説明

カソード材料およびその製造方法

リチウム一次電池のカソード材料は、低表面積リチウム化二酸化マンガン、リチウム化二酸化マンガンとCFxの混合物、または両者を含む。本カソード材料によって、高容量、高電圧で低ガス発生量の電池が得られる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カソード材料に関し、特に一次リチウム電池のカソード材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一次リチウム電池は、電源として多くの用途に使用されており、セルコストを上回る高電力、高電圧および高容量が得られる。特にリチウム電池は、測距器、フィルムドライブ、露光器および内蔵フラッシュ装置を含む多くの機能のため、電池電力を使用するオートフォーカスカメラに利用される。デジタルカメラ等のカメラは、フィルムカメラよりも強力で小型の電池が必要となる。安定性を犠牲にせずに、一次リチウム電池の電力向上というこの要求に合わせるため、カソード材料、特に二酸化マンガンカソード材料の改良が進められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明では、前記要求に合致したカソード材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一般に、カソード材料は、不可逆高容量材料と可逆低容量材料とを含む。別の態様では、カソード材料は、低表面積リチウム化二酸化マンガンを含む。可逆低容量材料は、リチウム化二酸化マンガンを含む。不可逆高容量材料は、フッ化炭素を含む。リチウム化二酸化マンガンは、BET法で測定した場合、低比表面積である。
【0005】
別の態様では、一次リチウム電池は、不可逆高容量材料と可逆低容量材料とを含むカソード、リチウムを含むアノードおよびカソードとアノードの間のセパレータを有する。別の実施例では、一次リチウム電池は、低表面積リチウム化二酸化マンガンを含むカソード、リチウムを含むアノード、およびカソードとアノードの間のセパレータを有する。
【0006】
別の実施例では、カソード活物質を製作する方法は、不可逆高容量材料と可逆低容量材料を組み合わせるステップを有する。別の態様では、一次リチウム電池を製作する方法は、リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素を組み合わせるステップを有し、カソード材料が形成される。別の態様では、一次リチウム電池を製作する方法は、低表面積のリチウム化二酸化マンガンを含むカソード材料を形成するステップを有する。
【0007】
可逆低容量材料は、リチウム化二酸化マンガンを含む。不可逆高容量材料は、フッ化炭素を含む。リチウム化二酸化マンガンは、電解二酸化マンガンまたは化学二酸化マンガンである。フッ化炭素は、CFxである。リチウム化二酸化マンガンおよびフッ化炭素は、重量比で1:99から99:1の比率で存在し、5:95から95:5の範囲、25:75から75:25の範囲、または20:80から80:20の範囲にあっても良い。低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が0.5から20.0 m2/gの間であり、または10.0から15.0 m2/gの間である。低表面積リチウム化二酸化マンガンは、気体圧力16PSI以下の気体圧力下で、70℃で100時間、有機溶媒およびリチウム塩を含む電解質と混合することにより形成される。
【0008】
電池は、高ドレイン条件下では、リチウム化二酸化マンガンと不可逆高容量材料の予想容量の合計よりも少なくとも40%大きな容量を有する。電池は、有機溶媒を含む電解質を有する。
【0009】
本発明の方法は、カソード材料を含むカソードを形成するステップを有する。この方法は、ハウジング内にリチウムを含むアノードとともにカソードを組み立てるステップを有する。
【0010】
通常アルカリ電池では、高電力デジタルカメラに必要な出力およびエネルギー密度は得られない。再充電式電池では、しばしば良好に利用できるエネルギー密度が得られるが、これは、高コストで、電荷保持力が低く、電池の充電が煩雑であり、再充電電池は、消費者にとって魅力的ではない。通常リチウム一次電池は、出力がデジタルカメラの要求を満たすが、容量が高く、長寿命のものが望ましい。リチウム化二酸化マンガンおよびCFxを含むカソード材料を有するリチウム電池は、リチウム化二酸化マンガンしか含まないカソード材料の電池に比べて大きな容量を有し、CFxのみを含むカソード材料よりも高電圧が得られる。
【0011】
電池に有機溶媒を含む電解質が設置された場合、通常のリチウム化二酸化マンガンカソード材料は、気体を発生する。気体発生は、電解質内の有機溶媒の二酸化マンガンの高エネルギー表面サイトでの酸化によるものである。長期にわたり気体が大量に発生されると、電池は機能しなくなり、電池の保管寿命は極めて短くなる。気体発生を防止して電池の保管寿命をのばすには、セルの予備放電を行い、セル容量の一部を消費する必要がある。低表面積リチウム化二酸化マンガンは、リチウム電池に設置される他のリチウム化二酸化マンガンに比べて気体発生量が少ない。低表面積リチウム化二酸化マンガンを含む電池は、有意な保管期間を有し、電池の予備放電は不要である。カソード材料は、低表面積リチウム化二酸化マンガンとCFxとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1または2以上の実施例の詳細を添付図面に示す。他の特徴、目的および利点は、以下の説明、図面および特許請求の範囲から明らかであろう。
