説明

カソードルミネッセンス検出装置

【課題】従来の水準よりもさらに1桁から2桁以上の超高感度検出可能なカソードルミネッセンス装置を提供する。
【解決手段】(1)電子ビーム照射系、(2)真空容器、(3)真空排気系、(4)試料を保持するためのステージ、(5)試料から放出されたカソードルミネッセンスを集光するための集光光学系、(6)集光された光を分光器へ転送するための光転送系、(7)転送された光を分光するための分光系、(8)分光された光を検出するための検出系、(9)検出された信号を分析するための分析系から構成るカソードルミネッセンス検出装置において、(5)集光光学系を構成する集光ミラーに色収差と球面収差を同時に補正できるカセグレン式光学配置とし、電子ビームを試料に照射しながら、電子ビーム照射領域からのカソードルミネッセンス取得と同時に試料の高倍率の光学顕微鏡像をリアルタイムで取得することを特徴とするカソードルミネッセンス検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体、金属、無機材料、有機材料、生体等のカソードルミネッセンス検出に関し、特に半導体や有機材料の薄膜や表面や界面上の微量な不純物原子や欠陥及び結晶の品質を判定するために不可欠な電子状態を反映する微弱なカソードルミネッセンス信号の検出に好適なカソードルミネッセンス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カソードルミネッセンス(CL)は、物質に電子銃からの電子ビームを照射したときその試料から放出される光で、カソードルミネッセンス分光法は、その光の放出過程が物質の固有の性質を反映する電子状態だけでなく、物質中の欠陥や不純物が作る電子状態に関する豊富な情報を与えることから、物質の非破壊評価手法として強力な手段であり、近年ますますその利用が盛んになってきている。
カソードルミネッセンス(CL)は、試料に電子銃からの電子ビームを照射したとき試料から放出される光で、カソードルミネッセンス検出装置は、主に、(1)電子ビーム照射系、(2)真空容器、(3)真空排気系、(4)試料を保持するためのステージ、(5)試料から放出されたカソードルミネッセンスを集光するための集光光学系、(6)集光された光を分光器へ転送する為の光転送系、(7)転送された光を分光するための分光系、(8)分光された光を検出するための検出系、(9)検出された信号を分析するための分析系から構成され、分光された光の波長に対する光の強度分布であるスペクトルもしくは電子ビームを走引させながらCLを取得することで画像(例えばCLマッピング)として視覚化し分析する装置である。
一般に電子ビーム源には、二次元走査性の良さから市販の電子顕微鏡装置が利用される。このことから必然的に、電子銃からの電子ビーム電流及び加速電圧は、電子顕微鏡装置の性能に依存し限定されることになり、CLの発光点は、典型的に10-14cm-3程度と非常に小さくなり微弱であることが多い。そのため、いかにして微弱な発光を最大限捕らえるかが、カソードルミネッセンス装置の分析能力及び精度を決定する要素の一となる。同時にその集光光学系は、試料から放出された発光を集光し、光転送系へ集光された光を転送する役割も担う。
【0003】
図1に示すように、現在考案されている集光方法はこの4タイプに分類することができる。そのうち図1(1)(2)(4)の3タイプは試料と電子ビーム用の対物レンズ間に設置し、ミラーには電子ビームを通過させる穴を必要とする。一方、電子ビーム軸上にミラーを設置できない場合は、図1(3)の方法がある。いずれの方法も反射系のミラーを採用することで、屈折系レンズで問題となる、紫外線から近赤外線域まで広範囲にわたり色収差が補正できる利点がある。(1)の方法は、特殊な放物面や楕円面を構築することが無く最も簡便な方法であるが、光転送系へ効率よく転送することが困難なため光損失が大きい。この点が改善されたのが(2)(3)(4)の集光ミラーである。これらのミラーの特徴は、ミラーの焦点位置に試料を設置することで、放射点からの光を最も効率良く集光することができる。集光された光は(2)(3)の放物面ミラーは平行光として、(4)の楕円ミラーは第2焦点位置へ焦点を結ぶように集光され光転送系へ転送することができる。特に(4)のミラーは楕円ミラーの第2焦点位置に直接分光器のスリットもしくは光ファイバー端面を設置することで、(2)(3)の放物面ミラーを使用した場合の光転送系で要求される分光器スリットへ入力するための集光レンズが不要となるメリットがある。この結果、(4)の楕円面ミラーを使用した集光光学系によってCCD検出器で50カウント/秒程度のCL信号が検出できるようになっている。
【0004】
また、カセグレン式光学配置そのものは、本出願前周知である。例えば、 下記の要件を備えたカセグレン
