説明

カタラーゼ

【課題】保存安定性および反応性に優れた臨床診断用試薬に適用することの可能な、長期保存性に特に優れたカタラーゼを提供する。
【解決手段】従来のウシ肝臓由来のカタラーゼに代替して、微生物に由来する新規なカタラーゼを提供する。40℃、30分処理後の残存活性が95%以上を示し、pH6.2〜8.9の範囲で、25℃、17時間処理を行った後の残存活性が90%以上を示す。アルカリゲネス属の微生物、特にアルカリゲネスAK−2に由来することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物に由来する新規なカタラーゼに関する。具体的には、特に長期保存性に優れたカタラーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
カタラーゼ(EC1.11.1.6)は、1分子あたり4個のプロトヘムを作用基とする四量体のヘム蛋白質で、過酸化水素を分解する下記反応を触媒する。
反応式(1) 2H → 2HO+O
また、カタラーゼは反応式(2)で示されるペルオキシダーゼ型の活性を僅かながら持っている事も知られている。
反応式(2) 2AH+H→ A+2H
【0003】
カタラーゼは動物、植物、微生物の好気的な細胞中に存在し、動物では肝臓・血球・腎臓に多く含まれ、植物では葉緑体に含まれているが、同一個体中でも臓器・組織によって酵素の多様が見られている。微生物由来のカタラーゼとして、例えば、バチラス・ズブチリス(Bacillus subtilis)由来の低温での反応性に優れたカタラーゼ(特許文献1)、サーモマイセス(Thermomyces)属菌由来の熱安定性に優れたカタラーゼ(特許文献2)、バチラス・エスピー(Bacillus sp.)由来の高活性で安定性の優れたカタラーゼ(特許文献3)、アスペルギルス・カーボナリウス(Aspergillus carbonarius)由来の強酸性pHの条件下で安定性の優れたカタラーゼ(特許文献4)、アスペルギルス・テレウス(Aspergilus terreus)、アクレモニウム・アラバメンシス(Acremonium alabamensis)、サーモアスカス・オーランチアカス(Thermoascus aurantiacu)由来の耐熱性で弱アルカリ性に於ける反応性に優れたカタラーゼ(特許文献5)などが挙げられる。また、アルカリゲネス・ドゥレイア(Alkaligenes deleya)、アルカリゲネス・ミクロシラ(Alkaligenes microcilla)由来のカタラーゼ(特許文献6)も知られている。
【0004】
このように、カタラーゼは自然界に非常に広く分布していながら、酵素の安定性・反応性・基質特異性などの性質が給源よって大きく異なり、産業上利用できるものは希少である。特に、臨床診断薬用途を始めとする生化学分野、分析化学の分野では、中性付近の緩衝液、特にグッド・バッファー中に希薄な濃度に溶解したときの安定性に優れること、カタラーゼが本質的に有しているペルオキシダーゼ型活性が極めて低い事が必要であり、従来ウシ肝臓由来のカタラーゼがこのような用途に適した特性を有していため、例えば、中性脂肪測定試薬やクレアチニン測定試薬において妨害物質の消去系の中に使用されて来た。
【0005】
しかしながら、近年、牛海面脳症(BSE)の影響で牛の臓器を原料とする蛋白製剤・酵素製剤の取り扱いに規制が発生し、また、製造においても、牛臓器の安価で安定的な入手が困難になっている。そのような事情から、微生物由来であり、かつ安定性に優れたカタラーゼへのニーズが高まってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−246092号公報
【特許文献2】特開平10−257883号公報
【特許文献3】特開2001−275669号公報
【特許文献4】特開平11−46760号公報
【特許文献5】特開平5−153975号公報
【特許文献6】特表2000−513574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、臨床診断薬用途を始めとする生化学分野、分析化学の分野への利用に優れた特性を有する、微生物由来のカタラーゼを安価に安定的に提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、アルカリゲネス AK−2(Alcaligenes AK−2)、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを用いると、分析試薬の組成中でも安定に活性を保持することができ、しかも、該カタラーゼは高純度な酵素標品を大量に調製できることが判明した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のような構成からなる。
項1.下記の理化学的性質を有することを特徴とするカタラーゼ。
(1)サブユニットのマススペクトル法による分子量が53400のモノマー酵素である。
(2)至適温度が35〜40℃である。
(3)至適pHがpH7.2〜9.0である。
(4)10mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中、40℃、30分処理後の残存活性が95%以上である。
(5)pH6.2〜8.9の範囲で、25℃、17時間処理を行った後の残存活性が90%以上である。
