説明

カスパーゼ−3基質含有造影剤

【課題】カスパーゼ−3基質ペプチド含有造影剤の提供。
【解決手段】本発明はインビボイメージング用の画像診断剤に関する。該造影剤はインビボでの画像診断に好適なイメージング部分を有する標識合成カスパーゼ−3基質ペプチドを含んでなる。本発明はまた該造影剤を含んでなる放射性医薬組成物、並びに放射性医薬の調製用キットを提供する。該造影剤の調製に適する非放射性前駆体も記載する。該造影剤は画像診断及び/又はカスパーゼ−3が関与する様々な疾病状態のインビボ治療モニタリングに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインビボイメージング用の診断用造影剤に関する。該造影剤はインビボ画像診断に適するイメージング部分で標識した合成カスパーゼ−3基質を含んでなる。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスによるプログラム細胞死は複雑なプロセスであって、多数のレベルでの制御を伴う多数の細胞プロセスが関与する。それは2つの経路のうちの1つによって開始する。第1は細胞表面死受容体を介して開始する外部経路によるもの、第2は固有の紫外線によるDNA傷害のような開始因子によるものである。これらの経路のいずれも調整された細胞死に至らしめるが、それはエネルギーを必要とし、壊死による細胞死と異なり炎症反応が伴わない。アポトーシス中の細胞は「イートミー(eat me)」シグナルを自身の細胞表面上に提示し、それが他の細胞を誘引して細胞を食作用により貪食させる。
【0003】
アポトーシスは生体内の多数のプロセスにおける重要な現象である。例えば胚発生はアポトーシスに全く依存し、ターンオーバーの急速な組織では厳密な制御を行い深刻な病理学的結果を回避する必要がある。アポトーシス調整の不調は癌(不十分な細胞死)及びアルツハイマー病(過多の細胞死)などの神経疾患を引き起しうる。さらにアポトーシスは虚血/再潅流障害後の心臓内部の領域などの傷害性組織でも観察できる。
【0004】
アネキシン−5は内因性のヒトタンパク質(RMM 36kDa)であって、アポトーシス細胞の外膜に存在するホスファチジルセリン(PS)と約10
-9Mの親和性で結合する。99mTc標識アネキシン−5はインビボでのアポトーシスの画像処理(Blankenberg et al,J.Nucl.Med.,40,184−191(1999))に用いられている。しかしこの方法には幾つかの問題が存在する。第1に、アネキシン−5は壊死細胞に入って細胞膜の内側小葉に露出するPSと結合しうるため、それが偽陽性の結果となって現れることもある。第2は高い血液プール活性であって、この活性は標識アネキシン−5の注入後少なくとも2時間維持される。これはイメージングに最適のタイミングが注入後10〜15時間であることを意味するが(Reutelingsperger et al,J.Immunol.Meth.,265(1−2),123−32(2002))、それは急性冠動脈症候群の患者の臨床意思決定にとって不適切である。さらにアネキシン−5のクリアランスは腎臓及び肝臓を経て行われるため、腹部において非常に強いバックグラウンドシグナルとなる。これは腹部細胞死(例えば腎臓移植及び腫瘍モニタリング)のイメージングを不可能にする。
【0005】
国際公開第99/67284号では、診断的又は薬理学的活性物質の標的細胞特異性を与える、「機能的リンカー部分」に結合した細胞膜透過ペプチドのキレート化接合体が開示されている。診断用物質は放射性核種、緩和度の高い金属、フルオロクロム、染料又は酵素基質から選択されるTatペプチドなど多種の透過ペプチドが開示されている。標的細胞特異性は好適にはペプチド又はタンパク質結合モチーフによって与えられ、多くの酵素標的が記載されている。カスパーゼ(カスパーゼ−1からカスパーゼ−13)が好適なプロテアーゼ応答性配列と言われている。
【0006】
国際公開第01/89584号では、実施例16〜18及び21で、カスパーゼ−3の基質であるテトラペプチドのDEVD(すなわちAsp−Glu−Val−Asp)のキレート化接合体が、MRI又はシンチグラフィを用いたアポトーシスの組織のインビボイメージングに有用でありうることが開示されている。
【0007】
Haberkorn他(Nucl.Med.Biol.,28,793−798(2001))は、パン・カスパーゼ阻害剤Z−VAD−fmk(すなわち放射性同位元素131Iで標識したベンジルカルボニル−Val−Ala−DZ−Asp(O−メチル)−フルオロメチルケトン)のアポトーシスの造影剤としての利用可能性について検討している。彼らは薬剤の絶対的な細胞取り込みが少なく、それが活性化カスパーゼ当たり1分子の阻害剤のみがトラッピングされるためであることを見出した。彼らは標識カスパーゼ基質ではこの問題が生じることがなく、造影剤にとってより良好な方法であると結論付けた。
【0008】
2005年6月に発行されたBauer他の記事(J.Nucl.Med.,46(6),1066−1074(2005))では、アポトーシスの細胞にDEVDGペプチド配列を含む131I−放射性標識カスパーゼ基質の取り込みが報じられている。DEVDGペプチド自体はほとんど細胞取り込みを示さず、コンジュゲートされたTat細胞透過ペプチドとの共存によってそれが向上する結果となると言われている。Bauer他は、放射金属標識を用いることで、帯電金属複合物の放出又はトランス複合体形成のいずれかによってアポトーシス細胞での細胞内標識がさらに維持されると結論付けている。
【0009】
カスパーゼ基質はフィッシャー他(Cell Death Diff.,10,76−100(2003))によって概説されている。
【0010】
アポトーシスのイメージング用の放射性薬剤はLahorte他(Eur.J.Nucl.Med.,31,887−919(2004))によって概説されている。
【0011】
そこで、迅速なイメージング(例えば注入後1時間以内)を可能にし、血液及び背景器官からのクリアランスが良好なアポトーシス造影剤に対するニーズが今なお存在する。
【特許文献1】国際公開第99/67284号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/89584号パンフレット
【非特許文献1】Blankenberg et al, J.Nucl.Med., 40, 184-191 (1999)
【非特許文献2】Reutelingsperger et al, J.Immunol.Meth., 265 (1-2), 123-32 (2002)
【非特許文献3】Haberkorn et al, Nucl.Med.Biol., 28, 793-798 (2001)
【非特許文献4】Bauer et al, J.Nucl.Med., 46(6), 1066-1074 (2005)
【非特許文献5】Fischer et al, Cell Death Diff., 10, 76-100 (2003)
【非特許文献6】Lahorte et al, Eur.J.Nucl.Med., 31, 887-919 (2004)
【非特許文献7】Thornberry et al, Science 281, 1312-16, (1998)
【非特許文献8】Thornberry et al, J.Biol.Chem., 272(19), 17907-17911, (1997)
【非特許文献9】Cohen et al, Biochem. J. 326, 1-16 1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
カスパーゼは非常に特異的なプロテアーゼであって、ペプチドのアスパラギン酸部分の後における開裂が絶対的な要件であることを示す(Thornberry et al,Science 281,1312−16,(1998))。切れやすいアミド結合はペプチド配列中のアスパラギン酸残基(又は「P1残基」)のα−カルボキシル基をペプチドのC末端方向で次のアミノ酸と結合するアミド結合である。切れやすいアミド結合のN末端側における少なくとも4つのアミノ酸の存在も、効果的な触媒作用に必要である。好適なテトラペプチド認識モチーフはカスパーゼごとに著しく異なる(Thornberry et al,J.Biol.Chem.,272(19),17907−17911,(1997))。
【0013】
現在までヒトでは最低14種類のカスパーゼが同定され、カスパーゼ−1、カスパーゼ−2などと命名されている。カスパーゼは主に、配列WEHDを認識するグループIカスパーゼ(例えばカスパーゼ−1、−4及び−5)、配列DExDを認識するグループIIカスパーゼ(例えばカスパーゼ−2、−3及び−7)、配列(L/V)ExDを認識するグループIIIカスパーゼ(例えばカスパーゼ−6、−8及び−9)の3つに分類される。カスパーゼは活性化機構に基づき以下の通りに分類される。カスパーゼ−8及び−9などの開始因子、カスパーゼ−3、−6及び−7などのエフェクタ、カスパーゼ−1、−4、−5、−11、−12及び−13などの炎症誘発酵素。
【0014】
カスパーゼ−3ではDExDのxはA、P、L又はV(慣習的なアミノ酸一文字表記)でありうる(Cohen et al,Biochem.J.326,1−16(1997))。現在までに、イメージング部分で標識した合成カスパーゼ−3基質が、特に過剰アポトーシスなど異常なアポトーシスが関与する哺乳類の生体中における上記疾病のインビボイメージングに有用な画像診断剤であることが見出されている。該イメージング部分は放射性であって、γ線放射性ハロゲン又は陽電子放射性非金属である。
【0015】
本発明はCPP32としても公知で、29kDaのシステインプロテアーゼでもあるカスパーゼ−3の基質に関する。基質を用いるアプローチの主要な利点はシグナル増幅の可能性である。すなわち放射性識別カスパーゼ−3基質はアポトーシスの細胞に分配され、次いで活性化カスパーゼ−3よって切断され、切断された放射性識別断片がアポトーシス細胞中で保持される。活性化カスパーゼ−3は細胞のアポトーシスカスケードの間に複数の基質を切断できるため、この方法はトレーサーシグナルの顕著な増幅をもたらし、より良好な標的/バックグラウンド比率を与える。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の態様では、本発明は次式Iで表す標識カスパーゼ−3基質を含んでなる造影剤を提供する。
【0017】
【化1】

