説明

カセットの受け渡し台車

【課題】使用済みのカセットを未使用のカセットに容易に交換できるカセット受け渡し台車を提供する。
【解決手段】走行可能な車体22に設けられた上下駆動機構26と、上下駆動機構によって同期して上下駆動されるとともに上面にカセットが載置される上部テーブル24及び下部テーブル25を具備し、一方のテーブルには未使用のカセットが載置されていて、実装装置1の受け渡しテーブル20に使用済みのカセット引き出してから、車体を実装装置の受け渡しテーブルが設けられた前面に移動させ、他方のテーブルを受け渡しテーブルと同じ高さにしてから、そのテーブルに受け渡しテーブルから使用済みのカセットを移載させた後、上下駆動機構によって上部テーブル及び下部テーブルを上下方向に駆動して未使用のカセットが載置された一方のテーブルを受け渡しテーブルと同じ高さにし、そのテーブルに載置された未使用のカセットを受け渡しテーブルに移載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板に電子部品を加圧して圧着する際に用いられるシートを有するカセットを実装装置に受け渡すためのカセット受け渡し台車に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、基板としての液晶セルには接着材料としての異方性導電部材を介して電子部品であるTCP(Tape Carrier Package)が圧着される。上記液晶セルは、シール剤を介して2枚のガラス板を所定の間隔で接着し、これらガラス板間に液晶を封入するとともに、各ガラス板の外面にそれぞれ偏光板を貼着して構成される。そして、上記構成の液晶セルには、縁部上面にテープ状の上記異方性導電部材を圧着し、この異方性導電部材上に上記TCPを仮圧着した後、本圧着するようにしている。
【0003】
基板にTCPを仮圧着したり、本圧着する場合、実装装置が用いられる。実装装置には、受け部材(バックアップ)及びこの受け部材の上方に上下駆動される圧着ツールが設けられている。
【0004】
基板にTCPを圧着する場合、異方性導電部材を介してTCPが貼着された基板の縁部下面を、バックアップ部材の上端面に載置する。ついで、上記圧着ツールを下降させることで、上記TCPを上記基板に仮圧着或いは本圧着するようにしている。
【0005】
基板にTCPを本圧着する場合、異方性導電部材を加熱硬化させるために、上記圧着ツールは高温度に加熱されている。そのため、TCPが圧着ヘッドによって加圧加熱されると、異方性導電部材が加熱されて溶融し、その一部がTCPからはみ出して圧着ツールに付着することがある。
【0006】
圧着ツールに異方性導電部材が付着すると、圧着ツールによってTCPを均一に加圧することができなくなる加圧不良を招いたり、圧着ツールに付着していた異方性導電部材がTCPに転移して汚れの原因になるなどのことがあり、好ましくない。
【0007】
そこで、TCPを本圧着する場合、TCPと圧着ツールとの間にシリコン樹脂製やフッ素樹脂製の耐熱性を有するシートを介在させることで、TCPを加圧加熱する際に、溶融した異方性導電部材が圧着ツールに付着するのを防止するようにしている。
【0008】
圧着時にTCPと圧着ツールとの間に上記シートを介在させる手段としては、実装装置に設けられた受け渡しテーブルにカセットを装着し、このカセットに設けられたシートを介して圧着ツールによりTCPを基板に加圧するということが行なわれている。
【0009】
ところで、最近では基板が大型化しているため、それに応じて圧着時にTCPと圧着ツールとの間に介在させるシートの寸法も大きくなってきている。シートの寸法が大きくなると、カセットが大型化及び高重量化する。
【0010】
大型で、高重量のカセットを実装装置に装着したり、使い終わったカセットを実装装置から取り出すなどの受け渡しを行う場合、作業者が一人で上記カセットを持って行うようにしたのでは、作業者に掛かる負担が大きくなったり、作業性が悪いということがある。
【0011】
そこで、従来はカセットを上記実装装置に受け渡すために、特許文献1に示される受け渡し台車を用いるようにしている。この受け渡し台車には、上面の幅方向両端に幅方向と交差する前後方向に沿って一対のレールが設けられ、このレールにカセットを幅方向の両端部を係合させて支持した後、受け渡し台車を実装装置の前面に位置決めし、カセットをレール沿ってスライドさせて実装装置に設けられた受け渡しテーブルに移載するということが行なわれている。
【0012】
また、カセットに設けられたシートを使い切ったならば、台車を実装装置の前面に位置決めし、カセットを実装装置の受け渡しテーブルから台車のレールへスライドさせて取り除き、新たなカセットを同じく受け渡し台車を用いて実装装置の支持部に装着するようにしている。
