説明

カスタマイズされたカーボン紙およびその作成方法

【課題】カスタマイズされたカーボン紙部分を有する媒体シートを提供する。
【解決手段】
カスタマイズされたカーボン紙部分(104)を有する媒体シート(102)およびその作成方法に関する。媒体シート(102)は一方の面と他方の面とを有し、一方の面にはカーボン紙部分(104)が形成される。このカーボン紙部分(104)は、記されるマーキングを受け取ることができる表面上にマーキングを転写することができる。このマーキングは、媒体シートの他方の面であって、カーボン紙部分(104)越しに加えられる圧力に対応する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、トレース紙に関する。より詳細には、本発明は、カスタムマイズされたカーボン紙部分を有する媒体シートおよびその作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボン紙はかねてから使用されている。カーボン紙は通常、シート状で提供され、一方の面には容易に転写することができるインクを有する。コピー機およびプリンタなどの家庭用およびオフィス用機器が到来する前は、カーボン紙は、機械式タイプライタを使用して書類の複数のコピーを作成する方法として、便利であり好評であった。最近、カーボン紙は、清潔さに欠けることと、生産の質が悪いことからあまり広く使用されていない。したがって、カーボン紙は、手書きの領収書の作成またはチケットの通し番号の記録、同様な複写などの迅速な複写を必要とする際に、頻繁に使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カーボン紙は、依然として今日の社会と関わりがある。しかしながら、マスタ−シートとコピーシートの間にカーボン紙を挿入し直し続けることは煩わしい。さらに、一例として、通し番号または署名を複写するためなどの、狭い部分の複写領域のみが必要とされる時には、2枚の紙の間に1枚のカーボン紙を挿入することは非実用的である。
【0004】
したがって、カスタマイズされたカーボン紙部分を有する媒体シートを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、カスタマイズされたカーボン紙部分を有する媒体シートを提供する。媒体シートは一方の面に、カーボン紙部分を備える。このカーボン紙部分は、マーキングを受け取ることが可能な表面上に、このマーキングを転写することができる。このマーキングは、媒体シートの他方の面であってカーボン紙部分越しに加えられた圧力に対応する。
【0006】
本発明はまた、カスタマイズされたカーボン紙部分を有する媒体シートを作成する方法を提供する。本発明の方法は、媒体シートを用意することと、媒体シート上のカーボン紙部分を指定することと、この指定されたカーボン紙部分にインクを塗布することとを含む。
【0007】
このような本発明の実施形態を、添付図面を参照して、以下に例として説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
カスタマイズされたカーボン紙部分を有する媒体シート、および、それを作成する方法を、図面を参照にして以下に説明する。以下の説明は、当業者が本発明を考案し、使用することを可能にするために開示され、特許出願およびその要件のために提供される。当業者は、本発明に記載される実施形態及び包括的な原理および特徴に対するさまざまな改良を容易に得られるであろう。したがって、本発明は、以下に示す実施形態に限定されることを意図するのではなく、本発明で述べる原理および特徴に適合する最も広い範囲内の発明に関する。
【0009】
一実施形態によれば、媒体シート102(たとえば、用紙)を含む書類100は、図1に示すように、媒体シート102上にあるカーボン紙部分104とともに製造される。カスタマイズされたカーボン紙部分104は、媒体シート102の一方の面であって、複写が必要とされるカスタマイズされた位置の真向かいの位置に配置される。図1に示すように、カスタマイズされた位置は、媒体シート102の右手下側であり、通常、署名やこれらのマーキングなどのために使われる部分である。
【0010】
カスタマイズされたカーボン紙部分104は、媒体シート102の所望の場所に塗布されたインクで形成される。一実施形態では、インクは、インクジェットプリンタを使用して媒体シート102上に印刷される顔料系インクである。顔料系インクは一般に、インクジェットプリンタで見られる。顔料系インクは、媒体シート102(表面)に付されると、媒体シート102の面(表面)に、インクのかなりの部分が残るため、良好なマーキングの転写作用を提供する。
【0011】
別の実施形態では、カスタマイズされたカーボン紙部分104を形成するために、染料系インクを、インクジェットプリンタを使用して媒体シート102上に印刷する。染料系インクは一般にカラーインクジェットプリンタで見られ、広い範囲の色域を提供する。染料系インクには、媒体シート102内に深く浸透する傾向がある。したがって、染料系インクを塗布する前に、下地層を(裏面の)所望の場所に塗布し、媒体シート102の面(裏面)でより多くのインクを印刷して、優れたマーキングの転写作用を提供することができる。
【0012】
