説明

カセット交換装置

【課題】とりわけミクロトームの切断領域に手(作業)によるアクセスを要することなく、作業プロセスの促進(迅速化)を可能にするカセット交換装置および交換方法の提供。
【解決手段】とりわけミクロトーム用のカセット交換装置であって、a)装填開口(3)と、引渡し開口(5)と、排出開口(7)とを備えると共に、該装填開口(3)、該引渡し開口(5)及び該排出開口(7)が直列的ないし直線的にこの順で互いに対し等間隔で配置されたハウジング(1)と、b)前記ハウジング(1)の隣り合う2つの開口間の間隔で離隔されて配された第1及び第2装填室(12、13)を備え、該ハウジング(1)の2つの終端位置(第1及び第2終端位置)間で直線的に摺動可能なキャリッジ(10)を有し、前記第1及び第2装填室(12、13)は、前記2つの終端位置の夫々において、前記ハウジング(1)の開口ペア(3、5;5、7)に割り当てられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけミクロトーム用のカセット交換装置及び交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
夫々処理されるべき試料が包埋されている複数のカセットが配されるマガジンを有するミクロトームがDE20 2004 006 265 U1から知られている。個々のカセットは、掴持装置及び摺動装置によってマガジンから取り出されてミクロトームの試料受容部に供給され、再びマガジンに戻される。マガジンは、目的のカセットが掴持装置及び摺動装置の作業領域に配される位置にその都度摺動される必要がある。更に、マガジンは、処理されたカセットを回収した後でなければ、新たな位置に摺動することができない。1つのカセットの準備、切断装置への供給からマガジンへの回収までの作業期間には、相当の長時間を要する。
【特許文献1】DE20 2004 006 265 U1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
マガジン及びカセット(複数)へのコード付与によるミクロトームにおける作業プロセスの自動化が進展するに従って、マガジンに配されたカセット(複数)をマガジンに配された順に従って順次処理することが可能になる。このため、1つのカセットの処理中に早くも次のカセットを処理のために準備することができる。しかしながら、この場合、処理されたカセットのマガジンへの回収は阻止されるため、カセットは、ミクロトームの試料受容部から手(作業)で取り出さなければならない。しかしながら、ミクロトームの切断ナイフの領域での作業には負傷の危険性が伴う。
【0004】
それゆえ、本発明の課題は、とりわけミクロトームの切断領域に手(作業)によるアクセスを要することなく、作業プロセスの促進(迅速化)を可能にするカセット交換装置および交換方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の視点により、とりわけミクロトーム用のカセット交換装置が提供される。この交換装置は、
a) 装填開口と、引渡し開口と、排出開口とを備えると共に、該装填開口、該引渡し開口及び該排出開口が(例えばキャリッジの摺動運動の中心軸線への正射影に関し)直列的ないし直線的に(linear)この順で互いに対し等間隔で配置されたハウジングと、
b) 前記ハウジングの隣り合う2つの開口の距離をもって互いに離れて配された第1及び第2装填室を備え、該ハウジングの2つの終端位置(第1及び第2終端位置)間で直線的に摺動可能なキャリッジを有し、
前記第1及び第2装填室が、前記2つの終端位置の夫々において、前記ハウジングの開口ペアに割り当てられる(配置ないし配向される)こと(前記第1及び第2装填室が、前記第1終端位置において夫々前記装填開口及び前記引渡し開口に、前記第2終端位置において夫々前記引渡し開口及び前記排出開口に割り当てられる(配置ないし配向される)こと)
を特徴とする(形態1・第1基本構成)。
更に、上記の課題を解決するために、本発明の第2の視点により、上記カセット交換装置におけるカセット交換方法が提供される。このカセット交換方法において、
a) 前記キャリッジが前記第1終端位置に位置付けられ、第1のカセットが前記装填開口を介して前記第1装填室に装填されること、
b) 次いで、前記キャリッジが前記第2終端位置に走行され、前記第1のカセットが前記引渡し開口を介して前記第1装填室から取り出されること、
c) 次いで、前記キャリッジが再び前記第1終端位置に走行され、前記第1装填室が新たに第2のカセットで装填されかつ前記取り出された第1のカセットが所定の処理を受けた後前記第2装填室に装填されること、
d) 次いで、前記キャリッジが前記第2終端位置に走行され、前記処理された第1のカセットが前記排出開口を介して前記第2装填室から排出されかつ前記第2のカセットが所定の処理を受けるために前記第1装填室から(前記引渡し開口を介して)取り出されること、
e) 前記工程c)及びd)が繰り返されること
