説明

カチオン性表面サイズ剤の製造方法およびその方法で得られるサイズ剤

【課題】使用される環境、特に水の条件(硬度、pHなど)や適用される紙の種類(紙、板紙など)に拘らず、優れた分散安定性を有し、かつ優れたサイズ性を付与するカチオン性表面サイズ剤を提供する。
【解決手段】15〜45重量%の3級アミノ基含有モノマー(a)と、15〜85重量%の(メタ)アクリル酸エステル(b)と、0〜70重量%のスチレン類(c)とを含有するモノマー混合物を、連鎖移動剤の存在下で溶液重合させて共重合体(A)を得る第1工程;前記共重合体(A)と非イオン性の親水性モノマー(d)とを重合させて共重合体(B)を得る第2工程;前記共重合体(B)と疎水性モノマー(e)とを、界面活性剤の不存在下で重合させて共重合体(C)を得る第3工程;および前記共重合体(C)に存在する3級アミノ基を4級化し、共重合体(C)の4級アンモニウム塩を得る第4工程を含む、カチオン性表面サイズ剤の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性表面サイズ剤の製造方法、その方法で得られるサイズ剤、そのサイズ剤を塗工した紙および板紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のカチオン性表面サイズ剤は、一般的に、スチレン類および3級アミノ基含有モノマー(すなわち、カチオン性モノマー)を主成分とするモノマー成分を重合させて得られる3級アミノ基を有する共重合体、または3級アミノ基を4級化変成した4級アンモニウム塩基を有する共重合体の水溶液である(特許文献1および2)。これらの共重合体は、以下のような方法で得られる:
(i)有機溶剤または有機溶剤と水との混合溶媒中で、油溶性重合触媒を用いた溶液重合を行う。
(ii)水主体の水系溶媒中で、水溶性重合触媒を用いた乳化重合を行う。
このような方法で得られたカチオン性表面サイズ剤は、良好なサイズ性を有するものの、適用される環境、特に水の影響(硬度、pHなど)を受けやすく、安定性が不十分という問題がある。
【0003】
また、溶液中で重合して得られるカチオン性表面サイズ剤として、水溶性高分子を併用するものが知られている(特許文献3)。しかし、特許文献1および2に記載の表面サイズ剤と同様、良好なサイズ性を有するものの、適用される環境、特に水の影響(硬度、pHなど)を受けやすく、安定性が不十分である。
【0004】
一方、有機溶剤を用いずに水中で乳化重合して得られるカチオン性表面サイズ剤、あるいは溶液重合によって得られるカチオン性ポリマーと疎水性モノマーとを乳化重合して得られるカチオン性表面サイズ剤は、乳化剤として界面活性剤などを使用する場合が多い(特許文献4〜8)。界面活性剤を使用した乳化重合物は、溶液重合によって得られるカチオン性表面サイズ剤と比較して、使用される環境の影響を受けにくく、安定性の改善が期待できるが、その改善効果は十分ではない。さらに、このような乳化重合物は、界面活性剤を使用しているため、溶液重合によって得られるカチオン性表面サイズ剤と比較して、サイズ性付与効果が劣る。
【0005】
また、界面活性剤を用いずに乳化重合を行う製造方法も知られている(特許文献9および10)。界面活性剤を用いずに得られるカチオン性表面サイズ剤は、溶液重合によって得られるカチオン性ポリマー水溶液を分散剤として使用しているため、界面活性剤を使用したサイズ剤と比較して、同等の安定性と優れたサイズ性とを示す。しかし、溶液重合によって得られるカチオン性表面サイズ剤と比較して、サイズ性付与効果が劣る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−161259号公報
【特許文献2】特開2006−322093号公報
【特許文献3】特開2007−197866号公報
【特許文献4】特開平11−256496号公報
【特許文献5】特開平11−279983号公報
【特許文献6】特開2001−262495号公報
【特許文献7】特開2006−016712号公報
【特許文献8】特開2009−242686号公報
【特許文献9】特開2002−129494号公報
【特許文献10】特表2008−501830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、使用される環境、特に水の条件(硬度、pHなど)や適用される紙の種類(紙、板紙など)に拘らず、優れた分散安定性を有し、かつ優れたサイズ性を付与するカチオン性表面サイズ剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、
(1)15〜45重量%の3級アミノ基含有モノマー(a)と、15〜85重量%の(メタ)アクリル酸エステル(b)と、0〜70重量%のスチレン類(c)とを含有するモノマー混合物を、連鎖移動剤の存在下で溶液重合させて共重合体(A)を得る第1工程;
前記共重合体(A)と非イオン性の親水性モノマー(d)とを重合させて共重合体(B)を得る第2工程;
前記共重合体(B)と疎水性モノマー(e)とを、界面活性剤の不存在下で重合させて共重合体(C)を得る第3工程;および
前記共重合体(C)に存在する3級アミノ基を4級化し、共重合体(C)の4級アンモニウム塩を得る第4工程、
を含むことを特徴とする、カチオン性表面サイズ剤の製造方法。
