説明

カチオン性レオロジー剤を含有する除去可能な抗菌コーティング組成物およびその使用方法

除去可能な抗菌皮膜形成組成物で表面をコーティングすることを含む、微生物を制御する方法が提供される。さらに具体的には、この方法は、カチオン性レオロジー剤を含む除去可能な抗菌コーティング組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、すべて2009年7月27日出願の4つの米国特許仮出願第61/228707号、61/228711号、61/228715号および61/228723号の利益を請求する。
【0002】
この開示は、除去可能な抗菌皮膜形成組成物で表面をコーティングすることを含む、微生物を制御する方法に関する。さらに具体的には、この方法は、カチオン性レオロジー調整剤を含む、除去可能な抗菌コーティング組成物、および前記組成物を塗布する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
微生物感染は、ヒトおよび動物において継続している深刻な問題である。微生物病原体への曝露は、公共施設および病院などの様々な環境で起こり、少し例を挙げるとすれば、消費者製品および食品加工工場の汚染も含む。表面の非効率的なクリーニングによって、相互汚染が引き起こされる。さらに、表面に微生物が付着すると、その表面上にバイオフォルムが形成され、バイオフィルム内の微生物は、消毒剤に対して感受性が低いことが知られている。したがって、様々な表面に適用することができ、かつ微生物汚染を長時間制御するコーティング組成物を開発することが望まれる。さらに、前記コーティングを容易に除去することを可能にする、除去可能なコーティング組成物を有することがさらに望まれる。コーティングの除去は、製品品質のために、または塗装などの次の作業のための準備において、または抗菌コーティング組成物の再塗布に必要である。
【0004】
現在の、かつ/または市販の殺菌性組成物での、微生物成長の有効かつ長続きする制御の達成において通常遭遇する問題は:殺菌性溶液が滴り落ちることによって生じる不十分な接触時間、表面の不均一なコーティングによる非効率的な表面被覆、および新たな汚染に対して表面を保護する残留有効性の不足である。
【0005】
あたかも本明細書に完全に記載されているかのごとく、参照により本明細書に組み込まれる、所有者共通の、かつ同時係属の米国特許出願第2008/0026026号明細書および2007/0275101号明細書には、除去可能な抗菌皮膜形成組成物を表面にコーティングすることを含む、微生物を制御する方法が記述されている。
【0006】
Patelらは、米国特許第5,585,407号明細書において、基材に塗布して、微生物の成長を長時間抑制することができる水性コーティング組成物を提供している。このコーティングは、アクリレートエマルジョンポリマーおよびオルガノアルコキシシランを含み、アルカリ性条件下にて除去することができる。
【0007】
Asariらは、米国特許出願公開第2005/0175568号明細書において、疎水的に修飾された架橋カチオン性増粘ポリマーを含むコンディショニング組成物を記述している。
【0008】
Richterらは、米国特許第6,025,431号明細書において、アクリレートベースのポリマーレオロジー改質剤および美容的作用薬を含む濃縮化パーソナルケア組成物を記述している。
【0009】
Kritzlerは、米国特許出願第2008/0138312号明細書において、ポリ(ビニルアルコール)、第四級アンモニウム化合物および界面活性剤を含む、生物静力学(biostatic)ポリマー組成物を含む方法を記述している。
【0010】
Marhevkaは、米国特許第5,017,369号明細書において、ポリビニルアルコール、抗菌剤および水を含む、乳腺炎予防のための、乳牛乳首の皮膜形成シーラーを記述している。
【0011】
Richterらは、米国特許第6,749,869号明細書において、迅速な初期の殺菌、偽塑性レオロジー、バリア/皮膜形成能力、および長時間の微生物制御を提供する、乳腺炎制御用の乳首浸漬組成物を記述している。
【0012】
既存の除去可能な抗菌コーティング組成物の欠点は、(i)自己殺菌活性(self−sanitizing activity)を含む広範囲の微生物に対する抗菌性と併せて、(ii)液体コーティング組成物の貯蔵安定性、(iii)高送出量の噴霧装置で噴霧することによる塗布能力を含む、保護すべき大きな表面積への速い塗布、(iv)薄いコーティングおよび標的表面への高い移行効率を提供することを含む、表面積当たりに必要とされる少ない量のコーティング組成物、(v)被覆表面の外観、(vi)コーティングの完全かつ容易な除去、(vii)コーティング組成物の簡単かつ速い製造プロセスの提供を欠いていることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、表面に塗布した後に、短期間と長期間の両方の抗菌有効性を提供する、容易に除去可能な、均一な抗菌コーティング組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の開示は、少なくとも1種類の抗菌剤および少なくとも1種類のカチオン性レオロジー剤を含む除去可能なコーティング組成物と、ある位置を接触させることにより、前記位置で微生物の制御を提供することによって、記載の問題を解決する。
【0015】
一態様において、本開示内容は、
i.水可溶性または水分散性皮膜形成剤;
ii.少なくとも1種類のカチオン性または非イオン性抗菌剤;
iii.水性溶媒;
iv.カチオン性レオロジー剤
を含む、残留自己消毒特性を提供する、除去可能な抗菌コーティング組成物を含む。
【0016】
他の態様において、本開示は、ある位置での微生物の制御を提供する方法であって:
a)i)水可溶性または水分散性皮膜形成剤;
ii)少なくとも1種類の抗菌剤;
iii)水性溶媒;
iv)カチオン性レオロジー剤;
を合わせて、剪断減粘性の除去可能なコーティング組成物を得る工程;
b)前記コーティング組成物を前記位置に塗布する工程;
を含み、
前記コーティング組成物が、前記位置に塗布された後に乾燥コーティングを形成するように放置される、方法を含む。
【0017】
さらに他の態様において、本開示は、
a.(i)電気伝導率0〜10mS/cmの水性溶媒と(ii)水可溶性または水分散性皮膜形成剤とを合わせることによって、懸濁液を形成する工程;
b.前記懸濁液を少なくとも10分間、30℃〜95℃に加熱する工程;
c.任意の順序で(i)抗菌剤;(ii)カチオン性レオロジー剤;(iii)場合により、追加の成分;を添加する工程;
d.組成物を混合する工程;
を含む、除去可能な抗菌コーティング組成物を製造する方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
別段の指定がない限り、すべてのパーセンテージ、部、比等は重量による。商標は大文字で示される。さらに、量、濃度、または他の値が、ある範囲、好ましい範囲または好ましい上限値または下限値のリストとして開示されている場合には、かかる開示内容は、たとえ個々の値が本明細書に一義的または個々に開示されていなくても、指定範囲内および開示される範囲内の2つの個々の値の組み合わせから得られるいずれかの範囲内の個々の値それぞれがあたかも明確に開示されているがごとく同じ効果を有する。数値の範囲が本明細書に記載されている場合、別段の指定がない限り、その範囲は、範囲内のその終点、およびすべての整数および分数を含むことが意図される。指定がない限り、本発明の範囲は、範囲を定義する場合に記載される特定の値に制限されることを意図しない。
【0019】
明確にするために、本明細書で使用される用語は、本明細書に記載のとおり、またはかかる用語が、本発明の当業者によって理解されるであろうように理解されるものとする。本明細書で使用される特定の用語の更なる説明は以下に示す。
【0020】
「除去可能なコーティング組成物」または「コーティング組成物」とは、水可溶性または水分散性皮膜形成剤、少なくとも1種類の抗菌剤、水性溶媒およびカチオン性レオロジー剤を含む皮膜形成組成物を意味する。
【0021】
「剪断速度」とは、流動材料の速度勾配を意味し、秒の逆数(s-1)のSI単位で測定される。
【0022】
「剪断減粘性」または「偽塑性」とは、剪断速度の増加と共に粘度の減少を示す流体を意味する。
【0023】
「不揮発性」とは、25℃でのその蒸気圧が1000パスカル未満である化合物を意味する。
【0024】
「金属キレート剤」または「金属イオン封鎖剤」とは、金属または金属含有不純物を結合させる作用剤を意味する。
【0025】
「レオロジー改質剤」または「レオロジー剤」とは、粘度を増加し、かつ/または組成物に剪断減粘性を提供し、水性処理組成物またはコーティング組成物を対象の表面に粘着させる、化合物を意味する。
【0026】
「重量%」とは、溶液または分散液の全重量に対する重量%を意味する。
【0027】
「微生物」とは、細菌および古細菌、ならびに単細胞(例えば、酵母)および糸状菌(例えば、カビ)、単細胞および糸状藻類、単細胞および多細胞寄生虫、ウイルス、ビリノおよびウイロイドの系統発生的ドメインで構成される微生物を包含することを意味する。
【0028】
本明細書で区別なく使用される、「皮膜形成剤」または「水可溶性または水分散性コーティング剤」とは、フィルムを形成し、対象の表面に保護コーティングを提供するために用いられる作用剤を意味する。これらの作用剤は水可溶性または水分散性であり、以下にさらに詳細に説明される。
【0029】
「水性溶媒」とは、その位置への水分散性コーティング剤および界面活性剤の塗布を促進する、水または他の任意の溶媒を意味する。必要に応じて、水性溶媒を用いて、被覆面をすすいでコーティングを除去してもよい。
【0030】
「非水溶媒」とは、水を含有しないか、または約5重量%未満、さらに好ましくは約2重量%未満の量で水を含有する任意の溶媒を意味する。非水溶媒を使用して、カチオン性レオロジー剤を溶解または分散してもよい。
【0031】
「容易に除去可能な」とは、対象の表面に液体コーティング組成物を塗布した後に形成されるコーティングの容易な除去を意味する。
【0032】
「液体コーティング組成物」とは、ある量の水可溶性または水分散性皮膜形成剤、抗菌剤、水性溶媒およびカチオン性レオロジー剤を含む組成物を意味する。
【0033】
本明細書で使用される「抗菌剤」とは、抗菌性を有する化合物または物質を意味する。
【0034】
本明細書で使用される「殺生物剤」とは、微生物を不活化または破壊する、一般に広域の化学剤を意味する。微生物を不活化する、または破壊する能力を示す化学剤は、「殺菌」活性を有すると説明される。
【0035】
「バイオフィルム」とは、自己発生(self−developed)ポリマーマトリックス内および生きている表面または不活性表面への付着物内にカプセル化された微生物の構造化共同体(structured community)を意味する。
【0036】
「乾燥」とは、配合物中に存在する不活性溶媒または他の液体が蒸発によって除去される、プロセスを意味する。
【0037】
本明細書で使用される「消毒剤」とは、試験条件下にて特定の試験微生物の99.9%を10分間で殺滅する化学物質である(Germicidal and Detergent Sanitizing Action of Disinfectants,Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists,paragraph 960.09 and applicable sections,15th Edition,1990;EPA Guideline 91−2)。
【0038】
本明細書で使用される「位置」は、コーティングされるのに適した標的表面の一部またはすべてを含む。
【0039】
「多区画システム」とは、少なくとも2つの区画を含む、使用前に分離される多成分システムのうちの2つ以上の反応性成分を保持する手段を意味する。
【0040】
「抗菌」または「抗菌性」とは、微生物を殺す、微生物の汚染をブロックする、または予防する(バリアの形成など)、または微生物の成長を抑制または予防する、殺すために微生物を捕える、またはバイオフィルム形成を予防する、作用剤の能力を意味する。
【0041】
「乾燥」または「本質的に乾燥した」とは、蒸発のために、本明細書に定義される不活性溶媒の少なくとも70%、さらに好ましくは80%、またさらに好ましくは90%、最も好ましくは95%を超える不活性溶媒を失っているコーティング組成物を意味する。
【0042】
「垂れポイント」とは、垂直面上に噴霧し、乾燥させた後に、コーティングが目視による垂れまたは滴りを示し始めるそのポイントでのコーティングの厚さを意味する。
【0043】
この文脈での「均一な」または「実質的に均一な」とは、コーティング表面全体にわたって、ごくわずかな厚さのばらつきを有するコーティングを意味する。
【0044】
「第四級アンモニウム化合物」とは、アニオンおよび構造:
【0045】
【化1】

【0046】
(式中、R、R’、R’’およびR’’’は独立して、アルキル基またはアリール基またはその任意の組み合わせである)
の第四級アンモニウムカチオンの塩を意味する。
【0047】