型光学 系、(Y01)中央部に光通過孔が形成された凹面鏡、(Y02)前記凹面鏡に対向する凸面を有し、前記光通過孔を通過した光束である孔通過光束の通路に配置された凸レンズ、(Y03)可視光を透過させるが赤外光を反射するように前記凸面に形成された光反射膜、(Y04)前記孔通過光束のうち、前記光反射膜で反射しさらに前記凹面鏡で反射した赤外光を前記凸レンズの前記凸面とは反対側で且つ前記孔通過光束の中心線上の赤外光収束位置に収束させる前記凹面鏡(特許文献1)や光放射手段と、該光放射手段からの光が照射された試料からの反射光の電界強度の時系列信号を検出する検出手段と、
試料を保持する試料保持部と、前記光放射手段側からの光を試料へ導光すると共に前記照射による試料からの反射光を前記検出手段側へ導光する試料部入出射光学 系と、を備えた時系列変換パルス分光計測装置において、前記試料部入出射光学 系は、前記試料の試料面に垂直な光軸に対して180°回転対称な光学 配置を有し、かつ、前記光放射手段側から前記試料部入出射光学 系への入射光束及び前記試料部入出射光学 系から前記検出手段側への出射光束について光学 的整合を有することを特徴とする時系列変換パルス分光計測装置において、前記試料部入出射光学 系は、光路上の前記試料の前後においてカセグレン 型の光学 配置を有する光学 系を含むことを特徴とする時系列変換パルス分光計測装置。(特許文献2)などが知られている。
しかし、カソードルミネッセンス装置において、集光光学系を構成する集光ミラーに色収差と球面収差を同時に補正可能なカセグレン式光学配置を導入すれば、飛躍的な性能向上につながることについては、知られていなかった。
【特許文献1】特開平11−166861
【特許文献2】特開2005−121513
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、以上の測定例は、集光ミラーの工夫により高感度検出を実現しているが、いずれも信号強度で50カウント/秒の領域である。またこれまでの測定は比較的信号の強い計りやすい系により成功しており、50カウント/秒以下の信号しか持たないような系での検出は困難であった。しかし、現在、半導体材料の体積が著しく縮小し高度化してゆく中で極微量の欠陥や不純物の重要性が増し、量子細線デバイスやナノデバイスの半導体分野の要請から、一段と信号強度の弱い多様な物質の単原子層あるいはサブモノレイヤの超薄膜や、ナノメートル領域の物質中に含まれる極微量の欠陥や不純物の信号検出、すなわち50カウント/秒以下のレベルでの測定を可能にすることが本質であり必要不可欠となっている。この検出限界を決定している要因の一つに集光光学系及びその調整方法に課題がある。現在のその調整方法は、集光ミラーをあらかじめxyz軸を持つステージ上に設置し、集光された光を光転送系、そして分光系を介在し検出器によりその光の信号強度が最大になるように行う。この場合、(1)検出限界以下の発光しかない場合、調整ができないこと。(2)微弱光を積算させることで発光の信号を検出することが可能である場合があるが、強度信号を得るのに時間を必要とし、この時、試料からの発光強度が時間に対して変化しないという前提が必要なり、調整に不確実性を含むこと。(3)さらに、現在の光集光学系で使用されている放物面ミラー及び楕円ミラーは、それぞれのミラー焦点位置へ正確に試料位置を調整することで最大の集光効率を獲得することができるが、このことは逆に、焦点位置から試料位置の発光点がわずかでも外れた場合、ほとんど観測できないことを意味する。つまり、集光光学系の集光ミラーの焦点位置を厳密に見つけだし試料位置へ調整することが検出能力と精度へ直接反映されることになる。
本発明の目的は、現在のカソードルミネッセンス装置で使用されている集光光学系の検討により、従来の水準よりもさらに1桁から2桁以上の超高感度検出可能なカソードルミネッセンス装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本目的を達成するために、本発明は、カソードルミネッセンス検出装置の集光光学系を構成する集光ミラーに色収差と球面収差を同時に補正可能なカセグレン式光学配置を導入し、電子ビームを試料に照射しながら、電子ビーム照射領域からのカソードルミネッセンス取得と同時に試料の高倍率の光学顕微鏡像をリアルタイムで取得することを可能にする。これにより、試料と集光ミラーの焦点距離に対する調整は反射対物部で結像される光学顕微鏡像を歪み無くリアルタイム観測することで行い、それにより自動的に集光効率が最大となる集光ミラーの焦点位置へ試料の配置が可能となる。同時に、正確に位置調整された集光光学系は、焦点位置からのカソードルミネッセンスのみを選択的に集光するため、カソードルミネッセンススペクトルやその画像分析する際のバックグラウンドの原因となる迷光及び散乱光などの除去が自動的に行われ、その結果、集光効率だけでなくS/N比が改善され、微弱なカソードルミネッセンス信号に対しても高感度にカソードルミネッセンスを検出する方法となる。
