説明

カゼインキナーゼII(CK2)阻害剤に関する方法及びプリノソーム破壊型CK2阻害剤の抗癌治療剤としての使用

生細胞内で多酵素複合体変調剤を分類するためのラベルフリーバイオセンサー細胞アッセイに関する方法が開示される。プリノソーム破壊型カゼインキナーゼII(CK2)阻害剤の同定に関する方法と、CK2活性及びプリン合成経路を変調するため、及び、CK2と関連する癌、ウイルス感染症及び炎症疾患の予防及び治療の改善のための治療剤としてのプリノソーム破壊型CK2阻害剤の使用に関する方法とが開示される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本件出願は2010年2月19日出願の米国仮特許出願第12/708,840号を基礎とする優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、分子をテストする方法であって、a)インキュベーションされた細胞システムを形成する多酵素複合体を含む細胞システムと前記分子とをインキュベーションすること、b)前記インキュベーションされた細胞システムをラベルフリーバイオセンサーシステムを用いてアッセイすること、及び、c)前記分子が前記多酵素複合体を変調できる能力を測定することを含む、分子をテストする方法と、前記分子を多酵素複合体変調剤として分類するステップをさらに含む前記方法と、プリノソーム破壊型CK2阻害剤を投与することを含む、被検者における癌を治療する方法と、プリノソーム破壊型CK2阻害剤を投与することを含む、被検者におけるウイルス感染症を治療する方法と、プリノソーム破壊型CK2阻害剤を投与することを含む、被検者における炎症を治療する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
ラベルフリーバイオセンサーアッセイは、非侵襲的かつリアルタイムの細胞解析を可能にするため、細胞活性を監視するのに望ましいアッセイである。しかし、多くの細胞活性についてラベルフリーバイオセンサーアッセイは見つかっていない。多酵素複合体は、医薬品産業にとってとても興味深い標的であるが、非常に複雑であるため、望ましいアッセイは存在しない。本明細書で開示されるのは、プリノソームのような多酵素複合体を研究するためと、かかる多酵素複合体の動態を調節する分子をスクリーニングするためとに設計されたラベルフリーバイオセンサーアッセイである。カゼインキナーゼII(CK2)に関連する癌疾患を予防、治療又は治癒する方法も開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2006/108183A2号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】An, S.ら、Science 320:103−106(2008)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で説明される方法は、プリノソームを含む多酵素複合体の細胞活性を直接的及び間接的に検出するためのラベルフリーバイオセンサー細胞アッセイを使用することに関する。本明細書に説明される方法は、プリノソーム形成の動態を調節するCK2阻害剤を含む分子をスクリーニングするためのラベルフリーバイオセンサー細胞アッセイを用いて実施される場合がある。本明細書に説明される方法は、CK2の異常活性に関連する癌疾患を予防、治療又は治癒するためにも用いられる。
【0007】
ラベルフリーバイオセンサー細胞アッセイに関する方法が開示される。本明細書にはCK2変調剤をスクリーニング及び分類する方法も開示される。開示される前記方法は、プリノソーム複合体の動態(すなわち、形成及び解離)を異なる方向に調節ことができる別々のCK2阻害剤の発見につながる。前記プリノソームは、プリン合成de novo経路に重要な多酵素シグナル伝達複合体である。開示される前記方法は、天然のままの(native)細胞におけるプリノソームの会合(すなわち、形成)及び解離をリアルタイムで追跡するためにCK2阻害剤(例えばTBB及びDMAT)を利用する。前記開示される方法は、予め同調された細胞を使うことが好ましい。前記細胞は前記CK2阻害剤で誘発されたプリノソームの動態がラベルフリーバイオセンサー細胞アッセイを使って確実に測定できるように、特定の状態に予め同調される場合がある。
【0008】
本明細書には、前記プリノソーム形成に関与する上流のシグナル伝達経路を研究する方法も開示される。開示される前記方法は、前記上流の経路を同定するために、CK2阻害剤で誘導される天然のままの細胞におけるDMRシグナルを利用する場合がある。
【0009】
本明細書には、CK2阻害剤を、プリノソーム促進型阻害剤と、プリノソーム破壊型阻害剤とに分類する方法も開示される。一部の実施態様で開示される前記方法は、ある分子の1次的なDMRシグナルが同じ細胞における既知のCK2阻害剤DMRに類似することか、ある分子がTBB及びDMATという2種類の異なるCK2阻害剤のDMRシグナルに対して変調するパターンか、細胞/マーカーのパネルに作用する既知のCK2阻害剤にある分子の変調指数が類似することかに基づく。
【0010】
本明細書には、CK2の異常活性に関連する癌疾患の予防、治療及び治癒方法も開示される。開示される前記方法は、抗癌治療剤としてプリノソーム破壊型CK2阻害剤を使用する。プリノソーム形成はde novoプリン合成に重要であるため、及び、該プリン合成の経路の阻害は抗癌療法にとって実行可能なアプローチであることが証明されているため、プリノソーム破壊型CK2阻害剤は、CK2の異常活性に関連する癌疾患を予防、治療及び治癒するための抗癌治療剤として使用できる。
【0011】
さまざまなクラスの組成物と、化合物と、方法と、方法のステップとが開示され、これらのクラスと、それぞれの具体的な例は、例えば、本明細書に開示される方法で使用される場合がある。細胞システムと、例えば、CK2阻害剤か多酵素複合体促進剤か破壊剤かを同定するための該細胞システムの使用とが開示される。前記細胞システムは、いずれかの薬剤又は分子、例えば本明細書に開示されるもの、とともにインキュベーションされる場合があり、該薬剤又は分子はインキュベーションされる細胞システムを形成する。前記細胞システムは、本明細書に開示されるラベルフリーバイオセンサーシステムを用いて解析及びアッセイされる場合がある。一部のシステムでは、前記細胞システムは同調された細胞を含む場合がある。前記細胞システムか、他のいずれかの細胞かは、高濃度プリン及び血清添加培地中で培養される場合がある。一部の実施態様では、本明細書に開示される細胞システム及び細胞は、播種開始時細胞数が多い状態及び/又は高度にコンフルエントな状態から培養される場合がある。本明細書に開示される細胞システム及び細胞は、プリン欠乏培地及び/又は長期間の饑餓条件下で高度にコンフルエントな細胞集団になるまで培養される場合がある。前記細胞システムは、形質転換細胞株、不死化細胞株、初代細胞及び幹細胞の場合がある。
【0012】
本明細書に開示される試薬及び方法を用いて操作できる多酵素複合体が開示される。多酵素複合体変調剤、多酵素複合体促進剤、多酵素複合体解体促進剤、集合体形成促進剤、解体促進剤、プリノソーム複合体破壊剤、プリノソーム阻害剤、プリノソーム複合体促進剤、プリノソーム促進剤、プリノソーム解体型CK2阻害剤、プリノソーム破壊型CK2阻害剤、プリン合成経路阻害剤、CK2変調剤、CK2活性化剤、CK2阻害剤及び参照プローブも開示されるが、これらの全ては、本明細書に開示される方法にそって、本明細書に開示される試薬、組成物及び化合物のいずれかとともに使用される場合がある。
【0013】
本明細書に開示される活性を有するさまざまな分子も開示され、本明細書に説明される方法において、TBB(4,5,6,7−テトラブロモベンゾトリアゾール)、DMAT(2−ジメチルアミノ−4,5,6,7−テトラブロモ−1H−ベンズイミダゾール)及びTBBz(4,5,6,7−テトラブロモベンズイミダゾール)等とのいずれかの組合せか、あるいは、単独かで使用される場合がある。
【0014】
CK2活性と、分子で誘導されるバイオセンサー応答と、参照プローブのバイオセンサー応答とのようなアッセイ可能なさまざまな活性及び細胞応答も開示される。これらの応答は、天然のままの(native)細胞と、CK2阻害剤に感受性がある細胞とともに、本明細書に開示される細胞システムを含むさまざまな細胞においてアッセイされる場合がある。一部の実施態様では、内在性Gi共役型レセプターの前活性化(preactivation)はアッセイ可能で、同じ細胞においてCK2阻害剤で誘導されるバイオセンサー細胞応答に対する前記レセプターの変調及び影響が監視できる。
【0015】
前記アッセイはプリノソームの会合及び解体をリアルタイムで監視するのに使用可能である。
【0016】
前記開示される方法によって同定される組成物及び化合物は、白血病、直腸結腸癌、前立腺癌、乳癌のような癌、リンパ腫、頭頸部及び肺の扁平上皮癌、脳神経膠腫癌、又は、Abl又はAlkのような癌化キナーゼの遺伝的変化から生じる癌表現型の治療に使用される場合がある。同様に、前記同定される組成物及び化合物は、ヘルペスウイルス又はサイトメガロウイルスに起因するウイルス感染症のようなウイルス感染症と、炎症性腸疾患、潰瘍性腸炎のような腸疾患のような慢性炎症疾患症状のような炎症症状を治療するために使用される場合があり、クローン病は慢性炎症疾患の場合があり、糸球体腎炎も慢性炎症疾患である。これらの疾患はCK2キナーゼの異常活性を伴うことがしばしばある。
【0017】
すべての症例において、本明細書に開示される組成物及び化合物は治療上有効な量で投与される場合がある。
【0018】
本明細書に開示される方法と、該方法において使用可能な組成物及び化合物は、材料、物質、分子及びリガンドのような多数の異なるクラスから生じる場合がある。これらのクラスの具体的なサブセットも開示されるが、これらは例えば、hERG活性化のためのマーカーとしてのマロトシキンと、プリノソーム会合のためのマーカーとしてDMATとのように、マーカーとよばれ、ラベルフリーバイオセンサーアッセイに特有である。
【0019】
分子混合物のような、これらのクラスの混合物も開示され、前記開示の方法において使用される場合があることが理解される。
【0020】
一部の方法では、未知の分子、試験分子、薬剤候補分子が、既知分子とともに使用される場合がある。
【0021】
一部の方法又は状況では、変調又は変調剤が役割を果たす。同様に既知の変調剤が使用される場合がある。
【0022】
一部の方法及び組成物においては、細胞が関与し、細胞は培養される場合があり、細胞培養が本明細書に説明されるように使用される場合がある。
【0023】
本明細書に開示される方法はバイオセンサーを使用するアッセイを伴う。一部のアッセイでは、アッセイは作動モードか拮抗モードかのいずれかで実行される。前記アッセイは、材料、物質又は分子のような1種類または2種類以上のクラスで細胞を処理することを伴うことがしばしばある。本明細書に説明されるように、被験者も処理される場合もある。
【0024】
一部の方法では、例えば分子と、細胞との接触が起こる場合がある。前記開示の方法において、DMR応答のようなバイオセンサー応答として現れる場合がある細胞応答のような応答が検出可能である。これら及びその他の応答はアッセイ可能である。一部の方法では、バイオセンサーからのシグナルはロバストなバイオセンサーシグナル又はロバストなDMRシグナルの場合がある。
【0025】
前記開示のラベルフリーバイオセンサーを使用する方法は、1次的なプロフィール、2次的なプロフィール及び変調プロフィールのようなプロフィールを発生できる。これら及びその他のプロフィールは、例えば分子についての測定をするのに使用でき、本明細書に説明されるいずれかのクラスとともに使用できる。
【0026】
本明細書に開示される分子、細胞、材料又は物質のような、化合物又は組成物のライブラリ及びパネルも開示される。マーカーのパネル及び細胞のパネルのような特定のパネルも開示される。
【0027】
前記開示の方法は、バイオセンサーシグナル、DMRシグナル、正規化、対照、陽性対照、変調比較、指標(Indexes)、バイオセンサー指標、DMR指標、分子バイオセンサー指標、分子DMR指標、分子指標、変調剤バイオセンサー指標、既知変調剤DMR指標、マーカーバイオセンサー指標、マーカーDMR指標、マーカーの前記バイオセンサーシグナルを変調すること、前記DMRシグナルを変調すること、強化すること、及び、指標の類似性のような、さまざまな局面を利用できる。
【0028】
本明細書に開示される組成物、化合物又はその他のいずれも、本明細書に開示されるいずれかのやり方で特徴づけられる場合がある。
【0029】
より高い、阻害、その他の文言のような特徴づけに依存する方法が開示される。
【0030】
一部の方法では、レセプター又は細胞の標的が使用される。一部の方法は、分子で処理された細胞その他の細胞の工程とともに、シグナル伝達経路についての情報を提供できる。
【0031】
一部の実施態様では、ある種の効能又は薬効が特徴となり、(例えば、薬剤候補分子の)直接作用がアッセイされる場合がある。
【0032】
前記開示の方法は、サンプルについて、あるいは、サンプルを用いて実施される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】プリン合成のde novo経路を示す化学式
【図2A】異なる培養条件下でのHeLa細胞の形態を示す光学顕微鏡画像。ウェルあたり5,000個の播種開始時密度で播種されたHeLa細胞の光学顕微鏡画像。全ての細胞はアッセイ前にEpic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間普通の血清添加培地を用いて培養された。
【図2B】異なる培養条件下でのHeLa細胞の形態を示す光学顕微鏡画像。ウェルあたり10,000個の播種開始時密度で播種されたHeLa細胞の光学顕微鏡画像。全ての細胞はアッセイ前にEpic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間普通の血清添加培地を用いて培養された。
【図2C】ウェルあたり20,000個の播種開始時密度で播種されたHeLa細胞の光学顕微鏡画像。全ての細胞はアッセイ前にEpic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間普通の血清添加培地を用いて培養された。
【図2D】異なる培養条件下でのHeLa細胞のCK阻害剤で誘導されたDMRシグナルを示すグラフ。3種類の異なる播種密度のHeLa細胞のCK2阻害剤TBBで誘導されたDMRシグナル。各平均応答を作成するのに少なくとも8個のレプリケートが使われた。
【図2E】異なる培養条件下でのHeLa細胞のCK阻害剤で誘導されたDMRシグナルを示すグラフ。3種類の異なる播種密度のHeLa細胞のCK2阻害剤DMATで誘導されたDMRシグナル。各平均応答を作成するのに少なくとも8個のレプリケートが使われた。
【図3A】プリン欠乏培地を用いて培養されたHeLa細胞のCK2阻害剤で誘導されたDMRシグナルを示すグラフ。CK2阻害剤TBBで誘導されたHeLa細胞のDMRシグナル。全ての細胞はアッセイ前にEpic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間普通の血清添加培地を用いて培養された。示されたとおり2種類の異なる播種密度が用いられた。TBB濃度は100μM、DMAT濃度は25μM。各平均応答を作成するのに少なくとも8個のレプリケートが使われた。
【図3B】プリン欠乏培地を用いて培養されたHeLa細胞のCK2阻害剤で誘導されたDMRシグナルを示すグラフ。CK2阻害剤DMATで誘導されたHeLa細胞のDMRシグナル。全ての細胞はアッセイ前にEpic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間普通の血清添加培地を用いて培養された。示されたとおり2種類の異なる播種密度が用いられた。TBB濃度は100μM、DMAT濃度は25μM。各平均応答を作成するのに少なくとも8個のレプリケートが使われた。
【図4A】CK2阻害剤で誘導されたHeLa細胞のDMRシグナルの動態を示すグラフ。CK2阻害剤TBBで誘導されたDMRシグナルがその後のDMAT刺激で逆転することを示す。全ての細胞はEpic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養され、細胞は普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の密度で最初に播種された。TBB濃度は50μM、DMAT濃度は25μM。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。
【図4B】CK2阻害剤で誘導されたHeLa細胞のDMRシグナルの動態を示すグラフ。CK2阻害剤DMATで誘導されたDMRシグナルがその後のTBB刺激で逆転することを示す。全ての細胞はEpic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養され、細胞は普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の密度で最初に播種された。TBB濃度は50μM、DMAT濃度は25μM。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。
【図5A】CK2阻害剤DMAT用量依存性のHeLa細胞DMRシグナルを示すグラフ。リアルタイム応答を示す。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。
【図5B】CK2阻害剤DMAT用量依存性のHeLa細胞DMRシグナルを示すグラフ。DMAT濃度の関数として表されたDMAT刺激の6分後及び50分後のDMAシグナルの振幅を示す。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。
【図6A】CK2阻害剤TBB用量依存性のHeLa細胞DMRシグナルを示すグラフ。リアルタイム応答を示す。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。
【図6B】CK2阻害剤TBB用量依存性のHeLa細胞DMRシグナルを示すグラフ。TBB濃度の関数として表されたDMAT刺激の6分後及び50分後のDMAシグナルの振幅を示す。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。
【図7A】CK2阻害剤アピゲニン用量依存性のHeLa細胞DMRシグナルを示すグラフ。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり3,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで2日間培養された。
【図7B】CK2阻害剤DRB用量依存性のHeLa細胞DMRシグナルを示すグラフ。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり3,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで2日間培養された。
【図7C】CK2阻害剤TBCA用量依存性のHeLa細胞DMRシグナルを示すグラフ。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり3,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで2日間培養された。
【図8A】CK2阻害剤で誘導されたHeLa細胞のDMRシグナルはアクチン再構築に感受性があることを示すグラフ。HeLa細胞におけるCK2阻害剤で誘導されたDMRシグナルの動態に対するアクチン破壊剤ラトランキュリンAの影響を示す。ラトランキュリンAで前処理された細胞は、TBB及びDMATの順に処理された。各刺激ステップは約1時間持続された。全ての細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。全ての実験条件を通じて、TBB濃度は50μMで、DMAT濃度は25μMであった。各アクチン再構築剤は10μMでアッセイされた。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。CK2阻害剤での刺激に対する細胞応答のみが提示された。
【図8B】CK2阻害剤で誘導されたHeLa細胞のDMRシグナルはアクチン再構築に感受性があることを示すグラフ。HeLa細胞におけるCK2阻害剤で誘導されたDMRシグナルの動態に対するアクチン促進剤ファロイジンの影響を示す。ファロイジンで前処理された細胞は、TBB及びDMATの順に処理された。各刺激ステップは約1時間持続された。全ての細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。全ての実験条件を通じて、TBB濃度は50μMで、DMAT濃度は25μMであった。各アクチン再構築剤は10μMでアッセイされた。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。CK2阻害剤での刺激に対する細胞応答のみが提示された。
【図8C】CK2阻害剤で誘導されたHeLa細胞のDMRシグナルはアクチン再構築に感受性があることを示すグラフ。HeLa細胞におけるCK2阻害剤で誘導されたDMRシグナルの動態に対するアクチン破壊剤ラトランキュリンAの影響を示す。ラトランキュリンAで前処理された細胞は、DMAT及びTBBの順に処理された。各刺激ステップは約1時間持続された。全ての細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。全ての実験条件を通じて、TBB濃度は50μMで、DMAT濃度は25μMであった。各アクチン再構築剤は10μMでアッセイされた。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。CK2阻害剤での刺激に対する細胞応答のみが提示された。
【図8D】CK2阻害剤で誘導されたHeLa細胞のDMRシグナルはアクチン再構築に感受性があることを示すグラフ。HeLa細胞におけるCK2阻害剤で誘導されたDMRシグナルの動態に対するアクチン促進剤ファロイジンの影響を示す。ファロイジンで前処理された細胞は、DMAT及びTBBの順に処理された。各刺激ステップは約1時間持続された。全ての細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。全ての実験条件を通じて、TBB濃度は50μMで、DMAT濃度は25μMであった。各アクチン再構築剤は10μMでアッセイされた。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。CK2阻害剤での刺激に対する細胞応答のみが提示された。
【図9A】HeLa細胞におけるCK2阻害剤で誘導されたDMRシグナルの動態に対する微小管再構築剤の影響を示す。細胞はまず微小管再構築剤のビンブラスチン又はノコダゾールで前処理され、続いて、TBB及びDMATで処理された。ノコダゾールは微小管促進剤で、ビンブラスチンは微小管破壊剤である。各刺激ステップは約1時間持続された。全ての細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。全ての実験条件を通じて、TBB濃度は50μMで、DMAT濃度は25μMであった。各微小管再構築剤は10μMでアッセイされた。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。CK2阻害剤での刺激に対する細胞応答のみが提示された。
【図9B】HeLa細胞におけるCK2阻害剤で誘導されたDMRシグナルの動態に対する微小管再構築剤の影響を示す。前記細胞はまず微小管再構築剤のビンブラスチン又はノコダゾールで前処理され、続いて、DMAT及びTBBで処理された。ノコダゾールは微小管促進剤で、ビンブラスチンは微小管破壊剤である。各刺激ステップは約1時間持続された。全ての細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。全ての実験条件を通じて、TBB濃度は50μMで、DMAT濃度は25μMであった。各微小管再構築剤は10μMでアッセイされた。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。CK2阻害剤での刺激に対する細胞応答のみが提示された。
【図10A】CK2阻害剤で誘導されたHeLa細胞のDMRシグナルの動態は内在性Gi共役アルファ2Aアドレナリンレセプターアゴニストのオキシメタゾリンに感受性があることを示すグラフ。HeLa細胞における10μMオキシメタゾリンのDMRシグナルを示す。各ステップは別々に監視された。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。
【図10B】CK2阻害剤で誘導されたHeLa細胞のDMRシグナルの動態は内在性Gi共役アルファ2Aアドレナリンレセプターアゴニストのオキシメタゾリンに感受性があることを示すグラフ。HeLa細胞におけるDMATのDMRシグナルに対するオキシメタゾリン前処理の影響を示す。各ステップは別々に監視された。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。全ての実験条件を通じて、DMAT濃度は25μMであった。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。
【図10C】CK2阻害剤で誘導されたHeLa細胞のDMRシグナルの動態は内在性Gi共役アルファ2Aアドレナリンレセプターアゴニストのオキシメタゾリンに感受性があることを示すグラフ。HeLa細胞におけるTBBのDMRシグナルに対するオキシメタゾリン及びDMAT前処理の影響を示す。前記細胞は、オキシメタゾリン、DMAT及びTBBの順に処理された。各ステップは別々に監視された。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。全ての実験条件を通じて、TBB濃度は50μMで、DMAT濃度は25μMであった。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。
【図11A】CK2阻害剤で誘導されたHeLa細胞DMRシグナルの動態は内在性Gs共役ベータ2アドレナリンレセプターアゴニストのテルブタリンに感受性がないことを示すグラフ。HeLa細胞における10μMテルブタリンのDMRシグナルを示す。各ステップは別々に監視された。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。
【図11B】CK2阻害剤で誘導されたHeLa細胞DMRシグナルの動態は内在性Gs共役ベータ2アドレナリンレセプターアゴニストのテルブタリンに感受性がないことを示すグラフ。HeLa細胞におけるDMATのDMRシグナルに対するテルブタリンの影響を示す。各ステップは別々に監視された。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。全ての実験条件を通じて、DMAT濃度は25μMであった。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。
