説明

カチオン性共重合体およびその製造方法およびその用途

【課題】洗剤添加剤として使用したときに高い再汚染防止能を発現するカチオン性重合体を提供することを目的とする。
【解決手段】
下記一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)由来の構造(構造A)を1〜55質量%と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)由来の構造(構造B)を45〜99質量%とを含むカチオン性共重合体である。


(式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素数2〜6のアルキレン基であり、nは、1〜200の数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性共重合体およびその用途に関する。詳細には、特定のポリアルキレンオキシド系単量体由来の構造と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体由来の構造とを所定の割合で含むカチオン性共重合体、該カチオン性共重合体の製造方法、該カチオン性共重合体を用いた洗剤用ビルダーおよび洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレンオキシド系共重合体は、種々の工業分野において用いられている有用な重合体である。例えば、該共重合体は、分散剤、洗浄剤組成物等の水系用途に有用である。
ポリアルキレンオキシド系共重合体を上記水系用途に用いる場合、使用する水系の水質による影響、併用する他の成分との相互作用による影響などを考慮する必要がある。例えば、国や地域によって水系の硬度が異なる。このため、低硬度の水系において各種効果を発揮できるポリアルキレンオキシド系共重合体であっても、高硬度の水系においては十分な効果が発揮できない場合がある。また、洗剤組成物に界面活性剤が含まれる場合、ポリアルキレンオキシド系共重合体と界面活性剤との相互作用の程度によって、洗浄効果が十分に発揮できない場合がある。
【0003】
これまで、ポリアルキレンオキシド系共重合体としては、ポリアルキレンオキシド系共重合体と四級化窒素含有単量体との共重合体(特許文献1)、ポリアルキレンオキシド系共重合体と四級カチオン基含有単量体との共重合体(特許文献2)等が提案されている。しかし、これらのポリアルキレンオキシド系共重合体は、上記水系用途の性能に関して十分なものではない。
【0004】
更に、上記課題を解決する為に、所定の疎水基含有ポリアルキレンオキシド系単量体1〜55質量%と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体45〜99質量%とを含む単量体組成物を共重合して得られるカチオン性共重合体が提案されている(特許文献3)。
【0005】
しかし、最近の消費者の環境意識の高まりにより、節水を目的として、風呂の残り湯を洗濯に使用する等の洗濯が定着してきた。これにより、風呂の残り湯に含まれる汚れ成分が洗濯中に繊維等に付着したり、風呂の追い焚きによる硬水成分の濃縮等が問題となる為、より高硬度下において、洗濯中に汚れ成分の繊維への再付着を抑制する性能(再汚染防止能という)が従来より厳しく求められるようになってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007−510806号公報
【特許文献2】特開2001−181354号公報
【特許文献3】特開2009−52012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高硬度下においても、洗浄時に優れた再汚染防止能を発揮できる共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために様々な重合体について検討を行った。その結果、特定のポリアルキレンオキシド系単量体由来の構造とカチオン性単量体由来の構造を有する重合体は、高硬度下においても、極めて良好な再汚染防止能を示すことに想到し、本発明を完成した。
すなわち、本発明のカチオン性共重合体は、下記一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)由来の構造(構造A)を1〜55質量%と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)由来の構造(構造B)を45〜99質量%とを含むカチオン性共重合体である。
【0009】
【化1】

【0010】

(式(1)中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、炭素数2〜6のアルキレン基であり、
nは、1〜200の数である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定のポリアルキレンオキシド系単量体由来の構造と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体由来の構造とを所定の割合で含むことにより、特に水系用途において、高い再汚染防止能を発揮できるカチオン性共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
〔本発明のカチオン性重合体〕
本発明のカチオン性共重合体は、下記一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)由来の構造(構造A)を1〜55質量%と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)由来の構造(構造B)を45〜99質量%とを含むカチオン性共重合体である。
【0014】
【化2】

【0015】

(式(1)中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、炭素数2〜6のアルキレン基であり、
nは、1〜200の数である。)
上記一般式(1)において、Rは、炭素数2〜6のアルキレン基である。炭素数2〜6のアルキレン基としては、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基であり、単量体(a)の製造が容易であることから、エチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、イソペンチレン基、イソヘキシレン基、すなわち、−CHCH−、−CHCH(CH)−、−CH(CH)CH−、−CHCH(C)−、−CH(C)CH−、−CHCH(C)−、−CH(C)CH−、−CHCH(C)−、−CH(C)CH−が、より好ましい。
【0016】
上記一般式(1)において、nは、1〜200の数であるが、本発明のカチオン性重合体の水系用途における機能を顕著に発現させるためには、好ましくは1〜100の整数であり、さらに好ましくは5〜50の整数である。
【0017】