【特許文献1】特開2006−93340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
通常、カセットの交換は、実装装置に装着されたカセットのシートを使いきったならば、このカセットを実装装置から取り外し、新たなカセットを上記実装装置に装着するようにしている。
【0014】
しかしながら、従来の受け渡し台車は上面に1つのカセットだけを載置する構成となっていた。そのため、実装装置に装着されたカセットのシートを使いきったならば、まず、このカセットを実装装置から受け渡し台車の上面に移載して保管場所に移動させた後、この受け渡し台車の上面に未使用のカセットを積載して上記実装装置まで搬送して、この実装装置に装着するということが行なわれていた。
【0015】
つまり、最初に実装装置から台車に使用済みのカセットを移載し、そのカセットを台車から降ろして未使用のカセットを台車に積み換えてから、そのカセットを実装装置に装着するようにしていた。
【0016】
そのため、受け渡し台車を上記実装装置に対し、使用済みのカセットを実装装置から取り除くときと、未使用のカセットを装着するときの2回にわたって移動させなければならないため、カセットの交換作業に多くの手間と時間が掛かり、生産性の低下を招くということがあった。
【0017】
この発明は、使用済みのカセットの取り外しと、未使用のカセットの装着を、これらカセットの積み換えを行なうことなく、1回の作業で行なうことができるようにしたカセット受け渡し台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明は、実装装置の圧着ツールによって電子部品を基板に加圧して圧着する際、上記圧着ツールと電子部品との間に介装させるシートが設けられたカセットを、上記実装装置の前面に設けられた受け渡しテーブルに対して受け渡す受け渡し台車であって、
走行可能な車体と、
この車体に設けられた上下駆動機構と、
上記車体に設けられ上記上下駆動機構によって同期して上下駆動されるとともに上面に上記カセットが載置される上載置部及び下載置部を具備し、
上記台車の上記上載置部或いは下載置部のいずれか一方の載置部には未使用のカセットが載置されていて、
上記受け渡しテーブルに上記実装装置から使用済みのカセット引き出してから、上記台車を上記実装装置の受け渡しテーブルが設けられた前面に対向するよう移動させ、他方の載置部を上記受け渡しテーブルと同じ高さにしてから、その載置部に上記受け渡しテーブルから使用済みのカセットを移載させた後、上記上下駆動機構によって上記上載置部及び下載置部を上下方向に駆動して未使用のカセットが載置された一方の載置部を上記受け渡しテーブルと同じ高さにし、その載置部に載置された未使用のカセットを上記受け渡しテーブルに移載することを特徴とするカセット受け渡し台車にある。
【0019】
上記上載置部には、上記下載置部に載置された未使用のカセットを上記受け渡しテーブルに移載するとき、若しくは上記受け渡しテーブルに引き出された使用済みのカセットを上記下載置部に移載するときに、上記上載置部に載置された使用済みのカセット若しくは未使用のカセットを下載置部の上方から上記受け渡しテーブルの上方へ移動させることを可能とする可動手段が設けられていることが好ましい。
【0020】
この発明は、実装装置の圧着ツールによって電子部品を基板に加圧して圧着する際、上記圧着ツールと電子部品との間に介装させるシートが設けられたカセットを、上記実装装置に受け渡す受け渡し台車であって、
走行可能な車体と、
この車体に設けられた回転機構と、
上記車体に設けられ上記回転機構によって回転可能に設けられた回転体と、
上記車体に設けられ上記回転体を上下方向に駆動する上下駆動機構と、
上記回転体の上面の一端側に設けられた第1の受け渡し手段と、
上記回転体の上面の他端側に設けられた第2の受け渡し手段を具備し、
上記実装装置で使用された使用済みのカセットを上記回転体を下降位置から上昇方向に変位させることで一方の受け渡し手段によって上記実装装置から掬い上げて上記回転体に移載させるとともに、上記回転体を180度回転させて他方の受け渡し手段に予め載置された未使用のカセットを上記回転体を上昇位置から下降方向に変位させることで上記実装装置に移載させることを特徴とするカセット受け渡し台車にある。
【0021】
上記第1の受け渡し手段は、上記回転体に平行に固定された一対の第1の固定レール及び各固定レールに移動可能に設けられた第1の可動レールによって構成され、
上記第2の受け渡し手段は、上記回転体に平行に固定された一対の第2の固定レール及び各固定レールに移動可能に設けられた第2の可動レールによって構成されていて、