(2)前記(メタ)アクリル酸エステル(b)のエステル部分が、4〜18個の炭素原子を有する鎖状アルキル、4〜18個の炭素原子を有する環状アルキル、または6〜18個の炭素原子を有するアリールである、(1)に記載の方法。
(3)前記非イオン性の親水性モノマー(d)が、前記共重合体(C)を構成する成分全体に対して0.1〜10重量%の割合となるように使用される、(1)または(2)に記載の方法。
(4)前記共重合体(B)が、前記共重合体(C)を構成する成分全体に対して30〜70重量%の割合で使用され、かつ前記3級アミノ基含有モノマー(a)が、前記共重合体(C)を構成する成分全体に対して5〜20重量%の割合となるように使用される、請求項(1)〜(3)のいずれかの項に記載の方法。
(5)前記第2工程における重合が、水溶性のフリーラジカル開始剤と重金属塩とを用いる酸化還元系で行われる、(1)〜(4)のいずれかの項に記載の方法。
(6)前記水溶性のフリーラジカル開始剤が過酸化水素であり、前記重金属塩が硫酸鉄(II)である、(5)に記載の方法。
(7)前記第1工程において、共重合体(A)に存在する3級アミノ基部分を、酸を用いて完全に中和し水溶液の形態にする、(1)〜(6)のいずれかの項に記載の方法。
(8)前記共重合体(A)が、50nm以下の平均粒子径を有する、(1)〜(7)のいずれかの項に記載の方法。
(9)前記共重合体(C)の4級アンモニウム塩が、100nm以上の平均粒子径を有する、(1)〜(8)のいずれかの項に記載の方法。
(10)前記共重合体(C)に存在する3級アミノ基の50モル%以上が4級化される、(1)〜(9)のいずれかの項に記載の方法。
(11)前記4級化が、エピクロルヒドリンを用いて行われる、(1)〜(10)のいずれかの項に記載の方法。
(12)前記3級アミノ基含有モノマー(a)が、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、(1)〜(11)のいずれかの項に記載の方法。
(13)(1)〜(12)のいずれかの項に記載の方法によって製造される、カチオン性表面サイズ剤。
(14)(13)に記載のカチオン性表面サイズ剤、またはこのサイズ剤と水溶性高分子化合物との混合物を、紙または板紙の表面に塗工する、紙または板紙の表面処理方法。
(15)(14)に記載の方法によって得られる、紙または板紙。
(16)カチオン性表面サイズ剤を塗工する前の紙または板紙が、内添サイズ剤を含まない紙または板紙、ステキヒトサイズ度が2秒以下で且つ紙面pHが6.5〜8.5の中性紙、あるいは2分Cobb吸水度が100g/m2以上で且つ紙面pHが6.5〜8.5の中性板紙である、(15)に記載の紙または板紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、使用される環境、特に水の条件(硬度、pHなど)や適用される紙の種類(紙、板紙など)に拘らず、優れた分散安定性を有し、かつ優れたサイズ性を付与するカチオン性表面サイズ剤を提供し得るという効果を奏する。
【0010】
すなわち、第1工程〜第3工程を経て共重合体(C)を得ることにより、使用される水の硬度による影響を受けにくくなり、共重合体(C)の安定性を向上することができる。また、共重合体(C)に存在する3級アミノ基を4級化し、共重合体(C)の4級アンモニウム塩を得ることにより、使用される水の硬度による影響をさらに受けにくくなる。さらにpHによる影響も受けにくくなり、塗工液濃度まで希釈したときに凝集することなく、均一に分散するなどの効果を有するサイズ剤が得られる。したがって、内添サイズ剤を含まない紙または板紙、ステキヒトサイズ度が2秒以下の中性紙、あるいは2分Cobb吸水度が100g/m2以上の中性板紙に、塗工した場合でも表面サイズ剤が紙中全体に凝集分子で分散することなく、紙の表面に分布する量が増加するため、表面サイズ剤の疎水性が紙表面で十分発揮されるものと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るカチオン性表面サイズ剤の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」と記載する場合がある)は、15〜45重量%の3級アミノ基含有モノマー(a)と、15〜85重量%の(メタ)アクリル酸エステル(b)と、0〜70重量%のスチレン類(c)とを含有するモノマー混合物を、連鎖移動剤の存在下で溶液重合させて共重合体(A)を得る第1工程;
前記共重合体(A)と非イオン性の親水性モノマー(d)とを重合させて共重合体(B)を得る第2工程;
前記共重合体(B)と疎水性モノマー(e)とを、界面活性剤の不存在下で重合させて共重合体(C)を得る第3工程;および
前記共重合体(C)に存在する3級アミノ基を4級化し、共重合体(C)の4級アンモニウム塩を得る第4工程、
を含む。以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。
【0012】
<カチオン性表面サイズ剤の製造方法>
(第1工程)
第1工程は、3級アミノ基含有モノマー(a)(以下、単に「a成分」と記載する場合がある)と、(メタ)アクリル酸エステル(b)(以下、単に「b成分」と記載する場合がある)と、スチレン類(c)(以下、単に「c成分」と記載する場合がある)とを特定の割合で含有するモノマー混合物を、連鎖移動剤の存在下で溶液重合させて共重合体(A)を得る工程である。