【図11C】CK2阻害剤で誘導されたHeLa細胞DMRシグナルの動態は内在性Gs共役ベータ2アドレナリンレセプターアゴニストのテルブタリンに感受性がないことを示すグラフ。HeLa細胞におけるTBBのDMRシグナルに対するテルブタリンの影響を示す。前記細胞は、テルブタリン、DMAT及びTBBの順に処理された。各ステップは別々に監視された。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。全ての実験条件を通じて、TBB濃度は50μMで、DMAT濃度は25μMであった。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。
【図12A】HeLa細胞におけるDMATのDMRシグナルに対するGi共役型レセプターアゴニストLPAの影響を示すグラフ。前記細胞はLPA(10μM)で約1時間前処理された。DMAT応答のみが示される。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。DMAT濃度は25μMであった。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた
【図12B】HeLa細胞におけるDMATのDMRシグナルに対するGi共役型レセプターアゴニストACEAの影響を示すグラフ。前記細胞はACEA(10μM)で約1時間前処理された。DMAT応答のみが示される。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。DMAT濃度は25μMであった。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた
【図12C】HeLa細胞におけるDMATのDMRシグナルに対するGi共役型レセプターアゴニストS1Pの影響を示すグラフ。前記細胞はS1P(10μM)で約1時間前処理された。DMAT応答のみが示される。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。DMAT濃度は25μMであった。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた
【図13】アルファ2AアドレナリンレセプターアゴニストのクロニジンはHeLa細胞におけるTBBのDMRシグナルを用量依存的に強化したことを示すグラフ。前記細胞は約1時間クロニジンで前処理された。細胞は、普通の血清添加培地を用いてウェルあたり25,000個の播種開始時密度で播種され、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで1日間培養された。TBB濃度は50μMであった。各平均応答を作成するのに少なくとも4個のレプリケートが使われた。
【図14A】A431細胞における10μMTBBが媒介するDMRシグナルを示すグラフ。アッセイ前に前記細胞は、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで非常にコンフルエントになるように培養された。
【図14B】A549細胞における10μMTBBが媒介するDMRシグナルを示すグラフ。アッセイ前に前記細胞は、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで非常にコンフルエントになるように培養された。
【図14C】HEK293細胞における10μMTBBが媒介するDMRシグナルを示すグラフ。アッセイ前に前記細胞は、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで非常にコンフルエントになるように培養された。
【図14D】MDA−AB−231細胞における10μMTBBが媒介するDMRシグナルを示すグラフ。アッセイ前に前記細胞は、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで非常にコンフルエントになるように培養された。
【図14E】HT29細胞における10μMTBBが媒介するDMRシグナルを示すグラフ。アッセイ前に前記細胞は、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで非常にコンフルエントになるように培養された。
【図14F】PC3細胞における10μMTBBが媒介するDMRシグナルを示すグラフ。アッセイ前に前記細胞は、Epic(登録商標)組織培養適合384穴マイクロプレートで非常にコンフルエントになるように培養された。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
ラベルフリーバイオセンサー細胞アッセイに関する方法が開示される。本明細書にはCK2変調剤をスクリーニング及び分類する方法も開示される。開示される前記方法は、プリノソーム複合体の動態(すなわち、形成及び解離)を異なる方向に調節ことができる別々のCK2阻害剤の発見につながる。前記プリノソームは、プリン合成de novo経路に重要な多酵素シグナル伝達複合体である。開示される前記方法は、天然のままの(native)細胞におけるプリノソームの会合(すなわち、形成)及び解離をリアルタイムで追跡するためにCK2阻害剤(例えばTBB及びDMAT)を利用する。前記開示される方法は、予め同調された細胞を使うことが好ましい。前記細胞は前記CK2阻害剤で誘発されたプリノソームの動態がラベルフリーバイオセンサー細胞アッセイを使って確実に測定できるように、特定の状態に予め同調される場合がある。
【0035】
本明細書には、前記プリノソーム形成に関与する上流のシグナル伝達経路を研究する方法も開示される。開示される前記方法は、前記上流の経路を同定するために、CK2阻害剤で誘導される天然のままの細胞におけるDMRシグナルを利用する場合がある。
【0036】
本明細書には、CK2阻害剤を、プリノソーム促進型阻害剤と、プリノソーム破壊型阻害剤とに分類する方法も開示される。一部の実施態様で開示される前記方法は、ある分子の1次的なDMRシグナルが同じ細胞における既知のCK2阻害剤DMRに類似することか、ある分子がTBB及びDMATという2種類の異なるCK2阻害剤のDMRシグナルに対して変調するパターンか、細胞/マーカーのパネルに作用する既知のCK2阻害剤にある分子の変調指数が類似することかに基づく。
【0037】
本明細書には、CK2の異常活性に関連する癌疾患の予防、治療及び治癒方法も開示される。開示される前記方法は、抗癌治療剤としてプリノソーム破壊型CK2阻害剤を使用する。プリノソーム形成はde novoプリン合成に重要であるため、及び、該プリン合成の経路の阻害は抗癌療法にとって実行可能なアプローチであることが証明されているため、プリノソーム破壊型CK2阻害剤は、CK2の異常活性に関連する癌疾患を予防、治療及び治癒するための抗癌治療剤として使用できる。
【0038】
さまざまなクラスの組成物と、化合物と、方法と、方法のステップとが開示され、これらのクラスと、それぞれの具体的な例は、例えば、本明細書に開示される方法で使用される場合がある。細胞システムと、例えば、CK2阻害剤か多酵素複合体促進剤か破壊剤かを同定するための該細胞システムの使用とが開示される。前記細胞システムは、いずれかの薬剤又は分子、例えば本明細書に開示されるもの、とともにインキュベーションされる場合があり、該薬剤又は分子はインキュベーションされる細胞システムを形成する。前記細胞システムは、本明細書に開示されるラベルフリーバイオセンサーシステムを用いて解析及びアッセイされる場合がある。一部のシステムでは、前記細胞システムは同調された細胞を含む場合がある。前記細胞システムか、他のいずれかの細胞かは、高濃度プリン及び血清添加培地中で培養される場合がある。一部の実施態様では、本明細書に開示される細胞システム及び細胞は、播種開始時細胞数が多い状態及び/又は高度にコンフルエントな状態から培養される場合がある。本明細書に開示される細胞システム及び細胞は、プリン欠乏培地及び/又は長期間の饑餓条件下で高度にコンフルエントな細胞集団になるまで培養される場合がある。前記細胞システムは、形質転換細胞株、不死化細胞株、初代細胞及び幹細胞の場合がある。
【0039】
本明細書に開示される試薬及び方法を用いて操作できる多酵素複合体が開示される。多酵素複合体変調剤、多酵素複合体促進剤、多酵素複合体解体促進剤、集合体形成促進剤、解体促進剤、プリノソーム複合体破壊剤、プリノソーム阻害剤、プリノソーム複合体促進剤、プリノソーム促進剤、プリノソーム解体型CK2阻害剤、プリノソーム破壊型CK2阻害剤、プリン合成経路阻害剤、CK2変調剤、CK2活性化剤、CK2阻害剤及び参照プローブも開示されるが、これらの全ては、本明細書に開示される方法にそって、本明細書に開示される試薬、組成物及び化合物のいずれかとともに使用される場合がある。
【0040】
本明細書に開示される活性を有するさまざまな分子も開示され、本明細書に説明される方法において、TBB(4,5,6,7−テトラブロモベンゾトリアゾール)、DMAT(2−ジメチルアミノ−4,5,6,7−テトラブロモ−1H−ベンズイミダゾール)及びTBBz(4,5,6,7−テトラブロモベンズイミダゾール)等とのいずれかの組合せか、あるいは、単独かで使用される場合がある。
【0041】
CK2活性と、分子で誘導されるバイオセンサー応答と、参照プローブのバイオセンサー応答とのようなアッセイ可能なさまざまな活性及び細胞応答も開示される。これらの応答は、天然のままの(native)細胞と、CK2阻害剤に感受性がある細胞とともに、本明細書に開示される細胞システムを含むさまざまな細胞においてアッセイされる場合がある。一部の実施態様では、内在性Gi共役型レセプターの前活性化(preactivation)はアッセイ可能で、同じ細胞においてCK2阻害剤で誘導されるバイオセンサー細胞応答に対する前記レセプターの変調及び影響が監視できる。
【0042】
前記アッセイはプリノソームの会合及び解体をリアルタイムで監視するのに使用可能である。
【0043】
前記開示される方法によって同定される組成物及び化合物は、白血病、直腸結腸癌、前立腺癌、乳癌のような癌、リンパ腫、頭頸部及び肺の扁平上皮癌、脳神経膠腫癌、又は、Abl又はAlkのような癌化キナーゼの遺伝的変化から生じる癌表現型の治療に使用される場合がある。同様に、前記同定される組成物及び化合物は、ヘルペスウイルス又はサイトメガロウイルスに起因するウイルス感染症のようなウイルス感染症と、炎症性腸疾患、潰瘍性腸炎のような腸疾患のような慢性炎症疾患症状のような炎症症状を治療するために使用される場合があり、クローン病は慢性炎症疾患の場合があり、糸球体腎炎も慢性炎症疾患である。これらの疾患はCK2キナーゼの異常活性を伴うことがしばしばある。
【0044】
すべての症例において、本明細書に開示される組成物及び化合物は治療上有効な量で投与される場合がある。
【0045】
本明細書に開示される方法と、該方法において使用可能な組成物及び化合物は、材料、物質、分子及びリガンドのような多数の異なるクラスから生じる場合がある。これらのクラスの具体的なサブセットも開示されるが、これらは例えば、hERG活性化のためのマーカーとしてのマロトシキンと、プリノソーム会合のためのマーカーとしてDMATとのように、マーカーとよばれ、ラベルフリーバイオセンサーアッセイに特有である。
【0046】
分子混合物のような、これらのクラスの混合物も開示され、前記開示の方法において使用される場合があることが理解される。
【0047】
一部の方法では、未知の分子、試験分子、薬剤候補分子が、既知分子とともに使用される場合がある。
【0048】
一部の方法又は状況では、変調又は変調剤が役割を果たす。同様に既知の変調剤が使用される場合がある。
【0049】
一部の方法及び組成物においては細胞が関与し、細胞は培養される場合があり、細胞培養が本明細書に説明されるように使用される場合がある。
【0050】
本明細書に開示される方法はバイオセンサーを使用するアッセイを伴う。一部のアッセイでは、アッセイは作動モードか拮抗モードかのいずれかで実行される。前記アッセイは、材料、物質又は分子のような1種類または2種類以上のクラスで細胞を処理することを伴うことがしばしばある。本明細書に説明されるように、被験者も処理される場合もある。
【0051】
一部の方法では、例えば分子と、細胞との接触が起こる場合がある。前記開示の方法において、DMR応答のようなバイオセンサー応答として現れる場合がある細胞応答のような応答が検出可能である。これら及びその他の応答はアッセイ可能である。一部の方法では、バイオセンサーからのシグナルはロバストなバイオセンサーシグナル又はロバストなDMRシグナルの場合がある。
【0052】
前記開示のラベルフリーバイオセンサーを使用する方法は、1次的なプロフィール、2次的なプロフィール及び変調プロフィールのようなプロフィールを発生できる。これら及びその他のプロフィールは、例えば分子についての測定をするのに使用でき、本明細書に説明されるいずれかのクラスとともに使用できる。
【0053】
本明細書に開示される分子、細胞、材料又は物質のような、化合物又は組成物のライブラリ及びパネルも開示される。マーカーのパネル及び細胞のパネルのような特定のパネルも開示される。
【0054】
前記開示の方法は、バイオセンサーシグナル、DMRシグナル、正規化、対照、陽性対照、変調比較、指標(Indexes)、バイオセンサー指標、DMR指標、分子バイオセンサー指標、分子DMR指標、分子指標、変調剤バイオセンサー指標、既知変調剤DMR指標、マーカーバイオセンサー指標、マーカーDMR指標、マーカーの前記バイオセンサーシグナルを変調すること、前記DMRシグナルを変調すること、強化すること、及び、指標の類似性のような、さまざまな局面を利用できる。
【0055】
本明細書に開示される組成物、化合物又はその他のいずれも、本明細書に開示されるいずれかのやり方で特徴づけられる場合がある。
【0056】
より高い、阻害、その他の文言のような特徴づけに依存する方法が開示される。
【0057】
一部の方法では、レセプター又は細胞の標的が使用される。一部の方法は、分子で処理された細胞その他の細胞の工程とともに、シグナル伝達経路についての情報を提供できる。
【0058】
一部の実施態様では、ある種の効能又は薬効が特徴となり、(例えば、薬剤候補分子の)直接作用がアッセイされる場合がある。
【0059】
前記開示の方法は、サンプルについて、あるいは、サンプルを用いて実施される場合がある。
【0060】
A.組成物
1.カゼインキナーゼII又はタンパク質キナーゼCK2(CK2)
カゼインキナーゼII又はタンパク質キナーゼCK2(CK2)は、44kDaの触媒α(アルファ)サブユニット2個と、26kDaの調節β(ベータ)サブユニット2個とのα2β2配置で構成され、安定的なヘテロ4量体を形成する、構成的に活性があるセリン/スレオニンタンパク質キナーゼである。触媒サブユニット2個(α及びα’)と、調節サブユニット2個(β2)が3種類の配置(α2β2、αα’β2又はα’2β2)でヘテロ4量体CK2ホロ酵素を構成する。しかし、個々の触媒サブユニット(CK2α又はCK2α’)は、調節サブユニットなしても機能できる。CK2ホロ酵素はβサブユニットの2個のセリン残基で自己リン酸化を行う。またCK2は、特別な状況下では、例えばタンパク質のチロシン残基をリン酸化できる。CK2βサブユニットは、ホロ酵素複合体中でCK2α及びCK2α’の安定性、活性及び特異性に関する複数の調節機能を発揮する。さらに、前記CK2β2量体の3次元構造と、CK2触媒サブユニット非存在下でCL2βと相互作用する複数の重要なタンパク質キナーゼの同定とは、CK2βがCK2αとは区別される機能を有することを強く示す。
【0061】
CK2は、細胞成長、増殖及びアポトーシス抑制を含む多数の細胞の工程に関与する、多機能的で、多面的な、保存された、偏在するタンパク質キナーゼである。CK2は、さまざまなシグナルに応答して、動的な細胞内シャトリングを可能にする。正常細胞ではCK2は核及び細胞質の両方に局在するが、癌細胞ではCK2は特に優占的に核コンパートメントに存在し、異常活性をもたらす。
【0062】
CK2は、「健康な」生細胞に影響を与えることなく回避できるときにはいつでも「未熟な」アポトーシスに対抗するので、細胞の生存に必須である。しかし、異常に高いCK2活性は、時機に適い適切な場合であってもプログラムされた細胞死を阻止できる。したがって、例えばCK2は新生物腫瘍の表現型を増強できるが、それは該表現型の鍵となる特徴がアポトーシスの脱調節だからである。化学的又は分子的な方法によるCK2の下向き調節は、細胞におけるアポトーシスを促進できる。
【0063】
2.CK2及び癌
CK2は試験された大半の癌で一様に調節が障害される(dysregulated)ことが知られてきた。タンパク質キナーゼの異常活性化はヒトの腫瘍形成を起こす主要な癌化要因である。従来、CK2は特定の細胞機能が不明な構成的に活性があるタンパク質キナーゼであると見なされてきた。しかし複数の研究から、CK2は細胞増殖及び生存シグナルの伝達において決定的な役割を果たすストレスで活性化されるキナーゼであることが示された。最近、生存に有利なCK2の特性を変調する複数の分子経路が現れてきはじめた。(1)CK2は、p38MAPK依存的な手法でUV照射により活性化され、NFκ(カッパ)B阻害剤であるIκBaのリン酸化及び分解をもたらす。CK2は、UV照射されると、p53と複合体を形成し、389位のセリン残基をリン酸化する。逆に、野生型p53はCK2活性を阻害するので、p53とCK2とは緊密に調節されたネットワークにおいて相互に連結している。(2)CK2はヒトの癌で活性化されることがしばしばあり、トランスジェニックマウスにおいて発現されるとき、乳腺腫瘍及びリンパ腫を誘発できる。(3)ヒト癌におけるCK2活性の変動は、上流のp53及びp38MAPKシグナルの統合を通じて、腫瘍抑制タンパク質PMLのリン酸化及び分解をもたらす。(4)低酸素で誘導された癌細胞におけるHIF−1の活性化は、CK2依存性のp53の下向き調節によって媒介される。(5)核に会合したCK2αの少しの下向き調節は前立腺癌細胞において増殖停止及びアポトーシス誘発をもたらし、CK2αの核局在はヒト前立腺癌における悪い予後因子と連関する。したがってCK2は癌と関係があり、癌治療の適当な標的と考えられている。
【0064】
重要なことには、アンチセンスRNAを介するCK2αの下向き調節が癌細胞では強力なアポトーシスを誘導するのに、正常細胞ではほとんど細胞死を誘発しないことが報告されている。これらの観察は、CK2には正常な機能とは別な疾患関連の機能があるはずだということを示す。このことは、正常細胞には影響を与えない条件下で癌細胞にアポトーシスを誘導するようにCK2の狙いを定める薬理学的な窓がありうると考えさせる。CK2サブユニットの細胞下の動態と、生細胞内での前記サブユニットの相互作用の性質が一過的であることを考慮すると、強力で特異的な阻害剤の使用がこのキナーゼを操作するためにまず選ばれるべきアプローチである。しかし、CK2アッセイを変調可能な分子のための有用なin vivoのスクリーニングモデルがないために、かかる分子の開発はわずかしか行われないままであった。さらに、TBB、IQA及び縮合ポリフェノール誘導体のようなATP類似体を含む、CK2活性を阻害可能な報告済みのわずかな分子は、特異的が悪い、及び/又は、活性が低いという欠点がある。
【0065】
3.CK2阻害剤
CK2阻害剤は、抗癌作用及び抗炎症作用を提供できる。CK2阻害剤は通常3つのカテゴリーに分類される。(1)CK2の調節サブユニットを標的とする阻害剤(例えば、遺伝学的に選択されたペプチドアプタマー)、(2)CK2の触媒活性の阻害剤(例えば、キノベン、TBB、DMAT、IQA)、及び、(3)CK2ホロ酵素の破壊剤、これは前記CK2サブユニットのの界面に結合する分子であることが多く、サブユニット間の親和性の高い相互作用を阻害する。各クラスのCK2阻害剤は、低分子、機能性核酸、抗体又はペプチド模倣体等のようないかなるタイプの分子であってもよい。
【0066】
CK2触媒サブユニットは構成的な活性がある。しかし真核細胞では、CK2βサブユニットは、CK24量体複合体の中心的なコンポーネントであるだけでなく、CK2基質の動員も担当する。したがって、生細胞で観察されるCK2サブユニットの動的な相互作用は、CK2シグナル伝達経路における主要な役割を果たす場合がある。この相互作用を特異的な標的とする薬剤は、CK2触媒活性の一般的な阻害剤として作用する薬剤よりも副作用の可能性が低い。
【0067】
CK2阻害剤は、フラボノイド(例えば、アピジェニン)と、ヒドロキシアントラキノン/キサンテノン誘導体(例えば、エモジン)と、ヒドロキシクマリン誘導体(例えば、DBC)と、インドロキナゾリン誘導体(例えば、IQA)とを含む、多様な化学物質からなる。
【0068】
リンパ腫、白血病、多発性ミエローマ及び前立腺癌腫を含む腫瘍由来のさまざまな細胞について試験したところ、構造上の関連性のない多数のCK2阻害剤が、(in vitroの阻害作用とほぼ比例する)プロアポトーシス効果を示す。かかる細胞傷害効果が本当にCK2阻害によるものであるという論争の余地のない証拠は、(ヒト胚腎細胞)HEK−293細胞を用いて、野生型CK2よりK27に対して11倍鈍感であるCK2 V66/I174A突然変異体で細胞がトランスフェクションされた場合には、CK2阻害剤K27によって誘導されるアポトーシスが抑制されることを示すことによって提供された。
【0069】
CK2は、カルパインによるIκB(阻害的κB)分解の促進と、さまざまなカスパーゼタンパク質基質における切断抵抗性部位の生成と、カスパーゼ阻害剤タンパク質ARC(apoptosis repressor with caspase recruitment domain、カスパーゼ動員ドメインを有するアポトーシスレプレッサー)の活性化と、Akt/PKB(タンパク質キナーゼB)経路の強化と、DNA修復の促進とを含む、複数の異なるメカニズムを通じてプログラム化された細胞死に対抗できる。
【0070】
望ましくない副作用が低減又は消失した細胞透過性CK2阻害剤の使用は、腫瘍とウイルス感染とに対する新戦略を提供するが、これは、ウイルスが宿主細胞のCK2活性を利用して、そのライフサイクルに必須なタンパク質をリン酸化するためである。特に、(例えば化学療法及び放射線療法のように)ある治療戦略がアポトーシス誘発に基づくときはいつでも、CK2活性の増大によって邪魔されることが予想されるので、CK2阻害剤はアジュバント効果を示す場合がある。
【0071】
4.プリン経路に関係する代謝疾患
代謝疾患とは、毒性物質の過剰産生又は必須物質の産生不足を原因とする身体の不調をいう。代謝疾患はどの年齢で発症する場合もあるが、遺伝性で先天的に存在する。最も身近な代謝疾患は、鎌状赤血球貧血症(酸素輸送タンパク質の欠損が原因)、嚢胞性線維症(塩輸送タンパク質の欠損が原因)及び乳糖不耐症(ミルク中の糖(乳糖)を消化する酵素の欠損が原因)である。ヒトの代謝においてプリンが果たす多くの役割を考慮すると、プリン代謝疾患は、偶然発見されるだけの無症候の病状から、最終的には致死性の重篤な神経学的異常まで、ばらつきがあることは驚きではない。他の代謝疾患と同様に、それぞれの疾患は、過小又は過大な触媒活性を有する酵素が生じる欠損遺伝子が原因である。プリン代謝疾患は以下のものが含まれる。
【0072】
i.痛風
痛風は尿酸の過剰産生が原因で、その結果関節に尿酸結晶が析出する。複数の異なる酵素欠損が痛風の原因となるが、とりわけ、HPRT欠損が原因である。痛風は食物中のプリン制限と、キサンチンオキシダーゼを阻害して尿酸産生を阻害する薬剤の使用とによってうまく治療することができる。
【0073】
ii.レッシュ−ナイハン症候群
レッシュ−ナイハン症候群はHPRT欠損が原因である。症候は、非常に重篤な痛風、筋肉制御障害(患者は車イスを使用)及び軽度の精神遅滞を含む。
【0074】
iii.アデノシンデアミナーゼ(ADA)及びプリンヌクレオチドホスホリラーゼ(PNP)欠損症
ADA又はPNPのいずれかの欠損は免疫機能の軽度又は完全な不全の原因である。
【0075】
iv.アデニロコハク酸リアーゼ欠損症
アデニロコハク酸リアーゼ酵素の欠損は、精神遅滞、発作及び自閉的行動の原因である。
【0076】
v.ミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症
ミオアデニル酸デアミナーゼの欠損は、運動時に筋肉がエネルギーを調節する能力の障害を起こす。最も顕著な症候は、階段を上がるような正常な活動の後の筋肉疲労及び痙攣である。複数の実験的療法が役立つようにみえる。
【0077】
vi.5’ヌクレオチダーゼ欠陥症
最近報告され、最も希なプリン代謝欠陥症は、5’ ヌクレオチダーゼ酵素の過剰活性が原因である。症候は、絶え間ない感染と、発作と、皮膚炎と、極端な多動性、短い注意スパン、会話不全及び社会的相互作用不良を特徴とする高度の異常行動とを含む。この疾患は、前記酵素の過剰活性により消費された化合物を補充する食事により完全に治療可能にみえる。
【0078】
vii.ホスホリボシルピロリン酸(PRPP)合成酵素欠陥症
2種類の区別できる欠陥がPRPP合成酵素と関連する。酵素欠損は、痙攣、自閉的行動、貧血及び重度の精神遅滞の原因である。過剰な酵素活性は、聴覚障害のようなさまざまな神経学的症候を伴う痛風の原因である。痛風の治療を除いて、これらの疾患の対症療法は現在存在しない。
【0079】
viii.キサンチン尿症及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)欠損症
キサンチンオキシダーゼ又はAPRTの欠損は、それぞれ、キサンチン又は2,8ジヒドロキシアデニンの蓄積の原因である。APRTは全く症候がないことがしばしばあり、患者は、他の臨床検査の際に偶然発見される。その他の症例では、これらの化合物が関節に蓄積し結晶を形成して、痛風様の症状を起こす。食物中のプリンの低減がしばしば役立つが、有効な治療法は知られていない。
【0080】
5.プリノソーム、CK2及び代謝経路
i.プリノソーム
タンパク質は細胞の必要に応じて合体及び解体する複合体に編成される場合がある。休止状態では、中間代謝及びストレス応答に関与する大多数のタンパク質は点状の細胞質構造(cytoplasmic foci)を形成することが観察された。プリン生合成酵素Ade4−GFPはアデニン非存在下で構造を形成し、点状及び拡散状の表現型の間の転換はアデニンの除去及び添加によって制御可能であった。同様に、グルタミンシンテターゼ(Gln1−GFP)の構造は、グルコースの存在下及び非存在下で可逆的に転換した。前記構造は、液胞または自食胞による分解の標的にされることも、P小体または主要オルガネラと共局在することもなかった。したがって、栄養欠乏時には、細胞は、栄養素特異的に形成及び分解を示す広範なタンパク質集合体を誘導する。
【0081】
HeLa細胞への蛍光顕微鏡を使用する最近の研究(非特許文献1)は、プリン合成経路に関係する6種類の酵素全てが細胞質内でクラスターを形成するように共局在することを示す。これらの酵素クラスターの会合及び解離は、培養液中のプリンのレベルを変化させるか、培養液中に外来試薬を添加するかのいずれかによって動的に調節可能である。この発見が、de novoプリン生合成を細胞内で行うための多酵素複合体、「プリノソーム」の形成の強力な証拠を提供する。
