説明

カチオン系光重合開始剤トリアリールスルホニウムボレートを含む積層造形用液状放射線硬化樹脂

R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤を含む積層造形用液状放射線硬化樹脂が開示されている。積層造形用液状放射線硬化樹脂の使用方法、および積層造形用液状放射線硬化樹脂から作られた3次元製品もまた開示されている。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[001]本発明は積層造形プロセス用の液状放射線硬化樹脂に関する。
【0002】
[発明の背景]
[002]3次元物体を製造する積層造形プロセスは、この技術分野では知られている。積層造形プロセスでは、物体のコンピュータ支援設計(CAD)データを利用して、3次元パーツを作製する。これらの3次元パーツは、液状樹脂、粉末、または他の材料から形成することができる。
【0003】
[003]積層造形プロセスの例としては、ステレオリソグラフィ(SL)があるが、これに限定されるものではない。ステレオリソグラフィは、ある種の用途のモデル、プロトタイプ、パターンおよび製品パーツを迅速に製造する方法としてよく知られている。SLは物体のCADデータを使用するもので、データは3次元物体の薄い断面に変換される。データはレーザービームを制御するコンピュータに読み込まれ、レーザービームはバットに入れられた液状放射線硬化樹脂組成物を介して断面のパターンをトレースし、断面に対応する形状の樹脂の薄層を硬化させる。硬化させた層の上に樹脂を再び塗布し、レーザービームに他の断面をトレースさせ、先の層の上面に他の樹脂層を硬化させる。3次元物体が完成するまで、このプロセスを一層毎に繰り返す。形成された当初は、一般に、3次元物体は完全には硬化しておらず、したがって必要に応じて後硬化させることができる。SLプロセスの例は、米国特許第4,575,330号明細書に記載されている。
【0004】
[004]ステレオリソグラフィで使用するレーザーには、波長が193nm〜355nmの範囲の数種類のタイプがある。液状放射線硬化樹脂の硬化に大型の高価なガスレーザが使用されることはよく知られている。ステレオリソグラフィシステムでは、連続波(CW)またはQ−スイッチパルスにより、レーザーエネルギーを送達することができる。CWレーザーは連続したレーザーエネルギーを与え、高速スキャンプロセスで使用することができる。しかしながら、それらの出力は小さく、物体作製時の硬化量は少ない。したがって、完成物体には、後硬化プロセスを追加することが必要であろう。また、照射ポイントで、樹脂に悪影響を及ぼすような過剰の熱が発生するおそれがある。さらに、レーザーを使用する場合、樹脂上を1点ずつスキャンしなければならず、これには多大な時間を必要とし得る。
【0005】
[005]他の積層造形法では、ランプまたは発光ダイオード(LED)を使用する。LEDはエレクトロルミネッセンス現象を利用して光を発生させる半導体装置である。LEDは、電圧が印加され、正孔が負の電子と結合するときに発光することができるp−n接合を形成するために、不純物をドープした半導体材料からなる。発光波長は、半導体の活性領域に使用した材料で決まる。LEDの半導体に使用される代表的な材料としては、例えば、周期律表の13(III)族および15(V)族元素が挙げられる。これらの半導体はIII−V半導体と呼ばれ、例えば、GaAs、GaP、GaAsP、AlGaAs、InGaAsP、AlGaInP、およびInGaN半導体が挙げられる。LEDに使用される半導体の他の例としては、14族(IV−IV半導体)および12−16族(II−VI)の化合物が挙げられる。材料の選択は、目的とする発光の波長、性能パラメータおよびコストなど、多数の因子に基づいて行われる。
【0006】
[006]初期のLEDは、赤外(IR)線および低強度の赤色光を放射するのにガリウム砒素(GaAs)を使用した。材料科学の進展により、より高強度で、かつ短波長の光、例えば別の色の可視光やUV光などを放射することができるLEDが開発された。例えば、約100nmの短波長から約900nmの長波長までの、広い波長スペクトルにわたって発光するLEDを作製することが可能である。一般に、LEDのUV光源は、今日、300〜475nmの波長の光を発し、365nm、390nmおよび395nmが、スペクトル出力の共通のピーク波長である。Cambridge University Pressの出版による教科書、E.Fred Schubert著、「Light−Emitting Diodes」、第2版、(著作権)E.Fred Schubert 2006を参照されたい。
【0007】
[007]製造業者数社が商業的な硬化用のLEDランプを提供している。例えば、Phoseon Technology、Summit UV、Honle UV America,Inc.、IST Metz GmbH、Jenton International Ltd.、Lumos Solutions Ltd.、Solid UV Inc.、Seoul Optodevice Co.,Ltd.、Spectronics Corporation、Luminus Devices Inc.およびClearstone Technologiesは、インクジェット印刷組成物、PVCフロアコーティング組成物、金属コーティング組成物、プラスティックコーティング組成物、および接着剤組成物の硬化用LEDランプを提供している製造業者の中のいくつかである。
【0008】
[008]LED硬化装置は歯科業務で使用されている。そのような装置の例としては、3M ESPEのELIPAR(商標)FreeLight 2 LED硬化光がある。この装置は可視光領域の光を放出し、460nmに放射照度のピークがある。例えば、IST Metzによるなど、LED装置はまたインクジェット印刷で使用するために試験されている。LEDランプは入手可能であるものの、積層造形に適するとともに、LED光により硬化可能な液状放射線硬化樹脂は商業的にあまり知られていない。
【0009】
[009]LEDランプは入手可能であるものの、積層造形に適するとともに、LED光により硬化可能な光硬化性組成物は商業的にあまり知られていない。レーザーにより硬化する樹脂がより広く知られている。例えば、米国特許第7,211,368号明細書には、第1のウレタンアクリレートオリゴマー、第1のアクリレートモノマー、重合調整剤、第1のウレタンアクリレートオリゴマーとは異なる第2のウレタンアクリレートオリゴマー、および安定剤を含む液状ステレオリソグラフ用樹脂が開示されている。第1のウレタンアクリレートオリゴマーは、脂肪族ポリエステルウレタンジアクリレートオリゴマーであり、第1のアクリレートモノマーは、エトキシル化(3)トリメチロールプロパンアクリレートであり、重合調整剤は、イソボルニルアクリレート、エトキシル化(5)ペンタエリトリトールテトラアクリレート、脂肪族ウレタンアクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、およびこれらの混合物からなる群から選択される。樹脂は、5〜35重量%の脂肪族ポリエステルウレタンジアクリレートオリゴマー、および0.5〜25重量%のエトキシル化(3)トリメチロールプロパンアクリレートを含み、この場合、樹脂は、15〜45重量%のエトキシル化(5)ペンタエリトリトールテトラアクリレートを含む。しかしながら、米国特許第7,211,368号明細書では、レーザーを使用して樹脂を硬化させるとしている。さらに、米国特許第7,211,368号明細書には、カチオン系光重合開始剤などの酸を生成する光重合開始剤の使用については開示されていない。
【0010】
[010]より最近になり、積層造形プロセスでLEDを使用することが注目されつつある。米国特許第6,927,018号明細書および米国特許出願公開第2005/0227186号明細書は、光により活性化可能な構築材料を使用して製品を製造するための方法、製品およびシステムを提供している。米国特許第6,927,018号明細書および米国特許出願公開第2005/0227186号明細書に記載の方法は、予め選択した表面に光活性化可能な構築材料の層を形成する工程と、所定の光重合プロセスにしたがい、光活性化可能な構築材料の層を複数の発光中心を使用してスキャンし、光活性化して、構築材料を重合させる工程とを含む。スキャンは、所定の距離から、所定の光強度を使用して行われ、そして、その層を形成する工程を繰り返す。製品が完成するまで、各層を直前の層上に形成し、その層を複数の発光中心でスキャンして構築材料を重合させる。米国特許第6,927,018号明細書および米国特許出願公開第2005/0227186号明細書は、適切な発光中心として、UVのLEDおよびレーザーダイオードを挙げているが、LED硬化に適した光活性化可能な構築材料についての詳細は開示していない。
【0011】
[011]米国特許第7,270,528号明細書は、複数の放射線放出パルスを発生させて面状フラッシュを形成する固体自由造形物製造用フラッシュ硬化システムを開示している。面状フラッシュは、固体自由造形物製造装置により塗布された硬化性材料の硬化を開始させる。米国特許第7,270,528号明細書は、その中でUV発光ダイオード(LED)ランプに言及している一方、樹脂組成物を硬化させるためにフラッシュランプを使用する例を示している。米国特許第7,270,528号明細書に示されている樹脂組成物は、カチオン硬化モノマーまたはカチオン系光重合開始剤を含有する。
【0012】
[012]米国特許出願公開第2008/0231731号明細書もしくは同第2008/0169589号明細書、または欧州特許出願1950032号明細書は、構築材料源を収容する交換可能なカートリッジと、カートリッジから造形平面の構築体表面へ、構築材料を1層づつ輸送するための伸縮可能な可撓性輸送フィルムとを含む固体造形装置を開示している。必要ならば、この装置は完全に反応した構築体を製造することができる。高強度のUV光源が、層間で構築体を硬化させるといわれている。上記刊行物には、構築材料を硬化させるために使用する固体造形用放射線は、「可視またはUV光源であろうが、他の光源であろうが、光硬化性液体を反応させて固体を生成するものであればいかなる化学線」であっても使用し得ると記載されている。
