説明

カスパーゼ−3阻害剤を含む新規な造影剤

本発明は、インビボイメージングのための診断造影剤に関する。その造影剤は、インビボ診断イメージングに適する造影性基で標識した合成カスパーゼ−3阻害剤を含む。本発明は、又、キット造影剤を含む医薬及び放射性医薬組成物と共に放射性医薬品の調製のためのキットを提供する。放射性又は常磁性金属イオンを含む造影剤の調製に適したカスパーゼ−3阻害剤のキレーターコンジュゲートも記載されている。該造影剤は、カスパーゼ−3が関与するさまざまな疾患状態のインビボ診断イメージング及び又は治療モニタリングのために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボイメージングのための診断造影剤に関する。該造影剤は、生体内での診断イメージングに適した造影性基で標識した合成カスパーゼ−3−阻害剤を含む。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスによるプログラム細胞死は、複雑なプロセスであり、調節の水準が多数ある数々の細胞プロセスを伴う。それは2つの経路の1つによって開始される。1番目は、細胞表面の細胞死受容体で開始される外因性の経路を経由し、2番目は、UV照射によるDNAの損傷等の内因性イニシエータを介する。これらの経路は両方とも、エネルギーを必要とし、壊死による細胞死とは異なり炎症反応を伴わない細胞の組織的な死に達する。アポトーシスに関係する細胞は、それらの細胞表面に「イートミー」シグナルを出して、他の細胞を招き、ファゴサイトーシス(貪食作用)によってそれらを消費させる。
【0003】
アポトーシスは、体内の多数のプロセスにおける重要な事象である。例えば、胚発生は、アポトーシスに完全に依存しており、急速に代謝回転する組織は、深刻な病理学的影響を避けるための厳密な制御が必要である。アポトーシス制御の失敗は、癌(不十分な細胞死)及びアルツハイマー病(過多な細胞死)のような神経症状を起こし得る。さらにアポトーシスは、また、虚血/再灌流傷害の後の心臓内の部位などの組織の損傷につながり得る。
【0004】
アネキシン−5は、アポトーシス細胞の外側膜でホスファチジルセリン(PS)に約10−Mの親和力で結合する内在性のヒトタンパク質(RMM36kDa)である。99mTc標識アネキシン−5が、生体内でアポトーシスをイメージ化するために使用されている[Blankenberg et al, J.Nucl.Med., 40, 184−191 (1999)]。しかしながら、この取り組みにはいくつかの問題がある。第1に、アネキシン−5は、壊死細胞にも入って細胞膜の内部小葉に露出したPSに結合することができ、それによって誤った陽性の結果をもたらし得る。第2は、標識アネキシン−5を注射した後少なくとも2時間にわたって維持される高い血液プール活性である。このことは、イメージングの最適の時機選びが注射後10時間と15時間の間であることを意味し[Reutelingsperger et al, J.Immunol.Meth., 265 (1−2), 123−32 (2002)]、急性冠不全症候群の患者の医療判断をするためには不適切である。さらに、アネキシン−5の排除は、腹部における非常に強いバックグラウンド信号を伴って腎臓及び肝臓を経由して起こる。これは、腹部の細胞死のイメージング(例えば生体腎臓の移植及び腫瘍のモニタリングにおける)を不可能にする。
【0005】
国際公開第01/89584号は、実施例16から18及び21においてカスパーゼ−3基質テトラペプチドDEVDのキレーターコンジュゲート(即ち、Asp−Glu−Val−Asp)が、MRI又はシンチグラフィーを用いるアポトーシス組織のインビボイメージングに有用であることを開示している。
【0006】
Haberkorn et al, [Nucl.Med.Biol., 28, 793−798 (2001)]は、可能性のあるアポトーシス造影剤として、放射性同位元素の131Iで標識したパン−カスパーゼ阻害剤Z−VAD−fmk、即ち、ベンジルオキシカルボニル−Val−Ala−DL−Asp(O−メチル)−フルオロメチルケトンについて研究した。彼らは、その薬剤の細胞への取り込みの絶対量が低いことを見出し、これを活性化型カスパーゼ1個当たり1個のみの阻害剤分子を捕捉することに帰した。彼らは、標識カスパーゼ基質は、この問題を被るはずがなく、造影剤へのより優れたアプローチであると結論付けた。
【0007】
アポトーシスイメージングに対する放射性医薬品は、 Lahorte et al., [Eur.J.Nucl.Med., 31, 887−919 (2004)]に概説されている。
【0008】
それ故、迅速(例えば注射後1時間以内)で、且つ血液及びバックグラウンド臓器からの優れたクリアランスを有するイメージングを可能にするアポトーシス造影剤に対する必要性が依然として存在する。
【特許文献1】国際公開第01/89584号パンフレット
【特許文献2】国際公開第99/07728号パンフレット
【特許文献3】国際公開第00/32236号パンフレット
【特許文献4】国際公開第91/01144号パンフレット
【特許文献5】米国特許第4885363号明細書
【特許文献6】国際公開第98/11109号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6444811号明細書
【特許文献8】国際公開第03/024955号パンフレット
【特許文献9】国際公開第03/002489号パンフレット
【特許文献10】国際公開第03/002157号パンフレット
【非特許文献1】Blankenberg et al, J.Nucl.Med. 40, 184−191 (1999)
【非特許文献2】Reutelingsperger et al, J.Immunol.Meth., 265 (1−2), 123−32 (2002)
【非特許文献3】Haberkorn et al, Nucl.Med.Biol. 28, 793−798 (2001)
【非特許文献4】Lahorte et al, Eur.J.Nucl.Med., 31, 887−919 (2004)
【非特許文献5】Lehninger, A. L., Nelson, D. L. and Cox, M. M. (1993) Principles of Biochemistry (2nd edn.) Worth, New York
【非特許文献6】Stryer, L. (1995) Biochemistry (4th edn.) Freeman, New York
【非特許文献7】Pasqualini R Q J.Nucl. Med., 43(2):159−62 (1999)
【非特許文献8】Nakamura et al J Biol Chem. 15; 263(32):16709−13 (1988)
【非特許文献9】Tamura H. et al Chem. Pharm. Bull. Tokyo 41, 978−980 (1993)
【非特許文献10】Mie M et al Biochem Biophys Res Commun. 24; 310(3):730−4 (2003)
【非特許文献11】Potocky TB et al Biol Chem. 2003 Sep 29 [Epub ahead of print]
【非特許文献12】Kokryakov et al FEBS Lett.; 327(2):231−6 (1993)
【非特許文献13】Jurisson et al Chem.Rev., 99, 2205−2218 (1999)
【非特許文献14】Bolton, J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)
【非特許文献15】Kahn et al J. Lab. Comp. Radiopharm. 45, 1045−1053 (2002)
【非特許文献16】Borch et al J. Am. Chem. Soc. 93, 2897 (1971)
【非特許文献17】Poethko et al j.Nuc.Med., 45, 892−902 (2004)
【非特許文献18】Vaidyanathan et al Nucl. Med. Biol., 19(3), 275−281 (1992)
【非特許文献19】Johnstrom et al Clin. Sci., 103 (Suppl. 48), 45−85 (2002)
【非特許文献20】’Protective Groups in Organic Synthesis’, Theorodora W. Greene and Peter G. M. Wuts, (Third Edition, John Wiley & Sons, 1999)
【非特許文献21】Thornberry et al J.Biol.Chem., 272 (29), 17907−17911 (1997)
【非特許文献22】Thornberry et al J.Biol.Chem., 273 (49), 32608−32613 (1998)
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【非特許文献28】Chem. Heter. Comp. 2002, 36(9), 1091−6
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【非特許文献31】Choong et al, J. Med. Chem. 45, 5005−5022 (2002)
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【非特許文献34】Barany, G; Kneib−Cordonier, N.; Mullen, D.G. (1987) Int. J. Peptide Protein Research 30, 705−739
【非特許文献35】Wellings, D.A., Atherton, E. (1997) in Methods in Enzymology (Fields, G. ed), 289, p. 53−54, Academic Press, New York
【非特許文献36】Wang et al: ”A Role for Mitochondrial Bak in Apoptotic Response to Anticancer Drugs”, J. Biol. Chem., Aug 2001; 276: 34307−34317
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
今回、造影性基で標識した合成カスパーゼ−3阻害剤が、異常なアポトーシス特に過剰なアポトーシスが関与する哺乳類の身体の疾患のインビボイメージングのための有用な診断造影剤であることが見出された。
【0010】
その造影性基は、放射性(例えば、放射性金属イオン、γ線放出型放射性ハロゲン又は陽電子放出型放射性非金属)であるか又は非放射性(例えば、常磁性金属イオン、過分極NMR活性核種又はインビボイメージングに適した光学色素)であり得る。
【0011】
過剰のアポトーシスは、広範なヒトの疾患と関係しており、これらの傷害の多くの進行におけるカスパーゼの重要性が証明されている。従って、本発明の造影剤は、
(a)心臓及び脳の虚血性/再灌流障害(例えば、それぞれ心筋梗塞又は脳梗塞)、脊髄損傷、外傷性脳損傷、移植手術中の臓器拒絶反応、肝臓変性症(例えば、肝炎)、敗血症及び細菌性髄膜炎等の急性の傷害;
(b)神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、ダウン症候群、脊髄性筋萎縮症、多発性硬化症、パーキンソン病)、免疫不全症(例えばHIV)、関節炎、アテローム性動脈硬化症及び糖尿病等の慢性の傷害;
(c)膀胱癌、乳癌、大腸癌、子宮内膜癌、頭頚部癌、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、前立腺癌及び直腸癌等の癌においてアポトーシスを誘発するために使用される薬剤についての効果をモニタリングすること
を含む一連の疾患状態における生体内画像診断及び又は治療モニタリングのために有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の態様において、本発明は、造影性基で標識した合成カスパーゼ−3阻害剤を含む造影剤であって、カスパーゼ−3阻害剤が、カスパーゼ−3に対して2000nM未満のKを有しており、前記哺乳類生体内への標識カスパーゼ−3投与後に造影性基を、血管内放射線検出器又は光学検出器(例えば内視鏡)或いは手術中の使用のために設計された放射線検出器等、外部から非侵襲的に、又はインビボで使用されるように設計された検出器の使用によって検出することができる造影剤を提供する。
【0013】
今までに少なくとも14個の異なるカスパーゼの存在がヒトにおいて確認されており、カスパーゼ−1、カスパーゼ−2などと呼ばれている。カスパーゼ類は、次の3つの主要な機能別カテゴリーに分類されており、
グループIカスパーゼ(例えば、カスパーゼ−1、−4、−5及び−13)は、主として炎症反応経路と関係し、
グループIIカスパーゼ(例えば、カスパーゼ−3、−6及び−7)は、エフェクター又は「殺し屋」カスパーゼであり、
グループIIIカスパーゼ(例えば、カスパーゼ−8、−9及び−2)は、イニシエータカスパーゼである。
【0014】
本発明は、CPP32としても知られており、29kDaシステインプロテアーゼであるカスパーゼ−3の阻害剤に関する。
【0015】
本発明の好適な造影剤は、良好な細胞膜透過性を示し、それ故、細胞内酵素であるカスパーゼ−3を標的にすることができる。細胞膜輸送を容易にするために、本発明の造影剤は、適宜下で定義する「リーダーペプチド」を含むことができる。好ましい造影剤は、生体内で容易に代謝されることはなく、そのため、ヒトで60〜240分のインビボ半減期を有するのが最も好ましい。造影剤は、腎臓で排出される(即ち、尿中排泄を示す)のが好ましい。造影剤は、アポトーシスの焦点において示すシグナル対バックグラウンド比が、好ましくは少なくとも1.5、最も好ましくは少なくとも5であり、少なくとも10が特に好ましい。造影性基が、放射性である場合、生体内で非特異的に結合しているか遊離しているかのいずれかである造影剤のピーク水準の2分の1のクリアランスは、放射性同位体の放射性崩壊の半減期以下の期間で現れるのが好ましい。
【0016】
造影剤の分子量は、適切には5000ダルトンまでである。好ましくは、分子量は150〜3000ダルトンの範囲、最も好ましくは200〜1500ダルトンの範囲であり、300〜800ダルトンが特に好ましい。
【0017】
本発明の適切な合成カスパーゼ−3阻害剤は、カスパーゼ−3に対して2000nM未満のKを示す。カスパーゼ−3は、殆どすべての組織内で他のカスパーゼと対比して高濃度で発現させることができ、他のグループIIのカスパーゼと比較して高い触媒活性を示す。カスパーゼ−3は、しかしながら、アポトーシスの間の活性な形態でのみ発現する。このことが、本発明の標識阻害剤が良好なシグナル対ノイズを備えた実現性のある造影剤であるための基礎を形成している。阻害定数Kは、酵素−阻害剤結合に対する解離定数である[Lehninger, A. L., Nelson, D. L. and Cox, M. M. (1993) Principles of Biochemistry (2nd edn.) Worth, New York; Stryer, L. (1995) Biochemistry (4th edn.) Freeman, New York]。好ましくは、阻害剤は、カスパーゼ−3に対して500nM未満、最も好ましくは100nM未満のKを有する。本発明の合成カスパーゼ−3阻害剤は、又、カスパーゼ−3に対して他のカスパーゼよりも好ましくは選択的である。上記選択的阻害剤は、Kで規定して、カスパーゼ−3に対して、カスパーゼ−1より少なくとも50倍、好ましくは少なくとも100倍、最も好ましくは少なくとも500倍大きい効能を適切には示す。
【0018】
本発明の好ましい合成カスパーゼ−3阻害剤は、不可逆性、即ち、酵素に共有結合で結合する。カスパーゼ−3は、細胞内酵素であるため、好ましいカスパーゼ−3阻害剤は、良好な細胞膜透過性を示す(即ち、生体内で哺乳類細胞膜を超えて効率よく輸送される)。この点おいては、非ペプチド阻害剤が好ましい。
【0019】
用語「標識」とは、カスパーゼ−3阻害剤それ自体が、造影性基を含むか、又はその造影性基が、式Iについて下に示すように、さらなる核種として、適宜リンカー基を介して結合しているかのいずれかを意味する。カスパーゼ−3阻害剤それ自体が造影性基を含むとき、それは、「造影性基」がその阻害剤の化学構造の一部を形成しており、放射性又は非放射性同位体が天然に存在する量のレベルより著しく高いレベルで存在する前記同位体であることを意味する。上記の同位体の高められたレベル又は濃縮されたレベルとは、問題にしている同位体の天然に存在する量のレベルの、適切には5倍、好ましくは少なくとも10倍、最も好ましくは少なくとも20倍、理想的には少なくとも50倍であるか、さもなくば、問題にしている同位体の濃縮度のレベルが90%から100%であるレベルで存在する。「造影性基」を含むカスパーゼ−3阻害剤の例を以下に記載するが、造影性基が、カスパーゼ−3阻害剤の化学構造中の同位体標識をした13C、11C又は18Fであるように、13C又は11Cのレベルを高めたCH基及び18Fのレベルを高めたフルオロアルキル基を含む。放射性同位元素H及び14Cは、適切な造影性基ではない。
【0020】
「造影性基」は、哺乳類の体外から検出できるものか又はインビボで使用されるように設計された検出器の使用を介して検出され、例えば血管内照射又は光学的検出器、例えば内視鏡又は施術内使用のために設計された放射能検出器で検出し得る。好ましい造影性基は生体内投与後に非侵襲的な方法で外部から検出できるものである。その「造影性基」は、以下の(i)〜(vi)から好ましくは選択される。
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ線放出型放射性ハロゲン、
(iv)陽電子放出型放射性非金属、
(v)過分極NMR活性核種、
(vi)インビボイメージングに適した光学色素。
最も好ましい造影性基は、放射性、特に放射性金属イオン、γ線放出型放射性ハロゲン及び陽電子放出型放射性非金属、特にSPECT又はPETを用いたイメージングに適したものである。
【0021】
造影性基が放射性金属イオン、即ち放射性金属である場合は、用語「放射性金属」は、放射能を持った遷移元素に加えてランタニド及びアクチニド、並びに金属主族元素を含む。半金属のヒ素、セレン及びテルルはその範囲から除かれる。適切な放射性金属は、陽電子放出体、例えば64Cu、48V、52Fe、55Co、94mTc又は68Ga、γ放射体、例えば99mTc、111In、113mIn、67Cu又は67Gaであり得る。好ましい放射性金属は99mTc、64Cu、68Ga及び111Inである。最も好ましい放射性金属はγ放射体、特に99mTcである。
【0022】
造影性基が常磁性金属イオンである場合は、適切なかかる金属イオンとしては、Gd(III)、Mn(II)、Cu(II)、Cr(III)、Fe(III)、Co(II)、Er(II)、Ni(II)、Eu(III)又はDy(III)が挙げられる。好ましい常磁性金属イオンはGd(III)、Mn(II)及びFe(III)であり、Gd(III)が特に好ましい。
【0023】
造影性基がγ線放出型放射性ハロゲンである場合は、放射性ハロゲンは、123I、131I又は77Brから適宜選択される。好ましいγ線放出型放射性ハロゲンは、123Iである。
【0024】
造影性基が陽電子放出型放射性非金属である場合は、かかる陽電子放出体の適当なものとして、11C、13N、17F、18F、75Br、76Br又は124Iが挙げられる。好ましい陽電子放出型放射性非金属は11C、13N、124I及び18Fであり、特に好ましくは11C及び18Fであり、最も好ましくは18Fである。
【0025】
造影性基が過分極NMR活性核種である場合は、かかるNMR活性核種は非ゼロ核スピンを有し、13C、15N、19F、29Si及び31Pが挙げられる。これらのうち、13Cが好ましい。「過分極」という用語は、NMR活性核種の分極の程度がその平衡分極を超えていることを意味する。13Cの天然の存在量(12Cと比較して)は約1%であり、適当な13C標識化合物は、過分極される前に、少なくとも5%、好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも90%の存在量となるように適宜濃縮される。本発明のカスパーゼ−3阻害剤の炭素含有置換基の少なくとも1つの炭素原子は、13Cで適宜濃縮し、それをその後過分極させる。
【0026】
造影性基が生体内光学イメージングに適したレポーターである場合は、そのレポーターは光学イメージング手順において直接又は間接的に検出できる何らかの部分である。そのレポーターは光散乱体(例えば着色又は未着色粒子)、光吸収体又は光放射体であり得る。さらに好ましくは、レポーターは発色団又は蛍光化合物のような染料である。染料は紫外乃至近赤外域の波長を有する電磁スペクトルの光と相互作用する任意の染料であり得る。最も好ましくは、レポーターは蛍光特性を有する。
【0027】
好ましい有機発色団及び蛍光団レポーターとしては、広範囲に非局在化した電子系を有する基、シアニン、メロシアニン、インドシアニン、フタロシアニン、ナフタロシアニン、トリフェニルメチン、ポルフィリン、ピリリウム染料、チアピリリアプ染料、スクアリリウム染料、クロコニウム染料、アズレニウム染料、インドアニリン、ベンゾフェノキサジニウム染料、ベンゾチアフェノチアジニウム染料、アントラキノン、ナフトキノン、インダスレン、フタロイルアクリドン、トリスフェノキノン、アゾ染料、分子内及び分子間電荷移動染料及び染料錯体、トロポン、テトラジン、ビス(ジチオレン)錯体、ビス(ベンゼン−ジチオレート)錯体、ヨードアニリン染料、ビス(S,O−ジチオレン)錯体が挙げられる。蛍光タンパク質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)及び吸収/発光特性の異なるGFPの修飾物も有用である。ある種の希土類金属(例えばユーロピウム、サマリウム、テルビウム又はジスプロシウム)の錯体も、蛍光ナノ結晶(量子ドット)のような特定の状況で用いられる。
【0028】
使用し得る発色団の具体例としては、フルオレセイン、スルホローダミン101(Texas Red)、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン19、インドシアニングリーン、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、マリーナブルー、パシフィックブルー、オレゴングリーン88、オレゴングリーン514、テトラメチルローダミン及びAlexa Fluor350、Alexa Fluor430、Alexa Fluor532、Alexa Fluor546、Alexa Fluor555、Alexa Fluor568、Alexa Fluor594、Alexa Fluor633、Alexa Fluor647、Alexa Fluor660、Alexa Fluor680、Alexa Fluor700及びAlexa Fluor750が挙げられる。
【0029】
特に好ましいのは、400nmと3μmの間、特に600nmと1300nmの間の可視又は近赤外域に吸収極大を有する染料である。
【0030】
光学イメージングモダリティ及び測定手法としては、これらに限定されないが、ルミネセンスイメージング、内視鏡検査、蛍光内視鏡検査、光学的密着断層撮影、透過率イメージング、時間分解透過率イメージング、共焦イメージング、非線形顕微鏡分析、光音響イメージング、音響光学イメージング、スペクトル分析、反射スペクトル分析、干渉分析、密着干渉計、拡散光学断層撮影及び蛍光媒介拡散光学断層撮影(連続波長、時間ドメイン及び周波数ドメインシステム)、及び光の散乱、吸収、分極、発光、蛍光寿命、量子収率及び消光の測定などが挙げられる。
【0031】
本発明の造影剤は、好ましくは式Iで表される。
【0032】
【化1】