(6)酵素の持っているペルオキシダーゼ活性が、カタラーゼ活性の4×10−8%以下である。
項2.N末端に配列番号1に記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする項1に記載のカタラーゼ。
項3.37℃,8日間の保存により50%以上の残存活性を保持することを特徴とする項1または2に記載のカタラーゼ。
項4.37℃,8日間の保存により70%以上の残存活性を保持することを特徴とする項3に記載のカタラーゼ
項5.37℃,14日間の保存により50%以上の残存活性を保持することを特徴とする項1または2に記載のカタラーゼ。
項6.37℃,14日間の保存により70%以上の残存活性を保持することを特徴とする項5に記載のカタラーゼ
項7.アルカリゲネス(Alcaligenes)属の微生物を起源とする項1〜6のいずれかに記載のカタラーゼ。
項8.アルカリゲネス属の微生物が、アルカリゲネス AK−2(Alcaligenes AK−2;工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号)であることを特徴とする項7に記載のカタラーゼ。
項9.測定対象物質が含まれているか、もしくは測定対象物質が含まれていると考えられる試料を用いて、少なくとも1種の酵素による反応を行った後、発色反応を行うことにより生体内に含まれる物質を比色測定する方法において、項1〜8のいずれかに記載のカタラーゼを用いて測定対象物質以外の物質が発生させる過酸化水素を分解する工程を含むことを特徴とする生体成分の測定方法。
項10.測定対象物質が、クレアチニン、トリグリセリド、無機リン、クレアチン、コレステロールエステル、シアル酸、α−アミラーゼ、GOT、GPT、グアナーゼ、リン脂質よりなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする項9に記載の生体成分の測定方法。
項11.項1〜8のいずれかに記載のカタラーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼおよびペルオキシダーゼ以外の1種以上の酵素、緩衝剤および色原体を少なくとも含有されることを特徴とする生体成分測定用試薬キット。
項12.アルカリゲネス(Alcaligenes)属の微生物を、栄養培地を用いて培養し、カタラーゼ活性を有する蛋白質を採取する工程を含む、項1〜6のいずれかに記載のカタラーゼの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により長期保存性に優れた過酸化水素消去試薬が得られる。液状化試薬が主流である現在、これらのように液状で安定な試薬は非常に有用である。
【0011】
すなわち、本発明によれば、体液中の測定成分を測定するに当たり、
体液中に含まれる妨害物質に、該妨害物質または該妨害物質に由来する物質に作用して過酸化水素を生成する酸化酵素およびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを含む試薬を作用させて、該妨害物質または該妨害物質に由来する物質から生成した過酸化水素を消去した後、
次いで体液中の測定成分に、該測定成分に作用して妨害物質を生成する酵素、該妨害物質または該妨害物質に由来する物質に作用して過酸化水素を生成する酵素、ペルオキシダーゼおよび色原体を含む試薬を作用させて、
体液中の測定成分から妨害物質を生成させ、
該妨害物質または該妨害物質に由来する物質から過酸化水素を生成させ、
該過酸化水素を発色させた後、その発色強度を測定することを特徴とする体液中の測定成分の測定法において、
各分析試薬の組成中で安定に活性を維持することができる。
【0012】
また、本発明は、
体液中に含まれる妨害物質に作用して過酸化水素を生成する酵素または該妨害物質に由来する物質に作用して過酸化水素を生成する酸化酵素およびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを含有する第1試薬、および、
体液中の測定成分に作用して妨害物質を生成する酵素、該妨害物質または該妨害物質に由来する物質に作用して過酸化水素を生成する酵素、ペルオキシダーゼおよび色原体を含有する第2試薬
からなる体液中の測定成分測定試薬で安定に活性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明におけるカタラーゼの温度反応性を示す図である。
【図2】本発明におけるカタラーゼのpH反応性を示す図である。
【図3】本発明におけるカタラーゼの熱安定性(10mM リン酸カリウム緩衝液,pH7.0、30分処理後の残存活性)を示す図である。
【図4】本発明におけるカタラーゼのpH安定性(10mM 緩衝液、25℃、17時間処理後の残存活性)を示す図である。
【図5】本発明における微生物由来カタラーゼと牛肝臓由来カタラーゼ(液状品)との安定性比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のカタラーゼの特性
本発明の製法により得られたカタラーゼ活性を有する蛋白質は、以下のような性質を有することを特徴とする。
(1)マススペクトル法による分子量が53400のモノマー酵素である。
(2)至適温度が35〜40℃である。
(3)至適pHがpH7.2〜9.0である。