【0013】
[013]国際公開第2008/118263号パンフレットは、3次元物体を表す構築データに基づき、3次元物体を構築するシステムに関するものであり、このシステムは、連続する層に放射線硬化性材料を高速で配置する押出ヘッドを含む。各連続層の放射線硬化性材料は、自立状態になるまで冷却される。このシステムは、構築データにしたがって、連続層の1部を放射線に選択的に、かつ高分解能で露光する放射線源を含むといわれている。露光ヘッドがUV発光ダイオード(LED)の高分解能線形配列を含むことが記載されている。P71−1464CUREBAR(商標)およびP150−3072 PRINTHEAD(商標)が、露光ヘッド用の適切なUV線源の例として記載されている。国際公開第2008/118263号パンフレットには、積層造形プロセスにおけLED光硬化に適した光硬化性調合物の例は記載されていない。
【0014】
[014]DSM IP Assets B.V.に譲渡された、発明の名称が「Method for photocuring of Resin Compositions」の国際公開第2005/103121号パンフレットには、光重合開始系の最大吸収が生じる最大波長(λMax PIS)が、LEDの最大発光波長(λLED)より、少なくとも20nm、最大で100nm低いことを特徴とする、光重合開始系を含む硬化性樹脂組成物の発光ダイオード(LED)による硬化方法が記載され、特許請求がなされている。このPCT特許出願の発明は、構造用途、特に物体のライニングまたは再ライニングの用途におけるLED硬化の使用、およびLED硬化により得られた硬化した樹脂組成物を含有する物体に関する。この発明は、パイプ、タンクおよび槽、特に大口径の、特に15cm超のパイプおよび装置を(再)ライニングするための、簡単で、環境上安全で、かつ制御が容易な方法を提供する。明細書には、LED放射線で硬化する光硬化性樹脂について記載されていない。
【0015】
[015]米国特許出願公開第2007/0205528号明細書には、使用する放射線源が非コヒレントの放射線源である光成型プロセスが開示されている。米国特許出願公開第2007/0205528号明細書には、レーザーUVよりむしろ従来の(非コヒレントの)UVで照射した場合に、より良好な性能を有する3次元製品を製造できるように、光硬化組成物を調合することが示され、また、開示した光硬化性組成物がレーザーUVより非コヒレントUV線により適していると記載されている。米国特許出願公開第2007/0205528号明細書では、「露光システムは、非コヒレント光源、例えばキセノンフュージョンランプまたは発光ダイオードバーからの放射線を使用する」と記載しているが、例示された露光は、国際公開第2000/21735号パンフレットの方法で行われており、そこには、個々に制御可能な光変調器を少なくとも2つ配置することによって材料の断面を照らす光源に、感光材料を暴露する装置と方法が記載されているといわれている。
【0016】
[016]米国特許出願公開第2009/0267269A号明細書または国際公開第2009/132245号パンフレットには、UV硬化性材料からなる1層もしくはそれ以上の層に対してUV線を照射できるよう構成された、固体自由造形物製造(SFF)用の連続波(CW)紫外線(UV)硬化システムが開示されている。固体自由造形物製造装置により塗布された層内の硬化性材料は、1回またはそれ以上のUV照射で硬化を開始させ得ることが報告されている。米国特許出願公開第2009/0267269A号明細書または国際公開第2009/132245号パンフレットによれば、一回もしくは多数回のUV照射を行う1つのアプローチは、UV線を発生するが大量の赤外(IR)線は同時に発生することがない、1個もしくはそれ以上のUV LEDの使用である。
【0017】
[017]以上、LED光の照射によって硬化する積層造形用光硬化性樹脂組成物を提供するという、満たされていないニーズがあることを示す。
【0018】
[018]積層造形プロセスで使用する光源のタイプにかかわらず、最も好ましい機械的特性の組み合わせを有する、硬化した3次元製品が、ハイブリッド液状放射線硬化樹脂から製造されることは、液状放射線硬化樹脂の分野ではよく知られている。ハイブリッド液状放射線硬化樹脂は、フリーラジカルおよびカチオンの両重合成分と、光重合開始剤とを含む液状放射線硬化樹脂である。液状放射線硬化樹脂のカチオン重合成分は、硬化した3次元製品における機械的特性の望ましい組み合わせに主として貢献するが、液状放射線硬化樹脂のカチオン重合成分は、フリーラジカル重合成分よりはるかに遅い速度で重合することもまたよく知られている。したがって、硬化した3次元製品の機械的特性は、ハイブリッド液状放射線硬化樹脂の初期硬化後、時間をかけて発達する。カチオン重合成分は含有するがフリーラジカル重合成分は含有しない、積層造形用の液状放射線硬化樹脂は知られているが、そのような樹脂は、ラピッドプロトタイプ用材料として使用するには硬化が遅すぎると一般に考えられている。したがって、積層造形用液状放射線硬化樹脂のカチオン硬化の速度を速めて、樹脂が物理特性の最も好ましい組み合わせをできるだけ早く獲得できるようにすることが望まれる。
【0019】
[019]カチオン重合成分は、一般に、フリーラジカル重合成分よりはるかに遅い速度で硬化するため、カチオン硬化速度を増大させることが非常に望ましい。また、液状放射線硬化樹脂から形成された3次元製品の機械的特性に積極的に寄与する成分の量が、液状放射線硬化樹脂の中でより大きいパーセンテージを占め得るように、光重合開始剤の使用量の少ない、高速の光重合開始速度を有する樹脂を得ることが望ましい。さらに、積層造形技術で一般に使用されている各種波長で優れた光重合開始速度を与えるカチオン系光重合開始剤が非常に望まれている。
【0020】
[020]積層造形に有用なカチオン系光重合開始剤の多くは、また、熱安定性に乏しい。熱安定性は、液状放射線硬化樹脂が長時間、または保存の期間、温度に暴露された後もその粘度を維持する能力である。カチオン系光重合開始剤は、光および温度の両方に反応する。高い温度、または長時間の室温で、カチオン系光重合開始剤は、液状放射線硬化樹脂中で徐々に活性化し、少量の重合を開始する。この少量の重合は、時間とともに、積層造形用液状放射線硬化樹脂の望ましくない粘度の増加をもたらすであろう。
【0021】
[021]大量の無機フィラーを含むハイブリッド液状放射線硬化樹脂、いわゆる充填組成物は、完全に硬化した物体の強度と剛性の組み合わせの点で非常に望ましい。シリカフィラーは、何年も前から、積層造形用液状放射線硬化樹脂に最も好ましい無機フィラーであった。例えば、DSMに譲渡された米国特許出願公開第2006/0100301号明細書、および3D Systemsに譲渡された米国特許出願公開第2005/0040562号明細書を参照されたい。シリカ粒子は主としてSiOからなる。シリカナノ粒子を含む充填液状放射線硬化樹脂の商業的実施形態の例には、DSM Somos(登録商標)のNanoTool(商標)およびNanoForm(商標)15100 Series、ならびに3D Systems,Inc.のAccura(登録商標)BlueStone(商標)がある。
【0022】
[0022]大量の無機フィラーを液状放射線硬化樹脂中に含むことが、それから製造される3次元物体の強度および剛性に与える効果の点から非常に望ましい。しかしながら、高充填組成物には、積層造形用液状放射線硬化樹脂を設計する者にとって、いくつかの課題がある。フィラーの量が増加するにつれて、通常、液状放射線硬化樹脂の粘度もまた増加する。高粘度の液状放射線硬化樹脂は、いくつかの積層造形プロセス、例えばステレオリソグラフィでは望ましくない。
【0023】
[023]さらに、ある種の高充填組成物は、通常、非充填積層造形用液状放射線硬化樹脂ほど光に対し安定ではない。光安定性は、周囲の光や積層造形機内の望ましくない散乱光に暴露された後もその粘度を維持する、液状放射線硬化樹脂の能力である。積層造形用液状放射線硬化樹脂は、周囲の光や積層造形プロセスで生じる望ましくない散乱光に反応する1種もしくはそれ以上の光重合開始剤を含むため、光に暴露された後、液状放射線硬化樹脂に部分的重合が生じる。この少量の重合物は、時間とともに、液状放射線硬化樹脂の粘度を徐々に増加させる。フィラーによる光散乱作用がさらに加わるため、高充填液状放射線硬化樹脂の光安定性を高めることが、特に課題となっている。
【0024】
[024]現在最も使用されている積層造形用液状放射線硬化樹脂のカチオン系光重合開始剤は、フルオロホスフェートまたはフルオロアンチモネートアニオンと組み合わせた、スルホニウムまたはヨードニウムカチオンをベースとしたものである。硬化速度の速さからアンチモン酸塩が好ましい場合がしばしばある。しかしながら、地方自治体の中には、アンチモン酸塩をベースとした組成物から作製された物体は、有害廃棄物または有害成分廃棄物として廃棄されなければならないことがある。
【0025】
[025]さらに、3次元製品の目的とする用途に対してアンチモン酸塩が悪影響を及ぼすために、アンチモンの含有量が少ないか、または全く含まない放射線硬化組成物を得ることが望ましいことがしばしばある。例えば、アンチモン酸塩は、インベストメント鋳造用途に望ましくない影響を及ぼすおそれがある。ホウ酸ヨードニウム光重合開始剤が利用可能であるが、ステレオリソグラフィに有用な波長に対する感光性を付与する必要があるという難点を有し、また、熱安定性も低い。リン酸スルホニウム光重合開始剤は利用可能であるが、硬化速度が遅いという難点がある。
【0026】
[026]光重合開始速度が速く、充填組成物中で良好な光安定性を有し、熱安定性が良好で、かつアンチモンを含まない積層造形用カチオン系光重合開始剤を得ることが望まれている。
【0027】
[発明の概要]
[027]請求項に記載の発明の第1の態様は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンと、次式(1)
【化1】



