説明

カッターナイフ

【課題】常に一定の押付力で切刃を押し付けて切断できるカッターナイフを提供する。
【解決手段】切断対象物に摺接する摺接部20を備えたカッター本体1と、切断対象物を切断する切刃22を有するカッター部材2と、カッター部材2をカッター本体1から切刃22を突出させた状態で保持する保持部材3と、カッター本体1の摺接部20を切断対象物に摺接させる際、カッター部材1を付勢して、切断対象物に対して切刃22を一定圧で押し付ける付勢部材4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッターナイフ、特に、複数枚重なった用紙の最上面に位置する1枚のみを切断するのに適したカッターナイフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カッターナイフとして、例えば、次のようなものが公知である。
【0003】
すなわち、特許文献1に記載されたカッターナイフでは、カッター部材の切刃の突出寸法を微調整可能として重なった用紙を1枚だけ切断可能としている。
【0004】
また、特許文献2に記載されたカッターナイフでは、カッター部材を被覆材で被覆し、刃先のみを露出させることにより、重なった用紙を1枚だけ切断可能としている。
【0005】
さらに、特許文献3に記載されたカッターナイフでは、カッター本体の先端に押圧弾片を設け、この押圧弾片を弾性変形させて切刃を突出させることにより、切刃の突出寸法を一定として重なった用紙を1枚だけ切断可能としている。
【0006】
しかしながら、前記いずれのカッターナイフであっても、切刃の突出寸法は一定としているだけであるため、切断途中に切刃に無理な荷重が作用すると、欠ける等の不具合が発生する恐れがある。また、切断対象物の種類が変更されて切れ具合が変わったり、切刃自身の切れ味が悪くなったりすれば、用紙に対して切刃を押し付ける力を強くすることにより対処しなければならず、操作性が悪くなる。
【0007】
特に、前記特許文献1に記載されたカッターナイフでは、用紙の厚みの違いに応じて切刃の突出寸法を微調整しなければならないが、用紙の厚みの違いは僅かであるため、実際にはうまく対応することは難しい。また、前記引用文献2や3に記載されたカッターナイフでは、用紙の厚みの違いに応じて突出寸法の異なるものを複数用意する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−50215号公報
【特許文献2】特開2002−153685号公報
【特許文献3】特開平10−156061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、常に一定の押付力で切刃を押し付けて切断することのできるカッターナイフを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
カッターナイフを、
切断対象物に摺接する摺接部を備えたカッター本体と、
前記切断対象物を切断する切刃を有するカッター部材と、
前記カッター本体の摺接部を切断対象物に摺接させる際、前記カッター部材を付勢して、切断対象物に対して切刃を一定圧で押し付ける付勢部材と、
を備えた構成としたものである。
【0011】
この構成により、カッター本体の摺接部による切断対象物への押付力の違いに拘わらず、カッター部材の切刃による切断対象物への押付力を常に一定の値とすることができる。したがって、例えば、切断対象物が積み重ねられた複数枚のシート状のものである場合、最上部に位置するシートあるいは最上部から所定枚数のシートのみを確実に切断することが可能となる。また、切断対象物が厚い場合、確実に一定深さの切れ目を入れることが可能となる。
【0012】
前記付勢部材により切断対象物に対して切刃を押し付ける力を調整する押付力調整部材を、さらに備えるのが好ましい。
【0013】
この構成により、切断対象物の切断しやすさや、切刃の切れ味等の違いに応じた適切な押付力を得ることができ、切断時の操作性が損なわれることがない。
【0014】
前記カッター部材は、一端から他端に向かって延び、一方の側縁部に切刃を形成されたものであり、
前記付勢部材は、カッター部材の切刃とは反対側の側縁部に沿って配置した板バネからなるのが好ましい。
