カッター装置
【課題】切断刃の刃先とこの刃先が対向する対向部材との位置関係を精密に調整しなくとも、シートを確実に切断することのできるカッター装置を提供する。
【解決手段】回転駆動するシート裁断用切断刃と、この切断刃に対向する受け座とが備えられ、前記切断刃により、前記切断刃と前記受け座との間に介装されるシートを前記切断刃により裁断するようにしたカッター装置において、前記受け座を回転駆動するロール状に形成すると共に、合成樹脂製の切断刃保護シート部材を、前記シートと前記受け座との間に介装して、前記保護シート部材を前記シートの搬送速度に見合う速度で移動させるように成し、また前記保護シート部材を巻き取る一対の巻き取り体を搭載して、一方の巻き取り体にコイル状に巻き取った前記保護シート部材を順次引き出して前記シートと前記受け座との間を通過させた後に他方の巻き取り体に順次巻き取るようにした。
【解決手段】回転駆動するシート裁断用切断刃と、この切断刃に対向する受け座とが備えられ、前記切断刃により、前記切断刃と前記受け座との間に介装されるシートを前記切断刃により裁断するようにしたカッター装置において、前記受け座を回転駆動するロール状に形成すると共に、合成樹脂製の切断刃保護シート部材を、前記シートと前記受け座との間に介装して、前記保護シート部材を前記シートの搬送速度に見合う速度で移動させるように成し、また前記保護シート部材を巻き取る一対の巻き取り体を搭載して、一方の巻き取り体にコイル状に巻き取った前記保護シート部材を順次引き出して前記シートと前記受け座との間を通過させた後に他方の巻き取り体に順次巻き取るようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置により搬送されて来る紙などのシートを、回転駆動する切断刃により裁断するようにしたカッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種のカッター装置としては、回転駆動する切断刃により、シートをその搬送方向に裁断するようにしたスリッターと称されるカッター装置や、同じく回転駆動する切断刃により、搬送方向と直交する方向にシートを裁断するようにしたロータリーカッターと称されるカッター装置などが見受けられる。(特許文献1参照)
スリッターと称されるカッター装置は、円盤状の切断刃と、切断刃の刃先が対向するローラーを備えてなり、このカッター装置によりシートを搬送方向に裁断するに際しては、搬送されて来るシートを切断刃の刃先部分でローラーの外周面に押し付けるようにして裁断するようにしている。
【0003】
また前記したロータリーカッターと称されるカッター装置にあっても、カッターロータにスパイラル状に取り付けた切断刃と、カッターロータに対向する円柱状のプレーンロータを備えて成り、このロータリーカッター装置によりシートを裁断するに際しては、搬送されて来るシートを切断刃の刃先部分でプレーンロータの外周面に押し付けるようにして裁断するようにしている。
【0004】
ところで前記したスリッターまたはロータリーカッターと称されるカッター装置では、切断刃の刃先部分をローラーまたはプレーンロータの外周面に押し付けるようにしてシートを裁断することから、切断刃の刃先とこの刃先が対向するローラーまたはプレーンロータとの位置関係を精密に調整しなければならない。
【0005】
しかしながら以上のカッター装置では、切断刃やローラー又はロータを回転自由に支持する軸受部材などの構成部材の存在により、構成部品間でのガタの発生も多く、そのため、切断刃の刃先とこの刃先が対向するローラー若しくはロータとの位置関係を精密に調整することが非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−94995号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の実情に鑑みて開発したものであって、目的とするところは、切断刃の刃先とこの刃先が対向する対向部材との位置関係を精密に調整しなくとも、シートを確実に切断することのできるカッター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、回転駆動するシート裁断用切断刃と、この切断刃に対向する受け座とが備えられ、前記切断刃により、前記切断刃と前記受け座との間に介装されるシートを前記切断刃により裁断するようにしたカッター装置において、合成樹脂製の切断刃保護シート部材を、前記シートと前記受け座との間に介装して、前記保護シート部材を前記シートの搬送速度に見合う速度で移動させるようにしていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカッター装置において、前記受け座がロール状に形成されて回転することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