すなわち、本発明は、
(1)電子ビーム照射系、(2)真空容器、(3)真空排気系、(4)試料を保持するためのステージ、(5)試料から放出されたカソードルミネッセンスを集光するための集光光学系、(6)集光された光を分光器へ転送するための光転送系、(7)転送された光を分光するための分光系、(8)分光された光を検出するための検出系、(9)検出された信号を分析するための分析系から構成るカソードルミネッセンス検出装置において、(5)集光光学系を構成する集光ミラーに色収差と球面収差を同時に補正できるカセグレン式光学配置とし、電子ビームを試料に照射しながら、電子ビーム照射領域からのカソードルミネッセンス取得と同時に試料の高倍率の光学顕微鏡像をリアルタイムで取得することを特徴とするカソードルミネッセンス検出装置である。
また、本発明において、(9)検出された信号を分析するための分析系からの信号に基づき、画像として視覚化することができる。
さらに、本発明において、集光ミラーのミラーが、xyzステージと連動して、ミラーの位置を調整することができる。
また、本発明において、反射対物部及びベンダー用ミラー保持部により保持された反射対物部とベンダー用ミラーから構成される集光ミラーが、電子銃と試料の間の電子ビーム軸上に設置することができる。
さらに、本発明において、照明系の光源からの白色光をハーフミラと波長選択ミラーを経由し試料を照明(ケーラー照明)することができる。
さらにまた、本発明においては、本発明の光学系を、カセグレン式光学配置による集光ミラーを備えた反射対物部、ベンダー用ミラー、反射対物部及びベンダー用ミラー保持部、集光ミラー位置調整用xyzステージ、波長選択ミラー、イメージインテンシファイアー付きCCDカメラ、照明系、フォーカス用レンズから構成することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、従来の最高性能のカソードルミネッセンス検出装置で測定可能な最も弱い信号よりもさらに1−2桁以上微弱な信号を検出できる。本発明は、集光光学系を検討し最適化することで著しく高い集光能力と高いS/N比を可能にし、結果的に高感度の検出能力を実現する。また同時に本集光ミラーは光学顕微鏡と同様の働きを同時にもたらすため、電子ビーム照射と画像取得のタイミングを同期もしくはずらすことで観測視野範囲内におけるカソードルミネッセンスの波長分解された時間的、空間的な電子・正孔再結合プロセスの動的振る舞いを観測することができる。このように、本発明によれば、カソードルミネッセンス法の検出限界を超越し他の評価手法を凌駕する、物質の原子・分子レベルでの情報を与え、半導体結晶評価の分野にとどまらず、多様な分野でのカソードルミネッセンス法の応用の可能性を広げることに貢献するものと期待される。すなわち、本発明は、単原子層レベルあるいはサブモノレイヤレベルの半導体、金属、有機物などの超薄膜や、半導体を代表とする物質中の極微量の不純物や欠陥からのカソードルミネッセンススペクトル及び時間・波長分解されたカソードルミネッセンス像による定常的もしくは過渡的な物性評価や電子状態評価に極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図2は、本発明における集光光学系の構成図を示す。本光学系は、カセグレン式光学配置による集光ミラーを備えた反射対物部、ベンダー用ミラー、反射対物部及びベンダー用ミラー保持部、集光ミラー位置調整用xyzステージ、波長選択ミラー、イメージインテンシファイアー付きCCDカメラ、照明系、フォーカス用レンズから構成される。
図3に示すように、反射対物部及びベンダー用ミラー保持部により保持された反射対物部とベンダー用ミラーは、電子銃と試料の間の電子ビーム軸上に設置される。
設置された集光ミラーは、最大集光効率が得られる集光ミラーの焦点位置へ試料が配置されるように距離を調整する必要がある。ここで、ミラー位置を調整するxyzステージは、真空容器の真空を破ることなく、真空容器の外に設置されたマニュピュレータにより操作する。
まず、照明系の光源からの白色光をハーフミラと波長選択ミラーを経由し試料を照明する(ケーラー照明)。ここでは、波長選択ミラーに可視光領域を選択的に反射するミラーを導入する。試料へ入射された白色光は明視野照明され試料表面で反射された光は、反射対物部を構成する中央に穴の開いた放物面の主鏡の反射鏡で受け、そこで反射した光を鏡筒前面にある凸面の副鏡でさらに反射させて主鏡の穴を通し色収差と球面収差が補正される。つまり結像された光は、次にベンダー用ミラーにより90°方向へまげられ、照明光の逆の経路をたどり真空装置の光学窓を通し真空外の環境へ転送される。この時、光学窓にはあらかじめ照明光の入射に対する散乱光の戻りを防ぐために傾斜させる。