上記第1、第2の可動レールを上記実装装置内へスライドさせて上記上下駆動機構によって上記回転体を上下駆動させることで、使用済みのカセットの取り出しと未使用のカセットの供給とが行なわれることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
この発明の受け渡し台車によれば、2つのカセットを載置することが可能な構造であって、使用済みのカセットと未使用のカセットを積み換えることなく、実装装置から使用済みのカセットを移載した後、未使用のカセットを実装装置に移載することができるから、カセットの受け渡し作業を受け渡し台車を移動させることなく、順次行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図8はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1は実装装置1とカセット受け渡し台車2(以下、台車とする)の概略的構成を示す側面図である。上記実装装置1は装置本体3を備えている。この装置本体3の下部にはX方向とY方向とに駆動されるXYテーブル4が設けられている。このXYテーブル4にはたとえば液晶セルなどの基板5が一側縁部をXYテーブル4の上面から突出させた状態で供給載置され、真空吸着などの手段によって保持固定されるようになっている。この基板5の一側縁部にはテープ状の異方性導電部材6を介して電子部品としてのTCP7が仮圧着されている。
【0024】
上記装置本体3には、上記XYテーブル4に保持された基板5の一側縁部の下面を上端面によって受ける受け部材8が設けられている。この受け部材8の上端面に支持された基板5の縁部には上記TCP7が仮圧着されていて、このTCP7は圧着ツール9によって本圧着されるようになっている。
【0025】
上記圧着ツール9は加圧ヘッド11の下面に設けられている。この加圧ヘッド11は、リニアガイド12によってZ方向、つまり上下方向にスライド可能に設けられ、Z駆動源13によってZ方向に駆動されるようになっている。
【0026】
図1に示すように、上記装置本体3の高さ方向の中途部には、幅方向に所定間隔で離間した、支持部としての一対の支持レール14(1つのみ図示)が前後方向に沿って水平に架設されている。支持レール14は断面L字状となっている。
【0027】
上記支持レール14には鎖線で示すカセット16が着脱可能に支持できるようになっている。カセット16を支持レール14に支持すると、所定の位置で上記カセット16に設けられたストッパ(図示せず)が上記装置本体3に設けられた当接部(図示せず)に当接する。それによって、上記カセット16は装置本体3の所定の位置に位置決めされるようになっている。
【0028】
上記カセット16は所定間隔で離間した2枚の側板が複数のロッド(ともに図示せず)で連結されていて、これら側板間には一対の供給ローラ17と一対の巻き取りローラ18とが設けられている。各供給ローラ17には耐熱性を有する樹脂製のシート19が巻装されていて、各シート19は巻き取りローラ18によって巻き取られるようになっている。つまり、2枚のシート19は、供給ローラ17と巻き取りローラ18との間の部分で上下方向に重なってそれぞれ巻き取りローラ18に巻き取られるようになっている。
【0029】
なお、詳細は図示しないが、カセット16を支持レール14によって装置本体3の所定の位置にセットすると、上記巻き取りローラ18は図示しない駆動源によって回転駆動可能な状態になる。それによって、上記シート19は上記供給ローラ17から巻き取りローラ18に巻き取り可能となる。
【0030】
上記カセット16を装置本体3に装着して所定の位置に位置決めすると、図1に示すように上記シート19の供給ローラ17と巻き取りローラ18との間に位置する部分が上記圧着ツール9に対応位置する。
【0031】
したがって、圧着ツール9が下降方向に駆動されれば、上下方向に重なった2枚のシート19を介して上記TCP7が加圧される。それによって、上記異方性導電部材6が溶融されるが、上記シート19によって溶融した異方性導電部材6が上記圧着ツール9に付着するのが阻止される。なお、シート19は1枚であってもよい。
【0032】
上記装置本体3の前面には受け渡しテーブル20が基端部を枢着して設けられていて、図1に鎖線で示す下方にほぼ垂直に倒伏した状態から実線で示す水平になるよう起立させることができるようになっている。そして、水平に起立させた状態で、一端が装置本体3の前面に枢着され、他端が受け渡しテーブル20の下面に枢着されたステー21によって保持されるようになっている。
【0033】