のカッター装置において、前記保護シート部材を巻き取る一対の巻き取り体を備え、一方の巻き取り体にコイル状に巻き取った前記保護シート部材を順次引き出して前記シートと前記受け座との間を通過させた後に他方の巻き取り体に順次巻き取るようにしていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載のカッター装置において、前記保護シート材を無端状に形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、シートが保護シート部材上に載った状態で搬送されるので、保護シート部材がシートの搬送に支障を及ぼすことがないのは勿論のこと、シートのフリーランが抑制され、シートの切断長さが安定する。
【0013】
また切断刃の各刃先が、保護シート部材で受け止められて、受け座に直接接触することがないので、切断刃と受け座との隙間管理を従来のように精密に行なわなくとも、切断刃の各刃先を確実に保護することが出来、しかもシートを確実に裁断することが出来るし、また切断刃として従来採用が難しかった薄刃を用いることが出来、シートの切断面を従来よりもシャープな切り口とすることも可能で、全体として高品質のカットシートに仕上げることが出来る。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の前記受け座がロール状に形成されて回転するようにしたことにより、請求項1に記載の発明の効果に加え、保護シート部材をより一層スムーズに移動させることが出来る。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載のカッター装置において、前記保護シート部材を巻き取る一対の巻き取り体を設けて、一方の巻き取り体にコイル状に巻き取った前記保護シート部材を順次引き出して前記シートと前記受け座との間を通過させた後に他方の巻き取り体に順次巻き取るようにしたことにより、第1巻き取り体に巻かれていた保護シート部材が第2巻き取り体に巻き取られた後、第2巻き取り体に巻き取られた保護シート部材の終端部を、再度、カッター装置の受け座と保護シート部材との間に介装した上で第1巻き取り体に接続することで、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、高価な保護シート部材の両面を利用することが可能となり、全体としてランニングコストの低減化が図れる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1または2に記載のカッター装置において、前記保護シート材を無端状に形成したことにより、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、保護シート部材を何度も旋回させて、刃先の接触により多数の傷がついて使えなくなるまで保護シート部材を使用することが出来、全体としてランニングコストの低減化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかるカッター装置を備えたシート裁断機の概略説明図。
【図2】図1に示すシート裁断機を平面から見た概略説明図。
【図3】図1に示すシート裁断機の要部の作動説明図。
【図4】図1に示すシート裁断機の要部の作動説明図。
【図5】裁断機の別の実施形態を示す概略説明図。
【図6】裁断機の更に別の実施形態を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかるカッター装置の一実施形態を説明する。
【0019】
先ず、図1はシート裁断機の概略説明図、
図2は、図1に示すシート裁断機を平面から見た概略説明図、
図3は、図1に示すシート裁断機の要部の作動説明図、
図4は、図1に示すシート裁断機の要部の作動説明図、
図5は、裁断機の別の実施形態を示す概略説明図、
図6は、裁断機の更に別の実施形態を示す概略説明図である。
【0020】
図1及び図2に概略的に示すシート裁断機は、基本的には、連続シートPを一定速度で引き出すピンチロール装置1と、連続シートPを搬送方向に切断するための第1カッター装置2と、シートとしての連続シートPを引き揃えるフィードロール装置3と、連続シートをその搬送方向と直交する方向に切断するための第2カッター装置4と、第1カッター装置2によりカットされる連続シートPの幅方向両端部のいわゆる耳部を回収するためのトリムワインダー装置5とが備えられている。
【0021】
このシート裁断機は、ロール状に巻かれた連続シートPを、前記したピンチロール装置1により引き出して第1カッター装置2に送り込み、この第1カッター装置により搬送方向に切断すると共に、この第1カッター装置2により搬送方向に切り揃えられた連続シートPを、フィードロール装置3を介して第2カッター装置4に送り込み、この第2カッター装置4により所定の長さのカットシートに順次裁断するようにしている。