(4)10mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中、40℃、30分処理後の残存活性が95%以上である。
(5)pH6.2〜8.9の範囲で、25℃、17時間処理を行った後の残存活性が90%以上である。
(6)酵素の持っているペルオキシダーゼ活性が、カタラーゼ活性の4×10−8%以下である。
【0015】
本発明におけるカタラーゼは、熱安定性に特に優れている。具体的には、37℃,8日間の保存により50%以上の残存活性を保持することが好ましく、70%以上の残存活性を保持することがより好ましい。また、37℃,14日間の保存により50%以上の残存活性を保持することが好ましく、37℃,14日間の保存により70%以上の残存活性を保持することがより好ましい。
【0016】
本発明におけるカタラーゼは、該カタラーゼに有するペルオキシダーゼ活性が、カタラーゼ活性の4×10−8%以下であることを特徴とする。より好ましくは3×10−8%以下、更に好ましくは2×10−8%以下である。
【0017】
さらには、本発明におけるカタラーゼは、Hに対するKm値が約5.5mMであることが好ましい。比活性は、約35,000U/mg−蛋白質以上であることが好ましい。また、N末アミノ酸配列は配列番号1に示されるような、”Thr−Ala−Ile−Ser−Thr−Thr−Gln−Ser−Gly−Ala−”の配列を有することが特に好ましい。
【0018】
本発明のカタラーゼの由来・製造方法
本発明に用いるカタラーゼは、微生物に由来することを特徴とする。微生物の種類は特に限定されるものではないが、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、バチルス(Bacillus)属などが挙げられる。なかでも、アルカリゲネス属の微生物が好ましい。
【0019】
具体的には、例えばアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを培養し、該培養物から精製することにより得られる。このような方法としては、特に限定されるものではないが、例えば特開昭63−207384号公報に記載される方法がある。カタラーゼ生産菌の培養にあたって使用する培地としては、使用菌株が資化しうる炭素源、窒素物、その他必要な栄養素を適量含有するものを、合成培地、天然培地のいずれかであっても使用できる。培養は通常、振とう培養あるいは通気撹拌培養で行い、培養温度は20〜40℃、培養pHは5〜9の範囲で行う。培養期間は1〜5日で生育し、菌体内にカタラーゼが生産蓄積される。
【0020】
本発明に使用するカタラーゼの精製は、例えば以下の様にして行うことができる。菌体からの抽出法として、超音波破砕、ガラスビーズなどを用いる機械的な破砕、フレンチプレス、界面活性剤処理が挙げられる。さらに抽出液については、硫安などの塩析法、塩化マグネシウムや塩化カルシウムなどの金属凝集法、プロタミンやポリエチレンイミンなどの凝集法、さらにはDEAE(ジエチルアミノメチル)−セファロース、CM(カルボキシメチル)−セファロースなどのイオン交換クロマト法などにより精製することができる。このようにして得られたカタラーゼは通常、比活性16kU/A280以上で得ることができる。
【0021】
本発明のカタラーゼの用途
本発明のカタラーゼは、種々の生体内物質を酵素反応により定量する際に有用である。その測定原理としては、特に限定されるものではないが、測定対象物質が含まれているか、もしくは測定対象物質が含まれていると考えられる試料を用いて、少なくとも1種の酵素による反応を行った後、発色反応を行うことにより生体内に含まれる物質を比色測定する方法において、一般的には、測定対象成分以外の生体内成分に由来する過酸化水素をカタラーゼで分解することにより、対象成分の正確な定量を実現するために用いられる。このような原理を用いた、本発明の生体成分測定用試薬キットは、本発明のカタラーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼおよびペルオキシダーゼ以外の1種以上の酵素、緩衝剤および色原体を少なくとも含有する。
このようなカタラーゼの利用法は、いわゆる「消去系」として当技術分野で汎用される方法であり、種々の公知技術が存在する。さらにその具体的な態様を以下に例示する。
【0022】
[トリグリセリドの測定]
本発明のカタラーゼを用いた生体成分の測定方法に関する一実施態様は、体液中のトリグリセリドを測定するに当たり、体液中に含まれるグリセリンにグリセロールキナーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼおよびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを作用させて、グリセリンから生成した過酸化水素を消去した後、次いで体液中のトリグリセリドにリポプロテインリパーゼ、グリセロールキナーゼ、グルセロール−3−リン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を作用させて、トリグリセリドからグリセリンを生成させ、グリセリンからグリセロール−3−リン酸を生成させ、グリセロール−3−リン酸から過酸化水素を生成させ、該過酸化水素を発色させた後、その発色強度を測定することを特徴とする体液中のトリグリセリド測定法である。
【0023】