ポリアルキレンオキシド系単量体(a)が、炭素数2〜6のアルキレン基の構造単位を有することにより、本発明のカチオン性重合体の高硬度下における析出を抑制する。また、本発明のカチオン性重合体を液体洗剤に配合した際に、界面活性剤との親和性が向上することに起因して、液体洗剤との相溶性が向上する。
【0018】
ポリアルキレンオキシド系単量体(a)の炭素−炭素不飽和二重結合近傍の構造が、CH=CH(R)−CHCH−O−、で表される構造を有することにより、カチオン性単量体(b)との共重合性が良好となる為、本発明のカチオン性重合体を製造した際に、残存単量体等の不純物が低減するため、本発明のカチオン性重合体が良好な再汚染防止能を発現する。また、ポリアルキレンオキシド系単量体(a)が一般式(1)で表される構造を有することにより、単量体の製造が簡略化でき、残存原料に起因する不純物の混入を抑制する事ができる。
【0019】
更にポリアルキレンオキシド系単量体(a)が一般式(1)で表される構造を有することにより、本発明のカチオン性重合体を洗剤組成物に使用した場合に、洗剤として好適に用いられる中性から弱アルカリ性の条件において、特に安定して高い再汚染防止能等を発揮できる。上記構造を有することにより、pHや温度の変化に対する安定性が高いため、単量体合成時や重合時、あるいは各用途下、例えば、洗剤の製造時における厳しい条件下でも、極めて分解し難いという特徴を有する。そのため、例えば、洗剤などに配合した場合、高い性能を発揮し、製品の品質のばらつきを抑えることが可能となる。例えば、ポリアルキレンオキシド系単量体において、不飽和二重結合とポリアルキレングリコール鎖がエステル結合を介して結合している構造を有する場合、上記工程において、エステル結合が加水分解を受けることとなる。一般に、ポリアルキレンオキシド系単量体は分子量が高く、少量のエステル結合が加水分解を受けても、重合体の物性に与える影響は大きい。そのため、得られる重合体の性能のばらつきが大きくなってしまう。更にポリアルキレンオキシド系単量体(a)が一般式(1)で表される構造を有することにより、上記問題が生じることを実質的に避けることが可能であることから好ましい。また、ポリアルキレンオキシド系単量体(a)が一般式(1)で表される構造を有することに起因して、特に泥汚れの再汚染防止能が顕著に向上する。
【0020】
上記一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)(本発明のポリアルキレンオキシド系単量体(a)、あるいは単に「単量体a」ともいう。)は、任意の適切な方法で調製することができる。
例えば、イソプレノール等の不飽和アルコールの水酸基に、炭素数2〜6のアルキレンオキサイド、炭素数2〜6の環状エーテルを付加反応させる方法、イソプレニルクロライド等の不飽和ハロゲン化合物にアルキレングリコール等を反応させる方法が簡便である。なお、水酸基へのアルキレンオキサイドの付加反応は、公知の反応条件等が適用できる。この中でも、イソプレノールに炭素数2〜6のアルキレンオキサイドを付加させることによりポリアルキレンオキシド系単量体(a)を製造することが、プロセス的に最も簡便であり、得られるカチオン性重合体の性能も良好であることから好ましい。
【0021】
なお、一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)由来の構造(構造A)とは、一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)が重合することにより形成される構造であり、具体的には、下記一般式(2)で表される。
【0022】
【化3】

【0023】

一般式(2)中におけるR、R、nは、一般式(1)中におけるR、R、nと同じである。
【0024】
上記少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)としては、任意の適切な単量体を用いることができる。例えば、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ジアリルアルキルアミン、これらの塩、およびこれらの四級化物、ならびにジアリルアミン、ジアリルアミンの塩が好ましく用いられる。これらのカチオン性単量体を用いることにより、泥粒子や水溶性着色物質等の親水性汚れに対する洗浄力に優れた共重合体を得ることができる。上記カチオン性単量体としては、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0025】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノヘキシル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノオクチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノドデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0026】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを適切な酸性物質で中和したものが挙げられる。酸性物質としては塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸等の有機酸が挙げられる。
【0027】
少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体としてジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを使用する場合は、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩を使用することが好ましい。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩を使用するとは、予めジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを適切な酸性物質で中和してから重合反応系(重合溶液)に添加しても良いし、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートと適切な酸性物質を別々に重合反応系(重合溶液)に添加することにより、中和と重合を同時に行なっても良い。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの塩を使用して重合を行うことにより、得られるカチオン性共重合体の再汚染防止能が向上する。上記酸性物質としては重合に影響を与えない観点から重合性基を有さないものが適切であり、混入し得る不純物や腐食防止の観点から、有機酸であることが好ましい。得られる重合体の物性面からは、酸基を一つ有する酸性物質がさらに好ましい。