【0018】
式中、Z1はX1のN末端又はAsp残基に結合し、H又は代謝阻害基であって、X1はインビボで哺乳類細胞の外部から内部への細胞膜輸送を可能にする4〜20アミノ酸の細胞膜透過性リーダーペプチド配列であって、Xaa1はGlu(R3)又はMetであって、Xaa1がMetのときXaa2はVal又はGlnであって、Aspはアスパラギン酸であって、−(A)n−はリンカー基であって、Aが各々独立に−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4-8シクロヘテロアルキレン基、C4-8シクロアルキレン基、C5-12アリーレン基又はC3-12ヘテロアリーレン基、アミノ酸、糖又は単分散ポリエチレングリコール(PEG)構成単位であって、式中、Rは各々独立にH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシアルキル又はC1-4ヒドロキシアルキル基から独立に選択され、R1、R2及びR3は独立にアミノ酸Asp又はGlu残基のカルボキシル側と結合するR’基であって、式中、各R’はH、C1-8アルキル、C2-8アルコキシアルキル、C5-12アリール又はC5-16アラルキル基から選択され、m1は0又は1であって、nは0〜10の整数であって、IMはγ線放射性ハロゲン又は陽電子放射性非金属を含んでなるイメージング部分であって、哺乳類生体内への標識カスパーゼ−3基質の投与の後でイメージング部分が非侵襲性の方法で外部から検出できる。Asp(R1)−Xaal−Xaa2−Asp(R2)はカスパーゼ−3のテトラペプチド基質モチーフであって、すなわち本発明の造影剤はイメージング部分で標識した合成カスパーゼ−3基質を含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
好適な造影剤はインビボで容易に代謝を受けず、すなわち最も好適にはヒトの場合60〜240分間のインビボ半減期を示す。造影剤は好適には腎臓を経て排出(すなわち尿排泄)される。好適には造影剤はアポトーシスの部分において少なくとも1.5、最も好適には少なくとも5、特に好適には少なくとも10のシグナル−バックグラウンド比率を呈する。生体内で非特異的に結合しているか又はフリーの造影剤におけるピークの半分のレベルのクリアランスは好適にはイメージング部分の放射性同位元素における放射性崩壊半減期以下の時間で行う。
【0020】
造影剤の分子量は好適には最高5000Daである。分子量は好適には150〜3000Da、最も好適には200〜1500Da、特に好適には300〜800Daである。
【0021】
カスパーゼ−3は他のカスパーゼと比較し高レベルで発現し、ほとんどすべての組織で他のグループIIカスパーゼと比較し高い触媒活性を示す。しかしカスパーゼ−3はアポトーシスの間は活性型としてのみ発現する。このことは、本発明の標識基質がノイズに対する良好なシグナルによってアポトーシス疾患における現実的な造影剤となることの基礎になる。
【0022】
カスパーゼが細胞内プロテアーゼであるため、本発明の造影剤は良好な細胞膜透過性を示す。これは2つの方法又はそれらの組み合わせにより実現できる。第1に、それらが遊離酸としてではなくむしろエステルとして存在するとき、酸性基(例えばカルボン酸官能基)を有するペプチドは細胞透過率が上昇する。これらのエステルはR’がHでないとき、式IのR1、R2及びR3基に対応する。さらに好適でない薬物動力学を生じさせる細胞透過性の度合対親油性の度合は用いるエステルの性質を変化させることによって微調整できる。一旦造影剤が細胞膜を透過すると細胞中の異なるエステラーゼの存在により所望の形の遊離酸を遊離させる。そこで、好ましい実施形態では、少なくとも1つのR1、R2及びR3がC1-8アルキル基である。好適にはR1、R2及びR3基のうちの2つ以上がC1-8アルキル基である。R1、R2又はR3がC1-8アルキル基であるとき、好適なアルキル基はメチル、シクロヘキシル及びヘプチル基であって、最も好適にはメチル及びシクロヘキシル基である。
【0023】
第2に、細胞膜輸送を可能にするため本発明の造影剤は好適には下記で定められる「リーダー配列」(X1)を含んでなり、すなわちm1が好適には1である。リーダー配列はカスパーゼ−3基質ペプチドのN末端に結合する。本発明の「リーダー配列」(X1)基とは細胞膜輸送を容易にする4〜20アミノ酸からなるペプチドである。カスパーゼ−3が細胞内酵素であるためにこの点は重要であって、造影剤は細胞膜を透過できなければならない。そこで、リーダー配列はアポトーシス細胞に造影剤を輸送し、さらに未切断のペプチドを正常細胞(すなわち非アポトーシス細胞)から輸送するのに有用である。1つ以上のR1、R2又はR3がC1-8アルキル基であるとき、リーダー配列は造影剤の活性化カスパーゼ−3を含まない細胞からの排出を可能にするために有用ではあるが、エステル基が非特異性のエステラーゼによりなおも除去されうる。一旦エステルが加水分解されると、未切断の造影剤は十分に親油性でないためカスパーゼ−3を含まない細胞から排出されず、これにより非特異的な取り込みとなる。後者の役割がインビボで所望のイメージング部位で造影剤の選択的な標的/バックグラウンドの改善を助長し、リーダー配列の存在なぜ好適かを示すものである。
【0024】
「アミノ酸」という用語は、L−又はD型アミノ酸、アミノ酸アナログ(例えばナフチルアラニン)をいうか、又はアミノ酸模倣体であって天然又は純粋な合成品であってもよく、光学的に純粋、すなわち単一の鏡像異性体及びキラル体であってもよく、又は鏡像異性体の混合物であってもよい。従来のアミノ酸の3文字又は1文字省略表記を本明細書で用いる。好適には本発明のアミノ酸は光学的に純粋である。好適なリーダー配列であるペプチドは当分野で周知であって、タキプレシン誘導体、プロテグリン誘導体、例えばポリArg配列などの細胞膜透過性モチーフ、β−ペプチド様のβ−(Val−Arg−Arg)n、又はウイルス蛋白の透過モチーフ(例えばHIV−I Tatタンパク質の基本ペプチド[Fawell et al,PNAS,91;664−68(1994)]に基づくモチーフ)が挙げられ、使用できる。β−ペプチドはα−アミノ酸と対照的にβ−アミノ酸残基(すなわち主鎖に1つ余分に−CH2−を有する)から構成され、タンパク質分解に対してより安定で、確立された二次構造を形成する(T.B.Potocky et al,J Biol Chem.,278(50),50188−94(2003)を参照。本明細書で援用する。)。具体的な「リーダー配列」及び参照を下記の表1にそれぞれ示す。
【0025】
【表1】

【0026】
「リーダー配列」はインビボでは生物学的ターゲッティングを与えないが、インビボでバックグラウンド器官からのより急速なクリアランスを助長できる。例えば99mTc標識Tatペプチドはインビボで他の放射性識別ペプチドより急速な腎クリアランスを呈することが示されている(Polyakov et al,Bioconj.Chem.,U,762−771(2000))。
【0027】
好適なリーダー配列のペプチドはTatペプチド、タキプレシン誘導体及びプロテグリン誘導体である。特に好適なリーダー配列はGammon他によって記載され(Bioconj.Chem.,14,368−376(2003))、RKKRR−Orn−RRR、RRRRRRRRR及びβ−(VRR)4(Ornはオルニチン)が挙げられる。
【0028】
「代謝阻害基」(Z1)という用語はアミノ末端でのペプチド又はアミノ酸のインビボ代謝を阻害又は抑制する生物学的に適合性の基をいう。かかる基は当業者に周知で、好適にはペプチドのアミン末端において、アセチル基、Boc(Bocはtert−ブチルオキシカルボニル基である)、Fmoc(Fmocはフルオロエニルメトキシカルボニル基である)、ベンジルオキシカルボニル基、トリフルオロアセチル基、アリルオキシカルボニル基、Dde(すなわちl−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル)基又はNpys(すなわち3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)基から選択する。親油性の比較的高いZ1基には、エステル基がインビボで非アポトーシス細胞の細胞内のエステラーゼで切断された場合であっても造影剤が細胞膜を透過するのに十分な親油性を未だ有するという利点が存在する。これは非アポトーシス細胞の好適でない非特異的な取り込みを最小限にするのに有用である。そこで、ペプチドのN末端での好適な代謝阻害基はアセチル(m1=1のとき)及びベンジルオキシカルボニル基(m1=0のとき)である。
【0029】
「標識」という用語はイメージング部分を含む又はイメージング部分を付加的な分子種として結合した官能基のことをいう。官能基がイメージング部分を含むとき、「イメージング部分」は化学構造の一部を形成し、天然における濃度を顕著に越えるレベルで前記同位元素を有する放射性であることを意味する。かかる同位元素の濃度の高さ又は濃縮の程度は、目的の同位元素濃度が天然と比較し少なくとも5倍、好適には少なくとも10倍、最適には少なくとも20倍、理想的には少なくとも50倍であるか、又は目的の同位元素の濃度が90〜100%のレベルで濃縮されている。かかる官能基の例としては、11Cを高濃度で有するCH3基、及び18F原子を高濃度で有するフルオロアルキル基が挙げられ、イメージング部分が化学構造中で11C又は18Fで同位元素標識されている。放射性同位体の3H及び14Cは好適なイメージング部分でない。
【0030】
イメージング部分がγ線放射性ハロゲンであるとき、放射性ハロゲンは好適には123I、131I又は77Brから選択する。好適なγ線放射性ハロゲンは123Iである。イメージング部分が陽電子放射する放射性非金属であるとき、造影剤は陽電子放射線断層撮影(PET)に好適である。かかる陽電子放射体として好適なものとして11C、13N、17F、18F、75Br、76Br又は124Iが挙げられる。好適な陽電子放射性非金属は11C、13N、124I及び18F、特に11C及び18F、最適には18Fである。
【0031】
イメージング部分は好適には陽電子放射する放射性非金属である。PETイメージング部分の使用は具体的には以下の技術的利点を有する。(i)機能的(PET)及び解剖学的(CT)画像の簡便な共同登録を可能にして診断情報の質を高めるPET/CTカメラの開発、(ii)PET画像の定量化の簡便化により、進行度及び治療をモニターするための正確なアセスメントを可能にすること、(iii)感度を向上させ、より小さい標的組織の視覚化を可能にすること。
【0032】
式Iのリンカー基−(A)n−の1つの役割はカスパーゼ−3基質の活性部位からIMを隔離させることと想定する。イメージング部分が比較的大きい(例えば放射性ヨウ素原子)ときにこれは特に重要であって、その結果酵素との相互作用が妨害されない。これは(例えば単純なアルキル鎖)の組合せによって柔軟に実現でき、その結果大きな基は活性部位から離れて自身を位置させる自由度及び/又は剛性を有することとなり、例えばシクロアルキル又はアリール基のスペーサの存在により活性部位から間隔をおいてIMを配置することが挙げられる。リンカー基の性質は造影剤の体内での分布を変化させるためにも使用できる。例えばリンカーへのエーテル基の導入により血漿蛋白質との結合の最小限化を助長する。−(A)n−がポリエチレングリコール(PEG)の構造ブロック又は1〜10個のアミノ酸残基のペプチド鎖を含むとき、リンカー基はインビボでの薬物動態及び造影剤の血液クリアランス率を変化させるように機能しうる。かかる「バイオ修飾因子」リンカー基はバックグラウンド組織(例えば筋肉又は肝臓及び/又は血液)からの造影剤のクリアランスを加速でき、それによってバックグラウンド干渉が減少し、より優れた診断画像を提供する。バイオ修飾因子リンカー基は例えば特定の排出経路を指定する形で用いてもよく、例えば肝臓経由ではなく腎臓経由としてもよい。
【0033】
「糖」という用語は単糖、二糖又は三糖のことをいう。好適な糖としてはグルコース、ガラクトース、マルトース、マンノース及びラクトースが挙げられる。糖はアミノ酸と容易に結合できるように任意に官能化してもよい。すなわち、例えばアミノ酸のグルコサミン誘導体をペプチド結合を介して他のアミノ酸とコンジュゲートできる。アスパラギン(Novabiochem社から市販)のグルコサミン誘導体はこの一例である。
【0034】
【化2】