【0013】
本発明の製造方法に用いられる3級アミノ基含有モノマー(a成分)は、分子内に3級アミノ基を有し、後述の(メタ)アクリル酸エステル(b)およびスチレン類(c)と共重合可能なモノマーであれば、特に限定されない。このようなa成分としては、例えば、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0014】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0015】
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0016】
これらa成分の中でも、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートあるいはジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0017】
a成分は、共重合体(A)を構成するモノマー混合物中に、15〜45重量%の割合で含有される。a成分の割合が15重量%未満の場合、共重合体(A)の親水性が低下し、水中で均一に分散できなくなる。一方、a成分の割合が45重量%を超える場合、共重合体(A)の疎水性が低下し、得られるサイズ剤のサイズ性が低下する。a成分は、好ましくは18〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%の割合で含有される。
【0018】
a成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上を併用する場合、含有量は合計で上記範囲を満たすようにする。
【0019】
本発明の製造方法に用いられる(メタ)アクリル酸エステル(b成分)は、上記a成分および後述のスチレン類(c)と共重合可能なものであれば、特に限定されない。
【0020】
b成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルのエステル部分が4〜18個の炭素原子を有する鎖状アルキル、4〜18個の炭素原子を有する環状アルキル、または6〜18個の炭素原子を有するアリールであるもの、すなわち、CH2=CH−COORまたはCH2=C(CH3)−COORのRが、4〜18個の炭素原子を有するアルキル基、4〜18個の炭素原子を有する環状アルキル基、または6〜18個の炭素原子を有するアリール基であるものが好ましい。
【0021】
このようなb成分としては、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートあるいはエチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0022】
b成分は、共重合体(A)を構成するモノマー混合物中に、15〜85重量%の割合で含有される。b成分の割合が15重量%未満の場合、得られるサイズ剤のサイズ性が低下する。一方、b成分の割合が85重量%を超える場合、共重合体(A)の親水性が低下し、水中で均一に分散できなくなる。b成分は、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは40〜80重量%の割合で含有される。
【0023】
b成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上を併用する場合、含有量は合計で上記範囲を満たすようにする。
【0024】
本発明の製造方法に用いられるスチレン類(c成分)は、上記a成分およびb成分と共重合可能なものであれば、特に限定されない。c成分としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルトルエン、クロルメチルスチレンなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレンあるいはビニルトルエンが好ましい。
【0025】
c成分は、共重合体(A)を構成するモノマー混合物中に、0〜70重量%の割合で含有される。c成分の割合が70重量%を超える場合、溶液重合に際して共重合性が悪くなる。共重合性が低下すると、表面サイズ剤の有効成分が凝集したミクロ粒子状となって紙表面に点在し、不均一な被覆しかできないため、サイズ効果が低減してしまう。c成分は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜40重量%の割合で含有される。
【0026】
c成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、2種以上を併用する場合、含有量は合計で上記範囲を満たすようにする。
【0027】
さらに、モノマー混合物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、a成分〜c成分以外のモノマーを含んでいてもよい。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレートなどの短鎖アルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;アクリロニトリルなどのようなビニル基やアリル基を有する化合物が挙げられる。