「電気伝導率」とは、電流を伝導する材料の能力の尺度であり、電流密度(アンペア/平方メートルのSI単位)と、かけられた電場(ボルト/メートルのSI単位)との比として定義される。電気伝導率メーターは一般に、溶液または液体の電気伝導率を測定するために使用される。
【0048】
その他の用語
明確にするために、本明細書で使用される用語は、本明細書に記載のとおり、またはかかる用語が、本発明の当業者によって理解されるであろうように理解されるものとする。本明細書で使用される特定の用語の更なる説明は以下に示す:
【0049】
本発明の抗菌コーティングは清浄薬(sanitizer)として使用することができる。本明細書で定義される清浄薬は、(i)その目的が食品と実際に接触する、または接触する可能性のある、表面上の微生物をコントロールすることである場合には、食品接触清浄薬または(ii)表面が食品と接触することが意図されない場合には、非食品接触清浄薬のいずれかであることができる、化学物質または化学混合物である。本明細書で定義される食品接触清浄薬は、EPA policy DIS/TSS−4:“Efficacy data requirements−Sanitizing rises for previously cleaned food−contact surfaces”,United States Environmental Protection Agency,January 30,1979による試験法の条件下にて、特定の試験微生物の少なくとも99.999%を30秒間で殺滅する。本明細書で定義される非食品接触清浄薬は、ASTM標準E 1153−03:“Standard Test Method for Efficacy of Sanitizers Recommended for Inanimate Non−Food Contact Surfaces”,edition April 10,2003 and published July 2003に従った方法の条件下にて、特定の試験微生物の少なくとも99.9%を5分間で殺滅する。
【0050】
本発明のコーティング組成物は、残留抗菌有効性および自己殺菌特性を示す。「残留抗菌有効性」または「自己殺菌特性」とは、乾燥後に抗菌活性な状態のままである、本明細書に記載のように形成されたコーティングの特性を意味する。乾燥コーティングの抗菌活性は、本明細書に記載の残留自己消毒(residual self−sanitizing)(RSS)試験を用いて測定することができる。
【0051】
本発明のコーティングは消毒剤として使用することができる。本明細書で定義される消毒剤は、試験条件下にて特定の試験微生物の99.9%を10分間で殺滅する化学物質である(Germicidal and Detergent Sanitizing Action of Disinfectants,Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists,paragraph 960.09 and applicable sections,15th Edition,1990(EPA Guideline 91−2))。
【0052】
本発明の抗菌コーティングは、耐久性のあるコーティングである。耐久性は、その除去が故意に開始される、または除去が生じるまで、その表面上に残っている乾燥コーティング物質に関係する。使用条件は、本開示の塗布領域に関して標的表面上にコーティングが残っている期間中の一般的な環境条件であり、温度約40℃未満の水との不注意の接触を含み得る。
【0053】
標的表面に塗布される抗菌コーティングは連続的または実質的に連続的であることが好ましい場合がある。本発明の文脈において、連続的または実質的に連続的とは、ボイド、破断、未被覆領域、または意図せずに表面領域を露出したままにするコーティングの欠陥なく、標的表面をカバーするコーティングを意味する。
【0054】
本発明のコーティングは物理的バリアである。物理的バリアは、本明細書において本発明の皮膜形成組成物から形成されるフィルムとして定義される。得られるフィルムは、土壌、脂肪、ほこり、微生物等の環境からの汚染から、処理表面を封止する。これらの汚染は、コーティング表面上に残り、コーティングを除去する時点で洗い流される。
【0055】
接触時間とは、前記コーティングまたはコーティング組成物と接触する、またはその付近と接触する微生物に、コーティングまたはコーティング組成物が抗菌性を与える時間を意味する。抗菌配合物に対する具体的な必要条件に応じて、“Germicidal and Detergent Sanitizing Action of Disinfectants,Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists”,paragraph 960.09 and applicable sections,15th Edition,1990; EPA Guideline 91−2に記載のように接触時間は異なる。例えば、本発明の開示の意図する用途が食品接触表面の清浄薬としての使用である場合、組成物は、室温で30秒間以内に数種類の試験微生物を99.999%減少させるはずである(5 logオーダーの減少)。意図する用途が非食品接触表面の清浄薬としてである場合、組成物は、室温で5分間以内に数種類の試験微生物を99.9%減少させるはずである(3 logオーダーの減少)。目的が開示内容を消毒剤として使用する場合、組成物は、10分間で99.9%減少させるはずである(3 logオーダーの減少)。意図する用途が残留抗菌活性を付与することである場合、本発明の方法は、10分間を超える微生物との接触時間を有することができるであろう。
【0056】
本発明の抗菌コーティング組成物の塗布は、噴射剤を用いて行うことができる。噴射剤とは、缶からコーティング組成物を噴出するための、エアロゾル缶内で使用される加圧ガスおよび/または液体を意味する。噴射剤はすべてガスであるか、またはその液体と平衡な相にガスを含み得る。後者の場合には、一部のガスが逃げてコーティング組成物を噴出するため、より多くの液体が蒸発し、均一な圧力が維持される。一部のエアロゾル缶デザインにおいて、缶内部の袋などによって、噴射剤をコーティング組成物から物理的に分離することもできる。
【0057】
本発明のコーティング組成物の成分は、本明細書で多区画システムとも呼ばれる多区画封じ込めシステムに収容される。多区画システムとは、使用前に、多成分コーティングシステムの2つ以上の反応性成分を分離しておく手段を意味する。一態様において、多区画システムは、少なくとも2つの区画を備え、かつマルチチャンバ・ディスペンサーボトルまたは液状反応性化合物を合わせるために使用される二相システムを含有し得る。他の態様において、粉末、多層錠剤、または複数の区画を有する水溶解性パケットを固形状の化合物または固形状と液状の組み合わせの化合物に使用することができる。他の態様において、使用前に、反応性成分を分離しておくために使用される、あらゆる種類のシステム、デバイス、容器、パッケージ、袋、キット、マルチパック、ディスペンサー、またはアプリケーターを本発明の開示の方法に従って使用することができる。
【0058】
一実施形態において、コーティング組成物は、第1液体を第2液体と混合することによって生成され、第1液体はカチオン性レオロジー剤を含み、第2液体は水性溶媒を含む。
【0059】
コーティング組成物の成分自体は、多成分システムとして提供され、その成分の1つまたは複数が、使用前に分離された状態である。複数の活性成分を合わせるためのシステムのデザインは、当技術分野で公知であり、一般に個々の成分の物理的形状に応じて異なる。例えば、複数の活性液体(液体−液体)システムでは一般に、目的の漂白剤が反応性液体を混合して生成される一部の漂白用途で見られるものなど、マルチチャンバ・ディスペンサーボトルまたは二相システム(米国特許出願公開第2005/0139608号明細書;米国特許第5,398,846号明細書;米国特許第5,624,634号明細書;米国特許第6,391、840号明細書;欧州特許第0807156B1号明細書;米国特許出願公開第2005/0008526号明細書;および国際公開第00/11713A1号パンフレット)が使用される。
【0060】
他の態様において、反応性成分を合わせるのに適しているシステムは、米国特許出願公開第2005/014427号明細書に開示されるツインノズル(twin−nozzle)・ボトルの使用である。本発明の方法で使用するのに適している代替のデバイスは、欧州特許第0715899B1号明細書に開示される二区画トリガー活性化液体ディスペンサーである。
【0061】
他の実施形態において、適切な成分を混合するのに適したシステムは、成分を分離する膜を有する容器であり、使用前に機械的力によって膜を破断すると、成分が合わされる。他の実施形態において、適切なデバイスは、袋内の袋(bag−within−a−bag)である。
【0062】
他の実施形態において、本発明の開示の成分を合わせる、または混合する手段としては、使用前に反応性成分を分離しておくために使用される、当業者には公知の、システム、デバイス、容器、パッケージ、袋、キット、マルチパック、ディスペンサー、およびアプリケーターが挙げられる。
【0063】
偽塑性指数または剪断減粘指数(STI)は、垂れおよび滴りに対する組成物の抵抗性の尺度を提供する。低い剪断速度で記録された値は、高い剪断速度での値で割られ、STIが得られる。一般に、コーティング材料が有するSTIが高いほど、垂れおよび滴りに対する抵抗性が高くなる。本発明の開示において、剪断減粘指数は、第1剪断速度と第2剪断速度で測定される粘度の比として定義され、前記第2剪断速度は、前記第1剪断速度の値の10倍である。STIを計算するために使用される特定の第1および第2剪断速度に限定されることなく、実施例において、前記第1剪断速度は1s-1であり、前記第2剪断速度は10s-1であった。
【0064】
向上した抗菌有効性および向上した作用速度を有する抗菌剤が長年にわたって必要とされている。かかる薬剤の具体的な必要条件は、意図する用途(例えば、清浄薬、消毒剤、滅菌剤、無菌包装処理等)および適用可能な公衆衛生条件に応じて異なる。例えば、Germicidal and Detergent Sanitizing Action of Disinfectants,Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists,paragraph 960.09 and applicable sections,15th Edition,1990(EPA Guideline 91−2)に記載されるように、清浄薬は、室温(23〜27℃)で30秒間以内に数種類の試験生物を99.999%減少させる(5 logオーダーの減少)。
【0065】
本発明の方法の除去可能な抗菌コーティング組成物は、標準的な衛生製品(第四級アンモニウム化合物希釈溶液またはフォーム、過酸溶液またはフォーム等)の代替品として使用してもよく、使用中の、または使用中ではない装置の保護コーティングとして日常の衛生のためだけでなく、長期間の保護(つまり、何週間または何ヶ月間にわたる保護)のために使用されてもよい。
【0066】
本発明の除去可能な抗菌コーティング組成物は、限定されないが、浮遊またはプランクトン微生物とバイオフィルムに収容された微生物の両方を殺すこと、バイオフィルムの形成を防ぎ、かつコーティングの中の、コーティングの下の、またはコーティングと接触する微生物を捕らえることによって、微生物の成長を低減または予防することなど、いくつかの利点を提供する。
【0067】
本明細書で開示されるコーティング組成物は、組成物をレオロジー改質剤と配合することによって修飾され、垂直面、傾斜面、幾何学的に複雑な面または手が届きにくい面をコーティングしてもよい。これによって、従来のずり粘度プロファイルおよび25℃で約0.01パスカル秒未満の粘度を有する従来の抗菌溶液の塗布によってはアクセスできなかった表面または装置に抗菌剤を塗布することが可能となる。滴りがレオロジー改質剤によって防がれる、または大幅に低減されることから、水平面および垂直面は、抗菌剤を無駄にすることなく、保護コーティングの薄い層でカバーされ得る。適切なレオロジー改質剤および架橋度を有する組成物を配合することによって、表面仕上げおよび保護ならびに除去の容易さの程度が異なる、様々なコーティング特性を有するコーティング組成物が製造される。
【0068】
本発明のコーティング組成物は、汚れなどの微生物または非微生物起源の汚染に対する保護のいくつかのメカニズムを提供する。例えば、液体組成物が適用された場合、コーティング配合物中の抗菌剤によって、その表面上のプランクトン細胞またはゆるく付着する細胞が殺されるか、または成長が低減される、または妨げられる。
【0069】
さらに、本発明の抗菌組成物を塗布した後、塗布された皮膜形成組成物が完全に乾燥して抗菌フィルムが得られる前に、水和したバイオフィルム中に抗菌剤が拡散することによって、表面上のバイオフィルムによって収容された細胞は殺されるか、または成長が低減される、または妨げられる。抗菌活性を持続させるためには、本発明の抗菌フィルムは半透性であることが望ましい。このように形成された抗菌フィルムは、抗菌剤の貯留(reservoir)を構成し、一般に数秒または数分以内に滴り落ちる従来の衛生すすぎ溶液よりもかなり長い接触時間が得られる。
【0070】