(式中、Y1、Y2およびY3は、同一または異なり、Y1、Y2またはY3がR−置換芳香族チオエーテルであり、Rがアセチル基またはハロゲン基である)
で表されるカチオンとを有する、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤を含む積層造形用液状放射線硬化樹脂である。
【0028】
[028]請求項に記載の本発明の第2の態様は、3次元物体を形成する方法であって、請求項に記載の本発明の第1の態様の積層造形用液状放射線硬化樹脂の層を形成し、選択的に硬化させる工程と、請求項に記載の本発明の第1の態様の積層造形用液状放射線硬化樹脂の層を形成し、選択的に硬化させる工程を複数回繰り返して、3次元物体を得る工程を含む方法である。
【0029】
[029]請求項に記載の本発明の第3の態様は、請求項に記載の発明の第1の態様の積層造形用液状放射線硬化樹脂から形成された3次元物体である。
【0030】
[030]請求項に記載の本発明の第4の態様は、5重量%〜約90重量%、好ましくは10重量%〜75重量%、より好ましくは30〜75重量%の無機フィラーを含み、好ましくは、前記無機フィラーは、80重量%超、好ましくは90重量%超、より好ましくは95重量%超のシリカを含み、Dpが約4.5〜約7.0ミルである積層造形用液状放射線硬化樹脂であって、240rpmに設定した振盪テーブルに載せ、その積層造形用液状放射線硬化樹脂の表面から8インチ上方に吊り下げた2個の植物・水槽用15ワットランプで露光したとき、200時間超、好ましくは250時間超のゲル化時間を有する積層造形用液状放射線硬化樹脂である。
【0031】
[031]請求項に記載の本発明の第5の態様は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンおよび次式(1)
【化2】



(式中、Y1、Y2およびY3は、同一または異なり、Y1、Y2またはY3がR−置換芳香族チオエーテルであり、Rがアセチル基またはハロゲン基である)
で表されるカチオンを有する、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤の、金属および合金上での使用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は365nm干渉フィルタのスペクトル出力を示す。
【図2】図2はRT−DMA装置の概略図を示す。
【0033】
[発明の詳細な説明]
[032]米国仮特許出願第61/287620号明細書の全体を、参照によりここに組み込むものとする。
【0034】
[033]請求項に記載の発明の第1の態様は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンと、次式(1)
【化3】



(式中、Y1、Y2およびY3は、同一または異なり、Y1、Y2またはY3がR−置換芳香族チオエーテルであり、Rがアセチル基またはハロゲン基である)
で表されるカチオンとを有する、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤を含む積層造形用液状放射線硬化樹脂である。
【0035】
[034]R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤
【0036】
[035]一実施形態においては、積層造形用液状放射線硬化樹脂は、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤を含む。カチオン系光重合開始剤は、光の照射によって光酸を発生する。それらは照射によってブレンステッド酸またはルイス酸を発生する。
【0037】
[036]積層造形用途においてトリアリールスルホニウム塩を使用することは知られている。Asahi Denki Kogyoの米国特許第6,368,769号明細書を参照されたい。それには、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのテトラアリールボレートアニオンを有するトリアリールスルホニウム塩、およびステレオリソグラフィ用途でのこの化合物の使用について記載されている。トリアリールスルホニウム塩は、例えば、J Photopolymer Science & Tech(2000),13(1),117−118、およびJ Poly Science,Part A(2008),46(11),3820−29に開示されている。BF、AsF、PFおよびSbFなどのハロゲン化金属錯体アニオンを有するトリアリールスルホニウム塩ArMXは、J Polymr Sci,Part A(1996),34(16),3231−3253に開示されている。
【0038】
[037]本発明者らは、積層造形用液状放射線硬化樹脂において、カチオン系光重合開始剤として、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤を使用すると、光重合開始速度が速く、良好な熱安定性を有し、かつ良好な光安定性を有する液状放射線硬化樹脂を得ることができることを見出した。
【0039】
[038]一実施形態において、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンと、次式(1)で表されるカチオンとを有する。
【化4】



(式中、Y1、Y2およびY3は、同一または異なり、Y1、Y2またはY3がR−置換芳香族チオエーテルであり、Rがアセチル基またはハロゲン基である)
【0040】
[039]一実施形態において、Y1、Y2およびY3は同一である。他の実施形態では、Y1とY2は同一であるが、Y3は異なる。Y1、Y2またはY3は、Rがアセチル基またはハロゲン基であるR−置換芳香族チオエーテルである。好ましくは、Y1、Y2またはY3は、Rがアセチル基またはハロゲン基であるパラ−R−置換芳香族チオエーテルである。
【0041】
[040]特に好ましいR−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤は、トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートは、IRGACURE(登録商標)PAG−290として商業的に知られており(以前は、開発コードGSID4480−1で知られていた)、Ciba/BASFから入手可能である。
【0042】
[041]本発明者らはまた、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤、例えば、トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが、他のカチオン系光重合開始剤と比べてはるかに高い熱安定性を有することを見出した。熱安定性が向上すれば、従来の他のカチオン系光重合開始剤に代えて、トリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤を含有させた積層造形用液状放射線硬化樹脂は、高い温度で長時間その粘度を維持することができる。
【0043】
[042]さらに本発明者らは、驚いたことに、大量の、シリカベースのフィラーなどの無機フィラーとともに、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤、例えば、トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを含有させた積層造形用液状放射線硬化樹脂が、優れた光安定性を有することを見出した。高充填積層造形用液状放射線硬化樹脂においては、光と、シリカフィラーなどの無機フィラーとの相互作用が、新たな安定性の問題を引き起こす。しかしながら、液状放射線硬化樹脂において、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤を使用すると、樹脂は、はるかに良好な光安定性を示しつつ、従来のカチオン系光重合開始剤を含有する樹脂と同等の臨界エネルギー(Ec、E10)および硬化深度(Dp)を有することが可能になる。
【0044】
[043]本発明の実施形態によれば、積層造形用液状放射線硬化樹脂は、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤に加えて、カチオン重合成分を含む。他の実施形態では、積層造形用液状放射線硬化樹脂は、カチオン重合成分、フリーラジカル系光重合開始剤およびフリーラジカル重合成分を含む。いくつかの実施形態では、積層造形用液状放射線硬化樹脂は、カチオン重合成分、ならびに任意選択によるフリーラジカル重合成分およびフリーラジカル系光重合開始剤とともに、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤、ならびに追加のカチオン系光重合開始剤および/または光増感剤を含む。
【0045】
[044]本発明の積層造形用液状放射線硬化樹脂は、適当な波長で点灯している1個もしくはそれ以上のLEDにより硬化することができる。一実施形態においては、LEDは200nm〜460nm、好ましくは300nm〜400nm、より好ましくは340nm〜375nmの波長で作動する。
【0046】
[045]R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤は、任意の適切な量で含まれ得る。いくつかの実施形態では、20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、より好ましくは約7重量%以下。いくつかの実施形態では、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤は、約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約7重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約4重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤は、0.1重量%〜2重量%、好ましくは0.1重量%〜1.5重量%の量で存在する。
【0047】
[046]他のカチオン系光重合開始剤および光増感剤
【0048】
[047]一実施形態によれば、積層造形用液状放射線硬化樹脂は、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤に加えて、カチオン系光重合開始剤を含む。任意の適切なカチオン系光重合開始剤、例えば、オニウム塩、ハロニウム塩、ヨードシル塩、セレニウム塩、スルホニウム塩、スルホキソニウム塩、ジアゾニウム塩、メタロセン塩、イソキノリニウム塩、ホスフォニウム塩、アルソニウム塩、トロピリウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、チオピリリウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、スルホニウムアンチモネート塩、フェロセン、ジ(シクロペンタジエニル鉄)アレーン塩化合物およびピリジニウム塩、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものを使用することができる。オニウム塩、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩およびフェロセンは、熱的に安定であるという利点を有する。このように、残留する光重合開始剤は、照射光を取り除いた後に硬化を続けることはない。カチオン系光重合開始剤は、大気中に存在する酸素の影響を受けないという利点を有する。
【0049】
[048]カチオン系光重合開始剤の好ましい混合物としては、ビス[4−ジフェニルスルホニウムフェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート;チオフェンオキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Chivacure 1176として、Chitecから入手可能);トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ciba/BASFのIrgacure PAG−290またはGSID4480−1)、ヨードニウム、[4−(1−メチルエチル)フェニル](4−メチルフェニル)−、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Rhodorsil 2074として、Rhodiaから入手可能)、4−[4−(2−クロロベンゾイル)フェニルチオ]フェニルビス(4−フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(SP−172として)およびSP−300(いずれも、株式会社ADEKAから入手可能)の混合物が挙げられる。
【0050】
[049]いくつかの実施形態では、積層造形用液状放射線硬化樹脂は光増感剤を含むことが望ましい。用語「光増感剤」は、光により開始する重合の速度を増加させるか、または重合が起きる領域へ波長をシフトさせる任意の物質をいうために使用する。G.Odianによる教科書、Principles of Polymerization,3rd Ed.,1991,page 222を参照されたい。光増感剤の例としては、メタノン、キサンテノン、ピレンメタノール、アントラセン、ピレン、ペリレン、キノン、キサントン、チオキサントン、ベンゾイルエステル、ベンゾフェノン、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。光増感剤の特別な例としては、[4−[(4−メチルフェニル)チオ]フェニル]フェニルメタノン、イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−ピレンメタノール、9−(ヒドロキシメチル)アントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジブチロキシアントラセン、9−アントラセンメタノールアセテート、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−メチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−t−ブチル−9,10−ジメトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジエトキシアントラセンおよび2−メチル−9,10−ジエトキシアントラセン、アントラセン、アントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tertブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、チオキサントンおよびキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、メチルベンゾイルホルメート、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものが挙げられる。
【0051】
[050]さらに、光増感剤は、300〜475nmの波長領域で発光するLED光源を使用して硬化を行い、光重合開始剤と併用する場合に有用である。適切な光増感剤の例としては、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tertブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンおよび2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンおよび1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどのチオキサントンおよびキサントン、メチルベンゾイルホルメート(CibaのDarocur MBF)、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート(ChitecのChivacure OMB)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド(ChitecのChivacure BMS)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ChitecのChivacure EMK)が挙げられる。
【0052】
[051]一実施形態において、光増感剤は、フルオロン、例えば、5,7−ジヨード−3−ブトキシ−6−フルオロン、5,7−ジヨード−3−ヒドロキシ−6−フルオロン、9−シアノ−5,7−ジヨード−3−ヒドロキシ−6−フルオロンであり、あるいは光増感剤は
【化5】