【0015】
この構成により、カッター部材に沿って板バネを配置するだけでよいので、コンパクトで、簡単かつ安価な構成とすることができる。
【0016】
前記板バネは、カッター部材の側縁部を押圧する押圧部を備え、
前記押付力調整部材は、カッター本体に取り付けた板バネに沿ってスライド可能に設けられ、板バネに当接する当接部を備え、板バネに沿ってスライド移動されることにより、当接部の板バネとの当接位置と押圧部との間の寸法を調整可能であるのが好ましい。
【0017】
この構成により、押付力調整部材をスライド移動させて当接部による板バネへの当接位置を変更するだけで、簡単に板バネによる付勢力を調整して、切断対象物に対する切刃の押付力を増減させることができる。
【0018】
前記カッター部材を、カッター本体から切刃を突出させた状態で回動可能に支持する保持部材を備えるのが好ましい。
【0019】
この構成により、付勢部材によってカッター部材が付勢されると、このカッター部材は回動支点を中心として回動し、切刃を切断対象物に押し付ける。このため、切刃による押付力を効果的に得ることができる。
【0020】
前記保持部材は、カッター部材の切刃を、少なくとも突出位置又は退避位置のいずれかに位置決め可能であるのが好ましい。
【0021】
この構成により、保持部材と共にカッター部材を移動させて切刃を突出位置に位置決めすれば、切断対象物を切断可能となり、退避位置に位置決めすれば、カッター本体から切刃が突出せず、安全な状態とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、切断対象物に対してカッター部材の切刃を押し付ける際、付勢部材による付勢力を利用するようにしたので、押付力を一定値とすることができ、切断作業時の操作性を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係るカッターナイフの部分破断斜視図である。
【図2】図1のカッターナイフの分解斜視図である。
【図3】図1のカッターナイフによる切断状態を示す正面図である。
【図4】(a)は第2スライダを後退させて板バネによる弾性変形可能な寸法を大きくした状態を示すカッターナイフの部分破断斜視図、(b)は第2スライダを前進させて板バネによる弾性変形可能な寸法を小さくした状態を示すカッターナイフの部分破断斜視図である。
【図5】(a)は第1スライダを後退させてカッター部材の切刃をカッター本体内に没入させた状態を示す正面断面図、(b)は第1スライダを前進させてカッター部材の切刃をカッター本体から突出させた状態を示す正面断面図である。
【図6】他の実施形態に係るカッターナイフの概略断面図である。
【図7】他の実施形態に係るカッターナイフの概略断面図である。
【図8】他の実施形態に係るカッターナイフの概略断面図である。
【図9】他の実施形態に係るカッターナイフの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1及び図2は、本実施形態に係るカッターナイフを示す。このカッターナイフは、大略、カッター本体1に、カッター部材2と、保持部材の一例である第1スライダ3と、付勢部材の一例である板バネ4と、押付力調整部材の一例である第2スライダ5と、ストッパー部材6とを取り付けた構成である。
【0026】
カッター本体1は、第1本体7と、この第1本体7内に装着される第2本体8とで構成されている。
【0027】
第1本体7は、一端から他端に向かって延びる長尺な略直方体形状で、合成樹脂を成形加工することにより得られる。第1本体7の一端面は長手方向とは直交する平坦面で構成されている。第1本体7の他端面は、図3に示すように、両側部から他端に向かうに従って徐々に、中心から一方の側部側へとずれた位置に接近するように傾斜する第1傾斜面9と第2傾斜面10とを備え、両傾斜面の合流位置は円弧面11で構成されている。
【0028】
第1本体7には、図2に示すように、両端面をつなぐ第1ガイド溝12が形成されている。第1ガイド溝12は、幅広部12aと幅狭部12bとで構成され、幅狭部12bが第1本体7の一方の側面に開口している。幅狭部12bは、他端から所定寸法の位置を連結部13で連結されている。幅狭部12bの一方の内縁部には逃がし凹部14が形成されている。また、第1本体7の残る他方の側面には、第1ガイド溝12に連通する開口部15が形成されている。この開口部15は、連通孔内に板バネ4を収容するための通路であり、又、第2スライダ5をスライド可能に装着するための装着受部である。