【0035】
式中、−(A)n−が1〜10個のアミノ酸残基のペプチド鎖を含むとき、アミノ酸残基は好適にはグリシン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はセリンから選択される。−(A)n−がPEG部分を含むとき、好適には式IA又はIBの単分散PEG様構造のオリゴマー化で得られる単位、式IAの17−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカノイン酸を含む。
【0036】
【化3】

【0037】
式中、pは1〜10の整数であって、C末端の単位(*)はイメージング部分と結合する部分である。あるいは、式(IB)のプロピオン酸の酸誘導体を主成分としたPEG様構造を使用できる。
【0038】
【化4】

【0039】
式中、pは式IAで定義した通りであり、qは3〜15の整数である。式(IB)においてpは好適には1又は2であって、qは好適には5〜12である。
【0040】
リンカー基がPEG又はペプチド鎖を含まないとき、好適な−(A)n−基は結合した原子の骨格鎖を有し、それは2〜10個の原子、最も好適には2〜5個の原子、特に好適には2又は3個の原子により−(A)n−部分を構成する。2つの原子による最小限のリンカー基骨格鎖はイメージング部分が良好に切り離される効果を付与し、いかなる望ましくない相互作用をも最小限化できる。
【0041】
アルキレン基又はアリーレン基のような非ペプチドリンカー基はコンジュゲートしたカスパーゼ基質との顕著な水素結合による相互作用を生じさせない効果を有し、その結果リンカーは基質の周囲を囲むことがない。好適なアルキレンスペーサ基は−(CH2d−であって、dが2〜5である。好適なアリーレンスペーサ基を次式で表す。
【0042】
【化5】

【0043】
式中、a及びbは独立に0、1又は2である。
【0044】
リンカー基−(A)n−は好適にはジグリコール酸部分、グルタル酸、コハク酸、ポリエチレングリコールベースの単位又は式IA又はIBのPEG様の単位を含んでなる。
【0045】
本発明のリンカー基は好適には1〜10個のアミノ酸残基のペプチド鎖を含んでなり、該アミノ酸残基は好適にはグリシン、リジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はセリンから選択される。かかる好適なアミノ酸はグリシン及びリジンである。
【0046】
本発明ではイメージング部分(IM)が特異的な位置に結合することが必要である。P1位置でのAsp残基は一般にカスパーゼの基質認識及び選択性に重要であって、また4つのアミノ酸Asp−Glu−Val−Asp(DEVD)及びAsp−Met−Gln−Asp(DMQD)がカスパーゼ−3の特異的な認識モチーフであることが確認されているため、それが選択される。したがって、基質活性を保持する場合はイメージング部分と結合するそれらのアスパラギン酸残基のカルボン酸側鎖の修飾は好適でない。また上記の通りイメージング部分は好適にはカスパーゼ−3により切断されやすいアミド結合のC末端側に存在する。カスパーゼ−3による開裂の後、IMを含んでなる造影剤の断片は生理的pHで全体として正に荷電して親水性が高まり、細胞膜を横断できなくなるため、アポトーシス細胞中にトラップされる。特異的な酵素活性のため、イメージングシグナル又はバックグラウンドに対するシグナルの比率が強化される。該正電荷により、ほとんどが負に荷電している細胞内タンパク質とイメージング部分との集合が促進されるとも考えられる。(カスパーゼ開裂の後遊離する)造影剤として、(A)nのアミノ酸が生理的pHでプロトン化される基によって置換したリンカー基(A)nを含むものを選択したとき、該特徴が強化されると考えられる。カスパーゼ−3の特定のヨウ素源及びクロム源基質は市販されており、Z−DEVD−[ローダミン110](Cambridge Biosciences社)及びAc−DEVD−[p−ニトロアニリン](Calbiochem社)などが挙げられる。本発明のペプチド含有カスパーゼ−3基質及びリーダー配列はP.Lloyd−Williams、F.Albericio及びE.GiraldのChemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins,CRC Press,1997に記載のように従来の固相合成によって得てもよい。本発明の造影剤は下記の第2実施形態で説明するように前駆体との反応によって好適に調製する。
【0047】
第2の態様では、本発明は第1の実施形態の造影剤の調製に適する前駆体を提供し、それは次式IIの化合物を含んでなる。
【0048】
【化6】

【0049】
式中、Z1、X1、m1、R1、Xaa1、Xaa2、Asp、R2、A及びnは上記で定義した通りであって、Y1は官能基又は置換基を含んでなる非放射性基であって、陽電子放出性放射性非金属又はγ線放出性放射性ハロゲン源と反応して式(I)の造影剤を与える。Z1、X1、m1、R1、Xaa1、Xaa2、Asp、R2、A及びnの好ましい実施形態は上記の第1の態様で記載したものと同様である。
【0050】
「前駆体」は最適にはカスパーゼ−3基質の非放射性誘導体を含んでなり、それは所望の非金属放射性同位元素の便利な化学的形態を有する化学反応が最小限のステップ(理想的には単一ステップ)で実施できるように設計され、また所望の放射性生成物を得るための特別な精製を必要としない(理想的にはさらなる精製を行わない)。かかる前駆体は合成物であって、良好な化学純度で簡便に得ることができる。「前駆体」はカスパーゼ−3基質の特定の官能基への保護基(PGP)を任意に含んでいてもよい。好適な前駆体はBolton,J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)に記載されている。
【0051】
「保護基」(PGP)という用語は望ましくない化学的反応を阻害又は抑制する基を意味するが、それは残りの分子が修飾されない程のマイルドな条件下で問題の官能基から隔離されうる程度の十分な反応性を有するように設計する。脱保護の後に所望の生成物を得る。保護基は当業者に周知で、アミン基においてはBoc(Bocはtert−ブチルオキシカルボニル基である)、Fmoc(Fmocはフルオロエニルメトキシカルボニル基である)、ベンジルオキシカルボニル基、トリフルオロアセチル基、アリルオキシカルボニル基、Dde(すなわちl−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル)基又はNpys(すなわち3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)基から、及びカルボキシル基においてはメチルエステル、tert−ブチルエステル又はベンジルエステルから好適に選択される。水酸基における好適な保護基はメチル、エチル又はtert−ブチル基、アルコキシメチル又はアルコキシエチル基、ベンジル、アセチル、ベンゾイル、トリチル(Trt)又はトリアルキルシリル(例えばtert−ブチルジメチルシリル)基である。チオール基における好適な保護基はトリチル及び4−メトキシベンジル基である。保護基の使用に関してはさらに’Protective Groups in Organic Synthesis’,Theorodora W.Greene and Peter G.M.Wuts,(Third Edition,John Wiley&Sons,1999)に記載されている。
【0052】
好適な前駆体は、Y1が直接の求電子的又は求核的なハロゲン化を受けるか、標識アルキル化剤(アルキル基又はハロゲン化フルオロアルキル基、トシル酸、トリフレート(すなわちトリフルオロメタンスルホン酸)、メシル酸、マレイミド、又は標識N−ハロアセチル部分から選ばれる)により簡便にアルキル化を受けるか、チオール部分をアルキル化してチオエーテル結合を形成するか、又は標識活性化エステルアルデヒド又はケトンにより縮合を受ける誘導体のいずれかを含んでなるものである。第1のカテゴリの例としては、(a)トリアルキルスタンナン(例えばトリメチルスタンニル又はトリブチルスタンニル)又はトリアルキルシラン(例えばトリメチルシリル)などの有機金属誘導体、(b)ハロゲン置換のための非放射性ヨウ化アルキル又は臭化アルキル、及び求核ハロゲン化のためのアルキル化トシレート、メシラート又はトリフレート、(c)求電子ハロゲン化に向けて活性化した芳香環(例えばフェノール)、及び求核ハロゲン化(例えばヨウ化アリール、ジアゾニウムアリール、アリールトリアルキルアンモニウム塩又はニトロアリール誘導体)に向けて活性化した芳香環、が挙げられる。
【0053】
簡便にアルキル化を受ける好適な誘導体はアルコール、フェノール、アミン又はチオール基、特にチオール及び立体障害のない第1又は第2級アミンである。チオール含有放射性同位元素反応物をアルキル化する好適な誘導体はマレイミド誘導体又はN−ハロアセチル基である。後者の好適な例としてはN−クロロアセチル及びN−ブロモアセチル誘導体が挙げられる。標識活性エステル部分により縮合を受ける好適な誘導体はアミン、特に立体障害のない第1又は第2級アミンである。標識アルデヒド又はケトンにより縮合を受ける好適な誘導体はアミノオキシ及びヒドラジド基であって、特にアミノオキシ誘導体である。
【0054】
「前駆体」は適宜固体の支持マトリックスに共有結合させて供給してもよい。該方法では、開始材料及び不純物が残留していても、溶液中で所望の造影剤生成物が固相と密接な結合を形成する。18F−フッ化物を用いた固相での求電子的フッ素化に用いる前駆体は国際公開第03/002489号に記載されている。18F−フッ化物を用いた固相での求核的フッ素化に用いる前駆体は国際公開第03/002157号に記載されている。そこで、キットは最適に構成された自動合成機に接続できるカートリッジを含んでいてもよい。カートリッジは固体支持体に結合した前駆体とは別に、不必要なフッ化物イオンの除去のためのカラム、反応混合物を蒸発させて生成物を必要に応じて製剤化可能にできるように接続した好適な容器を含んでいてもよい。合成に必要な試薬及び溶媒及び他の消耗品を、放射線濃度、体積、送達回数に関する顧客の要求を満たすように合成機を操作できるようにするソフトウェアを入力されたコンパクトディスクと共に梱包してもよい。簡便には、キットのすべての構成要素は操作中のコンタミネーションの可能性を最小にするために使い捨てのタイプであって、滅菌され、品質保証される。
【0055】
イメージング部分が放射性ハロゲン(例えばヨウ素)を含むとき、Y1は好適には非放射性前駆体ハロゲン原子(例えばヨウ化若しくは臭化アリール(放射性ヨウ素置換のため))、活性化前駆体アリール環(例えばフェノール若しくはアニリン基)、イミダゾール環、インドール環、有機金属化合物前駆体化合物(例えばトリアルキルスズ若しくはトリアルキルシリル)、又はトリアゼンなどの有機前駆体若しくはヨウ素塩などの求核置換に良好な離脱基を含んでなる。放射性ハロゲン(123I及び18Fを含む)を導入する方法はBolton(J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002))に記載されている。好適な前駆体アリール基であって放射性ハロゲン、特にヨウ素が結合できるものの例は次式で表す。
【0056】
【化7】