【0013】
図1では、リチウム一次電池セル10は、負のリード線14に電気接続されたアノード12と、正のリード線18に電気接続されたカソード16と、セパレータ20と、電解質とを有する。アノード12、カソード16、セパレータ20および電解質溶液は、ハウジング22内に収容される。電解質は、溶媒と該溶媒に少なくとも一部が溶解した塩を含む溶液である。ハウジング22の一端は、キャップ24と、環状絶縁ガスケット26とで封止されており、気体および流体に対して気密状態となる。正のリード線18は、カソード16をキャップ24に接続する。キャップ24の内部には、安全バルブ28が設置され、電池10の内圧が所定の値を超えた際には、圧力を減少させる。電気化学セル10は、例えば円筒状セル、ボタン型セルもしくはコイン状セル、硬質積層セルもしくは柔軟性ポーチ型外囲器または袋状セルである。
【0014】
アノード12は、アルカリおよびアルカリ土類金属を含み、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、またはこれらの合金である。アノードは、アルカリまたはアルカリ土類金属と別の金属、例えばアルミニウムとの合金を含む。リチウムを含むアノードは、リチウムまたはリチウム合金またはその組み合わせである。
【0015】
電解質は、非水電解質溶液であり、溶媒と塩を含む。塩は、アルカリまたはアルカリ土類の塩であり、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、またはこれらの組み合わせである。リチウム塩は、例えばLiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiI、LiBr、LiAlCl4、Li(CF3SO3)、LiN(CF3SO2)2およびLiB(C6H4O2)2である。溶媒は、例えば有機溶媒である。有機溶媒の例は、炭酸塩、エーテル、エステル、ニトリルまたはリン酸塩である。炭酸塩の一例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。エーテルの一例は、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタンである。エステルの一例は、メチルプロピネート、エチルプロピネート、メチルブチレートまたはγブチロラクトンである。ニトリルの一例は、アセトニトリルである。リン酸塩の一例は、トリエチルフォスフェートまたはトリメチルフォスフェートである。電解質は、重合体電解質である。電解質中の塩の濃度は、約0.01モルから約3モルまたは約0.5モルから約1.5モルであり、ある実施例では、約1モルである。
【0016】
セパレータ20は、リチウム一次電池または二次電池に使用されるいかなる標準的なセパレータ材料で構成されても良い。例えば、セパレータ20は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリサルフォンおよび/またはポリ塩化ビニルである。セパレータ20は、約12μmから約75μmの厚さであり、より好ましくは25から約37μmの厚さである。
【0017】
セパレータ20は、アノード12およびカソード16と同等の寸法に切断され、図1に示すように両者の間に設置される。さらにアノード12、カソード16およびセパレータ20は、ハウジング22内に設置され、このハウジングは、ニッケルもしくはニッケルメッキ鋼、ステンレス鋼もしくはアルミニウムクラッドステンレス鋼またはポリプロピレン、ポリサルフォン、ABSもしくはポリアミド等のポリ塩化ビニル等のプラスチックで構成される。アノード12、カソード16およびセパレータ20を収容するハウジング22には、電解質溶液が充填され、その後キャップ24および環状絶縁ガスケットで密閉シールされる。
【0018】
カソード16は、カソード活物質を含み、この活物質は、電池10の充電中、アルカリイオンの侵入に耐え得る。またカソードは、例えばPTFE、PVDFまたはバイトンのような重合バインダ等を含む。またカソードは、炭素源として例えば、カーボンブラック、人造グラファイトを含む合成グラファイトもしくは天然グラファイトを含む非合成グラファイト、アセチレン中間相炭素、コークス、グラファイト化炭素ナノファーバーまたはポリアセチレン半導体を含む。
【0019】
