がれるカウンタウェイトとフレーム構造との間に生じる隙間を示す斜視図。
【図11】本発明の他の実施形態に係るカウンタウェイトの取付け構造を示す斜視図。
【符号の説明】
【0063】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 旋回台
4 作業機
5 カウンタウェイト
5a〜5c 吸音材
6 エンジン
9 機器室
10 キャブ
11 ブーム
11a ブームシリンダ(油圧シリンダ)
12 アーム
12a アームシリンダ(油圧シリンダ)
13 バケット
13a バケットシリンダ(油圧シリンダ)
20 取付け構造(カウンタウェイトの取付け構造)
21 フレーム構造(フレーム部材)
21a,21b メインフレーム
31 カバー部(支持部)
31a,31b カバー部材(支持部)
32 カバー部(支持部)
32a,32b カバー部材(支持部)
33 通気遮蔽部(シール材)
33a,33b 通気遮蔽シート(シール材)
34 通気遮蔽部
34a,34b 通気遮蔽シート(シール材)
35 追加通気遮蔽シート(追加シール材)
37 ボルト
37a ボルト穴
131,132 カバー部(支持部)
133,134 通気遮音部(シール材)
137 ボルト
P 履帯
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の上部旋回台上に搭載されるカウンタウェイトと、
前記カウンタウェイトが搭載される前記上部旋回台を構成するフレーム部材と、
前記カウンタウェイトが前記フレーム部材に搭載された際に、前記カウンタウェイトと前記フレーム部材との間に生じる隙間部分を塞ぐように前記フレーム部材に取り付けられた支持部と、
前記支持部における前記カウンタウェイトに対して当接する側の面に取り付けられた弾性を有するシール材と、
を備えているカウンタウェイトの取付け構造。
【請求項2】
前記フレーム部材上における前記カウンタウェイトに近接する位置には、エンジンが搭載されている、
請求項1に記載のカウンタウェイトの取付け構造。
【請求項3】
前記支持部は、分割可能な状態で前記フレーム部材に対して取り付けられている、
請求項1または2に記載のカウンタウェイトの取付け構造。
【請求項4】
前記シール材は、分割可能な状態で前記支持部に対して取り付けられている、
請求項3に記載のカウンタウェイトの取付け構造。
【請求項5】
前記支持部および前記シール材は、前記フレーム部材の断面形状に合わせた形状を有している、
請求項1から4のいずれか1項に記載のカウンタウェイトの取付け構造。
【請求項6】
前記フレーム部材は、左右一対のフレームを含むように構成されており、
前記一対のフレームに対してそれぞれ取り付けられた一対の前記支持部および前記シール材の間における、前記カウンタウェイトと前記フレーム部材との間に生じた隙間を覆うように設けられた追加シール材をさらに備えている、
請求項1から5のいずれか1項に記載のカウンタウェイトの取付け構造。
【請求項7】
前記支持部は、鋼材によって構成されている、
請求項1から6のいずれか1項に記載のカウンタウェイトの取付け構造。
【請求項8】
前記シール材は、ウレタン系樹脂によって構成されている、
請求項1から7のいずれか1項に記載のカウンタウェイトの取付け構造。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のカウンタウェイトの取付け構造を搭載した建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−127889(P2008−127889A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315339(P2006−315339)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】