上記カセット16の上記装置本体3に対する受け渡しは上記台車2によって行われる。この台車2は、詳細は図示しないが、たとえば角材などによって外観形状が枠状の直方体に形成された車体22を有する。この車体22の下面の四隅部には車体22を走行可能とするキャスタ23が設けられている。
【0034】
上記車体22には、上載置部としての上部テーブル24と、下載置部としての下部テーブル25とが上下駆動機構26によって同期して、つまり一体的に上下方向に駆動可能に設けられている。すなわち、下部テーブル25の下面四隅部にはそれぞれガイド軸27(2つのみ図示)の上端が連結固定されている。
【0035】
各ガイド軸27は上記車体22に設けられたスラスト軸受28によって上下方向にスライド可能に支持されている。上記下部テーブル25の上面の四隅部には所定長さの連結軸29(2つのみ図示)が立設されている。この連結軸29の長さは上記カセット16の高さ寸法よりも長く設定されている。
【0036】
図2に示すように、下部テーブル25の幅方向一側と他側に位置する各2本の連結軸29の上端にはそれぞれ下部レール31(一方のみ図示)の長手方向両端部の下面が固着されている。一対の下部レール31には上記上部テーブル24の下面の幅方向両端部に設けられた上部レール32がスライド可能に係合している。
【0037】
それによって、上記上部テーブル24は上記下部レール31に沿って上記車体22の前後方向に移動可能となっている。なお、上記下部レール31と上部レール32はこの発明の可動手段を構成している。
【0038】
図1に示すように、上記下部テーブル25の幅方向の中央部分には平板状の取付け部材34が垂設されている。この取付け部材34の下端部には上記上下駆動機構26を構成するナット体35が設けられている。
【0039】
上記ナット体35には下端部が上記車体22の下端部に回転可能に支持されたねじ軸36が螺合されている。このねじ軸36の下端部には第1の傘歯車37が嵌着固定されている。この第1の傘歯車37には第2の傘歯車38が噛合している。この第2の傘歯車38は、一端にハンドル39が設けられ、中途部が一対のブラケット41によって回転可能に支持された伝達軸42の他端に嵌着固定されている。
【0040】
したがって、上記ハンドル39によって伝達軸42を回転させれば、その回転が第2の傘歯車38と第1の傘歯車37を介してねじ軸36に伝達される。ねじ軸36が回転されれば、このねじ軸36の軸方向に沿ってナット体35が移動するから、このナット体35が設けられた取付け部材34を介して上部テーブル24と下部テーブル25が一体的に上下方向に移動するようになっている。
【0041】
つぎに、上記構成の台車2を用いて実装装置1から使用済みのカセット16を取り出し、未使用のカセット16を装着する作用を図4乃至図8を参照して説明する。なお、図4乃至図8においては、使用済みのカセットを16A、未使用のカセットを16Bとして説明する。
【0042】
まず、実装装置1に装着させたカセット16のシート19を使い終わったならば、作業者(図示せず)はその使用済みのカセット16Aを図4に示すように装置本体3内から、この装置本体3の前面に水平に保持された受け渡しテーブル20上に引き出す。
【0043】
つぎに、図5に示すように予め装置本体3の近くに移動させておいた台車2を装置本体3の前面に位置決めし、所定の位置でキャスタ23を回転不能に保持する。すなわち、上記受け渡しテーブル20の先端部に台車2の前端側が一致するよう、この台車2を位置決めする。
【0044】
このとき、台車2の上部テーブル24と下部テーブル25は下降位置にあり、それによって、上部テーブル24は受け渡しテーブル20と同じ高さになる。また、下部テーブル25には未使用のカセット16Bが予め載置されている。
【0045】
台車2を装置本体3の前面に位置決めしたならば、作業者は図5に示すように受け渡しテーブル20の上面に引き出された使用済みのカセット16Aを上部テーブル24の上面に移載する。移載後、ハンドル39を回転操作して図6に示すように下部テーブル25が上記受け渡しテーブル20と同じ高さになるまで上昇させる。それによって、上部テーブル24は受け渡しテーブル20よりも上方に位置することになる。
【0046】
つぎに、下部レール31と上部レール32との係合によってスライド可能に設けられた上部テーブル24を図7に鎖線で示すように装置本体3側にスライドさせる。それによって、上部テーブル24によって上方が覆われていた下部テーブル25の上方が開放される。
【0047】