【0029】
第2本体8は、一端から他端に向かって延びる、金属材料をプレス加工することにより得られる長尺なもので、第1本体7の第1ガイド溝12内に一端側から圧入される。第2本体8には、後述する第1スライダ3のスライダ本体24が摺動可能に支持される第2ガイド溝16が形成されている。第2ガイド溝16は、第1本体7の第1ガイド溝12と同様に、幅広部16aと幅狭部16bとで構成され、幅狭部16bも同じ方向に開口している。また、幅狭部16bを構成する一方の内縁部には一対の係止凹部17が形成され、略W字形状をなしている。これら係止凹部17は、カッター部材2を退避位置に位置決めする後退位置と、突出位置に位置決めする前進位置とに第1スライダ3をそれぞれ位置決めするために使用される。第2本体8の他端側は、カッター部材2の先端部分が配置されるガイド部18で構成されている。ガイド部18は、カッター部材2を配置可能なスリット19が形成され、先端部分には第1本体7の先端部分(主に、第2傾斜面10)と面一となる摺接部20が形成されている。ガイド部18の上方部分には切欠部21が形成され、スリット19内に位置するカッター部材2の切刃22とは反対側の縁部が押込可能に位置している。このように、摺接部20をガイド部18のみならず第1本体7の先端部分でも構成するようにしたので、切断対象物に対する接触面積を大きくして、切断対象物に作用する圧力を緩和することができる。つまり、ガイド部18のみが突出する場合であれば、付与する力によっては切断対象物を傷付ける恐れがあるが、前記構成によりその危険性を回避することができる。但し、ガイド部18のみが突出する構成であっても採用することは可能である。
【0030】
カッター部材2は、薄板状で、一方の側縁部が切刃22となっている。カッター部の先端部分は、先端に向かうに従って徐々に切刃22側が突出するように形成されている。また、カッター部材2の後端側には円形の取付孔23が形成されている。
【0031】
第1スライダ3は、スライダ本体24と、このスライダ本体24に突条部25を介して一体化される第1操作部26とからなる。スライダ本体24は、板状で、一端側の外側面には、先端に向かうに従って徐々に肉厚を薄くする方向に傾斜する傾斜面24aが形成されている。また、外側面の中央部には弾性係止片27が取り付けられるようになっている。弾性係止片27は、板バネ4を屈曲させて中央部に円弧状の突部27aを形成したものである。そして、この突部27aを前記第2本体8に形成した各係止凹部17に係脱することによりスライダ本体24に対して第1スライダ3を位置決めすることができるようになっている。一方、スライダ本体24の内側面には円柱状の突起28が形成されている。この突起28は、カッター部材2の取付孔23に配置され、カッター部材2を揺動可能に支持する。第1操作部26は、スライダ本体24の先端側を除いた後端側に形成されている。第1操作部26は、表面に長手方向に所定間隔で複数の溝が形成され、指で操作する際の滑止を可能として操作性が高められている。そして、第1操作部26、スライダ本体24及び突条部25によって、両側部には溝部が形成されている。スライダ本体24は、第2本体8の第2ガイド溝16の幅狭部16bを構成する両側内縁部が位置してカッター本体1に摺動可能に配置される。
【0032】
板バネ4は、第1本体7に形成した開口部15から挿入される細長い板状である。板バネ4の一端部には、上方に向かって直角に折り曲げられることにより係止部29が形成されている。係止部29は、第1本体7の開口部15内に形成した、図示しない係止溝に係止され、板バネ4が長手方向に位置ずれするのを防止する。一方、板バネ4の他端部には、斜め下方に向かって折り曲げられることにより押圧部30が形成されている。押圧部30は、第2本体8のガイド部18に形成した切欠部21を介してスリット19内に位置するカッター部材2の側縁部を押圧する。
【0033】