リチウム電池のカソード材料は、不可逆高容量材料と可逆低容量材料の両者を含む。可逆低容量材料には、二酸化マンガンが含まれる。可逆放電過程では、放電されるカソード活物質は、電荷形態と密接に関係する。例えば、リチウム化二酸化マンガン(可逆材料)は、リチウムのラムスデライト区画への侵入によって放電し、リチウム化ラムスデライト構造を形成する。一方、熱処理化二酸化マンガン(例えば、不可逆性の非リチウム化二酸化マンガン)の放電は、リチウムのピロルサイトへの侵入を伴い、ピロルサイトの分解によって、別の生成物が生じる。二酸化マンガンは、リチウム化二酸化マンガンである。リチウム化二酸化マンガン材料およびその調製方法は、例えば米国特許第6,190,800号および第6,403,257号に示されており、これらは本願の参照文献として取り入れられている。リチウム化二酸化マンガンは、リチウム塩を含む、例えば水酸化リチウムまたは塩化リチウム、臭化リチウムもしくはヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウムまたは水酸化リチウムと塩化リチウムの混合物等の溶液中でのイオン放電によって得られる。二酸化マンガンのリチウム化は、機械化学的過程で行われる。炭酸リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムまたはリチウムメトキシド等の各種リチウム源が、機械化学的リチウム化に使用される。リチウム化二酸化マンガンは、本願の参照文献として取り入れられている米国特許第4,133,856号に示されているような方法で熱処理される。
【0020】
二酸化マンガンとは異なる物質をリチウム化しても良い。例えばリチウム系またはアルカリ系EMD等の電解二酸化マンガン(EMD)、化学二酸化マンガン(CMD)、二酸化マンガン過硫酸塩(P-CMD)および二酸化マンガンファイバーがリチウム化される。例えば、本願の参照文献として取り入れられている米国特許第5,698,176号、5,863,675号にあるように、リチウム化の前にEMDからナトリウムイオンを除去することが好ましい。
【0021】
比較的低エネルギー密度で反応速度が大きな各種カソード材料を、高容量で低反応速度の例えばCFxのような材料とともに使用しても良い。そのような材料の一つには、従来のCDMO(Li0.3MnO2)のような再充電二酸化マンガンがある。例えば、リュー(Liu. P)らのジャーナルオブマテリアルズサイエンスアンドテクノロジー(Journal of Materials Science & Tech.)、9巻、p157-160(1993)、およびノーマ(Nohma. T)らのジャーナルオブパワーソース(Journal of Power Sources)、32巻、p373-379(1990)を参照のこと。別の高反応速度で低容量の二酸化マンガン材料は、米国特許出願第09/988,298号に示されているλMnO2材料、および、本願の参照文献として取り入れられている米国特許第5,277,890号、第5、348,726号、第5,391,365号、第5,482,796号に示されており、p-CMDとして知られるフィラメント状のラムスデライト二酸化マンガンである。α相二酸化マンガン材料に使用される別の材料は、例えば最近のヒル(Hill L.)らのジャーナルオブニューマテリアルズフォアエレクトロケミカルシステムズ(J. New Mat. for Electrochem. Sys.)、5巻、p129-133(2002)、ヒル(Hill L.)らのエレクトロケミカルソリッドステートレター(Electrochem. Solid-State Letters)、4巻、D1-D3(2001)に示されている。
【0022】
二酸化マンガン材料は、粉末X線回折によって評価される。リチウムおよびマンガンの含有量は、誘導型結合プラズマ原子吸光光度法で測定される。酸素の量論(すなわちMnOxのx)は、滴定法で測定される。比表面積は、BET法による窒素の吸収/放出曲線で測定される。
【0023】
ある環境では、ガス化現象として知られるリチウム電池の非水電解質の分解が生じ、二酸化炭素ガスおよび/または水素ガスが放出される。分解は、二酸化マンガン表面の水分によって助長される。ある場合には、発生したガスの存在が安全孔を変形させ、電池が使用できなくなる。ガス化を抑制するため、通常細心の注意を払って、電解質から水分および他の成分が除去される。セルの製造中に、水がカソード粒子表面に吸着する。ドライルームで作業を行っても、電池がシールされるまでにカソードは、最大600ppmの水を含んでしまう。そのような状況では、リチウム化二酸化マンガンセルにおいて、セルに電解質が充填されてから、約10日以内にガス化が生じ安全孔が変形する。ガス化を防止するため、リチウム化二酸化マンガンセルは、本願の参照文献として取り入れられている米国特許第4,328,288号に示されている方法で予備放電される。放電過程は、表面水を酸化リチウムおよび水素ガスに変換し、これにより二酸化マンガンの触媒表面が不活性化される。予備放電は、約5%のセル容量を占め、製造に必要な時間が長くなる。
【0024】
二酸化マンガン材料に起因する水分は、VA21改良水分蒸発器を備える三菱CA100水分分析器によって測定することができる。バルナント社の型番0689-0010制御器等の蒸発器用の温度制御器は、複数の昇温ステップとソーキングステップとを有する。表面水は110℃で測定する。構造水(格子水とも呼ばれる)は、約110℃以上の温度で蒸発する水分として測定される。構造水を測定するため、試料を予めアルゴンを流した水分分析器内において110℃で約2時間乾燥させる。水分は、アリゾナインダストリー社のコンピュータラック3000を用いて測定しても良い。