【0033】
式中、
{阻害剤}は、本発明のカスパーゼ−3阻害剤であり、
[リーダーペプチド]は、4〜20量体のペプチド細胞膜輸送体ペプチドであって、そのアミン末端又はカルボキシル末端のいずれかで結合しており、
−(A)−は、各Aが独立に、−CR−、−CR=CR−、−C≡C−、−CRCO−、−COCR−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SONR−、−NRSO−、−CROCR−、−CRSCR−、−CRNRCR−、C4〜8シクロへテロアルキレン基、C4〜8シクロアルキレン基、C5〜12アリーレン基、又はC3〜12へテロアリーレン基、アミノ酸、糖、或いは単分散ポリエチレングリコール(PEG)構成要素であるリンカー基であり、
Rは独立に、H、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、C2〜4アルキニル、C1〜4アルコキシアルキル、又はC1〜4ヒドロキシアルキルから選択され、
nは、0から10の整数であり、
mは、0又は1であり、
は、H、OH、Hal、NH、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、C1〜4アルコキシアルキル、C1〜4ヒドロキシアルキルであるか、或いはXは、造影性基である。
【0034】
式Iに示すように、本発明の化合物は、造影性基「で標識」されている。上で定義したように、これは、{阻害剤}、リンカー基−(A)又はリーダーペプチドの1個又は複数が、少なくとも1個の「造影性基」を含んでいるか又は結合しているかのいずれかであることを意味する。好ましくは、カスパーゼ−3阻害剤又はリンカー基は、造影性基に結合しているか又はそれを含んでいる。
【0035】
本発明の「リーダーペプチド」は、細胞膜輸送を促進する4〜20量体のペプチドである。カスパーゼ−3は、細胞内酵素であり、それ故造影剤は、細胞膜を超えることができなければならないのでこのことは重要である。「リーダーペプチド」は、しかしながら、生体内で生物学的ターゲティングを提供しない。適当なリーダーペプチドは、技術的に知られており、Tatペプチド、タキルプレシン誘導体及びプロテグリン誘導体が含まれる。特定の「リーダーペプチド」配列及びそれの参照を以下に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
好ましい「リーダーペプチド」は、Tatペプチド、タキルプレシン誘導体及びプロテグリン誘導体である。最も好ましいのは、タキルプレシン誘導体及びプロテグリン誘導体である。
【0038】
「アミノ酸」という用語は、Lアミノ酸又はDアミノ酸、アミノ酸類似体(例えば、ナフチルアラニン)又はアミノ酸模倣体を意味し、それらは、天然素材又は純粋に合成由来のものであることができ、光学的に純粋、即ち、単一の光学異性体、従ってキラルであるか、光学異性体の混合物であり得る。好ましくは、本発明のアミノ酸は、光学的に純粋である。
【0039】
「糖」という用語は、単糖類、二糖類又は三糖類を意味する。適当な糖としては、グルコース、ガラクトース、マルトース、マンノース及びラクトースが挙げられる。適宜、その糖は、アミノ酸への容易な結合を可能にするように官能化することができる。従って、例えばアミノ酸のグルコサミン誘導体は、ペプチド結合を介して他のアミノ酸に結合させることができる。アスパラギンのグルコサミン誘導体(Novabiochem社から市販されている)は、この1例である。
【0040】
【化2】

【0041】
式Iにおいて、Xは、好ましくは造影性基である。このことは、式Iのリンカー基−(A)−が造影性基をメタロプロテイナーゼ阻害剤の活性部位から遠ざける利点を有する。これは、造影性基が比較的嵩高い(例えば金属錯体又は放射性ヨウ素原子)場合にカスパーゼ酵素への阻害剤の結合が損なわれないようにするために特に重要である。これは、嵩高い基が活性部位から遠ざかる自由度をもつようにするための柔軟性(例えば単純なアルキル鎖)及び/又は金属錯体を活性部位から遠ざけるシクロアルキル又はアリールのスペーサーのような剛直性の組合せによって達成することができる。
【0042】
リンカー基の性状は造影剤の体内分布を変化させるためにも使用できる。例えば、リンカーにエーテル基を導入すると、血漿タンパク質の結合を最小限にすることが容易になる。−(A)−がポリエチレングリコール(PEG)構成要素又はアミノ酸残基1〜10個のペプチド鎖を含むと、リンカー基はインビボでの造影剤の薬物動態及び血液クリアランス速度を変化させる機能をもつことができる。かかる「バイオモディファイアー」のリンカー基はバックグラウンド組織、例えば筋肉又は肝臓及び/又は血液からの造影剤のクリアランスを加速し、バックグラウンドの干渉の低減による良好な診断画像をもたらす。バイオモディファイアーリンカー基はまた肝臓を経る場合とは対照的な、例えば腎臓を経る排出の特定の経路を優先するために使用することもできる。
【0043】
−(A)−がアミノ酸残基1〜10個のペプチド鎖を含む場合、そのアミノ酸残基は、好ましくは、グリシン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はセリンから選択される。−(A)−がPEG部分を含む場合、それは、式IIA又は式IIBの単分散PEG様構造のオリゴマー化で誘導される単位、即ち式IIAの17−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸を好ましくは含む。
【0044】
【化3】

【0045】
式中、pは1〜10の整数であり、C末端単位()は造影性基に連結している。別法では、式IIBのプロピオン酸誘導体に基づくPEG様構造を使用することができる。
【0046】
【化4】

【0047】
式中、pは、式IIAについて定義の通りであり、qは、3から15までの整数である。式IIBにおいて、pは、好ましくは1又は2であり、qは、好ましくは5〜12である。
【0048】
リンカー基がPEG又はペプチド鎖を含まない場合、好ましい−(A)−基は、2〜10個の原子、最も好ましくは2〜5個の原子、特に2個又は3個の原子が好ましい−(A)−部分をなす連結原子の骨格鎖を有する。2原子の最小のリンカー基骨格鎖は如何なる相互作用も最小限とするために造影性基がカスパーゼ−3阻害剤から十分隔離されているという利点を与える。
【0049】
アルキレン基又はアリーレン基のような非ペプチドリンカー基は、それが結合したカスパーゼ−3阻害剤と顕著な水素結合相互作用をもたず、その阻害剤にリンカーが巻きつかないという利点を有する。好ましいアルキレンスペーサー基は−(CH−であり、qは2〜5である。好ましいアリーレンスペーサーは次式のものである。
【0050】
【化5】

【0051】
式中、a及びbは独立に0、1又は2である。
【0052】
リンカー基−(A)−は、好ましくは、ジグリコール酸部分、マレイミド部分、グルタル酸、コハク酸、ポリエチレングリコールに基づく単位又は式IIAのPEG様単位を含む。
【0053】
造影性基が金属イオンを含む場合、その金属イオンは金属錯体として存在する。かかるカスパーゼ−3阻害剤の金属イオンとのコンジュゲートは、それ故、好適には式Iaのものである。
【0054】
【化6】

【0055】
式中、A、n、m及びXは、上記の式Iで定義の通りである。
【0056】
「金属錯体」という用語は、金属イオンと1個又は複数のリガンドとの配位錯体を意味する。金属錯体は「トランスキレート化に対して耐性」、即ち、金属の配位部位に対する他の潜在的な競合リガンドとリガンド交換を容易に行わないことが極めて好ましい。潜在的な競合リガンドには、カスパーゼ−3阻害剤自体及びインビトロ製剤中の他の賦形剤(製剤に使用される例えば放射能保護物質又は抗微生物保存料)又は生体内内因性化合物(例えばグルタチオン、トランスフェリン又は血漿タンパク質)がある。金属錯体は、リンカー基−(A)−又はリーダーペプチドのアミノ酸残基の1つに好ましくは結合している。金属錯体は、リーダーペプチドが、リンカー基の末端A残基に結合するか、又は非末端のA残基から枝分れすることによるかのいずれかによって同様に存在することができるように、阻害剤から最も離れたA残基の1つに結合しているのが最も好ましい。
【0057】
式Iaの金属錯体は次の式Ibのリガンドのコンジュゲートから誘導される。
【0058】
【化7】