【0028】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの四級化物としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートを任意の適切な四級化剤で四級化したものが挙げられる。具体的には、例えば、トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートクロリド、トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートサルフェート、ジメチルエチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートサルフェート、トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレートクロリド、トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレートサルフェート、ジメチルエチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレートサルフェート、トリメチルアンモニウムブチル(メタ)アクリレートクロリド、トリメチルアンモニウムブチル(メタ)アクリレートサルフェート、ジメチルエチルアンモニウムブチル(メタ)アクリレートサルフェートが挙げられる。なかでも、トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートクロリド、トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートサルフェート、ジメチルエチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートサルフェートが好ましく、トリメチルアンモニウムエチル(メタ)アクリレートクロリドがさらに好ましく用いられる。
【0029】
四級化剤としては、任意の適切なものが用いられる。例えば、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、臭化エチル、ヨウ化メチル、ベンジルクロリド等のハロゲン化アルキルが挙げられる。
【0030】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノオクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノドデシル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。また、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを任意の適切な酸性物質で四級化したものが挙げられる。酸性物質としては、上記と同様のものを用いることができる。また、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの四級化物としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドを任意の適切な四級化剤で四級化したものが挙げられる。具体的には、例えば、(メタ)アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリルアミドブチルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。四級化剤としては、上記と同様のものを用いることができる。
【0031】
ビニルイミダゾールおよびビニルイミダゾールの塩およびビニルイミダゾールの四級化物としては、例えば、ビニルイミダゾール、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムクロリド、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムメチルサルフェート、3−エチル−1−ビニルイミダゾリウムエチルサルフェート、3−エチル−1−ビニルイミダゾリウムクロリド3−ベンジル−1−ビニルイミダゾリウムクロリドが挙げられる。
【0032】
ビニルピリジンおよびビニルピリジンの塩およびビニルピリジンの四級化物としては、例えば、ビニルピリジン、1−メチル−4−ビニルピリジニウムクロリド、1−メチル−4−ビニルピリジニウムメチルサルフェート、3−ベンジル−1−ビニルピリジニウムクロリドが挙げられる。
【0033】
ジアリルアルキルアミンおよびジアリルアルキルアミンの塩およびジアリルアルキルアミンの四級化物としては、例えば、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジエチルアンモニウムクロリド、ジアリルメチルエチルアンモニウムクロリド、ジアリルジプロピルアンモニウムクロリドが挙げられる。好ましくは、ジアリルジアルキルアンモニウムクロリドが用いられる。
【0034】
なお、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)由来の構造(構造B)とは、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)が重合することにより形成される構造であり、具体的には、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)がビニルアミン、CH=CHNHの場合、−CH−CH(NH)−で表される構造である。なお、カチオン性共重合体の有するカチオン性単量体(b)由来の構造(構造B)の割合(質量%)を計算する場合は、1〜3級アミノ基を有する単量体の場合は、アミノ基が塩型の場合には、対応するアミンとして計算し、4級アミンの場合は、カウンターアニオンは計算に入れないものとする。単量体組成物中の単量体の割合(質量%)を計算する場合も同様とする。例えば、ビニルピリジンの塩酸塩の場合は、対応するアミンであるビニルピリジンとして計算するものとする。
【0035】
本発明のカチオン性共重合体は、一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)由来の構造(構造A)、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)由来の構造(構造B)に加え、単量体(a)、単量体(b)と共重合可能な、その他の単量体(e)由来の構造(E)を有しても良い。他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリセリル、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール等の水酸基を有する不飽和単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド等のアミド基を有する単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル;モノアルキルアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸エステル、不飽和アルコールにエチレンオキサイドのみを付加した単量体、エチレングリコールモノビニルエーテルのアルキレンオキシサイド付加物、ブチレングリコールモノビニルエーテルのアルキレンオキシサイド付加物、(メタ)アリルアルコールのアルキレンオキサイド付加物等の、一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)に該当しないポリアルキレンオキシド系単量体;スチレン、アクリロニトリル、イソブチレンが挙げられる。これら他の単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