【0009】
結像された光は、波長選択ミラー及びハーフミラーを経由しCCDカメラへ入射され、集光ミラーの倍率に応じた試料表面の結像を光学顕微鏡像としてモニター出力することができる。ここで、照明された試料表面の光学顕微鏡画像をモニターしながら、観測視野内全域のパターンが歪み無く確実に転送されるように集光ミラーのxyzステージによって調整する。これにより、集光ミラーと試料に対する焦点位置調整がサブミクロンオーダの精度で位置決めを実現することができ、同時に最大の集光効率を得ることができる。
図4は、反射対物部により結像された光学顕微鏡像を示す。結像倍率は54倍で、観測視野領域は200マイクロメートル×200マイクロメートルである。また、観察分解能は1マイクロメートルである。図4(a)は調整前で、図4(b)は調整後のダイヤモンド薄膜表面のモニター像を示す。図に示すとおり、ジャストフォーカスされた反射対物部によって形成された像はダイヤモンド薄膜表面に形成されたマクロバンチング形態をCCDカメラによって確実に転送されていることがわかる。従って、この状態における観測面上に電子ビームを照射させることによって、発光する試料からの微弱なカソードルミネッセンスは、確実に検出系へ転送することができ、さらに再現性良く定量的なカソードルミネッセンス信号を検出することを可能にする。カソードルミネッセンススペクトルを検出するためには、CCDカメラへ転送されている光を分光系へ転送する必要がある。これは、波長選択ミラーを引き抜き、フォーカス用レンズ方向へ光を直進させることで可能にする。
ジャストフォーカスされた本光集光学系の性能を確認するために、同一装置、同一測定条件のもと集光光学系のみの変更により、現在主流の楕円面ミラーと本集光ミラーとの比較実験を行った。
【0010】
図5は、ダイヤモンド薄膜のバンド端付近のカソードルミネッセンススペクトルを示す。励起に使用した電子ビーム加速電圧とプローブ電流はそれぞれ、13kV, 2µAで、観測温度は80Kである。図5に示すように、両者の光集光学系で235nmにピークを示すフリーエキシトン再結合による強い発光が観察されている。しかし、従来集光光学系では、最大946.2カウント/秒の信号強度の検出限界に対し、本集光光学系では、約5倍の4383.1カウント/秒までに集光効率が上昇している。
図6は、図5の信号強度100カウント/秒以下のスペクトルを示す。図6(a)の従来光集光光学系と比較し、図6(b)の本光集光系で観測したスペクトルは、約5倍の検出信号強度の増加だけでなく、S/N比が一桁改善され、結果的に50倍の集光能力の改善によって良好なスペクトルが得られていることがわかる。これによって、従来光集光光学系では困難であった50カウント/秒以下の微弱な信号に対し高い検出能力を示し、従来の光集光系を使用した場合では知ることができなかった新たな発光ピークの検出に成功している。このような測定は、本発明の光集光方法及びその調整方法によらない限り達成不可能なもので、画期的な結果である。実際、図7に示すとおり、ジャストフォーカスの状態からわずか10マイクロメートル反射対物部を上下にずらしたところ、その検出信号強度は約1/2となり、サブマイクロ及びマイクロメータレベルでの調整の有効性を示す。
図8は、図5で示した235nmのフリーエキシトン再結合発光の空間的な発光イメージを示す。ここでは、波長選択ミラーに235nmの光のみを反射させるミラーを使用する。図では、写真の中心が反射対物部の集光ミラーの中心を示す。電子銃から放出される電子ビームは、照射位置および照射エリアなどを静電偏向器および電子レンズによって制御できるため、光学顕微鏡による観測エリアと電子ビームの照射エリアの組み合わせにより、従来のカソードルミネッセンス装置には無い新たな観測方法の提案も可能にする。具体的には、この観測視野範囲の所望の場所へ電子ビームを照射し、その電子ビーム照射のタイミングと画像取得のタイミングを同期させることで、波長分解されたCL画像のS/N比を向上させることが可能であり、さらにその画像取得タイミングをコントロールすることで、発光プロセスの動的な振る舞いをリアルタイムで視覚化し観測することが可能になる。このように、本発明によれば、従来のカソードルミネッセンス装置では得られない情報を与え、半導体材料評価のみにとどまらず、多様な分野でカソードルミネッセンス法の応用の可能性を大いに広げることに多大の貢献をするものと期待される。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明によれば、従来の高感度カソードルミネッセンス検出装置で測定可能な最も弱いカソードルミネッセンス信号よりもさらに1桁から2桁以上微弱な信号を検出することができる。本発明では、集光光学系の光集光方法とその調整方法を検討することで著しく高い集光能力を実現するものである。