【0082】
CK2及びAkt(タンパク質キナーゼBとしても知られる)は、以下の2つの異なるin vitroのプロテオームスケールの実験に基づいて、de novoプリン生合成酵素と相互作用すると推測されてきた。i)hPPAT、hTrifGART及びhFGAMSはhCK2の基質である。ii)hFGAMSはAktの基質である。複数の鍵となる代謝酵素はCK2又はAktの基質と推定する記載、例えば、グリコーゲンシンターゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼ及びオルニチンデカルボキシラーゼがCK2の基質で、ATPクエン酸リアーゼがAktの基質と推定する記載があった。
【0083】
ii.代謝経路及びシステム
組織化され高度に調節された代謝プロセスは、生物学的な機能に必須で、人体の全てのコンポーネントでみられる。人体は、摂取された食物から炭化水素を抽出し、これらの栄養素の潜在化学エネルギーをATPに変換し、最終的には該ATPが全ての生理学的プロセスの燃料となる。
【0084】
各代謝経路は、中間体によって連結される一連の生化学反応で構成される。1つの反応の反応物(すなわち基質)は、以前の反応の産物であり、これが繰り返される。代謝経路は、一方通行であると通常は考えられている(全ての反応は化学的には可逆的で、細胞内の熱力学的条件は流れがいずれか1つの向きになるのに有利である)。解糖系は最初に発見された代謝経路であった。グルコースが細胞内に入ると、直ちにATPにより不可逆的にリン酸化されてグルコース6−リン酸になる。これによりグルコースが細胞から出て行くことを阻止する。過剰な脂質又はタンパク質のエネルギー源があるときには、解糖系は逆に進行し(糖新生)グリコーゲン又はデンプンとして蓄積するためのグルコース6−リン酸を生成する。
【0085】
代謝経路は、フィードバック阻害により、あるいは、クレブス回路のようにサイクル内の産物の1つが反応を再起動するサイクルにより、調節されることがしばしばある。真核生物での嫌気性及び好気性経路は、区画化か、あるいは、異なる酵素及び補因子の使用かのいずれかによって隔離される。解糖系、嫌気性呼吸、クレブス回路/クエン酸回路、及び、酸化的リン酸化という、区別できるが関係のある複数の代謝経路が、燃料のATPへの分解によって放出されるエネルギーを運搬するために細胞によって利用される。(大半又は)全ての生物でみられる他の経路は、脂肪酸酸化(β−酸化)、糖新生、HMG−CoA還元酵素経路、ペントースリン酸経路(ヘキソース1リン酸側路)、ポルフィリン合成(又はヘム合成)経路、及び、尿素回路を含む。
【0086】
iii.プリン合成及びプリノソーム
プリンは生命が存在するために重要な多くの役割を果たす。(1)プリンを作る(合成経路)、(2)プリン化合物類を変換する(変換経路)、(3)食事で消費されたプリンを再利用する(再利用経路)、及び、(4)過剰なプリンを廃棄する(廃棄経路)という目的を有する異なる代謝経路が存在する。遺伝子中の情報分子と同様に、プリンは遺伝子をタンパク質に変換するプロセスで利用される。神経伝達及び筋収縮のような細胞のシグナル伝達プロセスにおけるエネルギーの変換器として、プリンはメッセンジャーとして作用する。廃棄メカニズムとしてプリンは細胞から余剰な窒素を除去する。抗酸化剤としてプリンは発癌剤から細胞を保護する。
【0087】
プリンは、DNA及びRNAの必須の組み立てブロックであるばかりでなく、前核生物及び真核生物の両方で多数の経路に参与するヌクレオチド誘導体の必須の組み立てブロックである。生合成的には、アデノシン及びグアノシンヌクレオチドはイノシン1リン酸(IMP)に由来し、IMPは、de novo及びサルベージ生合成経路の両方でホスホリボシルピロリン酸(PRPP)から合成される。サルベージ経路は、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)によって、ヒポキサンチンのIMPへの1段階変換を触媒するが、de novo経路は、PRPPをIMPに変換する10個の化学反応からなる(図1を参照せよ)。(ヒトのような)高等真核生物では、前記de novo経路は、(GARS)、GARトランスホルミラーゼ(GAR Tfase)及びアミノイミダゾールリボヌクレオチドシンテターゼ(AIRS)活性を有する)三機能タンパク質TrifGART(グリシンアミドリボヌクレオチド(GAR)シンテターゼと、(カルボキシアミノイミダゾールリボヌクレオチドシンターゼ(CAIRS)及びスクシニルアミノイミダゾールカルボキシアミドリボヌクレオチドシンテターゼ(SAICARS)活性を有する)二機能酵素PAICSと、(アミノイミダゾールカルボキシアミドリボヌクレオチドトランスホルミラーゼ(AICAR Tfase)及びIMPシクロヒドロラーゼ(IMPCH)活性を有する)二機能酵素ATICという3種類の多機能酵素を含む、6種類の酵素を利用する。これと対照的に、大腸菌のような前核生物は、前記二機能ATICを例外として、この経路を通して単機能酵素だけが用いられる。これらの酵素は、細胞の状態に応じて多酵素複合体を形成する場合がある。前記多酵素複合体の会合及び解離は、プリン代謝の流れを調節する外部の試薬の添加によって強制される、細胞のプリンレベルによって調節できる。これらの機能的複合体は、10個の活性部位をリンクする効率的な基質チャンネルを作ることができる。さらに、前記10個の活性部位のクラスター形成は、さまざまな環境条件下でプリンの流れを大局的に調節する効率的な手段を提供できる。de novoプリン生合成経路でみられるこれらの多酵素複合体は、「プリノソーム」を構成できる。プリノソームの形成は、プリンレベルの変化に応じてのde novoプリン生合成刺激によって動的に調節される。プリノソームは細胞周期の特定のステージにおいて全ての細胞タイプで一般的な現象の場合があり、翻訳後修飾を伴う。ヒト疾患に対する関連性のために、プリノソームは治療的介入の新規な薬理学的機会を与えることができる。
【0088】
6.抗癌剤としてのプリン経路阻害剤
細胞複製の阻害は癌細胞の1つの特徴で、従来抗癌剤の開発のために効果的に利用されてきた。癌細胞を殺すたいていの薬は、なんらかの方法でDNA合成を阻害するか、その機能を予防する。1個の細胞が2個に分裂するためには、該細胞はそのゲノムを含む全てのコンポーネントを複製しなければならず、(単、RNA、脂質等の)他の主要な高分子の合成と異なり、DNA合成は休止細胞ではそれほど起こらない。成体ではたいていの細胞は休止期にあり、そのゲノムを複製するプロセスに入っていないので、DNA複製を標的とする薬剤はある程度の選択性がある。もちろん、(骨髄、胃腸、毛包等)の一部の組織は複製状態にあり、全ての細胞はDNA複製を常に行わなければならない。そこで、正常組織でのDNA複製阻害はかなりの毒性をもたらし、患者に許容できる薬剤の量が制限される。しかし、生存率が向上し、場合によっては、疾患を治癒する、非常に有効な抗癌剤が開発されている。ヒトの細胞はDNA合成に使われるデオキシリボヌクレオチド合成のためにプリン及びピリミジンをサルベージする能力があり、これらのヌクレオチド前駆体の類似体は、抗癌剤の重要なクラスであることが証明されている。癌治療のためにFDAによって承認されたプリン及びピリミジン代謝拮抗物質が14種類あり、これらは全ての抗癌剤のほぼ20%を占める。FDAが承認した最初のいくつかの癌治療薬はこのクラスの化合物であった。6−メルカプトプリンは1953年に小児白血病治療用に承認されたが、これは治癒性で、いまだにこの疾患の標準的な治療法である。1991年以来、9種類のヌクレオシド類似体がさまざまな悪性疾患の治療用に承認された。これらの新薬のうち4種類は2004年以降に承認され、現在治験で評価中の薬剤は多数ある。これらの近年のFDA承認は、新規ヌクレオシド類似体の設計及び合成がいまだに癌治療用新薬発見のためには生産的な分野であることを示している。一般に、これらの化合物は血液学的悪性疾患の治療に最も有用であり、これらの疾患の治療には顕著な改善の余地がまだあるけれども、より新しい薬剤は固形腫の治療に用途が見いだされている。
【0089】
プリン及びピリミジンの代謝拮抗物質の基本的な作用メカニズムは似ている。これらの化合物は(普通は膜輸送体の助けも借りるが)拡散で細胞内に入り、プリン又はピリミジンの代謝経路の酵素によって細胞のヌクレオチドの類似体に変換される。その後これらの中間体はDNA合成に決定的に重要な1種類または2種類以上の酵素を阻害して、DNA損傷及びアポトーシス誘導をもたらす。このクラスの化合物は構造的に類似し、多くのメカニズムの細部が共通するが、これらの薬剤の代謝と、標的酵素との相互作用における微妙な定量的及び定性的相違がこれらの薬剤の抗腫瘍活性に深い影響を与える場合があるのは明かである。
【0090】
プリン(及びピリミジン)ヌクレオチド生合成の強力な阻害剤は、経路の中間体の合成類似体又は天然産物類似体かのいずれかの場合があるか、あるいは、触媒メカニズムに基づいて阻害剤が設計される場合がある。これらの阻害剤は、癌、炎症疾患及びさまざまな感染症に対する有効な薬剤である。ヒトの癌治療には、プリン経路を標的とするのがピリミジン経路を標的とするよりも一般的であるが、それは、ピリミジン経路のほうは有害な副作用がより多くみられるからである。メトトレキセートのような薬剤は多数の作用部位があり、細胞に対する効果を定量的に予測することが困難である。標的酵素のX線構造に基づく阻害剤の設計は、ヒト細胞において単一の作用部位しかない薬剤を作ることができる。かかるアプローチは、PPATに作用する薬剤(例えばピリトレキシム)と、GARTに作用する薬剤(例えばアザセリン、ジアゾマイシン、ジデアザテトラヒドロ葉酸、ロメトレキソール)、AIRCに作用する薬剤(フルオロスルホニルベンゾイル−アデノシン)及びSAICARS(例えば、ニトロアミノイミダゾールリボヌクレオチド)をもたらした。プリンde novo合成(PDNS)阻害剤は細胞内ヌクレオチドを消失させ、PDNS中間体をmM濃度レベルまで蓄積させる。
【0091】
7.核酸関連分子
i.核酸
例えばプリノソーム、多酵素複合体及びCK2複合体の変調剤として機能する、例えば核酸を含む本明細書に開示される核酸に基づくさまざまな分子が存在する。これらは機能性核酸と命名できる。前記開示の核酸は、例えば、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体又はヌクレオチド置換体でできている。これら及びその他の分子の限定されない例は本明細書に説明される。例えば細胞内でベクターが発現されるとき、発現されるmRNAはA、C、G及びUで作られることが典型的であることは理解される。同様に例えば、アンチセンス分子が細胞又は細胞環境内に例えば外部送達を通じて導入される場合には、前記細胞環境内で該アンチセンス分子の分解が低減するヌクレオチド類似体で該アンチセンスが作られることが有利であることが理解される。
【0092】
a.ヌクレオチド及び関連分子
ヌクレオチドは、塩基原子団と、糖原子団と、リン酸基とを含む分子である。ヌクレオチドは、ヌクレオシド間結合を創出して、リン酸基と、糖原子団とを介して連結される場合がある。ヌクレオチドの塩基原子団は、アデニン−9−イル(A)、シトシン−1−イル(C)、グアニン−9−イル(G)、ウラシル−1−イル(U)及びチミン−1−イル(T)の場合がある。ヌクレオチドの糖原子団はリボース又はデオキシリボースである。ヌクレオチドのリン酸基は、4価リン酸である。ヌクレオチドの限定されない例は、3’−AMP(3’−アデノシン1リン酸)又は5’−GMP(5’−グアノシン1リン酸)であろう。
【0093】
ヌクレオチド類似体とは、前記塩基原子団、糖原子団又はリン酸基のいずれかになんらかのタイプの修飾を含むヌクレオチドをいう。ヌクレオチドへの修飾は、当業者に周知で、例えば、5−メチルシトシン(5−me−C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン及び2−アミノアデニンと、糖原子団又はリン酸基への修飾とを含むであろう。
【0094】
ヌクレオチド置換体は、ペプチド核酸(PNA)のように、ヌクレオチドと類似の機能特性を有するが、リン酸基を含まない分子である。ヌクレオチド置換体は、ワトソン−クリック様式又はフーグスティーン(Hoogsteen)様式で核酸を認識するが、リン酸基以外の原子団を通じて連結される。ヌクレオチド置換体は、適当な標的核酸と相互作用するとき、二重らせん型構造をとることができる。
【0095】
例えば細胞への取り込みを増強するために、ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に他のタイプの分子(コンジュゲート)を連結させることも可能である。コンジュゲートは前記ヌクレオチド又はヌクレオチド類似体に化学的に連結される場合がある。かかるコンジュゲートは、コレステロール原子団のような脂質原子団を含むが、これらに限定されない(Letsingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1989、86、6553−6556)。
【0096】
ワトソン−クリック相互作用は、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体又はヌクレオチド置換体のワトソン−クリック面との少なくとも1種類の相互作用である。ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体又はヌクレオチド置換体のワトソン−クリック面は、プリン塩基を有するヌクレオチド、ヌクレオチド類似体又はヌクレオチド置換体のC2、N1及びC6位と、ピリミジン塩基を有するヌクレオチド、ヌクレオチド類似体又はヌクレオチド置換体のC2、N3C4位とを含む。
【0097】
フーグスティーン相互作用はフーグスティーン面で発生する相互作用であるが、該フーグスティーン面は2本鎖DNAの主溝に露出される。前記フーグスティーン面は、プリンヌクレオチドのN7位と、C6位の官能基(NH2又はO)とを含む。
【0098】
b.配列
例えば本明細書に開示される配列に関連する、Genbank上で開示されるさまざまな配列があり、これら及びその他の配列は、その全体と、該配列に含まれる個々のサブ配列とが引用により本明細書に取り込まれる。
【0099】
さまざまな配列が本明細書において提供され、これら及びその他はwww.pubmed.govでGenbankにおいて見つけることができる。当業者は配列の矛盾点及び相違点の解決方法と、ある特定配列に関する組成物および方法を他の関連配列に適合させる方法とを理解する。プライマー及び/又はプローブは、本明細書に開示され、当業者に知られた情報が与えられる場合には、いかなる配列についても設計できる。
【0100】
c.プライマー及びプローブ
本明細書に開示される遺伝子と相互作用可能なプライマー及びプローブを含む組成物が開示される。一部の実施態様では、プライマーはDNA増幅反応を支持するために使用される。典型的には、前記プライマーは、配列特異的方法で伸長可能であろう。配列特異的方法でのプライマーの伸長は、該プライマーが雑種形成その他会合する核酸分子の配列及び/又は組成が、前記プライマーの伸長によって産生される産物の組成又は配列を指示又は影響するいずれかの方法を含む。したがって、配列特異的方法での前記プライマーの伸長は、PCR、DNA配列決定、DNA伸長、DNA重合、RNA転写又は逆転写を含むが、これらに限定されない。配列特異的方法で増幅する技術及び条件が好ましい。一部の実施態様では、プライマーはPCR又は直接配列決定のようなDNA増幅反応に使用される。一部の実施態様では、プライマーは非酵素的技術を使って伸長される場合があることが理解され、例えば、プライマーを伸長するために使用されるヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドが、配列特異的方法で前記プライマーを伸長するように化学的に反応する。前記開示のプライマーは核酸又は核酸の領域と雑種形成するか、あるいは、前記核酸の相補体又は前記核酸の領域の相補体と雑種形成することが典型的である。
【0101】
d.機能性核酸
機能性核酸は、標的分子への結合又は特異的反応を触媒するような特定の機能を有する核酸分子をいう。機能性核酸分子は、限定する意図はないが、以下のカテゴリーに分けられる。例えば、機能性核酸は、アンチセンス分子、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子及び外部ガイド配列(External Guide Sequence)を含む。機能性核酸は、標的分子が有する特定の活性の影響因子(affector)、阻害剤、変調剤及び刺激剤として作用できるか、あるいは、機能性核酸分子は他のいかなる分子とも独立なde novoな活性を有する場合がある。
【0102】
機能性核酸分子は、DNA、RNA、ポリペプチド又は糖鎖のようないずれかの高分子と相互作用できる。したがって、機能性核酸は、例えば、プリノソーム、多酵素複合体及びCK2複合体と相互作用することができる。機能性核酸は、標的分子と該機能性核酸との間の配列相同性に基づいて、他の核酸と相互作用するように設計されることがしばしばある。他の状況では、機能性核酸と標的分子との特異的識別は、機能性核酸と標的分子との配列相同性に基づくのではなく、特異的識別が起こりえるような3次構造の形成に基づく。
【0103】
アンチセンス分子は、正規又は非正規な塩基対形成のいずれかを通じて標的核酸分子と相互作用するように設計される。アンチセンス分子の標的分子との相互作用は、例えば、RNAseHを介するRNA−DNA雑種分解を通じて、標的分子の破壊を促進するように設計される。代替的には、アンチセンス分子は転写又は複製のような標的分子で正常なら起こるプロセッシング機能を中断するように設計される。アンチセンス分子は標的分子の配列に基づいて設計される場合がある。標的分子の最もアクセス可能な領域を見つけることによってアンチセンス効果を最適化するための多数の方法が存在する。代表的な方法は、in vitro選択実験と、DMS及びDEPCを使用するDNA修飾研究であろう。アンチセンス分子は標的分子と、10−6、10−8、10−10又は10−12M未満の解離定数(k)で結合することが好ましい。アンチセンス分子の設計及び使用を補助する方法及び技術の代表的サンプルは、以下の限定しないリストの米国特許明細書に説明される場合がある:米国特許第5,135,917号、第5,294,533号、第,627,158号、第5,641,754号、第5,691,317号、第5,780,607号、第5,786,138号、第5,849,903号、第5,856,103号、第5,919,772号、第5,955,590号、第5,990,088号、第5,994,320号、第5,998,602号、第6,005,095号、第6,007,995号、第6,013,522号、第6,017,898号、第6,018,042号、第6,025,198号、第6,033,910号、第6,040,296号、第6,046,004号、第6,046,319号及び第6,057,437号各明細書。
【0104】
アプタマーは標的分子と特別なやり方で相互作用する分子である。典型的にはアプタマーは、ステム−ループ又はG−カルテットのような一定の2次及び3次構造にフォールディングする、塩基数15−50個の範囲の小さい核酸である。アプタマーは、ATP(米国特許第5,631,146号明細書)及びテオフィリン(米国特許第5,580,737号明細書)のような低分子と、逆転写酵素(米国特許第5,786,462号明細書)及びトロンビン(米国特許第5,543,293号明細書)のような高分子とに結合できる。アプタマーは標的分子に10−6、10−8、10−10又は10−12M未満のKで結合する。アプタマーは標的分子と非常に高い特異性で結合できる。例えば、標的分子と、たった1箇所だけ異なる別の分子との間で結合親和性が10000倍を超える差があるアプタマーが単離されている(米国特許第5,543,293号明細書)。アプタマーは、バックグランドの結合分子のKより少なくとも10、100、1000、10,000又は100,000倍を超える低いKを有することが好ましい。例えばポリペプチドについて比較するとき、バックグランド分子は異なるポリペプチドであることが好ましい。例えばアプタマーの特異性を決定するとき、バックグランドタンパク質は血清アルブミンの場合がある。異なる標的分子に結合するアプタマーを作成及び使用する方法の代表例は、米国特許第5,476,766号、第5,503,978号、第5,631,146号、第5,731,424号、第5,780,228号、第5,792,613号、第5,795,721号、第5,846,713号、第5,858,660号、第5,861,254号、第5,864,026号、第5,869,641号、第5,958,691号、第6,001,988号、第6,011,020号、第6,013,443号、第6,020,130号、第6,028,186号、第6,030,776号及び第6,051,698号明細書という限定的でない米国特許明細書のリストにみられるであろう。
【0105】
リボザイムは、分子内又は分子間のいずれかでの化学反応を触媒可能な核酸分子である。したがってリボザイムは触媒性核酸である。リボザイムは分子間反応を触媒することが好ましい。ハンマーヘッド型リボザイム(限定的ではないが例えば、米国特許第5,334,711号、第5,436,330号、第5,616,466号、第5,633,133号、第5,646,020号、第5,652,094号、第5,712,384号、第5,770,715号、第5,856,463号、第5,861,288号、第5,891,683号、第5,891,684号、第5,985,621号、第5,989,908号、第5,998,193号及び第5,998,203号明細書と、Ludwig及びSproatの国際公開第9858058号パンフレットと、Ludwig及びSproatの国際公開第9858057号パンフレットと、Ludwig及びSproatの国際公開第9718312号パンフレット)と、ヘアピン型リボザイム(限定的ではないが例えば、米国特許第5,631,115号、第5,646,031号、第5,683,902号、第5,712,384号、第5,856,188号、第5,866,701号、第5,869,339号及び第6,022,962号明細書)と、テトラヒメナ型リボザイム(限定的ではないが例えば、米国特許第5,595,873号及び第5,652,107号明細書)とのような、天然のシステムにみられるリボザイムに基づく、ヌクレアーゼ又は核酸ポリメラーゼ型の反応を触媒する多数の異なるタイプのリボザイムが存在する。天然のシステムにはみられないが、de novoに特定の反応を触媒するように加工された多数のリボザイム(限定的ではないが例えば、米国特許第5,580,967号、第5,688,670号、第5,807,718号及び第5,910,408号明細書)も存在する。好ましいリボザイムはRNA又はDNA基質を切断し、RNA基質を切断するのがより好ましい。リボザイムは標的基質の識別又は結合と、その後の切断とを通じて核酸基質を切断するのが典型的である。しばしばこの識別は、たいてい正規又は非正規の塩基対相互作用に基づく。標的基質の識別が標的基質配列に基づくため、この特性がリボザイムを核酸の標的特異的切断の特によい候補にする。さまざまな異なる反応を触媒するようにリボザイムを作成及び使用する方法の代表例は、米国特許第5,646,042号、第5,693,535号、第5,731,295号、第5,811,300号、第5,837,855号、第5,869,253号、第5,877,021号、第5,877,022号、第5,972,699号、第5,972,704号、第5,989,906号及び第6,017,756号明細書という非限定的なリストの米国特許明細書にみられる。
【0106】
3重鎖形成機能性核酸分子は、2本鎖又は1本鎖核酸のいずれかと相互作用できる分子である。3重鎖分子が標的領域と相互作用するとき、ワトソン−クリック型及びフーグスティーン型塩基形成の両方に依存する複合体を形成する3本のDNA鎖がある、3重鎖とよばれる構造が形成される。3重鎖分子は、高い親和性及び特異性で標的領域と結合できるので好ましい。前記3重鎖形成分子は、標的分子と10−6、10−8、10−10又は10−12M未満のKで結合することが好ましい。さまざまな異なる標的分子と結合するように3重鎖形成分子を作成及び使用する方法の代表例は、米国特許第5,176,996号、第5,645,985号、第5,650,316号、第5,683,874号、第5,693,773号、第5,834,185号、第5,869,246号、第5,874,566号及び第5,962,426号明細書という非限定的なリストの米国特許明細書にみられる。
【0107】
外部ガイド配列(EGSs)は標的核酸分子と結合して複合体を形成する分子で、この複合体は該標的分子を切断するRNase Pによって識別される。EGSsは所望のRNA分子を特異的に標的とするように設計できる。RNase Pは細胞内のトランスファーRNA(tRNA)プロセッシングを補助する。標的RNA:EGS複合体に天然のtRNA基質を模倣させるEGSを使うことによって、細菌のRNase PはほぼいかなるRNA配列でも切断するのに動員される場合がある(Yaleによる国際出願第92/03566号パンフレット、及び、Forster及びAltman、Science 238:407−409(1990))。同様に、真核生物のEGS/RNase Pに指揮されたRNA切断は真核細胞内で所望の標的を切断するのに利用できる(Yuanら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:8006−8010(1992);Yaleによる国際公開第93/22434号パンフレット;Yaleによる国際公開第95/24489パンフレット;Yuan及びAltman、EMBO J 14:159−168(1995)及びCarraraら、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)92:2627−2631(1995))。さまざまな異なる標的分子の切断を促進するようにEGS分子を作成及び使用する方法の代表例は、米国特許第5,168,053号、第5,624,824号、第5,683,873号、第5,728,521号、第5,869,248号及び第5,877,162号明細書という非限定的なリストの米国特許明細書にみられる。
【0108】
8.抗体
i.抗体一般
「抗体」という用語は、本明細書では広義に用いられ、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方を含む。プリノソーム、多酵素複合体及びCK2複合体のような本明細書に開示される組成物および化合物と相互作用する能力について選択される限り、無傷な免疫グロブリン分子に加えて、これらの免疫グロブリン分子の断片又はポリマーと、これらの免疫グロブリン分子又は断片のヒトバージョン又はヒト化バージョンとは「抗体」という用語に含まれる。プリノソーム、多酵素複合体及びCK2複合体の特定の領域と結合する抗体も開示される。前記抗体は、本明細書に説明されるin vitro及びex vivoのアッセイを用いるか、類似の方法によるかで所望の活性について試験でき、その後、前記抗体のin vivoの治療及び/又は予防活性が既知の臨床治験方法に従って試験される。