カスタマイズされたカーボン紙部分を有する媒体シートの応用例が、図2に示される。図2は、同じ内容、フォント、およびレイアウトを有する複写印刷シートであるオリジナルシート202Aおよび202Bを含む、重ねた書類200を示す図である。こうした複写印刷シートは一般に、通知書、法的な契約書、または、同様な公文書に使用される。オリジナルシート202Aの裏面にカスタマイズされたカーボン紙部分204を形成することによって、カーボン紙部分204の位置のオリジナルシート202Aの表面に記される署名206A(または、同様なマーキング)は、オリジナルシート202Bの表面に転写され、それによって、署名206A(または、同様なマーキング)の正確なコピーである署名206B(同様なマーキング)が提供される。このように、署名または同様なマーキングを、重ねた書類200の初めのシートに1度だけ記せばよい。したがって、カスタマイズされたカーボン紙部分204によって、正確性と一貫性が要求される重ねた書類200に、互いに異なる形となる可能性が最も高い複数回の書名(又は同様なマーキング)を記す必要がなくなる。
【0013】
図1に示すような、カスタマイズされたカーボン紙部分104を有する媒体シートを作成する方法のフローチャート300を、図3を参照にして述べる。媒体シート102上にカスタマイズされたカーボン紙部分104を形成するためにインクジェットプリンタを使用する場合の一実施形態について、フローチャート300のステップを説明する。ステップ302にて、文書内容が印刷される表面およびカスタマイズされたカーボン紙部分が形成される裏面を有する媒体シート102を用意する。ステップ304にて、媒体シート102の表面の、複写を必要とする部分(カスタマイズされたカーボン紙部分104に該当する部分)が指定される。一実施形態では、媒体シート102の表面のこの部分は、カーボン紙部分104の領域を画定する位置座標を用いて指定される。
【0014】
別の実施形態では、媒体シート102の表面の複写を必要とする部分は、印刷では実現できない形状、又は透かし形状(たとえば、長方形状または卵形状)を形づけることとし、媒体シート102の表面の複写が必要とされる部分が指定されてもよい。こうした指定方法は、カスタマイズされた描画モードを使用することによって実施されることができ、最新のワードプロセッサ用途で一般に提供されるものと同様の形状および描画ツールを使用することができる。
【0015】
ステップ304にて、媒体シート102の表面の複写部分が指定されると、ステップ308にて、カスタマイズされたカーボン紙部分が形成される。しかしながら、一実施形態では、媒体シート102の裏面にインクを塗布する前に、ステップ306にて、前述した媒体シート102の表面の形状を描くことによって指定された位置が、媒体シート102の裏面の対応する部分に転写される。形状を形づけることによって指定された位置に関係する位置を、媒体シート102の、表面から裏面に転写させることは知られており、本実施形態の目的のためにいくつもの作業をすることができる。
【0016】
別の実施形態では、フローチャート300のステップ306が必要とされない。この場合、ステップ304にて複写位置が指定される媒体シートの面は、カーボン紙部分が形成される面(裏面)である。
【0017】
媒体シート102の裏面での、指定された(形状の)位置が確定すると、ステップ308において、ステップ304で指定された複写部分または複写形状が、インクジェットプリンタによって印刷されて、カスタマイズされたカーボン紙部分が形成される。ステップ308にて、インクジェットプリンタが両面印刷プリンタである場合、文書の内容およびカスタマイズされたカーボン紙部分は、1回の連続動作で、媒体シート102の表面および裏面にそれぞれ印刷することができる。これは、最初に文書の内容を表面に印刷し、自動的に媒体シート102を裏返して、媒体シート102の裏面にカスタマイズされたカーボン紙部分を印刷して達成される。ステップ308では、裏面にカスタマイズされたカーボン紙部分を有する媒体シート102が作成される。
【0018】
ステップ308にて、使用されるインクが染料系インクである場合、染料系インクを塗布する前に、指定された形状を有する下地層を塗布するようにしてもよい。また、媒体シート102の裏面は、媒体シートの表面で染料系インクを捕捉するための、プリコーティングした下層を備えてもよい。さらに別の方法では、媒体シート102の裏面は、媒体シート102の表面で染料系インクを捕捉することが可能であるように化学薬品で前処理されてもよい。
【0019】
上記では、本発明の実施形態が、図1〜図3を参照にして述べられている。当業者が、本発明を改良した考案や本発明と同様の考案を創作することが予想される。たとえば、媒体シート上の異なる場所に、2個以上のカスタマイズされたカーボン紙部分を形成することができる。したがって、上記説明を、本発明の特許請求項によって規定される範囲に本発明を制限すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態のカスタマイズされたカーボン紙部分を有する書類を示す図である。
【図2】図1の書類の適用例を示し、重ねた書類を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による、図1の書類を作成する方法のフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0021】
100 文書
102,202A,202B, 媒体シート
104,204 カーボン紙部分
206A,206B マーキング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カスタマイズされたカーボン紙部分を有する媒体シートであって、前記媒体シートの第1面は前記カーボン紙部分を備え、前記カーボン紙部分は、マーキングを受け取ることが可能な表面上に前記マーキングを転写することが可能であり、前記マーキングは、前記カーボン紙部分越しの前記媒体シートの第2面に加えられた圧力に対応することを特徴とする媒体シート。