信号の検出能力の1桁から2桁以上の向上は、材料の評価結果を左右する決定的な量であり画期的なものとなる。すなわち、本発明は、単原子層レベルあるいはサブモノレイヤレベルの半導体、金属、有機物などの超薄膜や、半導体を代表とする物質中の極微量の不純物や欠陥からのカソードルミネッセンススペクトルや時間・波長分解されたカソードルミネッセンス像による定常的もしくは過渡的な物性評価や電子状態評価に極めて有効であり、カソードルミネッセンス検出装置の価値を高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】カソードルミネッセンス装置で使用されている一般的な集光光学系の集光ミラーを示す。
【図2】本発明で導入されている集光光学系の構成図を示す。
【図3】本集光光学系の集光ミラーを含む反射対物部のカソードルミネッセンス装置内部での配置図を示す。
【図4】集光ミラー調整の為観測された反射対物部から転送された光学顕微鏡像を示す。(a)は調整前で、(b)は調整後に観察したダイヤモンド薄膜表面を示す。
【図5】本集光光学系の性能を客観的に判定するために行った、従来の集光光学系(楕円面ミラー)との比較実験で、測定装置、測定条件をすべて同一にし、ミラーのみを変更している。ここでは、ダイヤモンド薄膜からのフリーエキシトン発光スペクトルを観測した一例を示す。
【図6】図5で示したダイヤモンド薄膜からのフリーエキシトン発光スペクトルの100カウント/秒以下の信号強度におけるスペクトルを示す。(a)は従来の集光光学系で、(b)は本集光光学系で観測した結果を示す。
【図7】本集光光学系の調整方法の有効性を示すために、故意にジャストフォーカスから反射対物部を10マイクロメートル上下させ、観察したダイヤモンド薄膜からのフリーエキシトン発光スペクトルを示す。
【図8】本集光光学系の応用例の一例で、図5で示した235nmのフリーエキシトン再結合発光の空間的な波長分解された発光イメージを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)電子ビーム照射系、(2)真空容器、(3)真空排気系、(4)試料を保持するためのステージ、(5)試料から放出されたカソードルミネッセンスを集光するための集光光学系、(6)集光された光を分光器へ転送するための光転送系、(7)転送された光を分光するための分光系、(8)分光された光を検出するための検出系、(9)検出された信号を分析するための分析系から構成るカソードルミネッセンス検出装置において、(5)集光光学系を構成する集光ミラーに色収差と球面収差を同時に補正できるカセグレン式光学配置とし、電子ビームを試料に照射しながら、電子ビーム照射領域からのカソードルミネッセンス取得と同時に試料の高倍率の光学顕微鏡像をリアルタイムで取得することを特徴とするカソードルミネッセンス検出装置。
【請求項2】
(9)検出された信号を分析するための分析系からの信号に基づき、画像として視覚化する請求項1に記載したカソードルミネッセンス検出装置。
【請求項3】
集光ミラーのミラーが、xyzステージと連動して、ミラーの位置を調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したカソードルミネッセンス検出装置。
【請求項4】
反射対物部及びベンダー用ミラー保持部により保持された反射対物部とベンダー用ミラーから構成される集光ミラーが、電子銃と試料の間の電子ビーム軸上に設置されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載されたカソードルミネッセンス検出装置。

【請求項5】
照明系の光源からの白色光をハーフミラと波長選択ミラーを経由し試料を照明(ケーラー照明)することを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一つに記載されたカソードルミネッセンス検出装置。
【請求項6】
本発明の光学系が、カセグレン式光学配置による集光ミラーを備えた反射対物部、ベンダー用ミラー、反射対物部及びベンダー用ミラー保持部、集光ミラー位置調整用xyzステージ、波長選択ミラー、イメージインテンシファイアー付きCCDカメラ、照明系、フォーカス用レンズから構成される請求項1に記載したカソードルミネッセンス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−71646(P2007−71646A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257972(P2005−257972)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(395006823)株式会社クレステック (12)
【Fターム(参考)】