上記方法に使用する試薬としては、グリセロールキナーゼ、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼおよびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを含む第1試薬およびリポプロテインリパーゼ、グリセロールキナーゼ、グルセロール−3−リン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を含む第2試薬からなる体液中のトリグリセリド測定試薬がある。
【0024】
[クレアチニンの測定]
また、本発明のカタラーゼを用いた生体成分の測定方法に関する別な実施態様は、体液中のクレアチニンを測定するに当たり、体液中に含まれるクレアチンにクレアチンアミジノヒドロラーゼ、ザルコシンオキシダーゼおよびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを作用させて、クレアチンから生成した過酸化水素を消去した後、次いで体液中のクレアチニンにクレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を作用させて、クレアチニンからクレアチンを生成させ、クレアチンからザルコシンを生成させ、ザルコシンから過酸化水素を生成させ、該過酸化水素を発色させた後、その発色強度を測定することを特徴とする体液中のクレアチニンの測定法である。
【0025】
上記方法に使用する試薬としては、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ザルコシンオキシダーゼおよびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを含む第1試薬およびクレアチニンアミジノヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を含む第2試薬からなる体液中のクレアチニンの測定試薬がある。
【0026】
[コレステロールエステルの測定]
さらに、本発明のカタラーゼを用いた生体成分の測定方法に関する一実施態様は、体液中のコレステロールエステルを測定するに当たり、体液中に含まれるコレステロールにコレステロールオキシダーゼ、およびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを作用させて、コレステロールから生成した過酸化水素を消去した後、次いで体液中のコレステロールエステルにリパーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を作用させて、コレステロールエステルからコレステロールを生成させ、コレステロールから過酸化水素を生成させ、該過酸化水素を発色させた後、その発色強度を測定することを特徴とする体液中のコレステロールエステルの測定法である。
【0027】
上記方法に使用する試薬としては、コレステロールにコレステロールオキシダーゼおよびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを含む第1試薬およびリパーゼ、コレステロールオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を含む第2試薬からなる体液中のコレステロールエステルの測定試薬がある。
【0028】
[リン脂質の測定]
本発明のカタラーゼを用いた生体成分の測定方法に関する別な実施態様は、体液中のリン脂質を測定するに当たり、体液中に含まれるコリンにコリンオキシダーゼおよびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを作用させて、コリンから生成した過酸化水素を消去した後、次いで体液中のリン脂質にホスフォリパーゼ D、コリンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を作用させて、リン脂質からコリンを生成させ、コリンから過酸化水素を生成させ、該過酸化水素を発色させた後、その発色強度を測定することを特徴とする体液中のリン脂質の測定法である。
【0029】
上記方法に使用する試薬としては、コリンオキシダーゼおよびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを含む第1試薬およびホスフォリパーゼ D、コリンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を含む第2試薬からなる体液中のリン脂質の測定試薬がある。
【0030】
[無機リンの測定]
また、本発明のカタラーゼを用いた生体成分の測定方法に関する一実施態様は、体液中の無機リンを測定するに当たり、体液中に含まれるヒポキサンチンにキサンチンオキシダーゼおよびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを作用させて、ヒポキンチンから生成した過酸化水素を消去した後、次いで体液中の無機リンにイノシンおよびプリンヌクレオチドフォスフォリラーゼ、キサンチンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を作用させて、無機リンからヒポキサンチンを生成させ、ヒポキサンチンから過酸化水素を生成させ、該過酸化水素を発色させた後、その発色強度を測定することを特徴とする体液中の無機リンの測定法である。
【0031】