【0028】
共重合体(A)は、上記a成分〜c成分を含有するモノマー混合物を、連鎖移動剤の存在下で溶液重合させて得られる。モノマー混合物の溶液重合は特に限定されず、例えば、一般的なラジカル重合によって行われる。
【0029】
溶液重合の際に用いられる溶剤は、モノマー混合物の組成によって適宜選択され得、例えば、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、3−メチル−2−ブタノール、ジエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、エチルベンゼン、トルエンなどが挙げられる。これらの中でも、好ましくはイソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトンあるいはトルエンが用いられる。
【0030】
連鎖移動剤は、共重合体(A)の重量平均分子量を制御するために用いられる。連鎖移動剤としては、油溶性連鎖移動剤(例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸ドデシルエステルなどのメルカプタン類、クメン、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマー、ターピノーレンなど)、水溶性連鎖移動剤(例えば、メルカプトエタノール、チオグリコール酸およびその塩など)などが挙げられる。連鎖移動剤は、溶剤やモノマー混合物の組成によって適宜選択され得、その使用量は、所望の重量平均分子量を有する共重合体(A)が得られるように、適宜決定され得る。
【0031】
重合開始剤としては、特に限定されず、アゾ系開始剤(例えば、アゾビスメチルブチロニトリル、ジメチルアゾビスイソブチレート、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなど)、過酸化物系重合開始剤(例えば、過酸化水素、過硫酸ベンゾイル、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クメンヒドロペルオキシドなど)などが挙げられる。重合開始剤の使用量は、特に限定されず、モノマー混合物の組成によって適宜決定され得る。
【0032】
重合反応の温度や時間は、特に限定されず、溶剤、モノマー混合物の組成、用いる重合開始剤などによって、適宜設定され得る。重合反応は、通常80〜120℃、好ましくは85〜115℃で行われる。また、反応時間は、通常2〜6時間、好ましくは3〜5時間である。
【0033】
このようにして得られた共重合体(A)は、次の工程に供するに際し、水に可溶化させることが好ましい。例えば、共重合体(A)に存在する3級アミノ基部分を、塩酸、硫酸、酢酸などの酸を用いて完全に中和し、水溶液の形態にするのが好ましい。さらに、共重合体(A)は、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下の平均粒子径を有する。
【0034】
(第2工程)
第2工程は、上記共重合体(A)と非イオン性の親水性モノマー(d)(以下、単に「d成分」と記載する場合がある)とを重合させて共重合体(B)を得る工程である。
【0035】
本発明の製造方法に用いられる非イオン性の親水性モノマー(d成分)は、共重合体(A)と共重合可能なものであれば、特に限定されない。d成分としては、例えば、上述の水酸基含有(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有(メタ)アクリレート;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0036】
共重合体(A)とd成分との使用量は特に限定されず、好ましくは共重合体(A)が85.7〜99.7重量%、より好ましくは90.0〜99.0重量%の割合で用いられる。
【0037】
共重合体(A)とd成分との重合反応は、上述のようなラジカル重合によって行われるが、第2工程においては、特に、水溶性のフリーラジカル開始剤と重金属塩とを用いる酸化還元系、すなわちレドックス触媒を用いて行うことが好ましい。酸化還元系、すなわちレドックス触媒を用いて行うことにより、d成分の単独重合体が合成されにくく、本発明において目的とする共重合体(A)とd成分とのグラフト共重合体(共重合体(B))が合成されやすくなる。その結果、優れた分散性を有し、優れたサイズ性を付与し得るサイズ剤を得ることができる。
【0038】
水溶性のフリーラジカル開始剤としては、パーオキソ化合物、アゾ化合物、過酸化水素、過硫酸塩などが挙げられ、重金属塩としては、セリウム、マンガン、鉄(II)などが挙げられる。これらの中でも、過酸化水素と硫酸鉄(II)との組み合わせが好ましい。
【0039】
第2工程における重合反応の反応温度および反応時間は、特に限定されず、適宜設定され得る。重合反応は、通常70〜90℃、好ましくは75〜90℃で行われる。また、反応時間は、通常1〜5時間、好ましくは2〜4時間である。
【0040】
(第3工程)