コーティングがその位置に存在する間の長く続く活性は、様々な用途において特に有益である。本発明の方法の皮膜形成抗菌組成物は、標的表面から急速に滴り落ちず、例えば偶発的な接触によって容易に取れない。フィルムの可撓性、粘度、強度、および本発明のコーティングの付着性を変えることによって、特定の用途にそれを合わせることが可能であり、したがって、かかる持続活性(残留利益)が以前は利用可能ではなかった多くの状況において、持続性抗菌保護が利用可能となる。
【0071】
除去可能な抗菌コーティング組成物の使用はいくつかの利点を提供する。コーティング組成物は、限定されないが、浮遊微生物とバイオフィルムの両方を殺すこと、バイオフィルムの形成を防ぐことによって、かつコーティングの中の、コーティングの下の、またはコーティングに付着した微生物を捕らえることによって、微生物の成長を低減するか、または微生物の成長を予防するなど、多くの方法で抗菌有効性を提供する。抗菌剤の濃縮物が直接薄膜で塗布され、抗菌剤が基材上で高濃度かつ長時間維持されることから、コーティング組成物の塗布によって水の使用が減る。さらに、抗菌コーティングは一度塗布され、後のプロセス工程で除去されることから、労力を減らし得る。組成物を流動改質剤と配合することによって修飾し、届きにくい表面をコーティングしてもよい。これによって、従来のずり粘度プロファイルを有する従来の抗菌溶液の塗布によってはアクセスできなかった表面または装置に抗菌剤を塗布することが可能となる。水平面および垂直面は、抗菌剤を無駄にすることなく、保護コーティングの薄い層でカバーされ得る。適切な流動改質および架橋度を有する組成物を配合することによって、表面仕上げおよび保護ならびに除去の容易さの程度が異なる、様々なコーティング特性を有するコーティング組成物が製造される。
【0072】
本発明の方法の一実施形態において、本発明の実施において有用な、除去可能な抗菌コーティング組成物は、例えば食品、乳製品、または飲料品産業における装置に、装置の停止期間中に塗布される。装置が始動される時に、本明細書に記載の方法によって、コーティングが除去される。他の実施形態において、除去可能な抗菌コーティング組成物は、食品または飲料品産業の装置表面などの表面の衛生に、毎日または毎週の衛生のために使用される。さらに他の実施形態において、果実表面を除去可能なコーティング組成物でコーティングして、食品加工工場における微生物の拡散および相互汚染を防いでもよい。さらに他の実施形態において、本発明の方法に有用な除去可能な抗菌コーティング組成物で、病院の壁、ベッド、および病院内の他の表面をコーティングしてもよい。他の実施形態において、除去可能なコーティング組成物で排水管がコーティングされる。他の実施形態において、カビの汚染予防またはカビの除去のために、新しい住宅の建設などにおける建物の表面、壁または他の表面が塗布される。
【0073】
本発明の抗菌フィルムは、抗菌剤の貯留を構成し、数秒または数分で滴り落ちる衛生すすぎ溶液よりも長い接触時間を提供する。このメカニズムは、抗菌剤がコーティングからなくなるまで、抗菌コーティング上でバイオフィルムが成長するのを防ぐ。
【0074】
一般的なバイオフィルム微生物は、病原体、指示微生物、および/または腐敗微生物として働く、病原体、グラム陽性および/またはグラム陰性菌である。
【0075】
このコーティングは、微生物、土壌、脂肪および他の物質に対する物理的バリアを構成する。これらの固形汚染物質は、コーティングの表面上に残り、コーティングを除去する時点で洗い落とされる。本発明の抗菌コーティングは、それらが標的表面に到達すること、または浸透すること、それを汚染することができないように、微生物を捕らえることができる。
【0076】
本発明の方法のコーティングのフィルム可撓性、粘度、強度、および付着性のバリエーションによって、特定の用途にそれを合わせることが可能となり、したがって、以前はかかる持続活性(残留利益)が有効ではなかった多くの状況および/環境において持続性抗菌保護が有効となる。
【0077】
組成物の成分
本明細書に記載の組成物の成分の詳細な説明を以下に示す。
【0078】
本発明の実施で使用するのに適している皮膜形成水可溶性または水分散性剤は、所有者共通の、かつ同時係属の米国特許出願第2008/0026026号明細書および2007/0275101号明細書に記述されている。適切な皮膜形成剤は、限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、アクリレートコポリマー、イオン性炭化水素ポリマー、ポリウレタン、多糖、官能基化多糖、アラビノキシラン、グルコマンナン、ガーゴム、アラビアゴム、ジョハニスツリー(johannistree)ゴム、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロースデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、キサンタンガム、カラゲナン、カードラン、プルラン、ゼラチン、デキストラン、キトサン、グリセロール、アルギン酸ナトリウム、カルシウム塩と架橋されたアルギン酸ナトリウム、カラゲナン、エチレンオキシド/プロピレンオキシド/エチレンオキシドブロックコポリマー、およびその組み合わせから選択される。当業者は、本発明の方法に従って容易に除去可能なコーティングを得るため、ある範囲の水溶性を提供するために、適切な分子量の範囲を容易に選択することができる。
【0079】
一般にレオロジー改質剤を使用して、水性組成物の流動学的特性を調節または修飾する。かかる特性としては、限定されないが、粘度、流速、時間の経過による粘度の変化に対する安定性、およびかかる水性組成物中の粒子を浮遊させる能力が挙げられる。使用される改質剤の具体的な種類は、修飾される特定の水性組成物および修飾水性組成物の特定の最終用途に応じて異なる。
【0080】
従来のレオロジー改質剤の例としては、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、および他の水可溶性巨大分子、および酸基を有するモノマーが主鎖上に導入されている、コポリマーエマルジョンなどの増粘剤が挙げられる。かかる増粘剤は、繊維の処理および接着剤において広く使用されている。セルロース誘導体およびポリビニルアルコールなどの増粘剤が水性エマルジョンと混合された場合、増粘されたエマルジョンは、時間が経つにつれて、粘度変化に対して乏しい安定性を示す傾向があることが報告されている。セルロース系材料は、時間の経過にしたがって、粘度が実質的に低下すると言われている。水性エマルジョンを増粘するために、多量のポリビニルアルコールが必要とされることも報告されている。
【0081】
水性エマルジョンを増粘することが知られている他の種類のレオロジー改質剤は、一般に会合性(associative)改質剤と呼ばれるものである。かかる会合性改質剤は、米国特許第4,743,698号明細書;米国特許第4,600,761号明細書;米国再発行特許第33,156号明細書;米国特許第4,792,343号明細書;米国特許第4,384,096号明細書;米国特許第3,657,175号明細書;米国特許第5,102,936号明細書および米国特許第5,294,692号明細書に記載されている。言及されるように、これらの増粘剤は、塩基を添加すると有効となり、それによって、増粘組成物のpHがアルカリ性に上昇するが、増粘剤は、酸性pHの水性組成物を増粘しない。例えば、時間の経過にしたがったpH値、粘度、または他の物理的および化学的性質の変化、または組成物の相分離によって特徴付けられる、進行中の加水分解反応によって不安定な配合物が生じ得るため、アルカリ性条件は、部分的に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)中に存在するアセテート官能基などのアルカリ加水分解性官能基を含有する配合物での使用に好ましくないことがある。
【0082】
酸膨潤性または酸活性化レオロジー剤とも呼ばれる他の種類のレオロジー剤は、非活性化またはアルカリ活性化レオロジー剤と比較していくつかの利点を有する。酸膨潤性エマルジョン増粘剤および疎水的に修飾された酸膨潤性エマルジョン増粘剤は、pH値8.5未満にて目的の剪断減粘性特性を提供する。これらの条件下にて、エマルジョン増粘剤は、第四級アンモニウム化合物などのカチオン性剤と相溶性であり、コーティング組成物中の成分として部分的に加水分解されたポリビニルアルコールを使用した場合など、塩基性条件下で加水分解する、エステル官能基を含有する成分とも相溶性である。酸活性化レオロジー剤の一例は、Alco Chemical(登録商標)(Chattanooga,TN,USA)から市販のAlcogum(登録商標)L−520である。他の適切な酸活性化レオロジー剤は、米国特許第5,990,233号明細書に記載されている。
【0083】
本明細書で使用される、「カチオン性レオロジー改質剤」または「カチオン性レオロジー剤」とは、使用条件下にてカチオン性官能基を含むレオロジー剤を意味する。好ましくは、カチオン性レオロジー改質剤は、コーティング組成物のpH値にてカチオン性官能基を含む。さらに好ましくは、カチオン性レオロジー改質剤は、少なくとも約3〜10のpH値でカチオン性官能基を含む。最も好ましくは、カチオン性レオロジー改質剤は、pH値と無関係にカチオン性官能基を含む。
【0084】
他の態様において、前記カチオン性官能基の電荷密度(カチオン性官能基(モル)/レオロジー剤1モル)は、pH3〜10の範囲でおよそ一定であることが好ましい。
【0085】
さらに好ましくは、前記カチオン性官能基の電荷密度(カチオン性官能基(モル)/レオロジー剤1モル)は、pH値とほぼ無関係である。
【0086】
好ましくは、カチオン性官能基は、以下の構造:
【0087】
【化2】

【0088】
(式中、R、R’、およびR’’は独立して、アルキル基またはアリール基のいずれか、またはその2つの任意の組み合わせである)
の第四級アンモニウムカチオンである。このカチオン性官能基に対して対応するアニオンは任意のアニオンであることができる。
【0089】
カチオン性レオロジー改質剤の例は、Ciba(登録商標)(Basel,Switzerland)から入手可能なRheovis(登録商標)CDE、Rheovis(登録商標)FRCおよびRheovis(登録商標)CSPなどのカチオン性アクリルコポリマーである。
【0090】
本発明の開示で使用されるレオロジー剤またはレオロジー改質剤は、コーティング組成物に偽塑性または剪断減粘性を与える。偽塑性組成物は、傾斜面または垂直面にくっつくことが知られている。くっつくことによって、組成物は一時的微生物かつ常在微生物と長時間接触したままの状態となり、微生物学的有効性が促進され、滴りが過剰なための無駄を受けにくい。垂れおよび/滴りが防止されることから、くっつきは、コーティングの外観も向上することができる。
【0091】
抗菌剤
本発明の実施において有用な、適切な抗菌剤は、所有者共通の、かつ同時係属の米国特許出願第2008/0026026号明細書および2007/0275101号明細書に記述されている。抗菌剤を含むコーティング組成物は、多種多様な微生物に対する保護を提供する。
【0092】
本発明に有用な抗菌剤は、無機剤または有機剤、またはその混合物である。本発明は、特定の抗菌剤の選択に制限されず、その抗菌剤が、組成物中の他の成分と化学的に適合性であるという条件で、抗菌剤、殺ウドンコ病菌、防腐剤、消毒剤、清浄薬、殺菌薬、殺藻薬、防汚剤、保存剤、および前述の組み合わせなど、公知のあらゆる水可溶性または水分散性抗菌剤が、本発明の組成物中に含有されてもよい。抗菌剤の適切な種類を以下に示す。
【0093】
本明細書で使用される「無機抗菌剤」という用語は、抗菌性を有する、銀、亜鉛、銅等の金属または金属イオンを含有する無機化合物の一般名である。本明細書で使用される「有機抗菌剤」という用語は、そのすべてが抗菌性を有し、かつ窒素、硫黄、リンまたは同様な元素を一般に含有する、天然抽出物、低分子量有機化合物および高分子量化合物の一般名である。有用な天然抗菌剤の例は、キチン、キトサン、ナイシンなどの抗菌ペプチド、リゾチーム、ワサビ抽出物、マスタード抽出物、ヒノキチオール、茶抽出物等である。抗微生物性を有する高分子量化合物としては、当技術分野で公知のように(E.−R.Kenawy and Y.A.−G.Mahmoud“Biologically actove polymers,6:Synthesis and antimicrobial activity of some linear copolymers with quaternary ammonium and phosphonium groups”in Macromolecular Bioscience(2003),3(2),107−116)、アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、スルホニウム塩基または同様なオニウム塩、フェニルアミド基、または直鎖状もしくは分枝状ポリマー鎖に結合しているジグアニド基を有する化合物、例えばホスホニウム塩含有ビニルポリマーが挙げられる。
【0094】