第2スライダ5は、第1本体7に形成した開口部15に装着されるブロック状のもので、第2操作部31と、当接部32とで構成されている。第2操作部31は、前記第1スライダ3の第1操作部26と同様な構成で、開口部15内に装着される。当接部32は、開口部15を介して第1本体7内に位置し、そこに配置した板バネ4の上面に当接する。そして、第2操作部31を指で操作して開口部15に対して当接部32の位置をスライド移動させることにより、板バネ4との当接位置を変位させ、フックの法則に従って板バネ4による付勢力を調整することが可能となっている。すなわち、第2スライダ5を一端側に向かってスライド移動すると、板バネ4の変形可能な範囲が長くなり、切刃22によるカッター部材2への押付力が弱くなる。逆に、他端側に向かってスライド移動すると、板バネ4の変形可能な範囲が短くなり、切刃22によるカッター部材2への押付力が強くなる。ここでは、カッター部材2の切刃22により、切断対象物として積み重ねた用紙のうち、最上部に位置する用紙のみを切断することのできる押付力が得られるように第2スライダ5の位置を設定している。
【0034】
ストッパー部材6は、ストッパー本体33に断面凸状の挿入部34を一体化したものである。ストッパー本体33は、挿入部34を第2ガイド溝16内に挿入することにより、カッター本体1の一端部に装着される。
【0035】
続いて、前記構成からなるカッターナイフの組立方法について説明する。
【0036】
第1本体7の第1ガイド溝12内に第2本体8を圧入して一体化することによりカッター本体1を完成する。また、第1スライダ3の突起28をカッター部材2の取付孔23内に位置させ、第1スライダ3に対してカッター部材2を揺動可能に支持する。また、第1スライダ3に弾性係止片27を取り付ける。
【0037】
そして、第2本体8の第2ガイド溝16内に第1スライダ3及びカッター部材2を挿入し、第1スライダ3の第1操作部26を操作してカッター本体1の先端部分へと移動させる。このとき、弾性係止片27の突部27aを一端側の係止凹部17に係止させ、カッター部材2を位置決めする。
【0038】
続いて、第1本体7の開口部15を介して板バネ4を挿入し、係止部29を位置決めすることにより、板バネ4の押圧部30でカッター部材2の縁部を押圧可能となるように板バネ4を配置する。また、開口部15に第2スライダ5を装着することにより、挿入した板バネ4に当接部32を当接させる。
【0039】
最後に、カッター本体1の一端部にストッパー部材6を装着する。これにより、第1スライダ3はカッター部材2を退避位置と突出位置にそれぞれ位置決め可能な範囲でのみスライド移動可能な状態となる。ストッパー部材6は取外可能であるので、カッター部材2の切刃22の切れ味が落ちれば、このストッパー部材6を取り外し、第1スライダ3及びカッター部材2をカッター本体11の後端側へとスライド移動させて、カッター部材2を交換することができる。
【0040】
次に、前記構成からなるカッターナイフの動作について説明する。前記カッターナイフは、主に、切断対象物である用紙が複数枚積み重ねられた状態で、最上部に位置する1枚の用紙のみを切断するために使用する。
【0041】
用紙を切断する前の状態では、図5(a)に示すように、第1スライダ3は後退位置に位置し、カッター部材2は待機位置に位置する。そして、板バネ4は第2本体8の上面に当接し、その押圧部30は第2本体8の切欠部21に位置する。しかし、カッター部材2が待機位置に位置するため、切欠部21にカッター部材2の側縁部が位置していない。このため、カッター部材2の先端切刃22が、カッター本体1の摺接部20から突出することはない。
【0042】
用紙を切断する場合、図5(a)に示す状態から、第1スライダ3を矢印a方向に移動させ、図5(b)に示す前進位置に移動させる。これにより、カッター部材2が突出位置に位置する。カッター部材2は、第2本体8の切欠部21に側縁部を位置させ、板バネ4の押圧部30によって側縁部を押圧される。これにより、カッター部材2の先端切刃22が、カッター本体1の摺接部20から突出する。
【0043】