【0059】
式中、A、n、m及びXは、上記の式Iで定義の通りである。
【0060】
トランスキレート化に耐性である金属錯体を形成する本発明の使用に適したリガンドとしては、(金属ドナー原子同士を連結している炭素原子又は非配位ヘテロ原子の非配位骨格を有することによって)5又は6員キレート環が形成されるように2〜6個、好ましくは2〜4個の金属ドナー原子が配列したキレート剤、又はイソニトリル、ホスフィン又はジアゼニドなどの金属イオンに強力に結合するドナー原子を含む単座リガンドが挙げられる。キレート剤の部分として金属に良好に結合するドナー原子の例は、アミン、チオール、アミド、オキシム及びホスフィンである。ホスフィン類は、強力な金属錯体を形成するために、単座又は2座のホスフィンであっても適当な金属錯体を形成する。イソニトリル及びジアゼニドの直線の幾何学的特徴は、それらがキレート剤に容易に取り込まれないようにするものであり、従って、一般的には単座リガンドとして使用される。適当なイソニトリルの例としては、t−ブチルイソニトリルのような単純なアルキルイソニトリル及びmibi(即ち、1−イソシアノ−2−メトキシ−2−メチルプロパン)のようなエーテル置換イソニトリルが挙げられる。適当なホスフィンの例としては、テトロホスミン及び単座ホスフィン類、例えばトリス(3−メトキシプロピル)ホスフィンが挙げられる。適当なジアゼニドの例としては、リガンドのHYNICシリーズ、即ちヒドラジン置換ピリジン又はニコチンアミドが挙げられる。
【0061】
トランスキレート化に耐性の金属錯体を形成するテクネチウムのための適当なキレート剤の例としては、これに限定はしないが、以下の(i)〜(v)が挙げられる。
(i)次式のジアミンジオキシム:
【0062】
【化8】

【0063】
式中、E〜Eは各々独立にR’基であり、
各R’はH又はC1〜10アルキル、C3〜10アルキルアリール、C2〜10アルコキシアルキル、C1〜10ヒドロキシアルキル、C1〜10フルオロアルキル、C2〜10カルボキシアルキル又はC1〜10アミノアルキルであるか、或いは2個以上のR’基がそれらと結合している原子と共に炭素環、複素環、飽和環又は不飽和環を形成するもので、R’基の1つ又は複数がカスパーゼ−3阻害剤に結合しており、
Qは式−(J)−の架橋基であり、
fは3、4又は5であり、各Jは独立に−O−、−NR’−又は−C(R’)−であるが、ただし、−(J)−が、−O−又は−NR’−である最大で1個のJ基を含むことを条件とする。
【0064】
好ましいQ基は以下のものである:
Q=−(CH)(CHR’)(CH)−、即ちプロピレンアミンオキシムつまりPnAO誘導体、
Q=−(CH(CHR’)(CH−、即ちペンチレンアミンオキシムつまりPentAO誘導体、
Q=−(CHNR’(CH−。
【0065】
〜Eは、好ましくはC1〜3アルキル、アルキルアリールアルコキシアルキル、ヒドロキシアルキル、フルオロアルキル、カルボキシアルキル又はアミノアルキルから選択される。最も好ましくは、各E〜E基はCHである。
【0066】
カスパーゼ−3阻害剤は好ましくはE又はEのR’基、又はQ部分のR’基のいずれかで結合する。最も好ましくは、カスパーゼ−3阻害剤はQ部分のR’基に結合する。カスパーゼ−3阻害剤がQ部分のR’基に結合する場合は、R’基は好ましくはブリッジヘッド位置にある。かかる場合、Qは好ましくは−(CH)(CHR’)(CH)−、−(CH(CHR’)(CH−又は−(CHNR’(CH−、最も好ましくは−(CH(CHR’)(CH−である。
【0067】
特に好ましい二官能性ジアミンジオキシムキレーターは、キレーター1であり、
【0068】
【化9】

【0069】
カスパーゼ−3阻害剤はブリッジヘッド−CHCHNH基を介して結合している。
【0070】
(ii)チオールトリアミドドナーセットを有するNSリガンド、例えばMAG(メルカプトアセチルトリグリシン)及び関連のリガンド、又はジアミドピリジンチオールドナーセット、例えばPicaを有するもの、
(iii)ジアミンジチオールドナーセットを有するNリガンド、例えばBAT又はECD(即ちエチルシステイネート二量体)、又はアミドアミンジチオールドナーセットを有するもの、例えばMAMAなど、
(iv)テトラミン、アミドトリアミン又はジアミドジアミンドナーセットを有する開鎖又はマクロ環状リガンドであるNリガンド、例えばサイクラム、モノオキソサイクラム又はジオキソサイクラム。
【0071】
(v)ジアミンジフェノールドナーセットを有するNリガンド。
【0072】
上記リガンドはテクネチウム、例えば94mTc又は99mTcの錯化に特に適しており、Jurisson et al.、[Chem.Rev., 99, 2205−2218 (1999)]に更に詳細に説明されている。これらのリガンドは、他の金属、例えば銅(64Cu又は67Cu)、バナジウム(例えば48V)、鉄(例えば52Fe)又はコバルト(例えば55Co)にも有用である。他の適当なリガンドとしては、Sandozの国際公開第91/01144号に記載されたものがあり、インジウム、イットリウム及びガドリニウムに特に適したリガンド、特にマクロ環アミノカルボキシレート及びアミノホスホン酸リガンドが挙げられる。ガドリニウムの非イオン系(即ち中性)の金属錯体を形成するリガンドは公知であり、米国特許第4885363号に記載されている。放射性金属イオンがテクネチウムである場合は、リガンドは好ましくは4座のキレート剤である。テクネチウムに対する好ましいキレート剤はジアミンジオキシム又は上記N又はNSのドナーセットを有するものである。
【0073】
造影性基が放射性ハロゲン、例えばヨウ素である場合は、カスパーゼ−3阻害剤は以下の要素、即ち:非放射性前駆体ハロゲン原子、例えばアリールのヨウ化物又は臭化物(放射性ヨウ素交換を可能とするため)、活性化前駆体アリール環(例えばフェノール基)、有機金属前駆体化合物(例えばトリアルキルスズ又はトリアルキルシリル)、有機前駆体、例えばトリアゼン又は求核置換反応のための良好な脱離基、例えばヨードニウム塩を含むように適宜選択される。放射性ハロゲン(例えば123I及び18F)を導入する方法は、Bolton、[J.Lab.Comp.Radiopharm.,45,485−528(2002)]に記載されている。放射性ハロゲン、特にヨウ素が結合することができる適当な前駆体アリール基の例を以下に示す。
【0074】
【化10】

【0075】
両者共に芳香族環上への容易な放射性ヨウ素置換を可能とする置換基を含んでいる。放射性ヨウ素を含む別の置換基は、例えば以下に示すような放射性ハロゲン交換による直接ヨウ素化によって合成できる。
【0076】
【化11】

【0077】
造影性基がヨウ素の放射性同位体である場合は、放射性ヨウ素原子は好ましくは芳香族環、例えばベンゼン環又はビニル基に直接の共有結合で結合する。飽和脂肪族系に結合しているヨウ素原子は生体内代謝を受けやすく、放射性ヨウ素が消失しやすいことが知られているからである。
【0078】
造影性基がフッ素の放射性同位体(例えば18F)を含む場合は、その放射性ハロゲン化は、アルキルブロミド、アルキルメシレート又はアルキルトシレートのような良好な脱離基を有する適当な前駆体との18F−フロリドの反応を用いた直接標識によって実施し得る。18Fはまた、N−(CH18Fを得るための18F(CHOMs(Msはメシレート)のようなアルキル化剤を用いたアミン前駆体のN−アルキル化によるか、又は、18F(CHOMs又は18F(CHBrを用いたヒドロキシル基のO−アルキル化によって導入することもできる。18Fはまた、18F(CHOH反応物を用いるN−ハロアセチル基のアルキル化で導入されて−NH(CO)CHO(CH18F誘導体を生じさせることもできる。アリール系については、アリールジアゾニウム塩からの18F−フロリド求核置換、アリールニトロ化合物又はアリール第四級アンモニウム塩がアリール−18F誘導体への適切な経路である。
【0079】
第一級アミン含有カスパーゼ−3阻害剤もまた、Kahn et al.[J. Lab. Comp. Radiopharm. 45, 1045−1053 (2002)]及びBorch et al.[J. Am. Chem. Soc. 93, 2897 (1971)]に教示されているように、18F−C−CHOを用いる還元的アミノ化で18Fで標識することができる。このやり方は、アリール第一級アミン例えばフェニル−NH又はフェニル−CHNH基を含む化合物などにも有効に応用することができる。ハロアルキルケトン官能基を同様に含有していないペプチド系阻害剤については、このやり方は、Poethkoら[J.Nuc.Med., 45, 892−902 (2004)]に教示されているように、ペプチドのアミノオキシ誘導体に応用することができる。
【0080】
アミン含有カスパーゼ−3阻害剤は、また、18F標識活性エステル例えば
【0081】
【化12】

【0082】
と反応させてアミド結合でつながった生成物を生じさせることによって18Fで標識することもできる。前掲のN−ヒドロキシスクシンイミドエステル及びそれのペプチド標識のための使用は、Vaidyanathan et al.[Nucl. Med. Biol., 19(3), 275−281 (1992)]及びJohnstrom et al.[Clin. Sci., 103 (Suppl. 48), 45−85 (2002)]に教示されている。18F標識誘導体への合成経路のさらなる詳細は、Bolton、J. Lab. Comp. Radiopharm., 45, 485−528 (2002)に記載されている。
【0083】
インビボでの最大の感度のためには、造影性基が放射性元素を含むことが最も好ましい。造影性基は、陽電子放出型又はγ線放出型放射性同位元素を好ましくは含む。
【0084】
本発明の合成カスパーゼ−3阻害剤は、以下の(i)〜(ix)から好ましくは選択される。
(i)式IIIのテトラペプチド誘導体
−Asp−Xaa1−Xaa2−Asp−X (III)
(式中、Zは、テトラペプチドのN末端に結合した代謝阻害基であり、
Xaa1及びXaa2は、独立に任意のアミノ酸であり、
Aspは、アスパラギン酸に対する通常の3文字の略語であり、
は、テトラペプチドのカルボキシ末端に結合した−R又は−CHOR基であり、
は、H、−CHF、−CHCl、Cアルキル、Cアルコキシ又は−(CHArであり、
qは、1〜6の整数であり、Arは、C12アリール、C12アルキル−アリール、C12フルオロ置換アリール又はC12ヘテロアリールであり、
は、Cアルキル、C10アシル又はArである)、
(ii)キナゾリン又はアニリノキナゾリン、
(iii)2−オキシインドールスルホンアミド、
(iv)オキソアゼピノインドリン、
(v)式IVの化合物
【0085】
【化13】

【0086】
(式中、Xは、H、Cアルキル又は−(CH−(S)−(CHArであり、r及びtは、0〜6の整数であり、sは、0又は1であり、Arは、C12アリール、C12アルキル置換アリール、C12ハロ置換アリール又はC12ヘテロアリールであり、
ArはC12アリール又はC12ヘテロアリールであり、
は、R基であり、
は、−SO−又は−CR−であり、
は、H、Cアルキル又はPGPであり、PGPは保護基であり、
は、R基又はCアシルであり、
各Rは独立に、H又はCアルキルである)
(vi)式Vの化合物
【0087】
【化14】

【0088】
(vii)ピラジノン、
(viii)式VIのジペプチド
−Val−Asp−CH−S−R (VI)
(式中、−CH−S−R基は、ジペプチドのカルボキシ末端に結合しており、Z及びRは、式(III)に対して定義したものである)、
(ix)式XIのサリチル酸スルホンアミド
【0089】
【化15】

【0090】
(式中、Arは、5又は6員のCアリール又はヘテロアリール環であり、Xは、H又は−CHSRであり、Rは上記で定義した通りである)。
【0091】
用語「アミノ酸」は、上記で定義した通りである。
【0092】
式IIIのペプチドアルデヒド(X=R=H)、ケトン[X=R=Cアルキル又は−(CHAr]又はフェノキシメチルケトン(X=−CHOR及びR=Ar=フェニル)の阻害剤は、可逆性のカスパーゼ阻害剤であり、一方クロロメチル及びフルオロメチル誘導体(X=R=−CHF又は−CHCl)に加えてアシルオキシメチルケトン(X=−CHOR及びR=C10アシル)は、不可逆性の阻害剤である。ハロメチルケトンペプチドは、カスパーゼ−3のシステインチオールに結合してチオメチルケトンを形成し、かくして酵素を不可逆的に不活性にするものと考えられる。前述のとおりそのような不可逆性の阻害剤が好ましい。従って、式IIIのXは、好ましくは、−CHF又は−CHORであり、R=C10アシルである。RがC10アシルである場合、好ましい該アシル基は、(2,6−ジメチルフェニル)(C=O)−又は[2,6−ビス(トリフルオロメチル)フェニル](C=O)等の2,6−二置換ベンゾイルである。
【0093】
用語「代謝阻害基」(Z)とは、アミノ末端におけるペプチド又はアミノ酸の代謝を生体内で阻害又は抑圧する生体適合性の基を意味する。該基は、当業者にはよく知られており、ペプチドアミン末端に対して、アセチル、Boc(Bocは、t−ブチルオキシカルボニルである)、Fmoc(Fmocは、フルオレニルメトキシカルボニルである)、ベンジルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[即ち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]又はNpys(即ち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から適切に選択される。ペプチドN末端に対する好ましい代謝阻害基は、アセチルである。
【0094】
式IIIにおいて、Xaa1及びXaa2は、最も好ましくは任意のL−アミノ酸である。Xaa1−Xaa2は、式IIIの好ましい化合物が、Z−Asp−Glu−Val−Asp−X又はZ−Asp−Gln−Met−Asp−X(即ち、Z−DEVD−X又はZ−DQMD−X)であるように、好ましくはGlu−Val又はGln−Metである。
【0095】
式IIIにおいて、アスパルチル及びグルタミル側鎖のカルボキシ基は、カスパーゼ−3阻害剤が強力であるように遊離のカルボキシレートとして好ましくは存在する。しかしながら、そのカルボキシ基は、又、細胞透過性を改良するためにエステル、例えばメチルエステルとして存在することもできる。そのエステルは、後に、非壊死細胞中に存在するエステラーゼによって脱保護される。式IIIについて、造影性基は、Z又はXの位置に好ましくは結合している。造影性基が金属を含む場合、式IIIのペプチドのペプチドアミン又はカルボキシル末端の代謝の阻害は、いずれか又は両方の末端のその金属の金属錯体への結合で好ましくは達成される。
【0096】
用語「保護基」(PGP)とは、望ましくない化学反応を阻害又は抑圧するが、十分に反応性であって、分子残部を修飾することのない十分に穏やかな条件下でそれが問題の官能基から切断することができるように設計されている基を意味する。脱保護の後、所望の生成物が得られる。保護基は、当業者にはよく知られており、アミン基に対しては、Boc(Bocは、t−ブチルオキシカルボニルである)、Fmoc(Fmocは、フルオレニルメトキシカルボニルである)、トリフルオロアセチル、アリルオキシカルボニル、Dde[即ち、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)エチル]又はNpys(即ち、3−ニトロ−2−ピリジンスルフェニル)から、カルボキシル基に対しては、メチルエステル、t−ブチルエステル又はベンジルエステルから適切に選択される。ヒドロキシル基に対する適当な保護基は、ベンジル、アセチル、ベンゾイル、トリチル(Trt)又はテトラブチルジメチルシリル等のトリアルキルシリルである。チオール基に対して適当な保護基は、トリチル及び4−メトキシベンジルである。さらなる保護基の使用は、’Protective Groups in Organic Synthesis’ Theorodora W. Greene and Peter G. M. Wuts (Third Edition, John Wiley & Sons, 1999)に記載されている。
【0097】
式IIIのいくつかのカスパーゼ−3阻害剤は、市販されており、例えば、Ac−DEVD−CHO、Ac−AAVALLPAVLLALLAP−DEVD−CHO、Z−DEVD−FMK、及びAc−DEVD−CMKを、VWR INTERNATIONAL LTD. Hunter Boulevard,Magna Park,Lutterworth LE17 4XN UNITED KINGDOM経由でCalbiochemから購入することができる。その他は、Thornberry et al [J.Biol.Chem., 272 (29), 17907−17911 (1997); ibid, 273 (49), 32608−32613 (1998)]に記載されているようにして調製することができる。本発明のペプチド含有カスパーゼ−3阻害剤及びリーダーペプチドは、又、P. Lloyd−Williams, F. Albericio and E. Girald; Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins, CRC Press, 1997に記載されているように、通常の固相合成によっても得ることができる。
【0098】
キナゾリン又はアニリノキナゾリンカスパーゼ−3阻害剤については、Scott et al [J. Pharmacol. Exper. Ther., 304(1), 433−440 (2003)]に記載されている。好ましい上記化合物は一般式VIIを有する。
【0099】
【化16】