本発明のカチオン性共重合体は、一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)由来の構造(構造A)、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)由来の構造(構造B)、任意成分としてその他の単量体(e)由来の構造(E)を必須として有するが、それぞれの割合は、本発明のカチオン性共重合体の有する全単量体(単量体(a)、単量体(b)、単量体(e))由来の構造100質量%に対して、構造Aが1〜55質量%、構造Bが45〜99質量%、構造Eが0〜35%であり、好ましくは構造Aが5〜55質量%、構造Bが45〜95質量%、構造Eが0〜30質量%、さらに好ましくは構造Aが10〜55質量%、構造Bが45〜90質量%、構造Eが0〜10質量%、特に好ましくは構造Aが15〜50質量%、構造Bが50〜85質量%、構造Eが0〜5質量%であり、最も好ましくは構造Aが20〜50質量%、構造Bが50〜80質量%、構造Eが0質量%である。上記範囲で有することにより、本発明のカチオン性共重合体は、高い再汚染防止能を発現する。構造Aの含有量が1質量%未満であると、汚れの分散性が低下し、再汚染防止能や洗浄力が低下する場合がある。構造Bの含有量が45質量%未満であると、汚れへの吸着性が低下し、汚れに対する再汚染防止能や洗浄力が低下する場合がある。
【0037】
〔本発明のカチオン性重合体の製造方法〕
本発明のカチオン性共重合体は、一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)(単に単量体(a)ともいう)、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)(単に単量体(b)ともいう)、必要に応じて任意成分であるその他の単量体(e)(単に単量体(e)ともいう)を含む単量体組成物を重合することにより製造することができる。
【0038】
本発明で用いられる単量体組成物中(すなわち、単量体組成物を構成する単量体(a)、(b)、(e)の合計100質量%に対し)、一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)の含有量は、1〜55質量%であり、好ましくは5〜55質量%、さらに好ましくは10〜55質量%、特に好ましくは15〜50質量%、最も好ましくは20〜50質量%である。同様に、上記少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)の含有量は、単量体組成物中、45〜99質量%であり、好ましくは45〜95質量%、さらに好ましくは45〜90質量%、特に好ましくは50〜85質量%、最も好ましくは50〜80質量%である。一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)の含有量が1質量%未満であると、汚れの分散性が低下し、再汚染防止能や洗浄力が低下する場合がある。カチオン性共重合体の含有量が45質量%未満であると、汚れへの吸着性が低下し、汚れに対する再汚染防止能や洗浄力が低下する場合がある。
上記他の単量体の含有量は、単量体組成物中、好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは0質量%である。
【0039】
本発明のカチオン性共重合体を得るための重合方法としては、任意の適切な重合方法を採用し得る。例えば、ラジカル重合が挙げられる。ラジカル重合は任意の適切な方法によって行うことができる。例えば、溶液重合方法およびエマルション重合方法、好ましくは溶液重合方法である。
【0040】
溶液重合に用いられる溶媒としては、任意の適切な溶媒を採用し得る。好ましくは、水、アルコール、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール類等の水性の溶媒が挙げられ、より好ましくは水が挙げられる。上記溶媒は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、上記単量体の溶媒への溶解性を向上させるため、重合反応に悪影響を及ぼさない範囲で、有機溶媒を適宜加えても良い。
【0041】
上記有機溶媒としては、任意の適切な有機溶媒を採用し得る。例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;等が挙げられる。上記有機溶媒は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0042】
上記溶媒の使用量は、上記単量体組成物100質量部に対して、好ましくは40〜300質量部、より好ましくは45〜200質量部、さらに好ましくは50〜150質量部の範囲である。溶媒の使用量が単量体組成物100質量部に対して40質量部未満の場合には、得られる重合体の分子量が高くなりすぎるおそれがある。一方、溶媒の使用量が単量体組成物100質量部に対して300質量部を超える場合には、得られる重合体の濃度が低くなり、場合によっては溶媒除去が必要となるおそれがある。
【0043】
溶液重合においては、代表的には、反応系内に予め仕込まれた溶媒中に、上記単量体を含む溶液と開始剤を含む溶液とを滴下する。各溶液の濃度については、任意の適切な濃度を採用し得る。例えば、一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)と、必要に応じて上記他の単量体(e)、開始剤成分、および必要に応じてその他の添加剤、をそれぞれ溶媒に溶解し、またはそのままで、重合中に反応系内に適当に添加(滴下)して重合を行ってもよい。また、例えば、上記において、一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)の全使用量の一部または全部を重合開始前に予め反応系内に添加(初期仕込み)しても良い。
【0044】