そこで、第2スライダ5をスライド移動させ、当接部32の位置を変位させ、前述の通り、フックの法則に従って板バネ4による付勢力を調整し、カッター部材2の切刃22による押付力を所定の値とする。図4(a)に示すように、当接部32から押圧部30までの距離が遠く、板バネ4の弾性変形可能な寸法が長い場合、カッター部材2を押圧する力は弱くなる。したがって、切刃22による切断対象物に対する押付力は小さくなる。一方、図4(b)に示すように、当接部32から押圧部30までの距離が近く、板バネ4の弾性変形可能な寸法が短い場合、カッター部材2を押圧する力は強くなる。したがって、切刃22による切断対象物に対する押付力は大きくなる。この押付力は、カッター部材2により丁度1枚の用紙を切断可能な値に設定すればよい。初期状態では、カッター部材2の切刃22による切れ味は一定であると考え、切断対象物の種類(コピー用紙、新聞、雑誌等)に応じて適切な押付力が得られる当接部32の位置を、第2スライダ5の位置合わせ用として開口部15の側縁部に目盛りとして表示しておく。これにより、ユーザは、切断対象物の種類に応じて目盛りに従って第2スライダ5をスライド移動させるだけで、最上部に位置する1枚の用紙のみを切断可能な状態とすることができる。つまり、試し切りは不要となる。また、切刃22の切れ味が悪くなったり、切断対象物に切れにくいものを選択したりする場合等には、第2スライダ5を先端側の適当な位置に移動させてカッター部材2の切刃22による押付力を大きくすればよい。
【0044】
カッター部材2の切刃22による押付力の調整が済めば、図3に示すように、積み重ねられた用紙の最上部に位置する用紙に、カッター本体1の摺接部20を摺接させる。カッター部材2は、第1スライダ3の突起28に回動可能に支持されており、第2スライダ5の当接部32によって付勢力を調整された板バネ4によって一定の押付力で切刃22を最上部の用紙に押し付けられる。この押付力は、丁度、切刃22で最上部に位置する用紙のみを切断可能な値である。したがって、カッター部材2の切刃22による用紙の切断は、カッター本体1の摺接部20をどのように押し付けたとしても、常に一定の押付力で行われる。このため、最上部に位置する1枚の用紙のみを確実に切断することができる。
【0045】
このように、前記実施形態に係るカッターナイフによれば、切断対象物に摺接させる摺接部20を基準とする、カッター部材2の切刃22による切断対象物への押付力を一定値とすることができる。したがって、カッターナイフの操作性に拘わらず、最上部に位置する用紙を1枚だけ確実に切断することが可能となる。また、万一切刃22に無理な荷重が作用したとしても、板バネ4が弾性変形して退避するので、損傷に至ることはない。
【0046】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0047】
例えば、前記実施形態では、カッター部材2の切刃22による押付力を、そのカッター部材2に沿って配置した板バネ4によって得るようにしたが、次のように構成することも可能である。
【0048】
すなわち、図6では、カッター本体1に対してカッター部材2が長手方向に移動可能に設けられている。カッター部材2の後端側にはスプリング35の一端部が接続されている。スプリング35の他端部には移動部材であるネジ部材36が接続されている。ネジ部材36は、カッター本体1に設けた雌ねじ部37に螺合されている。ネジ部材36は、雌ねじ部37に対する螺合位置を変更することにより、カッター本体1に対して長手方向に移動し、カッター部材2に作用させるスプリング35の付勢力を調整する。なお、スプリング35には、カッター部材2に対して突出方向に付勢力を作用させることができるものであれば、コイルスプリング、ウレタン等、種々のものを採用することができる。
【0049】
図6に示すカッターナイフでは、カッター本体1の先端の円弧面(切刃が突出している部分)を切断対象物に摺接させることにより切断する。カッター部材2はスプリング35の付勢力に従って、切断対象物に対する切刃22の押付力が決定される。したがって、前記実施形態と同様に、一定の押付力で切断対象物を切断することができる。なお、カッターナイフを使用しないときは、キャップ等で切刃22が突出する部分を覆っておくか、ネジ部材36を回転させて切刃22がカッター本体1内に没入するようにすればよい。
【0050】
