説明

カキ肉その他のエキスを含み安静時代謝率向上機能を有する健康補助食品

【課題】カキ肉エキスを主たる原料とし他の原材料を組み合わせることによって、安静時代謝または基礎代謝を向上させるのに効果的であって、かつ比較的安価な健康補助食品を提供する。
【解決手段】海産物である牡蠣(かき)から抽出したカキ肉エキス20〜30重量部と、シトラスペクチン15〜25重量部と、乳酵母エキス15〜25重量部と、シイタケエキス3〜7重量部と、オニオンエキス3〜7重量部と、グアバ葉エキス3〜7重量部とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー代謝率、特には安静時のエネルギー代謝率を向上させ、生活習慣病を予防する機能を有する健康補助食品(「サプリメント」、栄養補助食品)に関する。特には、カキ(牡蠣)肉エキスその他の複数の機能性成分が配合された健康補助食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣病の予防や美容の観点から、エネルギー代謝率、特には安静時のエネルギー代謝率または基礎代謝率を向上させる機能を有する健康補助食品についての需要が高くなっており、そのための研究開発も盛んに行われるようになっている。なお、安静時代謝率(resting metabolic rate:RMR)とは、食後数時間経過し、快適な室温において仰臥安静あるいは座位安静状態で測定した代謝量のことを言う。これに対し、基礎代謝量(basal metabolism)は、食後12時間以上経過した早朝空腹時に、仰臥安静・覚醒状態で適正室温において測定した酸素消費量と二酸化炭素産生量から算出したエネルギー消費量を言う。
【0003】
安静時のエネルギー代謝率等を向上させる機能を有する食品成分としては、トウガラシに含まれるサイトカプシンやニンニクエキス等の他、成長ホルモン分泌促進作用を有するL-オルニチン、アルギニン、カルニチン等のある種のアミノ酸が注目されている(例えば特許文献1)。また、最近では、発芽玄米等に含まれるγ−アミノ酪酸(GABA)やオクタコサノールについても注目されている。
【0004】
なお、魚介類及びイカやタコに多量に含まれるタウリン(2-アミノエタンスルホン酸)は、肝機能の強化や、糖尿病等の予防及び改善に効果があることが知られている。
【0005】
一方、天然の海の食材である牡蠣(かき)は、従前より各種の栄養素をバランス良く含むことが知られており、牡蠣(かき)から抽出したカキ肉エキスは、健康補助食品として市販されている(例えば特許文献2参照)。カキ肉エキスには、核酸系物質、多糖類の一種であるグリコーゲン、亜鉛結合性タウリン、及び各種ミネラル成分が含まれている。
【0006】
カキ肉エキス及びその各成分の機能について近年研究が行われており、肝機能の向上、肝機能障害や肝炎などの予防・改善、動脈硬化を予防・改善、血流改善、解毒、味覚障害の予防・改善、精力増強、血中コレステロールの上昇の抑制、インシュリン分泌を正常化することによる糖尿病の改善や合併症の予防などに寄与することが知らている。このような作用が、具体的にどの成分の寄与によるかについては、未だ解明されていない部分も少なくない。
【0007】
生活習慣病の予防、特には、肥満に起因する疾病を予防するためには、安静時のエネルギー代謝率を向上させることができれば望ましい。しかし、下記の非特許文献1(「カキ肉エキスの基礎代謝に及ぼす影響」)によると、カキ肉エキスが基礎代謝率を低下させることが認められており、エネルギー消費を節減し運動選手の持久力の向上に効果的であることが示唆されている。
【特許文献1】特開平11-246478
【特許文献2】特開2003-304852
【非特許文献1】「カキ肉エキスの基礎代謝に及ぼす影響」有江醇子、長尾愛彦、澤田芳男(熊本大学医学部)、微量栄養素研究第1集、1:37,1984. (日本クリニック株式会社のウェブサイトhttp://www.japanclinic.co.jp/research/research_01.htmlからダウンロード可能)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カキ肉エキスは、それ自体が優れた健康補助食品であり、健康に対する関心の増大から、愛好者が徐々に増大している。しかし、カキ肉エキスは、海産物である牡蠣から抽出することから、ある程度コスト高となるのは避けられない。また、カキ肉エキスは、それ自身で多種多様の栄養素・機能性成分を含有していることから、カキ肉エキスを主たる原料とし、他の栄養素ないし機能性成分を副原料として組み合わせることは、あまり試みられていなかった。主として、他の、より安価な健康補助食品に、ほんの一部だけカキ肉エキスを配合することが行われていた。
【0009】
一方、生活習慣病等の予防や改善を行うべく、安静時代謝または基礎代謝率を効果的に向上させるとともに、他の栄養素などの補給をより効果的に行うことのできる健康補助食品が待ち望まれている。単にエネルギー代謝を増大させるだけでなく、各種の健康増進に効果を有することが望まれているのである。
【0010】
本発明は、カキ肉エキスを主たる原料として、他の原材料を組み合わせることによって、一種の相乗作用を得ることができる健康補助食品を得ようとするものである。特には、安静時代謝または基礎代謝を向上させるのに効果的であって、かつ比較的安価な健康補助食品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の健康補助食品は、海産物である牡蠣から抽出したカキ肉エキス20〜30重量部と、シトラスペクチン15〜25重量部と、乳酵母エキス15〜25重量部と、シイタケエキス3〜7重量部と、オニオンエキス3〜7重量部と、グアバ葉エキス3〜7重量部とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