【0025】
二酸化マンガン材料によって形成されるガスは、例えば材料を設置した2/3Aセル内またはセル外において測定される。ガス発生は、圧力変換器と気密ステンレス鋼冶具を用い、定容積下で測定され、あるいは熱遮蔽アルミナイズ膜を用いて定圧化で測定される。セル外試験では、二酸化マンガン材料は、単独でまたはグラファイトおよびバインダ等の他のカソード材料と組み合わせて測定される。完成セルを用いて熱サイクルリーク評価を行っても良く、この場合、セルは、炉内で昇温と降温の繰り返し履歴を受ける。炉は、7時間、−40℃にされた後、1時間で70℃に昇温され、その温度で15時間保持され、その後1時間で−40℃に戻される。所定の間隔でセル質量が測定され、リークしたガス量が測定される。2/3Aセルの場合、5日間の熱サイクル後に6mg以下の重量減少、10日間の熱サイクル後に10mg以下の重量減少が得られれば、熱サイクル性が良好であると判断される。
【0026】
リチウム化二酸化マンガンセルに使用される通常の二酸化マンガン材料は、BET法で測定した場合、高比表面積を有する。リチウム化二酸化マンガン電池に関する技術文献から、良好な高出力特性を得るには、高比表面積の二酸化マンガンが必要である。特に、リチウム化二酸化マンガンセルに使用される高比表面積二酸化マンガンは、比表面積が40から80 m2/gの範囲にある。これに対して、アルカリ電池に使用される二酸化マンガンは、通常比表面積は25から35m2/gの範囲である。例えば、本願の参照文献として取り入れられている、イルチブ(N. Iltchev)らのジャーナルオブパワーソース(J. Power Sources)、35巻、p175(1991);ジャーナルオブパワーソース、25巻、p167(1989);ジャーナルオブパワーソース、25巻、p177(1989);プログレスインバッテリーアンドソーラーセル(Progress in Batteries and Solar Cells)、10巻、p232(1991);米国特許第5,156,933号を参照。
【0027】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、4.0 m2/g以下の比表面積、例えば0.50から35.0 m2/gの間の比表面積、0.50から20.0 m2/gの間の比表面積または10.0から15.0 m2/gの間の比表面積を有する。リチウム電池のカソード材料は、低表面積リチウム化二酸化マンガンを含む。低表面積リチウム化二酸化マンガンは、アルカリ系二酸化マンガン等の低表面積の二酸化マンガンをリチウム化することによって調製される。特に、低表面積リチウム化二酸化マンガンの比表面積は、40.0 m2/g以下であり、例えば0.50から35.0 m2/g、0.50から20.0 m2/gまたは10.0から15.0m2/gの間である。驚くべきことに、低表面積リチウム化二酸化マンガンを含むカソード材料からのガス発生は、従来のリチウム化二酸化マンガンカソード材料に比べて十分に少なく、良好な高出力特性が得られる。低表面積リチウム化二酸化マンガンを含むリチウム一次セルは、製造時に予備放電の必要がない。
【0028】
不可逆高容量材料は、フッ化炭素であっても良い。フッ化炭素は、モノフッ化炭素、モノフッ化ポリカーボン、フッ化グラファイトまたはCFxを含み、経験式(CFx)nの固体構造非化学量論的フッ化炭素であり、0<x<1.25である。CFxの一例は、アドバンストリサーチケミカル社(オクラホマ州、カットーサ)の1000 CFxである。塩素含有CFxCly、x=0.9〜1.0、y=0.01〜0.05、もまたアドバンストリサーチケミカル社から入手できる。フッ化炭素がCFxの場合、カソードは、熱処理型EMDよりも高重量容量および高体積容量を有する。フッ化炭素の平均電圧は、熱処理型EMDカソード材料よりも低い。
【0029】
カソード材料は、高エネルギー密度および高放電電圧を提供する。例えば、カソード材料は、二酸化マンガンとCFx等のフッ化炭素の両方を含む。二酸化マンガンは、例えばEMDまたはリチウム化二酸化マンガンもしくは低表面積リチウム化二酸化マンガンであることが好ましい。ある環境では、カソード材料は、高放電速度の材料との間で相乗効果を示し、体積容量およびエネルギー密度に関して、他のカソードに比べて優れた特性を有する。特に、不可逆材料は、可逆材料に比べて高い開回路電圧を示し、可逆材料は、不可逆材料よりも高い反応速度を示す。放電速度が高いことは、測定される電池のクーロン容量が、電池内の活物質の容量から算出される値よりも低いことを意味する。例えば、本願の参照文献として取り入れられている、セリム(Selim)およびブロ(Bro)の文献(ジャーナルオブエレクトロケミカルソサイエティ、1971)参照。換言すれば、例えばリチウム化二酸化マンガンとCFxを含むカソードの高速度容量は、別個に測定される各材料の容量の合計よりも大きい。カソード材料中のリチウム化二酸化マンガンとCFxの比は変化する。リチウム化二酸化マンガンとCFxの重量比は、99:1から1:99の範囲であり、例えば99:1、95:5、80:20、75:25、60:40、50:50、40:60、25:75、20:80、5:95または1:99である。CFxより多いリチウム化二酸化マンガンを含むカソード材料は、例えば連続放電等の過酷な環境で使用されることが好ましい。リチウム化二酸化マンガンよりも多くのCFxを含むカソード材料は、例えば使用期間に長い休止間隔のあるマイルドな環境で使用されることが好ましい。