上記方法に使用する試薬としては、キサンチンオキシダーゼおよびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを含む第1試薬およびイノシンおよびプリンヌクレオチドフォフォリラーゼ、キサンチンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を含む第2試薬からなる体液中の無機リンの測定試薬がある。
【0032】
[GPT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)の測定]
本発明のカタラーゼを用いた生体成分の測定方法に関する別な実施態様は、体液中のGPTを測定するに当たり、体液中に含まれるピルビン酸にピルビン酸オキシダーゼ、およびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを作用させて、ピルビン酸から生成した過酸化水素を消去した後、次いで体液中のGPTにL−アラニン、α−ケトグルタル酸、ピルビン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を作用させて、GPTからピルビン酸を生成させ、ピルビン酸から過酸化水素を生成させ、該過酸化水素を発色させた後、その発色強度を測定することを特徴とする体液中のGPTの測定法である。
【0033】
上記方法に使用する試薬としては、ピルビン酸オキシダーゼ、およびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを含む第1試薬およびL−アラニン、α−ケトグルタル酸、ピルビン酸オキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を含む第2試薬からなるGPTの測定試薬がある。
【0034】
[αアミラーゼの測定]
本発明のカタラーゼを用いた生体成分の測定方法に関する一実施態様は、体液中のα−アミラーゼを測定するに当たり、体液中のグルコースにグルコースオキシダーゼおよびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを作用させて、グルコースから生成した過酸化水素を消去した後、次いで体液中のα−アミラーゼにアミラーゼ基質、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を作用させて、α−アミラーゼからグルコースを生成させ、グルコースから過酸化水素を生成させ、該過酸化水素を発色させた後、その発色強度を測定することを特徴とする体液中のα−アミラーゼ測定法である。
【0035】
上記方法に使用する試薬としては、グルコースオキシダーゼおよびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを含む第1試薬およびα−アミラーゼ基質、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼおよび色原体を含む第2試薬からなる体液中のα−アミラーゼ測定試薬がある。基質としては、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘプタオースなどのオリゴ糖やそれらの非還元末端修飾オリゴ糖などがある。
【0036】
本発明における試料としては、尿、血清、唾液、膵液などの体液がある。また、分析対象物としては、その試料中に対象物以外の物質に起因して過酸化水素を発生するものを含有するものであれば、何でも適用可能である。例えばクレアチニン、トリグリセリド、無機リンが代表的であるが、他にクレアチン、コレステロールエステル、シアル酸、α−アミラーゼ、GOT、GPT、グアナーゼ、リン脂質などを挙げることができる。
【0037】
本発明に用いる妨害物質に作用して過酸化水素を生成する酵素としては、例えばコレステロールオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼなどがある。
【0038】
本発明において妨害物質に由来する物質とは、妨害物質に酵素または基質および他の物質を作用させて生成する物質であって、該物質は該物質に作用する酵素によって過酸化水素を生成するものである。例えばグリセロール−3−リン酸、ザルコシン、キサンチンなどが挙げられる。
【0039】
本発明において妨害物質に由来する物質に作用して過酸化水素を生成する酵素としては、グリセロール−3−リン酸オキシダーゼ、ザルコシンオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼ、コリンオキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ウリカーゼ、グリセロールオキシダーゼなどがあり、過酸化水素を発生する酸化酵素であれば、いかなる起源のものでも良い。
【0040】
本発明に使用する測定成分に作用して妨害物質を生成する酵素としては、グリロキナーゼ、リパーゼ、リポプロテインリパーゼ、ホスフォリパーゼD、クレアチニンアミドヒドロラーゼ、クレアチンアミジノヒドロラーゼ、プリンヌクレオチドフォスフォリラーゼなどが挙げられる。
【0041】
本発明に使用するペルオキシダーゼとしては、西洋ワサビをはじめとする植物や各種微生物由来のものがある。
【0042】