【0100】
式中、Rは、H又はClであり、
は、Cl又はFであり、
は、−CONH−X又は−CH=CH−Arであり、Xは、Cアルキル、Cアルケニル又は−(CHArであり、sは、0又は1であり、Arは、−Cであり、Xは、Hal、CF又は−SONRである。
及びRは、独立にCアルキルであるか、又は結合してCシクロアルキル環を形成していてもよい。
は、好ましくは、−CONH−X(Xは−(CHArである)であり、Xは、好ましくは、F、CF又は−SONC10である。
【0101】
本発明の好ましい2−オキシインドールスルホンアミド誘導体は、式VIIIのものである。
【0102】
【化17】

【0103】
式中、Rは、H又はCアルキルであり、
10は、C10アルキル、アリールCアルキル、ヘテロアリールCアルキルCシクロアルキルであり、或いは、R及びR10は、それらが結合している窒素原子と共に、O、N又はSから選択されるさらなるヘテロ原子を適宜含有する3〜10員環を形成しており、
11及びR12は独立に、H、Cアルキル、NO又はHalであり、
13は、H、Cアルキル、C12アリールアルキル又はC12ヘテロアリールアルキルであり、
14及びR15は、それらが結合している炭素原子と共に、C=Oカルボニル基を形成している。
【0104】
式VIIIにおいて、R14及びR15は、好ましくは共にC=Oに相当し、即ち、イサチン誘導体である。R13は、好ましくは、H又はCHである。R及びR10は、好ましくは、Cシクロアルキル、最も好ましくは、Cシクロアルキルである。R及びR10が、Cシクロアルキルである場合、そのシクロアルキル環は、X基で好ましくは置換されており、Xは、−CHOR16又は−CHNHR16であり、R16は、Cアルキル又はCアリールである。式VIIIの2−オキシインドール誘導体は、Lee et al [J.Biol.Chem., 275, 16007−16014 (2000)]に記載されているようにして調製することができる。
【0105】
造影性基は、式VIIIの阻害剤の好ましくはR、R10、R11、R12又はR13の置換基に、最も好ましくはR、R10又はR13の置換基に結合している。18F標識については、R13は、4−18F−ベンズアルデヒドイミンのルート(前述の)に対しては−CHONHであり、18F−(CHBr又は18F−(CHOTsタイプのO−アルキル化剤による標識に対しては−CHOHであるようにいずれかを選択する。別法では、R13は、直接のNアルキル化が所望の18F誘導体をもたらすようにHであるように選択する。
【0106】
本発明の好ましいオキソアゼピノインドリンは、IDN5370であり、式IXで示される。
【0107】
【化18】

【0108】
最も好ましいオキソアゼピノインドリンは、インダンA(Indun A)である。
【0109】
【化19】

【0110】
本発明のオキソアゼピノインドリンは、Deckwerth et al [Drug Devel. Res., 52, 579−586 (2001)]及び国際公開第98/11109号に記載されている。
【0111】
本発明のピラジノンは、式Xのものが適当である。
【0112】
【化20】

【0113】
式中、
17は、OH、NH、NHR、N(R、R、Cアルコキシ、Ar、Het、X(CO)−、XSO−又はXSO−であり、
各Rは独立に、OH、Hal、COH、CF、NH、NHCH、N(CH、Ar及びCアシルから選択される1〜3個の置換基で適宜置換されていてもよいCアルキルであり、
Arは、1〜3個のOH、Hal、COH、CF、NH、NHCH、N(CH、Cアルキル、Cアルコキシ、Het又はCアシル置換基で適宜置換されていてもよいC14芳香族環であり、
は、R、Ar又はHetであり、
Hetは、O、S及びNから選択される1〜4個のヘテロ原子を含有し、1個又は2個のオキソ基、及びCアルキル、Cアルコキシ、Cアシル及びCFから選択される1〜3個の基で適宜置換されていてもよい5〜15員のヘテロ環又はヘテロアリール環であり、
18は、H、C20アルキル、Ar又はHetであり、
19は、H、Hal又はCアルキルであり、
20は、H、Cアルキル、Ar、Het、−(CHSR、−(CHOR、−(CHOC(O)R又は−(CHNR2122であり、zは、1、2又は3であり、
は、Cアルキル、Ar又はHetであり、
21及びR22は独立に、H、R、Ar又はHetであり、或いはR21及びR22は、それらが結合している窒素原子と共に、O、S及びNから選択される1〜4個のヘテロ原子を含有し、1個又は2個のオキソ基、及びCアルキル、Het、Cカルボキシ、Cアシル及びCカルボキシアミドから選択される1〜3個の基で適宜置換されていてもよい3〜10員の環系を形成しており、
及びRは独立に、H、Cアルキル又はArであるか、或いはそれらが結合している炭素原子と組み合わさって、O、S及びNR23(R23は、H、Cアルキル又はCアシルである)から選択される1個のヘテロ原子を適宜含有する3〜7員の非芳香族脂環式又はヘテロ環式の環を形成していてもよく、
及びRは独立に、H、Ar、Cアルキル、Cアルコキシアルキル、又はCシクロアルキルであり、
wは、0〜6の整数である。
【0114】
カスパーゼ−3に対して選択的である好ましいピラジノンは、L−826、791又はM−826である[Hotchkiss et al, Nature Immunol., 1(6), 496−501 (2000)]。
【0115】
【化21】

【0116】
本発明のピラジノンカスパーゼ−3阻害剤の合成は、米国特許第6444811号に記載されており、スキーム1(次ページ)に示されている。出発材料は、市販されているジメチルグリオキシムである。
【0117】
【化22】

【0118】
式Vの化合物は、国際公開第03/024955号に記載のようにして調製することができる。式VIの化合物は、スキーム2に示すようにして調製することができる。
【0119】
【化23】

【0120】
式VIのジペプチド阻害剤は、アスパルチルケトンであり、Han et al [Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004, 14, 805−808)]に記載されている。強力で選択的なカスパーゼ−3阻害剤が存在する。式VIに対して、造影性基は、Z又はXの位置に付いているのが好ましい。式VIの好ましいカスパーゼ−3阻害剤は、式VIaのものである。
【0121】
【化24】

【0122】
式中、R24は、C12アリール又はC12ヘテロアリールであり、
25は、Cアルキル又はベンジルであり、そのベンジル基のフェニル環は、1個又は2個のハロゲン原子で適宜置換されており、
24は、好ましくはベンジル基であって、そのベンジル基のフェニル環は、ハロゲン、Cアルコキシ、Cカルボキシル又はCカルボキシエステル基で置換されたCアルコキシ、Cアシル、Cアルケニル又はCアルキルスルホニルから選択された1個又は2個の基で適宜置換されている。
25は好ましくはベンジル基又は2−クロロ−5−フルオロ−ベンジル基である。
特に好ましい式VIの阻害剤は、Rに置換された2−クロロ−6−フルオロベンジル基及びZに2,5−二置換ベンジルカルボニルを含有する。これらは、式VIbのものである。
【0123】
【化25】

【0124】
阻害剤6A、6A’、6B及び6Cは、ナノモル範囲の低いところのカスパーゼ−3に対するIC50を示す[Han et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004, 14, 805−808)]。エステル誘導体の6A及び6Bは、細胞内で加水分解されてより強力な酸6A’となる。
【0125】
式VIの化合物及びそれに基づく最も好ましい強力なカスパーゼ−3阻害剤の合成については、Han et al. [Bioorg. Med. Chem. Lett., 14(3), 805−808 (2004)]に記載されている。造影性基は、好ましくは式VIbのフェニル環のいずれかに、最も好ましくはZの位置に付着している。18F標識は、スキーム3に示すようにして導入されるものと考えられる。
【0126】
【化26】

【0127】
式XIの阻害剤は、Choong et al. [J. Med. Chem. 45, 5005−5022 (2002)]、Erlanson et al. [Nature Biotech., 21, 308−314 (2003)]又は国際公開第03/024955号の方法で調製することができる。式XIの好ましい阻害剤は、フェニル、チオフェン又はピリジンから選択されるAr、特にチオフェンを有する。式XIにおいて、Xは、好ましくは−CHSArであり、Arは、ハロゲンで置換されているフェニル環である。式XIの好ましい阻害剤は、式XIaのものである。
【0128】
【化27】

