説明

カシミヤ糸の製造方法

完全に又は部分的にカシミヤ繊維からなる糸の製造方法は、繊維の量の選択、選ばれた繊維からのケンプの除去、配列した繊維のスライバー、又はトップを得るためのコーミング、染浴に透過性の保護層又はバッグにより染浴から保護されたトップの染色、及びカシミヤ繊維で作られる単糸を得るためのトップの加工の工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊度(番手)、機械的性質及び純度に関して高品質を特徴とするカシミヤ糸及びカシミヤ又はカシミヤ混紡(cashmere - mix textile)の製品を得るためのカシミヤ繊維の加工に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、カシミヤは特定の種類のヤギから得られる繊維であり、全ての動物の繊維のように、回収期間(コーミングの方法により)、ヤギの品種と血統により直接に影響を受ける物理的性質を有する。
【0003】
天然紡織繊維のうちでカシミヤは、加工中、使用される方法に応じて高められる、異なった形態学的‐官能的性質(長さ、繊度、光沢、風合い)と物理的‐機械的性質(吸湿性、熱安定性、燃焼法、フェルト化、断熱(insulation)、強じん性、レジリエンス)を有することも知られている。
【0004】
カシミヤの加工としては、オープニング、カーディング、コーミング、引張り、加撚、紡績、ダブルワインディング(double winding)、より合わせ(twining)、コンディショニング及び製織が挙げられる。
この主として機械的加工に加えて、染色及び捺染(様々な種類の染料を用いている)又は仕上げ(サンフォライズ(sanforising)、あざみ起毛(teaseling)、カレンダーがけ、縮充、マーセル化(mercerising)、仕上げ糊付け、防しわの加工(making crease-resistant)、防水加工のように)のように主として化学的工程がある。
【0005】
現在、カシミヤ糸は特にニットウェア紡織製品の製造に広く使われる。
しかしながら、カシミヤでは、他のあらゆる繊維の種類よりも、最初の繊維及び次の半仕上げ製品(semi-finished products)が、原料の選択から布の仕上げまで、加工の全ての工程中にある条件は、糸及び布の最終品質に影響を及ぼし、かつそれを決めるので、カシミヤ糸を製造する既知の方法は、今のところ一般に100000より高くない糸繊度又は番手値の高水準の達成について多くの制限を有する。
【0006】
加工の既知の種類の限界の帰結は、現在、例えばベッドシーツのように、とても高い品質及び繊度を要求するカシミヤ紡織製品の製造に適切に使用できる紡績加工がないことである。
別の不利点は、屋外の気象条件の変化とともに万能の使用(フォーシーズンズ("four seasons")とも呼ばれる)を可能とする潜在的な特性である、熱調整のような、カシミヤ繊維の品質の最良の利用法を作らせないから、今のところ入手可能なカシミヤ又はカシミヤ混紡の製品の比較的低い品質が伝統的にこれらの布を冬("winter")用に追いやっていることである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、したがって、使用時の耐久性と手触りの品質(柔軟度、ボリュームの豊かさ(voluminosity))の双方に関して高水準の機械的性質を特徴とするカシミヤ又はカシミヤ混合の糸及び布の製造方法を提供することにより、これらの不利点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は主請求項の中で定義された方法により達成される。
添付の図面を参照して、本発明のさらなる利点と革新的特徴が、第二の請求項に定義されたように方法、糸及び紡織製品とともに得られ、また次に来る詳細な説明でより明白になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明によれば、カシミヤ糸の製造方法では、適切な処方の方法で得られた繊維を選択する準備工程がある。
【0010】
特に、繊維は、加工糸の機械特性を高めるために、単繊維ごとの最大長、最低ミクロンカテゴリー(micron category)、及びキューティクルスケール(cuticle scales)の最大量の基準によって選択される。
【0011】
さらに詳細には、原料を選ぶことは、長さ、繊度、クリーンネス、変動係数、スケールの平均高さ及び数(mean height and number of scales)、キューティクル幅を含めて、得られた性質を最大化し、また標準化するために選択することを含む。
【0012】
上記の選択を用いることで、紡績中に細くなったり、太くなったりすることを防止できるように、極めて均一な(regular)スライバー(sliver)から紡績工程を開始することが可能となる。
【0013】