本発明に使用する色原体としては、過酸化水素により分光学的に吸収の変化を生じさせるものであればいかなるものでもよい。ペルオキシダーゼの存在下、4−アミノアンチピリンとアニリン誘導体、4−アミノアンチピリンとフェノール誘導体、3−メチル−2−ベンゾチアゾリンとアニリン誘導体または4−アミノアンチピリン単独、アニリン誘導体単独、フェノール誘導体単独が考えられる。アニリン誘導体としては、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジエチル−m−トルジン、N,N−ジメチル−m−アニシジン、N−エチル−(3−メチルフェニル)−N’−アセチルエチレンジアミン、N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)−m−トルイジン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホエチル)−m−トルイジン、N−エチル−N−スルホプロピル−m−トルイジン、N−エチル−スルホプロピル−3,5−メトキシアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−アニシジンなどがある。フェノール誘導体としては、フェノール、p−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,4−ジブロモフェノール、2,3,4−トリクロロフェノールなどがある。
【0043】
本発明では、まず、体液中の測定成分を測定するに当たり、体液中に含まれる妨害物質に、該妨害物質に作用して過酸化水素を生成する酵素およびアルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼを作用させて、または該妨害物質から他の物質を誘導し、該物質に作用して過酸化水素を生成する酵素および該カタラーゼを作用させて、該妨害物質または該妨害物質に由来する物質から生成した過酸化水素を消去する。次いで、体液中の測定成分に、該測定成分に作用して妨害物質を生成する酵素、該妨害物質または該妨害物質に由来する物質に作用して過酸化水素を生成する酵素、ペルオキシダーゼおよび色原体を含む試薬を作用させて、体液中の測定成分から妨害物質を生成させ、該妨害物質または該妨害物質に由来する物質から過酸化水素を生成させ、該過酸化水素を発色させた後、その発色強度を測定する。
【0044】
過酸化水素を発色させた後、その発色強度を測定する方法としては、生成したキノン色素の測定に、通常540〜650nmの波長の吸光度測定で行う。測定法としては、エンド法もしくはレート法で行う。
【0045】
本発明の測定試薬は通常、2試薬系から成り、色原体が4−アミノアンチピリンまたは3−メチル−2−ベンゾチアゾリルノンヒドラジン等とアニリン誘導体またはフェノール誘導体から構成されている場合、その内の1種、好ましくはアニリン誘導体またはフェノール誘導体は、必ず第2試薬に含まれなければならないが、他の1種は第1試薬または第2試薬のどちらかに含まれていても良い。
【0046】
本発明において2試薬系の場合には、第1試薬および第2試薬には前記成分に加えてペルオキシダーゼ、緩衝液および必要により測定成分に作用して過酸化水素を生成する酸化酵素、ペルオキシダーゼ以外の酵素、これらの酵素の基質、界面活性剤、安定化剤、各種妨害物質等を含んでいても良い。ペルオキシダーゼは第1、第2試薬どちらに含まれても良いが、好ましくは第1試薬の方が良い。
【0047】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
カタラーゼの活性測定法
実施例中、カタラーゼの活性測定は、寺西らの方法(Agric.Biol.Chem.,38,1213(1974))を改良して以下のようにして行なった。
【0048】
まず、試験管に0.25mlの基質溶液(16mM Hとなるように10mM リン酸緩衝液;pH7.0で希釈したもの)を取り、25℃で約5分間予備加温する。次いで酵素溶液0.25mlを加え反応を開始し、25℃で正確に5分間反応させた後、チタン溶液(1gの酸化チタンと10gの硫酸カリウムを150mlの濃硫酸に溶解し、180〜220℃で2〜3時間加温した後、蒸留水で1.5Lに希釈したもの)2.5mlを加えて反応を停止する。この反応停止液の410nmにおける吸光度を測定する(ΔODtest)。一方、盲検は酵素液の代わりに酵素希釈液(0.1M リン酸カリウム緩衝液;pH7.4)を添加し、上記と同様の方法にて吸光度を測定する(ΔODblank)。ΔODtest及びΔODblankの吸光度の差より分解された過酸化水素量を算出し、カタラーゼ活性を算出した。上記条件で1分間に1マイクロモルの過酸化水素を分解する酵素量を1単位(U)とする。計算式は、以下に示す通りである。
【0049】
【数1】

【0050】
カタラーゼの有するペルオキシダーゼ様活性の測定方法