【0129】
本発明の好ましいカスパーゼ−3阻害剤は、式IIIのテトラペプチド、式VIのジペプチド又は式VIIIの2−オキシインドールスルホンアミドである。最も好ましい阻害剤は、式IIIのテトラペプチド及び式VIのジペプチドである。
【0130】
本発明の造影剤が、放射性又は常磁性金属イオンを含む場合、その金属イオンは、適切には金属錯体として存在する。該金属錯体は、式Iaのコンジュゲートと適切な金属イオンとの反応によって適切に調製される。式Iaのカスパーゼ−3阻害剤のリガンドコンジュゲート又はキレーターコンジュゲートは、二官能キレートの手法で調製することができる。従って、官能基(それぞれ「二官能性リンカー」又は二官能性キレート」)をそこに結合させたリガンド又はキレート剤を調製することはよく知られている。結合されている官能基としては、アミン、チオシアネート、マレイミド及び活性エステル類例えばN−ヒドロキシスクシンイミド又はペンタフルオロフェノールなどが挙げられる。本発明のキレーター1は、アミン官能化二官能性キレートの例である。上記二官能性キレートは、カスパーゼ−3阻害剤上の適当な官能基と反応して所望のコンジュゲートを形成することができる。カスパーゼ−3阻害剤上のかかる適当な官能基としては、カルボキシル(アミン官能化二官能性キレーターとのアミド結合形成用)、アミン(カルボキシル又は活性エステル官能化二官能性キレーターとのアミド結合形成用)、ハロゲン、メシレート及びトシレート(アミン官能化二官能性キレーターのN−アルキル化用)及びチオール(マレイミド官能化二官能性キレーターとの反応用)が挙げられる。
【0131】
本発明の放射性金属錯体は、適当なpHで式Iaのリガンドコンジュゲートに適当な酸化状態の放射性金属の溶液を反応させることによって調製することができる。溶液は好ましくは金属と弱く錯形成するリガンド(例えばグルコネート又はシトレート)を含み、即ち放射性金属錯体はリガンドの交換又はトランスキレート化で調製する。かかる条件は金属イオンの加水分解のような不都合な副反応を抑制するのに有用である。放射性金属イオンが99mTcの場合は、通常の出発材料は99Mo発生物質に由来のナトリウムペルテクネテートである。テクネチウムは比較的非反応性であるTc(VII)酸化状態における99mTcペルテクネテート中に存在する。酸化状態の低いTc(I)〜Tc(V)のテクネチウム錯体の調製は、それ故通常は錯形成を促進するために、ナトリウムジチオナイト、ナトリウムビスルファイト、アスコルビン酸、ホルムアミジンスルフィン酸、スズイオン、Fe(II)又はCu(I)のような適当な薬学的に許容される還元剤の添加を必要とする。薬学的に許容される還元剤は好ましくはスズ塩、最も好ましくは塩化スズ、フッ化スズ又は酒石酸スズである。
【0132】
造影性基が過分極NMR活性核種、例えば過分極13C原子である場合、所望の過分極化合物は適当な13C富化カスパーゼ−3阻害剤への過分極ガス(例えば129Xe又はHe)からの分極交換で調製することができる。
【0133】
第2の態様において、本発明は哺乳類への投与に適した形態の生体適合性キャリヤーと共に上記造影剤を含む医薬組成物を提供する。「生体適合性キャリヤー」とは流体、特に液体であり、組成物が生理学的耐容性をもち、即ち、毒性又は予定外の不快感を伴うことなく哺乳類の身体内に投与できるように造影剤を懸濁又は溶解できるものである。生体適合性キャリヤーは適宜、注射用キャリヤー液体、例えば滅菌された発熱物質非含有の注射用水、水溶液、例えば生理食塩水(注射用の最終生成物が等張性又は非低張性であるように好都合に平衡されていてよい)、浸透圧調節物質(例えば生体適合性対イオンを有する血漿中カチオンの塩)、糖類(例えばグルコース又はスクロース)、糖アルコール(例えばソルビトール又はマンニトール)、グリコール(例えばグリセロール)又は他の非イオン性ポリオール物質(例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール等)の1種以上の水溶液である。
【0134】
第3の態様において、本発明は、哺乳類への投与に適した形態の生体適合性キャリヤー(上記の第2の態様において定義)と共に造影性基が放射性である上記造影剤を含む放射性医薬組成物を提供する。かかる放射性医薬品は無菌状態を維持しながら皮下注射用の針で単回又は複数回穿刺するのに適したシール(例えばクリンプドオンセプタムシール蓋)と共に提供される何れかの容器中において供給されるのが適している。かかる容器は単回又は多数回の患者用量を含有することができる。好ましい多用量の容器には、多数回の患者用量を含む単一の大型バイアル(例えば10〜30cm容量)を含み、これによって単回分の患者用量を臨床用等級のシリンジ内に様々な時間間隔で臨床状況に適した製剤の有効期限内に取り出すことができる。充填済みシリンジはヒト用単回用量を含むように設計され、従って好ましくは使い捨て又は他の臨床用途に適したシリンジである。充填済みシリンジは適宜放射線量からオペレーターを保護するためにシリンジシールドと共に提供してよい。適当なかかる放射性医薬品用シリンジシールドは当該分野で知られており、好ましくは鉛又はタングステンを含む。
【0135】
造影性基が99mTcを含む場合、診断イメージング放射性医薬品に適した放射線の含量は生体内でイメージングされる部位、取り込み及び標的のバックグラウンドに対する比に応じて、99mTcの180〜1500MBqの範囲である。
【0136】
本発明の放射性医薬品は、以下の第5及び第6の実施形態に記載されているキットで調製することができる。別法では、放射性医薬品は、所望の滅菌製品を生じさせるために無菌製造条件下で調製することができる。その放射性医薬品は、また、非無菌条件下で調製した後に、例えばγ線照射、高圧蒸気殺菌、乾式加熱又は化学的処理(例えばエチレンオキシドによる)を用いる最終的な殺菌を続けてもよい。好ましくは、本発明の放射性医薬品はキットから調製する。
【0137】
第4の態様において、本発明は本発明の合成カスパーゼ−3阻害剤のリガンドとのコンジュゲートを提供する。前記コンジュゲートは放射性金属イオン又は常磁性金属イオンのいずれかで標識した合成カスパーゼ−3阻害剤の製造に有用である。好ましくは、そのリガンドコンジュゲートは上で定義した式Iaのものである。本発明の第4の態様のコンジュゲートのリガンドは、好ましくはキレート剤である。好ましくは、そのキレート剤は、ジアミンジオキシム、Nジアミンジチオール又はNSジアミンピリジンチオールドナーセットを有する。最も好ましくは、そのキレート剤は、ジアミンジオキシムである。
【0138】
第5の態様において、本発明は、造影性基が、放射性金属を含む上記の放射性医薬組成物を調製するための非放射性キットを提供する。そのキットは、リガンドの式(I)のカスパーゼ−3阻害剤とのコンジュゲートを含む。その放射性金属が99mTcである場合は、そのキットは生体適合性の還元剤を適切にはさらに含む。リガンドコンジュゲート、及びその好ましい態様は、上の第4の態様に記載されている。
【0139】
かかるキットは例えば血流中への直接の注射によるヒトへの投与に適した滅菌された放射性医薬品を生じるように設計される。99mTcについては、そのキットは、好ましくは凍結乾燥され、99mTc放射性同位体発生物質由来の無菌の99mTc−ペルテクネテート(TcO−)と共に希釈再調製することによってさらなる操作無しのヒトへの投与に適した溶液を与えるように設計されている。適当なキットは、ナトリウムジチオナイト、ナトリウムビスルファイト、アスコルビン酸、ホルムアミジンスルフィン酸、スズイオン、Fe(II)又はCu(I)のような「生体適合性の還元剤」と共に遊離の塩基塩又は酸塩のいずれかの形態のリガンド又はキレーターコンジュゲートを含有する容器を含む。その生体適合性還元剤は好ましくはスズ塩、例えば塩化スズ又は酒石酸スズなどである。別法では、そのキットは、放射性金属を添加すると金属交換反応(即ち、金属の転換)に会って所望の生成物を生じる金属錯体を適宜含有していてもよい。
【0140】
適当なキットは、無菌状態及び/又は放射能安全性と、その上場合によって不活性のヘッドスペースガス(例えば窒素又はアルゴン)を維持することを可能とし、一方シリンジによる溶液の追加及び引き出しを可能にする密封容器を含む。好ましいかかる容器は、気密クロージャがオーバーシール(一般的にはアルミニウム製)と共に圧着されているセプタム密封バイアルである。かかる容器は、そのクロージャが、必要に応じて、例えばヘッドスペースのガスを交換するか又は溶液からガスを抜くときに真空に耐えることができるというさらなる利点を有する。
【0141】
非放射性キットは適宜更にトランスキレート剤、放射能保護剤、抗微生物保存料、pH調節剤又は充填剤のような別の成分を含むことができる。「トランスキレート剤」とは急速に反応して放射性金属と弱い錯体を形成し、次いでリガンドで置き換えられる化合物である。テクネチウムについては、これによってテクネチウム錯体形成と競合するペルテクネテートの急速な還元による還元加水分解テクネチウム(RHT)の形成の危険性が最小限となる。適当なかかるトランスキレート剤は、弱い有機酸、即ち3〜7のpKaを有する有機酸と、生体適合性のカチオンの塩である。適当な上記の弱い有機酸は、酢酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、安息香酸、フェノール又はホスホン酸である。従って適当な塩は、酢酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩、フェノレート又はホスホン酸塩である。好ましいかかる塩は酒石酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩又はホスホン酸塩であり、最も好ましくはホスホン酸塩であり、特にジホスホン酸塩である。「生体適合性カチオン」という用語は、イオン化した負帯電基と塩を形成する正帯電した対イオンを意味し、前記正帯電した対イオンは、また、無毒性であり、従って哺乳類の身体、特に人体に投与するのに適している。適当な生体適合性カチオンの例としては、アルカリ金属のナトリウム又はカリウム、アルカリ土類金属のカルシウム及びマグネシウム、並びにアンモニウムイオンが挙げられる。好ましい生体適合性カチオンはナトリウム及びカリウムであり、最も好ましくはナトリウムである。好ましいかかるトランスキレート剤はMDP、即ちメチレンジホスホン酸の生体適合性カチオンとの塩である。
【0142】
「放射能保護剤」という用語は水の放射線分解で生じる酸素含有フリーラジカルのような高度な反応性を有するフリーラジカルを捕獲することによって酸化還元過程のような分解反応を抑制する化合物を意味する。本発明の放射能保護剤はアスコルビン酸、p−アミノ安息香酸(即ち4−アミノ安息香酸)、ゲンチシン酸(即ち2,5−ジヒドロキシ安息香酸)及び上記生体適合性カチオンとのこれらの塩から適宜選択される。
【0143】
「抗微生物保存料」という用語は、細菌、酵母又はカビのような潜在的に有害な微生物の生育を抑制する薬剤を意味する。抗微生物保存料はまた用量に応じてある程度の殺菌作用も有する。本発明の抗微生物保存料の主な役割は、希釈再調製後の放射性医薬組成物中、即ち放射性診断用品自体中の何れかのかかる微生物の生育を抑制することである。しかしながら抗微生物保存料は、また、適宜希釈再調製前の本発明の非放射性キットの成分1種以上中の潜在的に有害な微生物の生育を抑制するために使用し得る。適当な抗微生物保存料としては、パラベン類、即ちメチル、エチル、プロピル又はブチルパラベン又はこれらの混合物、ベンジルアルコール、フェノール、クレゾール、セトリミド及びチオメルサールが挙げられる。好ましい抗微生物保存料はパラベン類である。
【0144】
「pH調節剤」という用語は、希釈再調製キットのpHがヒト又は哺乳類への投与のための許容限度(約pH4.0〜10.5)内とするために有用な化合物又は化合物の混合物を意味する。かかるpH調節剤として適当なものとしては、薬学的に許容される緩衝物質、例えばトリシン、ホスフェート又はTRIS[即ちトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン]及び薬学的に許容される塩基、例えば炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム又はこれらの混合物が挙げられる。コンジュゲートが酸の塩の形態で用いられる場合は、pH調節剤は適宜、キットのユーザーが多段階手順の一部としてpHを調節できるように個別のバイアル又は容器内に入れて提供することができる。
【0145】
「充填剤」という用語は、製造及び凍結乾燥の間の材料の取り扱いを容易にする薬学的に許容される増量剤を意味する。適当な充填剤としては、塩化ナトリウムのような無機塩及び水溶性糖類又は糖アルコール、例えばスクロース、マルトース、マンニトール又はトレハロースが挙げられる。
【0146】
第6の態様において、本発明は造影性基が非金属放射性同位体、即ちγ線放出型放射性ハロゲン又は陽電子放出型放射性非金属を含む放射性医薬製剤の製造用キットを提供する。かかるキットは、無菌の放射性同位体源との反応で最小数の操作で所望の放射性薬品が得られるように、好ましくは無菌非発熱物質の形態で、「前駆体」を含む。かかる考え方は、放射性同位体が比較的短い半減期を有する放射性医薬品に関して、取り扱いの容易さとこれによる放射線薬剤師に対する低減された放射線量の観点から、特に重要である。従って、かかるキットの希釈再調製のための反応媒体は好ましくは上で定義した「生体適合性キャリヤー」であり、最も好ましくは水性である。
【0147】
その「前駆体」は、所望の非金属放射性同位体の好都合な化学的形態をした化学反応が所望の放射能をもつ生成物を生じさせるために最少の段階数(理想的には単一の段階)と大した精製を必要としない(理想的にはさらなる精製はなし)で実施することができるように設計された無菌の非発熱性形態をしたカスパーゼ−3阻害剤物質の非放射性誘導体を適切には含む。かかる前駆体は、良好な化学的純度で都合よく得ることができる。その「前駆体」は、カスパーゼ−3阻害剤の特定の官能基のための上で定義した保護基(PGP)を適宜含んでもよい。適当な前駆体は、BoltonのJ. Lab. Comp. Radiopharm., 45, 485−528 (2002)に記載されている。
【0148】
この実施形態の好ましい前駆体は、求電子又は求核ハロゲン化のいずれかを受け、アルキル又はハロゲン化フルオロアルキル、トシレート、トリフレート(即ち、トリフルオロメタンスルホネート)若しくはメシレートから選択されるアルキル化剤で容易にアルキル化され、或いはチオール部分をアルキル化してチオエーテル連鎖を形成する誘導体を含む。第1のカテゴリーの例は、
(a)トリアルキルスタンナン(例えば、トリメチルスタンニル又はトリブチルスタンニル)又はトリアルキルシラン(トリメチルシリル)などの有機金属誘導体、
(b)ハロゲン交換のための非放射性ヨウ化アルキル又は臭化アルキル及び求核ハロゲン化のためのアルキルトシレート、メシレート又はトリフレート、
(c)求電子ハロゲン化に向けて活性化された芳香族環(例えばフェノール)及び求核ハロゲン化に向けて活性化された芳香族環(例えばアリールヨードニウム、アリールジアゾニウム、ニトロアリール)
である。
【0149】
容易にアルキル化を受ける好ましい誘導体は、アルコール、フェノール又はアミン基、特にフェノール類及び立体的に込み入っていない第一級又は第二級アミンである。
【0150】
チオール含有放射性同位体反応物をアルキル化する好ましい誘導体は、N−ハロアセチル基、特にN−クロロアセチル及びN−ブロモアセチル誘導体である。
【0151】
前駆体は、無菌の製造条件下で使用して所望の無菌の非発熱性物質を生じさせることができる。その前駆体は、また、非無菌条件下で使用した後に、例えばγ線照射、高圧蒸気殺菌、乾式加熱又は化学的処理(例えばエチレンオキシドによる)を用いる最終的な殺菌を続けてもよい。好ましくは、前駆体は、無菌の非発熱性の形態で使用する。最も好ましくは、無菌の非発熱性前駆体は、上記のように密封された容器内で使用される。
【0152】
キットの「前駆体」は、固体支持体マトリックスに共有結合した状態で好ましくは供給される。こうすることによって、所望の放射性医薬品が溶液中に形成され、一方、出発材料及び不純物は固相に結合したままとなる。18F−フッ化物を用いた固相求電子フッ素化のための前駆体は、国際公開第03/002489号に記載されている。18F−フッ化物による固相求核フッ素化のための前駆体は国際公開第03/002157号に記載されている。キットは、それ故、適切に適合された自動化合成装置に装填することができるカートリッジを含むことができる。そのカートリッジは、固体支持体結合前駆体とは別に、望ましくないフッ化物イオンを除去するためのカラム、及び、反応混合物を蒸発させ生成物が所望通りに製剤化されるようにするために連結された適当な容器を含むことができる。合成に必要な試薬及び溶媒及び他の消耗品もまた、放射性物質の濃度、容量、デリバリー時間等に関する顧客の要望に合致するような方法で合成装置が操作できるようにするソフトウエアの入ったコンパクトディスクと共に組み込むことができる。好適には、キットの全ての要素を使い捨てとすることによって、試験相互間の混入の可能性を最小限にし、無菌であり、品質保証される。
【0153】
第7の態様において、本発明は、カスパーゼ−3が関係すると見なされる哺乳類の身体の疾患状態のインビボイメージング診断に対する第1の実施形態の造影剤の使用を開示する。かかる非侵襲性イメージングは、異常なアポトーシスにおけるカスパーゼ−3にかかわり、多数の疾患における細胞死の監視に有用であろう。細胞増殖及びアポトーシスが盛んな病態、例えば心筋梗塞、高悪性度の腫瘍及び移植片拒絶反応において、アポトーシスのイメージングは非常に役に立つものと考えられる。かかるイメージングは、又、これらの状態の化学療法薬治療の監視においても有益であろう。
【0154】
アポトーシスが重要であると思われるが、アルツハイマー病のようなアポトーシス事象の数が比較的まれなその他の疾患においては、利用できる細胞プールが小さく、従って可視化するのがより一層困難である。それ故、本発明のアポトーシス造影剤は、アポトーシスが、心筋梗塞、高悪性度の腫瘍及び移植片拒絶反応において見られるように比較的急性である病態に適用するのが最善であるように考えられる。アポトーシスが、神経病又は悪性度の少ない腫瘍等のより慢性的である疾患については、アポトーシス細胞は、上のバックグラウンドに記録するには不十分であり得る。
【0155】
基本的に、放射線治療、化学療法又は免疫療法を含むすべての癌治療は、それらの腫瘍細胞標的におけるアポトーシスを誘発させようとするものである。アポトーシスのイメージングは、癌患者が扱われている方法を根本的に改めることができる腫瘍治療の効果の迅速で直接の評価又は監視を提供する可能性を有し得る。その人の腫瘍が治療に応答している患者は、腫瘍中の高められたアポトーシス反応で造影剤の著しく増加した取り込みを示すことが予想される。腫瘍がさらなる治療に応答しない患者は、彼らの腫瘍が治療後造影剤を取り込まないことによって確認することができる。
【0156】
測定可能な病気の癌患者における治療的介入の評価には、以下のいくつかの応用がある:
・新しい抗癌剤の抗新生物活性の評価、
・有効な治療措置を決定すること、
・新しい抗癌剤に対する最適用量及び服薬スケジュールの確認、
・既存抗癌剤及び複合薬に対する最適用量及び服薬スケジュールの確認、
・臨床試験における癌患者の、治療措置の応答者及び非応答者へのより効果的な層別化、
・個々の患者の設定された治療上の抗癌措置に対する応答の効果的で時機を得た評価。
【実施例】
【0157】
本発明を以下に詳述する非限定的な実施例で説明する。実施例1は化合物1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの合成について説明する。実施例2は潜在的に有害なアジド中間体の使用を回避する1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの別の合成法を提供する。実施例3はクロロニトロソアルカン前駆体の合成について説明する。実施例4は本発明の好ましいアミン置換二官能性ジアミンジオキシムの合成について説明する(キレーター1)。実施例5は、本発明のペプチド阻害剤の合成法を提供する。実施例6及び8は、本発明の2個の放射性ハロゲン化前駆体の合成法を提供する。実施例7は、本発明の非ペプチドカスパーゼ−3阻害剤の合成法を提供する。実施例9は、カスパーゼ−3阻害剤アッセイについて、実施例10は、細胞に基づくカスパーゼ−3アッセイについて説明する。実施例11及び12は、カスパーゼ−3阻害剤の18F放射能標識のための適当な18F標識化合物の合成法を提供する。実施例13は、本発明の阻害剤の放射性ヨウ素化について説明する。
【0158】
実施例1
1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの合成
(段階a):3−(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル
トルエン(600ml)中のカルボメトキシメチレントリフェニルホスホラン(167g、0.5モル)をジメチル3−オキソグルタレート(87g、0.5モル)で処理し、反応混合物を36時間窒素雰囲気下で120℃の油浴上で100℃に加熱した。次に反応混合物を真空下で濃縮し、油状の残留物を40/60石油エーテル/ジエチルエーテル1:1、600mlで粉状にした。トリフェニルホスフィン酸化物を沈殿させ、上清をデカントし、濾去した。真空下で蒸発させた残留物を高真空Bpt(0.2トルでオーブン温度180〜200℃)下にクーゲルロール蒸留し、3−(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル(89.08g、53%)を得た。
NMR H(CDCl):δ3.31(2H,s,CH)、3.7(9H,s,3×OCH)、3.87(2H,s,CH)、5.79(1H,s,=CH,)ppm。
NMR 13C(CDCl)δ36.56、CH、48.7、2×CH、52.09及び52.5(2×CH);122.3及び146.16 C=CH;165.9、170.0及び170.5 3×COO ppm。
【0159】
(段階b):3−(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステルの水素化
メタノール(200ml)中の3−(メトキシカルボニルメチレン)グルタル酸ジメチルエステル(89g、267mmol)を(30時間)にわたって水素ガス(3.5バール)雰囲気下で(10%Pd/C:50%水)(9g)とともに振盪した。溶液をケイソウ土を通して濾過し、真空下に濃縮して、油状物として3−(メトキシカルボニルメチル)グルタル酸ジメチルエステルを得た、収量(84.9g、94%)。
NMR H(CDCl)、δ2.48(6H,d,J=8Hz,3×CH)、2.78(1H,六重線,J=8Hz CH,)3.7(9H,s,3×CH)。
NMR 13C(CDCl)δ28.6、CH;37.50、3×CH;51.6、3×CH;172.28、3×COO。
【0160】
(段階c)トリメチルエステルからトリアセテートへの還元及びエステル化
3つ口2L丸底フラスコ中に窒素雰囲気下で、テトラヒドロフラン(400ml)中の水素化リチウムアルミニウム(20g、588mmol)をテトラヒドロフラン(200ml)中のトリス(メトキシカルボニルメチル)メタン(40g、212mmol)で1時間慎重に処理した。激しい発熱反応が発生し、溶媒が激しく還流した。反応混合物を3日間還流下に90℃の油浴上で加熱した。反応混合物を水素の放出が終了するまで酢酸(100ml)を慎重に滴加して失活させた。攪拌した反応混合物を穏やかな還流が生じる程度の速度で、無水酢酸溶液(500ml)で慎重に処理した。フラスコに蒸留装置を付け、撹拌し次に90℃(油浴温度)で加熱し、テトラヒドロフランを留去した。無水酢酸(300ml)をさらに添加し、反応混合物を還流配置に戻し、140℃の油浴中で5時間攪拌し、加熱した。反応混合物を放冷し、濾過した。酸化アルミニウム沈殿物を酢酸エチルで洗浄し、合わせた濾液を真空(5mmHg)下に50℃のウォーターバス温度でロータリーエバポレーター上で濃縮し、油状物を得た。油状物を酢酸エチル(500ml)に溶解し、飽和炭酸カリウム溶液で洗浄した。酢酸エチル溶液を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空下で濃縮して油状物を得た。油状物を高真空下でクーゲルロール蒸留し、油状物としてトリス(2−アセトキシエチル)メタン(45.3g、96%)を得た。沸点0.1mmHgで220℃。
NMRH(CDCl)、δ1.66(7H,m,3×CH,CH)、2.08(1H,s,3×CH);4.1(6H,t,3×CHO)。
NMR 13C(CDCl)、δ20.9、CH;29.34、CH;32.17、CH;62.15、CHO;171、CO。
【0161】
(段階d):トリアセテートからのアセテート基の除去
メタノール(200ml)中のトリス(2−アセトキシエチル)メタン(45.3g、165mM)及び880アンモニア(100ml)を2日間80℃の油浴中で加熱した。反応混合物を880アンモニア(50ml)でさらに処理し、24時間油浴中80℃で加熱した。880アンモニア(50ml)をさらに添加し、反応混合物を24時間80℃で加熱した。次に反応混合物を真空下で濃縮し、全溶媒を除去し、油状物を得た。これを880アンモニア(150ml)に溶解し、24時間80℃で加熱した。次に反応混合物を真空下で濃縮し、全溶媒を除去し、油状物を得た。クーゲルロール蒸留してアセトアミド沸点170〜180 0.2mmを得た。アセトアミドを含有するバルブをきれいに洗浄し、蒸留を続行した。トリス(2−ヒドロキシエチル)メタン(22.53g、92%)を沸点220℃ 0.2mmで蒸留した。
NMR H(CDCl)、δ1.45(6H,q,3×CH)、2.2(1H,五重線,CH);3.7(6H,t,3×CHOH);5.5(3H,brs,3×OH)。
NMR 13C(CDCl)、δ22.13、CH;33.95、3×CH;57.8、3×CHOH。
【0162】
(段階e):トリオールのトリス(メタンスルホネート)への転化
ジクロロメタン(50ml)中のトリス(2−ヒドロキシエチル)メタン(10g、0.0676モル)の攪拌氷冷溶液にジクロロメタン(50ml)中の塩化メタンスルホニル(40g、0.349モル)の溶液を温度が15℃を超えないような速度で窒素下でゆっくり滴下した。次にジクロロメタン(50ml)に溶解したピリジン(21.4g、0.27モル、4当量)を発熱反応で温度が15℃を超えないような速度で滴下して加えた。反応混合物を24時間室温で攪拌し続け、次に5N塩酸溶液(80ml)で処理し、層分離した。水層をジクロロメタン(50ml)でさらに抽出し有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、真空下で濃縮して過剰の塩化メタンスルホニルを含有するトリス[2−(メチルスルホニルオキシ)エチル]メタンを得た。理論上の収量は25.8gであった。
NMR H(CDCl)、δ4.3(6H,t,2×CH)、3.0(9H,s,3×CH)、2(1H,六重線,CH)、1.85(6H,q,3×CH)。
【0163】
(段階f):1,1,1−トリス(2−アジドエチル)メタンの調製
乾燥DMF(250ml)中のトリス[2−(メチルスルホニルオキシ)エチル]メタン[段階1(e)から、過剰の塩化メチルスルホニルに汚染されている](25.8g、67mmol、理論上)の窒素下での攪拌溶液を、アジ化ナトリウム(30.7g、0.47モル)で15分かけて少しずつ処理した。発熱が観察され、反応混合物を氷浴上で冷却した。30分後、反応混合物を24時間50℃の油浴上で加熱した。反応混合物は茶色になった。反応混合物を放冷し、希炭酸カリウム溶液(200ml)で処理し、40/60石油エーテル/ジエチルエーテル10:1(3×150ml)で3回抽出した。有機抽出物を水(2×150ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。石油/エーテル溶液にエタノール(200ml)を添加してトリアゾールを溶液中に保持し、真空下で容量を、200mlを下回らないように減量した。エタノール(200ml)を添加し、真空下に再濃縮し、エタノール溶液が200mlを下回らないように石油の痕跡を除去した。トリアゾールのエタノール溶液を段階1(g)に直接使用した。
注意:アジドは潜在的に爆発性があるので、全溶媒を除去してはいけないし、常に希溶液を保持すべきである。
溶液0.2ml未満を真空下で蒸発させてエタノールを除去し、この少量の試料でNMRを実施した。
NMR H(CDCl)、δ3.35(6H,t,3×CH)、1.8(1H,七重線,CH,)、1.6(6H,q,3×CH)。
【0164】
(段階g):1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの調製
エタノール(200ml)中のトリス(2−アジドエチル)メタン(15.06g、0.0676モル)(前反応から100%の収率と仮定)を10%Pd/C(2g、50%水)で処理し、12時間水素化した。反応容器を2時間ごとに排気し、反応混合物から出てくる窒素を除去し、水素で補充した。NMR分析のために試料を取り、トリアジドのトリアミンへの完全な転化を確認した。
警告:還元しないアジドは蒸留で爆発することがある。反応混合物を、セライトパッドを通して濾過し、触媒を除去し、真空下で濃縮して油状物としてトリス(2−アミノエチル)メタンを得た。これを0.4mm/Hgで沸点180〜200℃のクーゲルロール蒸留でさらに精製し無色の油状物(8.1g、トリオールからの全収率82.7%)を得た。
NMR H(CDCl)、δ2.72(6H,t,3×CHN)、1.41(H,七重線,CH)、1.39(6H,q,3×CH)。
NMR 13C(CDCl)、δ39.8(CHNH)、38.2(CH.)、31.0(CH)。
【0165】
実施例2
1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの別の調製法
(段階a):トリメチルエステルのp−メトキシ−ベンジルアミンによるアミド化
トリス(メチルオキシカルボニルメチル)メタン[2g、8.4mmol、上記段階1(b)の通り調製]をp−メトキシ−ベンジルアミン(25g、178.6mmol)に溶解した。蒸留のために装置を設置し、窒素気流下で、24時間120℃まで加熱した。反応の進行を収集されるメタノールの量で監視した。反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル30mlを添加し、次に沈殿したトリアミド生成物を30分間攪拌した。トリアミドを濾過で単離し、フィルターケーキを十分な量の酢酸エチルで数回洗浄し、過剰のp−メトキシ−ベンジルアミンを除去した。乾燥後、白色粉末4.6g、100%を得た。高度に不溶性の生成物をさらに精製又は特性化することなく直接次の段階で使用した。
【0166】
(段階b):1,1,1−トリス[2−(p−メトキシベンジルアミノ)エチル]メタンの調製
氷水浴中で冷却した1000ml3つ口丸底フラスコに、段階2(a)からのトリアミド(10g、17.89mmol)を注意深く加え、250mlの1Mボラン溶液、(3.5g、244.3mmol)とする。添加完了後、氷水浴を除去し、反応混合物をゆっくり60℃に加熱する。反応混合物を20時間60℃で攪拌する。反応混合物の試料(1ml)を引き出し、0.5mlの5NのHClと混合し、30分間放置した。試料に0.5mlの50NaOH、ついで水2mlを加え、白色沈殿がすべて溶解するまで溶液を攪拌した。溶液をエーテル(5ml)で抽出し、蒸発させた。残留物を1mg/mlの濃度でアセトニトリルに溶解し、MSで分析した。MSスペクトルでモノ−及びジアミド(M+H/z=520及び534)が観察された場合は、反応は完了していない。反応を完結させるため、さらに100mlの1MボランTHF溶液を加え、反応混合物を60℃でさらに6時間攪拌し、前の試料採取手順に従って新しい試料を引き出す。トリアミンへの完全な転化が完了するまで、必要に応じて1MのボランTHF溶液をさらに添加し続ける。
【0167】
反応混合物を室温まで冷却し、5NのHClをゆっくり添加する[注意:激しい泡沫形成が起こる!]。ガス放出が観察されなくなるまでHClを添加した。混合物を30分間攪拌し、次に蒸発させた。ケーキをNaOH水溶液(20〜40%、1:2w/v)中に懸濁させ、30分間攪拌した。次に混合物を水で(3倍に)希釈した。次に混合物をジエチルエーテル(2×150ml)で抽出した[注意:ハロゲン化溶媒を使用してはいけない]。合わせた有機相を次に水(1×200ml)、塩水(150ml)で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥した。蒸発後の収量:油状物として7.6g、84%。
NMR H(CDCl)、δ:1.45、(6H,m,3×CH;1.54、(1H,七重線,CH);2.60(6H,t,3×CHN);3.68(6H,s,ArCH);3.78(9H,s,3×CHO);6.94(6H,d,6×Ar)。7.20(6H,d,6×Ar)。
NMR 13C(CDCl)、δ:32.17、CH;34.44、CH;47.00、CH;53.56、ArCH;55.25、CHO;113.78、Ar;129.29、Ar;132.61;Ar;158.60、Ar;
(段階c):1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタンの調製
1,1,1−トリス[2−(p−メトキシベンジルアミノ)エチル]メタン(20.0グラム、0.036モル)をメタノール(100ml)に溶解し、Pd(OH)(5.0グラム)を添加した。その混合物を水素化し(3バール、100℃、オートクレーブ中)、5時間攪拌した。Pd(OH)をさらに2回に分けて(2×5グラム)それぞれ10及び15時間後に加えた。反応混合物を濾過し、濾液をメタノールで洗浄した。合わせた有機相を蒸発させ、残留物を真空(1×10−、110℃)下で蒸留し、前述の実施例1と同様に1,1,1−トリス(2−アミノエチル)メタン2.60グラム(50%)を得た。
【0168】
実施例3
3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンの調製
2−メチルブタ−2−エン(147ml、1.4モル)及び亜硝酸イソアミル(156ml、1.16モル)の混合物を、ドライアイス及びメタノールのバス中で−30℃に冷却し、オーバヘッドエア攪拌器で激しく攪拌し、温度を−20℃より下に維持するような速度で、濃塩酸(140ml、1.68モル)を滴下して処理した。かなりの発熱があり、過熱を防ぐために注意を払う必要があるのでこれに1時間を要する。エタノール(100ml)を添加し、添加の終わりに形成されたスラリーの粘度を低下させ、反応混合物をさらに2時間−20〜−10℃で攪拌し、反応を完了させた。沈殿物を真空下で濾過して回収し、4×30mlの冷(−20℃)エタノール及び100mlの氷冷水で洗浄し、真空乾燥し、白色固体としての3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンを得た。エタノール濾液及び洗浄液をあわせ、水(200ml)で希釈し、冷却し、−10℃で1時間放置したところ、3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンがさらに晶出した。沈殿物を濾過して回収し、少量の水で洗浄し、真空下で乾燥し、NMRによる純度>98%の3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタンの総収量(115g 0.85モル、73%)を得た。
NMR H(CDCl)、異性体の混合物として(異性体1、90%)1.5d、(2H、CH)、1.65d、(4H、2×CH)、5.85、q、及び5.95、q、共に1H。(異性体2、10%)、1.76s、(6H、2×CH)、2.07(3H、CH)。
【0169】
実施例4
ビス[N−(1,1−ジメチル−2−N−ヒドロキシイミンプロピル)2−アミノエチル]−(2−アミノエチル)メタン(キレーター1)の合成
乾燥エタノール(30ml)中のトリス(2−アミノエチル)メタン(4.047g、27.9mmol)の溶液に、無水炭酸カリウム(7.7g、55.8mmol、2当量)を窒素雰囲気下で激しく攪拌しながら室温で添加した。3−クロロ−3−メチル−2−ニトロソブタン(7.56g、55.8モル、2当量)の溶液を乾燥エタノール(100ml)に溶解し、この溶液75mlを反応混合物にゆっくり滴下した。次いで反応混合物をシリカに基づくTLC[プレートをジクロロメタン、メタノール、濃(0.88sg)アンモニア、100/30/5で処理し、ニンヒドリンを噴霧・加熱してTLCプレートを展開]に付した。モノ−、ジ−及びトリ−アルキル化生成物がその順序でのRFの増加を伴って観察された。3%アンモニア水中の7.5〜75%アセトニトリルグラジエントにおけるRPR逆相カラムを使用し分析HPLCを実施した。反応混合物を真空下で濃縮し、エタノールを除去し、水(110ml)に再懸濁させた。水性スラリーをエーテル(100ml)で抽出し、いくつかのトリアルキル化化合物及び親油性不純物を除去し、水層にモノ及び所望のジアルキル化生成物を残存させた。良好なクロマトグラフィーを確保するため水溶液を酢酸アンモニウム(2当量、4.3g、55.8mmol)で緩衝した。水溶液を自動分離用HPLCで精製する前に4℃で一晩保管した。
収量(2.2g、6.4mmol、23%)。
マススペクトル;陽イオン10Vcone電圧。測定値:344;計算M+H=344。
NMR H(CDCl)、δ1.24(6H,s,2×CH)、1.3(6H,s,2×CH)、1.25〜1.75(7H,m,3×CHCH)、(3H,s,2×CH)、2.58(4H,m,CHN)、2.88(2H,t CH)、5.0(6H,s,NH,2×NH,2×OH)。
NMR H((CDSO)δ1.1 4×CH;1.29、3×CH;2.1(4H,t,2×CH);
NMR 13C((CDSO)、δ9.0(4×CH)、25.8(2×CH)、31.0 2×CH、34.6 CH、56.8 2×CHN;160.3、C=N。
【0170】
HPLC条件:流速8ml/分25mmPRPカラム使用
A=3%アンモニア溶液(比重=0.88)/水;B=アセトニトリル
時間 %B
0 7.5
15 75.0
20 75.0
22 7.5
30 7.5
1回の運転当り水溶液3mlをロードし、12.5〜13.5分の時間窓で収集する。
【0171】
実施例5
3−ヨード−ベンゾイル−Asp(OMe)−Glu(OMe)−Val−Asp(OMe)−H(化合物3)の合成
【0172】
【化28】