【請求項2】
前記カーボン紙部分は、前記媒体シートの前記第1面上の前記カスタマイズされた部分に配置され、これに対応する前記媒体シートの前記第2面上のカスタマイズされた部分に付された前記マーキングを転写することを特徴とする請求項1に記載の媒体シート。
【請求項3】
前記カーボン紙部分は、インクを塗布する手段を使用して、前記媒体シート上に塗布されたインクから形成されることを特徴とする請求項1に記載の媒体シート。
【請求項4】
前記インクを塗布する手段はインクジェットプリンタであることを特徴とする請求項3に記載の媒体シート。
【請求項5】
前記インクは顔料系インクであることを特徴とする請求項3に記載の媒体シート。
【請求項6】
前記インクは染料系インクであることを特徴とする請求項3に記載の媒体シート。
【請求項7】
前記カーボン紙部分は、前記インクジェットプリンタを使用して、前記媒体シートの前記第1面上の前記カスタマイズされた部分にインクを塗布することによって形成されることを特徴とする請求項2に記載の媒体シート。
【請求項8】
カスタマイズされたカーボン紙部分を有する媒体シートを作成する方法であって、
前記媒体シートを用意するステップと、
前記媒体シート上で前記カーボン紙部分を指定するステップと、
指定された前記カーボン紙部分にインクを塗布するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
前記カーボン紙部分を指定するステップは、前記カーボン紙部分の領域を画定するために位置座標を用いるステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カーボン紙部分を指定するステップは、前記媒体シート上の場所に印刷では実現できない形状又は透かし形状を設けるステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記インクを塗布するステップは、前記指定されたカーボン紙部分に前記インクを印刷して、前記媒体シート上に前記カスタマイズされたカーボン紙部分を形成するためにプリンタを使用するステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記インクを塗布するステップは、指定された前記カーボン紙部分に、顔料系インクを印刷して、前記媒体シート上に前記カスタマイズされたカーボン紙部分を形成するために、プリンタを使用するステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
カスタマイズされたカーボン紙部分を有する媒体シートを作成する方法であって、
第1および第2面を有する前記媒体シートを用意するステップと、
前記媒体シートの前記第1面上で前記カーボン紙部分を指定するステップと、
指定された前記カーボン紙部分を、前記媒体シートの前記第1面から前記第2面に転写するステップと、
前記媒体シートの前記第2面上の前記指定されたカーボン紙部分にインクを塗布するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記カーボン紙部分を指定するステップは、前記カーボン紙部分の領域を画定するために位置座標を用いるステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記カーボン紙部分を指定するステップは、前記媒体シートの前記第1面上の場所に印刷では実現できない形状又は透かし形状を設けるステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記インクを塗布するステップは、前記媒体シートの前記第2面上の指定された前記カーボン紙部分に前記インクを印刷して、前記媒体シート上の前記第2面上に前記カスタマイズされたカーボン紙部分を形成するために、プリンタを使用するステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記インクを塗布するステップは、前記媒体シートの前記第2面上の前記指定されたカーボン紙部分に顔料系インクを印刷して、前記媒体シート上に前記カスタマイズされたカーボン紙部分を形成するために、プリンタを使用するステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記インクを塗布するステップの前に、前記媒体シートの前記第2面上に下地層を塗布するステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記媒体シートを用意するステップは、前記媒体シートの表面で前記インクを捕捉することができるように、前記第2面が化学薬品で前処理されている媒体シートを用いるステップを含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記インクを塗布するステップは、前記媒体シートの前記第2面上の前記指定されたカーボン紙部分の前記下地層にわたって染料系インクを印刷するためにプリンタを使用するステップを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−7768(P2006−7768A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173592(P2005−173592)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】