【0022】
第1カッター装置2は、搬送されてくる連続シートPを、後記する耳部切断刃21及び幅決め切断刃22により搬送方向に裁断するのであって、一般的にスリッターと称されているものである。
【0023】
この第1カッター装置2は、連続シートPの幅方向両端部の所謂耳部分を切り落とすための円板形の耳部切断刃21と、カットシートの幅を決める円板形の幅決め切断刃22と、これら両切断刃21・22の外周縁に形成された刃先に対向して配置された本発明の受け座を構成する円柱状のロール23とが備えられている。
【0024】
耳部切断刃21及び幅決め切断刃22は、連続シートPの搬送方向に直交する方向に移動可能に設けられている。
【0025】
前記した両切断刃21・22及びロール23は、モータ24により回転駆動される。
【0026】
また第2カッター装置4は、連続シートPをその搬送方向と直交する方向に切断して所定の長さのカットシートに裁断するものであって、一般的にロータリーカッターと称されているものである。
【0027】
この第2カッター装置4は、図1にも示すように、基本的には、カッターロータ41と、このカッターロータ41の外周面に取り付けられた切断刃42と、この切断刃42の刃先に対向して配置された本発明の受け座を構成するプレーンロータ43とが備えられている。
【0028】
カッターロータ41及びプレーンロータ43は、モータ44により回転駆動され、前記した切断刃42は、カッターロータ41の外周面の2箇所に軸方向に対してスパイラル状に取り付けられている。
【0029】
そして図1〜図2に示す実施形態では、以上のシート裁断機の第1カッター装置2と第2カッター装置4に本発明を適用しているのであって、合成樹脂製の保護シート部材6を、第1カッター装置2におけるロール23とこのロール23上を搬送する連続シートPとの間から第2カッター装置4におけるプレーンロータ43とこのプレーンロータ43上を搬送する連続シートPとの間に介装するとともに、この保護シート部材6を連続シートPの搬送速度に見合う速度、換言すれば連続シートPの搬送速度とほぼ同一速度で且つ同一方向に移動させるようにしている。
【0030】
即ち、図1〜図2に示す実施形態では、保護シート部材6を巻き取り可能な一対の第1巻き取り体61及び第2巻取り体62と、保護シート部材6を移動させるための複数の回転駆動ローラー63とが備えられ、回転駆動ローラー63の回転駆動により、第1巻き取り体61にコイル状に巻き取った保護シート部材6を順次引き出して、第1カッター装置2におけるロール23とこのロール23上を搬送する連続シートPとの間、フィードロール装置3、第2カッター装置4におけるプレーンロータ43とこのプレーンロータ43上を搬送する連続シートPとの間を順次通過させた後に第2巻き取り体62にコイル状に巻き取るようにしている。
【0031】
保護シート部材「商品名(ルミナ)」6は、厚さ0.1mm〜0.5mm程度のポリエチレン製硬質シート材を用いている。
【0032】
尚、図中7はシートの搬送装置を構成する複数の搬送ローラー、8は第2カッター装置4によりカットされたカットシートを搬送するための搬送機構、9は搬送機構8により搬送されるカットシートの積載台を示す。
【0033】
以上のシート裁断機では、シートの搬送装置を構成する複数の搬送ローラー7を介して搬送されて来る連続シートPは、先ず第1カッター装置2の耳部切断刃21と幅決め切断刃22により、長さ方向に切断されて、切断された連続シートPの幅方向両端部の耳部分は、トリムワインダー5に巻き取られる一方、耳部分以外の長さ方向に切断された連続シートPは、フィードロール装置3を介して第2カッター装置4に搬送されて、カッターロータ41の切断刃42により所定長さのカットシートに切断される。
【0034】
ところで、以上のシート裁断機では、回転駆動ローラー63の回転駆動により、図3(a)または図4(a)に示すように、第1巻き取り体61にコイル状に巻き取った保護シート部材6が順次引き出されて、連続シートPの搬送速度と同一速度で且つ同一方向に順次移動しながら、第1カッター装置2におけるロール23とこのロール23上を搬送する連続シートPとの間からフィードロール装置3更には第2カッター装置4におけるプレーンロータ43とこのプレーンロータ43上を搬送する連続シートPとの間を順次通過した後に第2巻き取り体62にコイル状に巻き取られると共に、連続シートPは保護シート部材6上に載った状態で搬送される。
【0035】
従って、以上のシート裁断機では、保護シート部材6が連続シートPの搬送に支障を及ぼすことがないのは勿論のこと、カッターロータ41の切断刃42により、例えば50mm程度の所謂短尺切りとしたカットシートも容易に得ることが可能となるし、また連続シートPのフリーランが抑制されるので、カットシートの切断長さ及び菱精度が安定する。