さらに、選択の厳密さは、繊維の物理的‐機械的性質と化学的‐物理的性質の双方の最適化及び標準化を可能とする。それは、200,000までの番手の、本発明によって30以上にさえなるかもしれないセクション(section)ごとの繊維の高平均数を有する糸を製造するために用いられる紡織繊維(純粋なカシミヤ(pure cashmere)又は絹混合)を製造するために、必須であると分かった。
【0014】
一度選択されれば、不純物が習慣的なケンプ除去工程によってカシミヤ繊維から除去され、その次に、トップ("tops")としても知られる、配列した繊維(aligned fibres)のスライバーを得るためにコーマーにかけられる。
【0015】
一度トップが得られたら、それらは、制御された温度及び圧力の条件で、そして糸を構成する他の繊維(例えば絹繊維)の染色とは別に、有利に行われる染浴(図3)に送られる。
本発明によれば、染色中にトップは、ボビン又はバンプ(bumps)の形で、ボビンが浸される染浴に透過性の保護層又は微小な穴(micro-holes)があいたバッグ(bag)により、染色剤及び添加剤による繊維上の攻撃を制限するために、また繊維の平行性の損失を抑えるために、染浴から保護される。
染色後、トップは洗浄され、そして乾燥させられる。乾燥は好ましくは布目直し工程と同時である。
【0016】
図3で説明するように、上記の染色方法で化学的‐物理的性質を標準化するべく、染色工程後に再び繊維をリラックスさせ(relax)、かつ分配するために、あらかじめ材料を処理することに使用される溶剤せっけん(solvent soap)のような特定の製品も洗浄に使われ、またストレイテナー及び乾燥機による乾燥工程の前にコンディショナーが使われる。
【0017】
染色が完了すると、乾燥させられ、かつ洗浄されたトップはカシミヤ繊維の単糸を得るために紡績され得る。
【0018】
好ましい実施態様では、単糸は、純粋なカシミヤ又は他の繊維と混紡されたカシミヤで、例えば70%のカシミヤ繊維と30%の絹繊維で、製造され得る。
この最初の紡績工程では、単糸の機械的及び化学的‐物理的性質を最適化し、また均一にしようと試みることが重要である。
【0019】
特に、前者にとって環境条件の連続的な監視及び調整が、理想的な温度及び圧力の条件で材料を加工するために必須であることが発見された。
【0020】
このために、この発明の紡績は気候室で、制御された温度、湿度、及び圧力操作条件の下で行われ得る。
【0021】
本発明によれば、繊維の紡績中にリング("ring")加工が、糸の合撚及びそれと同時のより合わせの方法で行うフィードシステム(feed system)に適合し、使用される。
これは売りに出されている一般的なダブルツイスト加撚機の使用を回避する。それは高水準の生産性を可能にするが、高い加工速度を使用するし、糸にリング上の長距離を覆わせ、そして繊維の平行性の損失によって破断していたり、及び/又はさらに多くのナップ("nap")を有していたりする糸の危険性を増加させる摩擦及び抵抗を発生させるからである。
【0022】
選択された加工で、切断と平行性の損失の危険を順々に引き起こす抵抗及び摩擦を作り出している糸延伸(yarn extensions)及び加工角(processing corners)を伴うフィードシステムを有する、一般的な合撚機の使用を回避することも可能になる。
【0023】
有利には、本発明に使用された加工は、様々な紡績の製造工程の反復を経て、例えばコーミング機において、加工速度及び生産性を犠牲にしてさえも、加撚糸の標準化及びより大きな均一性を約束する。
【0024】
紡績が完了すると、次の品質管理又は糸欠点除去("yarn clearing")の工程が、より少ない加工動作を行うことの結果によって、既に加撚された糸に実行される(より高い品質及びより少ない不合格品に関連している)。
【0025】
紡績工程後に糸の製織の工程が行われ、本発明によって、糸の加工性及び紡織製品の最終品質を高めるため、気候室で、制御された温度、湿度及び圧力の条件下で行われる。
製織後、得られた布はユーザー(user)が知覚できる性質、すなわち風合いの品質を高めるために、さらに処理される。
【0026】
この加工(図2)は、仕上げ工程であり、そこでは本発明によって、ダブルデカタイジング(double decatising)を含む方法が準備された。
【0027】
このために、紡織工程に続いて、次の仕上げ工程で布を調製するために、制御された温度及び圧力の条件下でキアーにて行われる断続的デカタイジング(KD)による第一の安定化工程がある。仕上げ工程は、洗浄及びイノウブリング(ennobling)からなる。
【0028】
最終的に、仕上げ後に布は第二の断続的デカタイジング工程を受けさせられる。
【0029】