【0109】
本明細書に用いられる「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体を指す、すなわち、該集団内の個々の抗体は、抗体分子の小さなサブセットに存在するかもしれない天然に発生する突然変異の可能性を除いて、同一である。本明細書のモノクローナル抗体は、「キメラ」抗体と、かかる抗体の断片とを具体的に含むが、該「キメラ」抗体が所望の拮抗活性を示す限り前記「キメラ」抗体において、重鎖及び/又は軽鎖の一部は、特定の生物種由来の抗体中の対応する配列と同一又は相同であるか、特定の抗体のクラス又はサブクラスに属するが、前記鎖の残りは、別の生物種由来の抗体中の対応する配列と同一又は相同であるか、別の抗体のクラス又はサブクラスに属する(米国特許第4,816,567号明細書と、Morrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81:6851−6855(1984)とを参照せよ)。
【0110】
前記開示のモノクローナル抗体は、モノクローナル抗体を作出するいずれかの手順を用いて作成される場合がある。例えば、開示されるモノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein、Nature、256:495(1975)に説明されるような、ハイブリドーマ法を用いて作成される場合がある。ハイブリドーマ法においては、マウスその他の適当な宿主動物が、免疫化剤で免疫され、該免疫化剤と特異的に結合する抗体を産生するか、産生できるかするリンパ球を誘導するのが典型的である。代替的には、リンパ球は、例えば本明細書に説明されるHIVのEnv−CD4−コ・レセプター複合体を使って、in vitroで免疫される場合がある。
【0111】
モノクローナル抗体は、米国特許第4,816,567号明細書(Cabillyら)に説明されるような、組換えDNA法によって作成される場合もある。前記開示のモノクローナル抗体をコード化するDNAは、(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコード化する遺伝子と特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)従来技術の手順を用いて容易に単離及び配列決定される。例えば、Burtonらに付与された米国特許第5,804,440号明細書と、Barbasらに付与された米国特許第6,096,441号明細書とに説明されるように、ファージディスプレー技術を用いて抗体又は活性抗体断片のライブラリが生成され、スクリーニングされる場合もある。
【0112】
In vitro法は、単価抗体を調製するためにも適している。抗体断片、特に、Fab断片を作出するための抗体の消化は、当業者に知られたルーティン技術を使って達成できる。例えば消化はパパインを用いて実行できる。パパイン消化の例は、1994年12月22日に発行された国際公開第94/29348号パンフレット及び米国特許第4,342,566号明細書とに説明される。抗体のパパイン消化は、Fab断片とよばれる単一の抗原結合部位を有する同一の抗体結合断片2個と、残りのFc断片とを生成するのが典型的である。ペプシン処理は、2個の抗原結合部位があり抗原をクロスリンキングすることができる断片を生成する。
【0113】
他の配列決定に結合するか否かを問わず、未修飾の抗体又は抗体断片と比較して、前記抗体又は抗原断片の活性が有意に変化したり損なわれたりしないことを条件として、前記断片は特定の領域又は特定のアミノ酸残基に挿入、欠失、置換その他の選択された修飾を含む場合がある。これらの修飾は、ジスルフィド結合可能なアミノ酸の除去/付加、生物寿命の増大、分泌特性の変化等のような、なんらかの追加の特性を提供する場合がある。いずれの場合でも、抗体又は抗体断片は、そのコグネイト抗原との特異的結合のような生物活性を有しなければならない。前記抗体又は抗体断片の機能性又は活性領域は、タンパク質の特定の領域の突然変異誘発と、その後の発現したポリペプチドの発現及び試験とにより同定される場合がある。かかる方法は、当業者には容易に明らかであり、抗体又は抗体断片をコード化する核酸の部位特異的突然変異誘発を含む場合がある(Zoller、M.J.、Curr. Opin. Biotechnol. 3:348−354, 1992)。
【0114】
本明細書で用いられるところの「抗体」又は「(複数の)抗体」という用語は、ヒト抗体及び/又はヒト化抗体を指す場合もある。多くの非ヒト抗体(例えば、マウス、ラット又はウサギ由来の抗体)はヒトではもともと抗原性があるので、ヒトに投与されるとき望ましくない免疫応答を起こしうる。そこで、前記方法のヒト又はヒト化抗体の使用は、ヒトに投与される抗体が望ましくない免疫応答を起こす可能性を低くするのに役立つ。
【0115】
a.ヒト抗体
前記開示のヒト抗体はいずれの技術を用いても調製できる。ヒトモノクローナル抗体作成技術の例は、Coleら(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77, 1985)と、Boernerら(J. Immunol., 147(1):86 95, 1991)とによって説明されたものを含む。ヒト抗体(及びその断片)はファージディスプレーライブラリを用いて作出することもできる(Hoogenboomら、J. Mol. Biol., 227:381, 1991;Marksら、J. Mol. Biol., 222:581, 1991)。
【0116】
前記開示のヒト抗体はトランスジェニック動物から得ることもできる。例えば、免疫付与に応答してヒト抗体の完全なレパートリーを産生可能なトランスジェニック突然変異体マウスが報告されている(例えば、Jakobovitsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 255 (1993);Jakobovitsら、Nature, 362:255 258 (1993);Bruggermannら、Year in Immunol., 7:33 (1993)を参照せよ)。具体的には、これらのキメラ及び生殖腺突然変異体マウスの抗体重鎖結合領域(J(H))遺伝子のホモ接合体欠失が内在性抗体産生を完全に阻害し、かかる生殖腺突然変異体マウスへのヒト生殖腺抗体遺伝子アレイの導入の成功が、抗原チャレンジに際しヒト抗体の産生をもたらす。所望の活性を有する抗体は、本明細書に説明されるEnv−CD4−コ・レセプター複合体を用いて選択される。
【0117】
b.ヒト化抗体
抗体のヒト化技術は、一般に、抗体分子の1種類または2種類以上のポリペプチド鎖をコード化DNA配列を操作するための組換えDNA技術の使用を伴う。したがって、ヒト化型の非ヒト抗体(又はその断片)は、ヒト(レシピエント)抗体のフレームワークに組み込まれた非ヒト(ドナー)抗体由来抗原結合部位の一部を含む、キメラ抗体又は抗体鎖(又は、Fv、Fab、Fab’その他の抗体の抗体結合部分のような抗体断片)である。
【0118】
ヒト化抗体を生成するためには、レシピエント(ヒト)抗体分子の1種類または2種類以上の相補性決定領域(CDRs)が、所望の抗原結合特性(例えば、標的抗原に対するあるレベルの特異性及び親和性)を有することが知られているドナー(非ヒト)抗体分子の1種類または2種類以上のCDRsによって置換される。場合によっては、前記ヒト抗体のFvフレームワーク(FR)残基が対応する非ヒト残基で置換される。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されるCDR又はフレームワーク配列にもない残基を含む場合もある。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトの出所から導入される1個又は2個以上のアミノ酸残基を有する。実際には、ヒト化抗体は、一部のCDR残基と、おそらく一部のFR残基とが、齧歯類抗体中の相似部位由来の残基によって置換される、ヒト抗体であることが典型的である。ヒト化抗体は、抗体恒常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト抗体のFcの少なくとも一部を含むのが一般的である(Jonesら、Nature, 321:522 525 (1986),Reichmannら、Nature, 332:323 327 (1988)、及び、Presta、Curr. Opin. Struct. Biol., 2:593 596 (1992))。
【0119】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当業者に周知である。例えば、ヒト化抗体はWinter及び共同研究者の方法(Jonesら、Nature, 321:522 525 (1986), Riechmannら、Nature, 332:323 327 (1988), Verhoeyenら、Science, 239:1534 1536 (1988))に従い、齧歯類CDRs又はCDR配列を対応するヒト抗体の配列に置換することにより作成できる。ヒト化抗体作成に利用可能な方法は、米国特許第4,816,567号明細書(Cabillyら)、米国特許第5,565,332号明細書(Hoogenboomら)、米国特許第5,721,367号明細書(Kayら)、米国特許第5,837,243号明細書(Deoら)、米国特許第5, 939,598号明細書(Kucherlapatiら)、米国特許第6,130,364号明細書(Jakobovitsら)及び米国特許第6,180,377号明細書(Morganら)にも説明される。
【0120】
c.抗体の投与
抗体の投与は本明細書に開示されるとおり行われる場合がある。抗体送達の核酸アプローチも存在する。広範な中和抗体及び抗体断片は核酸調製物(例えばDNA又はRNA)として患者又は被検者に投与可能で、該患者又は被検者自身の細胞が前記核酸を取り込んでコード化された抗体又は抗体断片を産生及び分泌する。前記核酸の送達は、いずれかの手段で、例えば本明細書に開示されるとおり、行われる場合がある。
【0121】
B.方法
本明細書に開示されるのは、CK2阻害剤を再分類する方法である。前記方法は、プリン合成に重要な動的な多酵素複合体を変調(促進か、解体かのいずれか)するCK2阻害剤の能力を測定する手段を提供する。前記方法の一部の局面は、ラベルフリー細胞薬理学に基づくアプローチを利用し、プリン合成経路阻害剤として作用するCK2オリゴヌクレオチド含むを同定できる。プリン合成経路の阻害は、実行可能な抗癌治療戦略であることが証明されている。
【0122】
プリノソームを解体するCK2阻害剤の抗癌治療剤としての使用に関し、該CK2阻害剤は、CK2の異常活性と関連する癌疾患又は炎症疾患を、予防、治療又は治癒するために使用される場合がある。
【0123】
本発明は、CK2変調剤のスクリーニング、より具体的には、分類をする方法を開示する。ラベルフリーバイオセンサー細胞アッセイに関する方法が開示される。生細胞中のCK2活性を検出し、同調細胞を用いてCK2阻害剤をスクリーニングするためのラベルフリーバイオセンサー細胞アッセイに関する方法が開示される。CK2阻害剤がプリノソーム複合体を促進するか解体するかのいずれかの能力に関してCK2阻害剤を分類するための参照プローブとしてTBB及びDMATという1対のCK2阻害剤を使用することに関する方法が開示される。前記分類は、(1)ある分子が誘発するDMRシグナルを参照プローブが誘発するDMRシグナルと比較し、DMRシグナルが類似することが前記分子がCK2阻害剤か否かの目安とすること、(2)DMAT及びTBBの両方が誘発するDMRシグナルへの分子の影響を調べて、TBBのDMRシグナルをを選択的に阻害するが、DMATのDMRシグナルを強化するか、その逆か、である分子をCK2阻害剤とすること、(3)CK2阻害剤に感受性がある細胞のパネルに対して分子が誘発するDMRシグナルを比較して、ほとんど全ての細胞において、活性があり、少なくとも70%、80%、90%、95%のように既知のCK2阻害剤と同様の挙動を示す分子をCK2阻害剤とすることによって達成される場合がある。さらに、内在性Gi共役型レセプターの前活性化に対する分子により誘発されるDMRシグナルの感受性は、該分子がCK2阻害剤であることのさらなる確認として利用される場合がある。前記方法のいずれかの組合せが、当該分子がCK2阻害剤であることをさらに確認し、CK2阻害剤を上流経路の変調剤と鑑別するために利用される場合がある。例えば、内在性Gi共役型レセプターに対するアゴニストは、DMATのDMRを阻害するが、TBBのDMRシグナルを強化する。しかし、前記アゴニスト自体は同じ細胞でTBB又はDMATのDMRシグナルのいずれとも違う区別できるDMRシグナルをもたらすであろう(例として図10を参照せよ)。よって、前記アゴニストはプリノソーム形成の上流変調剤である。これに対し、Gs共役型レセプターに対するアゴニストは、DMATのDMRと同様のDMRをもたらすが、DMAT及びTBBの両方のDMRシグナルに対してほとんど影響を与えない。よって、前記アゴニストはCK2阻害剤ではない(図11の例を参照せよ)。
【0124】
細胞は同調されるのが好ましい。細胞同調は、(1)いったん付着した細胞が高度にコンフルエントな状態になるように、血清が添加されプリンが豊富な培地中で播種開始時細胞数が多くなるように細胞を培養すること、(2)血清は添加されるがプリンは欠乏した培地中で細胞を培養すること、及び、(3)高度にコンフルエントな細胞を長期間飢餓状態におくことにより達成される場合がある。細胞の付着は迅速なプロセスで、特に最初の数時間(約0.5−8時間)以内に起こる。かかる細胞の特定状態への事前同調は、前記CK2阻害剤で誘導されるプリノソームの動態をラベルフリーバイオセンサー細胞アッセイを利用してロバストに検出するために重要である。
【0125】
また、プリノソーム促進型CK2阻害剤とプリノソーム破壊型CK2阻害剤とにCK2阻害剤を分類する方法も開示される。前記開示の方法は、de novoプリン合成経路にとって重要な多酵素シグナル伝達複合体であるプリノソームの動態におけるCK2の調節的役割を活用して、天然のままの細胞でのプリノソームの会合及び解離をリアルタイムで追跡するために1対のCK2阻害剤(TBB及びDMAT)を利用する。本発明によれば、TBBはプリノソーム複合体破壊剤で、DMATはプリノソーム促進剤である。しかし、TBBはプリノソームを調節するうえで複雑な挙動を示すこと、すなわち、同調細胞ではおおむねプリノソーム破壊剤として作用するが、正常培養ではある種のプリノソーム促進活性も有する(図2を参照せよ)ことに留意すべきである。
【0126】
プリノソーム形成に関与する上流のシグナル伝達経路を研究する方法も本明細書に開示される。前記開示の方法は、天然のままの細胞におけるCK2阻害剤で誘発されるDMRシグナルをその上流経路を同定するための読み出しとして利用する場合がある。
【0127】
本発明は、プリノソーム破壊型CK2阻害剤の抗癌治療剤としての使用も開示する。プリノソーム形成は、de novoプリン合成に重要であり、プリン合成経路の阻害剤は抗癌治療の実行可能なアプローチである。プリン合成経路の阻害剤が標的とする癌は、白血病、直腸結腸癌、前立腺癌、乳癌及びリンパ腫と、特に、癌化キナーゼ(例えばAbl及びAlk)の遺伝的変化から生じる癌表現型とを含むが、これらに限定されない。CK2は、異なる種類の腫瘍の治療の「多目的」標的の意味がある。
【0128】
1つの局面では、本発明はプリノソーム破壊型CK2阻害剤の薬学的に許容可能な塩に向けられる。本明細書で用いられるところの「薬学的に許容可能な塩」とは、本発明の化合物と毒性のない酸又は塩基付加塩との組合せに由来する本発明の化合物の塩を含む。
【0129】
酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸及びリン酸のような無機酸と、酢酸、クエン酸、プロピオン酸、酒石酸、グルタミン酸、サリチル酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、コハク酸及び安息香酸のような有機酸と、関連する無機酸及び有機酸とを含む。
【0130】
塩基付加塩は、アンモニア及びアルカリ及びアルカリ土類金属水酸化物と、炭酸と、重炭酸と、その他これらに類するものとのような無機塩基由来の塩と、脂肪族及び芳香族アミン類と、脂肪族ジアミン類と、水酸化アルカミンと、その他これらに類するもののようなとのような塩基性有機アミン由来の塩とを含む。したがって本発明の塩を調製するうえで有用なかかる塩基は、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、メチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、エタノールアミン等を含む。
【0131】
薬学的に許容可能な塩に加えて、本発明には他の塩が含まれる。これらの塩は、前記化合物の調製と、その他の塩の調製と、前記化合物又は中間体の同定及び特徴づけとにおける中間体として役立つ場合がある。
【0132】
本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩は、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル等のようなさまざまな溶媒和物としても存在する場合がある。かかる溶媒和物の混合物も調製される場合がある。かかる溶媒和物の出所は、結晶化の溶媒に由来するか、調製又は結晶化の溶媒に内在するか、かかる溶媒に付随するかの場合がある。かかる溶媒和物は本発明の範囲内である。
【0133】
本発明はプリノソーム破壊型CK2阻害剤の薬学的に許容可能なプロドラッグをも包含する。本明細書で用いるところの「プロドラッグ」とは、本発明の範囲内の処方を有する活性物質に被検者の体内で代謝プロセスによって変換されるいずれかの化合物を含むことを意図する。かかるプロドラッグは医薬品の多数の望ましい特質(例えば、可溶性、生体利用性、製造等)を増強することが知られているため、本発明の化合物はプロドラッグで送達される場合がある。適切なプロドラッグ誘導体を選択及び調製するための従来技術の手順は、例えば、引用によりその全体が本明細書に取り込まれる、Prodrugs(Sloane, K. B.編、Marcel Dekker: New York, 1992)に説明される。
【0134】
本発明の化合物はさまざまな立体異性体で存在する場合があることが認識される。それゆえ本発明の化合物は、(Z)又は(E)配位の幾何異性体と光学異性体とをとりわけ含む。
【0135】
プリノソーム破壊型CK2阻害剤は特に、抗癌、抗ウイルス又は抗炎症薬剤の活性成分として有利に用いられる。
【0136】
前記化合物は、乳癌、前立腺癌、頭頸部の扁平上皮癌、肺、脳又は神経膠腫癌から選択される癌を治療及び/又は予防するために使われることが好ましい。
【0137】
代替的には、前記化合物は、ヘルペス、サイトメガロウイルスからとりわけ選択されるウイルス疾患か、とりわけ慢性炎症疾患(特に慢性腸炎症)又は糸球体腎炎を予防及び/又は治療するために使用される場合がある。
【0138】
特に、プリノソーム破壊型CK2阻害剤は脱調節された(すなわち、増大又は減少した)細胞内CK2活性と関連する病理の治療及び/又は予防に使用される場合がある。
【0139】
またさらなる目的によると、本発明は、癌、ウイルス又は炎症性疾患の予防及び/又は治療を意図する薬剤の調製のためのプリノソーム破壊型CK2阻害剤の使用にも関する。
【0140】
本発明は、本発明の化合物の治療上有効な量を薬学的に許容可能な担体又は服用者(recipient)とともにこれを必要とする患者に投与することを含む対応する治療方法にも関する。
【0141】
本明細書に説明される疾患及び症状の治療を必要とする被験者の同定は、当業者の能力及び知識の範囲内に十分属する。本発明の技術分野の熟練した臨床家は、臨床検査、診察及び既往歴/家族歴の利用により、かかる治療を必要とする被験者を容易に同定することができる。
【0142】
分子をテストする方法であって、a)該分子を、インキュベーションされた細胞システムを形成する多酵素複合体を含む細胞システムとインキュベーションすること、b)ラベルフリーバイオセンサーシステムを用いて前記インキュベーションされた細胞システムをアッセイすること、及びc)単独で、及び/又は、本明細書に開示されるいずれかのステップ、試薬、化合物、分子、薬剤又は組成物とのいずれかの組合せで、前記分子が前記多酵素複合体を変調する能力を測定することを含む、方法が開示される。
【0143】
さらに、前記分子を多酵素複合体変調剤として分類するステップをさらに含む、前記方法も開示されるが、前記細胞システムは同調細胞を含み、前記細胞の同調は、前記細胞がいったん付着したら高度にコンフルエントな状態に達するように前記細胞を高い播種開始時細胞数でプリンが豊富な血清培地中で培養することか、血清は添加されるがプリンが欠乏した培地中で培養することか、前記細胞が多酵素複合体活性が基底レベルとなるように同調される、高度にコンフルエントな状態の細胞を長期間饑餓状態で培養することを含み、前記多酵素複合体変調剤は多酵素複合体解体促進剤を含み、該多酵素複合体解体促進剤はプリノソーム複合体破壊剤を含み、該プリノソーム複合体破壊剤はプリノソーム破壊型CK2阻害剤を含み、該プリノソーム破壊型CK2阻害剤はTBBを含み、前記プリノソーム破壊型CK2阻害剤はプリン合成経路阻害剤であり、前記多酵素複合体変調剤は多酵素複合体促進剤を含み、該多酵素複合体促進剤はプリノソーム促進型CK2阻害剤を含み、該プリノソーム促進型CK2阻害剤は、DMAT、アピゲニン、DRB又はTBCAを含み、前記多酵素複合体はプリン合成に関与し、前記細胞システムは、本明細書に開示されるいずれかのステップ、試薬、化合物、分子、薬剤又は組成物単独でか、これらのいずれかの組合せか、及び/又は、CK2活性を有する生細胞を含む。
【0144】
参照プローブとともに前記細胞をインキュベーションするステップをさらに含む方法も開示されるが、該参照プローブはプリノソーム複合体促進剤を含み、該プリノソーム複合体促進剤は、DMAT、アピゲニン、DRB又はTBCAを含み、前記参照プローブはプリノソーム複合体破壊剤を含み、前記プリノソーム複合体促進剤は、TBB単独で含むか、及び/又は、本明細書に開示されるいずれかのステップ、試薬、化合物、分子、薬剤又は組成物とのいずれかの組合せで含む。
【0145】
分類するステップは、ある分子が誘発するバイオセンサー応答を参照プローブバイオセンサー応答と比較することを含む方法も開示されるが、該バイオセンサー応答の類似性は前記分子が参照プローブと同じクラスに分類される指示であり、前記参照プローブはCK2阻害剤を含み、前記バイオセンサー応答はDMRシグナルを含み、前記比較するステップは、前記分子を、プリノソーム複合体破壊剤及びプリノソーム促進剤の両方に対してアッセイすることを含み、前記プリノソーム複合体破壊剤はTBBを含み前記プリノソーム促進剤はDMATを含み、TBBと類似するDMRシグナルをもたらし、前記TBBのDMRシグナルを選択的に阻害するが、前記DMATのDMRシグナルを強化する分子はプリノソーム破壊剤であり、DMATと類似するDMRシグナルをもたらし、前記DMATのDMRシグナルを選択的に阻害するが、前記TBBのDMRシグナルを強化する分子はプリノソーム促進剤であり、前記比較するステップは、ある分子で誘発されるDMR指標をCK2阻害剤に感受性がある細胞のパネルに作用する既知のCK2阻害剤のDMR指標と比較することを含み、前記指標2つの間の類似性は、前記分子がCK2阻害剤であることの指示で、内在性Gi共役レセプターの前活性化に対する、前記分子で誘発されるDMRの感受性をアッセイすることもさらに含み、TBBと類似して、前記Gi共役レセプターが前活性化された前記細胞システム中で強化される、前記分子で誘発されるDMRは、前記分子がプリノソーム破壊型CK2阻害剤、及び/又は、いずれかの本明細書に開示されるステップ、試薬、化合物、分子、薬剤又は組成物単独かいずれかの組合せか、であることの指示である。
【0146】
プリノソーム破壊型CK2阻害剤、及び/又は、いずれかの本明細書に開示されるステップ、試薬、化合物、分子、薬剤又は組成物単独かいずれかの組合せか、を投与することを含む、被検者における癌の治療方法も開示される。
【0147】
前記癌は、白血病、直腸結腸癌、前立腺癌、乳癌、及び、リンパ腫、頭頸部の扁平上皮癌と、肺、脳神経膠腫か、CK2キナーゼの異常活性と関連する癌表現型かであり、前記プリノソーム破壊型CK2阻害剤は、前記プリノソーム破壊型CK2阻害剤の薬学的に許容可能な塩、及び/又は、いずれかの本明細書に開示されるステップ、試薬、化合物、分子、薬剤又は組成物単独かいずれかの組合せか、を含む方法も開示される。
【0148】
プリノソーム破壊型CK2阻害剤、及び/又は、いずれかの本明細書に開示されるステップ、試薬、化合物、分子、薬剤又は組成物単独かいずれかの組合せか、を含む、被検者におけるウイルス感染症を治療する方法が開示される。
【0149】
前記ウイルス感染症は、ヘルペスウイルス又はサイトメガロウイルス、及び/又は、いずれかの本明細書に開示されるステップ、試薬、化合物、分子、薬剤又は組成物単独かいずれかの組合せか、である、方法が開示される。
【0150】
プリノソーム破壊型CK2阻害剤を投与することを含む、被検者における炎症症状の治療方法が開示される。
【0151】
前記炎症症状は、CK2の異常活性と関連する慢性炎症性疾患を含み、前記慢性炎症性疾患は小腸疾患又は糸球体腎炎であり、前記小腸疾患は、炎症性腸疾患、潰瘍性腸炎又はクローン病であり、前記組成物は前記プリノソーム破壊型CK2阻害剤の治療上有効な量で投与され、前記被検者は前記プリノソーム破壊型CK2阻害剤を用いる治療を必要とす方法も開示される。
【0152】
1.バイオセンサー及びバイオセンサーアッセイ
ラベルフリー細胞利用アッセイは、分子で誘発される生細胞中の応答を監視するためにバイオセンサーを使うのが一般的である。前記分子は、天然又は合成の場合があり、精製又は未精製の混合物の場合がある。バイオセンサーは、光学的、電気的、熱量測定的、音響的、磁気的等のトランスデューサーのようなトランスデューサーを、前記バイオセンサーと接触する細胞内の分子識別事象か、分子で誘発される変化かを定量可能なシグナルに変換するために利用することが典型的である。これらのラベルフリーバイオセンサーは、分子相互作用解析又は細胞応答に使用される場合があるが、該分子相互作用解析は、いかに分子複合体が形成し、解離するかを経時的に特徴づけることを伴い、前記細胞応答はいかに細胞が刺激に応答するかを特徴づけることを伴う。本方法に適用可能なバイオセンサーは、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)及び共鳴導波路回折格子(resonant waveguide grating、RWG)バイオセンサーのような光学的バイオセンサーと、共鳴ミラーと、エリプソメーターと、バイオインピーダンスシステムのような電気的バイオセンサーと、これらのバイオセンサーの変形とを含む場合がある。