また、カタラーゼの有するペルオキシダーゼ様活性の測定は、以下の方法により実施した。蒸留水14ml、5% ピロガロール水溶液2ml、0.147M 過酸化水素水1ml及び100mM リン酸緩衝液(pH6.0)を順次混合した後、20℃にて5分間予備温調し、サンプル溶液1mlを加え、酵素反応を開始した。20秒間反応を行った後、2N 硫酸水溶液1mlを加えることにより反応を停止し、生成したプルプロガリンをエーテル15mlにて5回抽出した。抽出液を合わせた後、全量100mlとし、波長420nmにおける吸光度を測定した。一方、盲検は蒸留水14ml、5% ピロガロール水溶液2ml、0.147M 過酸化水素水1ml及び100mM リン酸緩衝液(pH6.0)を順次混合した後、2N 硫酸水溶液1mlを加えて混和し、酵素液次いでサンプル溶液1mlを加えて調製する。この液につき、上記と同様にエーテル抽出を行って吸光度を測定する(ΔODblank)。ΔODtest及びΔODblankの吸光度の差より生成するプルプロガリン量を算出し、ペルオキシダーゼ活性を算出した。上記条件で20秒間に1.0mgのプルプロガリンを生成する酵素量を1プルプロガリン単位(U)とする。計算式は、以下に示す通りである。
【0051】
【数2】

【実施例1】
【0052】
アルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号株からのカタラーゼの精製
アルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号株を、をLB(1% ポリペプトン,0.5% 酵母エキス,1% NaCl;pH7.5)寒天培地にて培養した後、滅菌した50mlの種培地(1.6% ポリペプトン,0.2% 酵母エキス,0.5%,肉エキス,0.22% リン酸1カリウム,0.58% リン酸2カリウム,0.1% 硫酸マグネシウム,4.4% 塩化コリン)に一白金耳を植菌し、30℃で24時間培養をした。次に、この培養液を滅菌した本生産培地(1.6% ポリペプトン,0.2% 酵母エキス,2.5%,肉エキス,0.22% リン酸1カリウム,0.58% リン酸2カリウム,0.1% 硫酸マグネシウム,4.4% 塩化コリン,0.08% アデカノール)に全量植菌して、30℃にて30〜40時間通気・攪拌培養し、カタラーゼ活性の生産量の増加が停止した時点で培養を終了し、遠心分離により菌体を回収した。この時の生産性は約4,000U/ml−bであった。回収された菌体は50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.4)に懸濁し、以後の精製に供した。
【0053】
回収した菌体からの精製は、以下の通りに実施した。上記菌体懸濁液をダイノミル破砕し、遠心分離により上清液を回収した。選られた粗酵素抽出液にポリエチレンイミン溶液を添加して除核酸処理を行ない遠心分離して上清液を回収した。得られた上清液を硫安分画した後、セファデックスG−25(GEヘルスケアバイオサイエンス製)ゲル濾過により脱塩し、DEAEセファロースCL−6B(GEヘルスケアバイオサイエンス製)カラムクロマトグラフィーにより精製し、2回目の硫安分画、2回目のセファデックスG−25(GEヘルスケアバイオサイエンス製)ゲル濾過を実施して、精製酵素標品を得た。該方法により得られたカタラーゼ標品はSDS−PAGE的にほぼ均一なバンドを示し、この時の比活性は約18,000U/A280であった。また、得られたカタラーゼ標品は同一サブユニットから構成される四量体であり、サブユニットの分子量をマススペクトル(MALDI−TOF MS分析)にて測定したところ、53400であった。
【実施例2】
【0054】
実施例1で得られたカタラーゼの酵素特性の取得
先に記載したカタラーゼ活性の測定方法を用いて、実施例1で得られたカタラーゼの至適温度(図1)と、pH反応性(図2)を定法により調べた。
また、実施例1で得られたカタラーゼの熱安定性(図3)は、10mM リン酸カリウム緩衝液,(pH7.0)にて200U/mlに希釈した精製酵素溶液を各温度で30分処理した後に、その残存活性を測定することにより調べた。同様に、pH安定性(図4)は、各pHの10mM緩衝液にて25℃,200U/mlに希釈した精製酵素溶液を17時間処理した後の残存活性を測定することにより調べた。

カタラーゼの至適温度は、上記試験において相対活性が95%以上である温度範囲として定義でき、図1においては少なくとも35〜40℃の範囲であれば至適であると判断できる。
カタラーゼの至適pHは、上記試験において相対活性が95%以上であるpH範囲として定義でき、図2においては少なくともpH7.2〜9.0の範囲であれば至適であると判断できる。
カタラーゼの熱安定性については、10mM リン酸カリウム緩衝液,(pH7.0)にて200U/mlに希釈した精製酵素溶液を各温度で30分処理した後の残存活性が95%以上である温度範囲として定義でき、図3においては、40℃では95%以上であるが45℃では95%を下回るため、少なくとも40℃以下では良好な熱安定性を示すと判断できる。
カタラーゼのpH安定性については、各pHの10mM緩衝液にて25℃,200U/mlに希釈した精製酵素溶液を17時間処理した後の残存活性が90%以上である温度範囲として定義でき、図4においては、測定した各pHにおいて90%以上であるため、少なくともpH6.2〜8.9では良好なpH安定性を示すと判断できる。
【実施例3】
【0055】
実施例1で得られたカタラーゼと牛肝臓由来カタラーゼの保存安定性の比較
アルカリゲネス AK−2、工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号由来のカタラーゼ(以下、CAO−519と示す。)と、従来から常用されてきた牛の肝臓由来のカタラーゼ(東洋紡績製:CAO−509)の液状安定性を37℃保存にて比較した。図5に示すように、牛肝臓由来のカタラーゼは8日間保存において、その残存活性が46%まで低下していたが、CAO−519においては、約80%の活性が維持されており、液状の保存安定性において、明らかな優位性が認められた。さらに、牛肝臓由来のカタラーゼは14日間保存において、その残存活性が39%まで低下していたが、CAO−519においては、約78%の活性が維持されていた。