上記重合反応において、一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)の添加が、カチオン性単量体(b)の添加より早く終了することが好ましく、一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)の添加が終了した際に、カチオン性単量体(b)の全使用量の5〜100質量%が未添加であることがより好ましい。単量体(a)の添加が終了した際に、単量体(b)の全使用量の10〜50質量%が未添加であることがさらに好ましく、単量体(b)の全使用量の15〜35質量%が未添加であることが特に好ましい。このように添加して重合を行うことにより、重合性が異なる一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)とカチオン性単量体の共重合性を改善することができるので、得られた共重合体のクレイ分散性、再汚染防止能等が向上するので好ましい。
【0045】
上記開始剤としては、任意の適切な開始剤を採用し得る。例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等の重亜硫酸塩;亜硫酸塩やピロ亜硫酸塩、亜リン酸塩や次亜リン酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;等が挙げられる。好ましくはアゾ系化合物であり、さらに好ましくは2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩である。これらの開始剤は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0046】
開始剤の使用量は、単量体の種類、濃度等に応じて適切に設定され得る。開始剤の使用量は、通常、単量体組成物1モルに対して、0.1〜20g、好ましくは0.5〜15g、さらに好ましくは1〜10gである。
【0047】
上記重合反応においては、反応系内に、連鎖移動剤等の添加剤を含んでいても良い。上記添加剤としては、任意の適切な添加剤を採用し得る。例えば、メルカプトエタノール、チオグリコール酸、二亜硫酸ナトリウム等の添加剤を重合中に添加することができる。
【0048】
添加剤の使用量は、単量体の種類、濃度等に応じて適切に設定され得る。例えば、単量体組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部の添加剤が用いられ得る。
【0049】
上記滴下に要する時間(滴下時間)は、好ましくは60分〜420分、より好ましくは60分〜300分、特に好ましくは90分〜240分である。滴下時間は、滴下する単量体や開始剤の種類によって、それぞれ異なっていても良い。滴下時間が60分未満であると、共重合体が高分子量化するために洗浄力が低下するおそれや、カチオン性単量体の単独重合体ができやすくなり、洗浄力が低下するおそれがある。滴下時間が420分を超える場合には、得られる重合体の生産性の点で問題が生じるおそれがある。
【0050】
上記重合反応における重合温度は、開始剤によって、任意の適切な温度を採用し得る。重合温度は、通常、25〜200℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは60〜120℃、特に好ましくは80〜110℃である。重合温度が低すぎると、得られる重合体の重量平均分子量が上昇するおそれや、不純物の生成量が増加するおそれがある。なお、重合温度とは、重合反応の反応溶液の温度をいう。重合温度の測定方法や制御手段については、任意の適切な方法や手段を採用し得る。例えば、一般に使用される装置を用いて測定すれば良い。
【0051】
上記重合反応において、重合時の圧力は、任意の適切な圧力を採用し得る。例えば、常圧下、減圧下、加圧下の何れの圧力下であっても良い。反応系内の雰囲気は、空気雰囲気のままで行ってもよいが、不活性ガス雰囲気としてもよい。例えば、重合開始前に反応系内を窒素等の不活性ガスで置換することができる。これにより、反応系内の雰囲気ガス(例えば、酸素ガス等)が液相内に溶解し、重合禁止剤として作用する。
【0052】
上記滴下が終了し、反応系における重合反応が終了した時点での反応溶液(共重合体溶液)中の固形分濃度は、35質量%以上であることが好ましい。35質量%未満の場合には、得られる重合体の生産性を大幅に向上することができないおそれがある。より好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは45〜65質量%である。このように、重合反応終了時の固形分濃度が35質量%以上であれば、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。そのため、効率よく重合体を得ることができる。例えば、濃縮工程を省略することができ、重合体の生産性が大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制することが可能となる。なお、重合反応が終了した時点とは、全ての滴下成分の滴下が終了した時点であってもよいが、好ましくは、その後、所定の熟成時間を経過した時点(重合が完結した時点)を言う。
【0053】
上記固形分濃度は、130℃の熱風乾燥機で1時間処理した後の不揮発分を、固形分として算出すれば良い。
【0054】
上記熟成時間は、好ましくは1〜120分間、より好ましくは5〜60分間、さらに好ましくは10〜30分間である。熟成時間が1分間未満の場合には、熟成が不十分なために単量体成分が残ることがあり、残存モノマーに起因する不純物が形成して性能低下等を招くおそれがある。熟成時間が120分間を超える場合には、重合体溶液の着色のおそれがある。
【0055】
上記のような方法で好ましく製造され得る本発明のカチオン性共重合体は、水系用途において高い性能を発揮でき、耐硬水性、洗浄力、再汚染防止能、クレイ(Clay)分散性、界面活性剤との相互作用などが高いので、分散剤、洗剤用ビルダー、洗剤組成物、洗浄剤、水処理剤に用いた場合に特に優れた性能を発揮できる。
【0056】
本発明のカチオン性共重合体は、再汚染防止率(測定方法の詳細は後述)が、好ましくは65.0%以上、より好ましくは68.0%以上、さらに好ましくは70.0%以上である。
【0057】
本発明のカチオン性共重合体は、重量平均分子量が、好ましくは1000〜1000000、より好ましくは2000〜200000、特に好ましくは4000〜100000である。重量平均分子量が上記範囲を外れると、再汚染防止能、クレイ分散能が劣るおそれがある。
【0058】
〔本発明のカチオン性重合体組成物〕
本発明のカチオン性重合体組成物は、本発明のカチオン性重合体を必須として含有し、カチオン性重合体のみを含んでいても良いが、通常はその他に、重合開始剤残渣、残存モノマー、重合時の副生成物、水分から選ばれる1以上を含有する。好ましいカチオン性重合体組成物の形態は、カチオン性重合体を40〜60質量%含有し、水を40〜60質量%含有する形態である。
【0059】
[本発明のカチオン性共重合体の用途]
〔洗剤用ビルダー〕
本発明の洗剤用ビルダーは、上記カチオン性共重合体を含む。具体的には、本発明の洗剤用ビルダーは、上記カチオン性共重合体のみからなっていてもよいし、他の任意の適切な洗剤用ビルダーとの混合物からなっていてもよい。