【0036】
また以上のシート裁断機では、耳部切断刃21、幅決め切断刃22、切断刃42の各刃先が、保護シート部材6で受け止められて、ロール23やプレーンロータ43にダイレクトに接触することがない。
【0037】
従って、例えば第1カッター装置2における耳部切断刃21及び幅決め切断刃22とロール23との隙間管理や、第2カッター装置4における切断刃42とプレーンロータ43との隙間管理を従来のように精密に行なわなくとも、耳部切断刃21、幅決め切断刃22、切断刃42の各刃先を確実に保護することが出来、しかも連続シートPを確実に裁断することが出来る。
【0038】
また耳部切断刃21、幅決め切断刃22、切断刃42の各刃先が、ロール23やプレーンロータ43に直接接触しないので、従来採用が難しかった薄刃を用いることが出来、連続シートPの切断面を従来よりもシャープな切り口とすることが出来るし、また第1カッター装置2と第2カッター装置4での切り口も同一となり、全体として高品質のカットシートに仕上げることが出来る。
【0039】
一方、保護シート部材6は、連続シートPの搬送速度と同一速度で且つ同一方向に順次移動して、下流側に位置する第2巻き取り体62に巻き取られるので、この保護シート部材6が連続シートPの搬送に支障を及ぼすことがない。
【0040】
そして第1巻き取り体61に巻かれていた保護シート部材6が、図3(b)または図4(b)に示すように、第2巻き取り体62に巻き取られたならば、図3(c)または図4(c)に示すように、第2巻き取り体62に巻き取られた保護シート部材6の終端部を、再度、第1カッター装置2、フィードロール装置3、第2カッター装置4を順次通過させた上で第1巻き取り体61に接続する。
【0041】
この状態から第1巻取り体61及び第2巻取り体62を逆転方向に回転駆動させることで、保護シート部材6は、先ほどとは反対側の面が刃先と対向した状態で、連続シートPの搬送速度と同一速度で且つ同一方向に順次移動しながら、第1カッター装置2におけるロール23とこのロール23上を搬送する連続シートPとの間からフィードロール装置3更には第2カッター装置4におけるプレーンロータ43とこのプレーンロータ43上を搬送する連続シートPとの間を順次通過した後に、図3(d)または図4(d)に示すように、第1巻き取り体61にコイル状に巻き取られる。
【0042】
斯くして以上のシート裁断機では、高価な保護シート部材6の両面を利用することが出来るので、ランニングコストの低減化が図れる。
【0043】
尚、図5に示すように、第1カッター装置2の幅決め切断刃22を連続シートPの搬送経路中の上流側と下流側の二箇所に設けるとともに、この上流側と下流側の幅決め切断刃22を平面視千鳥状に配置してもよく、これにより、狭いスリット幅での連続シートPの切断が可能となる。
【0044】
次に図6に示すカッター装置は、保護シート部材6を旋回移動させるための複数の回転駆動ローラー63が備えられ、これら回転駆動ローラー63間に無端状の保護シート部材6を張設したものである。
【0045】
以上の図6に示すシート裁断機では、回転駆動ローラー63の駆動により、刃先の接触により多数の傷がついて使えなくなるまで保護シート部材6を旋回させ、保護シート部材6が多数の傷により使用不能となった時点で、新しい無端状の保護シート部材6と交換すればよい。
【0046】
斯くして以上の図6に示すシート裁断機では、図1又は図5に示すシート裁断機よりも小型化が図れる。
【0047】
以上の実施形態では、第1カッター装置2と第2カッター装置4とに本発明を適用したが、第1カッター装置2と第2カッター装置4のいずれか一方にのみ本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
2 第1カッター装置
21 耳部切断刃
22 幅決め切断刃
23 ロール
3 フィードロール装置
4 第2カッター装置
41 カッターロータ
42 切断刃
43 プレーンロータ
5 トリムワインダー装置
6 保護シート部材
7 搬送ローラー
P 連続シート(シート)
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置により搬送されて来る紙などのシートを、回転駆動する切断刃により裁断するようにしたカッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種のカッター装置としては、回転駆動する切断刃により、シートをその搬送方向に裁断するようにしたスリッターと称されるカッター装置や、同じく回転駆動する切断刃により、搬送方向と直交する方向にシートを裁断するようにしたロータリーカッターと称されるカッター装置などが見受けられる。(特許文献1参照)