、およびこれらの任意の組み合わせである。
【0053】
[052]積層造形用液状放射線硬化樹脂は、光増感剤を任意の適切な量で含むことができ、例えば、ある実施形態では組成物の約10重量%以下、またある実施形態では組成物の約5重量%以下、さらに他の実施形態では組成物の約0.05〜約2重量%の量を含むことができる。
【0054】
[053]光増感剤を使用する場合、より短波長を吸収する他の光重合開始剤を使用することができる。そのような光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンおよびジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン、l−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(l−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−l−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−l−プロパノンおよび4−イソプロピルフェニル(l−ヒドロキシイソプロピル)ケトンなどのl−ヒドロキシフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、ならびにオリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−l−「4−(l−メチルビニル)フェニル」プロパノン](LambertiのEsacure KIP 150)が挙げられる。光増感剤と併用するとき、これらの光重合開始剤は、約100nm〜約300nmの波長で発光するLED光源とともに使用するのに適している。
【0055】
[054]光増感剤または共開始剤は、カチオン系光重合開始剤の活性を向上させるために使用することができる。それは、光により開始した重合の速度を増大させるか、または重合が起きる領域へと波長をシフトするためである。上記のカチオン系光重合開始剤と併用する増感剤は特に限定されるものではない。複素環および縮合環芳香族炭化水素、有機染料ならびに芳香族ケトンなどの種々の化合物を光増感剤として使用することができる。増感剤の例には、J.V.Crivello,Advances in Polymer Science,62,1(1984)、およびJ.V.Crivello & K.Dietliker,“Photoinitiators for Cationic Polymerization”,Chemistry & technology of UV & EB formulation for coatings,inks & paints.Volume III、K.Dietliker,Photoinitiators for free radical and cationic polymerization [Ed.P.K.T.Oldring],SITA Technology Ltd,London,1991に開示されている化合物が含まれる。具体的な例としては、アントラセン、ピレン、ペリレン、およびこれらの誘導体などの多環芳香族炭化水素およびそれらの誘導体、チオキサントン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジイソフェニルスルフィド、アクリジンオレンジ、およびベンゾフラビンが挙げられる。
【0056】
[055]積層造形用液状放射線硬化樹脂は、他のカチオン系光重合開始剤または光増感剤を任意の適切な量で、例えば、ある実施形態では組成物の0.1〜10重量%、ある実施形態では組成物の約1〜約8重量%、さらに他の実施形態では組成物の約2〜約6重量%の量で含むことができる。一実施形態では、上記範囲はエポキシモノマーと共に使用するのに特に適している。
【0057】
[056]一実施形態によれば、積層造形用液状放射線硬化樹脂は、カチオン開始機能とフリーラジカル開始機能を共に有する光重合開始剤である光重合開始系を含む。
【0058】
[057]カチオン重合成分
【0059】
[058]一実施形態によれば、本発明の積層造形用液状放射線硬化樹脂は、少なくとも1種のカチオン重合成分、すなわち、カチオンにより、または酸生成物の存在下に重合を開始する成分を含む。カチオン重合成分は、モノマー、オリゴマー、および/またはポリマーであってよく、脂肪族、芳香族、脂環式、アリール脂肪族、複素環の部分、およびこれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。適切な環状エーテル化合物は、環状エーテル基を、側鎖、または脂環式もしくは複素環式の環構造の一部を構成する基として含むことができる。
【0060】
[059]カチオン重合成分は、環状エーテル化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、環状ラクトン化合物、ビニルエーテル化合物、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0061】
[060]カチオン重合成分の例としては、エポキシ化合物およびオキセタンなどの環状エーテル化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルトエステル化合物、ならびにビニルエーテル化合物が挙げられる。カチオン重合成分の具体例としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)−シクロヘキサン−1,4−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセンジキサイド、リモネンオキサイド、リモネンジキサイド、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ε−カプロラクトン−変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン−変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン−変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ビシクロヘキシル−3,3’−エポキシド、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−C(CH−、−CBr−、−C(CBr−、−C(CF−、−C(CCl−または−CH(C)−の結合を有するビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロジオクチルフタレート、エポキシヘキサヒドロ−ジ−2−エチルヘキシルフタレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1種以上のアルキレンオキサイドを、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセロールなどの脂肪族多価アルコールに付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、フェノール、クレゾール、ブチルフェノール、またはこれらの化合物にアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化ダイズ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化ポリブタジエン、1,4−ビス[3−エチル−3−オキセタニルメトキシ]メチル]ベンゼン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(3−ヒドロキシプロピル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(4−ヒドロキシブチル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(5−ヒドロキシペンチル)オキシメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、ビス((1−エチル(3−オキセタニル))メチル)エーテル、3−エチル−3−((2−エチルヘキシルオキシ)メチル)オキセタン、3−エチル−((トリエトキシシリルプロポキシメチル)オキセタン、3−(メタ)−アリロキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4−メトキシ−[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ならびにこれらの任意の組み合わせが挙げられる。カチオン重合可能な多官能性物質の例としては、エポキシまたはオキセタン官能基を有する、デンドリマー、線形樹枝状ポリマー、デンドリグラフトポリマー、超分岐ポリマー、星型分岐ポリマーおよびハイパーグラフトポリマーなどの樹枝状ポリマーが挙げられる。樹枝状ポリマーは、1種の重合性官能基、または複数の異なるタイプの官能基、例えば、エポキシ官能基およびオキセタン官能基を含有することができる。
【0062】
[061]本発明の実施形態においては、カチオン重合成分は、脂環式のエポキシおよびオキセタンからなる群から選択される少なくとも1種である。ある特定の実施形態では、カチオン重合成分は、オキセタン、例えば、2個以上のオキセタン基を含有するオキセタンである。他の特定の実施形態では、カチオン重合成分は、脂環式エポキシ、例えば、2個以上のエポキシ基を有する脂環式エポキシである。
【0063】
[062]一実施形態においては、エポキシドは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(株式会社ダイセルからCELLOXIDE(商標)2021Pとして、またはDow ChemicalからCYRACURE(登録商標)UVR−6105として入手可能)、水素化ビスフェノールA−エピクロロヒドリンベースのエポキシ樹脂(HexionからEPONEX(商標)1510として入手可能)、1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(HexionからHELOXY(商標)107として入手可能)、ジシクロヘキシルジエポキシドおよびナノシリカの混合物(NANOPOX(商標)として入手可能)、ならびにこれらの任意の組み合わせである。
【0064】
[063]上記のカチオン重合性化合物は、単独で、またはそれらを2種以上組み合わせて使用することができる。
【0065】
[064]積層造形用液状放射線硬化樹脂は、カチオン重合成分を任意の適切な量で、例えば、ある実施形態では組成物の約80重量%以下、ある実施形態では組成物の約10〜約80重量%、さらに他の実施形態では組成物の約20〜約70重量%の量で含むことができる。
【0066】
[065]一実施形態によれば、積層造形用液状放射線硬化樹脂の重合成分は、フリーラジカル重合およびカチオン重合の両方で重合可能である。そのような重合成分の例としては、ビニロキシ化合物、例えば、ビス(4−ビニロキシブチル)イソフタレート、トリス(4−ビニロキシブチル)トリメリテート、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるものがある。そのような重合成分の他の例としては、同一分子内にアクリレートおよびエポキシ基、またはアクリレートおよびオキセタン基を含むものが挙げられる。
【0067】
[066]実施形態において、本発明の積層造形用液状放射線硬化樹脂は、光重合開始系を含む。光重合開始系は、フリーラジカル系光重合開始剤もしくはカチオン系光重合開始剤、または同一分子内にフリーラジカル系開始官能基とカチオン系開始官能基を共に含む光重合開始剤であってよい。光重合開始剤は、光の作用、または光の作用と増感色素の電子励起作用との相乗作用により化学的に変化し、ラジカル、酸および塩基の少なくとも1つを生成する化合物である。
【0068】
[067]ラジカル系光重合開始剤
【0069】
[068]通常、フリーラジカル系光重合開始剤は、開裂によりラジカルを生成する「ノリッシュI型」として知られているものと、水素の引き抜きによりラジカルを生成する「ノリッシュII型」として知られているものに分けられる。ノリッシュII型光重合開始剤には、フリーラジカル源として機能する水素供与体が必要である。ノリッシュII型光重合開始剤は、重合の開始が二分子反応に基づくため、一般に、単分子からのラジカル生成に基づくノリッシュI型光重合開始剤より遅い。他方、ノリッシュII型光重合開始剤は、近UV分光学的領域の光吸収特性に優れる。アルコール、アミンまたはチオールなどの水素供与体の存在下に、ベンゾフェノン、チオキサントン、ベンジルおよびキノンなどの芳香族ケトンが光分解すると、カルボニル化合物から生成するラジカル(ケチルタイプのラジカル)と、水素供与体から誘導される他のラジカルが生成される。ビニルモノマーの光重合は、通常、水素供与体から生成したラジカルによって開始される。ケチルラジカルは、立体障害と不対電子の非局在化のために、通常、ビニルモノマーに対する反応性を有さない。