本発明の洗剤用ビルダー中における上記カチオン性共重合体の含有割合は、本発明の洗剤用ビルダー100質量%に対して、0.1〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜70質量%、さらに好ましくは5〜65質量%である。カチオン性共重合体の含有割合が0.1質量%未満であると、洗剤組成物として用いた場合の洗浄力が不十分になるおそれがある。カチオン性共重合体の含有割合が80質量%を超えると、不経済になるおそれがある。
上記他の任意の適切な洗剤用ビルダーとしては、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ボウ硝、炭酸ナトリウム、ニトリロトリ酢酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウムやカリウム、ゼオライト、多糖類のカルボキシル誘導体、(メタ)アクリル酸(共)重合体塩、フマル酸(共)重合体塩などの水溶性重合体等が挙げられる。
本発明の洗剤用ビルダーは、液体洗剤用であっても粉末洗剤用であってもよい。本発明の洗剤用ビルダーは界面活性剤との相溶性に優れる。このため、高濃縮の液体洗剤組成物とすることができる点では液体洗剤用が好ましい。
本発明の洗剤用ビルダーは、上記カチオン性共重合体以外のその他の成分について、その種類や配合比率は、本発明の作用効果を損なわない範囲で、任意の適切な種類や配合比率を設定し得る。
本発明の洗剤用ビルダーは、親水性や疎水性の汚れといった種々の汚れに対応することができ、再汚染防止能等の特性に優れる。
【0060】
〔洗剤組成物〕
本発明の洗剤組成物は、上記カチオン性共重合体を含む。好ましくは、上記本発明の洗剤用ビルダーを含む。
本発明の洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であっても良いし、液体洗剤組成物であっても良い。本発明の洗剤組成物は、通常、洗剤に用い得る、任意の適切な添加剤を含んでいても良い。上記添加剤としては、例えば、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等のよごれ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適に挙げられる。また、粉末洗剤組成物の場合には、ゼオライトを配合することが好ましい。
本発明の洗剤組成物中の本発明の洗剤用ビルダーの含有割合は、本発明の洗剤組成物100質量%に対して、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜15質量%、さらに好ましくは0.3〜10質量%、特に好ましくは0.4〜8質量%、最も好ましくは0.5〜5質量%である。本発明の洗剤用ビルダーの含有割合が0.1質量%未満であると、十分な洗浄性能を発揮できないおそれがある。本発明の洗剤用ビルダーの含有割合が20質量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
本発明の洗剤組成物における、上記カチオン性共重合体あるいは本発明の洗剤用ビルダーの配合形態は、液状でも良いし、固形状でも良い。洗剤の販売時の形態(例えば、液状物または固形物)に応じて決定すれば良い。また、重合後の水溶液の形態で配合しても良いし、水溶液の水分をある程度減少させて濃縮した状態で配合しても良いし、乾燥固化した状態で配合しても良い。
なお、本発明の洗剤組成物は、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含む。上記カチオン性共重合体は、キレート能に優れるため、微量金属を捕捉することにより、過酸化水素を安定でき、漂白剤の安定化能に優れることから、好適に用いることができる。
【0061】
本発明の洗剤組成物は、上記カチオン性共重合体以外に、界面活性剤を含むことが好ましい。
本発明の洗剤組成物中に好ましく含まれる界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、および、両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である。これらの界面活性剤は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
界面活性剤を2種以上併用する場合、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを合わせた使用量は、全界面活性剤100質量%に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上である。
上記アニオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等を挙げることができる。また、これらのアニオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していても良い。
上記ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。また、これらのノニオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していても良い。
上記カチオン系界面活性剤の具体例としては、4級アンモニウム塩等を挙げることができる。カチオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していても良い。
上記両性界面活性剤の具体例としては、カルボキシル型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができる。両性界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していても良い。
本発明の洗剤組成物に含まれる界面活性剤の配合割合は、洗剤組成物中、好ましくは10〜60質量%であり、より好ましくは12〜50質量%であり、さらに好ましくは15〜45質量%であり、特に好ましくは15〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が10質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなるおそれがある。他方、60質量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
本発明の洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物100質量%に対して、好ましくは0.1〜75質量%、より好ましくは0.2〜70質量%、さらに好ましくは0.5〜65質量%、さらに好ましくは0.7〜60質量%、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