【0153】
i.SPRバイオセンサー及びシステム
SPRは、ある範囲の入射角をカバーする偏光ウェッジを、導電性金属フィルム(例えば金)を有する平面的なガラス基質に導いて表面プラズモンを励起する、プリズムに依存する。得られるエバネッセント波は、前記金層内の自由電子雲と相互作用し吸収され、電荷密度波(すなわち表面プラズモン)を発生させ、反射光の強度の減衰を起こす。この強度最低が起こる共鳴角は、前記センサー表面の反対面上の前記金層に近接した溶液の屈折率の関数である。
【0154】
ii.RWGバイオセンサー及びシステム
RWGバイオセンサーは、例えば、基質(例えばガラス)と、グレーティング又は周期的構造が包埋された薄い導波フィルムと、細胞層とを含む場合がある。前記RWGバイオセンサーは、回折格子による導波路への光の共振結合(resonant coupling)を利用して、溶液―表面界面での完全な内部反射をもたらし、これが今度は前記界面で電磁場を生成する。この電磁場は、前記センサー表面から指数的に減衰するという意味で本来エバネッセントである。元の値の1/▲eの斜字体▼まで減衰する距離は、侵入深さ(penetration depth)として知られ、特定のRWGバイオセンサーの設計の関数であるが、約200nmのオーダーであるのが典型的である。このタイプのバイオセンサーは、かかるエバネッセント波を前記センサー表面又はその近傍での細胞層のリガンドで誘発される変化を特徴づけるために利用する。
【0155】
RWG装置は、角シフト測定を利用するシステムか、波長シフト測定を利用するシステムかに細分できる。波長シフト測定では、一定角度の入射波長の範囲をカバーする偏光が前記導波路を照射するために使われる。特定の波長の光が前記導波路に結合され、前記導波路にそって伝搬する。代替的に、角シフト機器では、前記センサーは単色光で照射され、該光が共振結合される角度が測定される。
【0156】
共振条件は、バイオセンサーの表面に直接接触する細胞層(例えば細胞のコンフルエント状態、接着及びステータス)に影響される。リガンド又は被分析物が生細胞中の細胞標的(例えばCK2)と相互作用するとき、前記細胞層内の局所的屈折率のいかなる変化も共振角(又は波長)のシフトとして検出できる。
【0157】
コーニング(登録商標)Epic(登録商標)システムは、ラベルフリー生化学又は細胞に基づくアッセイ用にRWGバイオセンサーを使用する(Corning社、ニューヨーク州、Corning)。Epic(登録商標)システムは、RWGプレートリーダーと、SBS(Society for Biomolecular Screening、バイオ分子スクリーニング協会)標準マイクロタイタープレートとからなる。前記プレートリーダー内の検出器システムは、リガンドで誘発される細胞内変化の結果として入射光の波長のシフトを測定するために集積光ファイバー技術を利用する。照射−検出ヘッドは直線状に配置されるので、反射スペクトルが384穴マイクロプレートの1つのコラムの各ウェルから同時に集光される。各センサーが複数回問いかけられるようにプレート全体がスキャンされ、各コラムが順次問いかけられる。入射光の波長が集められ、分析に用いられる。温度変動による入射波長の疑似シフトを最小にするために温度制御ユニットが前記装置に含まれる場合がある。測定された応答は、細胞集団の平均化された応答を表す。サンプル装架のような前記システムのさまざまな特徴が自動化でき、96穴又は386穴マイクロタイタープレートのように多重化できる。液体処理は、装置搭載の液体処理器か、外部の液体処理アクセサリーかのいずれかによって実行される。具体的には、各ウェルの底に細胞が培養されている細胞アッセイプレートのウェルに直接分子溶液が添加又はピペット操作される。前記細胞アッセイプレートは、前記細胞を覆う一定体積のアッセイバッファー溶液を含む。一定回数ピペットを上下することによる単純な混合ステップも、前記分子添加ステップに取り込まれる場合がある。
【0158】
iii.電気的バイオセンサー及びシステム
電気的バイオセンサーは、基質(例えばプラスチック)と、電極と、細胞層とからなる。この電気的検出法では、基質上にアレイ配置された小さな金電極の上に細胞が培養され、システムの電気インピーダンスが経時的に追跡される。インピーダンスは前記細胞層の導電性の変化の尺度(measure)である。典型的には、一定周波数又は変動する周波数での低い一定電圧が電極又は電極アレイに印加され、回路を流れる電流が経時的に監視される。リガンドで誘発される電流の変化が細胞応答の尺度を提供する。前記細胞感知用インピーダンス測定は、1984年に初めて実現した。その時以来、インピーダンスに基づく測定は、細胞の接着及び伸展、細胞の微細運動、細胞の形態変化及び細胞死を含む、広範な細胞事象を研究するために応用されてきた。古典的なインピーダンスシステムは、小さい検出電極と大きな参照電極との使用によるアッセイのばらつきの高さの問題がある。このばらつきを解消するために、CellKeyシステム(MDS Sciex、カリフォルニア州、南サンフランシスコ)及びRT−CES(ACEA Biosciences社、カリフォルニア州、サンジエゴ)のような最新世代のシステムは、微小電極アレイを有する集積回路を利用する。
【0159】
iv.高空間分解能バイオセンサー画像システム
SPR画像システム、エリプソメトリ画像システム及びRWG画像システムを含む光学的バイオセンサー画像システムは、高い空間分解能を提供し、本開示の実施態様に使用される場合がある。例えば、SPRイメージャー(登録商標)II(GWC Technologies社)はプリズム結合SPRを利用し、固定された入射角でのSPR測定を行い、CCDカメラで反射光を集光する。表面での変化は反射率の変化として記録される。したがって、SPR画像は、アレイの全てのエレメントについての測定値を同時に回収する。
【0160】
RWGバイオセンサーを利用する画像に基づく用途のための掃引波長光学尋問システム(swept wavelength optical interrogation system)が利用される場合がある。本システムでは、高速可変波長レーザー光源が、マイクロプレート形式のRWGバイオセンサーのセンサー又はアレイを照射するのに用いられる。センサーのスペクトルは、レーザー波長がスキャニングされる際に前記センサーから反射した光量(optical power)を時間の関数として検出することによって構築でき、コンピューターによる共振波長尋問測定モデルを用いるデータの解析は、不動化されたレセプター又は細胞の層を有するバイオセンサーの空間的分解能がある画像の構築をもたらす。画像センサーの使用は、画像に基づく尋問スキームに自然に導く。2次元ラベルフリー画像は、可動パーツなしで得ることができる。
【0161】
代替的には、横断磁気又は▲pの斜字体▼−偏光TMモードを用いる角尋問システムも利用できる。本システムは、それぞれが約200μm×3000μm又は200μm×2000μmの寸法のRWGセンサーを照射する、光束アレイを発生させるローンチシステムと、これらのセンサーから反射した光束の角度変化を記録するためのCCDカメラを利用する受光システムとからなる。アレイ状の光束は、回折光学レンズと併用する光束分割器によって得られる。本システムは、(7×7穴センサーアレイ状の)最大49個のセンサーの3秒毎の同時サンプリングか、最大384穴マイクロプレート全体の10秒毎の同時サンプリングかを可能にする。
【0162】
代替的には、走査波長尋問システムも利用できる。本システムでは、角度一定の入射波長の範囲をカバーする偏光が、導波グレーティングバイオセンサーを照射及び走査するために利用され、場所ごとの反射光は同時に記録できる。スキャニングを通じてバイオセンサー全体の高分解能画像も達成できる。
【0163】
生細胞における動的質量再分配(Dynamic Mass Redistribution、DMR)シグナル
細胞標的を通じた刺激への細胞応答は、下流シグナル伝達ネットワークの空間的及び時間的動態によってコード化される場合がある。この理由のため、細胞シグナル伝達の統合(integration)をリアルタイムで監視することが、細胞生物学及び生理学を理解するうえで有用な生理学的に関係のある情報を提供できる。
【0164】
共鳴導波路回折格子(RWG)バイオセンサーを含む光学的バイオセンサーは、細胞の物質の動的再分配に関係する統合された細胞応答を検出できる、細胞シグナル伝達を研究するための非侵襲的手段を提供する。全ての光学的バイオセンサーは、前記センサー表面又はその近傍の局所的屈折率の変化を測定できる点で共通する。ほとんど全ての光学的バイオセンサーはリガンドで誘発される細胞内変化を特徴づけるためにエバネッセント波を利用できるので、原理的に細胞感知に応用可能である。前記エバネッセント波は液体+−表面界面での全内部反射によって発生する電磁場であり、侵入深さ又は検知体積として知られる特徴的な深さの前記溶液内に短距離(約数百ナノメートル)延びるのが典型的である。
【0165】
最近、リガンド刺激に応答する生細胞内で測定される光学的シグナルのパラメーター及び特性を説明する理論的数学的モデルが開発された。これらのモデルは、既知の細胞生物物理学を組み合わせた3層導波システムに基づき、前記リガンドで誘発される光学的シグナルをレセプターを介して媒介される特異的な細胞プロセスにリンクする。
【0166】
バイオセンサーは入射光により照射される領域に位置する細胞の平均的応答を測定するため、最適なアッセイ結果を達成するために高度にコンフルエントな細胞層が用いられる場合がある。バイオセンサーの短い侵入深さと比較して細胞の寸法が大きいため、センサーの配置は、基質と、グレーティング構造を有する導波フィルムと、細胞層という従来にない3層システムであると考えられる。したがって、リガンドで誘発される有効な屈折率の変化(すなわち、検出されるシグナル)は、一次的には、前記細胞層の底部の屈折率の変化に直接比例する場合がある。
【0167】

S(C)は細胞層への感度で、Δnはバイオセンサーによって感知される前記細胞層の局所屈折率のリガンドで誘発される変化である。細胞内の特定の体積の屈折率はタンパク質のような生物分子の濃度によってだいたい決定されるため、Δnは前記感知体積内の細胞標的又は分子集合体の局所濃度のリガンドで誘発される変化に直接比例する場合があある。前記センサー表面から延びるエバネッセント波の指数的に減衰する特性を考慮すると、前記リガンドで誘発される光学的シグナルは以下の式で規定される。
【0168】

ここで、ΔZは細胞層への侵入深さで、αは特異屈折率増分(タンパク質について約0.18/mL/g)で、zは質量再分配が発生する距離で、dは細胞層内のスライスの想像上の暑さである。ここで前記細胞層は垂直方向に等間隔のスライスに分割される。上記の式は、リガンドで誘発される光学的シグナルはセンサー表面からある距離の場所で発生する質量再分配の総和で、それぞれの質量再分配の応答全体への寄与は不平等であることを示す。さらに、波長又は角シフトの単位でみると検出されたシグナルは
前記センサー表面に垂直に発生する質量再分配に主に感受性がある。その動的な性質のため、前記シグナルは、動的質量再分配(DMR)ともよばれる。
【0169】
2.細胞及びバイオセンサー
細胞は受け取った情報を加工し、コード化し、統合するために複数の細胞経路又はメカニズムに依存する。タンパク質標的への被分析物の結合を特異的に測定する光学的バイオセンサーを用いる親和性解析とは異なり、生細胞ははるかに複雑で動的である。
【0170】
細胞シグナル伝達を研究するために、細胞はバイオセンサーの表面と接触させられる場合があるが、これは細胞培養を通じて達成できる。これらの培養細胞は、接着斑、クロースコンタクト(close contact)及び細胞外マトリクスコンタクトという、それぞれの表面からの距離が独特で特徴的な、3つのタイプのコンタクトを通じてバイオセンサー上に付着できる。その結果、細胞の基底膜は前記表面から約10−100nm離れているのが一般的である。懸濁細胞では、細胞は細胞表面レセプターの共有結合か、細胞幕レセプターの特異的結合か、重力による単なる沈降かのいずれかを通じてバイオセンサー表面と接触できる。この理由でバイオセンサーは細胞の底の部分を感知できる。
【0171】
多くの場合、細胞は表面に依存する接着及び増殖を示す。ロバストな細胞アッセイを達成するために、バイオセンサー表面は細胞接着及び増殖を増強するためのコーティングを必要とする場合がある。しかし、表面特性は細胞生物学的性質に直接的な影響を与える場合がある。例えば、表面に結合したリガンドは細胞の応答に影響を与えることができるし、該細胞によって加えられる力の下で如何に変形するかを決定する、基質材料の機械的コンプライアンスも細胞の応答に影響を与えることができる。異なる培養条件(時間、血清濃度、コンフルエント状態等)により、得られる細胞のステータスは、ある表面を別の表面から、そして、ある条件を別の条件から区別できる。したがって、細胞のステータスを制御する特別な努力が、バイオセンサーを利用する細胞アッセイを開発するために必要な場合がある。
【0172】
細胞は、比較的大きい寸法―典型的には数十ミクロンの範囲の寸法を有する動的な物体である。顕微鏡微速度撮影と、ナノメートルレベルの生体インピーダンス測定とにより組織培養で観察されるとおり、刺激なしでも、細胞は微小運動(micromotion)―動的な動き及び細胞構造のリモデリングを常に行っている。
【0173】
無刺激条件下で、RWGバイオセンサーを用いて調べられるとおり、細胞はほとんど差し引きゼロのDMR応答を発生するのが一般的である。これは、レーザースポットのサイズが大きいことと、結合光の伝搬距離が長いことから決定されるとおり、光学的バイオセンサーの空間分離能が低いのが一因である。レーザースポットのサイズは調べられる領域のサイズを決定し、通常一度にたった1カ所の分析ポイントだけが追跡できる。したがって、バイオセンサーは、光が入射する領域に位置する細胞の大集団の平均化された応答を測定するのが典型的である。細胞は単細胞レベルで微小運動を行うが、前記細胞の大集団は、平均差し引きゼロのDMR応答を発生する。さらに、細胞内高分子は高度に編制され、哺乳類細胞内の適切な部位に空間的に限定される。細胞の表面及び内部のタンパク質の局在の緊密な制御は特異的な細胞機能及び応答を決定するが、それは、細胞がタンパク質の特異性及び効率を調節し、タンパク質とその適切なパートナーとの相互作用の活性化及び脱活性化のメカニズムを空間的に分離することを前記局在が可能にするためである。この制御のため、無刺激条件下では、感知する体積内の細胞の局所的質量密度は平衡状態に到達でき、差し引きゼロの光学的応答につながる。一貫性のある光学的応答を達成するために、調べられる細胞は、たいていの細胞が1回の分裂を終了したばかりとなるような期間、従来技術の培養条件下で培養される場合がある。
【0174】
生細胞は、外部シグナルを感知し応答する精妙な能力がある。細胞のシグナル伝達は、環境からの合図が単一のはっきりとした応答をもたらす直線的な連鎖反応の引き金を引く、直線状の経路で機能すると以前は考えられていた。しかし、外部刺激に対する細胞応答ははるかに複雑であることを研究が証明した。細胞が受け取る情報は、処理されて、リン酸化とシグナル伝達タンパク質の局所形態学的(topological)再配置との複雑な時間的空間的パターンにコード化できることが明らかになっている。タンパク質の適切な部位への空間的時間的なターゲッティングは、タンパク質―タンパク質相互作用の特異性及び効率を調節して、細胞のシグナル伝達及び応答のタイミング及び程度を指図するうえで決定的な場合がある。細胞骨格の再編制、細胞周期チェックポイント及びアポトーシスのような極めて重要な細胞の決定は、活性化されたシグナル伝達因子の正確な時間的制御及び相対的な空間分配に左右される。したがって、Gタンパク質共役型レセプター(GPCP)のような細胞標的を通じて媒介される細胞のシグナル伝達は、秩序立って調節されたやり方で進行するのが典型的で、その多くが細胞の局所的質量密度の変化又は局所的な細胞物質の再分配につながる、一連の空間的時間的事象からなる。これらの変化又は再分配は、感知する体積内で起こるとき、光学的バイオセンサーを使ってリアルタイムで直接追跡できる。
【0175】
i.生細胞の生理的応答としてのDMRシグナル
レセプターの生物学研究の従来の薬理学的アプローチとの比較を通じて、細胞システムで発現するレセプターにリガンドが特異的なとき、リガンドで誘発されるDMRシグナルは、レセプターに特異的で、用量依存性があり、飽和可能である。さらに、バイオセンサーは、完全アゴニスト、部分的アゴニスト、逆アゴニスト、拮抗物質及びアロステリック変調剤を区別できる。したがって、DMRは生細胞の生理学的応答を監視できる。
【0176】
ii.DMRシグナルは、生細胞で作用するリガンドのシステム細胞薬理学的情報を含む
DMRシグナルは、細胞内底部の細胞物質の動的再分配を伴う多くの細胞事象の寄与からなる統合された細胞応答なので、DMRシグナルのようなリガンドで誘発されるバイオセンサーシグナルは、システム細胞薬理学的情報を含む。GPCRsは細胞内で手の込んだ挙動をみせ、多くのリガンドが、細胞メカニズムの特定の部分に有利な操作的バイアスを誘導し、経路的にバイアスのある(pathway−biased)薬効を示すことができる。したがって、レセプター下流の細胞事象が如何に測定され、リガンド薬理学のための読み取りとして利用されるかに依存して、1つのリガンドが多数の薬効を有する場合がある可能性は高い。実際には従来技術の細胞アッセイがGPCRリガンドのシグナル伝達能力を体系的に表すことは困難であるが、それは、前記従来技術の細胞アッセイはたいていが経路的にバイアスがあり、たった1つのシグナル伝達事象しかアッセイしないからである。しかし、ラベルフリーバイオセンサー細胞アッセイは細胞シグナル伝達の事前の知識を必要とせず、経路的にバイアスがなく、経路に敏感(pathway−sensitive)なため、これらのバイオセンサー細胞アッセイはリガンド選択的なシグナル伝達と、いずれかのリガンドのシステム細胞薬理学とを研究するのにも適している。
【0177】
バイオセンサーパラメーター
RWGバイオセンサー又はバイオインピーダンスバイオセンサーのようなラベルフリーバイオセンサーは、リガンドで誘発された細胞応答をリアルタイムで追跡できる。被侵襲的で操作不要なバイオセンサー細胞アッセイは、細胞のシグナル伝達の事前の知識を必要としない。得られるバイオセンサーシグナルは、レセプターシグナル伝達及びリガンド薬理学に関する高度な情報を含む。多数のパラメーターが刺激に際しての細胞の反応速度論的なバイオセンサー応答から抽出できる。これらのパラメーターは、全体的な動態(例えば、形状、振動パターン及び持続期間)、位相、シグナル振幅と、ある位相から別の位相への移行時間と、各位相の反応速度論とを含む反応速度論的パラメーターを含むが、これらに限定されない(Fang, Y.及びFerrie, A.M. (2008) “label−free optical biosensor for ligand−directed functional selectivity acting on β2 adrenoceptor in living cells”. FEBS Lett. 582, 558−564; Fang, Y.ら、(2005) “Characteristics of dynamic mass redistribution of EGF receptor signaling in living cells measured with label free optical biosensors”. Anal. Chem., 77, 5720−5725; Fang, Y.ら、(2006) “Resonant waveguide grating biosensor for living cell sensing”. Biophys. J., 91, 1925−1940を参照せよ)。
【0178】
3.細胞同調
CK2活性をロバストに測定されるようにする細胞同調は少なくとも3つの手段を通じて達成されるが、該手段は、独立に、あるいは、いずれかの組合せで用いられる場合がある。
【0179】
i.高い播種開始時細胞数での培養
1つの方法では、細胞は培養を通じて同調される。ここでは、高い播種開始時細胞数は、細胞が早く(すなわち、付着直後)に高度にコンフルエントな状態に達するように用いられる。本方法において細胞は、血清が添加され、プリンが豊富な培地の下で(少なくとも12時間のような)終夜培養される。例えば、HeLa細胞は、播種開始時細胞数が384穴マイクロプレートについてウェルあたり10000個くらい少なくて、細胞が終夜培養に供されるとき、単層(すなわち>90%のコンフルエント状態)を形成できる。しかし、細胞は付着直後に高度にコンフルエントな状態に到達するわけではない。細胞付着は迅速なプロセスで、細胞の倍化時間よりもはるかに短い(例えば1時間ないし6時間)ことが典型的である。これに対しHeLa細胞は、播種開始時細胞数が384穴マイクロプレートについてウェルあたり20000個を超えるとき、付着直後に高度にコンフルエントな状態に到達する。
【0180】
ii.超高度にコンフルエントな状態での培養
ある方法では、前記細胞は培養を通じて同調される。ここで高い播種開始時細胞数と、血清濃度が高くプリンが豊富な培地とが、細胞が早く(すなわち、1回の細胞倍加に近い時間、典型的には16時間ないし60時間以内)高度なコンフルエントな状態に到達して、血清濃度が高い培地か、無血清培地かのいずれかで長時間(典型的には終夜)の連続培養を通じて静止状態になるように用いられる。かかる培養条件の間、細胞は超高度にコンフルエントな状態(>99%)に到達し、接触阻止及び血清除去の組合せを通じて完全な静止状態に入る。
【0181】
iii.プリン欠乏培地での培養
別の方法では、前記細胞は特定のバッファーを含む溶液中でのインキュベーションを通じて同調される。ここでは普通の播種細胞数が、血清濃度は高いがプリンが欠乏した培地を使って高度なコンフルエントな状態(>90%)のコンフルエントな状態に到達するまでセンサー表面上で細胞を培養するために用いられる。
【0182】
C.定義
開示されるさまざまな実施態様は、図面があればこれを参照して詳細に説明されるであろう。さまざまな実施態様への言及は開示の範囲を限定せず、該開示の範囲は本明細書に添付される特許請求の範囲のみにより限定される。さらに、本明細書に列挙されるいかなる実施例も、限定的であることを意図するものではなく、特許請求の範囲に記載の発明について多くの可能な実施態様の一部を列挙するにすぎない。
【0183】
1.A(冠詞)
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられるところの、単数形の“a”、“an”及び“the”及びこれらに類する用語は、文脈が明確にそうでないと指示するのでない限り、複数形を含む。したがって例えば、“a pharmaceutical carrier(医薬品担体)”への言及は、かかる担体の2種類または3種類以上の混合物等を
含む。
【0184】
2.省略形
当業者に周知の省略形が使用される場合がある(例えば、単数又は複数の時間について“h”又は“hr”、単数又は複数のグラムについて“g”又は“gm”、ミリリットルについて“mL”、室温について“rt”、ナノメートルについて“nm”、モルについて“M”、その他これらに類する省略形)
3.About(約)
例えば、開示される実施態様を説明する際に用いられる、組成物中の成分の量、濃度、体積、処理温度、処理時間、収率、流速、圧量等の数値と、これらの範囲とを修飾する約(About)の語は、例えば、化合物、組成物、濃縮物又は使用処方を作るための典型的な測定及び取り扱い手順と、これらの手順での故意でないエラーと、本方法を実行するために使用される出発材料又は成分の製法、出所又は純度の違いと、これらに類する検討とを通じて発生しうる数量変動を意味する。「約」という用語は、特定の初期濃度又は混合を有する組成物又は処方のエージングのために異なる量と、特定の初期濃度又は混合を有する組成物又は処方を混合又は処理するために異なる量とをも含む。約という用語で修飾されるか否かに関わらず、本明細書に添付される特許請求の範囲は、これらの量の均等物を含む。
【0185】
4.アゴニズム及びアンタゴニズムモード
アゴニズムモード等の用語は、細胞がある分子に曝露されて該分子がDMRシグナルのようなバイオセンサーシグナルの引き金を引く能力があるかどうかを決定するアッセイであるのに対し、アンタゴニズムモードは、ある分子の存在下であるマーカーに曝露されて、該分子が前記マーカーに対応する細胞のバイオセンサーシグナルを変調する能力があるかどうかを決定するアッセイである。
【0186】
6.アッセイすること(Assaying)
アッセイすること、アッセイ、その他これらに類する用語は、例えば分子又は細胞のような物の特性、例えば、有無、量、程度、反応速度論、動態か、リガンド又はマーカーのような1種類または2種類以上の外部刺激を用いる刺激に対する細胞の光学的又は生体インピーダンス応答のタイプかを測定するための分析を指す。
【0187】
7.応答をアッセイすること(Assaying the response)
「応答をアッセイすること」、その他これに類する用語は、応答を特徴づけるための手段を使うことを意味する。例えば、ある分子がある細胞と接触される場合に、該分子に曝露された際の該細胞の応答をアッセイするためにバイオセンサーが使用される場合がある。
【0188】
8.プリノソームのリアルタイムでの会合及び解離
プリノソームの会合及び解離をリアルタイムでアッセイすることは、プリノソームの会合及び解離が起こっている間に、該会合及び解離を監視することを指す。
【0189】
9.バイオセンサー
バイオセンサー又はこれに類する用語は、生物学的なコンポーネントを物理化学的検出器コンポーネントと組み合わせる被分析物の検出装置を指す。バイオセンサーは、(組織、微生物、病原体、細胞又はこれらの組合せのような)生物学的コンポーネント又はエレメントと、(光学的、圧電式、電気化学的、熱量測定式又は磁気的手法のような物理化学的手法で作動する)検出器エレメントと、両方のコンポーネントと関係する変換器という3つの部分からなるのが典型的である。前記生物学的コンポーネント又はエレメントは、例えば、生細胞、病原体又はこれらの組合せの場合がある。実施態様では、光学的バイオセンサーは、生細胞、病原体又はこれらの組合せにおける分子識別又は分子刺激事象を定量可能なシグナルに変換するための光学的変換器を含む場合がある。
【0190】
10.バイオセンサー応答
「バイオセンサー応答」、「バイオセンサー出力シグナル」、「バイオセンサーシグナル」又はこれらに類する用語は、細胞を有するセンサーシステムの細胞応答に対するいずれかの反応である。バイオセンサーは、細胞応答を定量可能なセンサー応答に変換する。バイオセンサー応答は、RWG又はSPRのような光学的バイオセンサーによって測定される刺激の際の光学的応答であるか、電気的バイオセンサーによって測定される、刺激の際の細胞の生体インピーダンス応答である。バイオセンサー応答は、刺激の際の細胞応答に直接関連するため、バイオセンサー応答及び細胞応答は、開示される実施態様では相互に交換可能なように使用される場合がある。
【0191】
11.バイオセンサーシグナル
「バイオセンサーシグナル」又はこれに類する用語は、刺激の際の応答によって発生し、バイオセンサーで測定される細胞のシグナルを指す。