有用な低分子量抗菌剤の例としては、クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、グルタラール、ハラゾン、ヘキサクロロフェン、ニトロフラゾン、ニトロメルゾール、チメロサール、C1−C5パラベン、次亜塩素酸塩、クロフカルバン(clofucarban)、クロロフェン、フェノール類、酢酸マフェニド、塩酸アミナクリン、第四級アンモニウム塩、塩素および臭素放出化合物(例えば、アルカリおよびアルカリ土類次亜塩素酸塩および次亜臭素酸塩、イソシアヌレート、ヒダントインの塩素化誘導体、スルファミド、アミン等 )、過酸化物およびペルオキシ酸化合物(例えば、過酢酸、ペルオクタン酸)、プロトン化短鎖カルボン酸、オキシクロロセン、メタブロムサラン、メルブロミン、ジブロムサラン、グリセリルラウレート、ナトリウムおよび/または亜鉛ピリチオン、リン酸三ナトリウム、(ドデシル)(ジエチレンジアミン)グリシンおよび/または(ドデシル)(アミノプロピル)グリシン等が挙げられる。有用な第4級アンモニウム塩としては、ハロゲン化物、例えば塩化物、臭化物およびヨウ化物;スルフェート、メトスルフェート等、およびイミダゾリニウム塩などの複素環式イミドなどの水可溶性アニオンを含むN−C10−C24−アルキル−N−ベンジル−第四級アンモニウム塩が挙げられる。有用なフェノール系殺菌薬としては、フェノール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、o−フェニル−フェノール、4−クロロ−m−クレゾール、クロロキシレノール、6−n−アミル−m−クレゾール、レゾルシノール、レゾルシノールモノアセテート、p−t−ブチルフェノールおよびo−ベンジル−p−クロロフェノールが挙げられる。かびコロニーの目に見える成長を防ぐのに有効であることが知られている有用な抗菌剤としては、例えば、3−ヨード−2−プロピニルブチルカルバメート、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、ジヨードメチル−p−トリルスルホン、テトラクロロイソフタロニトリル、2−ピリジンチオール−1−オキシドの亜鉛複合体ならびに前述の組み合わせが挙げられる。
【0095】
一実施形態において、コーティング組成物は、グラム陽性またはグラム陰性菌に対して保護する。コーティングによって抑制または殺菌されるグラム陽性細菌としては、限定されないが、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ウシ結核菌(M.bovis)、マイコバクテリウム・ティフィリウム(M.typhimurium)、ウシ結核菌株(M.bovis strain)BCG、BCG亜系、トリ型結核菌(M.avium)、マイコバクテリウム・イントラセルラーレ(M.intracellulare)、マイコバクテリウム・アフリカヌム(M.africanum)、カンサス・マイコバクテリウム(M.kansasii)、マイコバクテリウム・マリナ(M.marinum)、マイコバクテリウム・ウルセランス(M.ulcerans)、トリ型結核菌亜種パラ結核(M.avium subspecies paratuberculosis)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、ストレプトコッカス・エクイ(S.equi)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(S.agalactiae)、リステリア モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、リステリア・イバノビイ(L.ivanovii)、炭疽菌(Bacillus anthracis)、枯草菌(B.subtilis)、ノカルジア・アステロイデス(Nocardia asteroides)、および他のノカルジア属(Nocardia)、ストレプトコッカス・ビリダンス(Streptococcus viridans)属、ペプトコッカス(Peptococcus)属、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属、イスラエル放線菌(Actinomyces israelii)および他の放線菌属、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、およびエンテロコッカス属(Enterococcus)が挙げられる。コーティングによって抑制または殺菌されるグラム陰性菌としては、限定されないが、破傷風菌(Clostridium tetani)、ウェルシュ菌(C.perfringens)、ボツリヌス菌(C.botulinum)、他のクロストリジウム属(Clostridium)種、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、他のシュードモナス属(Pseudomonas)種、カンピロバクター属(Campylobactor)種、ビブリオコレラ(Vibrio cholerae)、エーリキア属(Ehrlichia)種、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、パスツレラ・ヘモリチカ(Pasteurella haemolytica)、パスツレラ・ムルトシダ(P.multocida)、他のパスツレラ属(Pasteurella)種、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、他のレジオネラ(Legionella)種、チフス菌(Salmonella typhi)、他のサルモネラ属(Salmonella)種、赤痢菌属(Shigella)種、ウシ流産菌(Brucella abortus)、他のブルセラ属(Brucella)種、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、オウム病クラミジア(C.psittaci)、コクシエラ・バーネッティイ(Coxiella burnetti)、大腸菌(Escherichia coli)、髄膜炎菌(Neiserria meningitidis)、淋菌(N.gonorrhea)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、軟性下疳菌(H.ducreyi)、他のヘモフィルス属(hemophilus)種、ペスト菌(Yersinia pestis)、エルシニア・エンテロコリチカ(Y.enterolitica)、他のエルシニア属(Yersinia)種、大腸菌(Escherichia coli)、エンテロコッカス・ヒラエ(E.hirae)および他のエンテロコッカス属(Escherichia)種、ならびに他の腸内細菌科(Enterobacteriacae)、ウシ流産菌(Brucella abortus)および他のブルセラ属(Brucella)種、バークホルデリア セパシア(Burkholderia cepacia)、バークホルデリア・シュードマレイ(B.pseudomallei)、野兎病菌(Francisella tularensis)、バクテロイデスフラジリス(Bacteroides fragilis)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、プレボテラ属(Provetella)種、コードリア・ルミナンチウム(Cowdria ruminantium)、クレブシエラ(Klebsiella)属種およびプロテウス(Proteus)属種が挙げられる。他の実施形態において、コーティングは、限定されないが、アルテルナリア・アルテルナータ(Alternaria alternata)、アスペルギルスニガー(Aspergillus niger)、オーレオバシディウム・プルラン(Aureobasidium pullulans)、クラドスポリウム・クラドスポリオイド(Cladosporium cladosporioides)、ドレッシラ オストラライン(Drechslera australiensis)、グリオマスティックス・セレアリス(Gliomastix cerealis)、モニリア・グリセア(Monilia grisea)、ペニシリウム・コンミュネ(Penicillium commune)、フォーマ・フィメティ(Phoma fimeti)、ピトマイセス・キャタラム(Pithomyces chartarum)、およびスコレコバシジウム・フミコラ(Scolecobasidium humicola)などの菌に対して保護を提供する。
【0096】
本発明の実施において有用な組成物は、第1界面活性剤を含み得る。適切な第1界面活性剤は、約9〜約17の好ましい親水性・親油性バランス(HLB)を有する。適切な第1界面活性剤としては、限定されないが:Tomah Productsから市販のAmphoteric Nなどの両性界面活性剤;BYK Chemie(Wesel,Germany)から入手可能なBYK348などのシリコーン界面活性剤;DuPont(Wilmington,DE,USA)から市販のZonyl(登録商標)FS300などのフッ素化界面活性剤;Dow(Midland,MI,USA)から入手可能なTriton N−101などのノニルフェノキシ−ポリエトキシ−エタノールがベースの界面活性剤が挙げられる。他の適切な第1界面活性剤としては、Air Products & Chemicals(Allentown,PA,USA)から入手可能なSurfynol 465などのエトキシ化デシンジオール;Dowから入手可能なTriton CF−10などのアルキルアリールポリエーテル;Dowから入手可能なTriton X−100などのオクチルフェノキシポリエトキシエタノール;Shell(The Hague,the Netherlands)から入手可能なNeodol 23−5またはNeodol 91−8などのエトキシ化アルコール;Dowから入手可能なTergitol 15−S−7、Stepan Company(Northfield,IL,USA)から市販のSteol−4N、28%ラウレス硫酸ナトリウム、Uniqema(New Castle,DE,USA)から市販のTween 20またはTween 60などのソルビタン誘導体、および塩化ベンザルコニウムなどの第四級アンモニウム化合物が挙げられる。他の適切な第1界面活性剤としては、Setre Chemical Company(Memphis,TN,USA)から市販のSilwet(登録商標)L−77などのオルガノシリコーン界面活性剤、DowCorning Silicones(Midland,MI,USA)から市販のDowCorning(登録商標)Q2−5211またはSiltech Corporation(Toronto,ON,Canada)によるSilsurf(登録商標)A008が挙げられる。この第1界面活性剤は、配合物に対して約0.001〜約5重量%、または約0.01〜約1重量%の量で含有される。
【0097】
本発明の実施において有用な組成物は、第2界面活性剤を含み得る。第2界面活性剤は、本発明のコーティング組成物中の第1抗菌剤と併せて、相乗効果を提供することによって、コーティング組成物の抗菌活性を増加する。適切な第2界面活性剤は、例えば:Biosoft(登録商標)S101などのアルキルベンゼンスルホン酸;ラウリル−ジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド界面活性剤;一般式R−O(CH2CH2O)mH(「m」は約2〜20の範囲であり、「R」は直鎖状または分岐状アルキル基を表す)のエトキシレートなどのアルコールエトキシレートから選択される。
【0098】
第2界面活性剤は、配合物に対して約0.001〜約0.2重量%、または約0.005〜約0.05重量%の量で含有される。
【0099】
本発明の実施において有用な不活性溶媒としては水が挙げられる。更なる溶媒としては、好ましくは炭素原子を約1〜約6個、ヒドロキシ基を1〜約6個含有する、モノアルコール単官能性および多官能性アルコールが挙げられる。その例としては、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、マンニトールおよびグルコースが挙げられる。高級グリコール、ポリグリコール、ポリオキシド、グリコールエーテルおよびプロピレングリコールエーテルも有用である。更なる溶媒としては、トルエン、キシレン、クメンおよびフェノールなどのスルホン化アルキルアリールの遊離酸およびアルカリ金属塩、またはフェノールエーテルもしくはジフェニルエーテルスルホネート;アルキルおよびジアルキルナフタレンスルホネートおよびアルコキシル化誘導体が挙げられる。
【0100】
コーティング組成物に添加される更なる成分としては、着色剤、レオロジー改質剤、架橋剤、可塑剤、界面活性剤、可溶化剤、酸化防止剤、pH調整剤、湿潤剤、消泡剤、増量剤、潤滑剤、加工助剤、耐変色剤(color fastness agents)およびその他の性能向上剤が挙げられる。
【0101】
湿潤剤は、配合物の表面張力を下げて、配合物が表面を湿潤し、表面に広がり、潜在的には土壌、固形物、微生物、バイオフィルム、表面汚染、脂肪および表面凹部中に、下に、周囲に浸透することが可能となる。
【0102】
本発明の実施において有用な着色剤としては、染料および顔料、例えば食品グレードの顔料などが挙げられる。本発明の実施において有用な染料は、所有者共通の、かつ同時係属の米国特許出願第2008/0026026号明細書および2007/0275101号明細書に記述されている。
【0103】