【0057】
両方とも芳香環上への簡便な放射性ヨウ素置換を可能にする置換基を含んでなる。例えば放射性ヨウ素を含んでなる他の置換基は放射ハロゲン置換を介した直接のヨウ素化によって合成できる。
【0058】
【化8】

【0059】
イメージング部分がヨウ素の放射性同位元素を含んでなるとき、放射性ヨウ素原子が好適にはベンゼン環又はビニル基のような芳香環に直接共有結合の形成を介して結合するが、その理由は飽和脂肪族システムに結合するヨウ素原子がインビボ代謝され、それ故放射性ヨウ素が失われる傾向があることが公知であるからである。フェノールのような活性化アリール環と結合するヨウ素原子では、特定の条件下での限定的なインビボ安定性が確認されている。
【0060】
イメージング部分が123I及び18Fのような放射性ハロゲンを含んでなるとき、Y1は好適には放射性同位元素識別された合成素子と選択的に反応する官能基を含んでなり、それによりコンジュゲーションにより式(I)の造影剤を与える。「放射性同位元素識別された合成素子」という用語は小さい合成有機分子であって、(i)放射性標識が安定な様式で合成素子と結合するように既に放射性標識され、(ii)放射性標識される所望の化合物の一部である対応する官能基によって選択的及び特異的に反応するように設計された官能基を含んでなるものを意味する。この方法は造影剤と比較し放射性標識のインビボ安定性が改善され、直接放射性標識する方法と比較し放射性標識のインビボ安定性が改善された造影剤を生成する良好な機会を与える。
【0061】
合成素子による方法によっても、イメージング部分の導入に用いられる条件に大きな柔軟性を持たせることが可能となる。これは式(I)中のR1からR3基の1つ以上がC1-8アルキルであるときに重要であって、なぜならこれらの場合、本発明のカスパーゼ−3基質は基本的な条件下で顕著な不安定性を呈するからである。さらに、それらは基本的な条件下では従来の求核置換反応を経た直接的な標識方法には好適でない。
【0062】
本発明の造影剤の生成に適する前駆体の例としては、式(II)のY1がアミノオキシ基、チオール基、アミン基、マレイミド基又はN−ハロアセチル基を含んでなるものが挙げられる。好適な選択的標識化方法は、Poethko他によって(J.Nuc.Med.45892−902の(2004))教示されるようにペプチドのアミノオキシ誘導体を前駆体として用いることである。かかる前駆体は次いで酸性条件下(例えばpH2〜4)で放射性ハロゲン化−ベンズアルデヒド合成素子と縮合し、安定はオキシムエーテル結合を介して所望の放射性ハロゲン化メージング剤を提供する。そこで、Y1は好適には式−NH(C=O)CH2−O−NH2のアミノオキシ基を含んでなる。さらに好適な標識化の方法では、Y1がチオール基を含んでなるとき、それを放射ハロゲン化マレイミドを含む合成素子により中性条件(pH6.5〜7.5)下でアルキル化してチオール含有ペプチド基質を標識する(例えばToyokuni他によって教示されるBioconj.Chem.IA,1253−1259(2003)を参照)。
【0063】
別の好適な標識化の方法では、Y1がアミン基を含んでなるとき、pH7.5〜8.5で合成素子N−スクシニミジル4−[123I]ヨード安息香酸エステルと縮合し、アミド結合で連結された生成物を与える。標識ペプチドに対するN−ヒドロキシスクシニミドエステルの使用は、Vaidyanathan他のNucl.Med.Biol19(3)275−281(1992)、及びJohnstrom他のClin.Sci.,103(Suppl.48),45−85(2002)に教示される通りである。
【0064】
式(I)のR1〜R3がC1-8アルキル基であるとき、放射ハロゲンによる造影剤前駆体の標識方法で特に好適なのはY1がアミノオキシ基を含んでなるときである。
【0065】
モノヨードチロシン(より広義にはジヨードチロシン)のインビボでの脱ヨウ素化が若干の化合物において観察されている。D−チロシン誘導体の使用法はこの問題を解決する1つの方法であると考えられる。このインビボ脱ヨウ素化の問題を解決すると考えられる代替的な放射性ヨウ素の導入方法を表2に記載する。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
イメージング部分がフッ素の放射性同位元素を含んでなるとき放射フッ素原子はフルオロアルキル又はフルオロアルコキシ基の一部を形成してもよく、これはフッ化アルキルはインビボ代謝に対して抵抗性であるからである。
【0069】
イメージング部分がフッ素の放射性同位元素(例えば18F)を含んでなるとき、放射性ハロゲン化は良好な離脱基(例えば臭化アルキル、メシル酸アルキル又はトシル酸アルキル)を有する好適な前駆体と18F−フッ化物との反応を用いる直接標識化を介して実施してもよい。あるいは放射フッ素原子は芳香環(例えばベンゼン環)に直接共有結合を形成して結合してもよい。かかるアリール環の前駆体は最適には活性化ニトロアリール環、アリールジアゾニウム塩又はアリールトリアルキルアンモニウム塩を含んでなる。しかし生体分子の直接の放射フッ素化は感受性が高い官能基にはしばしば有害であるが、それはこれらの求核反応が強い塩基性条件下で極性非プロトン性溶媒中で無水[18F]フッ化物イオンによって実施されるからである。R1〜R3がC1-8アルキル基である式(II)の前駆体も塩基性条件下で顕著な不安定性を示す。したがって本発明の造影剤の前駆体の直接の放射フッ素化は好適な標識化方法でない。放射フッ素化の好適な方法の例は、上記の一般的な放射ハロゲン標識化において説明したような式(II)の造影剤の前駆体に選択的にコンジュゲートする放射性標識された合成素子の使用を含む。
【0070】
18Fはアルキル化剤(例えばN−(CH2318Fを与える18F(CH23OMs(Msはメシル酸である)を用いたアミン前駆体のN−アルキル化、18F(CH23OMs、18F(CH23OTs又は18F(CH23Brを用いた水酸基のO−アルキル化、又は18F(CH23OMs又は18F(CH23Brを用いたチオール基のS−アルキル化によって導入できる。N−ハロアセチル基を18F(CH23OH反応物でアルキル化して−NH(CO)CH2O(CH2318F誘導体を得ること、又は18F(CH23SH反応物でアルキル化して−NH(CO)CH2S(CH2318F誘導体を得ることによっても、18Fを導入できる。18Fは18F(CH23SHとマレイミド含有前駆体との反応によっても導入できる。アリール環の場合、アリールジアゾニウム塩、アリールニトロ化合物又はアリール第四級アンモニウム塩の18F−フッ化物による求核置換が、造影剤の前駆体へのコンジュゲーションに有用なアリール−18F標識合成素子の好適な合成経路である。
【0071】
Y1が第1級アミン基を含んでなる式(II)の前駆体は、Kahn他[J.Lab.Comp.Radiopharm.45,1045−1053(2002)]及びBorch他[J.Am.Chem.Soc.93,2897(1971)]に教示される通り、18F−CgH4−CHOを用いた還元的アミノ化により18F標識できる。この方法をアリール一級アミン(例えばフェニル−NH2又はフェニル−CH2NH2基を含んでなる化合物)に有利に適用できる。
【0072】
特に好適な式(II)の前駆体の18F−標識方法では、Y1が酸性条件下(例えばpH2〜4)で18F−C64−CHOと縮合する式−NH(C=O)CH2−O−NH2のアミノオキシ基を含んでなる。式(I)のR1〜R3及び(II)がC1-8アルキルなどであるときにこの方法は特に有用で、それによって前駆体が特に塩基感受性になる。18F標識誘導体の合成経路に関するさらなる詳細はBolton,J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)に記載されている。具体的な前駆体及び関連する生成物の例を表3に示す。
【0073】
【表4】