第3工程は、上記共重合体(B)と疎水性モノマー(e)(以下、単に「e成分」と記載する場合がある)とを、界面活性剤の不存在下で重合させて共重合体(C)を得る工程である。
【0041】
本発明の製造方法に用いられる疎水性モノマー(e成分)は、共重合体(B)と共重合可能なものであれば、特に限定されない。e成分としては、例えば、スチレン、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
共重合体(B)とe成分との使用量は特に限定されず、好ましくは共重合体(B)が30〜70重量%、より好ましくは40〜70重量%の割合で用いられる。
【0043】
共重合体(A)とd成分との重合反応は、上述のように、アゾ系開始剤や過酸化物系重合開始剤、あるいはレドックス触媒を用いて、ラジカル重合によって行われる。
【0044】
第3工程における重合反応の反応温度および反応時間は、特に限定されず、適宜設定され得る。重合反応は、通常70〜90℃、好ましくは75〜90℃で行われる。また、反応時間は、通常1〜5時間、好ましくは2〜4時間である。
【0045】
このようにして得られた共重合体(C)は、好ましくは上記d成分を0.1〜10重量%、より好ましくは0.4〜7.0重量%の割合で含む。あるいは、共重合体(C)は、共重合体(B)を好ましくは30〜70重量%、より好ましくは40〜70重量%の割合で含み、かつa成分を好ましくは5〜20重量%、より好ましくは8〜18重量%の割合で含む。
【0046】
第3工程における反応物は、通常、共重合体(C)エマルションの形態で得られる。また、界面活性剤を用いないことにより、界面活性剤によって分散されたe成分のみの重合体が合成されにくく、最終的に得られるサイズ剤にも界面活性剤が含まれないため、さらなるサイズ性付与効果の向上が期待できる。
【0047】
(第4工程)
第4工程は、上記共重合体(C)に存在する3級アミノ基を4級化し、共重合体(C)の4級アンモニウム塩を得る工程である。
【0048】
共重合体(C)に存在する3級アミノ基のうち、4級化される割合は特に限定されないが、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上の3級アミノ基が4級化される。
【0049】
4級化は、通常、エピクロルヒドリンやエピブロモヒドリンといったエピハロヒドリンなどの4級化剤を用いて行う。
【0050】
このようにして得られた共重合体(C)の4級アンモニウム塩は、好ましくは100nm以上、より好ましくは100〜300nmの平均粒子径を有する。
【0051】
<カチオン性表面サイズ剤>
本発明のカチオン性表面サイズ剤は、上述の第1工程〜第4工程を経て得られる。このようにして得られるカチオン性表面サイズ剤は、紙や板紙に塗工する際の環境、特に水の硬度やpHなどの影響を受けずに優れた分散安定性を有するため、凝集することなく紙表面に均一に塗布され得る。したがって、本発明のカチオン性表面サイズ剤は、紙や板紙に優れたサイズ性を付与することができる。
【0052】
本発明のカチオン性表面サイズ剤は、紙や板紙の表面に塗工する場合、単独で使用してもよく、水溶性高分子化合物と併用してもよい。併用する場合、好ましくは水溶性高分子化合物と本発明のカチオン性表面サイズ剤とが、重量比で500:1〜1:1、より好ましくは100:1〜5:1の割合で混合される。水溶性高分子化合物としては、例えば、澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉(例えば、ヒドロキシエチル化澱粉など)、カチオン化澱粉などの澱粉類;ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルポキシル変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類;ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミドなどのポリアクリルアミド類;カルポキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体などが挙げられる。
【0053】
本発明のカチオン性表面サイズ剤を塗工する紙や板紙は特に限定されず、任意の紙および板紙に塗工することができる。本発明のカチオン性表面サイズ剤は、好ましくは内添サイズ剤を含まない紙または板紙、ステキヒトサイズ度が2秒以下で且つ紙面pHが6.5〜8.5の中性紙、2分Cobb吸水度が100g/m2以上で且つ紙面pHが6.5〜8.5の中性板紙などの表面に塗工される。
【0054】
本発明のカチオン性表面サイズ剤は、水の硬度やpHに影響されずに塗工できるため、非常に有用である。さらに、本発明のカチオン性表面サイズ剤が塗工された紙および板紙は、優れたサイズ性を有し、各種分野で使用される。
【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0056】
合成例、実施例、比較例および表に記載された略号は、以下の化合物を示す。
DM:ジメチルアミノエチルメタクリレート
St:スチレン
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
2EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
nBA:n−ブチルアクリレート
nBMA:n−ブチルメタクリレート
iBA:i−ブチルアクリレート
iBMA:i−ブチルメタクリレート
tBMA:t−ブチルメタクリレート
2HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
N−VP:N−ビニルピロリドン
AAm:アクリルアミド
MAAm:メタクリルアミド
【0057】
<共重合体(A)の合成>
(合成例A1)
30重量部のジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)、30重量部のn−ブチルメタクリレート(nBMA)、5重量部のn−ブチルアクリレート(nBA)、35重量部のスチレン(St)、連鎖移動剤として0.7重量部のn−ドデシルメルカプタン、および溶剤として32重量部のイソプロピルアルコールを4つ口フラスコに投入して撹拌した。次いで、約85℃まで加熱し、開始剤として1重量部の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを添加し約90℃で3時間反応を行った。次いで、得られた共重合体の3級アミノ基部分および残存する微量のDMを中和するため、12.7重量部の90重量%酢酸および300重量部の水を4つ口フラスコに投入した。次いで、加熱蒸留によりイソプロピルアルコールを留去した後、冷却し、固形分濃度が27重量%となるように水で希釈して共重合体(A1)を得た。
【0058】
(合成例A2〜A9)
表1に記載の各成分を表1に記載の割合で用いたこと以外は、合成例A1と同様の手順で共重合体(A2)〜(A9)を得た。なお、以下の表に記載の「DM中和率」は、得られた共重合体の3級アミノ基部分および残存する微量のDMを、どの程度中和したかを示す。例えば、DM中和率が100mol%の場合、完全に中和されていることを示す。
【0059】
【表1】

【0060】
<共重合体(B)の合成>
(合成例B1)
合成例A1で得られた412.7重量部の共重合体(A1)を75℃まで加熱し、7.9重量部の硫酸鉄(II)水溶液(濃度1重量%)を加え、3重量部の2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)および0.8重量部の過酸化水素水(濃度35重量%)を添加した。次いで、約80℃に昇温して3時間反応を行った。反応終了後、固形分濃度が25重量%となるように水で希釈し、共重合体(B1)を得た。
【0061】
(合成例B2〜B8)
表2に記載の各成分を表2に記載の割合で用いたこと以外は、合成例B1と同様の手順で共重合体(B2)〜(B8)を得た。なお、以下の表に記載の重合開始剤は、以下の通りである。
I1:過酸化水素水(濃度35重量%)
I2:硫酸鉄(II)水溶液(濃度1重量%)
I3:アスコルビン酸水溶液(濃度1重量%)
I4:過酸化水素水(濃度8重量%)
I5:2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンジアミン)ジヒドロクロライド
【0062】
【表2】

【0063】
<カチオン性表面サイズ剤の合成>
(実施例1)
合成例B1で得られた400重量部の共重合体(B1)の水溶液(固形分濃度25重量%)および水を4つ口フラスコに投入して約85℃まで昇温した。次いで、疎水性モノマーとして、15重量部のメチルメタクリレート(MMA)、45重量部のn−ブチルメタクリレート(nBMA)、20重量部の2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)および70重量部のスチレン(St)、56重量部の過酸化水素水(濃度8重量%)を4つ口フラスコに投入し、約85℃で3時間を行った。反応後、10.7重量部のエピクロルヒドリンを4つ口フラスコに添加し、約85℃で3時間反応を行い、固形分濃度が30重量%となるように水で希釈し、サイズ剤を得た。
【0064】
(実施例2〜4および比較例1〜5)
表3に記載の各成分を表3に記載の割合で用いたこと以外は、実施例1と同様の手順でサイズ剤を得た。
【0065】
【表3】

【0066】
(比較例6)
20重量部のジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)、30重量部のn−ブチルメタクリレート(nBMA)、20重量部の2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)、30重量部のスチレン(St)、連鎖移動剤として0.7重量部のn−ドデシルメルカプタン、および溶剤として32重量部のイソプロピルアルコールを4つ口フラスコに投入して撹拌した。次いで、約85℃まで加熱し、開始剤として1重量部の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを添加し約90℃で3時間反応を行った。次いで、得られた共重合体の3級アミノ基部分および残存する微量のDMを中和するため、8.5重量部の90重量%酢酸および300重量部の水を4つ口フラスコに投入した。次いで、加熱蒸留によりイソプロピルアルコールを留去した。イソプロピルアルコールを留去後、7.1重量部のエピクロルヒドリンを添加して、85℃で3時間反応を行った。次いで、9重量部のポリビニルアルコール(重合度約2000、ケン化度99〜100モル%)を添加した。ポリビニルアルコールの添加から1時間後、冷却して固形分濃度が20重量%となるように水で希釈し、サイズ剤を得た。なお、共重合体の3級アミノ基部分および残存する微量のDMの中和率は100mol%であり、得られたサイズ剤(共重合体)の4級化率は60mol%、平均粒子径は30nm以下であった。