本発明の開示は任意に、架橋剤を含む。適切な架橋剤は、所有者共通の、かつ同時係属の米国特許出願第2008/0026026号明細書および2007/0275101号明細書に記述されている。
【0104】
保護フィルムの可撓性または完全性には、得られるフィルムが可塑化されることが重要である。ポリエチレングリコールまたはグリセロールなどの適切な可塑剤を組み込むことによって、本開示の目的のために、フィルムの可塑化が達成されている。他の適切な可塑剤は、所有者共通の、かつ同時係属の米国特許出願第2008/0026026号明細書および2007/0275101号明細書にまとめられている。
【0105】
上述の成分の他に、本発明の開示の組成物は、「性能向上剤」としても知られる、1種または複数種の性能向上添加剤も含み得る。これらは、フラッシュさび防止剤を含み、材料および露出した金属との接触でさびが形成するのを防ぐために、水性システムで使用されるいくつかの有機または無機材料のいずれかを含む。一例は安息香酸ナトリウムである。
【0106】
他の任意の性能向上添加剤は、フィルムまたはコーティングの塗布中、またはフィルムまたはコーティングの形成後に、望ましくない製品の泡立ち(気泡)を防ぐために、水性システムに推奨される消泡剤のうちの1種または複数種である。泡が多すぎると、製品の必要な連続フィルム形成が乱され、製品の破損が生じ得る。Ashland Chemical,Inc.,Drew Industrial Division(Covington,KY,USA)から市販されているDrewplus L475などの泡制御製品を添加することが有利であり得る。
【0107】
本発明の開示の液体コーティング組成物は、ある位置にフォーム状で塗布され、それによって、組成物は、表面がカバーされているという一時的な視覚的指示薬としての役割を果たしてもよい。消泡剤の作用によって、泡または気泡は壊れ、乾燥したフィルムまたはコーティングであることを示す。したがって、フィルムまたはコーティングが乾燥していることを作業者が知るために、作業者は指示薬として、本発明の開示内容に従って消泡剤を使用することができる。
【0108】
その他の任意の性能向上添加剤は、コーティング配合物の貯蔵寿命を延ばすための酸化防止剤である。一例はブチル化ヒドロキシトルエンである。その他の添加剤としては、芳香料が挙げられる。
【0109】
塗布指示薬も加えることができる。これらの一部は上述されているが、顔料、染料、蛍光染料、または塗布中に発生する気泡が挙げられる。
【0110】
水または他の成分を適切に調節しながら、これらの更なる材料を少量(一般には1重量%未満)添加することができる。前述の任意の成分のうちの1種または複数種の混合物も用いることができることを理解されたい。
【0111】
繊維基材で構成される位置については、場合により、性能向上成分は、表面効果を提供する作用剤である。かかる表面効果としては、アイロンがけ不要、アイロンがけが容易、収縮制御、皺が寄らない、パーマネントプレス、水分制御、柔らかさ、強さ、スリップ防止、静電防止、たるみ防止、毛玉防止、しみをはじく、しみ落ち性、汚れをはじく、汚れ落ち性、撥水性、撥油性、臭いの制御、抗菌性または紫外線防御が挙げられる。
【0112】
フィルムまたはコーティングは、注ぐなどのいずれかの手段によって、標的表面または位置に塗布される。フィルムまたはコーティングは、標的表面上に連続層および/または均一層を達成するように塗布される。限定されないが、ブラシ、ローラー、ペイントパッド、マット、スポンジ、くし、手動操作式ポンプディスペンサー、圧縮空気操作式スプレーガン、エアレススプレーガン、電気または静電噴霧器、バックパック式噴霧塗布装置、エアロゾルスプレー缶、布、紙、羽毛、針、ナイフ、および他の塗布器具などの、塗装およびコーティングに通常使用されるコーティングシステムをコーティングに用いることができる。コーティングを塗布するための方法として浸し塗りが用いられる場合、特別な器具は必要ない。エアロゾルスプレー缶が塗布に用いられる場合には、コーティング組成物はエアロゾル噴射剤(圧縮ガスなど)と混合されてもよく、または缶内部のポリマー袋などのバリア材料によって、コーティング組成物は噴射剤から物理的に分離されてもよく;コーティング組成物と噴射剤が混合される場合には、混合物は1つまたは複数の液相を構成してもよい。
【0113】
生地およびカーペットなどの繊維基材に関しては、コーティングは、吸尽、フォーム、曲げニップ、ニップ、パッド、キスロール、ベック、かせ、ウィンチ、液体注入、オーバーフロー・フラッド、ロール、ブラシ、ローラー、スプレー、浸し塗り、浸漬等によって塗布してもよい。従来のベック染色手順、連続染色手順またはスレッドライン(thread−line)塗布を用いて、コーティングを塗布してもよい。
【0114】
本発明の開示の一実施形態において、静電噴霧器を用いて表面をコーティングしてもよい。静電噴霧器は、高い電位を介して水性コーティング組成物にエネルギーを与える。このエネルギーは水性コーティング組成物を噴霧し、荷電する役割を果たし、細かい荷電粒子のスプレーが生じる。静電噴霧器は、Tae In Tech Co.,(South Korea)およびSpectrum,(Houston,TX,USA)などの供給業者から容易に入手することができる。一般に、およそ5分間を超える時間、コーティングを硬化または乾燥させる。しかしながら、コーティングは30秒間後など、短い時間枠で抗菌的に有効であり得る。コーティングは、目的の用途に応じて、それを乾燥させる前、またはその後のいかなる時点で除去してもよい。乾燥時間は、湿度および温度などの環境条件を含む多くの因子に一部依存する。乾燥時間は、塗布されたコーティングの厚さによっても異なる。
【0115】
本発明の開示内容の他の実施形態において、エアレススプレーシステムを用いて、標的表面をコーティングしてもよい。エアレススプレーシステムでは、圧縮空気ではなく高流体圧力および特殊なノズルを使用し、液体を運び、霧状にする。液体は、一般に範囲3.5〜45MPaの圧力で流体ポンプによってエアレスガンに供給される。塗装がこの圧力で流体ノズルを出る時、塗装はわずかに膨張し、噴霧空気を当てることなく、霧状になり極めて小さな液滴を形成する。出てくる塗装の速度が高いことによって、標的表面に向かって液滴が前進する。エアレスガンの流体ノズルは、空気噴霧式ガンの流体ノズルとかなり異なる。適切なノズルの選択によって、どの程度の量の塗装が送達されるか、かつ塗布のファン・パターン(fan pattern)が決定される。エアレスノズルのオリフィスのサイズによって、スプレーされる塗装の量が決定される。エアレス流体の送達は高く、一般に700〜2000mL/分の範囲である。推奨されるガン距離は、標的から約30〜45cmであり、ノズルの種類に応じて、10〜60cmのファン・パターンが可能である。したがって、ノズルは、標的表面のサイズおよび形状および塗布されるコーティングの厚さに基づいて、各用途に対して選択され得る。エアレスガンは、食品加工装置、ふ卵場等で見られるような、「届き難い領域」から液体を跳ね返す小さな乱気流を生じさせ得る。高流速によって、清掃および消毒状況においてエアレスは有利となり、抗菌コーティングは、大きな表面積および複数の表面にわたって塗布される。塗布および乾燥フィルムの厚さは、様々な因子に応じて異なる。これらの因子としては、皮膜形成剤の濃度、レオロジー制御添加剤および/または他の添加剤の濃度、ならびに塗布温度および湿度が挙げられる。フィルム厚およびフィルムの均一性も、流体送達、スプレーオリフィス直径、エアレス塗布の場合には空気圧またはピストンポンプ圧、およびスプレーアプリケーターと標的表面の距離など、塗布装置のパラメーターに少なくとも一部依存する。したがって、液体配合物を調節して、所望のフィルム厚を得てもよい。
【0116】
液体コーティング組成物の塗布は、カバーすべき同一表面にわたって単一パスまたは複数パスで行わてもよい。単一パス塗布は通常、バンドの並行塗布を含み、そのバンドは、互いとの特定の重なり、例えば、完全な被覆を有する均一なコーティングを達成するために、バンド幅に対して10〜20%の重なりを有する。複数のパスが用いられる場合、コーティング組成物は、カバーされる同一表面積にわたって複数回、意図的に塗布され、パスは、平行または特定の角度をとってもよく、しばしば互いに垂直であり、かつそのパスの間には特定の時間があってもよく;単一パスでの同一フィルム厚を塗布する場合と比較して、垂れる傾向が一般に低減されるため、複数パスの塗布においてパス間にいくらかの時間を置くことは、コーティングの均一性を向上する利点を有し得る。
【0117】
本発明の開示の他の実施形態において、バックパック・スプレーシステム(バックパック噴霧器、背負い噴霧器または農薬噴霧器としても知られる)を使用して、標的表面をコーティングしてもよい。バックパック・スプレーシステムは、背中に背負う装置である。それは、容器と棒に取り付けられた噴霧ノズルを備え、噴霧、霧化、携帯型給水装置として植物の給水または農薬散布に通常使用される。バックパック・スプレーシステムの容器は通常、噴霧される液体約20リットルまでの容量を有する。材料はハンドポンプで加圧し得る。ハンドポンプによって、約1.2MPaまでの圧力が発生し得る。加圧液体は、ラインおよび棒を通って容器から噴霧ノズル(スプレーチップとしても知られる)に流れる。噴霧ノズルは通常、棒の端にあり、所望の流量および噴霧パターンを提供する。噴霧パターンは、噴霧ノズルの種類に応じて異なり、フラットファンパターン、円錐パターン、中空円錐パターン、星形パターン、フラッドパターン等が挙げられる。流量は、装置の種類、温度、ノズルタイプ、液体レオロジーおよび温度に応じて約0.05〜50L/分の範囲であってもよい。
【0118】
コーティング溶液の霧化は、標的領域に薄膜が均一に塗布されるように選択される。
【0119】
標的表面(位置)は、消毒剤または清浄薬を塗布するのが一般に難しい表面(届きにくい表面など)など、微生物で汚染される可能性があるすべての表面を含み得る。標的表面の例としては、食品または飲料品産業で見られる装置表面(タンク、コンベア、床、排水管、クーラー、フリーザー、冷蔵庫、装置表面、天井、壁、バルブ、ベルト、パイプ、排水管、配管、ジョイント、クレバス、その組み合わせ等);建設中の建物、新しい住宅の建設などの建物の表面、および別荘のような季節ごとの不動産物件内または上の表面(天井、壁、木枠、床、窓、配管)、台所(流し台、排水管、カウンタートップ、冷蔵庫、まな板)、浴室(シャワー、トイレ、排水管、パイプ、配管、バスタブ)(特にかびの除去)、デッキ、木材、はめ板および他の住宅外装、アスファルトシングル葺き、中庭または石材の領域(特に、藻類の処理のため);ボートおよびボート装置表面;生ゴミ処理器、ごみ入れおよびダンプスターまたは他のごみ除去装置および表面;非食品産業関連のパイプおよび排水管;病院で見られる表面;または手術、外来患者、または獣医のサービスが提供される表面(天井、壁、床、配管、ベッド、装置、病院/動物病院または他の医療環境で着用される衣類、例えばスクラブ、靴、および他の病院または動物病院の表面)、一次対応者または他の救急処置の装置および衣類;製材所の装置、表面および木材製品;レストランの表面;スーパーマーケット、食品雑貨店、小売店およびコンビニエンスストアの装置および表面;調製食品店の装置および表面および食品調製表面;醸造所および製パン所の表面;流し台、シャワー、カウンターおよびトイレなどの浴室表面;衣類および履物;玩具;学校および体育館の装置、天井、壁、床、窓、配管および他の表面;流し台、カウンター、器具などの台所の表面;木製または複合材のデッキ、プール、温水浴槽およびスパの表面;カーペット;紙;革;動物の死体、毛皮製品および皮製品;家禽、ウシ、乳牛、ヤギ、ウマおよびブタなどの納屋または家畜の小屋の表面;および家禽または小エビの孵化場が挙げられる。その他の表面としては、牛、家禽、豚、野菜、果物、魚介類、その組み合わせ等の食品も挙げられる。
【0120】
本発明で使用するのに適している更なる場所は、繊維表面基材を含み、繊維、ヤーン、布地、織り布、不織布、カーペット、革、または紙が挙げられる。繊維基材は、羊毛、綿、ジュート、サイザル、海草、紙、コイアおよびセルロース、またはその混合物などの天然繊維で作られており;またはポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、アクリルおよびそのブレンドなどの合成繊維;または少なくとも1種類の天然繊維と少なくとも1種類の合成繊維とのブレンドで作られている。「布地」とは、綿、レーヨン、絹、羊毛、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ナイロン、および「NOMEX(登録商標)」および「KEVLAR(登録商標)」などのアラミドなどの繊維で構成される、天然または合成布地またはそのブレンドを意味する。「布地ブレンド」とは、2種類以上の繊維で作られた布地を意味する。一般に、これらのブレンドは、少なくとも1種類の天然繊維と少なくとも1種類の合成繊維との組み合わせであるが、2種類以上の天然繊維のブレンドまたは2種類以上の合成繊維のブレンドであってもよい。不織布基材としては、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE,USA)から入手可能なSONTARAなどのスパンレース不織布、スパンボンド・メルトブロー・スパンボンド不織布などの積層不織布が挙げられる。
【0121】