【0173】
上の配列に対応するペプチジル樹脂を、標準的な固相ペプチド化学(Barany, G; Kneib−Cordonier, N.; Mullen, D.G. (1987) Int. J. Peptide Protein Research 30, 705−739)によってH−Asp(tBu)−H NovaSyn TG樹脂(NovaBiochem)上に組み立てた。手動の窒素バブラー装置を使用した(Wellings, D.A., Atherton, E. (1997) in Methods in Enzymology (Fields, G. ed), 289, p. 53−54, Academic Press, New York)。組み立てたペプチジル樹脂3−ヨード−ベンゾイル−Asp(OtBu)−Glu(OtBu)−Val−Asp(OtBu)−H NovaSyn TG樹脂(化合物1)を、t−ブチル保護基を除去するために2.5%の水を含有するトリフルオロ酢酸(TFA)で処理した。アスパルチル及びグルタミル残基の側鎖は、メタノール中の塩化チオニル(20当量)を用いてメチルエステルに変換し、ペプチド樹脂(化合物2)を生じさせた。そのペプチジル樹脂を0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を含有する60%のアセトニトリル(ACN)水溶液で4時間にわたって処理することによって樹脂からペプチド生成物(化合物3)を遊離させた。樹脂の残りを濾別し、その濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、ジエチルエーテルで粉末にし、生成物を遠心分離で単離した。その生成物は、0.1%TFA水溶液中の0〜70%ACNのグラジエントで0.3ml/分で10分間溶出し、溶出液をλ=214nmにおけるUV吸収で検出する分析用RP−HPLCカラム(Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50mm×2mm)の使用とエレクトロスプレー質量分析によるLC−MSで特性を明らかにした。t=8.2分において、733.5m/z(期待値:733.2m/z)の[M+H]+で所望の生成物を確認した。
【0174】
実施例6
放射性ハロゲン化のためのトリメチルスタンニル前駆体(化合物4)の合成
【0175】
【化29】