下部テーブル25の上方が開放されたならば、作業者は図7に示すように未使用のカセット16Bを押して、このカセット16Bを上部テーブル24から受け渡しテーブル20上に容易に移動させることができる。つまり、作業者は上部テーブル24が邪魔になることなく、未使用のカセット16Bを下部テーブル25から受け渡しテーブル20上に移動させることができる。
【0048】
未使用のカセット16Bを受け渡しテーブル20上に移動させたならば、上部テーブル24を下部テーブル24の上方へ戻した後、図8に示すように台車2を装置本体3の前面から後退させる。そして、作業者は受け渡しテーブル20上の未使用のカセット16Bを支持レール14に沿って装置本体3内の所定の位置まで押し込む。
【0049】
それによって、使用済みのカセット16Aを装置本体3から台車2に移載する作業と、未使用のカセット16Bを装置本体3から台車2に移載する作業を、装置本体3から台車2に移載した使用済みのカセット16Aを未使用のカセット16Bに積み換えるという作業を行なうことなく、これらカセット16A,16Bの交換作業を連続的に行なうことができるから、その分、作業能率の向上を図ることができる。
【0050】
未使用のカセット16Bは上記台車2の上部テーブル24上に載置されることがある。その場合には、上部テーブル24と下部テーブル25を上昇させた状態で、使用済みのカセット16Aを下部テーブル25上に移載した後、これらテーブル24,25を下降させて上部テーブル24に載置された未使用のカセット16Bを装置本体3に移載すればよいことになる。
【0051】
この場合も、台車2に移載された使用済みのカセット16Aを、未使用のカセット16Bに積み換えることなく、カセット16A,16Bの交換作業を連続的に行なうことができるから、作業性の向上を図ることができる。
【0052】
図9乃至図14はこの発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態は台車2Aの変形例であって、図9に示すように下面四隅部にキャスタ23を有する車体22には上下駆動機構51が設けられている。この上下駆動機構51は上記車体22の下部に軸線を水平にして回転可能に架設された回転軸52を有する。この回転軸52は、両端部を上記車体22の幅方向両側から外方へ突出させていて、突出した両端部にはそれぞれレバー53が設けられている。
【0053】
上記回転軸52の中途部には第1のリンク54の一端が固定されている。この第1のリンク54の他端には第2のリンク55の一端が枢着されていて、この第2のリンク55の他端は矩形板状の可動部材56の下面に枢着されている。
【0054】
したがって、上記レバー53を操作して回転軸52を回転させて第1のリンク54を連動させ、この第1のリンク54に第2のリンク55を連動させれば、これら第1、第2のリンク54,55が所定の角度で屈曲した状態から一直線となる状態に回動変位させることができる。
【0055】
それによって、第1、第2のリンク54,55を屈曲した状態から一直線に回動変位させれば、上記可動部材56を下降位置から上昇させることができ、逆に第1、第2のリンク54,55を一直線の状態から屈曲させれば、上記可動部材56を上昇位置から下降させることができるようになっている。
【0056】
上記可動部材56の上面の四隅部にはガイド軸57が立設されている。4本のガイド軸57(2本のみ図示)は上記車体22の上面に設けられた軸受体58によってスライド可能に支持されている。
【0057】
4本のガイド軸57の上端は矩形板状のベース部材61の下面四隅部に連結固定されている。このベース部材61の中央部には回転機構を構成するラジアル軸受62が設けられている。このラジアル軸受62には回転軸63が軸線を垂直にして回転可能に設けられている。
【0058】
上記回転軸63の上端は矩形板状の回転体65の下面中央部に固着されている。この回転体65の下面の周辺部には円錐状の凹部66が下面に開放して形成された複数の係合体67が設けられている。この実施の形態では、係合体67は回転体65の下面の対向する一対の側辺部の中途部にそれぞれ設けられている。
【0059】
上記ベース部材61の上面には複数のボールプランジャ68が上記係合体67と対応する数及び配置状態で設けられている。ボールプランジャ68は軸部69及びこの軸部69の先端にばね71によって弾性的に突出方向に付勢されて保持された球体72からなり、この球体72は上記回転体65が所定の回転位置にあるときに上記係合体67の凹部66に弾性的に係合している。
【0060】
それによって、上記回転体65は所定の回転位置で上記球体72と上記係合体67との弾性的係合によって回転不能に保持されていて、上記ばね71の付勢力に抗して上記球体72と上記係合体67との弾性的係合を外すことで、回転させることができるようになっている。
【0061】