表面材料の例は、金属(例えば、鋼、ステンレス鋼、クロム、チタン、鉄、銅、黄銅、アルミニウム、およびその合金)、鉱物(例えば、コンクリート)、天然または合成ポリマーおよびプラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン)、アクリロニトリルブタジエンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;およびナイロンなどのポリアミド)である。その他の表面としては、れんが、タイル、セラミック、磁器、ガラス、木材、ビニル、およびリノリウムが挙げられる。
【0122】
一時的なコーティングで保護される装置および表面は、保護されている間、使用中であっても、使用中でなくてもよい。標的表面は疎水性または親水性であってもよい。
【0123】
一般に、フィルムを形成するために、コーティングを約5〜約240分間硬化または乾燥させる。乾燥時間は、湿度および温度などの環境条件を含む多くの因子に一部依存する。乾燥時間は、塗布されたコーティングの厚さによっても異なる。本発明の組成物は、表面上に塗布すると、不活性溶媒の蒸発によってフィルムまたはコーティングを形成する。溶媒の蒸発は、コーティングを所定の位置で乾燥させることによって、または代替方法として、加熱または非加熱空気を送って乾燥させることによって行われることがある。しかしながら、コーティングは、30分後など短い時間枠で抗菌剤として有効であり得る。コーティングは、目的の用途に応じて、それを乾燥させる前、またはその後のいかなる時点で除去してもよい。
【0124】
標的表面上に塗布されたフィルムまたはコーティングの厚さは、除去に必要な時間および表面に塗布された単位面積当たりの殺生物剤の量に影響する。目的の抗菌性を維持するためにフィルムを再度塗布しなければならない時まで、フィルムが厚くなるほど、時間間隔は増加する。フィルムが薄いほど、すすぎによって除去するのが容易かつ速い。したがって、コーティングの容易な除去と長く持続する抗菌性の両方を可能にするフィルム厚が得られる方法で配合物を塗布することが重要である。フィルムまたはコーティングは厚さ約0.3〜約300マイクロメートルを有する。さらに具体的な実施形態において、フィルムまたはコーティングは厚さ約0.5〜約100マイクロメートルを有する。またさらに具体的な実施形態において、フィルムまたはコーティングは厚さ約1.0〜約30マイクロメートルを有する。
【0125】
本開示の方法は、使用者によって適切に決定された時間で除去され得る、フィルムまたはコーティングに関する。除去の時間は、(i)出発個体群から殺されたまたは不活性化された生物の量として一般に表される、所望の抗菌活性が得られる所望の最低接触時間、または(ii)その後の操作またはプロセス工程を開始する前に表面からコーティングを取り去る必要または要求によって決定されてもよい。乾燥後などのいかなる時点でコーティングを除去してもよいが、フィルム厚、抗菌剤の濃度、具体的な用途によって、除去する適切な時間が決定される。例えば、使用者は、運転停止期間後の正常な運転に、処理された装置を戻すことを望むことがある。例えば、果物は、食べる前に洗う必要がある。フィルムにおける殺生物剤が使い果たされると、そのフィルムを除去し、新たなコーティング層を塗布することができる。例えば、排水管は、毎日、毎週または隔週などの一定間隔をあけて処理されてもよい。抗菌活性は、フィルムを塗布して30秒間後と早い時点でも、何時間後、何日後、何週間後、さらには何年か後に測定されてもよい。したがって、コーティング除去の時期は、コーティングが用いられる用途により変わる。
【0126】
フィルムの除去は、得られたコーティングを溶解または分散することによって達成されてもよい。これは、コーティング上に水溶液を塗布することによって達成されてもよい。一実施形態において、溶液の温度は、約5℃〜約100℃の範囲である。他の実施形態において、溶液の温度は約10〜約80℃である。溶液または水の塗布は、表面を簡単にすすぐことによって、または表面上にスプレーすることによって達成されてもよい。コーティングの除去は、圧力洗浄器を使用することによって達成して、更なる機械的力によって除去を促進してもよく。コーティングの除去は、布またはスポンジを用いて水で洗浄することによっても達成される。さらに、通常使用される酸または塩基、キレートまたは洗剤など、穏やかな添加剤を用いて、または水溶液と混合して、皮膜形成剤または水分散剤を可溶化または分散するのを助けてもよい。代替方法として、水および/または他の成分を配水管に繰り返し洗い流すことによって、排水管などにおけるフィルムを分解してもよい。表面からフィルムを剥がすことによって、表面から擦りとる、またはブラシでとることによって、または除去の他の機械的なメカニズムによって、フィルムを除去してもよい。
【0127】
作業者による意図的な除去に加えて、自動またはロボットシステムによる除去、および例えばパイプまたは配水管において、時間の経過にしたがってコーティングと連続的もしくは定期的に接触する液体による、または摩耗などの機械的力を連続的または定期的にかけることによる、非意図的除去も含む。
【0128】
本発明の抗菌コーティングの除去は、水溶液を用いて行うことができる。本発明の目的では、コーティング組成物に使用される水溶液は、水を60〜100重量%含有する溶液であり、残りの成分は溶解成分である。溶解成分としては、限定されないが、アルコール、可溶化剤、界面活性剤、塩、キレート剤、酸および塩基を挙げ得る。
【0129】
本明細書で開示され、かつ請求される方法および組成物のすべては、本発明の開示に照らして、過度な実験なく、製造および実行してもよい。本発明の開示の方法および組成物は、本発明の開示および好ましい実施形態の種々の態様に関して記述されているが、本発明の開示内容の概念、精神、および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の開示の組成物および方法および工程および工程の順序に変化を加えてもよいことは当業者には明らかであるだろう。さらに具体的には、本明細書に記載の作用剤の代わりに、化学関連の特定の作用剤を使用し、同じまたは同様な結果が得られることは明らかであろう。当業者には明らかな、すべてのかかる同様な代替および修正形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の開示内容の精神、範囲、および概念内にあると考えられる。
【実施例】
【0130】
本発明の開示内容は、以下の実施例においてさらに定義される。開示内容の特定の好ましい実施形態を示すこれらの実施例は、単に実例として挙げられていることを理解されたい。上記の説明およびこれらの実施例から、当業者であれば、この開示内容の本質的な特徴を理解し、その精神および範囲から逸脱することなく、開示内容の様々な変更および修正を加えて、様々な用途および条件にそれをあわせることができる。
【0131】
実施例における略語および他の用語
「ATCC」はアメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)を意味し;「℃」は摂氏温度を意味し;「CFU」はコロニー形成単位を意味し;「rpm」は毎分回転数を意味し;「モル/L」は1リットル当たりのモル数を意味し;「PFU/mL」は1ミリリットル当たりのプラーク形成単位を意味し;「kg」はキログラムを意味し、「DI」は脱イオン化を意味し;「FBS」はウシ胎児血清を意味し;「cm」はセンチメートルを意味し;「m」はメートルを意味し;「μm」はマイクロメートル;「m2/分」は平方メートル/分を意味し;「g/m2」はグラム/平方メートルを意味し;「g」は地心重力定数を意味し;「L」はリットルを意味し;「log CFU」は、CFU数の10を底とする対数であり;「log CFU」は、未処理試料のlog CFUとコーティング組成物で処理された試料のlog CFUの差であり;「mL」はミリリットルを意味し;「MPa」はメガパスカルを意味し;「mS/cm」はミリジーメンス/センチメートルを意味し;「NFC」は、非食品接触清浄薬試験を意味し;「Pa」はパスカルを意味し;「Pa・s」はパスカル秒を意味し;「PEG」はポリエチレングリコールを意味し;「rpm」は毎分回転数を意味し;RSSは残留自己消毒活性を意味し;「s-1」は秒のマイナス1乗を意味し;「SS316」は、ステンレス鋼、316型(ASTM標準)を意味し;「wt%」は重量%を意味する。
【0132】
化学物質
別段の指定がない限り、すべての化学物質をSigma−Aldrich(St.Louis,MO,USA)から入手した。Alco Chemical(登録商標)(Chattanooga,TN,USA)からAlcogum(登録商標)L−520を入手した。Rheovis(登録商標)FRCは、Ciba(登録商標)(Basel,Switzerland)から入手した。Elvanol(登録商標)51−04および1,1,1,2−テトラフルオロエタンをDuPont(Wilmington,DE,USA)から入手した。ポリエチレングリコール(PEG−300)をDow(Midland,MI,USA)から入手した。FD&C Blue No.1染料をPylam Products(Tempe,AZ,USA)から入手した。BTC(登録商標)885およびBiosoft(登録商標)N25−7をStepan(Northfield,IL,USA)から入手した。Surfynol(登録商標)MD−20およびEnviroGem(登録商標)360をAirProducts(Allentown,PA,USA)から入手した。Bacto(商標)D/E中和ブロスをDifco(カタログ番号281910,Difco−Laboratories,Detroit,MI,USA)から入手した。Liquitint(登録商標)Patent BlueをMilliken(Spartanburg,SC,USA)から入手した。
【0133】
一般方法
硬質表面上の抗菌有効性の試験方法
以下に記載の試験方法を用いて、本発明の開示によるコーティング組成物の殺菌性または抗菌有効性を測定した。
【0134】
非食品接触清浄薬(NFC)試験:
抗菌コーティング組成物を塗布した時点で標的表面上に微生物汚染が既に存在する状況に関して、本発明の開示内容によるコーティング組成物の抗菌活性を評価するために、ASTM標準E1153−03準拠した「Standard Test Method for Efficacy of Sanitizers Recommended for Inanimate Non−Food Contact Surfaces」を用いた。この試験方法は、非食品接触清浄薬試験またはNFC試験と呼ばれる。その結果は、接種された未処理対照クーポンのlog CFUと、本明細書に示される方法に従ってコーティング組成物で処理されたクーポンのlog CFUの差を意味するlog CFUとして報告される。対照と処理クーポン両方のlog CFU数を計算した。反復試験クーポン上に生存する微生物の数の幾何平均として計算した。すべてのlog数は10を底とする対数である。
【0135】
微生物での残留自己消毒(RSS)試験:
微生物の汚染が既に乾燥しているコーティングと接触している状況について、この方法に従ってコーティング組成物の抗菌活性を評価するために、以下の残留自己消毒試験法を用いた。この試験法は、残留自己消毒試験またはRSS試験と呼ばれる。25.4mm×25.4mm、非多孔質、予め浄化されたステンレス鋼(SS316型)クーポンを試験に用いた。試験微生物を凍結保存培養から培地のチューブへと移した。良好な成長が得られる期間および時間、そのチューブをインキュベートした。新たな培地に継続的に移すことによって、接種材料を維持した。およそ48時間経過した接種懸濁液を約3秒間混合し、15分間静置しておいた。接種材料懸濁液は一般に、約1×108CFU/mLを含有した。接種材料全容積の上部3分の2をデカントし、ピペットで取り、新たな滅菌チューブに移した。一定容積の滅菌FBSを添加し、有機土壌添加率5重量%を得た。接種材料を室温で約15分間放置した。
【0136】
試験クーポンを穏やかな洗剤、次いでアルコールを使用して浄化し、滅菌水中で十分にすすぎ、空気乾燥させた。浄化した後は、表面のすべての取り扱いは、滅菌鉗子を用いて行った。クーポンを70重量%エタノールに30分間浸漬し、完全に乾燥させた。試験されるコーティング組成物0.05〜0.1mLを各ステンレス鋼クーポンに塗布し、均一に広げた。コーティング組成物を室温で一晩乾燥させた。対照表面は、コーティング組成物で処理されたクーポンまたは抗菌剤を含有しないコーティング組成物で処理されたクーポンと同一条件下で取り扱われた未処理クーポンであった。
【0137】
クーポンの表面にわたって接種材料0.01mLをスポッティングすることによって、クーポンに接種した。コーティング組成物1種類につき、2つのクーポンに接種した。接触して5分後(または他の適切な時間の後)、接種滅菌鉗子を用いて、50mL試験管内の中和ブロス20mlにクーポンを移した。音波処理水浴において試料を20秒間音波処理し、次いで250rpmにて周回振盪機(orbital shaker)で3〜4分間攪拌した。リン酸緩衝希釈水中で二重反復にて(in duplicate)連続的にすべての試料を希釈し、Bacto(商標)D/E中和ブロスにそれを移行して約30分以内に、すべての試料をプレート上に画線した。