を特徴とする(形態9・第2基本構成)。
【発明の効果】
【0006】
本発明の独立請求項1及び9により、上記課題に対応した効果が夫々達成される。即ち、本発明のカセット交換装置及び方法では、とりわけミクロトームにおける1つのカセットに対する供給から回収に至る操作の終了を待つことなく他のカセットに対する操作を開始することができるため自動化された操作を効率的に行うことができる。更に、とりわけ切断領域でのカセット回収のための手作業が不要となるため、怪我の危険を回避することができる。
更に、各従属請求項により付加的な効果が夫々達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を示すが、形態2〜8は従属請求項の対象である。
(形態1) 上記基本構成1参照。
(形態2) 上記のカセット交換装置において、前記キャリッジは、前記第1及び第2終端位置間でモータ駆動的に走行可能であることが好ましい。
(形態3) 上記のカセット交換装置において、前記第1及び第2終端位置に、モータ制御のための光センサ(透過型フォトインタラプタ、反射型フォトインタラプタ等)が配置されていることが好ましい。
(形態4) 上記のカセット交換装置において、前記第1及び第2装填室は、摺動面においてU字状の横断面を有する開放されたフレームとして構成されていることが好ましい。
(形態5) 上記のカセット交換装置において、前記装填開口は、前記キャリッジが前記第1終端位置に位置付けられたとき、前記第1装填室の横断面に対向しかつ該横断面の寸法に適合するように前記ハウジングの蓋部に形成されていることが好ましい。
(形態6) 上記のカセット交換装置において、前記装填開口は、前記キャリッジが前記第1終端位置に位置付けられたとき、前記第1装填室の開放面に対向しかつ該第1装填室のフレームによって形成される面の寸法に適合するように前記ハウジングの裏壁に形成されていることが好ましい。
(形態7) 上記のカセット交換装置において、前記引渡し開口は、前記ハウジングの底部及び裏壁に接続された(つなげられた)開放開口(Ausbruch)として形成され、
前記底部の開放開口は、前記装填室の横断面の寸法に適合されており、
前記裏壁の開放開口は、前記装填室のフレームによって形成される面の寸法に適合されていることが好ましい。
(形態8) 上記のカセット交換装置において、前記排出開口は、前記キャリッジが前記第2終端位置に位置付けられたとき、前記第2装填室の横断面に対向しかつ該横断面の寸法に適合するように前記ハウジングの底部に形成されていることが好ましい。
(形態9) 上記基本構成2参照。
【0008】
キャリッジは、格納マガジンの領域からミクロトームの処理領域にカセットを引き渡すために、本発明に応じ、2つの装填室(第1装填室及び第2装填室)を有する。第1装填室は、第1終端位置において、新たに処理されるべきカセットを格納マガジンの領域から受容(収容)することができる。第2装填室は、これとは独立に、ミクロトームですでに処理されたカセットを受容(収容)することができる。更に、キャリッジがミクロトームの処理ステーションのそばを通過して第2終端位置に走行するよう構成することによって、処理のために第1装填室の中からミクロトームに引渡され、処理後に第2装填室に回収されたカセットを保存または廃棄処分のために捕集容器に排出することができる。こうして(2つの)装填室が空になった状態でキャリッジが第1終端位置に戻ることによって、手(作業)によるアクセスを要することなく、交換プロセスを任意に繰り返すことができる。キャリッジは、カセット装填、カセット引渡し及びカセット排出のための夫々対応する開口を有するハウジング内に配されると都合がよい。ハウジングは、自動化された作動プロセスのためにミクロトームの(そばの)適切な位置に固定することができる。
【0009】
以下に、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、特許請求の範囲に付した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【実施例】
【0010】
図1は、ハウジング1の内部を見ることができるよう、その前壁を省いてハウジング1を示している。ハウジング1は、蓋部2に装填開口3を有する。裏壁4には、開放開口(Ausbruch:輪郭が開いた(閉じていない)開口)として、引渡し開口5が設けられており、該引渡し開口5はハウジング1の底部6の開放開口に移行(接続)している。底部6には、さらに、排出開口7が設けられている。
【0011】
装填開口3から引渡し開口5の領域及び引渡し開口5から排出開口7の領域には、底部6に案内バー8が、蓋部2に案内レール9が配設されている。ハウジング1に挿入されたカセットは、1つの開口(の領域)から他の開口(の領域)に搬送される際、ハウジングの底部6上では案内バー8間でスライドしかつ上方では案内レール9に保持される。
【0012】
引渡し開口5が、底部6の開放開口に(輪郭の開放部同士が)接続された裏壁4の開放開口であることが、図2に示されたハウジング1の背面斜視図から明確に見出すことができる。