本発明の洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物は、カオリン濁度が、好ましくは200mg/L以下、より好ましくは150mg/L以下、さらに好ましくは120mg/L以下、特に好ましくは100mg/L以下、最も好ましくは50mg/L以下である。
上記カチオン性共重合体を洗剤用ビルダーとして液体洗剤組成物に添加する場合としない場合とでのカオリン濁度の変化(差)は、好ましくは500mg/L以下、より好ましくは400mg/L以下、さらに好ましくは300mg/L以下、特に好ましくは200mg/L以下、最も好ましくは100mg/L以下である。
カオリン濁度は、例えば、厚さ10mmの50mm角セルに均一に撹拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製の濁度計(NDH2000)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
上記洗剤組成物に配合し得る酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ、アルカリセルラーゼが好ましい。上記酵素の添加量は、洗剤組成物100質量%に対して、5質量%以下が好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなるおそれや、経済性が低下するおそれがある。
上記洗剤組成物に配合し得るアルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が好適である。
上記洗剤組成物に配合し得るキレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、STPP(トリポリリン酸ナトリウム)、クエン酸等が好適である。本発明におけるポリアルキレングリコール系重合体以外のその他の成分を含むものを添加しても良い。
本発明の洗剤組成物は、液体洗剤用であっても粉末洗剤用であってもよいが、界面活性剤との相溶性に優れ、高濃縮の液体洗剤組成物とすることができる点では液体洗剤用が好ましい。
本発明の洗剤組成物は、上記カチオン性共重合体あるいは本発明の洗剤用ビルダー以外のその他の成分について、その種類や配合比率は、本発明の作用効果を損なわない範囲で、任意の適切な種類や配合比率を設定し得る。
本発明の洗剤組成物は、親水性や疎水性の汚れといった種々の汚れに対応することができ、再汚染防止能等の特性に優れる。
【0062】
〔その他の用途〕
上記カチオン性共重合体は、顔料分散剤やスケール防止剤に用いることもできる。また、シャンプー、リンス、ボディーソープ等の身体用洗剤、繊維加工、建材加工、塗料、窯業等の分野においても幅広く応用できる。
上記カチオン性共重合体は、水処理剤、繊維処理剤に用いることもできる。
上記水処理剤は、冷却水系、ボイラー水系等の水系に添加されることにより、例えば、炭酸カルシウムやシリカ等のスケール防止性や金属の腐食防止性等にとって有利となる可能性がある。
上記繊維処理剤は、各種繊維を処理することにより、例えば、吸水性、柔軟性、耐磨耗性、汚れの防止性、触感性等にとって有利となる可能性がある。
上記水処理剤や上記繊維処理剤において、上記カチオン性共重合体は、そのまま添加しても良いし、上記カチオン性共重合体以外の他の成分とともに添加しても良い。
上記水処理剤や上記繊維処理剤は、上記カチオン性共重合体以外のその他の成分について、その種類や配合比率は、本発明の作用効果を損なわない範囲で、任意の適切な種類や配合比率を設定し得る。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は質量基準である。
【0064】
<重合体の分子量の測定>
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値である。
測定装置:日立社製「L−7000シリーズ」
検出器:RI、UV(検出波長:254nm)
カラム:昭和電工社製「TOSOH guard column α」、「TSKgel α−3000」及び「TSKgel α−2500」をこの順で接続したもの
温度:40℃
流速:0.4mL/分
検量線:ポリエチレンオキシド標準サンプル(ジーエルサイエンス社製)を用いて作成
溶離液:100mMホウ酸ナトリウム/アセトニトリル:80/20(wt%)。
【0065】
<重合体組成物の固形分の測定>
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで、本発明の重合体(本発明の重合体組成物1.0gに水1.0gを加えたもの)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の質量変化から、固形分(%)と揮発成分(%)を算出した。
【0066】
<再汚染防止能>
(i)Test fabric社より入手したポリエステル布を5cm×5cmに切断し、白布を作製した。この白布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE2000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
(ii)塩化カルシウム2水和物2.94gに純水を加えて10kgとし、硬水を調製した。
(iii)直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム4.0g、炭酸ナトリウム4.0gに、純水を加えて、100.0gとし、界面活性剤水溶液を調製した。
(iv)ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1Lと界面活性剤水溶液5g、固形分換算で2%の共重合体水溶液1g、ゼオライト0.15g、およびJIS11 種クレー0.5gをポットに入れ、100rpmで1分間撹拌した。その後、白布10枚を入れ、100rpmで10分間撹拌した。
(v)手で白布の水を切り、25℃にした硬水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間撹拌した。
(vi)白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度、白布の白度を反射率にて測定した。
(vii)以上の測定結果から、下式により再汚染防止率を求めた。
再汚染防止率(%)=〔(洗浄後の白色度)/(原白布の白色度)〕×100。
【0067】