スリッターと称されるカッター装置は、円盤状の切断刃と、切断刃の刃先が対向するローラーを備えてなり、このカッター装置によりシートを搬送方向に裁断するに際しては、搬送されて来るシートを切断刃の刃先部分でローラーの外周面に押し付けるようにして裁断するようにしている。
【0003】
また前記したロータリーカッターと称されるカッター装置にあっても、カッターロータにスパイラル状に取り付けた切断刃と、カッターロータに対向する円柱状のプレーンロータを備えて成り、このロータリーカッター装置によりシートを裁断するに際しては、搬送されて来るシートを切断刃の刃先部分でプレーンロータの外周面に押し付けるようにして裁断するようにしている。
【0004】
ところで前記したスリッターまたはロータリーカッターと称されるカッター装置では、切断刃の刃先部分をローラーまたはプレーンロータの外周面に押し付けるようにしてシートを裁断することから、切断刃の刃先とこの刃先が対向するローラーまたはプレーンロータとの位置関係を精密に調整しなければならない。
【0005】
しかしながら以上のカッター装置では、切断刃やローラー又はロータを回転自由に支持する軸受部材などの構成部材の存在により、構成部品間でのガタの発生も多く、そのため、切断刃の刃先とこの刃先が対向するローラー若しくはロータとの位置関係を精密に調整することが非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−94995号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の実情に鑑みて開発したものであって、目的とするところは、切断刃の刃先とこの刃先が対向する対向部材との位置関係を精密に調整しなくとも、シートを確実に切断することのできるカッター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、回転駆動するシート裁断用切断刃と、この切断刃に対向する受け座とが備えられ、前記切断刃により、前記切断刃と前記受け座との間に介装されるシートを前記切断刃により裁断するようにしたカッター装置において、合成樹脂製の切断刃保護シート部材を、前記シートと前記受け座との間に介装して、前記保護シート部材を前記シートの搬送速度に見合う速度で移動させるようにしていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカッター装置において、前記受け座がロール状に形成されて回転することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のカッター装置において、前記保護シート部材を巻き取る一対の巻き取り体を備え、一方の巻き取り体にコイル状に巻き取った前記保護シート部材を順次引き出して前記シートと前記受け座との間を通過させた後に他方の巻き取り体に順次巻き取るようにしていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載のカッター装置において、前記保護シート材を無端状に形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、シートが保護シート部材上に載った状態で搬送されるので、保護シート部材がシートの搬送に支障を及ぼすことがないのは勿論のこと、シートのフリーランが抑制され、シートの切断長さが安定する。
【0013】
また切断刃の各刃先が、保護シート部材で受け止められて、受け座に直接接触することがないので、切断刃と受け座との隙間管理を従来のように精密に行なわなくとも、切断刃の各刃先を確実に保護することが出来、しかもシートを確実に裁断することが出来るし、また切断刃として従来採用が難しかった薄刃を用いることが出来、シートの切断面を従来よりもシャープな切り口とすることも可能で、全体として高品質のカットシートに仕上げることが出来る。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の前記受け座がロール状に形成されて回転するようにしたことにより、請求項1に記載の発明の効果に加え、保護シート部材をより一層スムーズに移動させることが出来る。