【0192】
12.癌
白血病、直腸結腸癌、前立腺癌、乳癌のような癌、リンパ腫、頭頸部及び肺の扁平上皮癌、脳神経膠腫癌、又は、Abl又はAlkのような癌化キナーゼの遺伝的変化から生じる癌表現型。
【0193】
13.細胞
細胞又はこれに類する用語は、半透性膜で外側が結合された原形質の小さな、通常は、微視的な物質を指し、任意的に、1個又は2個以上の核と、さまざまな他のオルガネラとを含み、単独で、あるいは、他の同類の物質と相互作用しながら、生命の全ての基礎的機能を実行でき、かつ、合成細胞コンストラクト、細胞モデルシステムその他の人工細胞システムを含む独立して機能できる生物の最小構造単位を形成することができる。
【0194】
細胞は、特定の疾患と関係する細胞、特定の起源由来の細胞タイプ、特異的標的と関係する細胞タイプ又は特定の生理学的機能と関係する細胞タイプのような、異なる細胞タイプを含む場合がある。細胞は、天然のままの細胞、加工された細胞、形質転換された細胞、不死化された細胞、初代細胞、胚性幹細胞、成人幹細胞、癌幹細胞又は幹細胞由来細胞の場合もある。
【0195】
ヒトは約210の既知の区別できる細胞タイプからなる。細胞がいかに調製されるか(例えば、加工されるか、形質転換されるか、不死化されるか、人体から新鮮に単離されるか)、及び、どこから細胞が得られるか(例えば、異なる年齢の人体又は異なる疾患ステージ等)を考慮すると、細胞タイプの数はほとんど無限である。
【0196】
14.細胞培養
「細胞培養」又は「細胞を培養すること」は、制御された条件下で原核細胞又は真核細胞のいずれかが増殖するプロセスを指す。「細胞培養」は、多細胞真核生物、特に、動物細胞由来の細胞を培養することだけでなく、複雑な組織及び器官を培養することも指す。
【0197】
15.細胞パネル
「細胞パネル」又はこれに類する用語は、少なくとも2つのタイプの細胞を含むパネルである。細胞は、本明細書に開示されるいかなるタイプ又は組合せであってもかまわない。
【0198】
16.細胞応答
「細胞応答」又はこれに類する用語は、刺激に対する細胞によるいずれかの反応である。
【0199】
17.細胞プロセス
細胞プロセス又はこれに類する用語は、細胞において、又は、細胞によって起こるプロセスである。細胞プロセスの例は、増殖、アポトーシス、ネクロシス、分化、細胞シグナル伝達、極性変化、遊走又は形質転換を含むが、これらに限定されない。
【0200】
18.細胞標的
「細胞標的」又はこれに類する用語は、外部刺激でその活性が修飾される場合のあるタンパク質又は核酸のような生体高分子である。細胞標的は、酵素、キナーゼ、イオンチャンネル及びレセプターのようなタンパク質であることが最も一般的である。
【0201】
19.細胞システム
細胞システムは、細胞及び試薬のいずれかのシステムであって、該試薬は増殖培地のように細胞を培養するのに十分である、システムである。
【0202】
20.特徴づけること(Characterizing)
特徴づけること又はこれに類する用語は、リガンド、分子、マーカー又は細胞のような物質について、該リガンド、分子、マーカー又は細胞のプロフィールを得ることのように、前記物質のいずれかの特性についての情報を収集することを指す。
【0203】
21.CK2変調剤
CK2変調剤は、対照と比較してCK2複合体を変調するいずれかの薬剤である。
【0204】
22.CK2阻害剤
CK2阻害剤は、対照と比較してCK2キナーゼの酵素活性を阻害、低下、減少又は予防するいずれかの薬剤である。
【0205】
23.CK2阻害剤感受性細胞
CK2阻害剤感受性細胞は、既知のCK2阻害剤で刺激されるとき検出可能なバイオセンサー応答を発生するいずれかの細胞又は細胞システムである。
【0206】
24.慢性炎症性疾患又は病状
慢性炎症性疾患又は病状は、新たな結合組織が形成されるいずれかの炎症性疾患又は病状である。例えば、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎及びクローン病のような腸疾患は、慢性炎症性疾患又は病状の場合がある。糸球体腎炎も慢性炎症性疾患である。
【0207】
25.含む(comprise)
本明細書の説明及び特許請求の範囲を通じて、「含む」という語と、“comprising”及び“comprises”のようなその変形とは、「含むが、限定されない」ことを意味し、例えば他の追加物、コンポーネント、整数又はステップを排除することを意図しない。
【0208】
26.〜から実質的になる(consisting essentially of 〜)
実施態様における「〜から実質的になる」とは、例えば、バイオセンサー表面上の表面組成物と、表面組成物、処方又は組成物を作成又は使用する方法と、本開示の品物(article)、機器又は装置とを指し、特許請求の範囲に掲げたコンポーネント又はステップと、さまざまに選択される、特定の反応剤、特定の添加物又は成分、特定の薬剤、特定の細胞又は細胞株、特定の表面修飾剤又は条件、特定のリガンド候補又はこれらに類する構造、材料又はプロセスのように、開示された組成物、品物、装置及び製造使用方法の基本的で新規な特性に実質的に影響のない、他のコンポーネント又はステップとを含む場合がある。開示されたコンポーネント又はステップの基本的特性に実質的に影響を与える場合があるか、本開示に望ましくない特徴を授与する場合がある事項は、例えば、細胞のバイオセンサー表面への親和性の低下と、刺激の細胞表面レセプター又は細胞内細胞への異常な親和性と、リガンド候補又はこれに類する刺激への応答における変則的又は逆方向の細胞活性とを含む。
【0209】
27.コンポーネント
開示された組成物を調製するために用いられるコンポーネントと、本明細書に開示される方法に使用される組成物とが開示される。これら及びその他の材料は本明細書に開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、グループ等が開示されるとき、これらの分子のそれぞれさまざまな個別及び集団の組合せ及び順列は明示的に開示されない場合があっても、それぞれは具体的に企図され本明細書に説明されることが理解される。したがって、分子A、B及びCのクラスが、分子D、E及びFのクラスとともに開示され、組合せ分子の実施例であるA−Dが開示される場合には、個別に列挙されない場合であっても、それぞれが個別的かつ集団的に企図された意味の組合せである、A−E、A−F、B−D、B−E、B−F、C−D、C−E及びC−Fが開示されたと考えられる。同様に、いずれかのサブセット又は組合せも開示されたと考えられる。したがって、例えば、A−E、B−F及びC−Eのサブグループが開示されたと考えられるであろう。このコンセプトは、開示される組成物の製造使用方法におけるステップを含むが、限定されない、本件出願の全ての局面に適用される。したがって、実行可能なさまざまな追加のステップがある場合には、これらの追加のステップのそれぞれは、開示された方法の実施態様のいずれかの具体的な実施態様か、実施態様の組合せかとともに実行される場合がある。
【0210】
28.接触させる(Contacting)
接触させる又はこれに類する用語は、分子相互作用が、分子か、細胞か、マーカーか、少なくとも1種類の化合物又は組成物か、少なくとも2種類の組成物か、品物又は機械とこれらのいずれかとのような、少なくとも2つの事物(thing)の間で可能な場合に、分子相互作用が起こりうるように近傍に運ぶことを意味する。例えば、接触することは、混ぜたり触れたりするために近くにいるように、少なくとも2種類の組成物、分子、品物又は事物を接触させることを指す。例えば、組成物Aの溶液と培養細胞Bとがあって、組成物Aの溶液を培養細胞Bに注ぐことは、組成物Aの溶液を培養細胞Bと接触させるであろう。細胞をリガンドに接触させることは、該細胞が該リガンドにアクセスできることを確実にするために前記リガンドを前記細胞に運ぶことであろう。
【0211】
本明細書に開示されるいかなるものも他のいずれかのものと接触させられる場合があることが理解される。例えば、細胞は、マーカー又は分子、バイオセンサー等と接触させられる場合がある。
【0212】
29.化合物及び組成物
化合物及び組成物は本発明の技術分野における標準的な意味がある。分子、物質、マーカー、細胞又は試薬のような特定の指示対象(designation)の用いられる場所がどこであれ、これらの指示対象を含む、これらの指示対象からなる、及び、これらの指示対象から実質的になる組成物が開示されることを理解すべきである。
【0213】
したがって、特定の指示対象としてマーカーが用いられるところでは、そのマーカーを含む組成物か、そのマーカーからなる組成物か、そのマーカーから実質的になる組成物かも開示されるであろうことが理解される。適切な場合には、特定の指示対象が示されるところでは、その指示対象の化合物も開示されるものと理解される。例えば、EGFのような具体的な生物学的材料が開示される場合には、化合物形状のEGFも開示される。
【0214】
30.対照
対照又は「対照レベル」又は「対照細胞」という用語その他これらに類する用語は、これによって変化が測定される基準として定義され、例えば、対照は実験に従属するのではなく、定義されたパラメーターのセットに従属する、あるいは、対照は処理前又は処理後のレベルに基づく。対照は、試験対象の実験作業と平行してか、試行の前又は後かに実験作業が進められるか、あるいは、対照は予め定められた標準かの場合がある。例えば対照は、被検者又は対象又は試薬等が、試される手順又は薬剤又は変数等が省略される点を除いて、平行する実験と同じように処理され、実験の効果を判定するうえで比較の基準として利用される、実験の結果を指す場合がある。例えば、あるテスト分子のある細胞への効果が問題となる場合には、a)前記分子の存在下での前記細胞の特性を単に記録し、b)a)を実行し、その後、活性があることが知られた対照分子か、活性がないことが知られた対照分子か、対照組成物(例えば、アッセイバッファー溶液(ビヒクル))かを添加した効果が記録され、その後、前記テスト分子の効果を前記対照と比較するかもしれない。ある種の状況では、いったん対照が実行されると、該対照が、対照実験が再度実行する必要がない基準として用いられる場合があり、別の状況では、比較されるとき毎に平行して対照実験が行われるべきである。
【0215】
31.包接化合物
本発明で用いられる化合物は、溶媒和物と対照的に、薬物及びホストが化学量論的又は非化学量論的な量で存在する薬物−ホスト封入複合体である「包接化合物」のような複合体を形成する場合がある。本明細書で用いられる化合物は、化学量論的又は非化学量論的な量の場合がある、2種類または3種類以上の有機及び/又は無機コンポーネントも含む場合がある。得られる複合体は、イオン化される場合か、部分的にイオン化される場合か、イオン化されない場合かがある。かかる複合体の総説としては、HaleblianによるJ. Pharm. ScL, 64 (8), 1269−1288(1975年8月)を参照せよ。
【0216】
32.検出
検出又はこれに類する用語は、分子又はマーカーで誘発される細胞応答を発見又は感知して、感知された応答を異なる分子ごとに区別できる本開示の装置及び方法の能力を指す。
【0217】
33.(薬物候補分子の)直接作用
「直接作用」又はこれに類する用語は、(薬物候補分子が)細胞に独立に作用する結果である。
【0218】
34.DMRシグナル
刺激に対する細胞の応答によって発生し光学的バイオセンサーで測定される細胞のシグナルを指す。
【0219】
35.DMR応答
「DMR応答」又はこれに類する用語は、光学的バイオセンサーを用いるバイオセンサー応答である。DMRは、動的質量再分配又は動的細胞物質再分配を指す。P−DMRは陽性DMR応答であり、N−DMRは陰性DMR応答で、RP−DMRは回復P−DMR応答である。
【0220】
36.DMAT
DMATは、2−ジメチルアミノ−4,5,6,7−テトラブロモ−1H−ベンズイミダゾールである。
【0221】
37.疾患マーカー
疾患マーカーは、EGFR又はVEGFRに関係する疾患を同定、診断又は予防するために用いられる場合がある、いずれかの試薬、分子、物質等である。
【0222】
38.薬物候補分子
薬物候補分子又はこれに類する用語は、薬物又はファーマコフォアとして機能できる能力についてテストされるテスト分子である。この分子はリード分子と考えられる場合がある。
【0223】
39.薬効
薬効又はこれに類する用語は、理想的又は最適な条件下で所望のサイズの効果を起こす能力である。薬効を関連する概念である有効性と区別するのはこれらの条件である。有効性は現実の条件下での変化に関係する。薬効は、レセプター占有率と、分子、細胞、組織又は全身レベルで応答を開始する能力との間の関係性である。
【0224】
40.より高い、阻害これらに類する語
より高い、増大する、上昇する又は上昇又はこれらに類する用語か、これらの用語の変形かは、基底レベルから上に、すなわち、対照と比較して、増大することを指す。低い、より低い、減少させる。低減する又は減少又はこれらに類する用語はか、これらの用語の変形か、は、基底レベルより下に、例えば、対照と比較して、低減することを指す。例えば基底レベルは、アゴニスト又は拮抗物質のような分子の添加の前か、該分子の非存在下かでの正常なin vivoのレベルである。阻害する(inhibit)又は動詞inhibitの諸語形又はこれらに類する用語は、減少又は抑制することを指す。
【0225】
41.高い播種開始細胞数(initial seeding number)
高い播種開始時細胞数又はこれに類する用語は、細胞が付着(播種後約1時間ないし6時間)又は終夜培養(約16−24時間)のいずれかの時点で高度にコンフルエントな状態に到達するように、マイクロタイタープレートのウェル1個に播種される総細胞数が比較的高いことを指す。
【0226】
42.高度にコンフルエントな状態(High confluency)
細胞のコンフルエントな状態又はこれに類する用語は、細胞が培地中を覆うか増殖することができることを指す。多くのタイプの細胞は細胞接触阻害を起こすため、高度にコンフルエントな状態とは、培養された細胞が組織培養表面又はバイオセンサー表面を高度に(>90%)覆って細胞の単層を形成し、培地中で細胞増殖が著しく制約されることを意味する。逆に、低いコンフルエント状態(例えば、40−60%コンフルエントな状態)は、培地中/上の細胞の増殖にほとんど又は全く制約がなく、増殖相にあるとみなしてよいことを意味する。
【0227】
43.高度にコンフルエントな細胞
高度にコンフルエントな細胞又はこれに類する用語は、少なくとも90%の表面が覆われた細胞の単層を指す。
【0228】
44.細胞の存在
「細胞の存在」又はこれに類する用語は、培養細胞の分子との接触又は曝露を指す。前記接触又は曝露は、刺激が運ばれて細胞に接触する前又は最中に起こる場合がある。
【0229】
45.インキュベーションされた細胞システム
インキュベーションされた細胞システムは、分子のような薬剤の少なくとも1種類が細胞システムに添加される、いずれかの細胞システムである。
【0230】
46.炎症病状
炎症病状は、炎症の増大が徴候又は病状の原因として現れるいずれかの病状である。
【0231】
47.指標(Index)
指標又はこれに類する用語は、データのコレクションである。例えば指標は、1個又は2個以上の変調プロフィールを含むリスト、表、ファイル又はカタログの場合がある。指標は、データのいずれかの組合せから作成できることが理解される。例えばDMRプロフィールは、P−DMR、N−DMR及びRP−DMRを有する場合がある。指標は、前記プロフィールが完成した日付けか、前記P−DMR、N−DMR、RP−DMR又はこれらのうちのいずれかのポイントか、これら又はその他のデータの組合せかを用いて作成できる。指標はかかる情報のいずれかのコレクションである。典型的には、指標を比較するとき、前記指標は同種のデータ、すなわち、P−DMRに対しP−DMRである。
【0232】
i.バイオセンサー指標
「バイオセンサー指標」又はこれに類する用語は、バイオセンサーデータのコレクションでできた指標である。バイオセンサー指標は、1次プロフィール又は2次プロフィールのようなバイオセンサープロフィールのコレクションの場合がある。前記指標はいずれかのタイプのデータを含む場合がある。例えば、プロフィールの指標は、N−DMRデータポイントだけを含むか、P−DMRデータポイントの場合があるか、両方か、あるいは、インピーダンスデータポイントの場合があるかもしれない。プロフィール曲線と関連する全てのデータポイントの場合があるかもしれない。
【0233】
ii.DMR指標
「DMR指標」又はこれに類する用語は、DMRデータのコレクションでできたバイオセンサー指標である。
【0234】
48.既知の分子
既知の分子又はこれに類する用語は、正確な作用メカニズムは既知又は未知の場合があるが、薬理学/生物学/生理学/病理生理学的活性が既知である分子である。
【0235】
49.既知の変調剤
既知の変調剤又はこれに類する用語は、少なくとも1種類の標的が既知で、親和性も既知である、変調剤である。例えば、既知の変調剤は、CK2阻害剤、PI3K阻害剤、PKA阻害剤、PKA阻害剤、GPCR拮抗物質、GPCRアゴニスト、RTK阻害剤、上皮増殖因子レセプターを中和する抗体、ホスホジエステラーゼ阻害剤、PKC阻害剤又は活性化剤等の場合があるかもしれない。
【0236】
50.既知変調剤バイオセンサー指標
「既知変調剤バイオセンサー指標」又はこれに類する用語は、既知変調剤について収集されたデータによって作成された変調剤バイオセンサー指標である。例えば、既知の変調剤バイオセンサー指標は、前記既知変調剤が細胞パネルに作用するプロフィールと、マーカーのパネルに作用する変調プロフィールとでできる場合があり、マーカーの各パネルは前記細胞のパネル中の細胞についてのものである。
【0237】
51.既知変調剤DMR指標
「既知変調剤DMR指標」又はこれに類する用語は、既知変調剤について収集されたデータにより作成される変調剤DMR指標である。例えば既知変調剤DMR指標は、細胞のパネルに作用する既知変調剤のプロフィールと、マーカーのパネルに対する既知変調剤の変調剤プロフィールとでできる場合があり、マーカーの各パネルは前記細胞のパネル中の細胞についてのものである。
【0238】
52.ラベルフリーバイオセンサーシステム
ラベルフリーバイオセンサーシステムは、本明細書に説明されるとおりバイオセンサーをラベルフリーなやり方で使用する、いずれかのシステムである。
【0239】
53.リガンド
リガンド又はこれに類する用語は、生物学的な目的に役立てるために、生体分子と結合して複合体を形成する物質又は組成物又は分子である。リガンドとその標的分子との間の実際に不可逆的な共有結合は生物学的システムではまれである。レセプターへのリガンド結合はレセプタータンパク質の化学的コンフォメーション、すなわち、3次元形状を変化させる。レセプタータンパク質のコンフォメーション状態は該レセプターの機能状態を決定する。結合の傾向又は強度は親和性とよばれる。リガンドは、基質、遮断薬、阻害剤、活性化剤及び神経伝達物質を含む。放射性リガンドは、放射性同位元素で標識されたリガンドで、蛍光リガンドは蛍光タグが付いたリガンドで、両方は、レセプター生物学及び生化学研究用のトレーサーとしてしばしば利用されるリガンドと考えられる場合がある。リガンドと変調剤とは互いに交換可能に用いられる。
【0240】
54.ライブラリ
ライブラリ又はこれに類する用語はコレクションである。ライブラリは本明細書に開示されるいずれかのもののコレクションの場合がある。例えば、指標のコレクションは指標ライブラリであり、プロフィールのコレクションはプロフィールライブラリであり、DMR指標のコレクションはDMR指標ライブラリである。また、分子のコレクションは分子ライブラリで、細胞のコレクションは細胞ライブラリで、マーカーのコレクションはマーカーライブラリである。ライブラリは例えば、ランダム的又は非ランダム的の場合があり、決定又は未決定の場合がある。例えば、既知変調剤のDMR指標又はバイオセンサー指標のライブラリが開示される。
【0241】
55.長期饑餓状態
長期饑餓状態又はこれに類する用語は、細胞の単層が、少なくとも倍加時間の少なくとも3倍の培養期間にわたり培養された培養条件を指す。
【0242】
56.マーカー
マーカー又はこれに類する用語は、バイオセンサー細胞アッセイにおけるシグナルを発生するリガンドである。前記シグナルは、少なくとも1種類の特異的標的を通じて媒介される、少なくとも1種類の特異的細胞シグナル伝達経路及び/又は少なくとも1種類の特異的細胞プロセスの特性であり、でなければならない。前記シグナルは陽性又は陰性又はいずれかの組合せ(例えば振動)の場合がある。EGFのようなEGFR活性化剤は、EGFRが安定的に発現されるA431細胞についてマーカーの場合がある。
【0243】
57.マーカーパネル
「マーカーパネル」又はこれに類する用語は、少なくとも2種類のマーカーを含むパネルである。前記マーカーは、異なる経路のものであってもよく、同じ経路のものであってもよく、異なる標的のものであってもよく、同じ標的のものであってすらよい。
【0244】
58.マーカーバイオセンサー指標
「マーカーバイオセンサー指標」又はこれに類する用語は、あるマーカーについて収集されたデータによって作成されるバイオセンサー指標である。例えば、バイオセンサー指標は、細胞のパネルに作用するマーカーのプロフィールと、マーカーの粒子ねっるに対するマーカーの変調プロフィールとでできる場合があり、マーカーの各パネルは前記細胞のパネルの細胞についてのものである。
【0245】
59.マーカーDMR指標
「マーカーDMR指標」又はこれに類する用語は、あるマーカーについて収集されたデータによって作成されるバイオセンサーDMR指標である。例えば、マーカーDMR指標は、細胞のパネルに作用するマーカーのプロフィールと、マーカーのパネルに多雨する前記マーカーの変調プロフィールとでできる場合があり、マーカーの各パネルは前記細胞のパネルの細胞についてのものである。
【0246】
60.材料
材料は物理的対象の構成(makeup)に含まれるなにものか(化学的、生化学的、生物学的、又はこれらの混合)の有体部分である。
【0247】
61.模倣(mimic)
本明細書で用いられるところの「模倣」又はこれに類する用語は、参照対象の1つまたは2つ以上の機能を実行することを指す。例えば、分子模倣体はある分子の1つまたは2つ以上の機能を実行する。
【0248】
62.変調する
変調する(modulate)又は動詞modulateの諸語形は、細胞標的を通じて媒介される細胞活性の増大、減少又は維持のいずれかを意味する。これらの語のうち1つが用いられるところでは、対照から1%、5%、10%、20%、50%、100%、500%又は1000%の増大か、1%、5%、10%、20%、50%又は100%の減少かの場合があるかもしれない。
【0249】
63.変調剤
変調剤又はこれに類する用語は、細胞標的の活性を制御するリガンドである。標的タンパク質のような細胞標的と結合するシグナル変調分子である。
【0250】
64.変調比較
「変調比較」又はこれに類する用語は、1次プロフィール及び2次プロフィールを正規化した結果である。
【0251】
65.変調剤バイオセンサー指標
「変調剤バイオセンサー指標」又はこれに類する用語は、変調剤について収集されたデータによって作成されるバイオセンサー指標である。例えば、変調剤バイオセンサー指標は、細胞のパネルに作用する変調剤のプロフィールと、マーカーのパネルに対する前記変調剤のプロフィールとでできる場合があり、マーカーの各パネルは細胞の前記パネルの細胞についてのものである。
【0252】
66.変調剤DMR指標
「変調剤DMR指標」又はこれに類する用語は、変調剤について収集されたデータによって作成されるDMR指標である。例えば、変調剤DMR指標は、細胞のパネルに作用する変調剤のプロフィールと、マーカーのパネルに対する前記変調剤の変調プロフィールとでできる場合があり、マーカーの各パネルは細胞の前記パネルの細胞についてのものである。
【0253】
67.マーカーのバイオセンサーシグナルを変調する
「バイオセンサーシグナルを変調する」又はこれに類する用語は、マーカーでの刺激に応答してバイオセンサーシグナル又は細胞のプロフィールの変化を起こすことである。
【0254】
68.DMRシグナルを変調する
「DMRシグナルを変調する」又はこれに類する用語は、マーカーでの刺激に応答してDMRシグナル又は細胞のプロフィールの変化を起こすことである。
【0255】
69.分子
本明細書で用いられるところの用語「分子」又はこれに類する用語は、化学的分子又は明確な分子量を有する分子の形状で存在する生物学的又は生化学的又は化学的存在を指す。分子又はこれに類する用語は、サイズに関係なく、化学的、生化学的又は生物学的な分子を指す。
【0256】
多くの分子は有機分子(とりわけ共有結合で連結された炭素原子を含む分子)として言及されるタイプであるが、(分子酸素のような単純な分子気体と、一部のイオウに基づくポリマーのようなより複雑な分子とを含む)一部の分子は炭素を含まない。一般的な用語「分子」は、タンパク質、核酸、炭水化物、ステロイド類、有機医薬品、低分子、レセプター、抗体及び脂質のような多数の記述クラス又はグループの分子を含む。適切なときは、サブグループへの本方法の分子の適用のため、一般的なクラスである「分子」と、タンパク質のような指名されたサブクラスとの両方をかかる分子に代表させる意図を損なうことなく、これらのより説明的な用語(「タンパク質」のような該用語の多くは、重複するグループの分子を説明する)の1個又は2個以上が本明細書で用いられるであろう。具体的に示されない限り、「分子」という語は、特定の分子と、薬学的に許容可能な塩のような前記特定の分子の塩とを含むであろう。分子のユニークな特性は、水、水溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)のような有機溶媒のような溶媒に可溶性でなければならないことである。
【0257】
70.分子混合物(molecule mixture)
分子混合物又はこれに類する用語は、少なくとも2種類の分子を含む混合物である。前記2種類の分子は、構造的に異なる(すなわち、エナンチオマー)か、組成的に異なる(例えば、タンパク質のアイソフォームか、グリコフォームか、異なるポリ(エチレングリコール)(PEG)修飾を有する抗体か)か、構造的かつ組成的に異なる(例えば、未精製天然抽出物又は未精製合成化合物)かの場合があるが、これらに限定されない。
【0258】
71.分子バイオセンサー指標
「分子バイオセンサー指標」又はこれに類する用語は、分子について収集されたデータによって作成されるバイオセンサー指標である。例えば、分子バイオセンサー指標は、細胞のパネルに作用する分子のプロフィールと、マーカーのパネルに対する前記分子の変調プロフィールとでできている場合があり、マーカーの各パネルは細胞の前記パネルの細胞についてのものである。
【0259】
72.分子DMR指標
「分子DMR指標」又はこれに類する用語は、分子について収集されたデータによって作成されるDMR指標である。例えば、分子バイオセンサー指標は、細胞のパネルに作用する分子のプロフィールと、マーカーのパネルに対する前記分子の変調プロフィールとでできている場合があり、マーカーの各パネルは細胞の前記パネルの細胞についてのものである。
【0260】