<実施例1−1>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量500mlのSUS製セパラブルフラスコに、14.5gの純水を仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、90℃に保持された重合反応系中に、57.0gの100%ジメチルアミノエチルメタクリレート(以下、100%DAMと略す。)、23.8gの60%イソプレノールへのエチレンオキシド10mol付加物(以下、60%IPN−10EOと略す)、8.1gの15%2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド水溶液(以下、15%V−50と略す。)、20.9gの100%酢酸を、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、100%DAMと100%酢酸は120分間、60%IPN−10EOは90分間、15%V−50は150分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。100%DAMの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、20.9gの純水を徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度50%、重量平均分子量80,000の共重合体(1)の水溶液(重合体組成物1)を得た。
【0068】
<実施例1−2>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量500mlのSUS製セパラブルフラスコに、14.5gの純水を仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、90℃に保持された重合反応系中に、57.0gの100%DAM、28.5gの50%イソプレノールへのエチレンオキシド25mol付加物(以下、50%IPN−25EOと略す)、7.7gの15%V−50、20.9gの100%酢酸を、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、100%DAMと100%酢酸は120分間、50%IPN−25EOは90分間、15%V−50は150分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。100%DAMの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、21.9gの純水を徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度50%、重量平均分子量45,000の共重合体(2)の水溶液(重合体組成物2)を得た。
【0069】
<実施例1−3>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量500mlのSUS製セパラブルフラスコに、12.9gの純水を仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、90℃に保持された重合反応系中に、57.0gの100%DAM、76.0gの50%IPN−25EO、8.2gの15%V−50、20.9gの100%酢酸を、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、100%DAMと100%酢酸は120分間、50%IPN−25EOは90分間、15%V−50は150分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。100%DAMの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、17.3gの純水を徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度50%、重量平均分子量31,000の共重合体(3)の水溶液(重合体組成物3)を得た。
【0070】
<比較例1−1>
還流冷却機、温度計、攪拌機を備えた容量500mlのSUS製セパラブルフラスコに、12.9gの純水を仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温して重合反応系とした。次に、撹拌下、90℃に保持された重合反応系中に、57.0gの100%DAM、76.0gの50%アリルアルコールへのエチレンオキシド25mol付加物(以下、50%PEA−25EOと略す)、8.2gの15%V−50、20.9gの100%酢酸を、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、100%DAMと100%酢酸は120分間、50%PEA−25EOは90分間、15%V−50は150分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。100%DAMの滴下終了後、更に30分間、上記反応溶液を90℃に保持して熟成し、重合を終了した。重合終了後、重合反応液を放冷、攪拌しながら、17.3gの純水を徐々に滴下し、重合反応液を希釈した。このようにして、固形分濃度50%、重量平均分子量66,000の比較重合体(1)の水溶液(重合体組成物)を得た。
【0071】
<実施例2>
上記実施例で得られた共重合体(2)、共重合体(3)及び比較重合体(1)について、上記方法に従って再汚染防止能について評価を行った。結果を表1にまとめた。
【0072】
【表1】

【0073】

表1から明らかなように、本発明における重合体は、従来の比較重合体に比して、有意に優れた再汚染防止能を有している。従って、本発明のカチオン性重合体は、洗剤組成物の添加剤等、水系用途に好ましく使用できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のカチオン性共重合体は、高い再汚染防止能等を発揮する。したがって、洗剤用ビルダー、洗剤組成物、洗浄剤に用いた場合に特に優れた性能を発揮できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)由来の構造(構造A)を1〜55質量%と、少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)由来の構造(構造B)を45〜99質量%とを含むカチオン性共重合体。
【化1】


(式(1)中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、炭素数2〜6のアルキレン基であり、
nは、1〜200の数である。)
【請求項2】
下記一般式(1)で表される構造を有するポリアルキレンオキシド系単量体(a)と少なくとも1つの窒素原子を含むカチオン性単量体(b)を必須とする単量体組成物を重合する、カチオン性共重合体の製造方法。
【化2】


(式(1)中、
は、水素原子またはメチル基であり、
は、炭素数2〜6のアルキレン基であり、
nは、1〜200の数である。)
【請求項3】
請求項1に記載のカチオン性共重合体を含む洗剤ビルダー。

【公開番号】特開2011−168745(P2011−168745A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36060(P2010−36060)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】