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載のカッター装置において、前記保護シート部材を巻き取る一対の巻き取り体を設けて、一方の巻き取り体にコイル状に巻き取った前記保護シート部材を順次引き出して前記シートと前記受け座との間を通過させた後に他方の巻き取り体に順次巻き取るようにしたことにより、第1巻き取り体に巻かれていた保護シート部材が第2巻き取り体に巻き取られた後、第2巻き取り体に巻き取られた保護シート部材の終端部を、再度、カッター装置の受け座と保護シート部材との間に介装した上で第1巻き取り体に接続することで、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、高価な保護シート部材の両面を利用することが可能となり、全体としてランニングコストの低減化が図れる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1または2に記載のカッター装置において、前記保護シート材を無端状に形成したことにより、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、保護シート部材を何度も旋回させて、刃先の接触により多数の傷がついて使えなくなるまで保護シート部材を使用することが出来、全体としてランニングコストの低減化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかるカッター装置を備えたシート裁断機の概略説明図。
【図2】図1に示すシート裁断機を平面から見た概略説明図。
【図3】図1に示すシート裁断機の要部の作動説明図。
【図4】図1に示すシート裁断機の要部の作動説明図。
【図5】裁断機の別の実施形態を示す概略説明図。
【図6】裁断機の更に別の実施形態を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかるカッター装置の一実施形態を説明する。
【0019】
先ず、図1はシート裁断機の概略説明図、
図2は、図1に示すシート裁断機を平面から見た概略説明図、
図3は、図1に示すシート裁断機の要部の作動説明図、
図4は、図1に示すシート裁断機の要部の作動説明図、
図5は、裁断機の別の実施形態を示す概略説明図、
図6は、裁断機の更に別の実施形態を示す概略説明図である。
【0020】
図1及び図2に概略的に示すシート裁断機は、基本的には、連続シートPを一定速度で引き出すピンチロール装置1と、連続シートPを搬送方向に切断するための第1カッター装置2と、シートとしての連続シートPを引き揃えるフィードロール装置3と、連続シートをその搬送方向と直交する方向に切断するための第2カッター装置4と、第1カッター装置2によりカットされる連続シートPの幅方向両端部のいわゆる耳部を回収するためのトリムワインダー装置5とが備えられている。
【0021】
このシート裁断機は、ロール状に巻かれた連続シートPを、前記したピンチロール装置1により引き出して第1カッター装置2に送り込み、この第1カッター装置により搬送方向に切断すると共に、この第1カッター装置2により搬送方向に切り揃えられた連続シートPを、フィードロール装置3を介して第2カッター装置4に送り込み、この第2カッター装置4により所定の長さのカットシートに順次裁断するようにしている。
【0022】
第1カッター装置2は、搬送されてくる連続シートPを、後記する耳部切断刃21及び幅決め切断刃22により搬送方向に裁断するのであって、一般的にスリッターと称されているものである。
【0023】
この第1カッター装置2は、連続シートPの幅方向両端部の所謂耳部分を切り落とすための円板形の耳部切断刃21と、カットシートの幅を決める円板形の幅決め切断刃22と、これら両切断刃21・22の外周縁に形成された刃先に対向して配置された本発明の受け座を構成する円柱状のロール23とが備えられている。
【0024】
耳部切断刃21及び幅決め切断刃22は、連続シートPの搬送方向に直交する方向に移動可能に設けられている。
【0025】
前記した両切断刃21・22及びロール23は、モータ24により回転駆動される。
【0026】
また第2カッター装置4は、連続シートPをその搬送方向と直交する方向に切断して所定の長さのカットシートに裁断するものであって、一般的にロータリーカッターと称されているものである。
【0027】
この第2カッター装置4は、図1にも示すように、基本的には、カッターロータ41と、このカッターロータ41の外周面に取り付けられた切断刃42と、この切断刃42の刃先に対向して配置された本発明の受け座を構成するプレーンロータ43とが備えられている。
【0028】
カッターロータ41及びプレーンロータ43は、モータ44により回転駆動され、前記した切断刃42は、カッターロータ41の外周面の2箇所に軸方向に対してスパイラル状に取り付けられている。
【0029】
そして図1〜図2に示す実施形態では、以上のシート裁断機の第1カッター装置2と第2カッター装置4に本発明を適用しているのであって、合成樹脂製の保護シート部材6を、第1カッター装置2におけるロール23とこのロール23上を搬送する連続シートPとの間から第2カッター装置4におけるプレーンロータ43とこのプレーンロータ43上を搬送する連続シートPとの間に介装するとともに、この保護シート部材6を連続シートPの搬送速度に見合う速度、換言すれば連続シートPの搬送速度とほぼ同一速度で且つ同一方向に移動させるようにしている。
【0030】