【0067】
(比較例7)
25重量部のジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)、35重量部のイソブチルメタクリレート(iBMA)、5重量部の2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)、35重量部のスチレン(St)、連鎖移動剤として0.7重量部のn−ドデシルメルカプタン、および溶剤として32重量部のイソプロピルアルコールを4つ口フラスコに投入して撹拌した。次いで、約85℃まで加熱し、開始剤として1重量部の2,2'−アゾビスイソブチロニトリルを添加し約90℃で3時間反応を行った。次いで、得られた共重合体の3級アミノ基部分および残存する微量のDMを中和するため、10.6重量部の90重量%酢酸および300重量部の水を4つ口フラスコに投入した。次いで、加熱蒸留によりイソプロピルアルコールを留去した。イソプロピルアルコールを留去後、14.8重量部のエピクロルヒドリンを添加して、85℃で3時間反応を行った。次いで、冷却して固形分濃度が25重量%となるように水で希釈し、サイズ剤を得た。なお、共重合体の3級アミノ基部分および残存する微量のDMの中和率は100mol%であり、得られたサイズ剤(共重合体)の4級化率は100mol%、平均粒子径は30nm以下であった。
【0068】
上記実施例および比較例で得られたサイズ剤について、サイズ性(ステキヒトサイズ度および2分Cobb吸水度)および発泡性を、以下の方法で評価した。結果を表4に示す。
【0069】
<ステキヒトサイズ度>
実施例および比較例で得られたサイズ剤が0.4重量%、酸化澱粉が5.0重量%および硬度60ppm(CaCO3として)の水道水が94.6重量%となるように混合して、それぞれ塗工液を調製した。次いで、内添サイズ剤が添加されていない中性上質原紙(坪量70g/m2、ステキヒトサイズ度0秒、紙面pH7.6)の両面に、それぞれ得られた塗工液を、両面吸液量が30g/m2となるように塗工した。次いで、回転式ドラムドライヤー(熊谷理機工業(株)製、KRK回転型乾燥機)を用いて、90℃で90秒間乾燥して、塗工紙を得た。
これとは別に、上記塗工液それぞれを調整する際に、硬度2000ppm(CaCO3として)の合成硬水を、塗工液の硬度が500ppmとなるように添加して、高硬度塗工液を得た。この高硬度塗工液を、上記と同様の手順で中性上質原紙に塗工して塗工紙を得た。
得られた各塗工紙のステキヒトサイズ度を、JIS P8122に準拠して測定した。
【0070】
<2分Cobb吸水度>
実施例および比較例で得られたサイズ剤が0.2重量%および硬度60ppm(CaCO3として)の水道水が99.8重量%となるように混合して、それぞれ塗工液を調製した。次いで、内添サイズ剤が添加されたライナー用原紙(坪量180g/m2、2分Cobb吸水度210g/m2、紙面pH7.2)の片面に、それぞれ得られた塗工液を、片面吸液量が15g/m2となるように塗工した。次いで、上記回転式ドラムドライヤーを用いて、90℃で90秒間乾燥して、塗工紙を得た。
これとは別に、上記塗工液それぞれを調整する際に、硬度2000ppm(CaCO3として)の合成硬水を、塗工液の硬度が500ppmとなるように添加して、高硬度塗工液を得た。この高硬度塗工液を、上記と同様の手順で中性上質原紙に塗工して塗工紙を得た。
得られた各塗工紙の2分Cobb吸水度を、JIS P8140に準拠して測定した。
【0071】
<発泡性>
上記ステキヒトサイズ度の評価で使用した塗工液および高硬度塗工液を、家庭用ミキサー(松下電器産業(株)製、ファイバーミキサー)に入れて、3分間撹拌した。撹拌を停止してから3分後の泡の高さを測定した。
【0072】
<安定性試験>
上記発泡性の評価に使用した水道水を用いた塗工液および合成硬水を用いた塗工液について、発泡性試験の後、200メッシュの金網にて濾過し、残渣の重量から安定性を評価した。残渣が少ないほど、凝集物などが少なく分散安定性に優れている。
【0073】
【表4】

【0074】
表4に示すように、本発明の製造方法によって得られたカチオン性表面サイズ剤が塗工された紙は、合成硬水を用いた場合でも、水道水を用いた場合とほとんど遜色のない優れたサイズ性を有し、2分Cobb吸水度も低く水が吸収されにくいことがわかる。さらに、本発明の製造方法によって得られたカチオン性表面サイズ剤は、水道水および合成硬水のいずれを用いた場合も発泡性が低く、塗工作業性にも優れていることがわかる。また、水道水および合成硬水のいずれを用いた場合も濾過残渣量が少なく、塗工液中での安定性(分散安定性)に優れることがわかる。
【0075】