73.分子指標
「分子指標」又はこれに類する用語は、分子に関する指標である。
【0261】
74.分子処理細胞
分子処理細胞又はこれに類する用語は、分子に曝露された細胞である。
【0262】
75.分子変調指標
「分子変調指標」又はこれに類する用語は、細胞のパネルに作用するマーカーのパネルのバイオセンサー出力シグナルを変調できる分子の能力を示す指標である。変調指標は、分子の存在下でのマーカー刺激に対する細胞の応答の特異的バイオセンサー出力シグナルパラメーターをいかなる分子も存在しないときのマーカー刺激に対する細胞の応答の特異的バイオセンサー出力シグナルパラメーターに対して正規化することによって生成される。
【0263】
76.分子薬理学
分子薬理学又はこれに類する用語は、システム細胞生物学か、システム細胞薬理学か、細胞に作用する分子の作用モードかを指す。分子薬理学は、毒性か、特定の細胞プロセス(例えば、増殖、分化、活性酸素種シグナル伝達)に影響を与える能力か、特定の細胞標的(例えば、PI3K、PKA、PKC、PKG、JAK2、MAPK、MEK2又はアクチン)を変調できる能力かによって特徴づけられることがしばそばあるが、これらに限定されない。
【0264】
77.分子で誘発されるバイオセンサー応答
分子で誘発されるバイオセンサー応答は、対照に対して分子の存在下で関連づけられる、バイオセンサーで測定される特定の細胞システムのいずれかの応答又はシグナルである。
【0265】
78.多酵素複合体
多酵素複合体は、メンバーの各酵素の個々の活性に依存する機能を有する、2種類または3種類以上の酵素のいずれかの複合体である。
【0266】
79.多酵素複合体変調剤
多酵素複合体変調剤は、多酵素複合体のステータスを対照に対して変化させるいずれかの分子又は薬剤である。
【0267】
80.多酵素複合体促進剤
多酵素複合体促進剤、集合促進剤又はこれらに類する用語は、対照に対して多酵素複合体の形成を起こすか、増大させる、いずれかの分子又は薬剤である。
【0268】
81.多酵素複合体解体促進剤
多酵素複合体解体促進剤又はこれに類する用語は、多酵素複合体のような複合体の形成を対照に対して減少、阻害、低減又は予防する、いずれかの分子又は薬剤である。
【0269】
82.多酵素複合体破壊剤
多酵素複合体破壊剤又はこれに類する用語は、対照に対して、既に形成された多酵素複合体の解体(解離)を起こすか、又は、増大させる、いずれかの分子又は薬剤である。
【0270】
83.正規化
正規化又はこれに類する用語は、例えば少なくとも1個の共通変数を除去するように、データ、プロフィール又は応答を調整することを意味する。例えば、細胞に作用するマーカーの応答と、該細胞に作用するマーカー及び分子の応答という2個の応答が発生する場合に、正規化は、前記分子非存在下で前記マーカーで誘発される応答と、前記分子存在下での応答とを比較すること、正規化された応答が前記マーカーに対する前記分子の変調に起因する応答を表すように、前記マーカーに起因する応答を除去することという動作を指すかもしれない。変調比較は、分子の存在下(変調プロフィール)での前記マーカーの1次プロフィール及び2次プロフィールを正規化することにより作成される。
【0271】
84.任意的(Optional)
「任意的」、「任意的に」又はこれらに類する用語は、その後の記述の事象又は状況が起こりうるものも起こりえないものもあること、及び、前記記述は前記事象又は状況が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味する。例えば、「任意的に組成物は組合せを含む」という文言は、当該組成物が異なる分子の組合せを含むか、組合せを含まないかの場合があり、前記記述は、前記組合せと、前記組合せの非存在(すなわち、前記組合せの個々のメンバー)との両方を含むことを意味する。
【0272】
85.又は
「又は」又はこれに類する用語は、特定のリストのいずれか1つのメンバーを意味し、そのリストのメンバーのいずれかの組合せも含む。
【0273】
86.最適化
最適化は、より良くするプロセス、又は、なにものか又はなんらかのプロセスがより良くできる場合があるかどうか知るためにチェックするプロセスを指す。
【0274】
87.プロフィール
プロフィール又はこれに類する用語は、細胞のような組成物について収集されたデータを指す。プロフィールは本明細書に説明されるラベルフリーバイオセンサーから収集される場合がある。
【0275】
i.1次プロフィール
「1次プロフィール」又はこれに類する用語は、分子が細胞と接触するときに発生するバイオセンサー応答、バイオセンサー出力シグナル又はプロフィールを指す。典型的には、1次プロフィールは、初期細胞応答を差し引きゼロのバイオセンサーシグナル(すなわち基線)に対して正規化した後に得られる。
【0276】
ii.2次プロフィール
「2次プロフィール」又はこれに類する用語は、分子の存在下でのマーカーに対する細胞のバイオセンサー応答又はバイオセンサー出力シグナルである。2次プロフィールは、分子がマーカーで誘発される細胞応答又はバイオセンサー応答を変調できる能力の指示として使用される場合がある。
【0277】
iii.変調プロフィール
「変調プロフィール」又はこれに類する用語は、分子の存在下でのマーカーの2次プロフィールと、いかなる分子も存在しないときのマーカーの1次プロフィールとの間の比較である。前記比較は、例えば前記2次プロフィールから前記1次プロフィールを減算するか、前記1次プロフィールから前記2次プロフィールを減算するか、前記1次プロフィールに対して前記2次プロフィールを正規化するかによって行われる場合がある。
【0278】
88.パネル
パネル又はこれに類する用語は、予め定められた被検体(例えば、マーカー、細胞又は経路)の組である。パネルは、ライブラリから被検体を選定することから作成される場合がある。
【0279】
89.陽性対照
「陽性対照」又はこれに類する用語は、データ収集のための条件がデータ収集につなげられることを示す対照である。
【0280】
90.強化する(potentiate)
強化する、強化された又はこれらに類する用語は、分子によって起こった、細胞でのマーカーのバイオセンサー応答の特定のパラメーターの増大を指す。マーカーの1次プロフィールを、分子の存在下での同一細胞における同一マーカーの2次プロフィールと比較することによって、マーカーで誘発される細胞のバイオセンサー応答の前記分子による変調を計算することができる。陽性の変調は、前記分子がマーカーによって誘発されるバイオセンサーシグナルの増大を起こすことを意味する。
【0281】
91.強度(potency)
強度又はこれに類する用語は、所定の程度の効果を発生するために必要な量という観点から表現された、分子活性の尺度である。例えば、非常に強力な薬剤は、低濃度で大きい反応を起こす。強度は新早生及び薬効に比例する。親和性は、薬剤分子がレセプターと結合する能力である。
【0282】
92.プロドラッグ
「プロドラッグ」又はこれに類する用語は、in vivoで代謝されるとき、所望の薬理学的活性を有する化合物に変換される化合物を指す。プロドラッグは、薬理学的に活性がある化合物に存在する適当な官能基を、例えば、H. Bundgaar, Design of Prodrugs (1985)に説明されるプロ原子団(pro−moiety)で置換することによって調製される場合がある。プロドラッグの例は、本明細書の化合物のエステル、エーテル又はアミド誘導体と、これらの薬学的に許容可能な塩とを含む。プロドラッグのさらなる説明は、例えば、T. Higuchi及びV. Stella ”Pro−drugs as Novel Delivery Systems,” ACS Symposium Series 14 (1975)と、E. B. Roche編、Bioreversible Carriers in Drug Design (1987)とを参照せよ。
【0283】
93.刊行物
本件出願を通じて、さまざまな刊行物が引用される。本件出願に関する技術水準をより完全に説明するために、これらの刊行物の開示内容は、それらの全体が引用により本件出願に取り込まれる。開示される引用文献は、引用文献を参照する文中で説明される材料であって、前記引用文献に含まれる材料についても、引用により本明細書に個別具体的に取り込まれる。
【0284】
94.前活性化(Preeactivation)
前活性化又はこれに類する用語は、レセプターが活性化されるように細胞又は細胞システムが該レセプターに対するアゴニストに曝露されるステップ又はプロセスであり、この活性化は、別の分子で当該細胞が刺激される前の特定の期間(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、120、180、240、300又は360分か、これらの時間以上か、これらの時間未満かのような分ないし時間単位の期間)に起こる。
【0285】
95.プリン欠乏培地
プリン欠乏培地又はこれに類する用語は、プリン分子を非常に低濃度(例えば、1mM又は100nM未満)含むか、全く含まない、血清添加培地を指す。プリン欠乏培地は、一定時間血清添加培地を透析することにより作られる場合がある。
【0286】
96.プリンが豊富な血清培地
プリンが豊富な血清培地又はこれに類する用語は、血清(例えば、ウシ(bovine)胎仔血清、熱非動化ウシ胎仔血清、ウシ(calf)胎仔血清のような一般的に商業的に入手可能な血清)を含む細胞培養培地を指す
97.プリノソーム複合体破壊剤
プリノソーム複合体破壊剤は、対照と比較して、プリノソーム複合体形成の減少、阻害、低減又は予防か、既に形成されたプリノソーム複合体の解体の増大又は促進かをするいずれかの分子又は薬剤である。例はTBBである。
【0287】
98.プリノソーム阻害剤
プリノソーム阻害剤は、対照と比較して、プリノソームの機能又は活性の阻害、低減、減少又は予防するいずれかの薬剤である。
【0288】
99.プリノソーム複合体促進剤
プリノソーム複合体促進剤は、対照と比較して、プリノソーム複合体の形成を起こすか増大させるか、既に形成されたプリノソーム複合体を増大させるか、安定化するいずれかの薬剤である。例はDMATである。
【0289】
100.プリノソーム促進剤
プリノソーム促進剤は、対照と比較して、プリノソームの機能又は活性を増大又は促進するいずれかの薬剤である。
【0290】
101.プリノソーム促進型CK2阻害剤
プリノソーム促進型CK2阻害剤は、対照と比較して、プリノソーム複合体の形成を起こすか、増大させるいずれかのCK2阻害剤である。
【0291】
102.プリノソーム破壊型CK2阻害剤
プリノソーム破壊型CK2阻害剤は、対照と比較して、既に形成されたプリノソーム複合体の解離を起こすか、増大させるか、プリノソーム複合体形成の阻害、低減、予防又は減少をするいずれかのCK2阻害剤である。
【0292】
103.プリン合成経路阻害剤
プリン合成経路阻害剤は、対照と比較して、プリン合成経路のステップを減少、阻害、低減又は予防するいずれかの薬剤である。
【0293】
104.レセプター
レセプター又はこれに類する用語は、移動可能なシグナル伝達(又は「シグナル」)分子が付着することがある、細胞の原形質膜又は細胞質のいずれかに包埋されるタンパク質分子である。レセプターに結合する分子は「リガンド」とよばれ、(神経伝達物質のような)ペプチド、ホルモン、医薬品又は毒素の場合があり、かかる結合が起こるときレセプターは、細胞応答を通常は開始するコンフォメーション変化を起こす。しかし、一部のリガンドは、いかなる応答も誘発することなくレセプターを遮断するにすぎない(例えば、拮抗薬)。リガンドで誘発されるレセプターの変化は、該リガンドの生物活性を構成する生理学的変化をもたらす。
【0294】
105.「ロバストなバイオセンサーシグナル」
「ロバストなバイオセンサーシグナル」は、その振幅がノイズレベル又は陰性対照応答のいずれかより(3倍、10倍、20倍、100倍又は1000倍のように)顕著に上回るバイオセンサーシグナルである。しばしば陰性対照応答は、アッセイバッファー溶液(すなわちビヒクル)の添加後のバイオセンサー応答である。前記ノイズレベルは、いかなる溶液をさらに添加しないときの細胞のバイオセンサーシグナルである。細胞はいかなる溶液を添加する前でもいつも溶液に覆われることは特記に値する。
【0295】
106.「ロバストなDMRシグナル」
「ロバストなDMRシグナル」又はこれに類する用語は、「ロバストなバイオセンサーシグナル」のDMR形状である。
【0296】
107.範囲
範囲は、「約(about)」ある特定の数値から、及び/又は、「約」別の特定の数値までとして本明細書で表現される場合がある。かかる範囲が表現されるとき、別の実施態様は、前記ある特定の数値から、及び/又は、前記別の特定の数値までを含む。同様に、先行詞「約(about)」の使用により数値が近似値として表現されるとき、前記特定の数値は別の実施態様を形成することが理解されるべきであろう。前記範囲のそれぞれの端点は、他の端点との関係でと、及び、該他の端点とは無関係でとの両方で意義深い。本明細書には多数の数値が開示されること、及び、それぞれの数値は、該数値自体に加えて、「約」その特定数値としても本明細書に開示されることも理解される。例えば、「10」という数値が開示される場合、「約10」も開示される。ある数値「以下」が開示されるとき、当業者により適切に理解されるとおり、「当該数値以上」と、数値間の可能な範囲とがともに開示される。例えば、数値「10」が開示される場合、「10以下」及び「10以上」も開示される。本件出願を通じて、データは多数の異なるフォーマットで提供されること、及び、このデータは、終点及び始点と、該データの点のいずれかの組合せの範囲とを表すことも理解される。例えば、特定のデータの点「10」と、特定のデータの点「15」とが開示される場合、10と15の間とともに、10及び15を超える、10及び15以上、10及び15未満、10及び15以下、及び10及び15ちょうども開示されると考えられることが理解される。2つの特定の単位の間のそれぞれの単位も開示されることも理解される。例えば、10及び15が開示される場合、11、12、13及び14も開示される。
【0297】
108.応答
応答又はこれに類する用語は、いずれかの刺激に対するいずれかの反応である。
【0298】
109.参照プローブ
参照プローブ(referenceprobe又はreferencing probe)又はこれに類する用語は、特定の細胞システムにおける特定の細胞標的(例えばCK2キナーゼ)に対する既知であるか明確な活性を有するいずれかの薬剤である。
【0299】
110.参照プローブバイオセンサー応答
参照プローブバイオセンサー応答は、バイオセンサーで測定される特定の細胞システムのいずれかの応答又はシグナルであって、対照と比較して参照プローブの存在と対応づけられる応答又はシグナルである。
【0300】
111.サンプル
サンプル又はこれに類する用語により意味されるのは、動物、植物、菌類等か、天然産物、天然産物の抽出物等か、動物由来の組織又は器官か、(被検者の体内か、被検者から直接取り出されるか、培養で維持される細胞か、培養細胞株由来かのいずれかの)細胞か、細胞溶解液(又は溶解液の分画)又は細胞抽出物か、(例えばポリペプチド又は核酸のような)細胞又は細胞材料由来の1種類または2種類以上の分子を含む溶液かであって、本明細書に説明されるとおりアッセイされるものである。
【0301】
112.塩(類)と、薬学的に許容可能な塩(類)
本発明の化合物は、無機酸又は有機酸由来の塩の形状で使用される場合がある。特定の化合物によっては、異なる温度及び湿度での薬学的安定性の増強か、水又は油の中での溶解度が好ましいことのような、1種類または2種類以上の前記物理的特性に起因して、当該化合物の塩が有利な場合がある。一部の事例では、ある化合物の塩は、該化合物の単離、精製及び/又は溶解を補助するために使用される場合もある。
【0302】
ある塩が(例えばin vitroの文脈での使用に対し)患者への投与を意図される場合、前記塩は薬学的に許容可能であることが好ましい。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、陰イオンがヒトの消費に適すると一般的に考えられる酸か、陽イオンがヒトの消費に適すると一般的に考えられる塩基かとともに、処方I又はIIの化合物を併用して調製された塩を指す。薬学的に許容可能な塩は、親化合物と比較して水溶性が高いために、本発明の方法の製品として特に有用である。医学での使用のためには、本発明の化合物の塩は、毒性のない「薬学的に許容可能な塩」である。「薬学的に許容可能な塩」に包含される塩は、遊離塩基を適当な有機酸又は無機酸と反応させることにより一般的に調製される、本発明の化合物の毒性のない塩を指す。
【0303】
可能なとき、本発明の化合物の適当な薬学的に許容可能な酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、ホウ酸、ホウフッ化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、炭酸、スルホン酸、硫酸のような無機酸由来のものと、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸, グリコール酸、イソチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、コハク酸、トルエンスルホン酸、酒石酸及びトリフルオロ酢酸のような有機酸由来のものとを含む。一般的に適当な有機酸は、例えば、脂肪族、環状脂肪族、芳香族、方向脂肪族、複素環、カルボン酸及びスルホン酸のクラスの有機酸を含む。
【0304】
適当な有機酸の具体例は、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、ジグルコン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、ステアリン酸、サリチル酸、パラオキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、パモ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トルエンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸(cyclohexylaminosulfonate)、アルギン酸、β−ヒロドキシ酪酸、ガラクタル酸、ガラクツロン酸、アジピン酸、アルギン酸、酪酸、しょうのう酸、カンファースルホン酸、シルロペンタンプロピオン酸、ドデシル硫酸、グルコヘプトン酸、グリセロリン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ニコチン酸、2−ナフタレンスルホン酸、しゅう酸、パモ酸(palmoate)、ペクチン酸(pectinate)、3−フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバル酸、チオシアン酸、トシル酸及びウンデカン酸を含む。
【0305】
有機塩は、トロメタミン、ジエチルアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインのような、2級、3級又は4級アミン塩からできる場合がある。塩基性含窒素基は、低級アルキル(CrC)ハロゲン化物(例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチル基の塩化物、臭化物及びヨウ化物)、硫酸ジアルキル(すなわち、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル及び硫酸ジアミル)、長鎖ハロゲン化物(すなわち、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリル基の塩化物、臭化物及びヨウ化物)、ハロゲン化アリルアルキル(すなわち、ベンジル及びフェニルエチル基の臭化物)その他これらに類する化合物のような薬剤で4級化される場合がある。
【0306】
1つの実施態様では、酸及び塩基のヘミ塩(hemisalt)、例えば、ヘミ硫酸及びヘミカルシウム塩も形成される場合がある。
【0307】
本発明の化合物及びこれらの塩は、非溶媒和状及び溶媒和状の両方で存在する場合がある。
【0308】
113.「選択的に(selectively)」
「選択的に」との文言は、阻害、予防又は増大のような本明細書のいずれかの属性とともに用いられる場合があり、対照と比較して少なくとも10倍の活性を有する分子を指す。
【0309】
114.シグナル伝達経路
「はっきりと定義された経路」又はこれに類する用語は、シグナル(例えば、外来のリガンド)を受け取ってから、細胞応答(例えば、細胞標的の発現増大)までの細胞の経路である。一部の場合では、レセプターへのリガンドの結合によって惹起されるレセプター活性化は、リガンドに対する細胞の応答と直接的に共役する。例えば、神経伝達物質GABAは、イオンチャンネルの一部である細胞表面レセプターを活性化できる。ニューロン上のGABA AレセプターへのGABAの結合は、該レセプターの一部である塩素選択的イオンチャンネルを開放する。GABA Aレセプターの活性化は、陰性荷電塩素イオンがニューロンに進入することを可能にして、ニューロンが活動電位を発生できる能力を阻害する。しかし、多くの細胞表面レセプターについて、リガンド−レセプター相互作用は細胞の応答と直接的にはリンクしない。活性化されたレセプターは、リガンドの細胞の挙動に関する最終的な生理学的効果が生じる前に、まず細胞内の他のタンパク質と相互作用しなければならない。しばしば、レセプターの活性化に続いて、複数の相互作用中の一連の細胞タンパク質の挙動が変化する。レセプター活性化によって誘導される細胞の変化の全セットは、シグナル伝達メカニズム又は経路とよばれる。シグナル伝達経路は、比較的単純か、極めて複雑かのいずれかの場合がある。
【0310】
115.類似性又は指標の類似性
「指標の類似性」又はこれに類する用語は、指標のパターン及び/又はスコアのマトリックスに基づいて、指標の1つが分子についてのものであって、2つの指標の間か、少なくとも3つの指標の間かの類似性を表す用語である。スコアのマトリックスは、対応する細胞の異なる分子の1次プロフィールの固有の特徴(signatures)と、各マーカーに対する異なる分子の変調プロフィールの性質及び割合とのように、相手方と強く関係する。例えば、より高いスコアが類似性がより高い特性に割り当てられ、より低いすなわち陰性のスコアが非類似の特性に割り当てられる。分子変調指標に認められる変調には、陽性、陰性及び中性という3つのタイプしかないため、類似性マトリックスは、比較的単純である。例えば、単純なマトリックスは、同一の変調(例えば陽性変調)に+1のスコアを割り当て、非同一の変調に−1のスコアを割り当てる。
【0311】
代替的には、異なるスコアが変調のタイプごとに異なるスケールで割り当てられる場合がある。例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、100%、200%等の陽性変調は、それぞれ、+1、+2、+3、+4、+5、+6、+10、+20のスコアが割り当てられる場合がある。逆に、陰性変調には、同様だが逆のスコアが割り当てられる場合がある。例えば分子Iは、2種類の異なる細胞でマーカーのパネルに対して以下の変調パターンを示した。A431でのEGF(上皮成長因子)(P−DMR、−60%)、A431でのEGF(N−DMR、−65%)、HT29でのEGF(初期P−DMR、−70%)、HT29でのEGF(後期P−DMR、−100%)、HT29でのMTX(マロトキシン)(P−DMR、−60%)、及びHT29でのNT(ニューロテンシン)(P−DMR、−106%)したがって、等位にある(in coordination)分子Iの変調指標のスコアは、(−9.2、−10、−10、−6.2、−4.5)として割り当てられる場合がある。同様に、別の分子IIについて、等位にあるスコアは、(−9.2、−10、−10、−10、−6.2、−4.5)である。したがって、分子Iと分子IIとの間でスコアを比較することにより、両方の分子が調べられた2種類の細胞株で類似する作用モードが共通する可能性があり、EGFR阻害剤として作用する(米国特許出願第12/623,693号明細書、Fang、Y.ら、“Methods for Characterizing Molecules、”2009年11月23日出願と、米国特許出願第12/623,708号明細書、Fang、Y.ら、“Methods of creating an index、” 2009年11月23日出願とを参照せよ。)
116.溶媒和物
本明細書の化合物と、これらの薬学的に許容可能な塩とは、完全にアモルファスな状態から完全な結晶状態までの範囲の連続した固相状態で存在する場合がある。これらは、非溶媒和及び溶媒和形状でも存在する場合がある。「溶媒和」という用語は、前記化合物と、1種類または2種類以上の薬学的に許容可能な溶媒分子(例えば、エタノール)とを含む分子複合体を説明する。「水和物」という用語は、溶媒が水の溶媒和物である。薬学的に許容可能な溶媒は、溶媒が同位元素で置換される場合があるものを含む(例えば、DO、d−アセトン、d−DMSO)。
【0312】
現在受け入れられている有機化合物の溶媒和物及び水和物の分類システムは、隔離部位型、チャンネル型及び金属イオン配位型の溶媒和物及び水和物である。例えば、K. R. Morris (H. G. Brittain編) Polymorphism in Pharmaceutical Solids (1995)を参照せよ。隔離部位型溶媒和物及び水和物は、溶媒(例えば水)分子がが互いに直接接触しないよう有機化合物の介在分子によって隔離される。チャンネル型溶媒和物では、溶媒分子は、他の溶媒分子と隣接する格子チャンネルに存在する。金属イオン配位型溶媒和物では、溶媒分子は金属イオンに結合する。
【0313】
溶媒又は水が緊密に結合するとき、複合体は、湿度とは独立に、明確に定義された化学量論的構成を有するであろう。しかし、チャンネル型溶媒和物及び吸湿性化合物のように溶媒又は水の結合が弱いとき、水又は溶媒の含量は湿度及び乾燥条件に依存するであろう。かかる場合には、非化学量論的構成が当たり前であろう。
【0314】
本明細書の化合物と、これらの薬学的に許容可能な塩とは、該化合物と少なくとも1種類の他のコンポーネントとが化学量論的又は非化学量論的量で存在する、(塩及び溶媒和物を除いて)多成分複合体として存在する場合もある。このタイプの複合体は、包接化合物(薬剤−宿主包接複合体)と、共結晶とを含む。後者は典型的には、非共有結合相互作用を通じて結合されるが、中性分子と水との複合体であってもよい、中性分子構成成分の結晶複合体として定義される。共結晶は、溶融結晶化か、溶媒からの再結晶化か、物理的に前記成分を一緒に研磨するかによって調製される場合がある。例えば、O. Almarsson及びM. J. Zaworotko, Chem. Commun., 17:1889−1896 (2004)を参照せよ。多成分複合体の一般的な総説としては、J. K. Haleblian, J. Pharm. Sci. 64(8):1269−88 (1975)を参照せよ。
【0315】
117.安定な(stable)