すなわち、この実施の形態では、上記回転体65は回転軸63を中心にして周方向に180度回転させる毎に上記球体72が上記係合体67の凹部66に弾性的に係合するようになっている。
【0062】
上記車体22の上面には複数のダンパ73が軸線を垂直にして設けられている。このダンパ73の作動軸74は突出方向に付勢されていて、その先端は上記ベース部材61の下面に連結されている。それによって、上記作動軸74により、上記回転体65はベース部材61を介して上昇方向に付勢されている。
【0063】
上記車体22の下端部に回転可能に設けられた回転軸52の一端部にはつめ車81が嵌着固定されている。このつめ車81には上記車体22の一側部に支軸82によって回動可能に設けられたつめ83が係合している。
【0064】
それによって、上記回転軸52が上記第1、第2のリンク54,55が屈曲した状態から一直線に変位する方向に回動変位するのが阻止されている。なお、支軸82には図示しない操作レバーが連結され、この操作レバーによって回転操作できるようになっている。
【0065】
すなわち、上記回転体65は、上記つめ車81と上記つめ83との係合によって、上記ダンパ73の作動軸74の付勢力によって自由に上昇方向へ変位するのが阻止されている。上記つめ83を回転させて上記つめ車81との係合を外せば、上記回転体65がダンパ73の付勢力によって屈曲状態にある第1、第2のリンク54,55を回動変位させながら上昇する。
【0066】
上記レバー53によって上記回転軸52を回転させ、一直線に伸びた状態にある第1、第2のリンク54,55を屈曲するよう回動変位させれば、上昇位置にある上記回転体65を上記ダンパ73の付勢力に抗して下降させることができる。そして、上記回転体65を所定の位置まで下降させたならば、その位置で上記つめ83をつめ車81に係合させれば、上記回転体65をその高さ位置で上昇不能に保持することができる。
【0067】
上記回転軸63の上面には、第1の受け渡し手段を構成する一対の第1の固定レール75及びこれら第1の固定レール75にスライド可能に係合した第1の可動レール76が所定の間隔で平行に設けられている。
【0068】
さらに、上記回転軸63の上面には、一対の第1の固定レール75の内側に、一対の第2の固定レール77が所定間隔で平行に設けられている。第2の固定レール77には第2の可動レール78がスライド可能に係合されていて、これら第2の固定レール77と可動レール78によって第2の受け渡し手段を構成している。
【0069】
図9と図10に示すように、第1の可動レール76の上面の長手方向の一端部側には所定の厚さの第1のスペーサ79が設けられている。第2の可動レール78の上面の長手方向の他端部側には所定の厚さの第2のスペーサ80が設けられている。
【0070】
第2の可動レール78の第2のスペーサ80上には未使用のカセット16Bが載置されていて、第1の可動レール76の第1のスペーサ79上には後述するように実装装置1の装置本体3から引き出された使用済みのカセット16Aが載置されるようになっている。
【0071】
使用済み或いは未使用のカセット16A,16Bを、各可動レール76,78の上面に設けられた所定の厚さの第1、第2のスペーサ79,80上に載置することで、たとえば未使用のカセット16Bが第2の可動レール78の第2のスペーサ80上に載置された状態で、第1の可動レール76を上記未使用のカセット16Bに干渉することなくスライドさせることが可能となっている。
【0072】
図10において、実装装置1の装置本体3を鎖線で示している。この装置本体3の構造は一対の支持レール14を有する点などで第1の実施の形態に示されたものとほぼ同じであるが、装置本体3の前面に受け渡しテーブル20が設けられていないという点で異なっている。
【0073】
つぎに、上記構成の台車2Aを用いてカセット16を受け渡す手順を図11乃至図14を参照しながら説明する。
図11は装置本体3内に保持された使用済みのカセット16Aを取り出す状態を示しており、作業者(図示せず)はシート19を使い終わった使用済みのカセット16Aを支持レール14に沿って同図に矢印Xで示す装置本体3の前面側へ引き出す。
【0074】
使用済みのカセット16Aを装置本体3の前面側へ引き出したならば、図11に示すように台車2Aを装置本体3の前面に位置決めし、回転体65が下降位置にある状態で、一対の第1の可動レール76の第1のスペーサ79が設けられた一端側を装置本体3内の前面に引き出された使用済みのカセット16Aの下面に進入させる。
【0075】
つぎに、レバー53によって回転軸52を回転操作し、回転体65を上昇させる。回転体65を上昇させれば、第1の可動レール76の第1のスペーサ79が設けられた一端部によって使用済みのカセット16Aが支持レール14から掬い上げられて浮上する。