【0070】
[069]積層造形用液状放射線硬化樹脂の調合を適正に行うには、組成物に含まれる光重合開始剤の波長に対する感度を調べ、硬化光として選択したLED光でそれらが活性化されるか否かを知る必要がある。
【0071】
[070]一実施形態によれば、積層造形用液状放射線硬化樹脂は、少なくとも1種のフリーラジカル系光重合開始剤、例えば、ベンゾイルホスフィンオキシド、アリールケトン、ベンゾフェノン、ヒドロキシル化ケトン、1−ヒドロキシフェニルケトン、ケタール、メタロセン、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるものを含む。
【0072】
[071]一実施形態において、積層造形用液状放射線硬化樹脂は、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドおよび2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニル、エトキシホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルーベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンおよび4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、ジメトキシベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、4−イソプロピルフェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、オリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、カンファキノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、ビス(エタ5−2−4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタニウム、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種のフリーラジカル系光重合開始剤を含む。
【0073】
[072]300〜475nmの波長領域で発光するLED光源、特に365nm、390nmまたは395nmで発光するものに対し、この領域で吸収を示すフリーラジカル系光重合開始剤の適切な例としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFのLucirin TPO)および2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニル、エトキシホスフィンオキシド(BASFのLucirin TPO−L)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(CibaのIrgacure 819またはBAPO)などのベンゾイルホスフィンオキシド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1(CibaのIrgacure 907)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(CibaのIrgacure 369)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタンー1−オン(CibaのIrgacure 379)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド(ChitecのChivacure BMS)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ChitecのChivacure EMK)および4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)が挙げられる。これらの混合物もまた適している。
【0074】
[073]さらに、この波長領域で発光するLED光源で硬化を行う場合、光重合開始剤と併用する増感剤は有用である。適切な増感剤の例としては、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tertブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンおよび2−アミルアントラキノンなどのアントラキノン、イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンおよび1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどのチオキサントンならびにキサントン、メチルベンゾイルホルメート(Ciba社のDarocur MBF)、メチル−2−ベンゾイルベンゾエート(Chitec社のChivacure OMB)、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド(Chitec社のChivacure BMS)、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ChitecのChivacure EMK)が挙げられる。
【0075】
[074]LEDのUV光源を、より短波長で発光するように設計することは可能である。約100〜約300nmの波長で発光するLED光源では、光重合開始剤とともに光増感剤を使用することが望ましい。先に列挙したものなどの光増感剤が調合物に含まれる場合、より短波長で吸収する他の光重合開始剤を使用することができる。そのような光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノンおよびジメトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、フェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノンおよび4−イソプロピルフェニル(1−ヒドロキシイソプロピル)ケトンなどの1−ヒドロキシフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、ならびにオリゴ−[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−「4−(1−メチルビニル)フェニル」プロパノン](LambertiのEsacure KIP 150)が挙げられる。
【0076】
[075]LED光源はまた、可視光を発光するよう設計することができる。約475nm〜約900nmの波長で発光するLED光源では、適切なフリーラジカル系光重合開始剤の例として、カンファキノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(ChitecのChivacure EMK)、4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド(CibaのIrgacure 819またはBAPO)、ビス(エタ5−2−4−シクロペンタジエン−1−イル)ビス[2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル]チタニウム(CibaのIrgacure 784)などのメタロセン、ならびにH−Nu470、H−Nu−535、H−Nu−635、H−Nu−Blue−640およびH−Nu−Blue−660などのSpectra Group Limited,Inc.製の可視光重合開始剤が挙げられる。
【0077】
[076]請求項に記載の発明の一実施形態においては、LEDが発光する光は、UVA線であり、これは約320〜約400nmの波長を有する放射線である。請求項に記載の発明の一実施形態においては、LEDが発光する光は、UVB線であり、これは約280〜約320nmの波長を有する放射線である。請求項に記載の発明の一実施形態においては、LEDが発光する光は、UVC線であり、これは約100〜約280nmの波長を有する放射線である。
【0078】
[077]積層造形用液状放射線硬化樹脂は、フリーラジカル系光重合開始剤を任意の適切な量で、例えば、ある実施形態では組成物の約10重量%以下、ある実施形態では組成物の約0.1〜約10重量%、さらに他の実施形態では組成物の約1〜約6重量%の量で含むことができる。
【0079】
[078]ラジカル重合成分
【0080】
[079]本発明の一実施形態によれば、本発明の積層造形用液状放射線硬化樹脂は、少なくとも1種のフリーラジカル重合成分、すなわち、フリーラジカルにより重合を開始する成分を含む。フリーラジカル重合成分は、モノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーであり、それらは単官能性または多官能性物質、すなわち、フリーラジカル開始剤により重合することができる、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、100もしくはそれ以上の官能基を有する物質であって、脂肪族、芳香族、脂環式、アリール脂肪族、複素環式の部分、またはこれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。多官能性物質の例としては、デンドリマー、線形樹枝状ポリマー、デンドリグラフトポリマー、超分岐ポリマー、星型分岐ポリマーおよびハイパーグラフトポリマーなどの樹枝状ポリマーが挙げられる。米国特許公開第2009/0093564A1号明細書を参照されたい。樹枝状ポリマーは、1種の重合性官能基、または異なるタイプの重合性官能基、例えば、アクリレート官能基およびメタクリレート官能基を含有していてもよい。
【0081】
[080]フリーラジカル重合成分の例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、カプロラクトンアクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ベータ−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルカルバミルエチル(メタ)アクリレート、n−イソプロピル(メタ)アクリルアミドフッ素化(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレートなどのアクリレートまたはメタクリレートが挙げられる。
【0082】
[081]多官能性フリーラジカル重合成分の例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトール(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、[2−[1,1−ジメチル−2−[(1−オキソアリル)オキシ]エチル]−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル]メチルアクリレート、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、リン酸モノ−およびジ(メタ)アクリレート、C〜C20アルキルジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート、およびこれらの任意のモノマーをアルコキシル化(例えば、エトキシル化および/またはプロポキシル化)したもの、また、ビスフェノールAへのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAへのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルへの(メタ)アクリレート付加物であるエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキル化ビスフェノールAのジアクリレートなどの(メタ)アクリロイル基を有するもの、ならびにトリエチレングリコールジビニルエーテルおよびヒドロキシエチルアクリレート付加物が挙げられる。
【0083】