医薬品組成物に関して用いられるとき、「安定な」又はこれに類する用語は、表明された期間特定の保存条件下で、ある量未満、通常10%未満、の活性成分の損失を意味するものと当業者に理解されるのが一般的である。ある組成物が安定と考えられることが要求される時間は、各製品の使用と関係し、該製品の製造と、品質管理及び検査のための保管と、卸売り業者又は直接顧客への配送と、最終的な使用までの保管との商業的な実用性に左右される。安全をみて数ヶ月含めると、医薬品の最小限の製品寿命は通常1年で、好ましくは18月を超える。本明細書で用いられるところの用語「安定」は、これらの市場の現実と、冷蔵条件2℃ないし8℃のような容易に達成可能な環境条件で製品を保存及び輸送できる能力とを参照する。
【0316】
118.物質(substance)
物質又はこれに類する用語は、いずれかの物理的対象である。材料は物質である。分子、リガンド、マーカー、細胞、タンパク質及びDNAは物質と考えられる場合がある。機械又は品物は物質自体であると考えられるよりもむしろ、物質でできていると考えられるであろう。
【0317】
119.被検者(subject)
本明細書を通じて用いられるところの被検者又はこれに類する用語は、個体を意味する。したがって、「被検者」は、例えば、ネコ、イヌ等の家畜化された動物と、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)と、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット等)と、哺乳類、非ヒト哺乳類、霊長類、非ヒト霊長類、齧歯類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類及び他のいずれかの動物とを含む場合がある。1つの局面では、被検者は霊長類又はヒトのような哺乳類である。被検者は非ヒトの場合がある。
【0318】
120.同調細胞
同調細胞又はこれに類する用語は、マイクロタイタープレートの1つのウェル中の大多数の細胞が同じ状態(例えば、(G又はGのような)同じ細胞周期か、低い基底レベルのプリノソーム複合体を有する細胞状態か)にある、細胞集団をいう。同調細胞又はこれに類する用語は、細胞の周囲の環境か、細胞が増殖する条件かの操作であって、たいていの細胞が、細胞周期の同じステージか、低い基底レベルのプリノソーム複合体のような同じ細胞下編制状態かにある細胞集団がもたらされる操作をも指す。
【0319】
121.テスト分子
テスト分子又はこれに類する用語は、該テスト分子についてのなんらかの情報を得る方法に用いられる分子である。テスト分子は、未知又は既知の分子の場合がある。
【0320】
122.処理(Treating)
処理、処置(treatment)又はこれらに類する用語は、少なくとも2種類のやり方で用いられる場合がある。第1に、処理、処置又はこれらに類する用語は、被検者に対して取られる投与又は動作を指す場合がある。第2に、処理、処置又はこれらに類する用語は、いずれか2種類または3種類以上の物質を一緒にのように、又は、ある分子とある細胞とのように、いずれか2つのものを一緒に混ぜることを指す場合がある。この混ぜることは、前記少なくとも2種類の物質の間の接触が起こるようにこれらの物質を一緒にするであろう。
【0321】
処理、処置又はこれらに類する用語が疾患を有する被検者の文脈で用いられるとき、例えば、治癒か、徴候の低減かを暗示することはない。治療的又はこれに類する用語が、処理、処置又はこれらに類する用語と併用されるとき、原因となる疾患の徴候が低減すること、及び/又は、前記徴候を起こす原因となる細胞的、生理学的又は生化学的原因又はメカニズムが低減することを意味する。この文脈で用いられる低減は、疾患の生理学的状態だけでなく、疾患の分子的状態を含む、疾患の状態と比較する意味であると理解される。
【0322】
123.引き金を引く(Trigger)
引き金又はこれに類する用語は、応答のような事象を開始又は起動する動作を指す。
【0323】
124.TBB
TBBは、4,5,6,7−テトラブロモベンゾトリアゾ−ルである。
【0324】
125.TBBz
TBBzは、4,5,6,7−テトラブロモベンズイミダゾールである。
【0325】
126.治療上有効な量
治療上有効という用語は、使用される組成物の量が、疾患又は疾病の1種類または2種類以上の原因又は徴候を軽減するのに十分な量であることを意味する。かかる軽減は、低減、変化又は減少を必要とするだけであって、必ずしも除去を必要としない。「担体」という用語は、ある化合物又は組成物と組み合わされるとき、保存、投与、送達、有効性、選択性その他いずれかの前記化合物又は組成物の意図される使用又は目的のための特徴を補助又は促進する、化合物、組成物、物質又は構造を意味する。例えば担体は、活性成分のいかなる分解も最小限とすること、及び、被検者でのいかなる不都合な副作用も最小限とすることのために選択される場合がある。
【0326】
127.治療上の薬効
治療上の薬効は、被検者の処置からの結果の程度又は範囲を指す。
【0327】
128.毒性マーカー
毒性マーカーは、例えば生物、細胞、組織又は器官でのある物質の毒性のレベルを同定、診断又は予知するために用いられる場合がある、いずれかの試薬、分子、物質等である。
【0328】
129.数値(Values)
コンポーネント、成分、添加物、細胞タイプ、マーカー及びこれらに類する局面と、これらの範囲とについて開示される具体的又は好ましい数値は、例示のためだけである。これらの数値は、他の明示された数値や明示された範囲内の他の数値を排除するものではない。本開示の組成物、装置及び方法は、本明細書に説明される数値と、具体的な数値と、より具体的な数値と、好ましい数値のうち、いずれかの数値又はいずれかの組合せを有するものを含む。
【0329】
したがって、開示された方法、組成物、品物及び機械は、本明細書に説明されるさまざまなステップ、分子、組成物その他これらに類するものを、含むか、からなるか、から実質的になるやり方で組み合わされる場合がある。例えば、これらは、本明細書で定義されるとおりのリガンドを含む分子を特徴づけるための方法か、本明細書で定義されるとおりの指標を作成する方法か、本明細書で定義されるとおりの薬剤送達の方法かにおいて使用される場合がある。
【0330】
130.ウイルス感染
ウイルス感染は、ウイルスから起こるいずれかの感染である。例えば、ウイルス感染は、ヘルペスウイルス又はサイトメガロウイルスで起こる場合がある。
【0331】
131.未知分子
未知分子又はこれに類する用語は、既知又は未知の化学構造を有し、未知の生物学的/薬理学的/生理学的/病理生理学的活性を有する分子である。
【0332】
D.文献
国際公開第2006108183 A2号パンフレット、Fang, Y., Ferrie, A.M., Fontaine, N.M., Yuen, P.K. and Lahiri, J. “Optical biosensors and cells(光学的バイオセンサー及び細胞)”
An, S.ら、Reversible compartmentalization of de novo purine biosynthetic complexes in living cells. Science 2008, 320: 103−106
【実施例】
【0333】
E.実施例
1.実験の手順
i.材料
エピネフリン、クロニジン、ピナシジル、ドーパミン、アセチルコリン、サイトカラシンB、U−73122、ファロイジン、ビンブラスチン、ノコダゾール、TBB(4,5,6,7−テトラブロモベンゾトリアゾール)、DMAT(2−ジメチルアミノ−4,5,6,7−テトラブロモ−1H−ベンズイミダゾール)、TBBz(4,5,6,7−テトラブロモベンズイミダゾール)、DRB(5,6−ジクロロベンズイミダゾール1−β−D−リボフラノシド)、TBCA(テトラブロモ桂皮酸)、アザセリン又はヒポキサンチンは、Sigma Chemical Co.(ミズーリ州、セントルイス)から入手された。Epic(登録商標)384穴バイオセンサーマイクロプレートはCorning Inc.社(ニューヨーク州、Corning)から入手された。スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)、リゾホスファチジン酸(LPA)、ACEA、テルブタリン及びオキシメタゾリンは、Tcris(ミズーリ州、セントルイス)から入手された。
【0334】
ii.細胞培養
HeLa細胞は、American Type Culture Collection(バージニア州、Manassas)から入手された。この子宮頸部癌細胞株は、標準的な血清培地(10%ウシ胎仔血清(FBS)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシンが添加された最少必須培地(MEM、Invitrogen))で維持された。プリン欠乏がプリノソーム形成及び解離に及ぼす影響を調べるために、HeLa細胞が細胞アッセイ前少なくとも2回の継代の間「プリン欠乏培地」で維持された。前記プリン欠乏培地は、透析された5%PBSが添加されたロズウェルパーク記念研究所1640(RPMI1640)からなる培地である。FBSはプリンを除去するために25dDaMWCOの透析膜を使って約2日間4℃で0.9%NaClに対して透析された。このプロセスはFBSに通常存在するプリンを完全に除去する。
【0335】
他の全ての細胞株は、American Type Culture Collection(バージニア州、Manassas)から入手され、供給者により推奨されるプロトコールにしたがって対応する標準的な培養条件下で培養された。
【0336】
細胞は、対応する培地50μLに懸濁された継代3ないし15代でバイオセンサーマイクロプレートのウェルあたり約1ないし2×10個を用いて増殖され、約1日間37℃で空気/5%COの下で培養されるのが典型的であった。全ての細胞についてアッセイ時のコンフルエントの程度は約100%であった。
【0337】
iii.光学的バイオセンサーシステム及び細胞アッセイ
Epic(登録商標)波長尋問システム(Corning Inc.社、ニューヨーク州、Corning)が全細胞感知に使用された。本システムは、温度制御ユニットと、光学的検出ユニットと、搭載ロボット液体処理ユニットとからなる。前記検出ユニットは集積光ファイバー光学系を中心とし、約15秒の時間感覚で細胞応答の反応速度論的測定が実施可能である。化合物溶液は前記搭載液体処理ユニットを用いることにより(すなわちピペット操作)導入された。
【0338】
RWGバイオセンサーは、センサー表面近傍の局所的な屈折率の微妙な変化を検出できる。細胞内の局所的な屈折率は、密度と、その生体質量(biomass、例えば、タンパク質、分子複合体)の分配との関数であるため、前記バイオセンサーはそのエバネッセント波を天然のままの細胞内でのリガンドで誘発される動的質量再分配を非侵襲的に検出するために利用する。前記エバネッセント波は細胞内に延び、距離とともに指数的に減衰して、特徴的な感知体積である約150nmに導き、レセプター活性化を通じて媒介されるいかなる光学的応答でも前記エバネッセント波がサンプリングする細胞の部分にわたる平均だけしか代表しないことを意味する。レセプター活性化の下流の多くの細胞の事象の集積が、リガンドで誘発されるDMRの化学反応論及び振幅を決定する。
【0339】
バイオセンサー細胞アッセイのためには、化合物溶液は、保存濃縮溶液をHBSS(20mMHepes、pH7.1を添加した1×ハンクス平衡塩溶液)で希釈することにより作成され、化合物ソースプレートを調製するために、384穴ポリプロピレン化合物保存プレートに移された。2段階アッセイが実行されるときには、2枚の化合物ソースプレートが別々に作成された。平行して、細胞は2回HBSSで洗浄され、細胞アッセイプレートを調製するために30μLのHBSS中で維持された。前記細胞アッセイプレートと、前記化合物ソースプレートとは読み取り機システムのホテル(プレート用インキュベーター)内でインキュベーションされた。インキュベーション後、前記細胞アッセイマイクロプレートの全てのバイオセンサーの基線波長が記録され、ゼロに正規化された。その後、2ないし10分間の連続記録が基線を確立して前記細胞が定常状態に達することを担保するために実行された。それから10μLの化合物溶液が前記搭載液体処理ユニットを用いて、細胞応答の引き金が引かれた。
【0340】
全ての研究は、制御された温度(28℃)で実行された。それぞれが少なくとも3回のレプリケートを有する、独立な少なくとも2組の実験が実行された。アッセイの変動係数は10%未満であった。
【0341】
2.実施例1:CK2阻害剤が引き金となるHeLa細胞の応答に対する細胞同調の影響
de novoプリン生合成経路は、DNA及びRNA合成の構成ブロックとなり、化学反応及び酸化還元反応におけるエネルギーを提供し、調節経路でのシグナル伝達分子として作用するプリンを生産する。de novoプリン経路は、ホスホリボシルピロリン酸をイノシン1リン酸に変換するのに役立つ段階ごとの10個の反応からなる。一般的に、原核生物は、遊離の単一機能酵素を化学的変換に用いる傾向があるが、高等真核生物では、この経路の多機能酵素に依存する。共焦点蛍光画像化技術及びトランスフェクション技術を用いて、Benkovic及び彼の同僚たち(非特許文献1)は、これらの酵素の全てが多酵素の枠組みで働き、プリノソーム複合体を形成することを見つけた。かかるプリノソーム複合体は、細胞の状態に依存して動的かつ可逆的でである。ラベルフリー光学的バイオセンサーは質量再分配に感受性があるため、プリノソーム形成及び解体は、Epic(登録商標)システムのようなバイオセンサーを用いて直接的に監視できるかもしれない。また、CK2はプリン合成経路で重要な役割を果たすかもしれないため、CK2阻害剤はプリノソーム形成及び解体の動態を検出するのに有用な場合がある。
【0342】
プリノソーム複合体は動的で、細胞のステータスに感受性があるため、細胞同調の影響がまず調べられた。ラベルフリー細胞アッセイのプロトコールは、Benkovic及び彼の同僚たち(非特許文献1)によって用いられたプロトコールに基づいて改変された。第1に、Benkovicらによって用いられた改変HeLa細胞のかわりに天然のままのHeLa細胞が用いられた。第2に、コンフルエントの程度が低い細胞のかわりに高度にコンフルエントな状態の単層細胞が用いられた。第3に、生細胞の蛍光クラスターを監視するかわりに、統合DMRシグナルがEpic(登録商標)システムを使って記録された。第4に、プリン欠乏培地のかわりに、普通の血清添加培地が使われた。結果は、いったん普通の血清添加培地で培養されると、HeLa細胞は高度にコンフルエントな状態に達して、ウェルあたり10000個の播種開始細胞密度のとき(図2B、C)、Epic(登録商標)バイオセンサーマイクロプレート表面で単層を形成した。播種開始細胞密度が比較的低いとき(例えば、ウェルあたり5000個)、細胞は1日間の約70%コンフルエントな状態に培養1日後に達した(図2A)。
【0343】
TBB及びDMATという2種類の既知のCK2阻害剤は普通の血清添加培地を用いて2種類の異なる播種密度で培養されたHeLa細胞において検出可能なDMRシグナルの引き金を引いた。しかし、TBBのDMRシグナルが細胞ステータスに劇的に感受性がある(図2D)に対し、DMATのDMRシグナルは細胞ステータスに感受性がないようにみえる(図2E)。これらの結果は、刺激を受けない細胞では、細胞ステータス依存性のある程度の基線プリノソーム複合体が存在することを示す。高い播種密度を用いて得られる休止細胞と比較して、低い播種密度を用いて得られる増殖細胞では基線プリノソーム複合体がより少ない。その結果、TBB及びDMATの両方が増殖細胞におけるプリノソーム形成を促進する。しかし、高い播種密度を用いて得られる休止細胞では、TBBは基線プリノソーム複合体の解体を起こすが、DMATはプリノソーム複合体形成をさらに促進する。プリン結合がプリノソーム形成に必要であると文献(非特許文献1)に報告されたため、この結果は予想外である。
【0344】
可能なメカニズムを区別するために、HeLa細胞はBenkovic及び彼の同僚の報告に用いられたプロトコールと同様のプロトコールを用いて調製された、すなわち、HeLa細胞は所望の程度にコンフルエントな状態に達するまでプリン欠乏培地を使って培養された。結果は、TBB及びDMATの両方が類似した陽性DMR(P−DMR)シグナルをもたらすことを示し、細胞が高度にコンフルエントな状態のとき、プリン欠乏培養条件下では、両方のCK2阻害剤がプリノソーム複合体形成を促進したことを示した。最も興味深いことには、両方のCK2阻害剤で誘発されたDMRシグナルが、細胞のコンフルエントな状態に感受性がないが、播種細胞数が低いとき、著しいアッセイのばらつきを示した。
【0345】
プリン合成に関与する蛍光酵素の一過性トランスフェクションを用いる研究は、TBBがプリノソーム複合体の解体の引き金を引く一方、細胞が低いコンフルエント状態(約50%)のとき、これらのプリン欠乏培地で培養された細胞内でDMATがプリノソーム複合体の形成をもたらすことを示した(データは示されない)。蛍光画像化アッセイとラベルフリー細胞アッセイとの間でTBBの作用が一貫しないことは、両方のアッセイで用いられるコンフルエントの程度が異なるためとともに、共焦点蛍光画像化法はおもに単細胞に基づくのに対し、ラベルフリーアッセイはおもに集団の細胞に基づくためであるかもしれない。
【0346】
3.実施例2:CK2阻害剤で誘発されるHeLa細胞中のDMRシグナルは動的かつ可逆的である
普通の血清添加培地の下で高い播種開始時細胞数の細胞を用いて得られたHeLa細胞は、前記2種類のCK2阻害剤に異なる応答を示し、両方の阻害剤とも同調されたHeLa細胞においてロバストなDMRシグナルをもたらしたため、DMRシグナルの動態が調べられた。結果は図4に要約された。ここで細胞はアッセイビヒクル(すなわちバッファー)のみで前処理され、そのつぎに、順番にTBB及びDMARで処理された。各ステップは約1時間続いた。結果は、HeLa細胞がまずTBBに対してN−DMRシグナルで応答し、TBBでの細胞の前処理は、DMATの反応論を変化させなかったが、DMAT応答を少し強化した(図4A)。しかし、HeLa細胞がますDMATで刺激されるとき、P−DMRシグナルで応答し、DMATで処理された細胞は、バッファーで処理された細胞と同様に、さらにTBBに対してN−DMRで応答した(図4B)。これらの結果は、両方のCK2阻害剤がHeLa細胞で動的かつ可逆的なDMRシグナルの引き金を引くが、前記2種類の阻害剤は異なる作用モードを示すことを示す。
【0347】
詳細な薬理学的研究は、両方の阻害剤が引き金を引くDMRシグナルは飽和可能であることを示す(図5及び図6)。DMATは前記同調細胞で用量依存性で飽和可能なP−DMR応答という結果となり、DMAT刺激後の時点に依存して、約5ないし22μMのEC50をもたらした(図5)。同様に、アピゲニン、DRB及びTBCAという3種類の他のCK2阻害剤はDMATと類似するDMRシグナルをもたらした(図7)。これに対し、TBBも用量依存性で飽和可能なDMRシグナルをもたらしたが、方向が逆(すなわち、N−DMR)で、EC50は25μMであった(図6)。さらに、TBCA又はDRBで前処理された細胞は、逐次的なDMAT刺激に対し脱感作されるが、TBB応答をほんの少し強化しただけであった(データは示されない)。一緒にするとこれらの結果は、ラベルフリーバイオセンサー細胞アミノ酸生が生細胞内のCK2活性を検出することが可能で、CK2阻害剤を、プリノソーム促進型CK2阻害剤(例えば、DMAT、アピゲニン、DRB及びTBCA)と、プリノソーム破壊型CK2阻害剤(例えばTBB)という2つのタイプに分類できることを示す。
【0348】
4.実施例3:CK2阻害剤で誘発されるDMRシグナルの動態は微小繊維の再構成に感受性がある
実施例には、CK2阻害剤で誘発されるDMRシグナルが動的であること、及び、プリノソーム促進型CK2阻害剤が引き金を引くDMRは、プリノソーム破壊型CK2阻害剤での逐次的な刺激によって逆転し、逆もまた同様であることを示した。したがって、TBB及びDMATのDMRシグナルの動態は、CK2阻害剤で調節されるプリノソームのプロセスとリンクする、細胞プロセス及びシグナル伝達経路を研究するための指示剤として使用できる。微小繊維は細胞のシグナル伝達及び機能に中心的な重要性があるため、異なる微小繊維の変調剤の影響が研究された。結果は図8及び図9に要約される。
【0349】
図8Aに示されるとおり、アクチン破壊剤ラトランキュリンAは、TBB応答の初期DMR事象を完全に阻害することによって、TBB応答を変化させる。バッファー−TBB処理細胞と比較すると、ラトランキュリンA−TBB処理細胞は、逐次的なDMAT刺激に対してより小さなDMAT応答で反応した。同様にラトランキュリンA前処理は、先のDMAT応答を低減させ、逐次的なTBB応答も変化させた(図8C)。これに対し、アクチン重合促進剤ファロイジンは、逐次的な順序に関わらず、TBB又はDMATのいずれの応答の動態及び反応論にもほとんど影響がなかった(図8B及びD)。あわせると、これらの結果は、アクチン再構成はプリノソーム複合体の形成及び解体の両方に必要であることを示す。
【0350】
図9に示すとおり、微小管変調剤は両方の阻害剤で誘発されるDMRシグナルの動態に影響を与える。微小管破壊剤のビンブラスチン及びノコダゾールの両方がTBB応答を逆転し、逐次的なDMAT応答の抑制を起こした(図9A)。動態が逆の逐次的順序(TBB−DMATのかわりに、順序はDMATが先で、つぎにTBB)で監視されるとき、同様の影響がビンブラスチンについて観察された(図9B)。しかし、ノコダゾールはDMAT応答を強化したが、逐次的なTBB応答は少し抑制しただけであった。あわせると、微小管構造を前記2種類の薬剤が変化させるメカニズムには違いがあり、微小管再構成はCK2阻害剤で誘発されるDMRシグナルに関与する。
【0351】
5.実施例4:CK2阻害剤で誘発されるDMRシグナルは内在性Gi共役型レセプターの活性化に感受性がある。
【0352】
GPCRシグナル伝達とCK2で誘発される調節されたプリノソーム動態との間の連関が調べられた。まず、内在性GPCRsの発現が逆転写−定量PCR法を用いて調べられる。結果は、HeLa細胞が内在的に、アルファ2Aアドレナリンレセプター、ベータ2−アドレナリンレセプター、S1P1、S1P2及びS1P4レセプター、CB1レセプター及びLPA1、LPA2及びLPA5レセプターを発現することを示した(データは示されない)。
【0353】
予想されるとおり、Gi共役アルファ2Aアドレナリンレセプターアゴニストのオキシメタゾリンは、HeLa細胞でのGi様DMRシグナルをもたらした(図10A)。オキシメタゾリン処理細胞は、それぞれDMAT及びTBBの逐次的刺激に応答した(図10B及びC)。オキシメタゾリン前処理は、DMAT応答を低減した(図10B)。オキシメタゾリン−DMAT処理細胞は、TBB応答の強化を起こした(図10C)。同様の結果は、それぞれLPA、ACEA及びS1Pという3種類の他のGi共役型レセプターアゴニストでも観察された(図12AないしC)。アルファ2AアドレナリンレセプターはGi共役型レセプターであるが、LPAレセプター、S1Pレセプター及びCB1レセプターもGi共役型レセプターである。LPAはLPAレセプターの天然アゴニストで、S1PはS1Pレセプターの天然アゴニストであるが、ACEAはCB1選択的アゴニストである。CK2阻害剤で誘発されるDMRシグナルの動態にアルファ2Aアゴニスト(例えば、オキシメタゾリン及びクロニジン)が与える影響は用量依存的である(図12)。
【0354】
これに対し、Gs共役型ベータ2アドレナリンレセプターアゴニストのテルブタリンは、最大応答がオキシメタゾリンの応答よりはるかに小さい、Gs様DMRシグナルの引き金を引いた(図11A)。テルブタリン前処理はDMAT−TBB応答の動態にはほとんど又は全く影響がなかった(図11B及びC)。あわせると、これらの結果は、Gi共役型レセプターの活性化はプリノソーム複合体の形成及び解体プロセスと連関があるが、Gs共役型レセプターは連関がないことを示す。最も可能性が高いメカニズムは、Gs共役型レセプターではなくGi共役型レセプターの活性化が形成されるプリノソーム複合体の増大をもたらすことである。
【0355】
6.実施例5:CK2阻害剤で誘発されるDMRシグナルは調べられた複数の細胞株で普遍的である
de novoプリン合成は全ての細胞で中心的な重要性があるため、プリノソーム動態に関係するCK2阻害剤で誘発されるDMRシグナルが皮膚癌(細胞株A431)、肺癌(細胞株A549)、正常ヒト胚腎臓(細胞株HEK293)、乳癌(細胞株MDA−AB−231)、大腸癌(細胞株HT29)及び前立腺癌(細胞株PC3)を含む癌のパネルにわたって調べられた。結果は、調べられた全ての細胞で、プリノソーム破壊型CK2阻害剤TBBは類似したDMRシグナルをもたらしたが、HT29細胞は例外で、TBBのDMRシグナルは、前のP−DMRと、これに続くN−DMRという2つの相からなる。それにもかかわらず、これらの結果は、CK2阻害剤で調節されるプリノソームの動態が、異なるタイプの細胞を通じて普遍的であることを示す。プリン合成経路阻害剤は抗癌剤の実証された戦略を代表し、プリノソーム形成はde novoプリン合成に重要であるため、プリノソーム破壊型CK2阻害剤は有効なプリン合成経路阻害剤として作用し、それゆえ、抗癌治療の新規なアプローチとなるかもしれない。これらのプリノソーム破壊型CK2阻害剤は、単独で、あるいは、治療の可能性及び薬効を増大するため、他の抗癌剤との併用で、使用される場合がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子をテストする方法であって、
a)インキュベーションされた細胞システムを形成する多酵素複合体を含む細胞システムと前記分子とをインキュベーションするステップ、
b)前記インキュベーションされた細胞システムをラベルフリーバイオセンサーシステムを用いてアッセイするステップ、及び、
c)前記分子が前記多酵素複合体を変調できる能力を測定するステップ、
を含む、分子をテストする方法。
【請求項2】
前記分子を多酵素複合体変調剤として分類するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プリノソーム破壊型CK2阻害剤を投与するステップを含む、被検者における癌を治療する方法。
【請求項4】
プリノソーム破壊型CK2阻害剤を投与するステップを含む、被検者におけるウイルス感染症を治療する方法。
【請求項5】
プリノソーム破壊型CK2阻害剤を投与するステップを含む、被検者における炎症を治療する方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【公表番号】特表2013−520170(P2013−520170A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554010(P2012−554010)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2011/025139
【国際公開番号】WO2011/103224
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】