即ち、図1〜図2に示す実施形態では、保護シート部材6を巻き取り可能な一対の第1巻き取り体61及び第2巻取り体62と、保護シート部材6を移動させるための複数の回転駆動ローラー63とが備えられ、回転駆動ローラー63の回転駆動により、第1巻き取り体61にコイル状に巻き取った保護シート部材6を順次引き出して、第1カッター装置2におけるロール23とこのロール23上を搬送する連続シートPとの間、フィードロール装置3、第2カッター装置4におけるプレーンロータ43とこのプレーンロータ43上を搬送する連続シートPとの間を順次通過させた後に第2巻き取り体62にコイル状に巻き取るようにしている。
【0031】
保護シート部材「商品名(ルミナ)」6は、厚さ0.1mm〜0.5mm程度のポリエチレン製硬質シート材を用いている。
【0032】
尚、図中7はシートの搬送装置を構成する複数の搬送ローラー、8は第2カッター装置4によりカットされたカットシートを搬送するための搬送機構、9は搬送機構8により搬送されるカットシートの積載台を示す。
【0033】
以上のシート裁断機では、シートの搬送装置を構成する複数の搬送ローラー7を介して搬送されて来る連続シートPは、先ず第1カッター装置2の耳部切断刃21と幅決め切断刃22により、長さ方向に切断されて、切断された連続シートPの幅方向両端部の耳部分は、トリムワインダー5に巻き取られる一方、耳部分以外の長さ方向に切断された連続シートPは、フィードロール装置3を介して第2カッター装置4に搬送されて、カッターロータ41の切断刃42により所定長さのカットシートに切断される。
【0034】
ところで、以上のシート裁断機では、回転駆動ローラー63の回転駆動により、図3(a)または図4(a)に示すように、第1巻き取り体61にコイル状に巻き取った保護シート部材6が順次引き出されて、連続シートPの搬送速度と同一速度で且つ同一方向に順次移動しながら、第1カッター装置2におけるロール23とこのロール23上を搬送する連続シートPとの間からフィードロール装置3更には第2カッター装置4におけるプレーンロータ43とこのプレーンロータ43上を搬送する連続シートPとの間を順次通過した後に第2巻き取り体62にコイル状に巻き取られると共に、連続シートPは保護シート部材6上に載った状態で搬送される。
【0035】
従って、以上のシート裁断機では、保護シート部材6が連続シートPの搬送に支障を及ぼすことがないのは勿論のこと、カッターロータ41の切断刃42により、例えば50mm程度の所謂短尺切りとしたカットシートも容易に得ることが可能となるし、また連続シートPのフリーランが抑制されるので、カットシートの切断長さ及び菱精度が安定する。
【0036】
また以上のシート裁断機では、耳部切断刃21、幅決め切断刃22、切断刃42の各刃先が、保護シート部材6で受け止められて、ロール23やプレーンロータ43にダイレクトに接触することがない。
【0037】
従って、例えば第1カッター装置2における耳部切断刃21及び幅決め切断刃22とロール23との隙間管理や、第2カッター装置4における切断刃42とプレーンロータ43との隙間管理を従来のように精密に行なわなくとも、耳部切断刃21、幅決め切断刃22、切断刃42の各刃先を確実に保護することが出来、しかも連続シートPを確実に裁断することが出来る。
【0038】
また耳部切断刃21、幅決め切断刃22、切断刃42の各刃先が、ロール23やプレーンロータ43に直接接触しないので、従来採用が難しかった薄刃を用いることが出来、連続シートPの切断面を従来よりもシャープな切り口とすることが出来るし、また第1カッター装置2と第2カッター装置4での切り口も同一となり、全体として高品質のカットシートに仕上げることが出来る。
【0039】
一方、保護シート部材6は、連続シートPの搬送速度と同一速度で且つ同一方向に順次移動して、下流側に位置する第2巻き取り体62に巻き取られるので、この保護シート部材6が連続シートPの搬送に支障を及ぼすことがない。
【0040】
そして第1巻き取り体61に巻かれていた保護シート部材6が、図3(b)または図4(b)に示すように、第2巻き取り体62に巻き取られたならば、図3(c)または図4(c)に示すように、第2巻き取り体62に巻き取られた保護シート部材6の終端部を、再度、第1カッター装置2、フィードロール装置3、第2カッター装置4を順次通過させた上で第1巻き取り体61に接続する。
【0041】
この状態から第1巻取り体61及び第2巻取り体62を逆転方向に回転駆動させることで、保護シート部材6は、先ほどとは反対側の面が刃先と対向した状態で、連続シートPの搬送速度と同一速度で且つ同一方向に順次移動しながら、第1カッター装置2におけるロール23とこのロール23上を搬送する連続シートPとの間からフィードロール装置3更には第2カッター装置4におけるプレーンロータ43とこのプレーンロータ43上を搬送する連続シートPとの間を順次通過した後に、図3(d)または図4(d)に示すように、第1巻き取り体61にコイル状に巻き取られる。