【0030】
CFxおよび熱処理型EMDは、いずれも不可逆過程で放電される。放電中、相変化が生じ、放電材料は簡単には再充電されない。一方、リチウム化二酸化マンガンは、初期には可逆還元過程を有する。リチウム化二酸化マンガン−CFx混合物の相乗効果によって、CFx材料の高い電圧のため、リチウム化二酸化マンガンが充電され、CFxの容量とリチウム化二酸化マンガンの最初の放電特性の間に、より良好な関係が構築される。この初期の放電過程は、放電中および放電電圧回復時の両方において生じ、以下の反応が生じる:
放電時:Li0.1MnO2 + Li → Li1.1MnO2
CF + Li → LiF+C
再充電時:CF + Li1.1MnO2 → C+LiF+ Li0.1MnO2
セルは、例えば本願の参照文献として取り入れられている米国特許第6,440,181号に示されているSPECS法によって、放電特性が定められる。カソードの出力は、シグネチャー試験によって定められる。通常、シグネチャー(signature)試験では高電流条件下でセルが放電され、その後負荷が除去され、セルが平衡化される。その後小さな負荷が設置され、セルは、再度所与の条件にされる。放電が完了するまで、この操作が繰り返される。連続シグネチャー試験(CST)では、カソードは、カットオフ電圧が1.8Vになるまで、高ドレイン(2C)で放電される。負荷は、1時間除去される。次にセルは、最初の半分だけ放電され(1C)、再度カットオフ電圧にされる。電流が極めて小さな値になるまで(C/512)、この手順が繰り返される。
【0031】
間欠シグネチャー試験(IST)は、より複雑である。セルは、カットオフ電圧に至るまでの所与の期間、同じ速度で放電される。次にセルは、15分間回復され、その後セルには、同じ負荷が加えられる。セル電圧がカットオフ電圧に達すると、セルは低電流モードに移行する。例えば、セルは15秒間2Cの速度で放電され、次に第2の放電の前に15分間、回復される。CSTでは、最終電流は、極めて低い。容量/速度の関係から、シグネチャー試験の結果が得られる(セリム(R. Selim)およびブロ(P. Bro)のジャーナルオブエレクトロケミカルソサイエティ、1971年参照)。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
EMDサンプルは、デルタ社(南アフリカ)のリチウム系EMD、またはケラーマックギー社(オクラホマ州)のアルカリ系EMDである。熱処理型EMD(HEMD)は、米国特許第4,133,856号の手順で調製した。リチウム化二酸化マンガンのサンプルは、それぞれ各タイプのEMDから調製した。二酸化マンガンサンプルの比表面積は、BET法で測定した。二酸化マンガンの格子水は、三菱CA100水分分析器を用い、110℃以上で放出される水分として測定した。
【0033】
二酸化マンガンのセル外ガス化は、二酸化マンガン4.55gのサンプルと、密閉10ccステンレス鋼容器内の5ccの電解質とを組み合わせて、圧力変換器を用いて測定した。電解質は、0.5Mのリチウムトリフルオロメタンスルホン酸に10%の炭酸エチレン、20%の炭酸プロピレン、70%のジメトキシエチレンを加えたものである。容器は、70℃に保持し、容器内のガス圧力を100時間測定した。表1には、格子水、BET表面積およびガス化試験の結果をまとめて示す。ハロゲン化リチウムのリチウム化によって、二酸化マンガンのBET表面積は低下する。表1に示すように、LiClでは、LiBrよりもこの影響が大きい。ガス化の測定結果のグラフを図2に示す。
【0034】
カソード材料のガス化は、セル内でも測定した。フォイルバッグ試験の間、低表面積のリチウム化二酸化マンガンを含む2/3Aセルは、同じ時間で、通常のリチウム化二酸化マンガンを含むセルの1/2のガスを発生した。熱サイクルリーク試験において、低表面積リチウム化二酸化マンガンを含む2/3Aセルは、通常のリチウム化二酸化マンガンを含むセルよりも良い性能を示した。例えば、低表面積リチウム化二酸化マンガンを含む2/3Aセルは、10日間で約5mgの重量減を示したのに対して、通常のリチウム化二酸化マンガンを含むセルでは、同じ時間で約20mgの重量減少を示した。
【0035】
【表1】

(実施例2)