一方、本発明の製造方法以外の方法によって得られたカチオン性表面サイズ剤が塗工された紙は、相対的にサイズ度が低いことがわかる。また、比較的良好なサイズ度を有する場合でも(比較例2および7)、合成硬水を用いた場合には、サイズ度が半分程度まで低下することがわかる。また、2分Cobb吸水度についても相対的に高く、特に、合成硬水を用いた場合には、非常に水が吸収されやすいことがわかる。さらに、発泡性についても、合成硬水を用いた場合には、非常に発泡しやすいことがわかる。また、水道水および合成硬水のいずれを用いた場合も濾過残渣量が多く、塗工液中での安定性(分散安定性)に劣ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
15〜45重量%の3級アミノ基含有モノマー(a)と、15〜85重量%の(メタ)アクリル酸エステル(b)と、0〜70重量%のスチレン類(c)とを含有するモノマー混合物を、連鎖移動剤の存在下で溶液重合させて共重合体(A)を得る第1工程;
前記共重合体(A)と非イオン性の親水性モノマー(d)とを重合させて共重合体(B)を得る第2工程;
前記共重合体(B)と疎水性モノマー(e)とを、界面活性剤の不存在下で重合させて共重合体(C)を得る第3工程;および
前記共重合体(C)に存在する3級アミノ基を4級化し、共重合体(C)の4級アンモニウム塩を得る第4工程、
を含むことを特徴とする、カチオン性表面サイズ剤の製造方法。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステル(b)のエステル部分が、4〜18個の炭素原子を有する鎖状アルキル、4〜18個の炭素原子を有する環状アルキル、または6〜18個の炭素原子を有するアリールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非イオン性の親水性モノマー(d)が、前記共重合体(C)を構成する成分全体に対して0.1〜10重量%の割合となるように使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記共重合体(B)が、前記共重合体(C)を構成する成分全体に対して30〜70重量%の割合で使用され、かつ前記3級アミノ基含有モノマー(a)が、前記共重合体(C)を構成する成分全体に対して5〜20重量%の割合となるように使用される、請求項1〜3のいずれかの項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2工程における重合が、水溶性のフリーラジカル開始剤と重金属塩とを用いる酸化還元系で行われる、請求項1〜4のいずれかの項に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶性のフリーラジカル開始剤が過酸化水素であり、前記重金属塩が硫酸鉄(II)である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1工程において、共重合体(A)に存在する3級アミノ基部分を、酸を用いて完全に中和し水溶液の形態にする、請求項1〜6のいずれかの項に記載の方法。
【請求項8】
前記共重合体(A)が、50nm以下の平均粒子径を有する、請求項1〜7のいずれかの項に記載の方法。
【請求項9】
前記共重合体(C)の4級アンモニウム塩が、100nm以上の平均粒子径を有する、請求項1〜8のいずれかの項に記載の方法。
【請求項10】
前記共重合体(C)に存在する3級アミノ基の50モル%以上が4級化される、請求項1〜9のいずれかの項に記載の方法。
【請求項11】
前記4級化が、エピクロルヒドリンを用いて行われる、請求項1〜10のいずれかの項に記載の方法。
【請求項12】
前記3級アミノ基含有モノマー(a)が、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートおよびジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜11のいずれかの項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかの項に記載の方法によって製造される、カチオン性表面サイズ剤。
【請求項14】
請求項13に記載のカチオン性表面サイズ剤、またはこのサイズ剤と水溶性高分子化合物との混合物を、紙または板紙の表面に塗工する、紙または板紙の表面処理方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法によって得られる、紙または板紙。
【請求項16】
カチオン性表面サイズ剤を塗工する前の紙または板紙が、内添サイズ剤を含まない紙または板紙、ステキヒトサイズ度が2秒以下で且つ紙面pHが6.5〜8.5の中性紙、あるいは2分Cobb吸水度が100g/m2以上で且つ紙面pHが6.5〜8.5の中性板紙である、請求項15に記載の紙または板紙。

【公開番号】特開2012−207316(P2012−207316A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71458(P2011−71458)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000233860)ハリマ化成株式会社 (167)
【Fターム(参考)】