なお、上記回転体65の上面の一対の第2の可動レール78の第2のスペーサ80上には予め未使用のカセット16Bが供給載置されている。
【0076】
使用済みのカセット18Aを第1の可動レール76によって支持レール14から浮上させたならば、図12に示すように第1の可動レール76を後退方向に駆動し、使用済みのカセット16Aを回転体65上に移載する。その場合、使用済みのカセット16Aは一対の第1の可動レール76の第1のスペーサ79上に幅方向の両端部が載置されているから、そのカセット16Aを装置本体3から車体22側へ移動させれば、一対の第1の可動レール76は第1の固定レール75に対して連動してスライドする。
【0077】
一対の第1の可動レール76の第1のスペーサ79上に載置された使用済みのカセット16Aは、その下面が第2の可動レール78の上面よりも第1のスペーサ79の厚さ分だけ高い位置にあるから、第2の可動レール78に干渉することなく回転体65上に移載することができる。
【0078】
使用済みのカセット16Aを回転体65の上面に移載したならば、この回転体65を図12に矢印で示す方向へ180度回転させる。それによって、図13に示すように、未使用のカセット16Bが装置本体3側に位置し、使用済みのカセット16Aが反対側に位置することになる。
【0079】
なお、回転体65を180度回転させることで、ボールプランジャ68の球体72と回転体65に設けられた係合体67の凹部66とが再び弾性的に係合するから、上記回転体65は自由に回転しない状態に保持される。
【0080】
このように、回転体65を回転させて未使用のカセット16Bを装置本体3側に位置させたならば、図14に示すように未使用のカセット16Bを装置本体3側へ押し込む。未使用のカセット16Bは第2の可動レール78の第2のスペーサ80上に載置されていて、その下面と第1の可動レール76の上面との間には上記第2のスペーサ80の厚さに対応する隙間が形成されている。
【0081】
そのため、未使用のカセット16Bを装置本体3内へ押し込む際、そのカセット16Bが第1の可動レール76の上面に干渉することがない。それによって、第2の可動レール78が第1の固定レール75に対して円滑にスライドするから、その作業を容易かつ確実に行なうことができる。
【0082】
未使用のカセット16Bを図14に示すように支持レール14上の所定の位置まで押し込んだならば、車体22に設けられたレバー53を回転操作して回転体65を下降させ、未使用のカセット16Bの幅方向両端部の下面を一対の支持レール14の一端部である、装置本体3の前面側の端部上面に係合保持させる。
【0083】
このようにして、未使用のカセット16Bを装置本体3の支持レール14の一端部に係合載置させたならば、第2の可動レール78をスライドさせて回転体65上に戻してから、台車2Aを実装装置1の前面から離れる位置に移動させる。ついで、支持レール14の一端部に載置された未使用のカセット16Bを装置本体3の内方の所定の位置まで押し込む。それによって、使用済みのカセット16Aを装置本体3から取り出し、未使用のカセット16Aを装置本体3に移載する作業が終了することになる。
【0084】
このような構成の台車2Aであっても、第1の実施の形態と同様、使用済みのカセット16Aを装置本体3から取り出して未使用のカセット16Bを装置本体3に装着する作業を容易に、しかも迅速に行なうことができるから、作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】この発明の第1の実施の形態の台車と実装装置を示す側面図。
【図2】下部テーブルに対して上部テーブルがスライド可能に設けられた構造の断面図。
【図3】上部テーブルをスライド可能に設けた下部レールと上部レールを示す側面図。
【図4】使用済みのカセットを実装装置の支持テーブル上に引き出したときの説明図。
【図5】使用済みのカセットを台車の上部テーブルに移載したときの説明図。
【図6】下部テーブルに予め載置された未使用のカセットを支持テーブルに受け渡すことができるよう台車の上部テーブルと下部テーブルを上昇させたときの説明図。
【図7】下部テーブルに載置された未使用のカセットを支持テーブルに移載するときの説明図。
【図8】支持テーブルに移載された未使用のカセットを実装装置の所定位置まで押し込んだときの説明図。
【図9】この発明の第2の実施の形態の台車を示す正面図。
【図10】台車と実装装置との概略的構成を示す平面図。
【図11】使用済みのカセットを実装装置から取り出すときの説明図。
【図12】未使用済みのカセットを実装装置は台車の回転体上に移載したときの説明図。