前記移動部材には、ネジ部材のほか、図7に示すストッパー部材38を採用することも可能である。すなわち、カッター本体1の外周面には突起39が形成されている。ストッパー部材38は、カッター本体1の一端部にスライド可能に取り付けられる有底筒状に形成されている。ストッパー部材38は内側に設けた軸部38aにコイルスプリング40が保持されており、このコイルスプリング40でカッター部材2を突出方向に付勢できるようになっている。また、ストッパー部材38には、長手方向に沿ってカッター本体1の突起が移動可能な案内溝41が形成されている。案内溝41には、カッター本体1に対してストッパー部材38を回転させることにより突起39が係脱する係止溝42が複数箇所で連続して設けられている。突起39を係止する係止溝42を変更することにより、コイルスプリング40によりカッター部材2に作用させる付勢力が調整される。
【0051】
図7に示すカッターナイフでは、切断対象物の種類に応じてストッパー部材38を押し込んで回転させることにより、突起39を係止させる係止溝42の位置を変更すればよい。
【0052】
図8では、カッター本体1の先端側に所定間隔で腕部43が形成され、この腕部43にカッター部材2が支軸44を中心として回動可能に取り付けられている。カッター部材2には、支軸44の近傍にコイルスプリング45の一端部が接続されている。コイルスプリング45の他端部は、カッター本体1内に、その長手方向に沿ってスライド移動可能に設けた移動部材46に接続されている。そして、この移動部材46の位置を、ネジ部材47を回転させることにより変位させると、カッター部材2に作用させるコイルスプリング45の引っ張り力を調整することができるようになっている。
【0053】
図8に示すカッターナイフでは、傾斜させた状態で、腕部43の先端隅部の円弧面を切断対象物に摺接させる。これにより、カッター部材2の先端切刃22が切断対象物に押し付けられる。この押付力は、コイルスプリング45によりカッター部材2に作用させる引っ張り力によって決定される。したがって、ネジ部材47を回転させて所望の押付力が得られるように調整することにより、用紙を1枚だけ切断することが可能となっている。
【0054】
図9では、カッター本体1の先端部には円弧面が形成され、その近傍には支軸48を中心としてカッター部材2を保持するカッター保持部49が回動可能に取り付けられている。支軸48には、スプリング50の巻回部が取り付けられている。スプリング50の巻回部から延びる一端部はカッター保持部49に設けた突部51に圧接し、他端部はカッター本体1に設けた突部52に圧接する。これにより、カッター部材2は、先端切刃22を切断対象物に対して押し付けることが可能となっている。
【0055】
図9に示すカッターナイフでは、カッター本体1の先端円弧面を切断対象物に摺接させることにより、カッター部材2の先端切刃22を、スプリング50の付勢力により切断対象物に押し付けて切断することができる。この場合、切断対象物に対するカッター本体1の傾斜角度を調整することにより、スプリング50の付勢力を調整することができる。つまり、切刃22による押付力を大きくしたい場合には、切断対象物に対する傾斜角度が大きくなるように調整すればよい。
【0056】
また、前記実施形態では、カッター部材2は1枚ものを使用するようにしたが、通常のカッターナイフのように、所定間隔で分離可能な構成としてもよい。この場合、第1スライダ3による位置決めを突出位置と退避位置の2箇所だけではなく、カッター部材2の分離状況に応じて順次前進させる複数箇所で位置決め可能とする必要がある。
【0057】
また、前記実施形態では、切断対象物である用紙を1枚だけ切断する場合について説明したが、切断対象物に一定深さの切込みを入れる場合や、用紙を1枚ではなく複数枚同時に切断する場合であっても、付勢力を調整してカッター部材2の切刃22の押付力を設定することにより対応することが可能である。
【0058】
また、前記実施形態では、第2スライダ5を移動させて板バネ4を押さえる位置を変更することにより、カッター部材2に作用させる付勢力を調整するようにしたが、この付勢力の調整は、板バネ4自身をスライド移動させることにより行うようにしてもよい。具体的には、板バネ4をスライド移動させてカッター本体1との接触位置を変位させる。これにより、カッター部材2の切刃22で切断対象物を切断する際、板バネ4が弾性変形する寸法、すなわちカッター部材2に作用させる付勢力を調整する。