【0074】
【表5】

【0075】
第3の態様では、本発明は哺乳類の投与に適する形態で生体適合性担体と共に上記の造影剤を含んでなる放射性医薬組成物を提供する。「生体適合性担体」とは流体、特に液体であって、組成物が生理的に許容できる(すなわち毒性又は過度の不快を伴わずに哺乳類の体内に投与できる)態様で造影剤を懸架又は溶解できるものである。生体適合性担体としては、好適には注射用の滅菌済、パイロジェンフリーの水注射可能な担体液、食塩水(注射用の最終製品が等張となるように好適にバランスが保持されるのが好適)などの水溶液、1つ以上の浸透性調整物質(例えば生体適合性の反イオンと血漿陽イオンの塩)、糖(例えばグルコース又は蔗糖)、糖アルコール(例えばソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えばグリセロール)又は他の非イオン性多価アルコール性物質(例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液が挙げられる。生体適合性担体は好適には注射用のパイロジェンフリーの水又は等張の生理食塩水である。
【0076】
かかる放射性医薬は好適には皮下注射針を用いた単一回又は複数回の穿刺に好適なシール(例えばカシメ圧着隔壁シールによる閉鎖)が設けられた容器中にて、滅菌状態が完全に維持された状態で供給する。かかる容器は1回分又は複数回分の患者投与量を含んでもよい。好適な複数回分の投与容器は複数の患者投与量を含む単一のバルクバイアル(例えば10〜30cm3の体積中)を含んでなり、それによると調製物の有効期間の間に様々な時間間隔で1回患者投与量を臨床状況に合わせて臨床グレードシリンジにこのように注入できる。予め充填済のシリンジは1回分のヒト投与量又は「単回投与量」を含むように設計され、好適には臨床用途に適する使い捨て又は他のシリンジである。予め充填済のシリンジはオペレータを放射線量から保護するためにシリンジシールドを任意に具備してもよい。かかる好適な放射性医薬品シリンジシールドは当分野で周知で、好適には鉛又はタングステンを含んでなる。
【0077】
下記の第4の実施形態で記載するように、本発明の放射性医薬品はキットから調製してもよい。あるいは所望の滅菌済生成物を提供するために放射性医薬品を無菌製造条件下で調製してもよい。放射性医薬品を非無菌条件下で調製し、続いて例えばガンマ線照射、オートクレーブ、乾熱滅菌又は化学的処理(例えばエチレンオキシド)などの最終的な滅菌工程を行ってもよい。好適には本発明の放射性医薬品はキットから調製される。
【0078】
第4の態様では、本発明は第3実施形態の放射性医薬組成物の調製用キットを提供する。かかるキットは第2の実施形態の「前駆体」を、好適には滅菌済パイロジェンフリーの形で含み、その結果、放射性同位元素の滅菌済供給源による反応により最小限数の操作により所望の放射性医薬品を与える。かかる考慮は、放射性同位元素が比較的短い半減期を有する放射性医薬品の場合や、放射薬剤師による取り扱いの容易さ及びそれによる放射線量の減少において特に重要である。そこで、かかるキットの再構成に用いる反応培地は上記の通り好適には「生体適合性担体」であって、最も好適には水である。
【0079】
好適なキット容器は完全な滅菌状態及び/又は放射線の安全性を保守できる密封容器、加えて任意に不活性のヘッドスペースガス(例えば窒素又はアルゴン)を含んでなり、一方でシリンジによって溶液の添加及び吸引が可能である。かかる好適な容器は隔壁で密閉されたバイアルであって、オーバーシール(通常アルミニウム)により圧着して気密密封する。かかる容器にはさらに、例えばヘッドスペースガスの交換又は溶液からの脱ガスのため、必要に応じて閉鎖が真空に耐えられるという利点がある。
【0080】
非放射性キットはさらに放射保護剤、抗菌性防腐剤、pH調節剤又は充填材などの付加的な部材を任意に含んでいてもよい。
【0081】
「放射保護剤」という用語は、高反応性遊離ラジカル(例えば水の放射線分解に起因する酸素含有遊離ラジカル)をトラップすることによって分解反応(例えば酸化還元反応)を阻害する化合物を意味する。本発明の放射保護剤は好適にはアスコルビン酸、パラアミノ安息香酸(すなわち4−アミノ安息香酸)、ゲンチジン酸(すなわち2,5−ジヒドロキシ安息香酸)及びそれらの生体適合性陽イオンとの塩類から選択される。
【0082】
「生体適合性陽イオン」という用語はイオン化し負荷電基と塩を形成する正荷電反イオンを意味し、前記正荷電反イオンは哺乳類の生体(特に人体)にとって非中毒性であって、投与にも適する。好適な生体適合性陽イオンの例としてはアルカリ金属のナトリウム又はカリウム、アルカリ土類金属のカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンが挙げられる。好適な生体適合性陽イオンはナトリウム及びカリウム、最も好適にはナトリウムである。「抗菌性防腐剤」という用語はバクテリア、酵母又は黴などの潜在的に有害な微生物の成長阻害剤を意味する。抗菌性防腐剤は投与量に応じて幾つかの抗菌特性を呈してもよい。本発明の抗菌性防腐剤の主要な役割は再構成後の放射性医薬組成物、すなわち放射性診断製品自体においていかなる種類の微生物の成長も阻害することである。しかし抗菌性防腐剤は再構成前に本発明の非放射性キットの1つ以上の構成要素における潜在的に有害な微生物の成長の阻害に任意に用いてもよい。好適な抗菌性防腐剤としてはパラベン(すなわちメチルエチルプロピル又はブチルパラベン又はそれらの混合物)、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールなどが挙げられる。好適な抗菌性防腐剤はパラベンである。
【0083】
「pH調節剤」という用語は再構成したキットのpHをヒト又は哺乳類の投与において許容できる限度(ほぼpH4.0〜10.5)範囲に確保するために有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。かかる好適なpH調節剤としてはトリシン、リン酸又はTRIS(すなわちトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)などの薬学的に許容される緩衝液、及び炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム又はそれらの混合物などの薬学的に許容される塩基が挙げられる。コンジュゲートを酸性塩の形で用いるとき、pH調節剤を別のバイアル又は容器に任意に設けてもよく、その結果、キットのユーザは多工程手順の一部としてpHを調節できる。
【0084】
「充填材」という用語は製造及び凍結乾燥の間の材料処理を容易にしうる薬学的に許容される増量剤を意味する。好適な充填材としては塩化ナトリウムなどの無機塩、及び蔗糖、マルトース、マンニトール若しくはトレハロース水溶性の糖又は糖アルコールが挙げられる。
【0085】
キットに用いる「前駆体」の好適な態様は上記の第2の実施形態で記載した通りである。キットに用いる前駆体は所望の滅菌済、パイロジェンフリーの材料を与えるために無菌製造条件下で用いてもよい。前駆体を非無菌条件下で調製し、続いて例えばガンマ線照射、オートクレーブ、乾熱滅菌又は化学的処理(例えばエチレンオキシド)などの最終的な滅菌工程を行ってもよい。好適には前駆体は滅菌済、パイロジェンフリーの形態で用いる。最も好適には滅菌済、パイロジェンフリーの前駆体は上記の通りに密封容器で用いる。キットの「前駆体」は好適には第2の実施形態で記載したように固体支持マトリックスに共有結合した形態で供給する。
【0086】
第5の態様では、本発明はカスパーゼ−3が関係する哺乳類の生体内の疾病状態をインビボ画像診断するための、第1の実施形態の造影剤の使用を開示し、その場合前記哺乳類に予め第3の実施形態の放射性医薬組成物を投与する。「予め投与された」という用語は臨床医が関与する、例えば造影剤を患者に静脈内注射で投与する手順が既に実施されたことを意味する。この実施形態はカスパーゼ−3が関係する哺乳類の生体内の疾病状態をインビボ画像診断するための診断用薬製造のための、第1の実施形態の造影剤の使用を含む。
【0087】
かかる非侵襲性のイメージングは異常なアポトーシスにおけるカスパーゼ−3に関するもので、多くの疾患における細胞死のモニタリングに有用である。アポトーシスのイメージングは心筋梗塞、悪性腫瘍及び移植拒絶などの、細胞増殖及びアポトーシスが顕著に見られる病理において貴重と考えられる。かかるイメージングはこれらの症状の化学療法的な薬物治療のモニタリングにおいても貴重である。
【0088】
アポトーシスが重要と考えられるが、アポトーシスの頻度が比較的珍しい例えばアルツハイマー病などの他の疾患では、入手できる細胞プールは小さく、視覚化がはるかに困難である。そこで、本発明のアポトーシスの造影剤はアポトーシスが例えば心筋梗塞悪性の腫瘍及び移植拒絶で見られるように比較的急激である病理において好適に適用できると考えられる。神経病及び悪性の低い腫瘍などの、アポトーシスがより慢性的である疾患の場合、不十分なアポトーシス細胞が上記のバックグラウンドとして表れる可能性がある。
【0089】
放射線療法、化学療法又は免疫療法を含む実質的にすべての癌治療は、それらの標的腫瘍細胞のアポトーシスの誘導を目的とする。アポトーシスのイメージングは腫瘍の治療効果の迅速かつ直接的な評価又はモニタリングを与える能力を有し、それにより癌患者を管理する方法が根本的に変わることもありうる。腫瘍が治療による応答を示している患者では、腫瘍中の高いアポトーシス反応による造影剤の顕著な取り込みが示されることが予期される。腫瘍がさらなる治療による応答を示していない患者は、その腫瘍への治療後の造影剤の取り込み量増加が見られないことによって同定してもよい。
【0090】
過度のアポトーシスは多くのヒト疾患を伴い、これらの多数の障害の進行におけるカスパーゼの重要性が示されている。そこで、本発明の造影剤は疾病状態のインビボ画像診断及び/又は治療モニタリングに有用であって、該疾病状態としては(a)急性障害(例えば心臓及び脳虚血状態/再灌流傷害(例えばそれぞれ心筋梗塞又は脳卒中)への反応、脊髄損傷、外傷性脳外傷、臓器移植拒絶、肝臓退化(例えば肝炎)、敗血症及び細菌性髄膜炎)、(b)慢性障害(例えば神経変性疾患(例えばアルツハイマー病、ハンチントン病、ダウン症候群、脊髄筋肉萎縮症、多発性硬化症、パーキンソン病)、免疫不全病(例えばHIV)、関節炎、アテローム性動脈硬化症及び糖尿病)が挙げられる。膀胱、胸部、大腸、子宮内膜、頭及び頚部、白血病、肺、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣、前立腺及び直腸などの癌のアポトーシスの誘発に用いる薬剤の有効性モニタリングも挙げられる。
【0091】
測定可能な疾患を有する癌患者への治療的介入の評価は幾つかの用途を有する。
・新規な抗癌剤の抗悪性活性の評価、
・有効な至適投与量の決定、
・新規な抗癌剤及び投薬計画の同定、
・既存の抗癌剤及び薬剤の組合せに関する至適投与量及び投薬計画の同定、
・癌患者の臨床試験により投与計画にたいする応答者及び不応答者への階層化のさらなる効率化、
・確立した治療的抗癌計画に対する個々の患者の反応の効率的かつタイムリーな評価。
【実施例】
【0092】
以下に詳述する非限定的な実施例により本発明を例示する。実施例1では化合物1〜22(図1参照)の合成法を記載する。実施例2〜8では好適な前駆体からの本発明の
123I標識化合物(それぞれ化合物2A、6A、8A、10A、14A、18A及び20A)の合成法を提供する。実施例9〜11では本発明のカスパーゼ−3基質の18F放射性識別に適する18F−標識化合物の合成法を提供する。実施例12では化合物2及び22のインビトロでの効果データを提供する。実施例13では化合物2、6及び8のインビボでの血漿安定性データを提供する。インビボ脱ヨウ素化が観察されたものの、本発明の上記説明における放射性フッ素化、又は他の放射性ヨウ素化による標識化方法は放射性標識のインビボ安定性の向上を与える。これらの方法はアニリン−、イミダゾール−又はインドール−誘導体の直接のヨウ素化の場合、アミノ−フェニルアラニン、ヒスチジン又はトリプトファンによるチロシン部分の置換を必要とする。さらなる変形例は、合成素子によるアプローチを用いて様々な合成経路による前駆体への放射性ヨウ素化フェニル合成素子のコンジュゲーション方法に関する。これらの化合物の実施例は表2に例示する。放射性ヨウ素化フェノール化合物はインビボ安定性の改善を与えると考えられるが、それは該標識化合物が放射性ヨウ素化チロシン含有ペプチドのような放射性ヨウ素化フェノール誘導体よりも脱ヨウ素化に対する感受性が低いからである。
【0093】
実施例1:化合物1〜22の合成
a)ペプチド合成
図1の化合物1〜22の配列に対応するペプチジル樹脂を、Rink Amide樹脂(NovaBiochem社、通常0.73mmol/gをロード)上で標準的な固相ペプチド化学合成(Barany et al,Int.J.Peptide Protein Research 3_0,705−739(1987))により合成した。アプライドバイオシステム(パーキンエルマー社)モデル433Aペプチド合成機を用いた。NMP中の2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウム−ヘキサフルオロリン酸(HBTU)/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)/ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)によって予め活性化したFmoc−アミノ酸(1mmolカートリッジ)の4倍モル過剰の1つのカップリング(2.5時間のカップリング周期)を用いて0.25mmolスケールで残基(カルボキシル末端から)を合成した。N−メチルピロリドン(NMP)中の20%のピペリジンを使用し、導電率をモニターしながらFmoc−脱保護を行った。洗浄溶媒をNMPとした。用いたアミノ酸側鎖保護基は、Asp、Gluの場合はtert−ブチル(tBu)又はシクロヘキシル(OcHex)基、Tyrの場合はtBu基、Lys及びOrnの場合はBoc基、並びにArgの場合は(2,2,5,6,7−ペンタメチルジヒドロベンゾフラン−5−スルホニル)(Pbf)基とした。Fmoc−127I−Tyr−OHを7−アザベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)−ホスホニウム−ヘキサフルオロホスフェート(PyAOP)の4−メチルモルホリン(NMM)を含むジメチルホルムアミド(DMF)により予め10分間活性化し、次いで手動の窒素バブリング装置(Wellings,D.A.,Atherton,E.(1997) in Methods in Enzymology(Fields,G.Ed),289,p.53−54,Academic Press,New York)を有するRinkアミド樹脂に添加した。上記の通りペプチドシンセサイザを用いてさらに鎖伸長を実施した。所望の配列の合成完了後、DMF中の20%ピペリジン溶液でペプチド樹脂を処置し、127I−ヨードチロシン側鎖上の未保護水酸基へのすべての望まないアシル化を逆反応させた。NMMの存在下でDCM中の無水酢酸又はベンジルクロロホルメート溶液を用いてペプチド樹脂のN末端の最終的なキャッピングを行った。
【0094】
b)樹脂からの脱保護及び開裂
手動窒素バブリング装置を用いてペプチド樹脂を2時間2.5%のトリイソプロピルシラン(TIS)及び2.5%の水を含むトリフルオロ酢酸(TFA)で処置し、ペプチドを樹脂から開裂して遊離させ、同時にペプチドからOcHexを除くすべての側鎖保護基を除去した。開裂させた混合物を濾過し、少量の純粋なTFAで洗浄した。濾液及び洗浄液の組み合わせを回転蒸発によって濃縮し、次いでジエチルエーテルで分散させ粗ペプチドを得た。沈殿物を遠心分離して単離し、エーテルで洗浄し、次いで50%ACN−0.1%aq TFAから凍結乾燥し粗生成物を得た。
【0095】
c)メチル化(化合物3、4、13、14、17、18)
典型的にはメチル化する粗ペプチド(1当量、20mg)を室温でメタノール(MeOH)(10mL)中の塩化チオニル(20当量)で処置した。60分後に反応混合物を減圧濃縮し、残りを50%ACN−0.1%aq TFAから凍結乾燥した。
【0096】
d)精製
粗ペプチドを調製的RP−HPLCで精製した。カラム(Phenomenex Luna C18 5μ、22×250mm)から、40分にわたり勾配を用いて10mL/分で溶出した。溶出緩衝液を、0.1%TFAを含む水及び0.1%のTFAを含むアセトニトリルとした。所望のピークフラクションをプールして凍結乾燥し、純粋な生成物を得た。
【0097】
d)分析
分析RP−HPLC及びエレクトロスプレーMS(表3)によりペプチドの性質を分析した。用いたC18カラムはPhenomenex Luna C18 5μ、4.6×250mmカラム(流速:1mL/分)又はPhenomenex Luna C18(2) 3μ、2.0×50mmカラム(流速:0.3mL/分)で、それぞれ20分又は10分にわたり勾配を用いて溶出した。溶出緩衝液は0.1%のTFA(緩衝液A)を含む水及び0.1%のTFA(緩衝液B)を含むアセトニトリルとした。溶出液をλ=214nmで及びλ=254nmでモニターした。
【0098】
【表6】