【図13】使用済みのカセットが移載された回転体を180度回転させてこの回転体に予め載置された未使用のカセットを実装装置に対向位置させたときの説明図。
【図14】未使用のカセットを実装装置に移載するときの説明図。
【符号の説明】
【0086】
1…実装装置、2,2A…台車、9…圧着ツール、11…加圧ヘッド、14…支持レール(支持部)、16…カセット、16A…使用済みのカセット、16B…未使用のカセット、19…シート、24…上部テーブル(上載置部)、25…下部テーブル(下載置部)、26,51…上下駆動機構、65…回転体、75…第1の固定レール、76…第1の可動レール、77…第2の固定レール、78第2の可動レール、79,80…スペーサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装装置の圧着ツールによって電子部品を基板に加圧して圧着する際、上記圧着ツールと電子部品との間に介装させるシートが設けられたカセットを、上記実装装置の前面に設けられた受け渡しテーブルに対して受け渡す受け渡し台車であって、
走行可能な車体と、
この車体に設けられた上下駆動機構と、
上記車体に設けられ上記上下駆動機構によって同期して上下駆動されるとともに上面に上記カセットが載置される上載置部及び下載置部を具備し、
上記台車の上記上載置部或いは下載置部のいずれか一方の載置部には未使用のカセットが載置されていて、
上記受け渡しテーブルに上記実装装置から使用済みのカセット引き出してから、上記台車を上記実装装置の受け渡しテーブルが設けられた前面に対向するよう移動させ、他方の載置部を上記受け渡しテーブルと同じ高さにしてから、その載置部に上記受け渡しテーブルから使用済みのカセットを移載させた後、上記上下駆動機構によって上記上載置部及び下載置部を上下方向に駆動して未使用のカセットが載置された一方の載置部を上記受け渡しテーブルと同じ高さにし、その載置部に載置された未使用のカセットを上記受け渡しテーブルに移載することを特徴とするカセット受け渡し台車。
【請求項2】
上記上載置部には、上記下載置部に載置された未使用のカセットを上記受け渡しテーブルに移載するとき、若しくは上記受け渡しテーブルに引き出された使用済みのカセットを上記下載置部に移載するときに、上記上載置部に載置された使用済みのカセット若しくは未使用のカセットを下載置部の上方から上記受け渡しテーブルの上方へ移動させることを可能とする可動手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のカセット受け渡し台車。
【請求項3】
実装装置の圧着ツールによって電子部品を基板に加圧して圧着する際、上記圧着ツールと電子部品との間に介装させるシートが設けられたカセットを、上記実装装置に受け渡す受け渡し台車であって、
走行可能な車体と、
この車体に設けられた回転機構と、
上記車体に設けられ上記回転機構によって回転可能に設けられた回転体と、
上記車体に設けられ上記回転体を上下方向に駆動する上下駆動機構と、
上記回転体の上面の一端側に設けられた第1の受け渡し手段と、
上記回転体の上面の他端側に設けられた第2の受け渡し手段を具備し、
上記実装装置で使用された使用済みのカセットを上記回転体を下降位置から上昇方向に変位させることで一方の受け渡し手段によって上記実装装置から掬い上げて上記回転体に移載させるとともに、上記回転体を180度回転させて他方の受け渡し手段に予め載置された未使用のカセットを上記回転体を上昇位置から下降方向に変位させることで上記実装装置に移載させることを特徴とするカセット受け渡し台車。
【請求項4】
上記第1の受け渡し手段は、上記回転体に平行に固定された一対の第1の固定レール及び各固定レールに移動可能に設けられた第1の可動レールによって構成され、
上記第2の受け渡し手段は、上記回転体に平行に固定された一対の第2の固定レール及び各固定レールに移動可能に設けられた第2の可動レールによって構成されていて、
上記第1、第2の可動レールを上記実装装置内へスライドさせて上記上下駆動機構によって上記回転体を上下駆動させることで、使用済みのカセットの取り出しと未使用のカセットの供給とが行なわれることを特徴とする請求項3記載のカセット受け渡し台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−71901(P2008−71901A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248520(P2006−248520)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】