60%の活物質、30%のグラファイト導電性希釈剤および10%のポリ(テトラフルオロエチレン)バインダからなるカソード混合物を含むリチウムセルを調製した。評価したカソード活物質は、CFx、熱処理型EMD、リチウム化二酸化マンガン(LiMD)、CFxと熱処理型EMDの50:50混合体(重量比)、CFxとリチウム化二酸化マンガンの50:50混合体(重量比)である。CFxは、アドバンスリサーチ化学社(オークランド州、カツーサ)のARC-1000 CFxである。リチウム化二酸化マンガン(LiMD)は、米国特許第6,190,800号に記載の方法で調製した。セルは、電解質(0.5Mリチウムトリフルオロエタンスルフォネートに10%炭酸エチレン、20%炭酸ポリプロピレン、70%のジメトキシエタンを加えたもの)を有する2430-寸法のセルである。セルを連続および断続シグネチャー試験に供した。IST(図3A)およびCST(図3B)の両方の測定とも、CFxとリチウム化二酸化マンガンの混合物を含むセルは、他のカソード活物質を含むセルに比べて、高体積、高放電電流である。
【0036】
リチウム化二酸化マンガンとCFxの混合物は、他の試験材料よりも高容量であった。表2から、放電条件下における二酸化マンガン−CFx混合物を含むセル容量は、各材料単独の容量から予想される値よりも大きくなった。放電速度が大きくなると、相乗効果はより顕著である。
【0037】
【表2】

表3に示すように、二酸化マンガン−CFx混合物は、断続放電条件においても、各材料から予想される容量よりも大きな容量を示している。
【0038】
【表3】

(実施例3)
デジタルカメラでの使用を模擬して、材料特性評価を行った。この試験では、デジタルカメラにおいて行われる、各種電池電源による作動機能を模擬した複雑な一連のパルスを繰り返した。カソード活物質としてCFxを含む電池では、デジタルカメラ機能の一つのサイクルを達成できなかった。カソード材料として、米国特許第4,133,856号による方法で調製しtaHEMD材料では、電池は205サイクル使用できた。LiMDカソード材料を含む電池(米国特許第6,190,800号により調製)は、291サイクル使用できた。LiMDとCFxの混合物(90:10のLiMD:CFx重量比)のカソードは、379サイクルの使用に耐え、80:20のLiMD:CFxのカソードは、441サイクルに使用に耐えた。
【0039】
本願では、多数の実施例を示した。しかしながら、本発明では、各種変更が可能であることに留意する必要がある。すなわち、本発明の他の実施例は、以下の特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】電池の概略図である。
【図2】二酸化マンガン材料の気体発生量とBET表面積の関係を示すグラフである。
【図3A】各カソード材料の体積容量と電流の関係を示すグラフである。
【図3B】各カソード材料の体積容量と電流の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆高容量材料と可逆低容量材料とを有するカソード材料。
【請求項2】
可逆低容量材料は、リチウム化二酸化マンガンを含むことを特徴とする請求項1に記載のカソード材料。
【請求項3】
不可逆高容量材料はフッ化炭素を含むことを特徴とする請求項1に記載のカソード材料。
【請求項4】
不可逆高容量材料は、フッ化炭素を含むことを特徴とする請求項2に記載のカソード材料。
【請求項5】
リチウム化二酸化マンガンおよびフッ化炭素は混合されることを特徴とする請求項4に記載のカソード材料。
【請求項6】
リチウム化二酸化マンガンは、電解二酸化マンガンまたは化学型二酸化マンガンを含むことを特徴とする請求項4に記載のカソード材料。
【請求項7】
フッ化炭素は、CFxであることを特徴とする請求項4に記載のカソード材料。
【請求項8】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素の比は、重量比で1:99から99:1の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載のカソード材料。
【請求項9】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素の比は、重量比で5:95から95:5の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載のカソード材料。
【請求項10】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素の比は、重量比で25:75から75:25の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載のカソード材料。
【請求項11】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素の比は、重量比で20:80から80:20の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載のカソード材料。
【請求項12】
リチウム化二酸化マンガンは、低表面積リチウム化二酸化マンガンを含むことを特徴とする請求項2に記載のカソード材料。
【請求項13】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が0.50から20.0 m2/gの間にあることを特徴とする請求項11に記載のカソード材料。
【請求項14】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が10.0から15.0 m2/gの間にあることを特徴とする請求項11に記載のカソード材料。