【0059】
また、前記実施形態では、第1本体7と第2本体8を別部材で構成したが、例えば、合成樹脂を成形加工することにより一体的に形成することも可能である。
【0060】
また、前記実施形態では、カッター部材2を回動させるか、その長手方向に往復移動させるように構成したが、長手方向に交差する方向に平行移動させるように構成に構成することも可能であり、要は、カッター本体1に対してカッター部材2を相対的に移動できる構成であればよい。
【符号の説明】
【0061】
1…カッター本体
2…カッター部材
3…第1スライダ(保持部材の一例)
4…板バネ(付勢部材の一例)
5…第2スライダ
6…ストッパー部材
7…第1本体
8…第2本体
9…第1傾斜面
10…第2傾斜面
11…円弧面
12…第1ガイド溝
12a…幅広部
12b…幅狭部
13…連結部
14…逃がし凹部
15…開口部
16…第2ガイド溝
16a…幅広部
16b…幅狭部
17…係止凹部
18…ガイド部
19…スリット
20…摺接部
21…切欠部
22…切刃
23…取付孔
24…スライダ本体
24a…傾斜面
25…突条部
26…第1操作部
27…弾性係止片
27a…突部
28…突起
29…係止部
30…押圧部
31…第2操作部
32…当接部
33…ストッパー本体
34…挿入部
35…スプリング
36…ネジ部材
37…雌ネジ部
38…ストッパー部材
38a…軸部
39…突起
40…コイルスプリング
41…案内溝
42…係止溝
43…腕部
44…支軸
45…コイルスプリング
46…移動部材
47…ネジ部材
48…支軸
49…カッター保持部
50…スプリング
51…突部
52…突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断対象物に摺接する摺接部を備えたカッター本体と、
前記切断対象物を切断する切刃を有するカッター部材と、
前記カッター本体の摺接部を切断対象物に摺接させる際、前記カッター部材を付勢して、切断対象物に対して切刃を一定圧で押し付ける付勢部材と、
を備えたことを特徴とするカッターナイフ。
【請求項2】
前記付勢部材により切断対象物に対して切刃を押し付ける力を調整する押付力調整部材を、さらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のカッターナイフ。
【請求項3】
前記カッター部材は、一端から他端に向かって延び、一方の側縁部に切刃を形成されたものであり、
前記付勢部材は、カッター部材の切刃とは反対側の側縁部に沿って配置した板バネからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のカッターナイフ。
【請求項4】
前記板バネは、カッター部材の側縁部を押圧する押圧部を備え、
前記押付力調整部材は、カッター本体に取り付けた板バネに沿ってスライド可能に設けられ、板バネに当接する当接部を備え、板バネに沿ってスライド移動されることにより、当接部の板バネとの当接位置と押圧部との間の寸法を調整可能であることを特徴とする請求項3に記載のカッターナイフ。
【請求項5】
前記カッター部材を、カッター本体から切刃を突出させた状態で回動可能に支持する保持部材を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のカッターナイフ。
【請求項6】
前記保持部材は、カッター部材の切刃を、少なくとも突出位置又は退避位置のいずれかに位置決め可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のカッターナイフ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−264004(P2010−264004A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116646(P2009−116646)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(390024132)オルファ株式会社 (8)
【Fターム(参考)】