本発明によれば、仕上げ工程中に、カシミヤに特有の明るさ及び熱調整能のような機能性を高めることと同様に、布の固着を可能とし、物理的‐機械的性質を維持し、そして優雅、実用性、排他性、及び「風合い("handle"、手触りの、すなわち手の親指に隣接した手のひらの部分と指との間で感じた時の、柔軟度及びボリュームの豊かさ)」のような美的特徴を高めることができるデカタイジング包装材料を使用することも可能になる。
【実施例】
【0030】
下記の実施例として、所定の選択された材料から、また所定の環境条件で始まる開示された方法を用いて得られた糸及び布に特有の性質を含む表(表1)がある。
【0031】
表1から推察すると、この方法で得られた糸及び布は、優秀な機械的性質を有しており、それらをシーツ、枕カバー、及びその他の品のような特定の製品の製造に適合させる。一方、本発明の方法及び製品は、これらについて本発明の概念の範囲から外れることなしに、異なる用途を有し、また改良される可能性があることも解るだろう。
【0032】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のカシミヤの糸及び布の製造方法の完全なブロック図である。
【図2】繊維の染色の工程のブロック図である。
【図3】布の仕上げの工程のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維ごとの長さ、ミクロンカテゴリー、及びキューティクルスケールの量の基準によって選ばれた繊維の量を選択する工程、
選ばれた繊維からケンプを除去処理する工程、
処理された繊維をコーミングし、配列した繊維のトップを得る工程、
トップを染浴に透過性の保護層又はバッグにより染浴から保護しながら、染浴中でトップを染色する工程、
染色されたトップを洗浄する工程、
洗浄されたトップを乾燥し、同時に布目直しする工程、
トップをコーミングする工程、
温度及び湿度の条件を連続的に制御及び調整しながら乾燥された及び洗浄されたトップを紡績し、カシミヤ単糸を得る工程、
を含む、完全に又は部分的にカシミヤ繊維からなる糸の製造方法。
【請求項2】
紡績工程が、カシミヤ混合単糸を得るためにカシミヤ以外の材料の繊維の紡績を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
カシミヤ繊維を染色する工程が、他の材料の繊維の染色とは別に実行される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
加撚されたカシミヤ又はカシミヤ混合の糸を得るために、多くの単糸をより合わせる1以上の工程を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
糸の加工性を高めるために、温度、湿度及び圧力操作条件の連続的な制御及び調整の下で、気候室で行われる加撚された糸の製織の工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で製造された糸を少なくとも一部含む紡織製品を得る方法。
【請求項6】
製織工程に続いて、断続的デカタイジングによる第一の安定化工程、洗浄及びイノウブリングによる仕上げの工程、及び断続的デカタイジングによる第二の安定化工程を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの安定化工程が、制御された温度及び圧力の条件で実行される請求項5に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つの安定化工程が、紡織製品に用いた糸より高番手の糸からなる布で作られた層又は包装材料で、紡織製品を保護しながら実行される請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
仕上げの工程が制御された温度でのカレンダーがけの方法により実行される請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法で製造された糸。
【請求項11】
70%のカシミヤ繊維及び30%の絹繊維を含む請求項10に記載の糸。
【請求項12】
請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法で得られた紡織製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−512790(P2009−512790A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536137(P2008−536137)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003474
【国際公開番号】WO2007/049094
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508123283)マンリコ ソチエタ ペル アツィオニ (1)
【Fターム(参考)】