【請求項15】
低表面積リチウム化二酸化マンガンを有するカソード材料。
【請求項16】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が0.50から20.0 m2/gの間にあることを特徴とする請求項14に記載のカソード材料。
【請求項17】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が10.0から15.0 m2/gの間にあることを特徴とする請求項14に記載のカソード材料。
【請求項18】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、有機溶媒およびリチウム塩を含む電解質と混合した場合、70℃で100時間後に、16PSI以下の圧力のガスを発生することを特徴とする請求項14に記載のカソード材料。
【請求項19】
不可逆高容量材料および可逆低容量材料を含むカソードと、
リチウムを含むアノードと、
カソードとアノードの間にあるセパレータと、
を有する一次リチウム電池。
【請求項20】
可逆低容量材料は、リチウム化二酸化マンガンを含むことを特徴とする請求項18に記載の電池。
【請求項21】
リチウム化二酸化マンガンは、電解二酸化マンガンまたは化学二酸化マンガンを含むことを特徴とする請求項19に記載の電池。
【請求項22】
当該電池は、高ドレイン条件下で、リチウム化二酸化マンガンと不可逆高容量材料の予想容量の合計より、少なくとも40%以上大きな容量を有することを特徴とする請求項19に記載の電池。
【請求項23】
不可逆高容量材料は、フッ化炭素を含むことを特徴とする請求項18に記載の電池。
【請求項24】
不可逆高容量材料は、フッ化炭素を含むことを特徴とする請求項19に記載の電池。
【請求項25】
リチウム化二酸化マンガンおよびフッ化炭素は、混合されることを特徴とする請求項23に記載の電池。
【請求項26】
フッ化炭素は、CFxであることを特徴とする請求項23に記載の電池。
【請求項27】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素の比は、重量比で1:99から99:1の範囲にあることを特徴とする請求項23に記載の電池。
【請求項28】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素の比は、重量比で5:95から95:5の範囲にあることを特徴とする請求項23に記載の電池。
【請求項29】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素の比は、重量比で25:75から75:25の範囲にあることを特徴とする請求項23に記載の電池。
【請求項30】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素の比は、重量比で20:80.から80:20の範囲にあることを特徴とする請求項23に記載の電池。
【請求項31】
さらに、有機溶媒を含む電解質を有することを特徴とする請求項23に記載の電池。
【請求項32】
リチウム化二酸化マンガンは、低表面積リチウム化二酸化マンガンを含むことを特徴とする請求項23に記載の電池。
【請求項33】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が0.50から20.0 m2/gの間にあることを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項34】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が10.0から15.0 m2/gの間にあることを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項35】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、有機溶媒およびリチウム塩を含む電解質と混合した場合、70℃で100時間後に、16PSI以下の圧力のガスを発生することを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項36】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素の比は、重量比で1:99から99:1の範囲にあることを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項37】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素の比は、重量比で5:95から95:5の範囲にあることを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項38】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素の比は、重量比で25:75から75:25の範囲にあることを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項39】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素の比は、重量比で20:80から80:20の範囲にあることを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項40】