[082]一実施形態によれば、多官能性成分である多官能性(メタ)アクリレートは、あらゆるメタアクリロイル基、あらゆるアクリロイル基、またはメタアクリロイル基およびアクリロイル基の任意の組み合わせを含むことができる。一実施形態において、フリーラジカル重合成分は、ビスフェノールAグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エトキシル化またはプロポキシル化ビスフェノールAまたはビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、[2−[1,1−ジメチル−2−[(1−オキソアリル)オキシ]エチル]−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル]メチルアクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびプロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0084】
[083]他の一実施形態においては、フリーラジカル重合成分は、ビスフェノールAグリシジルエーテルジアクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジアクリレート、[2−[1,1−ジメチル−2−[(1−オキソアリル)オキシ]エチル]−5−エチル−1,3−ジオキサン−5−イル]メチルアクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートおよびプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ならびにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0085】
[084]特定の実施形態では、本発明の積層造形用液状放射線硬化樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、および/またはプロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの1種以上を含み、より特には、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、ジシクロペンタジエンジメタノールジアクリレート、ジペンタエリトリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、および/またはプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートの1種以上を含む。
【0086】
[085]積層造形用液状放射線硬化樹脂は、フリーラジカル重合成分を任意の適切な量で含むことができ、例えば、ある実施形態では組成物の約40重量%以下、ある実施形態では組成物の約2〜約40重量%、他の実施形態では約10〜約40重量%、さらに他の実施形態では組成物の約10〜約25重量%の量を含むことができる。
【0087】
[086]安定剤
【0088】
[087]本発明の実施形態においては、積層造形用液状放射線硬化樹脂は安定剤を含む。安定剤は、粘度の増大を防止するため、例えば固体造形プロセスで使用する間に粘度が増大するのを防止するために、しばしば組成物に添加される。有用な安定剤としては、米国特許第5,665,792号明細書(開示内容はすべて参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されているものが挙げられる。そのような安定剤は、通常、炭化水素カルボン酸のIAおよびIIA族金属塩である。これらの塩の最も好ましい例は、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムおよび炭酸ルビジウムである。充填組成物では、一般に、固体安定剤は好ましくない。本発明の調合物には、15〜23%の炭酸ナトリウム溶液が好ましく、推奨量は組成物の0.05〜3.0重量%、より好ましくは0.05〜1.0重量%、より好ましくは組成物の0.1〜0.5重量%の範囲である。代替の安定剤としては、ポリビニルピロリドンおよびポリアクリロニトリルが挙げられる。
【0089】
[088]その他の成分
【0090】
[089]その他に使用可能な添加剤としては、染料、顔料、タルク、ガラス粉、アルミナ、アルミナ白、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩鉱物、珪藻土、珪砂、シリカ粉、酸化チタン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛粉、銅粉、鉛粉、金粉、銀粉、ガラスファイバ、チタン酸カリウムウィスカ、カーボンウィスカ、サファイアウィスカ、ベリリアウィスカ、ボロンカーバイドウィスカ、シリコンカーバイドウィスカ、シリコンナイトライドウィスカ、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、金属酸化物およびチタン酸カリウムウィスカ)、酸化防止剤、湿潤剤、フリーラジカル系光重合開始剤用の光増感剤、連鎖移動剤、レベリング剤、消泡剤、界面活性剤などが挙げられる。
【0091】
[090]一実施形態によれば、積層造形用液状放射線硬化樹脂は、連鎖移動剤、特にカチオンモノマーの連鎖移動剤をさらに含むことができる。連鎖移動剤は、活性水素を含有する官能基を有する。活性水素含有官能基の例としては、アミノ基、アミド基、水酸基、スルホ基、チオール基が挙げられる。一実施形態においては、連鎖移動剤は、1つの種類の重合、すなわち、カチオン重合またはフリーラジカル重合のいずれかの伝播を停止させ、異なる種類の重合、すなわち、フリーラジカル重合またはカチオン重合のいずれかを開始させる。一実施形態によれば、異なるモノマーへの連鎖移動が、好ましいメカニズムである。実施形態においては、連鎖移動は分岐分子または架橋分子を生成する傾向がある。したがって、連鎖移動により、分子量分布、架橋密度、熱特性、および/または硬化後の樹脂組成物の機械的特性をコントロールする方法が提供される。
【0092】
[091]任意の適切な連鎖移動剤を使用することができる。例えば、カチオン重合成分の連鎖移動剤は、2個以上の水酸基を含有する化合物などの水酸基含有化合物である。一実施形態においては、連鎖移送剤は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、水酸基を有するエトキシル化またはプロポキシル化脂肪族または芳香族化合物、樹枝状ポリオール、超分岐ポリオールからなる群から選択される。ポリエーテルポリオールの例としては、式[(CHO](ここで、nは1〜6の値をとることができ、mは1〜100の値をとることができる)で表されるアルコキシエーテル基を含有するポリエーテルポリオールがある。
【0093】
[092]連鎖移動剤の具体例は、TERATHANE(商標)などのポリテトラヒドロフランである。
【0094】
[093]積層造形用液状放射線硬化樹脂は、連鎖移動剤を任意の適当な量含むことができ、例えば、ある実施形態では組成物の約50重量%以下、ある実施形態では組成物の約30重量%以下、ある他の実施形態では組成物の約10〜約20重量%の量を含むことができる。
【0095】
[094]本発明の積層造形用液状放射線硬化樹脂は、消泡剤、酸化防止剤、界面活性剤、酸捕捉剤、顔料、染料、増粘剤、難燃剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、樹脂粒子、コア−シェル粒子衝撃改質剤、可溶性のポリマーおよびブロックポリマー、粒径が約8ナノメートル〜約50ミクロンの範囲の有機フィラー、無機フィラー、または有機−無機ハイブリッドフィラーからなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0096】
[095]無機フィラー
【0097】
[096]実施形態においては、無機フィラーは、5重量%〜約90重量%、好ましくは10重量%〜75重量%、より好ましくは30〜75重量%の量で存在する。無機フィラーは、シリカ(SiO)ナノ粒子もしくはマイクロ粒子、または実質的にシリカベースの、例えば、シリカが80重量%超、より好ましくは90重量%超、より好ましくは95重量%超のナノ粒子またはマイクロ粒子を含むことが好ましい。好ましいシリカナノ粒子は、Nanopox A610などのNanoresinsのNanopox製品である。そのようなシリカマイクロ粒子の適切な例としては、AGC ChemicalsのNP−30およびNP−100、Suncolor CorporationのSUNSPACER(商標)04.Xおよび0.4X ST−3がある。そのようなシリカナノ粒子の例としては、0.2および0.2−STP−10などのSUNSPHERES(商標)200nmがある。シリカ粒子のさらに他の例については、米国特許第6013714号明細書を参照されたい。しかしながら、ある種のシリカナノ粒子またはマイクロ粒子を液状放射線硬化樹脂に添加すると、シリカナノ粒子またはマイクロ粒子の粒径や他の特性によっては、シリカの酸度のために、液状放射線硬化樹脂の熱安定性を低下させるおそれがある。
【0098】
[097]上記のように、本発明者らは、トリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤、好ましくはトリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートと、大量の無機フィラー、好ましくは、80重量%超、より好ましくは90重量%超、より好ましくは95重量%超のシリカを含むシリカフィラーとの驚くべき組み合わせを見出した。この組み合わせにより、優れた光安定性および熱安定性を有する積層造形用液状放射線硬化樹脂が得られる。
【0099】
[098]ナノ粒子は、本明細書中では、ISO13320:2009にしたがってレーザー回折粒子径分析法を使用して測定される平均粒径が1nm〜999nmの範囲の粒子と定義される。ナノ粒子の平均粒径の測定に適した装置は、Horiba Instruments,Incから入手可能なLB−550機であり、これは動的光散乱法により粒径を測定する。マイクロ粒子は、本明細書中では、ISO13320:2009にしたがって測定される平均粒径が1〜約100ミクロンの範囲の粒子と定義される。
【0100】
[099]請求項に記載の発明の第2の態様は、トリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤を含む積層造形用液状放射線硬化樹脂の層を形成し、選択的に硬化させる工程と、トリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート光重合開始剤を含む積層造形用液状放射線硬化樹脂の層を形成し、選択的に硬化させる工程を複数回繰り返して、3次元物体を得る工程とを含む、3次元物体の形成方法である。この方法は、LED、ランプ、またはレーザーなどの任意の適切な放射線形成手段を使用して行うことができる。さらに、この方法は、バットに入れた、または基材にコーティングした液状放射線硬化樹脂に対して行うことができる。この方法は1個以上のLEDにより行うことが好ましい。LEDは、200nm〜460nm、好ましくは300nm〜400nm、より好ましくは340nm〜370nmの光を発光することが好ましい。
【0101】
[0100]請求項に記載の発明の第3の態様は、トリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート光重合開始剤を含む積層造形用液状放射線硬化樹脂から形成された3次元物体である。
【0102】
[0101]請求項に記載の発明の第4の態様は、5重量%〜約90重量%、好ましくは10重量%〜75重量%、より好ましくは30〜75重量%の無機フィラーを含み、好ましくは、前記無機フィラーは、80重量%超、好ましくは90重量%超、より好ましくは95重量%超のシリカを含み、Dpが約4.5〜約7.0ミル、好ましくは約4.5〜約6.0ミル、より好ましくは約4.5〜約5.5ミルである積層造形用液状放射線硬化樹脂であって、240rpmに設定した振盪テーブルに載せ、その積層造形用液状放射線硬化樹脂の表面から8インチ上方に吊り下げた2個の植物・水槽用15ワットランプで露光したとき、200時間超、好ましくは250時間超のゲル化時間を有する積層造形用液状放射線硬化樹脂である。
【0103】
[0102]請求項に記載の発明の第5の態様は、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンおよび次式(1)
【化6】