【0056】
【表1】

【実施例4】
【0057】
実施例1で得られたカタラーゼと牛肝臓由来カタラーゼのペルオキシダーゼ型活性の比較
先に記載したカタラーゼ(CAO)とペルオキシダーゼ(PEO)の活性測定方法を用いて、実施例1で得られたカタラーゼと牛肝臓由来カタラーゼのペルオキシダーゼ様活性の存在比を比較した。表2に示す通り、実施例1で得られたカタラーゼのペルオキシダーゼ様活性は、汎用されてきた牛肝臓由来のカタラーゼと比べて、1/3以下の割合であった。酵素の持っているペルオキシダーゼ活性をカタラーゼ活性で割った値は、牛肝臓由来カタラーゼが4.8×10−10であったのに対し、実施例1で得られたカタラーゼは1.5×10−10であり、4×10−10(4×10−8%)を下回った。本発明におけるカタラーゼは、体外診断薬の検出系で使用されるペルオキシダーゼ本来の反応に対する影響をより低減するものであり、牛肝臓由来のカタラーゼよりも体外診断薬用途に相応しいものであると考えられる。
【0058】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0059】
現在、体外臨床診断薬は、その大半が溶液状態で製品化・流通・保存されており、本発明のカタラーゼは、保存安定性・反応性に優れた体外診断薬を提供するうえで特に有用であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の理化学的性質を有することを特徴とするカタラーゼ。
(1)サブユニットのマススペクトル法による分子量が53400のモノマー酵素である。
(2)至適温度が35〜40℃である。
(3)至適pHがpH7.2〜9.0である。
(4)10mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中、40℃、30分処理後の残存活性が95%以上である。
(5)pH6.2〜8.9の範囲で、25℃、17時間処理を行った後の残存活性が90%以上である。
(6)酵素の持っているペルオキシダーゼ活性が、カタラーゼ活性の4×10−8%以下である。
【請求項2】
N末端に配列番号1に記載のアミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1に記載のカタラーゼ。
【請求項3】
37℃,8日間の保存により50%以上の残存活性を保持することを特徴とする請求項1または2に記載のカタラーゼ。
【請求項4】
37℃,8日間の保存により70%以上の残存活性を保持することを特徴とする請求項3に記載のカタラーゼ
【請求項5】
37℃,14日間の保存により50%以上の残存活性を保持することを特徴とする請求項1または2に記載のカタラーゼ。
【請求項6】
37℃,14日間の保存により70%以上の残存活性を保持することを特徴とする請求項5に記載のカタラーゼ
【請求項7】
アルカリゲネス(Alcaligenes)属の微生物を起源とする請求項1〜6のいずれかに記載のカタラーゼ。
【請求項8】
アルカリゲネス属の微生物が、アルカリゲネス AK−2(Alcaligenes AK−2;工業技術院微生物工業技術研究所寄託番号 第4105号)であることを特徴とする請求項7に記載のカタラーゼ。
【請求項9】
測定対象物質が含まれているか、もしくは測定対象物質が含まれていると考えられる試料を用いて、少なくとも1種の酵素による反応を行った後、発色反応を行うことにより生体内に含まれる物質を比色測定する方法において、請求項1〜8のいずれかに記載のカタラーゼを用いて測定対象物質以外の物質が発生させる過酸化水素を分解する工程を含むことを特徴とする生体成分の測定方法。
【請求項10】
測定対象物質が、クレアチニン、トリグリセリド、無機リン、クレアチン、コレステロールエステル、シアル酸、α−アミラーゼ、GOT、GPT、グアナーゼ、リン脂質よりなる群から選択されるいずれかであることを特徴とする請求項9に記載の生体成分の測定方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載のカタラーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼおよびペルオキシダーゼ以外の1種以上の酵素、緩衝剤および色原体を少なくとも含有されることを特徴とする生体成分測定用試薬キット。
【請求項12】
アルカリゲネス(Alcaligenes)属の微生物を、栄養培地を用いて培養し、カタラーゼ活性を有する蛋白質を採取する工程を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のカタラーゼの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−193821(P2010−193821A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43970(P2009−43970)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】