さらに、有機溶媒を含む電解質を有することを特徴とする請求項30に記載の電池。
【請求項41】
低表面積リチウム化二酸化マンガンを含むカソードと、
リチウムを含むアノードと、
カソードとアノードの間にあるセパレータと、
を有する一次リチウム電池。
【請求項42】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が0.50から20.0 m2/gの間にあることを特徴とする請求項38に記載の電池。
【請求項43】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が10.0から15.0 m2/gの間にあることを特徴とする請求項38に記載の電池。
【請求項44】
さらに、有機溶媒を含む電解質を有することを特徴とする請求項38に記載の電池。
【請求項45】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、有機溶媒およびリチウム塩を含む電解質と混合した場合、70℃で100時間後に16PSI以下の圧力のガスを発生することを特徴とする請求項38に記載の電池。
【請求項46】
不可逆高容量材料と可逆低容量材料を混合するステップを有する、カソード活物質を製造する方法。
【請求項47】
可逆低容量材料は、リチウム化二酸化マンガンを含むことを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項48】
不可逆高容量材料は、フッ化炭素を含むことを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項49】
不可逆高容量材料は、フッ化炭素を含むことを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項50】
リチウム化二酸化マンガンとフッ化炭素とを組み合わせて、カソード材料を形成するステップを含む、一次電池を製作する方法。
【請求項51】
フッ化炭素は、CFxであることを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項52】
さらに、カソード材料を含むカソードを形成するステップを有することを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項53】
さらに、ハウジング内で、カソードとリチウムを含むアノードとを組み立てるステップを有することを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項54】
さらに、ハウジング内でカソードと有機溶媒を含む電解質とを組み立てるステップを有することを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項55】
リチウム化二酸化マンガンは、低表面積リチウム化二酸化マンガンを含むことを特徴とする請求項47に記載の方法。
【請求項56】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が0.50から20.0 m2/gの間にあることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項57】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が10.0から15.0 m2/gの間にあることを特徴とする請求項52に記載の方法。
【請求項58】
低表面積リチウム化二酸化マンガンを含むカソード材料を形成するステップを有する、一次電池を製造する方法。
【請求項59】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が0.50から20.0 m2/gの間にあることを特徴とする請求項55に記載の方法。
【請求項60】
低表面積リチウム化二酸化マンガンは、比表面積が10.0から15.0 m2/gの間にあることを特徴とする請求項55に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate


【公表番号】特表2007−503696(P2007−503696A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524750(P2006−524750)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/027081
【国際公開番号】WO2005/022678
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(593093249)ザ ジレット カンパニー (349)
【Fターム(参考)】