【0138】
接種された、未処理対照クーポンのlog CFUと、本発明の開示によるコーティング組成物で処理されたクーポンのlog CFUとの差を示すlog CFUとして、結果を報告する。反復試験クーポン上に生存する微生物の数の幾何平均として、対照クーポンと処理クーポン両方のlog CFU数を計算した。すべてのlog数は10を底とする対数である。
【0139】
真菌胞子での残留自己消毒(RSS)試験:
微生物の汚染が既に乾燥しているコーティングと接触している状況について、本発明の開示に従ってコーティング組成物の抗菌活性を評価するために、以下の残留自己消毒試験法を用いた。この試験法は、残留自己消毒試験またはRSS試験と呼ばれる。25.4mm×25.4mm、非多孔質、予め浄化されたステンレス鋼(SS316型)クーポンを試験に用いた。この研究に使用された試験微生物は毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)ATCC9533であった。ジャガイモブドウ糖寒天(Potato Dextrose Agar(PDA))を用いた。20枚のプレートを培養物のうちの1つで画線し、室温で2週間インキュベートした。次いで、Tween(登録商標)80 0.01重量%を含有する滅菌脱イオン水でプレートを2回洗浄し、滅菌延展器でこすった。ガラスビーズを有する滅菌フラスコ内で洗浄物を合わせ、wrist action振盪機上で1時間振盪した。次いで、滅菌ガーゼを通して、フラスコ内容物を濾過し、新たな滅菌フラスコに入れ、4℃で保存した。標準平板菌数方法論によって、滅菌リン酸緩衝液での段階希釈を用い、PDAプレート上に広げて、生存真菌胞子の濃度を決定した。コロニーをカウントする前に、PDAプレートを4日間インキュベートした。試験を開始する前、胞子試料24mLを5,000×gにて10分間遠心した。上清を除去し、Tween(登録商標)80 0.01%を含有する滅菌脱イオン水8mLにペレットを再懸濁した。濃縮胞子試料のアリコート(4.75mL)を取り出し、ウシ胎児血清(最終濃度5重量%)0.25mLと混合し、接種材料を得た。
【0140】
試験クーポンを洗剤で洗浄し、水ですすいだ。次いで、クーポンを70重量%エタノール中ですすぎ、滅菌Whatman 2濾紙を含有するペトリ皿で空気乾燥させた。使用直前に、70重量%エタノールをクーポンにスプレーし、乾燥させた。試験される液体コーティング配合物を体積0.05mLで別々に塗布し、広げ、クーポンの大部分をコーティングした。次いで、室温(25℃)、相対湿度(RH)50%にて、クーポンを24時間乾燥させた。対照表面は、コーティング組成物で処理されたクーポンと同一条件下にて取り扱われた未処理クーポンであった。
【0141】
接種材料10マイクロリットルを30アリコートで各クーポンに塗布し、存在する場合には、各アリコートが乾燥コーティングと接触することを確認した。室温および相対湿度50%にて、指定の接触時間、接種材料をクーポンにさらした。所定の接触時間後、各クーポンをD/E中和ブロス20mLに入れ、10秒間音波処理した。次いで、ブロスのチューブをインキュベータ振盪機で250rpmにて4分間インキュベートした。各ブロスチューブからアリコート(0.1mL)を取り出し、滅菌リン酸緩衝液で連続的に希釈した。アリコート(0.1mL)を各希釈およびブロスチューブから取り出し、PDA上にプレーティングした。PDAプレートを室温で4日間インキュベートし、カウントした。接種材料、接触時間、およびコーティング処理の各組み合わせを三重反復で(in triplicate)試験した。対照として、コーティングしていないクーポンにも接種し、上述のように処理した。適切な希釈度の平板菌数に基づいて、生存真菌胞子の濃度が決定された。この数を20倍し、CFU/担体が決定された。CFU/担体の値は、10を底とする対数に変換され、その平均は、3つの反復試験から計算された。処理試料の平均log(CFU/担体)を同じ接触時間で保たれた対照(未処理)試料の平均log(CFU/担体)から引くことによって、対数減少を決定した。
【0142】
中和ブロスの有効性を検証するために、一連の希釈液を試験接種材料から調製し、PDAプレート上に広げた。10-5希釈液からのアリコート1.0mLを取り出し、液体コーティング組成物50μLでコーティングされたクーポンを含有する、2つの別々の20mL DEブロスチューブにそれを添加した。各ブロスチューブをボルテックスミキサーで力強く攪拌し、アリコート(0.1mL)を取り出し、PDAプレート上に広げた。上述のように、PDAプレートをインキュベートした。
【0143】
接種された、未処理対照クーポンのlog CFUと、本発明の開示に従ってコーティング組成物で処理されたクーポンのlog CFUとの差を示すlog CFUとして、結果を報告する。反復試験クーポン上に生存する微生物の数の幾何平均として、対照クーポンと処理クーポン両方のlog CFU数を計算した。すべてのlog数は10を底とする対数である。
【0144】
実施例1
カチオン性レオロジー剤を含むコーティング組成物
表1のコーティング組成物を次の実施例で調製し、使用した。
【0145】
以下のとおり、脱イオン水中のElvanol(登録商標)51−04 20重量%の溶液を最初に調製した。ガラス蓋と、4枚羽根ガラスオーバーヘッド・インペラーと、液体中に浸漬される、温度調節器および熱電対を有する電気マントルヒーター(Model CG−10007−18,Chemglass)とを備えた4リットルのガラス容器(Model CG−1920−05,Chemglass,(Vineland,NJ,USA))に、20℃の脱イオン水(2.4kg)を添加した。速度880rpmに設定された電気モーターにインペラーを取り付けた。漏斗を通して1分間にわたって、Elvanol(登録商標)51−04粉末(0.6kg)を水にゆっくりと添加した。粉末の添加が完了した後、温度調節器を設定ポイント50℃に設定することによって、温度を30分間にわたって50℃に上昇させた。混合物を50℃でさらに30分間攪拌し、その後、添加された粉末の少なくとも約98%が溶解した。混合および加熱を止め、ブフナー漏斗を使用して、チーズクロス(VWR International,(WestChester,PA,USA))の2層を通して、液体を濾過した。
【0146】
1リットル高密度ポリエチレンボトル(Nalgene(登録商標)型番号2104−0032,Nalge Inc.,(Rochester,NY,USA))に脱イオン水(463.4g)を添加した。Surfynol(登録商標)MD−20(2.0g)を添加し、振盪することによってよく混合した。次いで、Envirogem(登録商標)360(5.0g)を混合物に添加し、よく振盪した。Biosoft(登録商標)N25−7(0.1g)を添加し、混合物をよく振盪した。次いで、PEG−300(10.0g)を添加し、混合物をよく振盪した。BTC(登録商標)885(3.0g)を添加し、混合物を再びよく振盪した。次いで、Liquitint(登録商標)Patent Blue(0.5g)を添加し、色が均一になるまで、混合物をよく振盪した。次いで、上記で調製されたElvanol(登録商標)51−04溶液(500g)を混合物に添加し、よく振盪した。最後に、Rheovis(登録商標)FRC(16.0g)を混合物に添加し、完全に混合されるように、非常によく振盪した。
【0147】
上述のプロセスと同じプロセスを用いたが、異なる量の成分を用いて、上述の同様なコーティング組成物も製造した;表1に、次の実施例で使用される組成物を示す。
【0148】
【表1】

【0149】
実施例2
酸活性化レオロジー剤を含む比較用コーティング組成物
酸活性化レオロジー剤を含み、かつ本発明の組成物(次の実施例で開示される)との比較として使用されるコーティング組成物を以下のとおり調製した。
【0150】
2本羽根インペラーおよび2つの外部バンドヒーターを備えたステンレス鋼タンク(SS316型)を使用して、除去可能な抗菌コーティング組成物#248を製造した。清潔なタンクに20℃の水15.59kgを入れた。2本羽根ミキサーを速度200rpmで開始し、容器の深さの半分に等しいかなりの渦を得た。Surfynol(登録商標)MD20(156g)に続いてElvanol(登録商標)51−04 3.74kgを速度0.5kg/分で添加した。バンドヒーターの電源をオンにする前に、混合物を10分間攪拌した。デジタル温度センサーで混合物の温度をモニターした。温度センサーが65〜67℃に達するまで、混合物を加熱した。ヒーターの電源をオフにし、温度を40分間にわたって55℃に下げた。水(8.8kg,7℃)に続いてEnvirogem(登録商標)360 155.9g、PEG−300 311.7gを添加した。この混合物に、BTC(登録商標)885 93.5gに続いて、FD&C Blue No.1の5重量%溶液6.3を添加した。酸膨潤性レオロジー剤Alcogum(登録商標)L−520をよく混合し、次いでその2182gを混合物に添加した。混合物のpHは7.1であった。次いで、pHが5.5に達するまで、10重量%酢酸溶液を添加した。pHメーター(Model SP70P,VWR International,(West Chester,PA,USA))を用いて、pHをモニターした。酸を添加した後、混合物は急速に増粘した。孔径100マイクロメーターのフィルターバッグを使用して、混合物を濾過し、高密度ポリエチレンバケツに保管した。
【0151】
上述のプロセスと同じプロセスを用いたが、異なる量の成分および/またはレオロジー剤を活性化するための異なる種類の酸を用いて、上述の同様なコーティング組成物も製造した。表2は、次の実施例で使用されるこれらの組成物を示す。
【0152】
【表2】

【0153】
実施例3
酸活性化レオロジー剤とカチオン性レオロジー剤の両方を含むコーティング組成物を除去した後の、表面の外観
水道水ですすいでコーティングを除去した後に、酸活性化レオロジー剤とカチオン性レオロジー剤でコーティングされた表面の外観を調べた。アルミニウムとポリカーボネート(Lexan(登録商標)141R−701−BLK型,寸法305mm×102mm×3.2mm,General Electric Co.,(Fairfield,CT,USA))の両方をコーティングする表面として使用した。湿潤フィルムアプリケーター(フィルム厚203μm,AP−15SS型,Paul N.Gardner Co.Inc.,(Pompano Beach,FL,USA))を用いて、パネルを最初に液体コーティング組成物でコーティングした。次いで、コーティングを少なくとも24時間、空気中で乾燥させた。約25℃の水道水ですすぐことによって、乾燥したコーティングを洗い流した。パネルを再び、空気中で乾燥させ、残留物について目視でパネルの外観を分析し、その結果を表3にまとめる。コーティング組成物#248は、すすぎの後、試験された両方の表面材料上にはっきりと目に見える濁った残留物を残したのに対して、コーティング組成物#271は、低減された(reduced)依然として目立つ残留物によるを生成した。それと対照的に、本発明の組成物#286および#290は、試験された表面上に目立つ残留物を残さなかった。
【0154】
【表3】

【0155】
実施例4
バックパック・スプレーシステムを用いた噴霧塗布
AG03型噴霧ノズルを備えたバックパック・スプレーシステム(SP Professional Backpack Sprayer,Model SP0,SP Systems LLC,(Santa Monica,CA,USA))に実施例1のコーティング組成物#701を充填した。一体型ポンプレバーを用いて、バックパック噴霧器を0.7〜1.0MPaに加圧した。ファン開口角度約80度の三角形ファンが達成された。これによって、噴霧ノズルと標的表面の噴霧距離約0.3mを用いて、幅約0.5mの噴霧領域を効率的かつ迅速にカバーすることが可能となる。目に見えるコーティングの欠陥なく、優れた被覆率(99〜100%)が達成された。
【0156】
黄色ブドウ球菌(S.aureus)ATCC#6538でのNFC試験を用いて、コーティング組成物#701の抗菌活性を試験した。5分間の接触時間後、log CFU>6.2に相当する、コロニー形成単位の完全な除去が達成された。
【0157】
実施例5
エアロゾルスプレー缶を使用した噴霧塗布
実施例1の配合物#319(204g)を容積約0.21Lのエアロゾルスプレー缶に噴射剤(8.1g)と共に充填した。噴射剤は、質量比67:1の1,1,1,2−テトラフルオロエタンと窒素ガスの混合物であった。充填後の圧力は約0.97MPaであった。
【0158】
ファン開口角度約30度の円錐形ファン・パターンが達成された。これによって、噴霧ノズルと標的表面の噴霧距離約30cmを用いて、幅約15cmの噴霧領域を効率的かつ迅速にカバーすることが可能となる。目に見えるコーティングの欠陥なく、優れた被覆率(99〜100%)が達成された。垂直かつ水平に向いたアルミニウムパネルにコーティング組成物を塗布し、それぞれの向きで空気中にて乾燥させた。垂直な向きの乾燥コーティングの厚さは2〜5μmであり;水平な向きの乾燥コーティングの厚さは3〜8μmであった。
【0159】
実施例6
エアレススプレー装置を用いた、コーティング組成物の噴霧塗布