【0099】
実施例2:123I−標識化合物2(化合物2A)の合成
工程(a):127I−アナログ(化合物2)
化合物2を以下の反応式により調製した。
【0100】
【化9】

【0101】
127Iの調製・精製物のMS分析により同一性を確認した。
【0102】
工程(b):化合物2Aの調製
74μlの水に溶解した化合物1(74μg、1×10
-7mol)に、0.2M アンモニウム酢酸塩緩衝液(pH4)200μl、0.01M NaOH中のNa127I 10μl(1×10-8mol)、0.05M NaOH中のNa123Iを約10〜30μl(150〜450MBq)、及び0.001M PAA溶液10μl(1×10-8mol)を添加した。[123I]化合物2をHPLCで精製し、50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で希釈し、20及び100MBq/ml、14及び45MBq/nmoleの比活性とした。127I標準との共溶出を行い、同一性を確認した。希釈後3.5時間にて良好な安定性(>90%)を観察した。
【0103】
実施例3:123I標識化合物6(化合物6A)の合成
工程(a):127I−アナログ(化合物6)
以下の反応により化合物6を調製した。
【0104】
【化10】

【0105】
127-Iの調製・精製物のMS分析により同一性を確認した。
工程(b):化合物6Aの調製 化合物5(98μg、1×10-7mol)を98μlメタノールに溶解し、100μlの0.2Mアンモニウム酢酸塩緩衝液(pH4)、10μl(1×10-8mol)のNa127I(0.01M NaOH中)、約10〜30μl(150〜450MBq)のNa123I(0.05M NaOH中)、及び10μl(1×10-8mol)の0.001M PAA溶液をヨードニウム形成後に添加した。化合物6AをHPLC精製し、50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で希釈し、それぞれ20及び100MBq/ml、13及び43MBq/nmolの比活性とした。10%のエタノールを添加し、溶解性を高めた。127I標準との共溶出を行い、同一性及び化合物6Aであることを確認した。希釈後3.5時間にて良好な安定性(>90%)を観察した。
【0106】
実施例4:123I標識化合物8(化合物8A)の合成
工程(a):127I−アナログ(化合物8)
以下の反応式により化合物8を調製した。
【0107】
【化11】