【0042】
斯くして以上のシート裁断機では、高価な保護シート部材6の両面を利用することが出来るので、ランニングコストの低減化が図れる。
【0043】
尚、図5に示すように、第1カッター装置2の幅決め切断刃22を連続シートPの搬送経路中の上流側と下流側の二箇所に設けるとともに、この上流側と下流側の幅決め切断刃22を平面視千鳥状に配置してもよく、これにより、狭いスリット幅での連続シートPの切断が可能となる。
【0044】
次に図6に示すカッター装置は、保護シート部材6を旋回移動させるための複数の回転駆動ローラー63が備えられ、これら回転駆動ローラー63間に無端状の保護シート部材6を張設したものである。
【0045】
以上の図6に示すシート裁断機では、回転駆動ローラー63の駆動により、刃先の接触により多数の傷がついて使えなくなるまで保護シート部材6を旋回させ、保護シート部材6が多数の傷により使用不能となった時点で、新しい無端状の保護シート部材6と交換すればよい。
【0046】
斯くして以上の図6に示すシート裁断機では、図1又は図5に示すシート裁断機よりも小型化が図れる。
【0047】
以上の実施形態では、第1カッター装置2と第2カッター装置4とに本発明を適用したが、第1カッター装置2と第2カッター装置4のいずれか一方にのみ本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0048】
2 第1カッター装置
21 耳部切断刃
22 幅決め切断刃
23 ロール
3 フィードロール装置
4 第2カッター装置
41 カッターロータ
42 切断刃
43 プレーンロータ
5 トリムワインダー装置
6 保護シート部材
7 搬送ローラー
P 連続シート(シート)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動するシート裁断用切断刃と、この切断刃に対向する受け座とが備えられ、前記切断刃により、前記切断刃と前記受け座との間に介装されるシートを前記切断刃により裁断するようにしたカッター装置において、合成樹脂製の切断刃保護シート部材を、前記シートと前記受け座との間に介装して、前記保護シート部材を前記シートの搬送速度に見合う速度で移動させるようにしていることを特徴とするカッター装置。
【請求項2】
前記受け座がロール状に形成されて回転することを特徴とする請求項1に記載のカッター装置。
【請求項3】
前記保護シート部材を巻き取る一対の巻き取り体を備え、一方の巻き取り体にコイル状に巻き取った前記保護シート部材を順次引き出して前記シートと前記受け座との間を通過させた後に他方の巻き取り体に順次巻き取るようにしていることを特徴とする請求項1または2に記載のカッター装置。
【請求項4】
前記保護シート材を無端状に形成していることを特徴とする請求項1または2に記載のカッター装置。
【請求項1】
回転駆動するシート裁断用切断刃と、この切断刃に対向する受け座とが備えられ、前記切断刃により、前記切断刃と前記受け座との間に介装されるシートを前記切断刃により裁断するようにしたカッター装置において、合成樹脂製の切断刃保護シート部材を、前記シートと前記受け座との間に介装して、前記保護シート部材を前記シートの搬送速度に見合う速度で移動させるようにしていることを特徴とするカッター装置。
【請求項2】
前記受け座がロール状に形成されて回転することを特徴とする請求項1に記載のカッター装置。
【請求項3】
前記保護シート部材を巻き取る一対の巻き取り体を備え、一方の巻き取り体にコイル状に巻き取った前記保護シート部材を順次引き出して前記シートと前記受け座との間を通過させた後に他方の巻き取り体に順次巻き取るようにしていることを特徴とする請求項1または2に記載のカッター装置。
【請求項4】
前記保護シート材を無端状に形成していることを特徴とする請求項1または2に記載のカッター装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2010−274351(P2010−274351A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127742(P2009−127742)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(391047857)旭マシナリー株式会社 (21)
【出願人】(000244028)明産株式会社 (9)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(391047857)旭マシナリー株式会社 (21)
【出願人】(000244028)明産株式会社 (9)
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