エアレススプレーシステム(President 46/1 SSTモデル,Graco Inc.,(Minneapolis,MN,USA))を用いて噴霧することによって、コーティング組成物#286および#290を表面に塗布した。圧力調整器を用いて、供給空気圧を0.55〜0.65MPaに設定し、噴霧圧力約25〜30MPaが得られた。0.9メートル延長(モデル#287023,Graco)を有し、かつ広角スプレーチップ(モデル711,Graco)を備えたポールスプレーガン(モデルXTR 502,Graco)を使用した。コーティング組成物を温度約10℃〜25℃でスプレーした。選択条件下にて、有利な噴霧開口角度75〜90度に相当する、噴霧距離約0.35mでのファン幅55〜70cmが提供された。効率的な霧化、完全な被覆、および垂直面もしくは傾斜面から垂れる、または滴り落ちる傾向が低いことなど、優れた噴霧適性が達成された。垂れポイントは、垂直面上にスプレーし、乾燥させた後に、コーティングが目に見える垂れ、または滴りを示し始めるそのポイントでのコーティングの厚さとして定義される。垂れポイントは、コーティング組成物#286および#290については20℃で約7.0μm、10℃で7.5μmと測定され、垂れおよび滴りに対して高い抵抗性を示した。
【0160】
コーティング組成物の塗布速度は、スプレーされる表面にわたってスプレーガンが移動する速度に応じて、約8〜15m2/分であると測定された。コーティング組成物の消費は、標的表面にわたってスプレーガンが移動する速度に応じて、約30〜60g/m2であった。
【0161】
アルミニウムパネル、エポキシ被覆アルミニウムパネル、ステンレス鋼、ポリカーボネートパネル、ポリメチルメタクリレートパネル、セラミックタイルおよびコンクリートなどの様々な表面にコーティング組成物を塗布した。乾燥後の得られたコーティングは、垂れ、フォームまたは泡、クレーターまたは未被覆領域などのコーティング欠陥が存在しないことを特徴とする、優れた外観を有した。15回の反復測定の平均フィルム厚は、コーティング組成物#286および#290に関して、それぞれ5.8マイクロメートルおよび5.5マイクロメートルであった。
【0162】
実施例7
凍結融解条件下でのコーティング組成物#286の安定性
コーティング組成物#286を凍結融解安定性試験にかけて、温度変化に対する長期間の安定性を評価し、保管中または輸送中に意図せず凍結された場合の組成物の挙動を予想した。組成物を3回の凍結融解サイクルにかけ、各凍結融解サイクルは、組成物を−20〜−16℃で24時間保管し、続いて組成物を+20〜+25℃で24時間保管することを特徴とした。凍結融解処理あり、および凍結融解処理なしで、コーティング組成物#286の垂れポイントを測定し、同一(7.0μm)であることが判明し、コーティング組成物#286の良好な凍結融解安定性が強調された。
【0163】
実施例8
短期間の抗菌特性
上述のNFC法を用いて、実施例1のコーティング組成物#286および#290を短期間の抗菌活性について試験した。コーティング組成物がまだ液状である間に、NFC法によって、コーティング組成物の抗菌活性を評価した。使用した微生物は大腸菌(Escherichia coli)O157:H7、サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)ATCC 10708、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC 6358および肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)ATCC 4352であった。表4に示すように、どちらのコーティング組成物も、試験されたすべての微生物に対して、少なくとも99.998%のCFU数の減少に相当する、少なくとも4.8log CFUの減少を示した。
【0164】
【表4】

【0165】
実施例9
残留抗菌活性
上述の残留自己消毒(RSS)試験法を用いて、実施例1のコーティング組成物#286および#290を試験した。コーティング組成物が表面上で乾燥した後に、RSS法でコーティング組成物の抗菌活性を評価する。使用した試験微生物は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC 6358および肺炎杆菌(Klebsiella pneumoniae)ATCC 4352であった。表5に示すように、試験された微生物に関して接触時間5分以内に、両方のコーティング組成物によって、5.3log CFUを超える減少が達成された。
【0166】
組成物を温度50℃で14日間維持することによって、コーティング組成物#290を促進老化処理にもかけた。老化処理後の組成物のRSS法による抗菌活性は、老化処理にかけていない組成物の活性と同じであり、組成物の良好な安定性が強調されている。
【0167】
【表5】

【0168】
実施例10
カチオン性レオロジー剤を含むコーティング組成物の流動学的特性
Bohlin Gemini制御応力レオメーター(Malvern Instruments Ltd.,(Worcestershire,UK))を使用して、液体抗菌配合物の流動学的特性を評価した。この装置は、ペルチェ加熱システムおよび滑らかな表面を有する40mm平行プレートを備えた。「ギャップ」と呼ばれるプレート間の距離を0.150mmに調節した。このシステムを所望の試験温度に設定した。試料1ml未満をペルチェプレートに添加した。上部の平行プレートを所望のギャップに下げた。最初に余分な材料をピペットで除去し、次いで1片のプラスチックの直定規を用いて、平行なプレートの周りの試料をきれいに取り除いた。剪断速度2000s-1にて試料を30秒間予備剪断し、次いで、装置が温度設定ポイントに達すると同時に回復させた。400秒間の過程にわたって、0.03s-1〜30,000s-1の剪断速度スイープを行った。
【0169】
2通りの温度、異なる剪断速度での実施例1のコーティング組成物#286の粘度を表6に示す。このデータから、調べた両方の温度に関して、剪断速度が増加するにしたがって、粘度が減少することが示されており、コーティング組成物の偽塑性が強調されている。
【0170】
【表6】

【0171】
実施例11
カチオン性レオロジー剤を含むコーティング組成物の剪断減粘指数
「偽塑性指数」または「剪断減粘指数」(STI)は、垂れおよび滴りに対する組成物の抵抗性の指標を提供する。一般的な測定では、1s-1および10s-1などの2つの異なる剪断速度で粘度が決定される。低い剪断速度で記録された値は、高い剪断速度での値で割られ、STIが得られる。一般に、STIが高いほど、コーティング材料が有する、垂れおよび滴りに対する抵抗性が高くなる。
【0172】
剪断減粘指数(STI)は、1s-1で測定された粘度を10s-1で測定された粘度で割ることによって計算された。実施例1のコーティング組成物#286のSTI値を表7に示す。表から分かるように、10℃〜25℃の温度範囲内のSTI値は約3.0〜3.3であり、垂直面への塗布後、例えば噴霧塗布後に滴り落ちない、かつ垂れないフィルムを得るのに十分に高い剪断減粘指数が得られる。
【0173】
コーティング組成物の温度を下げることによって、剪断減粘指数が増加することも注目に値することである。これは、コーティング組成物が垂れおよび滴りに対して抵抗性が高いであろう、食品加工工場、冷蔵室等の冷たい環境でコーティング組成物が使用される用途に有利である。
【0174】
【表7】

【0175】
実施例12
コーティングを除去した後の表面残留物の研究
除去可能な抗菌コーティングを意図的に除去した後、目に見える表面残留物の存在および程度を調べるために、以下の実験を行った。湿潤フィルムアプリケーター(フィルム厚203μm,AP−15SSモデル,Paul N.Gardner Co.Inc.,(Pompano Beach,FL,USA))を用いて、液体コーティング組成物#271(比較)および#286(本発明)をアルミニウムパネルに塗布した。次いで、湿潤フィルムを空気中で少なくとも12時間乾燥させた。スプレーボトル(型番号23609−182,VWR International,(West Chester,PA,USA))を使用して、表8に示す液体を均一にスプレーするか、または対照としてスプレーしないままにしておいた。スプレーされたコーティングを少なくとも3時間、再び乾燥させた。次いで、乾燥したコーティングを約25℃の水道水ですすいで洗い流した。水で濡れたパネルを再び、空気中で少なくとも3時間乾燥させ、残留物について目視でパネルの外観を分析した。その結果を表8にまとめる。
【0176】
酸活性化レオロジー剤を含む除去可能な抗菌コーティング組成物(実施例2のコーティング配合物#271など)は、前記コーティング組成物から形成された乾燥コーティングが、コーティングの実際の除去工程前に液体と接触する場合には、表面上にはっきりと目に見える残留物を残す。残留物の程度は、コーティングと接触する液体の組成によって異なった。中性pHの液体と比較すると、塩基含有液体はより多い残留物を生じ、次に酸性の液体と比較すると、より多い残留物を生じた。それと対照的に、本発明によるコーティング組成物は、いずれの試験条件下でも残留物を残さなかった。
【0177】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.水可溶性または水分散性皮膜形成剤;
ii.少なくとも1種類のカチオン性または非イオン性抗菌剤;
iii.水性溶媒;
iv.カチオン性レオロジー剤;
を含む、残留自己消毒特性を提供する除去可能な抗菌コーティング組成物。
【請求項2】
前記皮膜形成剤が、ポリ(ビニルアルコール)またはそのコポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記抗菌剤が、第四級アンモニウム化合物を含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗菌コーティング組成物がさらに:前記抗菌コーティング組成物に対して濃度0.01〜2重量%で第1界面活性剤と、前記抗菌コーティング組成物に対して濃度0.001〜0.2重量%で第2界面活性剤とを含み;
前記第1界面活性剤が非イオン性であり、かつ前記第2界面活性剤がアルコールエトキシレートを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記抗菌コーティング組成物が、2〜6または2.5〜4の剪断減粘指数を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
10℃および剪断速度1s-1で測定される前記抗菌コーティング組成物の粘度が、0.5〜100Pa・sまたは2〜50Pa・sである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記カチオン性レオロジー剤がアクリルポリマーを含み、前記アクリルポリマーが
a)
【化1】

(式中、R、R’およびR’’が独立して、アルキル基またはアリール基またはその任意の組み合わせであり、m=1〜5である)
から選択される構造の官能基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
ある位置での微生物の制御を提供する方法であって、
a)i)水可溶性または水分散性皮膜形成剤;
ii)少なくとも1種類の抗菌剤;
iii)水性溶媒;
iv)カチオン性レオロジー剤;を合わせて、剪断減粘性の除去可能なコーティング組成物を得る工程と、
b)前記コーティング組成物を前記位置に塗布する工程と、
を含み、
前記位置に塗布した後に、乾燥コーティングを形成するように、前記コーティング組成物が放置される、方法。
【請求項9】
前記位置が、金属、鉱物、天然および合成ポリマー、プラスチック、れんが、タイル、セラミック、磁器、ビニル、ガラス、リノリウムおよび木材からなる群から選択される材料を含む物品の少なくとも1つの表面を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記乾燥コーティング上に水溶液を塗布することによって、前記乾燥コーティングを除去することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
a.(i)電気伝導率0〜10mS/cmまたは0および1mS/cmの水性溶媒;ならびに(ii)水可溶性または水分散性皮膜形成剤を合わせることによって、懸濁液を形成する工程と、
b.前記懸濁液を少なくとも10分間、30℃〜95℃に加熱する工程と、
任意の順序で(i)抗菌剤;(ii)カチオン性レオロジー剤;(iii)場合により、消泡剤、第1界面活性剤、第2界面活性剤、着色剤、可塑剤および腐食防止剤のうちの1種または複数種を含む追加の成分;を添加する工程と、
c.前記組成物を混合する工程と、
を含む、除去可能な抗菌コーティング組成物を製造する方法。

【公表番号】特表2013−500388(P2013−500388A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522965(P2012−522965)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2010/043382
【国際公開番号】WO2011/017097
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】