【0176】
上の実施例5からの3−ヨード−ベンゾイル−Asp(OMe)−Glu(OMe)−Val−Asp(OMe)−H NovaSyn TG樹脂(化合物2)を、マイクロ波技術を用いてスタンニル化した。3−ヨード官能化樹脂(50mg、0.012mmol)を、アルゴン下の照射管に入れ、乾燥N−メチルピロリドン(NMP)(1ml)中のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(7mg、0.006mmol)及びヘキサメチルジスズ(7.86mg、5μl、0.024mmol)で処理した。その管を密封し、空所に置いて100℃で5分間照射した。冷却後黒色になった混合物を洗浄し、スタンニル化したペプチド(化合物4)を樹脂から切断し、上の実施例5で記したように仕上げた。その生成物は、0.1%TFA水溶液中の10〜80%ACNのグラジエントで0.3ml/分で10分間溶出し、溶出液をλ=214nmにおけるUV吸収で検出する分析用RP−HPLCカラム(Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50mm×2mm)の使用とエレクトロスプレー質量分析によるLC−MSで特性を明らかにした。t=8.3分において、771.1m/z(期待値:771.2m/z)の[M+H]+で所望の生成物を確認した。
【0177】
実施例7
1−(4−ヨードベンジル)−5−(2−メトキシメチル−ピロリジン−1−スルホニル)−1H−インドール−2,3−ジオン(化合物5)の合成
【0178】
【化30】

【0179】
アルゴン下及び室温において、60%の水素化ナトリウムを、無水DMF(5ml)中の5−(2−メトキシメチル−ピロリジン−1−スルホニル)−1H−インドール−2,3−ジオン(イサチン誘導体、Calbiochemから市販、Cat#218826、50mg、0.154mmol)の透明な黄色の溶液に加えた。その混合物は直ちに濃い紫色に変化した。10分間攪拌した後、DMF(200μl)中の4−ヨードベンジルブロミド(46.56mg)を加え、室温での攪拌を続けた。反応の進行と共に紫色が消え、24時間後、TLC(クロロホルム:メタノール、8:2)のrf ca2が反応の完結を示した。DMFを次に減圧下で蒸発させて除去し、残渣をクロロホルム:メタノール(8:2)を用いるフラッシュクロマトグラフにかけて61mg(73%)の黄色の半固体を生じさせた。その生成物を分離用RP−HPLCでさらに精製した。カラム(Phenomenex Luna C18 10μ、22×250mm)を、0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液中の30〜80%アセトニトリル(ACN)のグラジエントで10ml/分で60分間溶出した。所望のピーク分画をためて純粋な化合物5を産出した。RP−HPLC分析:t=5.39分、(Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50mm×2mm、0.1%TFA水溶液中30〜80%ACN、0.3ml/分で10分間、λ=214nm)。エレクトロスプレーMS:541.0m/zに期待された生成物の[M+H]+が540.9m/zに認められた。
【0180】
実施例8
5−(2−メトキシメチル−ピロリジン−1−スルホニル)−1−(4トリメチルスタンニル−ベンジル)−1H−インドール−2,3−ジオン(化合物6)
【0181】
【化31】

【0182】
トルエン(8ml)中の化合物5(27mg、0.05mmol、上の実施例7由来)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(5.78mg、0.005mmol)及びヘキサメチルジスズ(21μl、0.10mmol)の透明な黄色の溶液を、マイクロ波照射のもとで120℃で5分間加熱した。得られた黒い混合物を濾過した。濾液を乾燥するまで蒸発させ、残渣を酢酸エチル:ヘキサン(1:1)を用いるフラッシュクロマトグラフィーで精製し、83%の収率で黄色の油状物としての純粋な生成物を生じた。RP−HPLC分析:t=7.92分、(Phenomenex Luna 3μ C18(2) 50mm×2mm、0.1%TFA水溶液中30〜80%ACN、0.3ml/分で10分間、λ=214nm)。エレクトロスプレーMS:578.9m/zに期待された生成物の[M+H]+が578.9m/zに認められた。
【0183】
実施例9
生体内カスパーゼ−3阻害剤アッセイ
カスパーゼ−3阻害剤の生体内効能を、市販のアッセイキット(例えば、Biomol、BIOMOL International L.P.5120 Butler Pike、Plymouth Meeting、PA 19462−1202)を用いて評価した。要するに、カスパーゼ−3アッセイキットは、カスパーゼ−3のプロテアーゼ活性を測定するように設計された完璧なアッセイシステムである。それは、比色基質(DEVD−pNA)及び蛍光発生基質(DEVD−AMC)の両方を含んでいる。比色基質からのp−ニトロアニリド(pNA)の切断は、405nmにおける吸収を増大させる。蛍光アッセイは、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)染料のペプチド基質のC末端からの切断に基づく。その染料の基質からの切断は、460nmにおけるその蛍光強度を増大する。それらのアッセイは、便利な96ウェルマイクロプレートフォーマット中で実施される。そのキットは、カスパーゼ−3の阻害剤、有望な治療標的を選別するために有用である。阻害剤、DEVD−CHO(アルデヒド)もまた、原型の対照阻害剤1として含まれる。DEVDアミノ酸配列は、PARP[ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ]におけるカスパーゼ−3切断部位に由来する。
【0184】
実施例10
カスパーゼ−3細胞アッセイ
Wangらによる”A Role for Mitochondrial Bak in Apoptotic Response to Anticancer Drugs”, J. Biol. Chem., Aug 2001; 276: 34307−34317に記載されているように、スタウロスポリンで誘発されたアポトーシスのある細胞をベースにしたモデルにおいて、ジャーカット及びHL−60細胞を使用した。
【0185】
カスパーゼ−3阻害剤について、それらが細胞に入り、その後カスパーゼ−3の標的と結合する能力を試験するためには二官能性細胞に基づくアッセイが必要である。そのアッセイは、カスパーゼのフルオロクロム阻害剤(FLICA)に基づく。その阻害剤は、細胞透過性であり、一旦細胞内に入るとそれらは活性なカスパーゼ−3と共有結合で結合し、FLICA蛍光を検出することができる。細胞の集団に加えられたとき、FLICAプローブは、各細胞に入り、活性カスパーゼヘテロダイマーの大きなサブユニットにある活性なシステイン残基に共有結合し、それによってさらなる酵素活性を阻害する。結合した標識試薬は細胞内に保持され、一方、結合していない試薬は細胞外に拡散し流出する。緑色の蛍光シグナルは、試薬を加えた時の細胞集団中に存在する活性なカスパーゼ−3の量の直接の尺度である。結合した標識試薬を含有する細胞は、蛍光用の96ウェルプレート中で分析することができる。
【0186】
アッセイ検証被検物質もまたカスパーゼ−3標的阻害剤であり、これらはFLICA処理の前にアポトーシス細胞に加えられた。強力な試験化合物は、FLICAの活性カスパーゼ−3への結合を妨害し、FLICAに伴う蛍光の減少を追跡することによって、ある程度の効能の観察を可能にする。
【0187】
実施例11
N−アルキル化のための18F−標識誘導体の合成
3−[18F]フルオロプロピルトシレートの合成
【0188】
【化32】

【0189】
2方向コックを通して、ガラスバイアルに用意したアセトニトリル(300μl)中のKryptofix222(10mg)及び水(300μl)中の炭酸カリウム(4mg)を、プラスチックのシリンジ(1ml)を用いて真鍮製ヒーター内に設置した炭素ガラスの反応容器中に移した。ターゲット用水中(0.5〜2ml)の18Fフッ化物(185〜370MBq)を、次に2方向コックを通して加えた。ヒーターを125℃にセットし、タイマーを始動させた。15分後、3個のアセトニトリルのアリコート(0.5ml)を1分間隔で加えた。その18Fフッ化物を、最大で合計40分まで枯渇させた。40分後、ヒーターを圧搾空気で冷却し、ポットの蓋を取り除き、1,3−プロパンジオール−ジ−p−トシレート(5〜12mg)及びアセトニトリル(1ml)を加えた。ポットの蓋を元に戻し、ラインをストッパーで締めた。ヒーターを100℃にセットし、100℃/10分で標識した。標識後、3−[18F]フルオロプロピルトシレートを、Gilson RP HPLCで以下の条件を用いて単離した。
【0190】
カラム u−bondapak C18 7.8×300mm
溶出液 水(ポンプA):アセトニトリル(ポンプB)
ループサイズ 1ml
ポンプ速度 4ml/分
波長 254nm
グラジエント 20分で5〜90%の溶出液B
生成物Rt 12分
一旦単離したら、カットサンプル(約10ml)を水(10ml)で希釈し、調整済みのC18セップパック(sep pak)に装填した。そのセップパックを窒素で15分間乾燥させ、有機溶媒、ピリジン(2ml)、アセトニトリル(2ml)又はDMF(2ml)を流して洗った。活性のほぼ99%が洗い流された。
【0191】
3−[18F]フルオロプロピルトシレートを、ピリジン中で還流させることによってアミンをN−アルキル化するために使用する。
【0192】
実施例12
S−アルキル化のための[18F]−チオール誘導体
段階(a):3−[18F]フルオロ−トリチルスルファニル−プロパンの調製
【0193】
【化33】