【0013】
図3は、ハウジング1内で走行可能なキャリッジ10の斜視図である。キャリッジ10はレール11の上に配され、レール11は底部6上で案内バー8に並置されて固定される。キャリッジ10は第1装填室12と第2装填室13を有する。装填室12、13は、図4からも分かるように、U字状の横断面を有し底部6に対して垂直に延伸するフレームとして構成される。装填室12、13は、互いに隣接する2つの開口(装填開口3、引渡し開口5、排出開口7)に対応する位置に所定間隔をもって配され、キャリッジ内の所定位置において隣接する2つの開口に合致して連通状態をとるようにこれらの開口と対応付けられている。
【0014】
キャリッジ10は、左右両側に(レール11の延在方向の両側に)夫々突出するノーズ14を有し、これらのノーズ14は、光センサ(透過型フォトインタラプタ、反射型フォトインタラプタ等)に対する光遮断器として機能する。
【0015】
図5は、カセット16を受容(収容)するためのそれ自体は既知のテンションクランプ15を示す。テンションクランプ15は、レバー18への圧力印加によって拡開され得るジョー17を有する。ジョー17が拡開されたとき、カセット16はテンションクランプ15に側方から挿入されることができる。
【0016】
カセット交換装置の作動機構は図6からも分かる。キャリッジ10は第1終端位置に走行(到達)しているが、第1終端位置(への到達)は光センサ19を介して調整(検出)される。キャリッジ10は、モータ駆動されるスピンドル20によって摺動される。キャリッジ10の図示の位置において、カセット16は、装填開口3を通って第1装填室12に入り込み底部6に当接するまで落下することができる。複数のカセット16がハウジング1の方向に摺動可能な積重体として簡単に図示されている。実用上は、複数のカセットは1つのマガジン内に配され、このマガジンは、図示の場合、ハウジング1の上方に配置され、カセット16は該マガジンの前面から順次押し出されることができる。このようなマガジンをハウジング1の底部6の高さの位置に配置し、(その位置に)対応して形成された裏壁4の装填開口を通してカセット16を装填室12に押し込むように構成することも勿論可能である。
【0017】
図7は、キャリッジ10が、ハウジングの図示右側に設けられた光センサ(不図示)によって調整される(その到達が検出される)第2終端位置に位置している様子を示す。第1装填室12は引渡し開口5に走行(到達)しているが、この引渡し開口5には、予め、テンションクランプ15が下方から入り込んでいる。その際、ハウジング1の蓋部2に固定されたローラ21にレバー18が当接することによって、テンションクランプ15(のジョー17)は拡開される。このため、矢印で示された方向にキャリッジ10が摺動すると、第1装填室12に存在する新たな(未処理の)カセット16をテンションクランプ15に側方から押し込む(嵌め込む)ことができる。
【0018】
テンションクランプ15は、例えば回転式ミクロトームの試料支持体に固定することができる。試料ホルダの上方の上昇方向に引渡し開口5を配置する(形成する)ことによって、試料ホルダの上昇高さが十分であれば、カセット交換装置の内部から外部及び/又は外部から内部への試料の引渡し(搬送)を自動化することができる。
【0019】
処理されたカセット16が装填された第2装填室13は、キャリッジ10の図示の第2終端位置では、ハウジング1の底部6に形成された排出開口7の上方に位置するため、カセットは排出開口7を通って下方に落下して外部に排出されることができる(図8)。排出開口7の下方に、処理されたカセットを収容するためのマガジンが配されると都合がよい。
【0020】
装填されたテンションクランプ15が下降されると、両方の装填室12、13は空になる(図8)。次いで、キャリッジ10は再び第1終端位置に走行され、第1装填室12に新たなカセット16を装填することができる。その際、第2装填室13には、テンションクランプ15の上昇及び拡開によって、処理されたカセット16が再び収納(装填)されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】カセット交換装置のハウジングの一例の前壁を除去して示した斜視図。
【図2】カセット交換装置のハウジングの一例の背面から見た斜視図。
【図3】カセット交換装置のキャリッジの一例。
【図4】カセット交換装置のキャリッジの一例の平面図。
【図5】テンションクランプの一例。
【図6】カセット交換装置の一例においてキャリッジが第1終端位置に位置する様子をハウジングの前壁を除去して示した斜視図。
【図7】カセット交換装置の一例においてカセットが装填されたキャリッジが第2終端位置に位置する様子をハウジングの前壁を除去して示した斜視図。
【図8】カセット交換装置の一例において第2終端位置に位置するキャリッジからカセットが排出される様子をハウジングの前壁を除去して示した斜視図。
【符号の説明】
【0022】
1 ハウジング
2 蓋部