各種機能を維持しつつカキ肉エキスの使用量を大幅に低減することができるとともに、安静時代謝率を効果的に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の健康補助食品は、好ましくは、カキ肉エキス22〜28重量部と、シトラスペクチン17〜23重量部と、乳酵母エキス17〜23重量部と、シイタケエキス4〜6重量部と、オニオンエキス4〜6重量部と、グアバ葉エキス4〜6重量部とからなる。なお、これら重量部は、水分量を補正した重量、すなわち完全に乾燥した場合の重量を基準とする。
【0014】
本発明の健康補助食品は、好ましくは錠剤、特には糖衣錠に成形して製品とすることができる。このためには、上記配合組成に対して、10〜40重量部、好ましくは15〜30重量部の範囲で、成形や糖衣形成のための材料を配合することができる。例えば、デキストリン、結晶性セルロース微粉、メチルセルロース、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(Mg)、ケイ酸アルミニウム(A1)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース・カルシウム塩(CMC-Ca)、ステアリン酸マグネシウム(Mg)卵殻Ca、ショ糖、乳糖、セラック、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸等から適宜選択または組み合わせて配合することができる。
【0015】
本発明の健康補助食品は、錠剤の形態の他、常法により、油剤、エマルジョン、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、顆粒剤、固形剤、チュアブル剤、ドレッシング類、菓子類などの形態にすることもできる。
【0016】
本発明の健康補助食品に用いるカキ肉エキスは、天然の海の食材である牡蠣(かき)の肉部(貝殻以外の部分)から熱水抽出等により得られるものである。すなわち、典型的には、牡蠣(かき)の煮汁を、スプレードライ法等により乾燥させて粉末化したものである。
【0017】
本発明の健康補助食品に用いる他の原材料としては、市販の最も一般的なもの、特には、健康食品用や調理・味付け用の市販粉末品をそのまま用いることができる。植物から抽出されるオニオンエキス、シイタケエキス及びグアバ葉エキスとしては、生の植物体または乾燥品から熱水抽出した後に、例えばスプレードライ等により顆粒としたものを用いることができる。ここで、オニオンエキスは、典型的には、タマネギの外皮及び可食部の全体から熱水抽出したものである。乳酵母エキスは、乳酵母を破砕後に自己消化させ、乾燥して得られる粉末である。また、シトラスペクチンは、オレンジ等の柑橘類の外皮から酸抽出されるものである。
【0018】
本発明の健康補助食品は、成人が1日に200mg〜600mg摂取するのが好ましい。この摂取量は、成形や糖衣形成のための材料を除き、かつ水分を除いた、正味の量である。
【実施例】
【0019】
本発明の実施例について表1及び図1〜4を用いて説明する。まず、表1には、実施例の健康補助食品の配合組成を示す。表1では、水分を除いた場合の各原材料の重量%を示す。
【表1】

【0020】
上記配合にて実際に用いた原材料(いずれも粉末品)は、下記のとおりである。
【0021】
・カキ肉エキス:株式会社 宮下バイオヘルス研究所の「BHOE」(商標登録 第4553395号)
・シトラスペクチン:オックスケム社(イギリス)の「"OXPEC" USP Grade」
・乳酵母エキス:ペル・インダストリーズ(フランス)の「プロチペル」
・オニオンエキス:Sensient Flavors Ltd. UK (イギリス)の「Onion Flavor 1010795」
・シイタケエキス:佐藤食品工業(株)の「椎茸エキスHD-1」
・グアバ葉エキス:備前化成(株)の「グァバエキスパウダー」
・成形材料:デキストリン、結晶性セルロース微粉、及び、ショ糖脂肪酸エステル
・糖衣材料:卵殻Ca、ショ糖、乳糖、及びセラック
錠剤の成形は、特開2003-304852(特許文献2)に記載された方法に順じて行った。
【0022】
以下には、この錠剤を成人女性に、毎日400mg投与した場合の安静時代謝率の変化について調べた実験及びその結果について説明する。この実験は、株式会社 宮下バイオヘルス研究所の顧問である栗原文男博士(武蔵野大学客員教授)の指導の下、ドイツのビオファルム大学の付置研究施設(Klinik fuer Physiotherapie im Klinikum Berlin-Buch)に委託して行ったものである。実際に実験を担当したのは、Dr. Jochen Stenigerである。
【0023】
<実験方法>
被験者は、24人のボランティアの女性である。このうち半数の12人には、上記錠剤を、200mgずつ朝及び夕に食前に飲んでもらい、残りの12人は対照グループとした。被験者の年齢は22〜44歳であり、身長は150〜178cm、体重は47〜102kgであった。
【0024】
これら被験者に対し、投与開始後0週(すなわち投与開始の日)、2週、4週及び6週の経過後に、安静時代謝率及び体組織について測定を行った。実際には、0,2,4及び6週が経過した日(1日目)に投与グループ(錠剤摂取グループ)の6人について測定し、翌日(2日目)に対照グループの6人について測定を行った。