(式中、Y1、Y2およびY3は、同一または異なり、Y1、Y2またはY3がR−置換芳香族チオエーテルであり、Rがアセチル基またはハロゲン基である)
で表されるカチオンを有する、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤の、アルミニウム合金、スチール、ステンレススチール、銅合金、錫または錫めっきスチールなどの金属および合金上での使用である。
【0104】
[0103]以下の実施例で本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲を限定するものとして決して解釈されるべきでないことはいうまでもない。
【0105】
[実施例]
[0104]これらの実施例は、本発明の積層造形用液状放射線硬化樹脂の実施形態を説明するものである。これらの実施例で使用される積層造形用液状放射線硬化樹脂の各種成分を表1に示す。
【0106】
【表1】



【0107】
【表2】



【0108】
[0105]実施例1〜7
【0109】
[0106]R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤を使用して、各種積層造形用液状放射線硬化樹脂を調製した。代替のアンチモンフリーのカチオン系光重合開始剤を使用して類似の組成物を調製した。後述する検量線測定法および動的機械分析法により、これらの試料を試験した。検量線データは、ピーク波長が365nmの単一のUV LED「bare bulb」(Model No.NCSU033A;日亜化学工業株式会社(Nichia Corporation)、日本(Japan))を使用して照射光硬化装置(単一のLEDライトが30℃のチャンバー内の平らな底面に設置され、上向きに配置され、垂直方向に照射される)内で、下記の方法により取得した。実時間動的機械分析を、それぞれ365nmの干渉フィルタを備えた水銀ランプを使用して行った。結果を表2および表3に示す。
【0110】
[0107]検量線測定
【0111】
[0108]表2および表3の実施例および比較例の組成物のEcおよびDp値を測定するために、365nmLEDライトを使用した光硬化速度試験を用いる。ピーク波長が365nmの単一のUV LED「bare bulb」(Model No.NCSU033A;日亜化学工業株式会社、日本)を、LED光源として光硬化装置に使用する。光硬化装置内では、単一のLEDライトが30℃のチャンバー内の平らな底面に設置され、上向きに配置され、垂直方向に照射される。LEDライトには、Programmable Power Supply(Model No.PSS−3203;GW Instek)の3.30V/0.050AのDC出力から電力が供給される。
【0112】
[0109]10ミル厚のポリエステルフィルムシート(Melinex #515、Polybase Mylar D、0.010ゲージ)をLED電球の底から上方に12mm離して設置する。液状樹脂の1滴をポリエステルフィルム上、LEDライトの真上に滴下する。この樹脂をポリエステルフィルムを介してLEDライトにより特定の時間間隔で露光する。新しい樹脂を使って露光時間を2、4、6、8、10秒間、または硬化が遅い樹脂調合物では12、16もしくは20秒までとして、このプロセスを繰り返す。
【0113】
[0110]LEDライトで露光後、試料を30℃のチャンバー内で少なくとも15分間エージングし、その後、未硬化の樹脂をKimwipe EX−L(Kimberly Clark)で拭き取ることにより、露光領域から除去した。その後、ABSOLUTE Digimatic Indicator(Model ID−C112CE、株式会社 ミツトヨ(Mitutoyo Corporation)、日本)を使用して、露光領域の中心で厚さを測定した。測定した各試料の厚さを、露光時間の自然対数の関数としてプロットする。樹脂組成物の硬化深度(Dp;ミル)は、最小2乗法直線の傾きである。Ec(秒)は直線のX軸切片(Y=0)である。E、EまたはEは、それぞれ3、4または5ミルの厚さの層をそれぞれに生成するために必要な時間(単位は秒)である。
【0114】
[0111]また、光源から樹脂表面への入射光の強度(mW/cm)がわかっているならば、DpおよびEc値の計算に露光時間(単位は秒)ではなく露光エネルギー(mJ/cm)が使用される。
【0115】
[0112]実時間動的機械分析(RT−DMA)による貯蔵剪断弾性率(G’)の測定
【0116】
[0113]貯蔵剪断弾性率(G’)などの実時間動的機械分析(RT−DMA)は、研究室環境の条件(20〜23℃で、RHが25〜35%)で、水銀ランプ光源(EXFOから入手可能なOMNICURE Series 2000)を含むように改造され、光路に365nmの干渉フィルタ(これもまた、EXFO社から入手可能)を装着し、また光を光源からレオメータまで導く液体を充填した光ガイドを装備した、8mmのプレート、0.1mmのギャップを有するStressTech Rheometer(Reologicia Instruments AB、スウェーデン(Sweden))を使用して、硬化中の組成物に対して行う。365nmの干渉フィルタは、図1に示すスペクトルを出力する。試料を、次のパラメータにより評価する:平衡時間10秒;周波数10Hz;XRL140B検出器を具備するIL 1400放射計(International Light、Newburyport、MA)による光強度50mW/cm2;データ収集開始より2.1秒後に開始する1.0秒間の露光;FFTによる曲線の平滑化;データ収集開始より2.5、2.7、3、4および6秒後の、付属のデータ解析用ソフトウェアを使用して取得するG’。
【0117】
[0114]図2は、RT−DMA装置の概略図を示す。液状放射線硬化樹脂(1)は平面(2)に載置される。使用する液体樹脂の量はほぼ図に示されている量にすべきである。この平面は、StressTech Rhemeterと共に販売されている石英板である。8mmのプレート(3)は、このプレートと平面の間に0.1mmの隙間(4)をもって配置される。隙間はStressTech Rhemeterに付属のソフトウェアによってセットされる。光(5)は平面(2)を通して供給される。RT−DMAの詳細については、Robert W.Johnson著、http://reologicainstruments.com/PDF%20files/BobJohnsonUVpaper.pdfで利用できる刊行物「Dynamic Mechanical Analysis of UV−Curable Coatings While Curing」を参照されたい。それは参照することにより全体がそのまま本明細書に組み込まれる。
【0118】
【表3】



【0119】
【表4】



【0120】
[0115]実施例8〜11
【0121】
[0116]この分野でよく知られた方法により各種液状放射線硬化樹脂を調製した。カチオン系光重合開始剤の量と種類を、Chivacure 1176(比較例8、9、10)からIrgacure PAG−290(実施例8、9、10、11)に変更した。Chivacure 1176はカチオン系光重合開始剤とプロピレンカーボネートの50/50混合物であるから、カチオン系光重合開始剤+プロピレンカーボネートの量を一定に保つために、PAG−290を含有する調合物のいくつかには、ある量のプロピレンカーボネートを加えた。検量線データを、下記の方法にしたがって、波長354.7nmで作動する固体レーザーを使用して得た。下記の方法にしたがって、光安定性データ(ゲル化するまでの時間)および熱安定性データ(初期粘度、15日後の粘度、および24日後の粘度)を測定した。各実施例(Ex)および比較例(Comp)の組成物の詳細については、各成分を全組成物に対する重量パーセントで表して表4に示す。
【0122】
[0117]検量線の測定
【0123】
[0118]検量線は、特定の物質の光硬化速度の尺度である。それは、加えられた露光の関数として、作成された液状放射線硬化樹脂の層の厚さとの関係を示す。全ての調合物について、この分野でよく知られた方法により、露光−検量線の式を求める。
【0124】
[0119]30℃、30%RHに維持された直径100mmのペトリ皿に入れた、20gの調合物試料を使用して、各調合物の露光応答を測定する。上で示した光源で調合物の表面を露光する。露光は、72mWの出力で、ペトリ皿の液体表面に約25.4ミクロン間隔の連続する平行線を描いてスキャンし、1/2インチ四方(露光領域)に行う。異なるレベルの既知の入射エネルギーで他の露光領域を露光して、異なる硬化厚さを得る。液体表面のスポットの直径は約0.0277cmである。露光済みパネルを硬化させるために少なくとも15分待った後、ペトリ皿からパネルを取り出し、過剰の未硬化樹脂をKimwipe EX−L(Kimberly Clark)で拭き取って除去する。フィルム厚さをMitutoyo Model ID−C112CE Indicator Micrometerにより測定する。フィルムの厚さは、露光エネルギーの自然対数の線形関数であり、回帰直線の傾きはDp(単位はミクロンまたはミル)であり、Ecは回帰フィッティングのx軸切片(単位はmJ/cm)である。E10は10ミル(254ミクロン)の層を硬化させるのに必要なエネルギーである。
【0125】
[0120]光安定性の測定
【0126】
[0121]各試料45gを、FlackTek,Incから入手可能な60mLの広口透明ビンに入れる。試料が入ったビンを、New Brunswick Scientific Co.,Incから入手可能なExcella E5プラットフォーム振盪機上に均一に並べる。各試料が入ったビンをクランプでプラットフォーム振盪機に固定する。2個の植物・水槽用15ワットランプ(General Electric、F15T8PL/AQ)を有する光源を、振盪機の台上8インチの位置に吊るす。振盪機の速度を240rpmにセットする。試料を、ランプの直下で露光させ、液体試料がゲル化するまで、毎日回転させる。液体試料は、固体層が液体試料表面に形成されたとき、ゲル化されたとする。ゲル化時間は四捨五入した時間とする。
【0127】
[0122]熱安定性の測定
【0128】
[0123]液状放射線硬化樹脂を調整後、30〜60分間、または脱ガスが完了するまで静置する。液状放射線硬化樹脂を入れた容器を軽くタッピングして、脱ガスプロセスを加速させる。その後、Paar Physicaのレオメータ(Rheolab、MC10、Z3カップおよび剪断速度1/50秒)を使用して、初期粘度を測定する。データを収集する前に、試料をその機器内に特定の剪断速度で15分間保持する。
【0129】
[0124]各試料45gを、FlackTek,Incから入手可能な60mLの広口透明ビンに入れる。ビンに緩くキャップをする。試料を入れたビンを所定の日数、55℃のオーブンに入れる。試料を入れたビンをオーブンから取り出し、周囲条件にまで冷却する。その後、試料を再混合し、上記と同じ装置および方法により粘度を測定する。
【0130】
[0125]粘度のパーセント変化を、所定の日の粘度を初期粘度で除して算出する。そして結果に100を乗じる。
【0131】
【表5】