3 装填開口
4 裏壁
5 引渡し開口
6 底部
7 排出開口
8 案内バー(Fuehrungsleiste)
9 案内レール
10 キャリッジ
11 レール
12 第1装填室
13 第2装填室
14 ノーズ
15 テンションクランプ(Spannklammer)
16 カセット
17 テンションジョー(Spannbacke)
18 レバー
19 光センサ
20 スピンドル
21 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
とりわけミクロトーム用のカセット交換装置であって、
a) 装填開口(3)と、引渡し開口(5)と、排出開口(7)とを備えると共に、該装填開口(3)、該引渡し開口(5)及び該排出開口(7)がこの順で直列的に互いに対し等間隔で配置されたハウジング(1)と、
b) 前記ハウジング(1)の隣り合う2つの開口の距離をもって互いに離れて配された第1及び第2装填室(12、13)を備え、該ハウジング(1)の2つの終端位置(第1及び第2終端位置)間で直線的に摺動可能なキャリッジ(10)を有し、
前記第1及び第2装填室(12、13)は、前記2つの終端位置の夫々において、前記ハウジング(1)の開口ペア(3、5;5、7)に割り当てられること
を特徴とするカセット交換装置。
【請求項2】
前記キャリッジ(10)は、前記第1及び第2終端位置間でモータ駆動的に走行可能であること
を特徴とする請求項1に記載のカセット交換装置。
【請求項3】
前記第1及び第2終端位置に、モータ制御のための光センサ(19)が配置されていること
を特徴とする請求項2に記載のカセット交換装置。
【請求項4】
前記第1及び第2装填室(12、13)は、摺動面においてU字状の横断面を有する開放されたフレームとして構成されていること
を特徴とする請求項1に記載のカセット交換装置。
【請求項5】
前記装填開口(3)は、前記キャリッジ(10)が前記第1終端位置に位置付けられたとき、前記第1装填室(12)の横断面に対向しかつ該横断面の寸法に適合するように前記ハウジング(1)の蓋部(2)に形成されていること
を特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のカセット交換装置。
【請求項6】
前記装填開口(3)は、前記キャリッジ(10)が前記第1終端位置に位置付けられたとき、前記第1装填室(12)の開放面に対向しかつ該第1装填室(12)のフレームによって形成される面の寸法に適合するように前記ハウジング(1)の裏壁(4)に形成されていること
を特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のカセット交換装置。
【請求項7】
前記引渡し開口(5)は、前記ハウジング(1)の底部(6)及び裏壁(4)に連通された開放開口として形成され、
前記底部(6)の開放開口は、前記装填室(12、13)の横断面の寸法に適合されており、
前記裏壁(4)の開放開口は、前記装填室(12、13)のフレームによって形成される面の寸法に適合されていること
を特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のカセット交換装置。
【請求項8】
前記排出開口(7)は、前記キャリッジ(10)が前記第2終端位置に位置付けられたとき、前記第2装填室(13)の横断面に対向しかつ該横断面の寸法に適合するように前記ハウジング(1)の底部(6)に形成されていること
を特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のカセット交換装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載のカセット交換装置におけるカセット交換方法において、
a) 前記キャリッジ(10)が前記第1終端位置に位置付けられ、第1のカセット(16)が前記装填開口(3)を介して前記第1装填室(12)に装填されること、
b) 次いで、前記キャリッジ(10)が前記第2終端位置に走行され、前記第1のカセット(16)が前記引渡し開口(5)を介して前記第1装填室(12)から取り出されること、
c) 次いで、前記キャリッジ(10)が再び前記第1終端位置に走行され、前記第1装填室(12)が新たに第2のカセットで装填されかつ前記取り出された第1のカセット(16)が所定の処理を受けた後前記第2装填室(13)に装填されること、
d) 次いで、前記キャリッジ(10)が前記第2終端位置に走行され、前記処理された第1のカセット(16)が前記排出開口(7)を介して前記第2装填室(13)から排出されかつ前記第2のカセット(16)が所定の処理を受けるために前記第1装填室(12)から取り出されること、
e) 前記工程c)及びd)が繰り返されること
を特徴とするカセット交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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