【0025】
食物摂取量は、各被験者が作成した栄養日誌に基づき、測定日より前の5日間について評価を行った。すなわち、例えば2週目の測定の場合は、9〜13日目について評価を行った。この際、「標準ドイツ栄養データベース(Bundeslebensmittelschlusse 11.2)」を用いた。
【0026】
安静時代謝率等の測定のためには、呼吸房を用い、コンピュータによる間接熱量測定を行うとともに、Kjeldahl法により尿窒素異常組成(Nex; mg/min)を測定した。呼吸房を用いた測定では、ガス濃度(酸素及び二酸化炭素の濃度)、移動率、及び雰囲気条件(温度、相対湿度、気圧)を1時間ごとに測定して記録した。これらガス濃度等を測定するためには、1分ごとにガス分析システムへと、被験者が吸い込む新鮮な流入空気、及び、被験者が吐き出す流出空気を導くようにした。このようにして得られた酸素消費(VO2)、二酸化炭素発生(VCO2)及び尿窒素異常組成(Nex)から、代謝率(MR)、脂質の酸化率(LipOx)、炭水化物消費(CHOOx)及びタンパク質消費(POx)を求めた。そして、このようにして得られた全ての測定値を24時間外挿した。
【0027】
また、被験者の両グループについて、体組織の測定を生体電機インピーダンス分析(BIA)により行い、体脂肪(BF)、無脂肪質量(FFM)、体細胞質量(BCM)及び細胞外質量(ECM)を求めた。
【0028】
なお、被験者の両グループは、年齢に有意な差があったものの、体組織、代謝率(MR)及び尿窒素異常組成(Nex)について、均質であった。
【0029】
<実験結果>
図1に、安静時代謝率の測定結果を示す。図中、上下のバーにより最大値及び最小値を示し、ボックスにより平均値±標準偏差(σ)の範囲を示す。図1の「0週目」の測定結果から知られるように、投与グループと対照グループは、実験開始の時点で均質である。そして、「6週目」の測定結果から知られるように、投与グループでは、顕著な安静時代謝率の向上が認められた。
【0030】
図2には、脂肪酸化率の測定結果を、図1と同様の表示方式により示す。図2の図1の「0週目」の測定結果から知られるように、投与グループと対照グループは、実験開始の時点で均質である。そして、「6週目」の測定結果から知られるように、投与グループでは、顕著でないものの、脂肪酸化率が少し向上するらしいことが示された。
【0031】
図3には、エネルギー摂取量の算出結果を示し、図4には、全体のエネルギーバランス及び三大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物)の摂取・消費バランスについて示す。図3の結果に示されるように、エネルギー摂取量、特には脂質の摂取量が、投与グループよりも対照グループで少し高い結果となったが、エネルギー摂取量の差は、常に200Kcal/day未満であった。なお、このようなエネルギー摂取量の差は、感染病や胃の障害などによると考えられた。
【0032】
一方、図4に示すように、エネルギーバランスが投与グループでマイナスとなったのに対し、対照グループではプラスとなった。特に、時間の経過につれ、この差が、より顕著となった。「6週目」の実験結果では、エネルギーバランスが、投与グループで約−350Kcal/dayであったのに対し、対照グループで約+50Kcal/dayであった。すなわち、エネルギーバランスの差は、図3のエネルギー摂取量の差の約2倍の400Kcal/dayであり、投与による顕著な効果が現れたと考えられた。
【0033】
なお、具体的なデータは示さないが、本実施例の健康補助食品の投与は、被験者の体組織の組成そのものに影響を与えなかった。すなわち、外細胞水の蓄積または体脂肪の増加は認められなかった。
【0034】
以上のように、本実施例の健康補助食品の投与により、安静時代謝率の顕著な向上が認められた。また、エネルギーバランスについても肥満防止の効果があると考えられた。すなわち、本実施例の健康補助食品は、肥満等に関連した生活習慣病の予防及び改善に非常に有効であることが期待される。特に、本実施例の健康補助食品によると、カキ肉エキスの投与量を最小限としつつも、他の機能性栄養材料との組み合わせにより、効率的にエネルギー代謝のホメオスタシス活性を維持することができたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】安静時代謝率の測定結果を示すグラフである。
【図2】脂肪酸化率の測定結果を示すグラフである。
【図3】エネルギー摂取量の算出結果を示すグラフである。
【図4】エネルギーバランス及び三大栄養素の摂取・消費バランスについて示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海産物である牡蠣から抽出したカキ肉エキス20〜30重量部と、シトラスペクチン15〜25重量部と、乳酵母エキス15〜25重量部と、シイタケエキス3〜7重量部と、オニオンエキス3〜7重量部と、グアバ葉エキス3〜7重量部とからなることを特徴とする健康補助食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−195199(P2009−195199A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42294(P2008−42294)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(501239701)株式会社宮下バイオヘルス研究所 (1)
【Fターム(参考)】