【0108】
127-Iの調製・精製物のMS分析により同一性を確認した。
工程(b):化合物8の調製 化合物7(93μg、1×10-7mol)を93μlアセトニトリルに溶解し、100μlの0.2Mアンモニウム酢酸塩緩衝液(pH4)、10μl(1×10-8mol)のNa127I(0.01M NaOH中)、約10〜30μl(150〜450MBq)のNa123I(0.05M NaOH中)、及び10μl(1×10-8mol)の0.001M PAA溶液をヨードニウム形成後に添加した。[123I]化合物8をHPLC精製し、50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で希釈し、それぞれ20及び100MBq/ml、10及び40MBq/nmolの比活性とした。10%のエタノールを添加し、溶解性を高めた。127I標準との共溶出を行い、同一性を確認した。希釈後4時間にて良好な安定性(>90%)を観察した。
【0109】
実施例5:123I標識化合物10(化合物10A)の合成
工程(a):127I−アナログ(化合物10)
以下の反応式により化合物10を調製した。
【0110】
【化12】

【0111】
127-Iの調製・精製物のMS分析により同一性を確認した。
【0112】
工程(b):化合物10Aの調製
化合物9(118μg、1×10-7mol)を118μlの0.1%TFA水:0.1%TFAアセトニトリルの1:1溶液に溶解し、200μlの0.2Mアンモニウム酢酸塩緩衝液(pH4)、10μl(1×10-8mol)のNa127I(0.01M NaOH中)、約10〜30μl(150〜450MBq)のNa123I(0.05M NaOH中)、及び10μl(1×10-8mol)の0.001M PAA溶液をヨードニウム形成後に添加した。[123I]化合物10をHPLC精製し、50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で希釈し、それぞれ20及び100MBq/ml、12及び40MBq/nmolの比活性とした。10%のエタノールを添加し、溶解性を高めた。127I標準との共溶出を行い、同一性を確認した。希釈後4時間にて良好な安定性(>90%)を観察した。
【0113】
実施例6:123I標識化合物14(化合物14A)の合成
工程(a):127I−アナログ(化合物14)
以下の反応式により化合物10を調製した。
【0114】
【化13】

【0115】
127-Iの調製・精製物のMS分析により同一性を確認した。
工程(b):化合物14Aの調製 化合物13(81μg、1×10-7mol)を81μlのメタノールに溶解し、200μlの0.2Mアンモニウム酢酸塩緩衝液(pH4)、10μl(1×10-8mol)のNa127I(0.01M NaOH中)、約30μl(450MBq)のNa123I(0.05M NaOH中)、及び10μl(1×10-8mol)の0.001M PAA溶液をヨードニウム形成後に添加した。化合物14をHPLC精製し、50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH6)で希釈し、100MBq/ml、41MBq/nmolの比活性とした。127I標準との共溶出を行い、同一性及び化合物14Aであることを確認した。希釈後3.5時間にて良好な安定性(>90%)を観察した。
【0116】
実施例7:123I−標識化合物18(化合物18A)の合成
工程(a):127I−アナログ(化合物18)
以下の反応式により化合物18を調製した。
【0117】
【化14】

【0118】
127-Iの調製・精製物のMS分析により同一性を確認した。
工程(b):化合物18Aの調製 化合物17(100μg、9.29×10-8mol)を100μlのアセトニトリルに溶解し、100μlの0.2Mアンモニウム酢酸塩緩衝液(pH4)、10μl(1×10-8mol)のNa127I(0.01M NaOH中)、約10〜30μl(150〜450MBq)のNa123I(0.05M NaOH中)、及び10μl(1×10-8mol)の0.001M PAA溶液をヨードニウム形成後に添加した。化合物18AをHPLC精製し、50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で希釈し、それぞれ20及び100MBq/ml、10及び40MBq/nmolの比活性とした。10%のエタノールを添加し、溶解性を高めた。127I標準との共溶出を行い、同一性及び化合物18Aであることを確認した。希釈後4時間にて良好な安定性(>90%)を観察した。
【0119】
実施例8:123I標識化合物20(化合物20A)の合成
工程(a):127I−アナログ(化合物20)
以下の反応式により化合物20を調製した。
【0120】
【化15】

【0121】
化合物20及び対応するジヨード化した分子種を精製し、それらをMS分析により同一性を確認した。
工程(b):化合物20Aの調製 化合物19(118μg、1×10-7mol)を118μlの0.1%TFA水:0.1%TFAアセトニトリルの1:1溶液に溶解し、200μlの0.2Mアンモニウム酢酸塩緩衝液(pH4)、10μl(1×10-8mol)のNa127I(0.01M NaOH中)、約10〜30μl(150〜450MBq)のNa123I(0.05M NaOH中)、及び10μl(1×10-8mol)の0.001M PAA溶液をヨードニウム形成後に添加した。化合物20AをHPLC精製し、50mM リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)で希釈し、それぞれ20及び100MBq/ml、12及び40MBq/nmolの比活性とした。127I標準との共溶出を行い、同一性及び化合物20Aであることを確認した。希釈後3.5時間にて良好な安定性(>90%)を観察した。
【0122】
実施例9:N−アルキル化に用いる18F−標識誘導体の合成
3−[18F]フルオロプロピルトシレートの合成
【0123】
【化16】

【0124】
双方向タップを介して、ガラスバイアル中に調製したKryptofix222(10mg)のアセトニトリル(300μL)及び炭酸カリウム(4mg)水(300μL)溶液を、真鍮ヒーターに据え付けたカーボンガラス反応容器中にプラスチック製シリンジ(1ml)を用いて注入した。次いで標的水(0.5〜2ml)中の18F−フッ化物(185〜370MBq)を双方向タップによって添加した。ヒーターを125℃に設定し、タイマーを始動させた。15分後に1分間隔でアセトニトリル(0.5ml)を3回に分けて添加した。18F−フッ化物を合計40分間乾燥させた。40分後、ヒーターを圧縮空気によって冷却し、ポットのふたを取り外し、1,3−プロパンジオール−ジ−p−トシレート(5〜12mg)及びアセトニトリル(1ml)を添加した。ポットのふたを交換し、配管をストッパーで閉鎖した。ヒーターを100℃にセットし、100℃/10分にて標識した。標識後、3−[18F]フルオロプロピルトシレートを以下の条件を用いてギルソンRP HPLCによって単離した。
【0125】
【表7】

【0126】
単離後、カットされたサンプル(約10ml)を水(10ml)で希釈し、調製済C18sep pak上へロードした。sep pakを15分間窒素を用いて乾燥し、有機溶媒のピリジン(2ml)、アセトニトリル(2ml)又はDMF(2ml)で洗浄した。活性の約99%が洗浄された。3−[18F]フルオロプロピルトシレートを用い、ピリジン中での還流によりN−アルキレートアミンとした。
【0127】
実施例10:S−アルキル化のための18F−Tチオール誘導体
工程(a):3−[18F]フルオロ−トリチルスルファニル−プロパンの調製
【0128】
【化17】

【0129】
双方向タップを介して、ガラスバイアル中に調製したKryptofix222(10mg)のアセトニトリル(800μL)及び炭酸カリウム(1mg)水(50μL)溶液を、真鍮ヒーターに据え付けたカーボンガラス反応容器中にプラスチック製シリンジ(1ml)を用いて注入した。次いで標的水(0.5〜2ml)中の18F−フッ化物(185〜370MBq)を双方向タップによって添加した。ヒーターを125℃に設定し、タイマーを始動させた。15分後に1分間隔でアセトニトリル(0.5ml)を3回に分けて添加した。18F−フッ化物を合計40分間乾燥させた。40分後、ヒーターを圧縮空気によって冷却し、ポットのふたを取り外し、トリメチル−(3−トリチルスルファニル−プロポキシ)シラン(1〜2mg)及びDMSO(0.2ml)を添加した。ポットのふたを交換し、配管をストッパーで閉鎖した。ヒーターを80℃にセットし、80℃/5分にて標識した。標識後、反応混合物を以下の条件を用いてRP HPLCによって単離した。
【0130】
【表8】

【0131】
反応混合物をDMSO/水(1:1v/v(0.15ml))で希釈し、調製済t−C18分離−パック上へロードした。カートリッジを水(10ml)で洗浄し、窒素によって乾燥させ、3−[18F]フルオロ−1−トリチルスルファニル−プロパンを4アリコートのアセトニトリル(1アリコート当たり0.5ml)で溶出した。
【0132】
工程(b):3−[18F]フルオロプロパン−1−チオールの調製
【0133】
【化18】