【0132】
[0126]結果についての考察
【0133】
[0127]比較例1に比べ、実施例1〜7の反応性が向上していることが示されている。
【0134】
[0128]比較例8は、多くの商業的な積層造形用液状放射線硬化樹脂でよく使用されているカチオン系光重合開始剤を通常の量で使用している。そのため、積層造形プロセスに適したE10およびDpが達成されている。
【0135】
[0129]実施例8は、Chivacure 1176を、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤でそのまま置き換えた場合の影響を明らかにするために計画されたものである。実施例8は、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤の吸収がChivacure 1176より高いため、非常に低いDpと非常に高いE10を示す。比較例8と比較して、Dpは低すぎ、E10は高すぎる。したがって、実施例8と比較例8は、積層造形プロセスでは同じように機能しないであろう。したがって、実施例8の光安定性は比較例8の光安定性より低い。しかしながら、実施例8の熱安定性は、比較例8の熱安定性より大幅に向上している。
【0136】
[0130]実施例9と比較例9は極めて少ない量のカチオン系光重合開始剤を使用している。ここでもまた、Dpは比較例8よりはるかに低い。実施例9と比較例9でカチオン系光重合開始剤の量を減らせば、それぞれ実施例8および比較例8より液状放射線硬化樹脂の熱安定性が一層向上する。
【0137】
[0131]実施例10、実施例11および比較例10では、安定剤が加えられている。安定剤は、積層造形用液状放射線硬化樹脂の光安定性を大きく改善する。Dpが非常に小さく、E10が非常に大きいにもかかわらず、実施例10は、極めて望ましいDpおよびE10を有する比較例10と類似した光安定性を達成することができている。実施例11は比較例8と同等のDpを示し、他のいかなる実施例または比較例よりも光安定性が大きく改善されていることを示している。実施例10と実施例11はまた、比較例10より熱安定性が改善されていることを示している。
【0138】
[0132]刊行物、特許出願明細書および特許明細書など、本明細書中に引用されている参考文献はすべて、各参考文献が個々に、かつ参照により組み込まれることが特に明示され、また、その全体が本明細書中に記載されているかのように、参照することにより本明細書中に組み込まれる。
【0139】
[0133]本発明の記載との関連で(特に、次に示す請求項との関連で)、用語「a」、「an」および「the」、ならびに類似の用語の使用は、本明細書中で特に断らない限り、あるいは文脈により明確に否定されない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈すべきである。用語「comprising」、「having」、「including」および「containing」は、特に断らない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「〜を含むが、これらに限定されない」を意味する)と解釈すべきである。本明細書中の数値の範囲の記載は、本明細書中で特に断らない限り、単に、この範囲に入る各個別の値に個々に言及する際の簡略表記法として使うことを意図したものであり、各個別の値は、本明細書中に個々に挙げられたかのように、明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載したすべての方法は、本明細書中で特に断らない限り、あるいは文脈により明確に否定されない限り、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書中に示した任意のおよび全ての実施例、または例示する言葉(例えば、「〜などの」)は、単に本発明がより良く理解されることを意図したものであり、特に断らない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に必須の非請求要素を示すものではないと解釈されるべきである。
【0140】
[0134]本発明者らに知られている本発明の実施に最良のモードを含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されている。上記の記載を読めば、これらの好ましい実施形態に加えられる変更は、当業者であれば明らかであろう。本発明者らは、熟練した技術者がそのような変更を必要に応じて使用することを期待し、また本発明者らは、本明細書中に具体的に説明したのとは別の方法で発明が実施されることを想定している。したがって、本発明は、これに添付した特許請求の範囲に記載された主題のあらゆる変更と均等物を、適用可能な法律により認められたものとして含む。さらに、全ての可能な変更における上記要素の組み合わせはすべて、本明細書中で特に断らない限り、あるいは文脈により明確に否定されない限り、本発明に包含される。
【0141】
[0135]以上、本発明を詳細に、またその具体的実施形態とともに説明してきたが、当業者であれば、請求項に記載の発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明に各種の変更と修正を加えることができることは明白であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンと、次式(1)
【化1】



(式中、Y1、Y2およびY3は、同一または異なり、Y1、Y2またはY3がR−置換芳香族チオエーテルであり、Rがアセチル基またはハロゲン基である)
で表されるカチオンとを有する、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤を含む積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項2】
前記R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤は、前記積層造形用液状放射線硬化樹脂の約0.1重量%〜約20重量%、好ましくは約0.1重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約7重量%、より好ましくは約0.2重量%〜約4重量%の量で存在する請求項1に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項3】
a.2〜40重量%のラジカル重合性化合物
b.10〜80重量%のカチオン重合性化合物、および
c.0.1〜10重量%のラジカル系光重合開始剤
をさらに含む請求項2に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項4】
Rがアセチル基である請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項5】
Y1、Y2およびY3が同じである請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項6】
前記R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤が、トリス(4−(4−アセチルフェニル)チオフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項7】
前記R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤が、0.1重量%〜2重量%含まれる請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項8】
R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤ではないカチオン系光重合開始剤をさらに含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項9】
光増感剤をさらに含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項10】
好ましくは約5重量%〜約90重量%、より好ましくは約10重量%〜約75重量%、より一層好ましくは約30重量%〜約75重量%の量で存在する無機フィラーをさらに含む請求項1〜9のいずれか一項に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項11】
前記無機フィラーが、少なくとも80重量%のシリカ、好ましくは少なくとも90重量%のシリカ、より好ましくは少なくとも95重量%のシリカを含むシリカナノ粒子である請求項10に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項12】
約0.1〜約1重量%の安定剤をさらに含む請求項1〜11のいずれか一項に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項13】
前記安定剤が、液状NaCO溶液である請求項12に記載の液状放射線硬化樹脂。
【請求項14】
5重量%〜約90重量%、好ましくは10重量%〜75重量%、より好ましくは30重量%〜約75重量%の無機フィラーを含み、前記無機フィラーが好ましくは80重量%超、好ましくは90重量%超、より好ましくは95重量%超のシリカを含み、Dpが約4.5〜約7.0ミルである積層造形用液状放射線硬化樹脂であって、240rpmに設定した振盪テーブルに載せ、前記積層造形用液状放射線硬化樹脂の表面から8インチ上方の位置に吊り下げた2個の植物・水槽用15ワットランプで露光したとき、200時間超、好ましくは250時間超のゲル化時間を有する積層造形用液状放射線硬化樹脂。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂組成物の層を形成し、化学線により選択的に硬化させる工程と、請求項1〜14のいずれか1項に記載の積層造形用液状放射線硬化樹脂組成物の層を形成し、選択的に硬化させる前記工程を複数回繰り返して、3次元物体を得る工程を含む3次元物体の形成方法。
【請求項16】
前記化学線源が、1個以上のLEDである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1個以上のLEDが、200nm〜460nm、好ましくは300nm〜400nm、より好ましくは340nm〜370nm、より好ましくは365nmにピークを有する波長の光を発する請求項16の方法。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の、または請求項15〜17のいずれか一項の方法による前記液状放射線硬化樹脂から形成された3次元物体。
【請求項19】
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンと、次式(1)
【化2】



(式中、Y1、Y2およびY3は、同一または異なり、Y1、Y2またはY3がR−置換芳香族チオエーテルであり、Rがアセチル基またはハロゲン基である)
で表されるカチオンとを有する、R−置換芳香族チオエーテルトリアリールスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートカチオン系光重合開始剤の、アルミニウム合金、スチール、ステンレススチール、銅合金、錫または錫めっきスチールなどの金属および合金上での使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−514451(P2013−514451A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544810(P2012−544810)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/060668
【国際公開番号】WO2011/075553
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】