【0194】
2方向コックを通して、ガラスバイアルに用意したアセトニトリル(800μl)中のKryptofix222(10mg)及び水(50μl)中の炭酸カリウム(1mg)を、プラスチックのシリンジ(1ml)を用いて真鍮製ヒーター内に設置した炭素ガラスの反応容器中に移した。ターゲット用水中(0.5〜2ml)の18Fフッ化物(185〜370MBq)を、次に2方向コックを通して加えた。ヒーターを125℃にセットし、タイマーを始動させた。15分後3個のアセトニトリルのアリコート(0.5ml)を1分間隔で加えた。その18F−フッ化物を、最大で合計40分まで枯渇させた。40分後、ヒーターを圧搾空気で冷却し、ポットの蓋を取り除き、トリメチル−(3−トリチルスルファニル−プロポキシ)シラン(1〜2mg)及びDMSO(0.2ml)を加えた。ポットの蓋を元に戻し、ラインをストッパーで締めた。ヒーターを80℃にセットし、80℃/5分で標識した。標識後、反応混合物をRP HPLCで以下のHPLC条件を用いて単離した。
【0195】
カラム u−bondapak C18 7.8×300mm
溶出液 01.%TFA/水(ポンプA):0.1%TFA/アセトニトリル
(ポンプB)
ループサイズ 100μl
ポンプ速度 4ml/分
波長 254nm
グラジエント 1分 40%B
15分 40〜80%B
5分 80%B
反応混合物をDMSO/水(1:1v/v、0.15ml)で希釈し、調整済みのt−C18セップパックに装填した。そのセップパックを水(10ml)で洗浄し、窒素で乾燥させ、3−[18F]フルオロ−1−トリチルスルファニル−プロパンを、4個のアセトニトリルのアリコート(1アリコート当たり0.5ml)で溶出した。
【0196】
段階(b):3−[18F]フルオロ−プロパン−1−チオールの調製
【0197】
【化34】

【0198】
3−[18F]フルオロ−1−トリチルスルファニル−プロパンのアセトニトリル(1〜2ml)中の溶液を、100℃/10分の窒素気流を用いて乾燥するまで蒸発させた。TFA(0.05ml)、トリイソプロピルシラン(0.01ml)及び水(0.01ml)の混合物を加え、続いて80℃/10分加熱して3−[18F]フルオロ−プロパン−1−チオールを生成させた。
【0199】
段階(c):−N(CO)CHCl前駆体との反応
クロロアセチル前駆体を標識する一般的方法は、段階(b)からの3−[18F]フルオロ−1−メルカプト−プロパンを含有する反応容器を圧搾空気で冷却し、次にアンモニア(27%水溶液、0.1ml)及び前駆体(1mg)の(0.05ml)水溶液を加え、その混合物を80℃で10分間加熱する。
【0200】
実施例13
カスパーゼ−3阻害剤の[123I]−放射標識
段階(a):化合物5合成の別法
化合物5は、非放射性類似体、即ちヨウ素同位体が127Iであり、下のスキーム4に従って調製した。
【0201】
【化35】

【0202】
質量分光分析で化合物5であることを確認した。
【0203】
段階(b):化合物5Aの合成
123I標識化合物5(化合物5A)を調製するために段階(a)と類似の手順をたどった。キャリヤー無しの8〜30μlの[123I]ヨウ化ナトリウムに、100μlのpH4で0.2Mの酢酸アンモニウム緩衝液、10μlの[127I]ヨウ化ナトリウム、15mg/100ml溶液の0.01M水酸化ナトリウム中のヨウ化ナトリウム、(1×10−モル)及び50μlのアセトニトリルを加えた。試薬を混合し、シラン処理したP15バイアルに移した。最後に10μlの0.001M過酢酸溶液(1×10−モル)及び化合物6のアセトニトリル中の1mg/ml溶液の58μl(1×10−モル)を加えた。[123I]−化合物5(化合物5A)を、HPLC精製し、10%のエタノールを含む(溶解性を助けるため)pH7.4、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液中に希釈して、それぞれ14MBq/nmol及び41MBq/nmolの代表的な比放射能を有する20MBq/ml又は100MBq/mlとした。両製剤とも、pH7.5で安定(4時間を越えて>95%のRCP)であることがわかった。段階(a)からの127I標準を含む共溶出が観察され同一性を確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影性基で標識した合成カスパーゼ−3阻害剤を含む造影剤であって、カスパーゼ−3阻害剤が、カスパーゼ−3に対して2000nM未満のKを有しており、哺乳類生体内への標識カスパーゼ−3投与後に外部から非侵襲的に又はインビボ用に設計された検出器の使用によって造影性基を検出することができる造影剤。
【請求項2】
合成カスパーゼ−3阻害剤がカスパーゼ−3に対して500nM未満のKを有する、請求項1記載の造影剤。
【請求項3】
合成カスパーゼ−3阻害剤が150〜3000ダルトンの分子量を有する、請求項1又は請求項2記載の造影剤。
【請求項4】
造影性基が以下の(i)〜(vi)を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の造影剤。
(i)放射性金属イオン、
(ii)常磁性金属イオン、
(iii)γ線放出型放射性ハロゲン、
(iv)陽電子放出型放射性非金属、
(v)過分極NMR活性核種、
(vi)インビボイメージングに適した光学色素。
【請求項5】
4〜20量体のリーダーペプチド配列をさらに含み、該リーダーペプチドが、インビボでの細胞膜の哺乳類細胞の外側から内側への輸送を促進する、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の造影剤。
【請求項6】
合成カスパーゼ−3阻害剤コンジュゲートが次の式Iで表される、請求項5記載の造影剤。
【化1】

式中、
{阻害剤}は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載のカスパーゼ−3阻害剤であり、
[リーダーペプチド]は請求項4記載の通りであって、そのアミン末端又はカルボキシル末端のいずれかで結合しており、
−(A)−は、各Aが独立に、−CR−、−CR=CR−、−C≡C−、−CRCO−、−COCR−、−NRCO−、−CONR−、−NR(C=O)NR−、−NR(C=S)NR−、−SONR−、−NRSO−、−CROCR−、−CRSCR−、−CRNRCR−、C4〜8シクロへテロアルキレン基、C4〜8シクロアルキレン基、C5〜12アリーレン基、若しくはC3〜12へテロアリーレン基、アミノ酸、又は単分散ポリエチレングリコール(PEG)構成要素であるリンカー基であり、
Rは独立に、H、C1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、C2〜4アルキニル、C1〜4アルコキシアルキル、又はC1〜4ヒドロキシアルキルから選択され、
nは、0〜10の整数であり、
mは、0又は1であり、
は、H、OH、Hal、NH、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、C1〜4アルコキシアルキル、C1〜4ヒドロキシアルキルであるか、或いはXは、造影性基である。
【請求項7】
放射性金属イオンがγ線放射体又は陽電子放射体である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の造影剤。
【請求項8】
放射性金属イオンが99mTc、111In、64Cu、67Cu、67Ga又は68Gaである、請求項7記載の造影剤。
【請求項9】
常磁性金属イオンがGd(III)、Mn(II)又はFe(III)である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の造影剤。
【請求項10】
γ線放出型放射性ハロゲンが123Iである、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の造影剤。
【請求項11】
陽電子放出型放射性非金属が18F、11C、124I又は13Nから選択される、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の造影剤。
【請求項12】
合成カスパーゼ−3阻害剤が以下の(i)〜(ix)で定義される1種又は複数のカスパーゼ−3阻害剤を含む請求項1乃至請求項11のいずれか1項記載の造影剤。
(i)式IIIのテトラペプチド誘導体
−Asp−Xaa1−Xaa2−Asp−X (III)
(式中、Zは、テトラペプチドのN末端に結合した代謝阻害基であり、
Xaa1及びXaa2は独立に、任意のアミノ酸であり、
は、テトラペプチドのカルボキシ末端に結合した−R又は−CHOR基であり、
は、H、−CHF、−CHCl、C1〜5アルキル、C1〜5アルコキシ又は−(CHArであり、
qは、1〜6の整数であり、Arは、C6〜12アリール、C5〜12アルキル−アリール、C5〜12フルオロ置換アリール又はC3〜12ヘテロアリールであり、
は、C1〜5アルキル、C1〜10アシル又はArである)、
(ii)キナゾリン又はアニリノキナゾリン、
(iii)2−オキシインドールスルホンアミド、
(iv)オキソアゼピノインドリン、
(v)式IVの化合物
【化2】

(式中、Xは、H、C1〜5アルキル又は−(CH−(S)−(CHArであり、r及びtは、0〜6の整数であり、sは、0又は1であり、Arは、C6〜12アリール、C5〜12アルキル置換アリール、C5〜12ハロ置換アリール又はC3〜12ヘテロアリールであり、
Arは、C6〜12アリール又はC3〜12ヘテロアリールであり、
は、R基であり、
は、−SO−又は−CR−であり、
は、H、C1〜5アルキル又はPGPであり、PGPは保護基であり、
は、R基又はC1〜5アシルであり、
各Rは独立に、H又はC1〜5アルキルである)、
(vi)式Vの化合物
【化3】

(vii)ピラジノン、
(viii)式VIのジペプチド
−Val−Asp−CH−S−R (VI)
(式中、−CHSR基は、ジペプチドのカルボキシ末端に結合しており、Z及びRは、式(III)について定義の通りである)、
(ix)式XIのサリチル酸スルホンアミド
【化4】

(式中、Arは、5又は6員のC4〜6アリール又はヘテロアリール環であり、Xは、H又は−CHSRであり、Rは上記で定義した通りである)。
【請求項13】
合成カスパーゼ−3阻害剤が、以下の(i)〜(iii)のいずれかを含む請求項12記載の造影剤。
(i)式IIIのテトラペプチド、
(ii)2−オキシインドールスルホンアミド、
(iii)式VIのジペプチド。
【請求項14】
合成カスパーゼ−3阻害剤がカスパーゼ−3に対してカスパーゼ−1より少なくとも50倍選択的である、請求項1乃至請求項13のいずれか1項記載の造影剤。
【請求項15】
合成カスパーゼ−3阻害剤が式IIIのテトラペプチド又は式VIのジペプチドを含む、請求項13又は請求項14記載の造影剤。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の造影剤を、生体適合性担体と共に哺乳類投与に適した形態で含む医薬組成物。
【請求項17】
造影性基が放射性である請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の造影剤を、生体適合性担体と共に哺乳類投与に適した形態で含む放射性医薬組成物。
【請求項18】
造影性基が陽電子放出型放射性非金属又はγ線放出型放射性ハロゲンを含む、請求項17記載の放射性医薬組成物。
【請求項19】
造影性基が放射性金属イオンを含む、請求項17記載の放射性医薬組成物。
【請求項20】
合成カスパーゼ−3阻害剤のリガンドとのコンジュゲートであって、カスパーゼ−3阻害剤が、カスパーゼ−3に対して2000nM未満のKを有しており、リガンドが、放射性又は常磁性金属イオンと金属錯体を形成することができるコンジュゲート。
【請求項21】
以下の式Ibで表される、請求項20記載のコンジュゲート。
【化5】

式中、A、n、m、及びXは、請求項6記載の通りである。
【請求項22】
リガンドがキレート剤である、請求項20又は請求項21記載のコンジュゲート。
【請求項23】
キレート剤がジアミンジオキシム、N又はNSドナーセットを有する、請求項22記載のコンジュゲート。
【請求項24】
請求項19記載の放射性医薬組成物を調製するためのキットであって、請求項20乃至請求項23のいずれか1項記載のコンジュゲートを含むキット。
【請求項25】
放射性金属イオンが99mTcであり、キットが生体適合性の還元剤をさらに含む、請求項24記載のキット。
【請求項26】
請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載のカスパーゼ−3阻害剤の非放射性誘導体である前駆体を含む、請求項18記載の放射性医薬組成物を調製するためのキットであって、非放射性誘導体が、陽電子放出型放射性非金属又はγ線放出型放射性ハロゲン源と反応して所望の放射性医薬品を生じることができるキット。
【請求項27】
前駆体が無菌で非発熱性の形態をしている、請求項26記載のキット。
【請求項28】
陽電子放出型放射性非金属又はγ線放出型放射性ハロゲン源が、以下の(i)又は(ii)から選択される、請求項26又は請求項27記載のキット。
(i)ハロゲン化物イオン又はF若しくはI
(ii)ハロゲン化アルキル、ハロゲン化フルオロアルキル、トシレート、トリフレート又はメシレートから選択されるアルキル化剤。
【請求項29】
非放射性誘導体が以下の(i)〜(v)から選択される、請求項24乃至請求項28のいずれか1項記載のキット。
(i)トリアルキルスタンナン又はトリアルキルシラン等の有機金属誘導体、
(ii)求核置換のためのハロゲン化アルキル、アルキルトシレート又はアルキルメシレートを含む誘導体、
(iii)求核又は求電子置換のために活性化された芳香族環を含む誘導体、
(iv)容易にアルキル化を起こす官能基を含む誘導体、
(v)チオール含有化合物をアルキル化してチオエーテル含有生成物を生じさせる誘導体。
【請求項30】
前駆体が固相に結合している請求項26乃至請求項29のいずれか1項記載のキット。
【請求項31】
哺乳類の身体のカスパーゼ−3が関係する疾患状態の診断法における請求項1乃至請求項15のいずれか1項記載の造影剤の使用であって、請求項16記載の医薬組成物又は請求項17乃至請求項19のいずれか1項記載の放射性医薬組成物が、哺乳類に予め投与される使用。

【公表番号】特表2007−512302(P2007−512302A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540617(P2006−540617)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005003
【国際公開番号】WO2005/053752
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(305040710)ジーイー・ヘルスケア・リミテッド (99)
【Fターム(参考)】