【0134】
アセトニトリル(1〜2ml)中の3−[18F]フルオロ−1−トリチルスルファニル−プロパン溶液を100℃/10分の窒素流を用いて蒸発・乾燥させた。TFA(0.05ml)、トリイソプロピルシラン(0.01ml)及び水(0.01ml)の混合物を添加し、次いで80℃/10分間加熱し、3−[18F]フルオロプロパン−1−チオールを得た。
【0135】
工程C):−N(CO)CH2Cl前駆体との反応
クロロアセチル前駆体の標識は一般に、圧縮空気により工程(b)で得た3−[18F]フルオロ−1−メルカプト−プロパンを含んでなる反応容器を冷却し、次いでアンモニア水(0.1ml、27%)及び前駆体(1mg)の水溶液(0.05ml)を添加して行った。混合物を80℃/10分で加熱した。
【0136】
実施例11:ベンズアルデヒドを経た18F標識誘導体の合成
工程(a):4−18F−ベンズアルデヒド
平底カーボンガラス反応容器(4ml)にアセトニトリル(800μl)中のKryptofix222(5mg)溶液を添加し、炭酸カリウム(13.5mg/ml(H2O)、約0.1M)(50μl)を添加した。容器を真鍮ヒーター上に置き、3本のPTFEラインを付した反応容器のふたで閉鎖した。ライン1を双方向タップに接続し、ライン2を廃液バイアルに接続し、ライン3は開放した。実験装置を鉛製の壁の背後に配置した。18F−フッ化物を含むサイクロトロン標的水(370〜740MBq、0.5〜2ml)を双方向タップから添加した。N2ラインを双方向タップに接続し、ヒーターを110℃に設定した。加熱開始後10分に、N2ラインを除去し、アセトニトリル(0.5ml)のアリコートを添加した。加熱開始後約10.5及び11分でこの工程を繰り返した。アセトニトリルの各添加後にN2ラインを双方向タップに再接続した。第2の窒素ラインをキャップで閉じたライン3に接続し、このラインに存在するすべての液体を吹き飛ばした。18F−フッ化物を合計30分間乾燥させた。30分後、ヒーターを圧縮空気によって冷却し、反応容器のふたを取り外し、4−(トリメチルアンモニウム)ベンズアルデヒドトリフルオロメタンスルホン酸のDMSO(1000μl)溶液を添加した(Poethko他のJ.Nucl.Med.45(5)p892−902(2004)の方法によって調製:0.5〜0.8mg、0.0016〜0.0026mmol)。3本のPTFEラインをストッパーで封鎖した。反応容器を90℃/15分で加熱し、4−18F−ベンズアルデヒド(通常の取り込み収率は約50%)を得た。粗生成物をさらなる精製を行わずに用いた。
【0137】
工程(b):コンジュゲーション法
第1級アミンで官能化した前駆体(0.003mmol)をクエン酸/Na2HPO4緩衝液(500μl、809μLの0.1Mクエン酸水溶液と無水Na2HPO4の0.2M水溶液の110μLと混合して調製できる)に溶解し、次いで工程(a)からの4−18F−ベンズアルデヒド(粗)に直接添加した。反応容器を次いで70℃/15分に加熱し、粗生成物を得た。
【0138】
工程(c):精製法及び調整
工程(b)からの全反応混合物を水で希釈し、約20mlの体積にし、調製済t−C18 sep pak(DMSO(5ml)、続いて水(10ml)で調製]上にロードした。ロードしたt−C18 sepを水(2×5ml)、続いてDMSO(3×5ml)で洗浄した。所望の生成物を含むDMSOフラッシュ混合液を以下のRP HPLC調製システムを用いて精製した。
【0139】
【表9】

【0140】
分離されたHPLCピークを水で約20ml体積に希釈し、調製済t−C18 sep pak(エタノール(5ml)、続いて水(10ml)で調製)上へロードした。続いてロードされたt−C18 sep pakを水(1×5ml)、続いてエタノール(3×0.2ml、1×0.4ml)でフラッシュした。所望の生成物を含むエタノールのフラッシュ混合液を約0.1mlの量に蒸発し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS1ml)で約10%エタノールとなるように調整した。調整した化合物のpHは約7であった。 実施例12:化合物2及び22のインビトロでの効果 カスパーゼ−3試験基質の効力(Ki)を市販のカスパーゼ−3アッセイキット(BIOMOL QuantiZyme(商標) Assay System、Caspase−3 Assay kit for Drug Discovery)を用いて評価した。得られたデータの概要を表5に示す。DEVD基質配列を更に放射性識別用のチロシン残基及び細胞浸透を補助するリーダー配列によって生物的に修飾した。インビトロ効力は上記のいずれの生物的修飾の後も維持されていた。
【0141】
【表10】

【0142】
実施例13:化合物2A、6A及び8Aのインビトロでの血漿中安定性
123I−化合物2、123I−化合物6及び123I−化合物8(それぞれ化合物2A、6A及び8A)を用いてインビボ安定性の評価を実施した。放射性標識化合物をオスのウィスターラット(約200〜300g)の静脈内に注入した。注入後、血液サンプルを幾つかの時点で回収し、遠心分離して血漿を調製し、HPLC分析した。コントロールサンプル(インビトロで血漿に化合物を添加)を共に用いてHPLCプロファイルの比較を行い、それをインビボ代謝の程度評価に用いた。
【0143】
123I−化合物6(化合物6A)のインビボ安定性の評価では、化合物の不安定性、及び時間経過に伴う代謝産物形成による脱ヨウ素化が示された。代謝産物保持時間は遊離酸の形成、保護基及びヨード−チロシンと相関していた。123I−化合物8(化合物8A)のインビボ安定性の評価を行い、化合物のアスパラギン酸−グリシンの欠如がインビボ安定性の改良につながるか否かを解析した。その結果、急速な化合物の変性及び代謝産物の形成及び脱ヨウ素化が観察された。化合物6Aと比較し代謝産物の生成が少なかった。123I−化合物2(化合物2A)のインビボ安定性の評価を行い、化合物6A及び8Aによる代謝産物の形成がシクロヘキシル保護基の開裂の結果か否かを確認した。しかし化合物2Aでもまた、代謝産物形成及び脱ヨウ素化を伴う時間経過によるインビボでの化合物の不安定性が示された。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】化合物1〜22を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I)で表される標識カスパーゼ−3基質を含んでなる造影剤。
【化1】

式中、Z1はX1のN末端又はAsp残基に結合し、H又は代謝阻害基であって、X1はインビボで哺乳類細胞の外部から内部への細胞膜輸送を可能にする4〜20アミノ酸の細胞膜透過性リーダーペプチド配列であって、Xaa1はGlu(R3)又はMetであって、Xaa1がMetのときXaa2はVal又はGlnであって、Aspはアスパラギン酸であって、−(A)n−はリンカー基であって、Aは各々独立に−CR2−、−CR=CR−、−C≡C−、−CR2CO2−、−CO2CR2−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SO2NR−、−NRSO2−、−CR2OCR2−−CR2SCR2−、−CR2NRCR2−、C4-8シクロヘテロアルキレン基、C4-8シクロアルキレン基、C5-12アリーレン基又はC3-12ヘテロアリーレン基、アミノ酸、糖又は単分散ポリエチレングリコール(PEG)構成単位であって、式中、Rは各々独立にH、C1-4アルキル、C2-4アルケニル、C2-4アルキニル、C1-4アルコキシアルキル又はC1-4ヒドロキシアルキル基から独立に選択され、R1、R2及びR3は独立にアミノ酸Asp又はGlu残基のカルボキシル側と結合するR’基であって、式中、R’の各々はH、C1-8アルキル、C2-8アルコキシアルキル、C5-12アリール又はC5-16アラルキル基から選択され、m1は0又は1であって、nは0〜10の整数であって、IMはγ線放射性ハロゲン又は陽電子放射性非金属を含んでなるイメージング部分であって、哺乳類インビボへの標識カスパーゼ−3基質の投与の後でイメージング部分が非侵襲性の方法で外部から検出できる。
【請求項2】
1が0であるとき、R1、R2及びR3の少なくとも1つがC1-8アルキル基である、請求項1記載の造影剤。
【請求項3】
1が1であるとき、R1、R2及びR3の少なくとも1つがHである、請求項1又は請求項2記載の造影剤。
【請求項4】
Rが各々独立にメチル及びシクロヘキシル基から選択される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の造影剤。
【請求項5】
1がアセチル又はベンジルオキシカルボニル基である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の造影剤。
【請求項6】
(A)nが(Gly)n又は(Lys)nである、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の造影剤。
【請求項7】
X1が以下の群から選択されるリーダー配列を含んでなる、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の造影剤。
【化2】

ただし、Ornはオルニチンである。
【請求項8】
前記γ線放射性ハロゲンが123Iである、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の造影剤。
【請求項9】
前記陽電子放射性非金属が18F、11C、124I又は13Nから選択される、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の造影剤。
【請求項10】
次式(II)の化合物を含んでなる、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の造影剤の調製に適する前駆体。
【化3】

式中、Z1、X1、m1、R1、Xaa1、Xaa2、Asp、R2、A及びnは請求項1で定義した通りであり、Y1は陽電子放射性非金属又はγ線放射性ハロゲン源と反応でき、式Iの造影剤を与える置換基を含む非放射性基である。
【請求項11】
1基の置換基が
(i)有機金属化合物誘導体(例えばトリアルキルスタンナン又はトリアルキルシラン)、
(ii)求核置換のためのハロゲン化アルキル、トシル酸アルキル又はメシル酸アルキルを含んでなる誘導体、
(iii)求核又は求電子置換を行うように活性化される芳香環を含んでなる誘導体、
(iv)容易にアルキル化される官能基を含んでなる誘導体、
(v)チオール含有化合物をアルキル化してチオエーテル含有生成物を与える誘導体、
(vi)アルデヒド又はケトンと縮合する誘導体、
(vii)活性化エステル基によってアシル化される誘導体
から選択される、請求項10記載の前駆体。
【請求項12】
滅菌済のパイロジェンフリーな形態である、請求項10又は請求項11記載の前駆体。
【請求項13】
前記前駆体が固相に結合する、請求項10乃至請求項12のいずれか1項記載の前駆体。
【請求項14】
陽電子放射性非金属又はγ線放射性ハロゲン源が、
(i)ハロゲン化物イオン又はF+又はI+、又は
(ii)アルキル若しくはフルオロアルキルハロゲン化物、トシル酸、トリフレート又はメシレートから選択されるアルキル化剤
から選択される、請求項10乃至請求項13のいずれか1項記載の前駆体。
【請求項15】
哺乳類の投与に適する形態で、生体適合性担体と請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の造影剤を含んでなる放射性医薬組成物。
【請求項16】
単一の患者に適する放射性投与量を有し、好適なシリンジ又は容器内に収容されている、請求項15記載の放射性医薬組成物。
【請求項17】
請求項10乃至請求項14のいずれか1項記載の前駆体を含んでなる、請求項15又は請求項16記載の放射性医薬組成物の調製用キット。
【請求項18】
前駆体が滅菌済のパイロジェンフリーの形態である、請求項17記載のキット。
【請求項19】
哺乳類の生体内の疾病状態に関係するカスパーゼ−3の診断方法における請求項1乃至請求項9の造影剤の使用であって、前記哺乳類が予め請求項15又は請求項16の放射性医薬組成物を投与されている使用。

【図1】
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【公表番号】特表2008−528672(P2008−528672A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553702(P2007−553702)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000398
【国際公開番号】WO2006/082434
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】